(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】抗トランスサイレチン抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20230929BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230929BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230929BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230929BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230929BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230929BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20230929BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230929BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20230929BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20230929BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20230929BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P9/00
A61P25/28
A61P19/02
A61P19/04
A61P27/02
A61P43/00 121
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2020518649
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054720
(87)【国際公開番号】W WO2019071205
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-01
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523169132
【氏名又は名称】ノボ ノルディスク エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サルマンズ,ジョシュア レジナルド
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,スヴェトラナ
(72)【発明者】
【氏名】バーバー,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】ヒガキ,ジェフェリー エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ニハル,ターロチャン エス.
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/005455(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0056904(US,A1)
【文献】特表2014-510907(JP,A)
【文献】特表2016-514091(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115331(WO,A1)
【文献】Higaki JN. et al.,Novel conformation-specific monoclonal antibodies against amyloidogenic forms of transthyretin,Amyloid,2016年,Vol. 23(2),pp. 86-97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離モノクローナル抗体であって、
ヒトトランスサイレチン(TTR)に結合し、
3つのKabat重鎖CDRである配列番号93のCDR-H1、配列番号7のCDR-H2および配列番号9のCDR-H3を含む成熟重鎖可変領域、かつ3つのKabat軽鎖CDRである配列番号11のCDR-L1、配列番号13のCDR-L2および配列番号15のCDR-L3を含む成熟軽鎖可変領域を含む、抗体。
【請求項2】
前記成熟重鎖可変領域が、配列番号81のアミノ酸配列を含みかつ前記成熟軽鎖可変領域が、配列番号87のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
ヒトIgG1アイソタイプ、ヒトIgG2アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプを有する請求項1または3に記載の抗体。
【請求項5】
以下に挙げる位置の少なくとも1つが、指定のアミノ酸によって占められる、H37がVまたはAによって占められ、H45がLまたはQによって占められ、H47がLまたはWによって占められ、H48がVまたはIによって占められ、H49がAまたはGによって占められ、かつH94がSまたはRによって占められる、請求項3に記載のヒト化抗体。
【請求項6】
VH領域中の与えられた位置H37、H45、H47、H48、H49、およびH94が、それぞれ、A、Q、W、I、G、およびRによって占められる、請求項5に記載のヒト化抗体。
【請求項7】
以下の位置の少なくとも1つが、指定のアミノ酸のアミノ酸によって占められる、L2がIまたはVによって占められかつL45がQまたはRによって占められる、請求項3に記載のヒト化抗体。
【請求項8】
VL領域中の与えられた位置L2およびL45が、それぞれ、VおよびRによって占められる、請求項7に記載のヒト化抗体。
【請求項9】
前記成熟重鎖可変領域が、配列番号85~86のいずれか1つのアミノ酸配列を有しかつ前記成熟軽鎖可変領域が、配列番号91~92のいずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項3に記載のヒト化抗体。
【請求項10】
インタクト抗体である請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
結合フラグメントである請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
前記成熟軽鎖可変領域が、軽鎖定常領域に融合されかつ前記成熟重鎖可変領域が、重鎖定常領域に融合され、そして前記重鎖定常領域が、天然のヒト重鎖定常領域に比べ低下されたFcγ受容体への結合を有する前記天然のヒト重鎖定常領域の変異体型である、請求項3~9のいずれか1項に記載のヒト化抗体。
【請求項13】
前記成熟軽鎖可変領域が、軽鎖定常領域に融合されかつ前記成熟重鎖可変領域が、重鎖定常領域に融合され、そして前記重鎖定常領域が、IgG1アイソタイプのものである、請求項3~9のいずれか1項に記載のヒト化抗体。
【請求項14】
前記成熟軽鎖可変領域が、軽鎖定常領域に融合されかつ前記成熟重鎖可変領域が、重鎖定常領域に融合され、そして前記成熟重鎖可変領域が、C末端リジンの有無を問わずに配列番号22の配列を有する重鎖定常領域に融合されかつ/または前記成熟軽鎖可変領域が、配列番号24の配列を有する軽鎖定常領域に融合される、請求項3~9のいずれか1項に記載のヒト化抗体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の第一の抗体と、前記第一の抗体により結合されるものとは異なるTTRのエピトープを結合する第二の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項16】
2つの抗原結合ドメインと、3つのKabat重鎖CDRである配列番号93のCDR-H1、配列番号7のCDR-H2および配列番号9のCDR-H3を含む成熟重鎖可変領域、かつ3つのKabat軽鎖CDRである配列番号11のCDR-L1、配列番号13のCDR-L2および配列番号15のCDR-L3を含む成熟軽鎖可変領域を含む第一の抗原結合ドメイン
であって、ヒトトランスサイレチン(TTR)に結合する、第一の抗原結合ドメインと、前記第一の抗原結合ドメインにより結合されるものとは別のTTRの領域を特異的に結合する第二の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体。
【請求項17】
請求項1~14および16のいずれかに記載の抗体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~14および/または16のいずれか1項に記載の抗体の重鎖およ
び軽鎖をコードする核酸。
【請求項19】
請求項1~14および/または16のいずれか1項に記載の抗体の重鎖および軽鎖をそれぞれコードする核酸。
【請求項20】
マウス抗体をヒト化する方法であって、
(a)1つまたは複数のヒトアクセプター抗体配列を選択することと、
(b)保持されるべきマウス抗体のアミノ酸残基を特定することと、
(c)前記マウス抗体の重鎖のCDRを含むヒト化重鎖をコードする核酸および前記マウス抗体の軽鎖のCDRを含むヒト化軽鎖をコードする核酸を合成することと、
(d)宿主細胞中で前記核酸を発現させてヒト化抗体を産生すること
を含み、前記マウス抗体が、配列番号81のアミノ酸配列を有する成熟重鎖可変領域と配列番号87のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む、方法。
【請求項21】
請求項1~14および16のいずれか1項に記載の抗体を含む、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスの治療またはその予防に使用するための医薬組成物。
【請求項22】
前記トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスが、心筋症または心肥大、家族性アミロイドニューロパチー、中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)、老人性全身性アミロイドーシス、老人性心アミロイドーシス、脊柱管狭窄症、変形性関節症、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、加齢黄斑変性、および靭帯または腱の障害のいずれかから選択される病態に関連する、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスが、家族性トランスサイレチンアミロイドーシスまたは孤発性トランスサイレチンアミロイドーシスである、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記家族性トランスサイレチンアミロイドーシスが、家族性アミロイド心筋症(FAC)、家族性アミロイドニューロパチー(FAP)、または中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)である、請求項
23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記孤発性トランスサイレチンアミロイドーシスが、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)または老人性心アミロイドーシス(SCA)である、請求項
23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスが、心臓、末梢神経系、自律神経系、腎臓、眼球、腹部脂肪、または消化管でのアミロイド蓄積に関連する、請求項
21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)の下、2017年10月6日に出願された米国仮特許出願第62/569,436号および2017年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/598,965号の利益を主張するものであり、上記出願はそれぞれ、その全体があらゆる目的において参照により組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照)
ファイル516711SEQLST.txtに記載されている配列表は、59.6キロバイトであり、2018年9月20日に作成されたものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
疾患特異的タンパク質のフォールディングおよび凝集の異常が原因であると考えられている疾患がいくつかある。このようなタンパク質は、アミロイドとして知られる病理診断的な蓄積物として蓄積することがあり、特定の組織学的染色によって可視化される。アミロイドは、炎症性応答を誘発すると考えられており、関係のある組織に複数の負の結果をもたらす。さらに、フォールディングが異常なタンパク質の小さい凝集体が存在し細胞毒性効果をもたらすこともある。
【0004】
トランスサイレチン(TTR)は、ミスフォールドして凝集する(例えば、アミロイドを形成する)ことが知られている多数のタンパク質の1つである。トランスサイレチン介在性のアミロイドーシス(ATTR)には、変異TTRまたはバリアントTTRのミスフォールディングによって生じる家族性疾患、ならびに野生型TTRのミスフォールディングおよび凝集を原因とする孤発性非遺伝性疾患の2つの形態の疾患が含まれる。TTRアミロイド形成の過程で、神経系および/または心臓ならびにそれ以外の組織に病態が生じることがある。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本発明は、ミスフォールドTTRに特異的に結合し、天然型のタンパク質には結合しない単離モノクローナル抗体を提供する。このような抗体の例は、配列番号26の成熟領域のアミノ酸残基101~109内のエピトープに結合する。
【0006】
いくつかのこのような抗体は、ミスフォールドヒトTTRへの結合に関して抗体18C5と競合する。いくつかのこのような抗体は、ヒトトランスサイレチン上にある18C5と同じエピトープに結合する。
【0007】
いくつかのこのような抗体は、モノクローナル抗体18C5の3つの軽鎖CDRと3つの重鎖CDRとを含み、18C5は、配列番号81を含むアミノ酸配列を有有する成熟重鎖可変領域および配列番号87を含むアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域を特徴とする、マウス抗体である。
【0008】
いくつかのこのような抗体は、Kabat/Chothia複合によって定義される3つの重鎖CDR(配列番号5、7および9)と、Kabat/Chothia複合によって定義される3つの軽鎖CDR(配列番号11、13および15)とを含む。
【0009】
いくつかのこのような抗体は、18C5、またはそのキメラ型、ベニヤ化(veneered)型、もしくはヒト化型である。いくつかのこのような抗体は、配列番号26の成熟領域中の101~109位内のエピトープに結合する。いくつかのこのような抗体はモノクローナル抗体である。いくつかのこのような抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト化抗体、ベニヤ化(veneered)抗体、またはヒト抗体である。いくつかのこのような抗体では、成熟重鎖可変領域がヒト配列と85%以上の同一性を有する。いくつかのこのような抗体では、成熟軽鎖可変領域がヒト配列と85%以上の同一性を有する。いくつかのこのような抗体では、天然の重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト配列と85%以上の同一性を有する。
【0010】
いくつかのこのような抗体はヒト化抗体である。いくつかのこのような抗体はヒトIgG1アイソタイプを有する。いくつかのこのような抗体は、ヒトIgG2アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプを有する。
【0011】
いくつかのこのような抗体は、トランスサイレチンに特異的に結合するヒト化抗体またはキメラ18C5抗体であり、18C5は、配列番号81の成熟重鎖可変領域および配列番号87の成熟軽鎖可変領域を特徴とする、マウス抗体である。いくつかの抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域が18C5の3つの重鎖CDRを含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域が18C5の3つの軽鎖CDRを含む。
【0012】
いくつかの抗体では、CDRは、Kabat、Chothia、Kabat/Chothia複合、AbMおよびContactからなる群より選択される定義のものである。いくつかの抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域が18C5の3つのKabat/Chothia複合重鎖CDR(配列番号5、7および9)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域が18C5の3つのKabat/Chothia複合軽鎖CDR(配列番号11、13および15)を含む。いくつかの抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域が18C5の3つのKabat重鎖CDR(配列番号93、配列番号7および配列番号9)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域が18C5の3つのKabat軽鎖CDR(配列番号11、配列番号13および配列番号15)を含む。いくつかの抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域が18C5の3つのChothia重鎖CDR(配列番号94、配列番号96および配列番号9)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域が18C5の3つのChothia軽鎖CDR(配列番号11、配列番号13および配列番号15)を含む。いくつかの抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域が18C5の3つのAbM重鎖CDR(配列番号5、配列番号97および配列番号9)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域が18C5の3つのAbM軽鎖CDR(配列番号11、配列番号13および配列番号15)を含む。いくつかの抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域が18C5の3つのContact重鎖CDR(配列番号100~102)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域が18C5の3つのContact軽鎖CDR(配列番号95、配列番号98および配列番号99)を含む。
【0013】
いくつかの抗体は、配列番号85~86のいずれか1つと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するヒト化成熟重鎖可変領域と、配列番号91~92のいずれか1つと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するヒト化成熟軽鎖可変領域とを含む。
【0014】
いくつかの抗体では、以下に挙げる位置の少なくとも1つが、指定のアミノ酸によって占められる、すなわち、H37がVまたはAによって占められ、H45がLまたはQによって占められ、H47がLまたはWによって占められ、H48がLまたはIによって占められ、H49がAまたはGによって占められ、H94がSまたはRによって占められる。いくつかの抗体では、VH領域中のH37位、H45位、H47位、H48位、H49位、およびH94位が、それぞれA、Q、W、I、G、およびRによって占められる。
【0015】
いくつかの抗体では、以下に挙げる位置の少なくとも1つが、指定のアミノ酸によって占められる、すなわち、L2がIまたはVによって占められ、L45がQまたはRによって占められる。いくつかの抗体では、VL領域中のL2位およびL45位が、それぞれVおよびRによって占められる。
【0016】
いくつかの抗体は、配列番号85~86のいずれか1つと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号91~92のいずれか1つと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。いくつかの抗体は、配列番号85~86のいずれか1つと少なくとも98%同一のアミノ酸配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号91~92のいずれか1つと少なくとも98%同一のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。
【0017】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域が配列番号85~86のいずれかのアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域が配列番号91~92のいずれか1つのアミノ酸配列を有する。
【0018】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域が配列番号85のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域が配列番号91のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域が配列番号85のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域が配列番号92のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域が配列番号86のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域が配列番号91のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域が配列番号86のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域が配列番号92のアミノ酸配列を有する。
【0019】
いくつかの抗体では、抗体はインタクト抗体である。いくつかの抗体では、抗体は結合フラグメントである。いくつかのこのような抗体では、結合フラグメントは、一本鎖抗体フラグメント、Fabフラグメント、またはFab’2フラグメントである。
【0020】
いくつかの抗体では、成熟軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合され、成熟重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合される。いくつかのこのような抗体では、重鎖定常領域は、天然のヒト重鎖定常領域よりもFcγ受容体への結合が低下している、天然のヒト重鎖定常領域の変異体型である。いくつかのこのような抗体では、重鎖定常領域はIgG1アイソタイプである。いくつかのこのような抗体では、成熟重鎖可変領域が、配列番号22の配列を有する重鎖定常領域に融合され、かつ/または成熟軽鎖可変領域が配列番号24の配列を有する軽鎖定常領域に融合される。
【0021】
別の態様では、本発明は、上記のいずれかの請求項の第一の抗体と、18C5に結合されるものとは異なるTTRのエピトープを結合する第二の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。いくつかのこのような医薬組成物では、第二の抗体は、9D5、14G8、5A1、6C1、AD7F6、RT24、NI-301.35G11、MFD101、MDF102、MFD103、MFD105、MFD107、MFD108、MFD109、MFD111、MFD114、またはそのキメラ型もしくはヒト化型である。いくつかのこのような医薬組成物では、第二の抗体は、TTRの残基89~97、118~122、115~124、53~63、54~61、36~49、49~61、109~121、30~66、70~127、80~127、90~127、100~127、110~127、または115~127内を結合する抗体である。
【0022】
別の態様では、本発明は、2つの抗原結合領域、すなわち、TTRの101~109内を特異的に結合する第一の抗原結合ドメインと、TTRの別の領域を特異的に結合する第二の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。いくつかのこのような二重特異性抗体では、第二の抗原結合ドメインが、9D5、14G8、5A1、6C1、AD7F6、RT24、NI-301.35G11、MFD101、MDF102、MFD103、MFD105、MFD107、MFD108、MFD109、MFD111、MFD114、またはそのキメラ型もしくはヒト化型に由来する抗原結合ドメインである。いくつかのこのような二重特異性抗体では、第二の抗原結合ドメインが、TTRの残基89~97、118~122、115~124、53~63、54~61、36~49、49~61、109~121、30~66、70~127、80~127、90~127、100~127、110~127、または115~127内を結合する。
【0023】
別の態様では、本発明は、上記のいずれかの新規な抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、上記のいずれかの抗体の重鎖および/または軽鎖をコードする、核酸を提供する。別の態様では、本発明は、このような核酸を含む、組換え発現ベクターを提供する。別の態様では、本発明は、このような組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、抗体をヒト化する方法であって、
(a)ヒトアクセプター抗体を選択することと、
(b)保持されるべきマウス抗体のアミノ酸残基を特定することと、
(c)マウス抗体の重鎖のCDRを含むヒト化重鎖をコードする核酸、およびマウス抗体の軽鎖のCDRを含むヒト化軽鎖をコードする核酸を合成することと、
(d)宿主細胞中で核酸を発現させてヒト化抗体を産生すること
を含み、マウス抗体が、配列番号81のアミノ酸配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号87のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ化(veneered)抗体を作製する方法であって、
(a)細胞が抗体を分泌するように、抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸で形質転換された細胞を培養することと、
(b)細胞培地から抗体を精製すること
を含み、抗体が、ヒト化型、キメラ型、またはベニヤ化(veneered)型の18C5である、方法を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ化(veneered)抗体を産生する細胞系を作製する方法であって、
(a)抗体の重鎖および軽鎖と選択マーカーとをコードするベクターを細胞に導入することと、
(b)ベクターのコピー数が増加した細胞を選択する条件下で細胞を増殖させることと、
(c)選択された細胞から単一の細胞を単離することと、
(d)抗体の産生量に基づき選択した単一の細胞からクローン化した細胞をバンク化すること
を含み、抗体が、ヒト化型、キメラ型、またはベニヤ化(veneered)型の18C5である、方法を提供する。
【0028】
いくつかのこのような方法は、細胞を選択条件下で増殖させることと、24時間で細胞106個当たり少なくとも100mg/Lを天然に発現し分泌する細胞系をスクリーニングすることとをさらに含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有するかこれを発現するリスクのある対象中のトランスサイレチンの凝集を阻害または軽減する方法であって、対象に上記のいずれかの新規な抗体の有効なレジメンを実施し、それにより対象中のトランスサイレチンの凝集を阻害または軽減することを含む、方法を提供する。
【0030】
別の態様では、本発明は、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有するかこれを発現するリスクのある対象中のトランスサイレチン原線維形成を阻害または軽減する方法であって、対象に上記のいずれかの新規な抗体の有効なレジメンを実施し、それにより対象中のトランスサイレチン原線維形成を阻害または軽減することを含む、方法を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有するかこれを発現するリスクのある対象中のトランスサイレチンの沈着物および凝集物を減少させる方法であって、対象に上記のいずれかの新規な抗体の有効なレジメンを実施し、それにより対象中のトランスサイレチン沈着物を減少させることを含む、方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有するかこれを発現するリスクのある対象中のトランスサイレチンアミロイドを除去する方法であって、対象に上記のいずれかの新規な抗体の有効なレジメンを実施し、それにより抗体を受けていないトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有するかこれを発現するリスクがある対象に比して対象からトランスサイレチンアミロイドを除去することを含む、方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、対象のトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを治療する、またはその予防を実施する方法であって、対象に上記のいずれかの新規な抗体の有効なレジメンを実施することを含む、方法を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、対象のトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスの発症を遅らせる方法であって、対象に上記のいずれかの新規な抗体の有効なレジメンを実施することを含む、方法を提供する。
【0035】
いくつかのこのような方法では、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスは、心筋症または心肥大、家族性アミロイド多発性ニューロパチー、中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)、老人性全身性アミロイドーシス、老人性心アミロイドーシス、脊柱管狭窄症、変形性関節症、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、加齢黄斑変性、および靭帯または腱の障害のいずれかから選択される病態に関連する。
【0036】
別の態様では、本発明は、心筋症または心肥大、家族性アミロイドニューロパチー、中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)、老人性全身性アミロイドーシス、老人性心アミロイドーシス、脊柱管狭窄症、変形性関節症、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、加齢黄斑変性、および靭帯または腱の障害のいずれかを有するかこれを発現するリスクがある対象を治療する方法であって、対象に上記のいずれかの新規な抗体の有効なレジメンを実施することを含む、方法を提供する。
【0037】
いくつかのこのような方法では、抗体を、8C5に結合されるものとは異なるTTRのエピトープを結合する第二の抗体と組み合わせて投与する。いくつかのこのような方法では、第二の抗体は、9D5、14G8、5A1、6C1、AD7F6、RT24、NI~301.35G11、MFD101、MDF102、MFD103、MFD105、MFD107、MFD108、MFD109、MFD111、MFD114、またはそのキメラ型もしくはヒト化型である。いくつかのこのような方法では、第二の抗体は、TTRの残基89~97、118~122、115~124、53~63、54~61、36~49、49~61、109~121、30~66、70~127、80~127、90~127、100~127、110~127、または115~127内を結合する。
【0038】
別の態様では、抗体を単独療法として投与する。
【0039】
別の態様では、本発明は、対象中のトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを診断する方法であって、対象由来の生体試料を、有効量の上記のいずれかの新規な抗体と接触させることを含む、方法を提供する。いくつかのこのような方法は、対象由来の生体試料を、18C5に結合されるものとは異なるTTRのエピトープを結合する有効量の第二の抗体と接触させることをさらに含む。いくつかのこのような方法では、第二の抗体は、9D5、14G8、5A1、6C1、8C3、7G7、AD7F6、RT24、NI-301.35G11、MFD101、MDF102、MFD103、MFD105、MFD107、MFD108、MFD109、MFD111、MFD114、またはそのキメラ型もしくはヒト化型である。いくつかのこのような方法では、第二の抗体は、TTRの残基89~97、118~122、115~124、53~63、54~61、36~49、49~61、109~121、30~66、70~127、80~127、90~127、100~127、110~127、または115~127内を結合する。
【0040】
いくつかのこのような方法は、トランスサイレチンへの抗体の結合を検出することをさらに含み、結合した抗体の存在が、対象がトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有することを示す。
【0041】
いくつかのこのような方法は、生体試料への抗体の結合を、対照試料への抗体の結合と比較することをさらに含み、対照試料に比べ生体試料への抗体の結合が増大していることが、対象がトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有することを示す。
【0042】
いくつかのこのような方法では、生体試料と対照試料は、同じ組織起源の細胞を含む。いくつかのこのような方法では、生体試料および/または対照試料は、血液、血清、血漿、または固形組織である。いくつかのこのような方法では、固形組織は、心臓、末梢神経系、自律神経系、腎臓、眼球、腹部脂肪、または消化管に由来する。
【0043】
いくつかのこのような方法では、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスは、家族性トランスサイレチンアミロイドーシスまたは孤発性トランスサイレチンアミロイドーシスである。いくつかのこのような方法では、家族性トランスサイレチンアミロイドーシスは、家族性アミロイド心筋症(FAC)、家族性アミロイドニューロパチー(FAP)、または中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)である。いくつかのこのような方法では、孤発性トランスサイレチンアミロイドーシスは、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)または老人性心アミロイドーシス(SCA)である。
【0044】
いくつかのこのような方法では、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスは、対象の心臓、末梢神経系、自律神経系、腎臓、眼球、腹部脂肪、または消化管へのアミロイド蓄積に関連する。
【0045】
別の態様では、本発明は、対象中のトランスサイレチン沈着物の有無を検出する方法であって、アミロイド蓄積を有することが疑われる対象由来の生体試料を、有効量の上記のいずれかの新規な抗体と接触させることを含む、方法を提供する。
【0046】
いくつかのこのような方法は、トランスサイレチンへの抗体の結合を検出することをさらに含み、結合した抗体の検出が、トランスサイレチン沈着物の存在を示す。
【0047】
いくつかのこのような方法は、生体試料への抗体の結合を、対照試料への抗体の結合と比較することをさらに含み、対照試料に比べ生体試料への抗体の結合が増大していることが、対象がトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを有することを示す。
【0048】
いくつかのこのような方法では、生体試料と対照試料は、同じ組織起源の細胞を含む。いくつかのこのような方法では、生体試料および/または対照試料は、血液、血清、血漿、または固形組織である。いくつかのこのような方法では、固形組織は、心臓、末梢神経系、自律神経系、腎臓、眼球、腹部脂肪、または消化管に由来する。
【0049】
別の態様では、本発明は、対象中のトランスサイレチン沈着物のレベルを決定する方法であって、上記のいずれかの新規な抗体を投与すること、および対象中の結合した抗体の存在を検出することを含む。いくつかのこのような方法では、結合した抗体の存在を陽電子放射断層撮影法(PET)によって決定する。
【0050】
別の態様では、本発明は、対象においてトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを治療する、またはその予防を実施する方法であって、TTR四量体安定化剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療剤、RNA干渉(RNAi)ベースの治療剤、またはドキシサイクリン+タウロウルソデオキシコール酸の有効なレジメンを実施することを含み、対象が既に上記のいずれかの新規な抗体による治療を受けている、方法を提供する。いくつかのこのような方法では、対象はもはや抗体による治療を受けない。いくつかのこのような方法では、TTR四量体安定化剤はタファミジスまたはジフルニサルである。いくつかのこのような方法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療剤はイノテルセンである。いくつかのこのような方法では、RNAiベースの治療剤はパチシランまたはレブシランである。
【0051】
いくつかの方法では、抗体をTTR四量体安定化剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療剤、RNA干渉(RNAi)ベースの治療剤、またはドキシサイクリン+タウロウルソデオキシコール酸と組み合わせて投与する。いくつかのこのような方法では、TTR四量体安定化剤はタファミジスまたはジフルニサルである。いくつかのこのような方法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療剤はイノテルセンである。いくつかのこのような方法では、RNAiベースの治療剤はパチシランまたはレブシランである。
【0052】
いくつかの方法では、抗体をTTR四量体安定化剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療剤、RNA干渉(RNAi)ベースの治療剤、またはドキシサイクリン+タウロウルソデオキシコール酸と同時に投与する。いくつかのこのような方法では、TTR四量体安定化剤はタファミジスまたはジフルニサルである。いくつかのこのような方法では、TTR四量体安定化剤はジフルニサルである。いくつかのこのような方法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療剤はイノテルセンである。いくつかのこのような方法では、RNAiベースの治療剤はパチシランまたはレブシランである。
【0053】
別の態様では、本発明は、TTRの残基101~109内のエピトープに結合する抗体を特定する方法であって、(a)動物をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作することと;(b)誘導された抗体をスクリーニングして、TTRの残基101~109内を結合する抗体を特定することとを含む、方法を提供する。いくつかの方法では、免疫感作を、TTRの残基101~109内の少なくとも3個の連続する残基を含むTTRの最大25個の連続する残基からなるフラグメントで実施する。いくつかの方法では、フラグメントは、任意選択で担体に連結された、TTRの残基101~109からなる。いくつかの方法では、スクリーニングを、TTRの残基101~109からなるTTRのフラグメントへの抗体の結合を決定することによって実施する。
【0054】
別の態様では、本発明は、TTRの残基101~109内のエピトープに結合する抗体を特定する方法であって、抗体のディスプレイライブラリーを準備することと;ディスプレイライブラリーをスクリーニングして、TTRの残基101~109内を結合する抗体を特定することとを含む、方法を提供する。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーは、抗体をFvフラグメントとして提示する。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーは未刺激のディスプレイライブラリーである。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーを、げっ歯類をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作すること、および抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸をディスプレイベクター中にクローン化することによって作製する。いくつかの方法では、スクリーニングを、残基101~109からなるTTRのフラグメントへのライブラリーのメンバーの結合を決定することにより実施する。いくつかの方法では、スクリーニングを、TTRの残基101~109内のエピトープに結合する参照抗体の存在下でTTRへのライブラリーのメンバーの結合を決定することにより実施する。いくつかの方法では、参照抗体は18C5である。
【0055】
別の態様では、本発明は、TTRとの結合に関して抗体18C5と結合について競合する抗体を特定する方法であって、TTRを抗体18C5の存在下および不在下で抗体と接触させることと、TTRへの抗体の結合を決定することを含み、抗体18C5の存在下で結合が減少することが、抗体がTTRとの結合に関して抗体18C5と競合することを示す、方法を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、TTR上の抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定する方法であって、(a)TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを決定することと;(b)動物をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作することと;(c)誘導された抗体をスクリーニングして、抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定することとを含む、方法を提供する。いくつかの方法では、TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを、TTRの変異誘発により決定する。いくつかの方法では、TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを、X線結晶構造解析により決定する。
【0057】
別の態様では、本発明は、TTR上の抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定する方法であって、(a)TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを決定することと;(b)抗体のディスプレイライブラリーを準備することと;(c)ディスプレイライブラリーをスクリーニングして、抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定することとを含む、方法を提供する。いくつかの方法では、TTR上の抗体18C5が結合するエピトープを、TTRの変異誘発により決定する。いくつかの方法では、TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを、X線結晶構造解析により決定する。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーは、抗体をFvフラグメントとして提示する。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーは未刺激のディスプレイライブラリーである。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーを、げっ歯類をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作すること、および抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸をディスプレイベクター中にクローン化することによって作製する。いくつかの方法では、スクリーニングを、残基101~109からなるTTRのフラグメントへのライブラリーのメンバーの結合を決定することにより実施する。いくつかの方法では、スクリーニングを、TTRの残基101~109内のエピトープに結合する参照抗体の存在下でTTRへのライブラリーのメンバーの結合を決定することにより実施する。いくつかの方法では、参照抗体は18C5である。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーの各メンバーが、同じ軽鎖可変領域および異なる重鎖可変領域を提示する。いくつかの方法では、軽鎖可変領域は抗体18C5の軽鎖可変領域である。いくつかの方法では、重鎖可変領域を、再編成されたヒト重鎖可変領域のライブラリーから得る。いくつかの方法では、ディスプレイライブラリーの各メンバーが、同じ重鎖可変領域および異なる軽鎖可変領域を提示する。いくつかの方法では、重鎖可変領域は抗体18C5の重鎖可変領域である。いくつかの方法では、軽鎖可変領域を、再編成されたヒト可変軽鎖領域のライブラリーから得る。
【0058】
別の態様では、本発明は、対象においてトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを治療する、またはその予防を実施する方法であって、抗体18C5が特異的に結合するTTRの最大20個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む免疫原を投与することを含み、ペプチドが単独で、かつ/または異種担体に連結されるとき、対象中のTTRに特異的に結合する抗体の形成を誘導する、方法を提供する。
【0059】
いくつかの方法では、免疫原は、抗体18C5が特異的に結合するエピトープを含む。いくつかの方法では、免疫原は、TTRの残基89~127由来の最大20個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む。いくつかの方法では、免疫原は、TTRの残基100~110由来の最大11個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む。いくつかの方法では、免疫原は、TTRの残基101~109由来の最大9個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む。
【0060】
いくつかの方法では、TTRペプチドエピトープは、TTRの残基89~127由来の4~11個の連続するアミノ酸からなる。いくつかの方法では、TTRペプチドエピトープは、TTRの残基100~110由来の4~11個の連続するアミノ酸からなる。いくつかの方法では、TTRペプチドエピトープは、TTRの残基101~109由来の4~9個の連続するアミノ酸からなる。
【0061】
別の態様では、本発明は、TTRペプチドに対する抗体の誘発を促進する異種担体に連結されたTTRの残基89~127由来の最大20個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む、免疫原を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】ウエスタンブロット実験の結果を示す図であり、この結果は、18C5が変性TTR単量体に対しては反応性が強く、変性二量体に対しては反応性が弱く、天然TTR種に対しては反応性が極めて弱いことを示している。
【
図2】ウエスタンブロット実験の結果を示す図であり、この結果は、市販のTTR抗体には、天然TTRと変性TTRとを識別することが不可能であり、単量体および二量体の天然および変性TTRに対して極めて強い反応性がみられることを示している。
【
図3】マウス18C5抗体(配列番号81)、ヒト生殖系列配列IGHV3-48
*01(配列番号84)、ヒトアクセプター5VZY-VH_huFrwk(Crenefab-VH)(配列番号83)、およびヒト化型の18C5抗体(hu18C5_VH-v1およびhu18C5_VH-v2、それぞれ配列番号84および85)の重鎖可変領域のアライメントを示す図である。マウス18C5重鎖可変領域配列の中で、Kabat/Chothia複合によって定義されるCDRが太字で示されている。
【
図4】マウス18C5抗体(配列番号87)、ヒト生殖系列配列IGKV2-30
*02(配列番号90)、ヒトアクセプター5VZY-VL_huFrwk(Crenefab-VL)(配列番号89)、およびヒト化型の18C5抗体(hu18C5-VL-v1およびhu18C5-VL-v2、それぞれ配列番号91および92)の軽鎖可変領域のアライメントを示す図である。マウス18C5軽鎖可変領域配列の中で、Kabat/Chothia複合によって定義されるCDRが太字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、シグナルペプチドを有するマウス18C5抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0064】
配列番号2は、シグナルペプチドを有するマウス18C5抗体の重鎖可変領域をコードする核酸配列を表す。
【0065】
配列番号3は、シグナルペプチドを有するマウス18C5抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0066】
配列番号4は、シグナルペプチドを有するマウス18C5抗体の軽鎖可変領域をコードする核酸配列を表す。
【0067】
配列番号5は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0068】
配列番号6は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-H1をコードする核酸配列を表す。
【0069】
配列番号7は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0070】
配列番号8は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-H2をコードする核酸配列を表す。
【0071】
配列番号9は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia CDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0072】
配列番号10は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-H3複合をコードする核酸配列を表す。
【0073】
配列番号11は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0074】
配列番号12は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-L1をコードする核酸配列を表す。
【0075】
配列番号13は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0076】
配列番号14は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-L2をコードする核酸配列を表す。
【0077】
配列番号15は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0078】
配列番号16は、マウス18C5抗体のKabat/Chothia複合CDR-L3をコードする核酸配列を表す。
【0079】
配列番号17は、キメラ18C5重鎖定常領域(ヒトIgG1)のアミノ酸配列を表す。
【0080】
配列番号18は、キメラ18C5重鎖定常領域(ヒトIgG1)のアミノ酸配列をコードする核酸配列を表す。
【0081】
配列番号19は、キメラ18C5軽鎖定常領域(ヒトカッパ)のアミノ酸配列を表す。
【0082】
配列番号20は、キメラ18C5軽鎖定常領域(ヒトカッパ)アミノ酸配列をコードする核酸配列を表す。
【0083】
配列番号21は、例示的IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列を表す。
【0084】
配列番号22は、例示的IgG1 G1m3重鎖定常領域のアミノ酸配列を表す。
【0085】
配列番号23は、例示的IgG1 G1m3重鎖定常領域のアミノ酸配列を表す。
【0086】
配列番号24は、N末端アルギニンを有する例示的軽鎖定常領域のアミノ酸配列を表す。
【0087】
配列番号25は、N末端アルギニンのない例示的軽鎖定常領域のアミノ酸配列を表す。
【0088】
配列番号26は、アクセッション番号P02766.1(UniProt)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列を表す。
【0089】
配列番号27は、アクセッション番号AAB35639.1(GenBank)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列を表す。
【0090】
配列番号28は、アクセッション番号AAB35640.1(GenBank)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列を表す。
【0091】
配列番号29は、アクセッション番号およびABI63351.1(GenBank)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列を表す。
【0092】
配列番号30は、ヒトトランスサイレチンの残基101~109のアミノ酸配列を表す。
【0093】
配列番号31は、ヒトトランスサイレチンの残基87~127のアミノ酸配列を表す。
【0094】
配列番号32は、例示的IgG1 G1m3重鎖定常領域をコードする核酸配列を表す。
【0095】
配列番号33は、N末端アルギニンを有する例示的軽鎖定常領域をコードする核酸配列を表す。
【0096】
配列番号34は、N末端アルギニンのない例示的軽鎖定常領域をコードする核酸配列を表す。
【0097】
配列番号35は、重鎖定常領域シグナルペプチドのアミノ酸配列を表す。
【0098】
配列番号36は、重鎖定常領域シグナルペプチドをコードする核酸配列を表す。
【0099】
配列番号37は、軽鎖定常領域シグナルペプチドのアミノ酸配列を表す。
【0100】
配列番号38は、軽鎖定常領域シグナルペプチドをコードする核酸配列を表す。
【0101】
配列番号39は、抗体14G8のKabat CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0102】
配列番号40は、抗体14G8のKabat CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0103】
配列番号41は、抗体14G8のKabat CDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0104】
配列番号42は、抗体14G8のKabat CDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0105】
配列番号43は、抗体14G8のKabat CDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0106】
配列番号44は、抗体14G8のKabat CDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0107】
配列番号45は、抗体5A1のエピトープのアミノ酸配列を表す。
【0108】
配列番号46は、抗体5A1のKabat CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0109】
配列番号47は、抗体5A1のKabat CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0110】
配列番号48は、抗体5AのKabat CDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0111】
配列番号49は、抗体5A1のKabat CDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0112】
配列番号50は、抗体5A1のKabat CDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0113】
配列番号51は、抗体5A1のKabat CDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0114】
配列番号52は、抗体6C1のKabat CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0115】
配列番号53は、抗体6C1のKabat CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0116】
配列番号54は、抗体6C1のKabat CDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0117】
配列番号55は、抗体6C1のKabat CDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0118】
配列番号56は、抗体6C1のKabat CDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0119】
配列番号57は、抗体6C1のKabat CDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0120】
配列番号58は、抗体AD7F6のVH領域のアミノ酸配列を表す。
【0121】
配列番号59は、抗体AD7F6のVL領域のアミノ酸配列を表す。
【0122】
配列番号60は、抗体RT24のCDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0123】
配列番号61は、抗体RT24のCDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0124】
配列番号62は、抗体RT24のCDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0125】
配列番号63は、抗体RT24のCDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0126】
配列番号64は、抗体RT24のCDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0127】
配列番号65は、抗体RT24のCDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0128】
配列番号66は、抗体NI-301.35G11のCDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0129】
配列番号67は、抗体NI-301.35G11のCDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0130】
配列番号68は、抗体NI-301.35G11のCDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0131】
配列番号69は、抗体NI-301.35G11のCDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0132】
配列番号70は、抗体NI-301.35G11のCDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0133】
配列番号71は、抗体NI-301.35G11のCDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0134】
配列番号72は、抗体MFD101、MDF102、MFD103、MFD105のエピトープのアミノ酸配列を表す。
【0135】
配列番号73は、抗体MFD107、MFD108、MFD109、MFD111のエピトープのアミノ酸配列を表す。
【0136】
配列番号74は、抗体MFD114のエピトープのアミノ酸配列を表す。
【0137】
配列番号75は、抗体9D5のKabat CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0138】
配列番号76は、抗体9D5のKabat CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0139】
配列番号77は、抗体9D5のKabat CDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0140】
配列番号78は、抗体9D5のKabat CDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0141】
配列番号79は、抗体9D5のKabat CDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0142】
配列番号80は、抗体9D5のKabat CDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0143】
配列番号81は、マウス18C5抗体の成熟重鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0144】
配列番号82は、マウス抗ピログルタミン酸Aベータ抗体Fab c#17の重鎖可変領域のアミノ酸配列、GenBankアクセッション番号1212215935を表す。
【0145】
配列番号83は、ヒト化クレネズマブFab(CreneFab)PDB:5VZYの重鎖可変領域のアミノ酸配列、GenBankアクセッション番号1229749875を表す。
【0146】
配列番号84は、ヒト生殖系列配列IGHV3-48*01の重鎖可変領域のアミノ酸配列、GenBankアクセッション番号1FN550289.1を表す。
【0147】
配列番号85は、ヒト化18C5抗体hu18C5-VH_1の重鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0148】
配列番号86は、ヒト化18C5抗体hu18C5-VH_2の重鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0149】
配列番号87は、マウス18C5抗体の成熟軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0150】
配列番号88は、マウス抗ピログルタミン酸Aベータ抗体Fab c#17の軽鎖可変領域のアミノ酸配列、GenBankアクセッション番号1212215934を表す。
【0151】
配列番号89は、ヒト化クレネズマブFab(CreneFab)PDB:5VZYの軽鎖可変領域のアミノ酸配列、GenBankアクセッション番号1229749876を表す。
【0152】
配列番号90は、ヒト生殖系列配列IGKV2-30*2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列、GenBankアクセッション番号CAA77315を表す。
【0153】
配列番号91は、ヒト化18C5抗体hu18C5-VH_1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0154】
配列番号92は、ヒト化18C5抗体hu18C5-VL_2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0155】
配列番号93は、マウス18C5抗体のKabat CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0156】
配列番号94は、マウス18C5抗体のChothia CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0157】
配列番号95は、マウス18C5抗体のContact CDR-H1のアミノ酸配列を表す。
【0158】
配列番号96は、マウス18C5抗体のChothia CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0159】
配列番号97は、マウス18C5抗体のAbM CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0160】
配列番号98は、マウス18C5抗体のContact CDR-H2のアミノ酸配列を表す。
【0161】
配列番号99は、マウス18C5抗体のContact CDR-H3のアミノ酸配列を表す。
【0162】
配列番号100は、マウス18C5抗体のContact CDR-L1のアミノ酸配列を表す。
【0163】
配列番号101は、マウス18C5抗体のContact CDR-L2のアミノ酸配列を表す。
【0164】
配列番号102は、マウス18C5抗体のContact CDR-L3のアミノ酸配列を表す。
【0165】
定義
モノクローナル抗体をはじめとする生物学的実体は通常、単離形態で提供される。このことは、抗体をはじめとする生物学的実体が通常、その作製または精製から生じる妨害タンパク質をはじめとする夾雑物に対し純度が少なくとも50重量%であることを意味するが、モノクローナル抗体が、その使用を容易にすることを目的とする過剰の薬学的に許容される担体(1つまたは複数)をはじめとする媒体と組み合わされる可能性を排除するものではない。モノクローナル抗体は場合によっては、作製または精製から生じる妨害タンパク質をはじめとする夾雑物に対し純度が少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%である。多くの場合、単離されたモノクローナル抗体をはじめとする生物学的実体は、その精製後に残っている主要な高分子種である。
【0166】
標的抗原への抗体の特異的な結合とは、親和性が少なくとも106M-1、107M-1、108M-1、109M-1、または1010M-1であることを意味する。特異的結合は、強度が検出可能により高く、少なくとも1つの無関係な標的に対して起こる非特異的結合と区別可能である。特異的結合は、特定の官能基の間の結合形成または特定の空間的嵌合(例えば、鍵-鍵穴型)の結果であり得るが、これに対し非特異的結合は通常、ファンデルワールス力の結果である。特異的結合はしかし、抗体がただ1つの標的のみを結合することを必ずしも意味しない。
【0167】
抗体の基本的な構造単位はサブユニットの四量体である。各四量体にはポリペプチド鎖の同一のペアが2組含まれており、各ペアは1つの「軽鎖」(約25kDa)と1つの「重鎖」(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識を担う約100~110以上のアミノ酸の可変領域が含まれる。この可変領域は最初、切断可能なシグナルペプチドに連結されて発現する。シグナルペプチドを有さない可変領域を成熟可変領域と呼ぶこともある。したがって、例えば、軽鎖成熟可変領域は、軽鎖シグナルペプチドを有さない軽鎖可変領域を意味する。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を定める。
【0168】
軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、それぞれ抗体のアイソタイプIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定める。軽鎖および重鎖内では、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって可変領域と定常領域が連結され、重鎖はまた、約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。全般的には、Fundamental Immunology,Paul,W.編,第2版,Raven Press,N.Y.,1989,第7章(その全体があらゆる目的において参照により組み込まれる)を参照されたい。
【0169】
免疫グロブリンの軽鎖可変領域または重鎖可変領域(本明細書ではそれぞれ「軽鎖可変ドメイン」(「VLドメイン」)または「重鎖可変ドメイン」(「VHドメイン」)とも呼ぶ)は、3つの「相補性決定領域」または「CDR」によって分断される「フレームワーク」領域からなる。「フレームワーク領域」には、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDRを整列させる役割がある。CDRは、主に抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を含む。VLドメインおよびVHドメインはともに、アミノ末端からカルボキシル末端へと、以下のフレームワーク(FR)領域およびCDR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。VLドメインのCDR1、CDR2およびCDR3は、本明細書ではそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3とも呼び、VHドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3は、本明細書ではそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3とも呼ぶ。
【0170】
各VLドメインおよびVHドメインへのアミノ酸の割当ては、従来のCDRの定義に準ずるものである。従来の定義としては、Kabatの定義(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)、Chothiaの定義(ChothiaおよびLesk,J.Mol.Biol.196:901-917,1987;Chothiaら,Nature 342:878-883,1989);CDR-H1がChothia CDRとKabat CDRの複合体であるChothia Kabat CDR複合体;Oxford Molecular社の抗体モデリングソフトウェアで使用されるAbM定義;およびMartinらのContact定義(bioinfo.org.uk/abs)が挙げられる(表1を参照されたい)。Kabatは、広く用いられている慣例的な番号付け(Kabat番号付け)を提供しており、この番号付けでは、異なる重鎖同士または異なる軽鎖同士で対応する残基に同じ番号を割り当てる。抗体が特定のCDRの定義(例えば、Kabat)によるCDRを含むと言う場合、その定義は抗体に存在するCDR残基の最小数を明記する(すなわち、Kabat CDR)。それは、別の従来のCDRの定義には当てはまるが、指定される定義には当てはまらない他の残基を排除するものではない。例えば、Kabatによって定義されるCDRを含む抗体としては、考え得る抗体のなかでもとりわけ、CDRにKabat CDR残基を含み他のCDR残基を含まない抗体および、CDR H1がChothia-Kabat CDR H1複合体であり他のCDRがKabat CDR残基を含み別の定義に基づく追加のCDR残基を含まない抗体が挙げられる。
【0171】
【表1】
*ChothiaによるCDR-H1はH32、H33、またはH34で終わる可能性がある(ループの長さに応じて)。これは、Kabat番号付けスキームでは、余分な残基の挿入を35Aおよび35Bに位置付けるのに対し、Chothia番号付けでは、それを31Aおよび31Bに位置付けることによる。H35AおよびH35B(Kabat番号付け)がともに存在しない場合、Chothia CDR-H1ループはH32で終わる。H35Aのみが存在する場合、それはH33で終わる。H35AおよびH35Bがともに存在する場合、それはH34で終わる。
【0172】
「抗体」という用語は、「インタクト抗体」およびその結合フラグメントを包含する。フラグメントは通常、標的への特異的結合に関して元のインタクト抗体と競合し、分離した重鎖、分離した軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)c、Dab、ナノボディ、およびFvを含む。フラグメントは、組換えDNA技術により、またはインタクト免疫グロブリンの酵素的分離もしくは化学的分離によって作製できる。「抗体」という用語はまた、二重特異性抗体および/またはヒト化抗体も包含する。二重特異性抗体または二機能性抗体とは、2種類の異なる重鎖/軽鎖ペアと2種類の異なる結合部位とを有する人工ハイブリッド抗体である(例えば、SongsivilaiおよびLachmann,Clin.Exp.Immunol.,79:315-321(1990);Kostelnyら,J.Immunol.,148:1547-53(1992)を参照されたい)。いくつかの二重特異性抗体では、2種類の異なる重鎖/軽鎖ペアは、ヒト化18C5重鎖/軽鎖ペアと、18C5が結合するものとは異なるトランスサイレチン上のエピトープに対して特異的な重鎖/軽鎖ペアとを含む。
【0173】
いくつかの二重特異性抗体では、一方の重鎖/軽鎖ペアが、のちにさらに開示する18C5抗体であり、他方の重鎖/軽鎖ペアが、血液脳関門に発現する受容体、例えばインスリン受容体、インスリン様成長因子(IGF)受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体、またはトランスフェリン受容体などと結合する抗体に由来する(Fridenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4771-4775,1991;Fridenら,Science 259:373-377,1993)。このような二重特異性抗体は、受容体介在型トランスサイトーシスによって血液脳関門を通過可能である。血液脳関門受容体に対するその親和性が低下するよう二重特異性抗体を設計することによって、二重特異性抗体の脳での取込みをさらに増大させることができる。受容体に対する親和性を低下させることによって、脳内にさらに広範囲に分布するという結果が得られている(例えば、Atwalら,Sci.Trans.Med.3,84ra43,2011;Yuら,Sci.Trans.Med.3,84ra44,2011を参照されたい)。
【0174】
例示的な二重特異性抗体はまた、(1)各軽鎖および重鎖が短いペプチド結合を介して2つの可変ドメインをタンデムに含む、二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Antibody Engineering,Springer Berlin Heidelberg(2010)のWuら,Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin(DVD-Ig(商標))Molecule);(2)各標的抗原に対して2つの結合部位を有する四価二重特異性抗体をもたらす2つの単一鎖ダイアボディの融合物である、Tandab;(3)多価分子をもたらすscFvとダイアボディの組み合わせである、フレキシボディ(flexibody);(4)Fabに適用すると、異なる1つのFabフラグメントに連結される2つの同一のFabフラグメントからなる三価二重特異性結合タンパク質をもたらす、プロテインキナーゼAでの「二量体化/ドッキングドメイン」を土台とする、いわゆる「ドック・アンド・ロック(dock and lock)」分子;または(5)例えばヒトFc領域の両端に融合される2つのscFvを含む、いわゆるScorpion分子であってよい。二重特異性抗体の調製に有効なプラットフォームの例としては、BiTE(Micromet社)、DART(MacroGenics社)、FcabおよびMab2(F-star社)、Fc操作IgG1(Xencor社)またはDuoBody(Fabアームの交換に基づくもの、Genmab社)が挙げられる。
【0175】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続するアミノ酸または1つまたは複数のタンパク質の三次フィールディングによって並列される非連続のアミノ酸から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープ(直線状エピトープとしても知られる)は通常、変性溶媒に曝露しても保持されるのに対し、三次フォールディングによって形成されるエピトープ(立体構造エピトープとしても知られる)は通常、変性溶媒で処理すると失われる。エピトープは通常、固有の空間的構造の少なくとも3個、より通常には少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的構造を明らかにする方法としては、例えばX線結晶構造解析および2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Methods in Molecular Biology,第66巻,Glenn E.Morris編(1996)のEpitope Mapping Protocolsを参照されたい。エピトープは、例えば、配列番号26の2~5個、3~5個、3~9個、または5~9個の連続するアミノ酸、例えば、配列番号26の成熟領域の残基101~109内の2個以上の連続するアミノ酸を含む連続するアミノ酸からなるエピトープのような直線状であり得る。エピトープはまた、例えば、配列番号26の成熟領域の残基101~109内のアミノ酸の2つ以上の非連続セグメントを含む、立体構造エピトープであり得る。例えば、抗体がトランスサイレチン(TTR)のアミノ酸残基101~109(配列番号26の成熟領域)内のエピトープと結合すると言う場合、その意味は、エピトープが、範囲の外側の境界を定めるものを含み記載されるアミノ酸の範囲内にあるということである。それは必ずしも、その範囲内のあらゆるアミノ酸がエピトープの一部を構成することを意味するわけではない。したがって、例えば、TTRのアミノ酸残基101~109内のエピトープは、配列番号30の直線状のセグメントのなかでもとりわけ、配列番号26のアミノ酸101~109、101~108、102~109、101~107、102~108、103~109、101~106、102~107、103~108、104~109、101~105、102~106、103~107、104~108、105~109、101~104、102~105、103~106、104~107、105~108、106~109、101~103、102~104、103~105、104~106、105~107、106~108、107~109、101~102、102~103、103~104、104~105、105~106、106~107、107~108、または108~109からなるか、立体構造エピトープの場合、配列番号30のアミノ酸の非連続セグメントからなるものであり得る。
【0176】
同じエピトープまたは重複するエピトープを認識する抗体は、標的抗原への結合に関して別の抗体と競合するある抗体の能力を示す単純なイムノアッセイで特定できる。抗体のエピトープもまた、接触残基を特定するためにその抗原と結合した抗体のX線結晶構造解析によって明らかにできる。あるいは、一方の抗体の結合を低下または消失させる抗原中の全てのアミノ酸変異が他方の抗体の結合を低下または消失させる場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低下または消失させるいくつかのアミノ酸変異が他方の抗体の結合を低下または消失させる場合、2つの抗体は重複するエピトープを有する。
【0177】
抗体間の競合は、被験抗体が共通の抗原への参照抗体の結合を阻害するアッセイにより決定される(例えば、Junghansら,Cancer Res.50:1495,1990を参照されたい)。競合結合アッセイで測定して過剰の被験抗体(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍または100倍)が参照抗体の結合を少なくとも50%阻害する場合、被験抗体は参照抗体と競合する。参照抗体の結合を少なくとも75%、90%または99%阻害する被験抗体もある。競合アッセイによって特定される抗体(競合抗体)としては、参照抗体と同じエピトープと結合する抗体、および立体障害を起こす程度に参照抗体が結合するエピトープに近い位置にある近接エピトープと結合する抗体が挙げられる。
【0178】
構造トランスサイレチン(TTR)に関する「天然の」という用語は、正常にフォールドし正しく機能する状態にあるTTRの構造(すなわち、TTR四量体)を指す。TTRは天然にフォールドした形態で四量体であることから、非天然形態のTTRとしては、例えば、ミスフォールドしたTTR四量体、TTR単量体、凝集形態のTTR、および原線維形態のTTRが挙げられる。非天然形態のTTRは、野生型TTRのアミノ酸配列または変異を含む分子を含み得る。
【0179】
TTRに関する「ミスフォールドした」という用語は、TTRポリペプチドの単量体または多量体の二次構造または三次構造を指し、ポリペプチドが、正しく機能する状態にあるそのタンパク質には正常ではない立体構造をとっていることを表す。TTRのミスフォールディングはタンパク質の変異(例えば、欠失、置換、または付加)によって引き起こされ得るが、野生型TTRタンパク質が疾患でミスフォールドすることもあり、特定のエピトープを曝露する。
【0180】
「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、補形剤、または補助剤が製剤の他の成分と適合し、その被投与者に実質的に有害でないことを意味する。
【0181】
「患者」という用語は、予防処置または治療処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を包含する。
【0182】
ある個体は、既知の危険因子(例えば、遺伝学的因子、生化学的因子、家族歴、および環境曝露)であって、その危険因子を有する個体がそれをもたない個体よりも疾患を発症するリスクが統計的に有意に高い危険因子をその対象が少なくとも1つ有する場合、その疾患のリスクが高い。
【0183】
「生体試料」という用語は、生物学的供給源、例えばヒトまたは哺乳動物対象中の、またはそれらの対象から採取できる生物学的材料の試料を指す。このような試料は、器官、細胞小器官、組織、組織切片、体液、末梢血、血漿、血清、細胞、タンパク質およびペプチドなどの分子、ならびにそれらに由来する任意の部分または組合せであり得る。生体試料という用語はまた、試料を処理することによって得られる任意の材料を包含し得る。得られる材料は、細胞またはそれらの子孫を含み得る。生体試料の処理は、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、固定、妨害成分の不活化などの1つまたは複数を含み得る。
【0184】
「対照試料」という用語は、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のトランスサイレチン(TTR)、例えばTTRアミロイド沈着物などを含むと知られていない、または推測されない生体試料を指す。対照試料は、TTRアミロイドーシスまたは具体的に選択した種類のTTRアミロイドーシスに罹患していない個体から得られる。あるいは、対照試料は、TTRアミロイドーシスまたは具体的に選択した種類のTTRアミロイドーシスに罹患している患者から得られる。このような試料は、TTRアミロイドーシスを含むと考えられる生体試料と同時に得ても、または異なる機会に得てもよい。生体試料および対照試料はともに、同じ組織(例えば、TTRアミロイド沈着物と周囲の正常組織の両方を含む組織切片)から得てもよい。好ましくは、対照試料は実質的にまたは完全に、TTRアミロイド沈着物を含まない組織からなり、TTRアミロイド沈着物を含むと考えられる生体試料との比較に用いることができる。好ましくは、対照試料中の組織は、生体試料中の組織と同じ種類(例えば、心臓中の心筋細胞)である。
【0185】
「疾患」という用語は、生理的機能を損なう任意の異常な状態を指す。この用語は広義に使用され、病因の性質に関係なく生理的機能が損なわれる任意の障害、病気、異常、病態、疾病、状態、または症候群を包含する。
【0186】
「症状」という用語は、対象によって知覚される疾患の主観的証拠、例えば歩行異常などを指す。「徴候」は、医師による観察が可能な疾患の客観的証拠を指す。
【0187】
アミノ酸置換を保存的置換または非保存的置換に分類する目的で、アミノ酸を以下のグループに分ける:グループI(疎水性側鎖):met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖配向に影響を及ぼす残基):gly、pro;およびグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は、同じクラスのアミノ酸の間で置換を含む。非保存的置換は、上記のうちの1つクラスのメンバーが別のクラスのメンバーに置き換わるものである。
【0188】
配列同一性のパーセントは、慣習的なKabat番号付けによって最大に整列させた抗体の配列によって求められる。整列後、目的の抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の成熟可変領域全体)を参照抗体の同じ領域と比較する場合、目的の抗体の領域と参照抗体の領域との間の配列同一性のパーセントは、目的の抗体の領域および参照抗体の領域の両方で同じアミノ酸によって占められる位置の数を、この2つの領域の整列された位置の総数で除し、ギャップをカウントせずに、100を乗じてパーセントに変換したものである。
【0189】
1つまたは複数の記載される要素を「含む」組成物または方法は、具体的に記載されていない他の要素を含み得る。例えば、抗体を「含む」組成物は、抗体を単独で、または他の成分と組み合わせて含有し得る。
【0190】
数値の範囲の指定は、その範囲内に含まれる整数またはその範囲を定める整数、およびその範囲内の整数によって定められる全ての部分範囲を含む。
【0191】
「約」という用語は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、記載される数値の測定標準誤差(例えば、SEM)内の数値を包含する。
【0192】
統計的に有意であるとは、p≦0.05を意味する。
【0193】
本発明の抗体は、抗体と同じ適応症に対する別の治療と組み合わせて投与できる、つまり、抗体を投与する期間、例えば抗体の最初の投与の1か月前から始まり、最後の投与から1か月後に終わる期間などの間に少なくとも1回、他の治療を実施する。他の治療は、この期間の間に反復する間隔で実施でき、この間隔は、抗体を投与する間隔と同じであっても、同じでなくてもよい。他の治療は対症療法であり得る。
【0194】
ある治療が疾患の原因、すなわちその病因ではなく、疾患の1つまたは複数の症状にのみ影響を及ぼす場合、それは対症的なものである。
【0195】
単数形の冠詞「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味を表す場合を除き、複数形の指示対象を包含する。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物」は、複数の化合物をその混合物も含んで包含し得る。
【0196】
文脈から明らかでない限り、本明細書に、ある製品または方法がある特定の特徴または特徴の組合せを含むことが開示される場合、本明細書は、選択の可能性として、その特徴または特徴の組合せよりなる、または実質的にそれよりなる製品または方法を開示しているものとして解釈されるべきである。
【0197】
(詳細な説明)
I.概略
本発明は、トランスサイレチン(TTR)の残基101~109と特異的に結合する抗体を提供する。一部の抗体は、天然の四量体形態のTTRよりも単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRのうちのいずれかまたは全てと優先的に結合する。一部の抗体は、天然の四量体形態のTTRよりも単量体形態またはミスフォールド形態のTTRのうちの一方または両方と優先的に結合する。この抗体は、TTRの蓄積またはTTR沈着物の蓄積に関連する疾患または障害(例えば、TTRアミロイドーシス)を治療または予防するために使用できる。この抗体はまた、TTRアミロイドーシスを診断するため、およびTTRの凝集を阻害または軽減するために使用できる。この抗体はまた、諸用途のなかでもとりわけ、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスに対する治療法の薬力学効果を明らかにするのに使用できる。優先的に結合することは、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRのうちのいずれかまたは全てに対する結合定数が、天然の四量体形態のTTRの少なくとも5倍であることを意味する。任意選択で、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRのうちのいずれかまたは全てに対する結合定数は、天然の四量体形態のTTRの少なくとも10倍である。任意選択で、18C5などの抗体には、例えば、天然の四量体形態のTTRに対する特異的結合がみられない。
【0198】
II.標的分子
トランスサイレチン(TTR)は、血清中および脳脊髄液中に存在する127アミノ酸、55kDaの輸送タンパク質であり、主に肝臓で合成される。それはまたプレアルブミン、チロキシン結合プレアルブミン、ATTR、およびTBPAとも呼ばれている。その天然の状態では、TTRは四量体として存在する。ホモ接合体では、四量体は同一の127アミノ酸ベータシートリッチサブユニットを含む。ヘテロ接合体では、TTR四量体は、通常は統計的に組み合わされるバリアントサブユニットおよび/または野生型サブユニットからなる。
【0199】
血液中での確立されたTTRの機能は、ホロ-レチノール結合タンパク質の輸送である。げっ歯類の血液中でTTRはチロキシン(T4)の主要な担体であり、ホロ-レチノール結合タンパク質に用いられるものと直交する結合部位を利用するが、ヒトではこのT4結合部位は事実上空いている。
【0200】
TTRは、様々な凝集構造へのその細胞外でのミスフォールドおよび/または誤会合(アミロイド形成)がアミロイド疾患と呼ばれる変性性疾患を引き起こすと考えられる、少なくとも30種類の異なるヒトタンパク質のうちの1つである。TTRは立体構造変化を受けてアミロイド原性となる。TTR四量体の解離および部分的なアンフォールディングによって、伸長した立体構造の、大部分が非荷電で疎水性のひと続きの残基が露出し、これがほぼ不定形の球状凝集体へと効率的に誤会合し、最終的にはクロスベータシートアミロイド構造へと立体構造変換する。
【0201】
文脈上そうでないことが明らかでない限り、トランスサイレチン(TTR)またはそのフラグメントもしくはドメインへの言及は、アイソフォーム、変異体、および対立遺伝子変異体を含む天然のヒトアミノ酸配列を含む。例示的なTTRポリペプチド配列は、アクセッション番号P02766.1(UniProt)(配列番号26)、AAB35639.1(GenBank)(配列番号27)、AAB35640.1(GenBank)(配列番号28)、およびABI63351.1(GenBank)(配列番号29)で表される。残基はSwiss Prot P02766.1に従って番号付けされ、成熟タンパク質(すなわち、20アミノ酸のシグナル配列を含まない)の最初のアミノ酸を残基1と表す。他の任意のTTRタンパク質では、最大アライメントでP02766.1中の対応する残基に合わせて残基を番号付けする。
【0202】
III.トランスサイレチンアミロイドーシス
トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスは、病原性のミスフォールドTTRおよびTTRからなるアミロイド原線維の細胞外沈着を特徴とする全身障害である。TTRアミロイドーシスは、天然のTTR四量体形態の不安定化(環境条件または遺伝条件による)により一般に引き起こされ、TTRの解離、ミスフォールディング、およびアミロイド原線維への凝集が起こり、これが様々な器官および組織に蓄積し、進行性の機能不全を引き起こす。例えば、AlmeidaおよびSaraiva,FEBS Letters 586:2891-2896(2012);Andoら,Orphanet Journal of Rare Diseases 8:31(2013)を参照されたい。
【0203】
ヒトでは、野生型TTR四量体および変異体サブユニットと野生型サブユニットとからなる混合型四量体の両方が、罹患組織の変性をもたらすアミロイド形成の過程で、解離、ミスフォールド、および凝集し得る。したがって、TTRアミロイドーシスは、TTRにおける変異により生じるまたは変異していないミスフォールドTTRによって生じる病原性のミスフォールドTTRを原因とする疾患を包含する。
【0204】
例えば、野生型ATTRアミロイドーシス(老人性全身性アミロイドーシスまたはSSAとも呼ばれる)および老人性心アミロイドーシス(SCA)は加齢に関連する種類のアミロイドーシスであり、心臓の心筋細胞の外側と内側に野生型TTRアミロイドが沈着することによって起こる。TTRアミロイドーシスはまた、最も頻度の高い形態の遺伝性(家族性)アミロイドーシスでもあり、TTRタンパク質を不安定化する変異を原因とする。TTR遺伝子中の点変異に関連するTTRアミロイドーシスとしては、家族性アミロイドニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、およびまれな中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)が挙げられる。遺伝性(家族性)TTRアミロイドーシスの患者はほぼ例外なくヘテロ接合体であり、このことは、TTR四量体が、一般には統計的に分布する変異体TTRサブユニットおよび/または野生型TTRサブユニットからなることを意味する。遺伝性(家族性)のTTRアミロイドーシスは一般に常染色体優性であり、通常、孤発性の疾患(SSAおよびSCA)よりも早期に発症する。
【0205】
TTRをコードする遺伝子中の変異で、常染色体優性障害のFAPおよびFACに関与すると考えられているものは100を超える。例えば、米国特許出願公開第2014/0056904号;Saraiva,Hum.Mutat.17(6):493-503(2001);DamasおよびSaraiva,J.Struct.Biol.130:290-299;DwuletおよびBenson,Biochem.Biophys.Res.Commun.114:657-662(1983)を参照されたい。これらのアミロイドを生じる変異はTTRの分子全体にわたって分布している。一般に、変異体サブユニットがTTRの四量体構造をより不安定化させるほど、アミロイド疾患の発症がより早くなる。TTRバリアントが病原性となる可能性は一般に、その不安定性と細胞分泌効率とを組み合わせて求められる。TTRバリアントが引き起こす初期の病態は、TTRバリアントが心組織を選択的に破壊することによるものもあれば、TTRバリアントによって末梢神経系および自律神経系が損なわれることによるものもある。TTRアミロイド形成を原因とする組織損傷は、小さい拡散性のTTR凝集体の毒性によるものがほとんどであると思われるが、細胞外アミロイドの蓄積が一因であることもあり、その場合、TTRアミロイドーシスの後期に器官構造がほぼ確実に損なわれる。
【0206】
TTRアミロイドーシスには多数の異なる形態がみられ、表現型に相当な個体差および地域差がある。例えば、TTRアミロイドーシスは進行性の軸索性感覚性自律神経性運動性ニューロパチーとしてみられることがある。TTRアミロイドーシスはまた、浸潤性心筋症としてみられることがある。
【0207】
疾患関連症状が発現する年齢は10代~80代の間で様々であり、集団間で大きなばらつきがみられる。TTRアミロイドーシスが多系統に及ぶことは、その診断の手掛かりの1つとなる。例えば、以下に挙げるものが1つまたは複数みられる場合、TTRアミロイドーシスの診断が考慮される:(1)特に心不全に関わる、神経障害性疾患の家族歴;(2)原因不明の神経因性疼痛または進行性感覚障害;(3)原因が明らかでなく、特に両側性で外科的開放を必要とする手根管症候群;(4)原因不明の消化管運動障害または自律神経機能不全(例えば、勃起不全、起立性低血圧症、神経因性膀胱);(5)高血圧がみられず心室壁肥厚を特徴とする心疾患;(6)原因が不明であり、特に心肥大を伴う高度房室ブロック;および(6)綿花状の硝子体封入体。Andoら,Orphanet Journal of Rare Diseases 8:31(2013)を参照されたい。その他の症状としては、例えば、多発性ニューロパチー、間隔消失、疼痛、下肢脱力、発汗異常、下痢、便秘、体重減少、および尿失禁/尿閉が挙げられる。
【0208】
TTRアミロイドーシスの診断は通常、標的器官の生検を頼りにし、次いで、摘出組織をアミロイド特異的色素であるコンゴー赤で組織学的に染色する。検査結果がアミロイド陽性である場合、次いでTTRに関して免疫組織化学染色および質量分析による同定を実施して、アミロイド形成の原因である前駆体タンパク質が実際にTTRであることを確認する。本明細書に開示される抗体は、TTRアミロイドーシスと非TTRアミロイドーシス、例えば原発性全身性アミロイドーシスとしても知られるアミロイド軽鎖(AL)アミロイドーシスとを鑑別するのに有用である。家族性の疾患では、TTRをコードする遺伝子に変異があることを次いで明らかにしてから診断を下す必要がある。これは、例えば、等電点電気泳動、ポリメラーゼ連鎖反応、またはレーザー分析/液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析によって遂行され得る。例えば、米国特許出願公開第2014/0056904号;RubergおよびBerk,Circulation 126:1286-1300(2012);Andoら,Orphanet Journal of Rare Diseases 8:31(2013)を参照されたい。
【0209】
IV.抗体
A.結合特異性および機能的特性
本発明は、トランスサイレチン(TTR)タンパク質、より具体的には、TTRのアミノ酸残基101~109(配列番号30)内のエピトープと結合する、モノクローナル抗体を提供する。このようなエピトープは、天然のTTR四量体では埋没しており、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRでは露出している。
【0210】
1つのこのような抗体として、18C5ならびにそのキメラ型、ベニヤ化(veneered)型、およびヒト化型がある。この抗体は、TTRのアミノ酸残基101~109(配列番号30)内に特異的に結合する。この抗体はさらに、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRと結合できるが、天然の四量体形態のTTRとは結合できないことを特徴とする。特定のタンパク質またはそのフラグメントと結合する能力は、実施例に記載する例示的アッセイフォーマットを用いて示され得る。18C5と言う場合、文脈上そうでないことが明らかでない限り、マウス型、キメラ型、ベニヤ化(veneered)型またはヒト化型のいずれかを指すものと理解されるべきである。モノクローナル抗体18C5を産生するハイブリドーマ細胞系は、2017年10月31日、バージニア州マナサス20110-2209にあるAmerican Type Culture Collection(ATCC)の特許寄託機関に寄託され、特許寄託番号PTA-124570が割り当てられている。
【0211】
いくつかの抗体は、18C5と称する抗体と同じエピトープまたは重複するエピトープと結合する。18C5の重鎖成熟可変領域および軽鎖成熟変領域の配列はそれぞれ、配列番号1および3と称される。このような結合特異性を有する他の抗体は、マウスをTTRまたは所望のエピトープを含むTTRの一部分(例えば、配列番号30)で免疫し、得られた抗体について単量体TTRまたは配列番号30を含むペプチドと結合するかどうかを、任意選択でマウス18C5の可変領域(IgG1、カッパ)を有する抗体と競合させて、スクリーニングスクリーニングすることによって作製できる。所望のエピトープを含むTTRのフラグメントを、フラグメントに対する抗体応答を誘発しやすくする担体に連結し、かつ/またはそのような応答を誘発しやすくするアジュバントと組み合わせてもよい。このような抗体について、野生型TTR、単量体型TTRまたはそのフラグメント(例えば、配列番号26)への差異的結合を特定の残基の変異体と比較してスクリーニングできる。このような変異体に対するスクリーニングは、より正確に結合特異性を明らかにして、特定の残基の変異誘発によってその結合が阻害されかつ他の例示抗体と同じ機能的特性を有する可能性のある抗体の特定を可能にする。変異は、標的全体でまたはエピトープが存在することがわかっているその区画全体で、1回に1残基またはさらに間隔を空けて実施するアラニン(または既にアラニンが存在する場合はセリンまたはグリシン)による系統的置換であり得る。同じ変異のセットによって2つ抗体の結合が有意に低下すれば、その2つの抗体は同じエピトープを結合する。
【0212】
選択したマウス抗体(例えば、18C5)の結合特異性を有する抗体はまた、ファージディスプレイ方法の変法を用いて作製できる。Winterの国際公開第92/20791号を参照されたい。この方法は、ヒト抗体の作製に特に適している。この方法では、選択したマウス抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のいずれかを出発物質として用いる。例えば、軽鎖可変領域を出発物質として選択する場合、メンバーが同じ軽鎖可変領域(すなわち、マウス出発物質)および異なる重鎖可変領域を提示するファージライブラリーが構築される。重鎖可変領域は、例えば、再編成されたヒト重鎖可変領域のライブラリーから得ることができる。単量体TTRまたはそのフラグメント(例えば、アミノ酸残基101~109)に対して強い特異的結合(例えば、少なくとも108M-1、好ましくは少なくとも109M-1)を示すファージを選択する。このファージから得た重鎖可変領域は、次いでさらなるファージライブラリーを構築するための出発物質となる。このライブラリーでは、各ファージは同じ重鎖可変領域(すなわち、最初のディスプレイライブラリーで特定された領域)および異なる軽鎖可変領域を提示する。軽鎖可変領域は、例えば、再編成したヒト可変軽鎖領域のライブラリーから得ることができる。同じく、単量体TTRまたはそのフラグメント(例えば、アミノ酸残基101~109)に対して強い特異的結合を示すファージを選択する。得られる抗体は通常、マウス出発物質と同じないし類似のエピトープ特異性を有する。
【0213】
18C5などの例示的抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAの変異誘発によって、他の抗体を得ることができる。成熟重鎖可変領域および/もしくは成熟軽鎖可変領域のアミノ酸配列において18C5と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であり、その機能的特性を維持し、かつ/または少数の機能的に重要ではないアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)、欠失、もしくは挿入を有する点で各抗体と異なるモノクローナル抗体も本発明に含まれる。従来の定義(ただし、Kabatが好ましい)によって定義されるCDRを少なくとも1つまたは6つとも有し、18C5の対応するCDRと90%、95%、99%または100%同一であるモノクローナル抗体も含まれる。
【0214】
本発明はまた、完全にまたは実質的に18C5に由来するCDRを一部または全部(例えば、3つ、4つ、5つ、および6つ)有する抗体も提供する。このような抗体は、18C5の重鎖可変領域に完全にもしくは実質的に由来するCDRを2つ、通常は3つとも有する重鎖可変領域および/または18C5の軽鎖可変領域に完全にもしくは実質的に由来するCDRを少なくとも2つ、通常は3つとも有する軽鎖可変領域を含み得る。抗体は重鎖および軽鎖の両方を含み得る。CDRは、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換、挿入、または欠失を含む場合、対応する18C5のCDRに実質的に由来するが、ただし、CDR-H2(Kabatによって定義される場合)は、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換、挿入、または欠失を有し得る。このような抗体は、成熟重鎖可変領域および/もしくは成熟軽鎖可変領域のアミノ酸配列において18C5に少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有し、それらの機能的特性を維持し、かつ/または少数の機能的に重要ではないアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)、欠失、もしくは挿入を有する点で18C5と異なり得る。
【0215】
18C5の重鎖のKabat/Chothia CDR複合体(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)はそれぞれ、配列番号5、7、および9と称され、18C5の軽鎖のKabat/Chothia CDR複合体(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)はそれぞれ、配列番号11、13、および15と称される。
【0216】
表2に、Kabat、Chothia、ChothiaとKabatの複合体(本明細書では「Kabat/Chothia複合体」とも呼ぶ)、AbMおよびContactによって定義される18C5 CDRを示す。
【0217】
【0218】
上記のようなアッセイによって特定されるいくつかの抗体は、実施例をはじめとする箇所に記載されるように、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRに結合できるが、天然の四量体形態のTTRには結合できない。同じように、TTR媒介性アミロイドーシスの組織に対して免疫反応を示すが、健常組織に対しては免疫反応を示さない抗体もある。
【0219】
いくつかの抗体は、動物モデルまたは臨床試験でTTRの凝集を阻害もしくは軽減し、TTR原線維形成を阻害もしくは軽減し、TTR沈着物もしくは凝集したTTRを減少させるか除去し、またはTTRの非毒性立体構造を安定化させ得る。いくつかの抗体は、動物モデルまたは臨床試験で示されるように、TTRアミロイドーシスを治療もしくは予防し得るか、TTRアミロイドーシスの発症を遅らせ得る。TTRアミロイドーシスに対する活性を検討するための例示的動物モデルとしては、Kohnoら,Am.J.Path.150(4):1497-1508(1997);Tengら,Laboratory Investigations 81:385-396(2001);Wakasugiら,Proc.Japan Acad.63B:344-347(1987);Shimadaら,Mol.Biol.Med.6:333-343(1989);Nagataら,J.Biochem.117:169-175(1995);Sousaら,Am.J.Path.161:1935-1948(2002);およびSantosら,Neurobiology of Aging 31:280-289(2010)に記載されているものが挙げられる。
【0220】
動物をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作すること、および誘導された抗体をスクリーニングしてTTRの残基101~109内を結合する抗体を特定することによって、TTRの残基101~109内のエピトープに結合する抗体を特定できる。動物は、例えば、マウス、ウサギ、またはラットなどのげっ歯類であり得る。動物は、トランスジェニック、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を有するよう改変したげっ歯類などであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、TTRの残基101~109内の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個の連続する残基を含むTTRの最大25個の連続する残基からなるフラグメントであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、TTRの残基101~109からなるものであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、担体に連結されて抗体誘導の誘発を促進し得る。抗体が残基101~109からなるTTRのフラグメントに結合するかどうかを決定することによって抗体をスクリーニングできる。任意選択で、完全長TTRへの結合に関して抗体をスクリーニングしてもよい。
【0221】
抗体のディスプレイライブラリーを準備すること、およびディスプレイライブラリーをスクリーニングしてTTRの残基101~109内を結合する抗体を特定することによって、TTRの残基101~109内のエピトープ内に結合する抗体を特定できる。ディスプレイライブラリーは特に、ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、リボソームディスプレイライブラリーであり得る。ディスプレイライブラリーは、例えば、抗体をFvフラグメントまたはFabとして提示し得る。ディスプレイライブラリーは未刺激のディスプレイライブラリーであり得る。ファージディスプレイライブラリーから抗体を単離する方法については、例えば国際公開第2017/207739号に開示されている。あるいは、げっ歯類をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作すること、および抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸をディスプレイベクターにクローン化することによって、ディスプレイライブラリーを作製できる。げっ歯類は、例えば、マウス、ウサギ、またはラットであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、TTRの残基101~109内の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個の連続する残基を含むTTRの最大25個の連続する残基からなるフラグメントであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、TTRの残基101~109からなるものであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、担体に連結されて抗体誘導の誘発を促進し得る。残基101~109からなるTTRのフラグメントへの結合に関してライブラリーのメンバーをスクリーニングできる。任意選択で、完全長TTRへの結合に関してライブラリーのメンバーをスクリーニングしてもよい。TTRの残基101~109内のエピトープに結合する参照抗体の存在下でライブラリーのメンバーをスクリーニングできる。参照抗体は抗体18C5であり得る。
【0222】
抗体18C5の存在下および不在下でTTRを被験抗体と接触させること、およびTTRへの抗体の結合を決定することによって、TTRへの結合に関して抗体18C5と結合について競合する被験抗体を特定できる。抗体18C5の存在下で抗体の結合が減少することは、抗体がTTRへの結合に関して抗体18C5と競合することを示す。上記のものに代えてまたは加えて、被験抗体の存在下でTTRを抗体18C5と接触させることによってアッセイを実施してもよく、この場合、被験抗体の存在下でTTRへの18C5の結合が減少することが競合を示す。
【0223】
TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを決定すること、動物をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作すること、および誘導された抗体をスクリーニングして抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定することによって、TTR上の抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定できる。動物は、例えば、マウス、ウサギ、またはラットなどのげっ歯類であり得る。動物は、トランスジェニック、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を有するよう改変したげっ歯類などであり得る。
【0224】
TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを決定すること、抗体のディスプレイライブラリーを準備すること、およびディスプレイライブラリーをスクリーニングして抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定することによって、TTR上の抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を特定できる。ディスプレイライブラリーは、ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、またはリボソームディスプレイライブラリーであり得る。ディスプレイライブラリーは、例えば、抗体をFvフラグメントまたはFabフラグメントとして提示し得る。ディスプレイライブラリーは未刺激のディスプレイライブラリーであり得る。ファージディスプレイライブラリーから抗体を単離する方法については、例えば国際公開第2017/207739号に開示されている。
【0225】
ファージディスプレイ法によって、選択したマウス抗体(例えば、18C5)の結合特異性を有する抗体を作製してもよい。この方法では、選択したマウス抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を出発物質として使用する。例えば、軽鎖可変領域を出発物質として選択する場合、メンバーが同じ軽鎖可変領域(すなわち、マウス出発物質)および異なる重鎖可変領域を提示するファージライブラリーが構築される。重鎖可変領域は、例えば、再編成されたヒト重鎖可変領域のライブラリーから得ることができる。単量体TTRまたはそのフラグメント(例えば、アミノ酸残基101~109)に対して強い特異的結合(例えば、少なくとも108M-1、好ましくは少なくとも109M-1)を示すファージを選択する。次いで、このファージに由来する重鎖可変領域をさらなるファージライブラリー構築のための出発物質とする。このライブラリーでは、各ファージは同じ重鎖可変領域(すなわち、最初のディスプレイライブラリーから特定された領域)および異なる軽鎖可変領域を提示する。軽鎖可変領域は、例えば、再編成されたヒト可変軽鎖領域のライブラリーから得ることができる。同じく、単量体TTRまたはそのフラグメント(例えば、アミノ酸残基101~109)に対して強い特異的結合を示すファージを選択する。得られる抗体は通常、マウス出発物質と同じ、または類似のエピトープ特異性を有する。
【0226】
げっ歯類をTTRまたはそのフラグメントで免疫感作すること、および抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸をディスプレイベクターにクローン化することによって、TTR上の抗体18C5と同じエピトープに結合する抗体を作製するためのディスプレイライブラリーを作製できる。げっ歯類は、例えば、マウス、ウサギ、またはラットであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、TTRの残基101~109内の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個の連続する残基を含むTTRの最大25個の連続する残基からなるフラグメントであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、TTRの残基101~109からなるものであり得る。免疫感作に使用されるフラグメントは、担体に連結されて抗体誘導の誘発を促進し得る。
【0227】
残基101~109からなるTTRのフラグメントへの結合に関してディスプレイライブラリーのメンバーをスクリーニングできる。任意選択で、完全長TTRへの結合に関してライブラリーのメンバーをスクリーニングしてもよい。TTRの残基101~109内のエピトープに結合する参照抗体の存在下でライブラリーのメンバーをスクリーニングできる。参照抗体は抗体18C5であり得る。
【0228】
TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープは、例えば、野生型、単量体型のTTRまたはそのフラグメントへの18C5の結合を指定の残基の変異体と比較して測定することによって、決定できる。変異は、標的全体にわたって、またはエピトープが存在することがわかっている標的の一区画にわたって、1回1残基、またはそれより広く間隔をあけて、アラニン(アラニンが既に存在する場合、セリンまたはグリシン)での体系的な置換であり得る。2つの抗体は、一方の抗体の結合を減少または消失させる抗原中のアミノ酸変異がいずれも、他方の抗体の結合を減少または消失させるならば、同じエピトープを有する。その抗原に結合した抗体のX線結晶構造解析を実施して接触残基を特定することによって、TTR上の抗体18C5に結合されるエピトープを決定してもよい。2つの抗体は、それらが同じ接触残基を有する場合、同じエピトープを結合する。
【0229】
18C5のものとは異なるTTRエピトープに結合する抗TTR抗体は、そのキメラ型およびヒト化型を含み、本発明の18C5抗体とともに併用療法で、二重特異性抗体で、TTR関連障害を診断および/または治療する方法で、ならびにTTRを検出する方法で有用である。18C5のものとは異なるTTRエピトープに結合するこのような抗TTR抗体は、下の表3の抗体を含み得る。
【0230】
【0231】
B.非ヒト抗体
単量体TTRまたはそのフラグメント(例えば、アミノ酸残基101~109)に対する他の非ヒト抗体、例えば、マウス抗体、モルモット抗体、霊長類抗体、ウサギ抗体またはラット抗体の作製は、例えば、動物をTTRまたはそのフラグメントで免疫することによって遂行できる。HarlowおよびLane,Antibodies,A Laboratory Manual(CSHP NY,1988)(あらゆる目的において参照により組み込まれる)を参照されたい。このような免疫原は、天然源から、ペプチド合成によって、または組換え発現によって得ることができる。任意選択で、融合をはじめとする方法で免疫原を担体タンパク質と複合体形成させて投与してもよい。任意選択で、免疫原をアジュバントとともに投与してもよい。のちに記載する通り、いくつかの種類のアジュバントを用いることができる。実験動物の免疫感作には、フロイント完全アジュバント、次いで不完全アジュバントが好ましい。ポリクローナル抗体の作製には通常、ウサギまたはモルモットを用いる。モノクローナル抗体の作製には通常、マウスを用いる。単量体TTRまたはTTR内のエピトープ(例えば、アミノ酸残基101~109のうちの1つまたは複数のものを含むエピトープ)と特異的に結合する抗体をスクリーニングする。このようなスクリーニングは、単量体TTRバリアント、例えばアミノ酸残基101~109を有するかその残基内に変異を有するTTRバリアントなどの収集物への抗体の結合を決定し、その抗体にどのTTRバリアント抗体が結合するかを決定することによって遂行できる。結合は、例えば、ウエスタンブロット、FACS、またはELISAによって評価できる。
【0232】
C.ヒト化抗体
ヒト化抗体は、遺伝子操作によって非ヒト「ドナー」抗体のCDRをヒト「アクセプター」抗体配列内に移植した抗体である(例えば、Queen,米国特許第5,530,101号および同第5,585,089号;Winter,米国特許第5,225,539号;Carter,米国特許第6,407,213号;Adair,米国特許第5,859,205号;および米国特許第6,881,557号を参照されたい)。アクセプター抗体配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列、そのような配列の複合体、ヒト抗体配列のコンセンサス配列、または生殖系列領域の配列であり得る。したがって、ヒト化抗体は、完全にまたは実質的にドナー抗体に由来するCDRを少なくとも3つ、4つ、5つまたは全部ならびに、存在する場合は、完全にまたは実質的にヒト抗体配列に由来する可変領域フレームワーク配列および定常領域を有する抗体である。同じように、ヒト化重鎖は、完全にまたは実質的にドナー抗体重鎖に由来するCDRを少なくとも1つ、2つ、通常は3つ全部ならびに、存在する場合は、実質的にヒト重鎖可変領域フレームワーク配列および定常領域配列に由来する重鎖可変領域フレームワーク配列および重鎖定常領域を有する。同じように、ヒト化軽鎖は、完全にまたは実質的にドナー抗体軽鎖に由来するCDRを少なくとも1つ、2つ、通常は3つ全部ならびに、存在する場合は、実質的にヒト軽鎖可変領域フレームワーク配列および定常領域配列に由来する軽鎖可変領域フレームワーク配列および軽鎖定常領域を有する。ナノボディおよびdAb以外にも、ヒト化抗体はヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含む。ヒト化抗体のCDRは、各CDR間で対応する残基(任意の従来の定義、好ましくはKabatによって定義されるもの)の少なくとも85%、90%、95%または100%が一致する場合、非ヒト抗体での対応するCDRに実質的に由来する。抗体鎖の可変領域フレームワーク配列または抗体鎖の定常領域は、任意の従来の定義、好ましくはKabatによって定義される対応する残基の少なくとも85%、90%、95%または100%が同一である場合、それぞれヒト可変領域フレームワーク配列またはヒト定常領域に実質的に由来する。2014年の世界保健機関(WHO)国際一般名(INN)によるヒト化抗体の定義でヒト化に分類されるには、抗体は、成熟可変領域にヒト生殖系列抗体配列(すなわち、体細胞超変異のの前)と少なくとも85%の同一性を有するものでなければならない。混合抗体とは、一方の抗体鎖(例えば、重鎖)は閾値を満たすが、他方の鎖(例えば、軽鎖)は閾値を満たさない抗体のことである。ある抗体の鎖がいずれも閾値を満たさない場合、両鎖の可変フレームワーク領域が実質的にヒトであっても、マウス復帰変異がいくつかみられれば、その抗体はキメラに分類される。Jonesら(2016)The INN and outs of antibody nonproprietary names,mAbs 8:1,1-9,DOI:10.1080/19420862.2015.1114320を参照されたい。http://www.who.int/medicines/services/inn/BioRev2014.pdf)から入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる「WHO-INN:International nonproprietary names(INN)for biological and biotechnological substances(a review)」(インターネット)2014も参照されたい。誤解を避けるため、本明細書で使用される「ヒト化」という用語は、2014年のWHO INNによるヒト化抗体の定義に限定されないものとする。本明細書に提供されるヒト化抗体の一部は、一方または両方の成熟可変領域にヒト生殖系列配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、本明細書に提供されるヒト化抗体の一部は、一方または両方の成熟可変領域にヒト生殖系列配列と85%未満の配列同一性を有する。本明細書に提供されるヒト化抗体の成熟重鎖可変領域の一部は、ヒト生殖系列配列と約60%~100%、例えば、約60%~69%、70%~79%、80%~84%、または85%~89%などの範囲内の配列同一性を有する。成熟重鎖可変領域重鎖のうち、2014年のWHO INNによる定義を下回り、例えば、ヒト生殖系列配列と約64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%または82%、83%または84%の配列同一性を有するものもあれば、2014年のWHO INNによる定義を満たし、ヒト生殖系列配列と約85%、86%、87%、88%、89%、またはそれ以上の配列同一性を有するものもある。本明細書に提供されるヒト化抗体の成熟軽鎖可変領域の一部は、ヒト生殖系列配列と約60%~100%、約80%~84%または85%~89%などの範囲内の配列同一性を有する。成熟軽鎖可変領域のうち、2014年のWHO INNによる定義を下回り、例えば、ヒト生殖系列配列と約81%、82%、83%、または84%の配列同一性を有するものもあれば、2014年のWHO INNによる定義を満たし、ヒト生殖系列配列と約85%、86%、87%、88%、89%、またはそれ以上の配列同一性を有するものもある。本明細書に提供され、2014年のWHO INNによる定義で「キメラ」である一部のヒト化抗体は、ヒト生殖系列配列と85%未満の同一性を有する成熟重鎖可変領域と、ヒト生殖系列配列と85%未満の同一性を有する成熟軽鎖可変領域とが対になっている。本明細書に提供される一部のヒト化抗体は、2014年のWHO INNによる定義で「混合」であり、例えば、ヒト生殖系列配列と少なくとも85%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、ヒト生殖系列配列と85%未満の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域とが対になっているか、またはその逆である。本明細書に提供される一部のヒト化抗体は、2014年のWHO INNによる「ヒト化」の定義を満たし、ヒト生殖系列配列と少なくとも85%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、ヒト生殖系列配列と少なくとも85%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域とが対になっている。2014年のWHO INNによる「ヒト化」の定義を満たす例示的18C5抗体としては、配列番号85または配列番号86のアミノ酸配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号91または配列番号92のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域とが対になっている抗体が挙げられる。
【0233】
ヒト化抗体はマウス抗体由来の6つのCDR(好ましくはKabatによって定義されるもの)を全て組み込むことが多いが、マウス抗体由来のCDRが全部に満たない(例えば、CDRが少なくとも3つ、4つまたは5つである)ヒト化抗体を作製することもできる(例えば、Pascalisら,J.Immunol.169:3076,2002;Vajdosら,J.of Mol.Biol.,320:415-428,2002;Iwahashiら,Mol.Immunol.36:1079-1091,1999;Tamuraら,J.Immunol.,164:1432-1441,2000)。
【0234】
いくつかの抗体では、ヒト化抗体での結合を保持するためにCDRの一部、すなわち、SDRと呼ばれる結合に必要なCDR残基のサブセットのみを必要とする。抗原と接触せずSDRにも存在しないCDR残基は、これまでの研究に基づき、分子モデリングおよび/または経験的に、またはGonzalesら,Mol.Immunol.41:863,2004に記載されている通りに、Chothia超可変ループ(Chothia,J.Mol.Biol.196:901,1987)の外側に存在するKabat CDRの領域から識別できる(例えば、CDR H2の残基H60~H65は多くの場合必要とされない)。このようなヒト化抗体では、1つまたは複数のドナーCDR残基が存在しない位置またはドナーCDR全体が除去されている位置で、この位置を占めるアミノ酸は、アクセプター抗体配列での対応する位置(Kabat番号付けによるもの)を占めるアミノ酸であり得る。CDR中に含まれるべきこのようなドナーアミノ酸からアクセプターアミノ酸への置換の数は、相容れない考慮事項のバランスを反映する。このような置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減らし、その結果、潜在的免疫原性を低下させるのに有利である可能性がある。しかし、置換によって親和性が変化する可能性もあり、親和性の大幅な低下は回避するのが好ましい。CDR内の置換の位置および置換するアミノ酸は、経験的に選択することもできる。
【0235】
ヒトアクセプター抗体配列は任意選択で、ヒトアクセプター配列の可変領域フレームワークとドナー抗体鎖の対応する可変領域フレームワークとの間に高い配列同一性(例えば、65~85%の同一性)が得られるよう多数の既知のヒト抗体配列のなかから選択できる。
【0236】
18C5重鎖のアクセプター配列の例が、PDBアクセッションコード5VZYのヒト化クレネズマブFab(CreneFab)VH(配列番号83)である。18C5軽鎖のアクセプター配列の例が、PDBアクセッションコード5VZYのヒト化クレネズマブFab(CreneFab)VL(配列番号89)がある。18C5軽鎖のアクセプター配列のまた別の例が、ヒト生殖系列遺伝子IGKV2-30*02(配列番号90)がある。
【0237】
1つの鎖(軽鎖または重鎖)に2つ以上のヒトアクセプター抗体配列を選択する場合、その鎖にこれらのアクセプターの複合体またはハイブリッドを使用でき、異なるに使用するアミノ酸を使用するいずれかのヒトアクセプター抗体配列から取ることができる。
【0238】
ヒト可変領域フレームワーク残基からの特定のアミノ酸が、CDRの立体構造および/または抗原への結合に及ぼすそれらの予想される影響に基づき、選択され得る。そのような予想される影響の調査は、モデリング、特定の位置でのアミノ酸の特徴の検討、または特定のアミノ酸の置換または変異誘発の影響の経験的な観察による。
【0239】
例えば、あるアミノ酸がマウス可変領域フレームワーク残基と選択したヒト可変領域フレームワーク残基との間で異なっている場合、ヒトフレームワークのアミノ酸をマウス抗体からの同等のフレームワークのアミノ酸で置換可能であり、その場合、そのアミノ酸は、
(1)直接抗原と非共有結合する;
(2)KabatではなくChothiaによって定義されるCDR領域に隣接するか、そのCDR内にある;
(3)別の方法でCDR領域(例えば、CDR領域の約6Å以内にある)、(例えば、相同な既知の免疫グロブリン鎖で明らかになった構造上で軽鎖もしくは重鎖をモデル化することによって同定される)と相互作用する;または
(4)VL-VH界面に関与する残基である
ことが合理的に予想される。
【0240】
本発明は、2種類の例示されるヒト化重鎖成熟可変領域(hu18C5-VH_v1(配列番号85)およびhu18C5-VH_v2(配列番号86))および2種類の例示されるヒト化軽鎖成熟可変領域(hu18C5-VL_v1(配列番号91)およびhu18C5-VL_v2(配列番号92))を含む、ヒト化型のマウス18C5抗体を提供する。
【0241】
一実施形態では、QuikChange部位特異的変異誘発[Wang,W.およびMalcolm,B.A.(1999)BioTechniques 26:680-682)]を用いて複数の変異、欠失、および挿入を導入することが可能な2段階のPCRプロトコルを用いて、ヒト化配列を作製する。
【0242】
Queenの米国特許第5,530,101号によって定義されるクラス(1)~(3)のフレームワーク残基は、カノニカル残基およびバーニア残基と代わりに呼ばれることがある。CDRループの立体構造を規定するのに役立つフレームワーク残基は、カノニカル残基と呼ばれることがある(ChothiaおよびLesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);ThorntonおよびMartin,J.Mol.Biol.263:800-815(1996))。抗原結合ループの立体構造を支え、抗原への抗体の嵌合の微調整に何らかの役割を果たすフレームワーク残基は、バーニア残基と呼ばれることがある(FooteおよびWinter,J.Mol.Biol 224:487-499(1992))。
【0243】
置換の候補となる他のフレームワーク残基は、潜在的なグリコシル化部位を形成する残基である。また別の置換の候補は、ヒト免疫グロブリンのその位置には通常みられないアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の同等の位置からのアミノ酸またはより典型的なヒト免疫グロブリンの同等の位置からのアミノ酸で置換できる。
【0244】
置換の候補となるその他のフレームワーク残基には、グルタミン(Q)に置き換え得るN末端グルタミン酸残基(E)がある。
【0245】
例示的なヒト化抗体には、Hu18C5と称するヒト化型のマウス18C5がある。
【0246】
マウス抗体18C5は、配列番号81および配列番号87をそれぞれ含むアミノ酸配列を有する、成熟重鎖可変領域および成熟軽鎖可変領域を含む。本発明は、2種類の例示されるヒト化成熟重鎖可変領域、すなわち、hu18C5-VH_v1およびhu18C5-VH_v2を提供する。本発明はさらに、2種類の例示されるヒト成熟軽鎖可変領域、すなわち、hu18C5-VL_v1およびhu18C5-VL_v2を提供する。マウス18C5および様々なヒト化抗体の軽鎖可変領域(表6および
図4)および重鎖可変領域(表7および
図3)のアライメントを示す。
【0247】
CDRの立体構造および/または抗原への結合に対する予想される影響、重鎖と軽鎖との間の相互作用を仲介すること、定常領域との相互作用、望ましい翻訳後修飾または望ましくない翻訳後修飾の部位であること、ヒト可変領域配列のその位置には通常みられない残基でありしたがって免疫原となる可能性があること、凝集能を獲得すること、および他の理由などのため、実施例7でさらに明記する以下の18C5の8個の可変領域フレームワーク位置を、2種類の例示されるヒト成熟軽鎖可変領域および2種類の例示されるヒト成熟重鎖可変領域での置換の候補として考慮した:L2(I2V)、L45(Q45R)、H37(V37A)、H45(L45Q)、H47(L47W)、H48(V48I)、H49(A49G)、およびH94(S94R)。
【0248】
別の箇所と同じくここでも、1番目に記載される残基は、Kabat CDRまたはCDR-H1の場合はChothia-Kabat CDR複合体をヒトアクセプターフレームワーク内に移植することによって形成されるヒト化抗体の残基であり、2番目に記載される残基は、そのような残基を置き換えるのに考慮される残基である。したがって、可変領域フレームワーク内では、1番目に記載される残基はヒト残基であり、CDR内では、1番目に記載される残基はマウス残基である。
【0249】
このようなヒト化抗体のCDR領域は、18C5マウスドナー抗体のCDR領域と同一または実質的に同一であり得る。CDR領域は、任意の従来の定義、例えば表1に示される定義などによって定義され得るが、KabatまたはKabat+Chothia複合体によって定義されるのが好ましい。
【0250】
可変領域フレームワークの位置は、特に明記されない限りKabat番号付けに従う。
【0251】
ヒト化18C5での追加の変異として考えられるものは、可変領域フレームワーク中の追加の復帰変異である。ヒト化mAbにおいてCDRと接していないフレームワーク残基の多くは、ドナーマウスmAbまたは他のマウス抗体またはヒト抗体の対応する位置からのアミノ酸の置換を受け入れることができ、多くの潜在的なCDR接触残基もまた置換に適している。CDR内のアミノ酸でさえ、例えば、可変領域フレームワークを供給するのに使用されるヒトアクセプター配列の対応する位置にみられる残基で改変され得る。さらに、代替のヒトアクセプター配列を、例えば重鎖および/または軽鎖に使用できる。異なるアクセプター配列を使用する場合、上で推奨した復帰変異の1つまたは複数は、復帰変異がなくても対応するドナー残基とアクセプター残基が既に同じであることを理由に実施されない。
【0252】
Hu18C5のバリアントの一部の置換または復帰変異(保存的であるかどうかを問わず)は、ヒト化mAbの結合親和性にも力価にも、つまり、単量体TTRと結合するその能力に何ら実質的な影響を及ぼさない(例えば、バリアントヒト化18C5抗体の本発明の実施例に記載されるアッセイのいくつかまたは全部における力価は、マウスのマウス18C5抗体の力価と実質的に同じである、つまり、実験誤差の範囲内にある)。
【0253】
D.キメラ抗体およびベニヤ化(veneered)抗体
本発明はさらに、キメラ型およびベニヤ化(veneered)型の非ヒト抗体、具体的には実施例の18C5抗体を提供する。
【0254】
キメラ抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)の軽鎖および重鎖の成熟可変領域がヒト抗体の軽鎖定常領域および重鎖定常領域と組み合わされた抗体である。このような抗体は、マウス抗体の結合特異性を実質的にまたは完全に保持しており、約3分の2がヒト配列である。一実施形態では、キメラ18C5抗体は、配列番号81の成熟重鎖可変領域アミノ酸配列、配列番号87の成熟軽鎖可変領域アミノ酸配列、配列番号17のヒト重鎖定常領域アミノ酸配列、および配列番号19のヒト軽鎖定常領域アミノ酸配列を有する。
【0255】
ベニヤ化(veneered)抗体はヒト化抗体の一種であり、いくつかの、通常は全部のCDRおよび非ヒト抗体の非ヒト可変領域フレームワーク残基の一部を保持しているが、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープに寄与し得る他の可変領域フレームワーク残基、例えば露出残基(Padlan,Mol.Immunol.28:489,1991)がヒト抗体配列の対応する位置からの残基に置き換わっている。その結果、抗体はCDRが完全にまたは実質的に非ヒト抗体由来であり、非ヒト抗体の可変領域フレームワークが置換によってさらにヒト抗体様にされる。本発明にはベニヤ化(veneered)型の18C5抗体が含まれる。
【0256】
E.ヒト抗体
以下に記載する様々な技術によって、単量体TTRまたはそのフラグメント(例えば、TTRのアミノ酸残基101~109(配列番号30))に対するヒト抗体が得られる。いくつかのヒト抗体は、特定のマウス抗体、例えば実施例に記載されるマウスモノクローナル抗体の1つなどと同じエピトープ特異性を有するように、上記の競合結合実験により、Winterのファージディスプレイ法により選択される。ヒト抗体はまた、TTRのフラグメント、例えばTTRのアミノ酸残基101~109のみを含むTTRバリアントなどのみを標的抗原として使用することによって、および/またはTTRバリアントの収集物、例えばTTRのアミノ酸残基101~109内に様々な変異を有するTTRバリアントなどに対する抗体をスクリーニングすることによって、特定のエピトープ特異性に関してスクリーニングされ得る。
【0257】
ヒト抗体を作製する方法としては、Oestbergら,Hybridoma 2:361-367(1983);Oestberg,米国特許第4,634,664号;およびEnglemanら,米国特許第4,634,666号のトリオーマ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニックマウスの使用(例えば、Lonbergら,国際公開第93/12227号(1993);米国特許第5,877,397号;同第5,874,299号;同第5,814,318号;同第5,789,650号;同第5,770,429号;同第5,661,016号;同第5,633,425号;同第5,625,126号;同第5,569,825号;同第5,545,806号;Neuberger,Nat.Biotechnol.14:826(1996);およびKucherlapati,国際公開第91/10741号(1991)を参照されたい)ならびにファージディスプレイ法(例えば、Dowerら,国際公開第91/17271号;McCaffertyら,国際公開第92/01047号;米国特許第5,877,218号;同第5,871,907号;同第5,858,657号;同第5,837,242号;同第5,733,743号;および同第5,565,332号を参照されたい)が挙げられる。
【0258】
F.定常領域の選択
キメラ抗体、ベニヤ化(veneered)抗体またはヒト化抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、ヒト定常領域の少なくとも一部分に連結できる。定常領域の選択は部分的に、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性、抗体依存性細胞食作用および/または補体依存性細胞傷害を所望するかどうかに左右される。例えば、ヒトアイソタイプのIgG1およびIgG3には補体依存性細胞傷害性があり、ヒトアイソタイプのIgG2およびIgG4にはない。ヒトIgG1およびIgG3はまた、ヒトIgG2およびIgG4よりも強力な細胞仲介性エフェクター機能を誘導する。軽鎖定常領域はラムダまたはカッパであり得る。定常領域の番号付けの慣例としては、EU番号付け(Edelman,G.M.ら,Proc.Natl.Acad.USA,63,78-85(1969))、Kabat番号付け(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1991)、IMGT固有番号付け(Lefranc M.-P.ら,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor constant domains and Ig superfamily C-like domains,Dev.Comp.Immunol.,29,185-203(2005)、およびIMGTエクソン番号付け(Lefranc、上記)が挙げられる。
【0259】
軽鎖および/または重鎖のアミノ末端またはカルボキシ末端で1つまたは複数のアミノ酸、例えば重鎖のC末端リジンは、分子の一部または全部で欠損しているか、誘導体化されていてよい。定常領域に置換を施して、補体仲介性細胞傷害性またはADCCなどのエフェクター機能を低下または増大させたり(例えば、Winterら,米国特許第5,624,821号;Tsoら,米国特許第5,834,597号;およびLazarら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:4005,2006を参照されたい)、ヒトでの半減期を長くしたり(例えば、Hintonら,J.Biol.Chem.279:6213,2004を参照されたい)してもよい。例示的な置換としては、抗体の半減期を増大させるための250位のGlnおよび/または428位のLeu(この段落では定常領域にEU番号付けを用いる)が挙げられる。234位、235位、236位および/または237位のいずれかまたは全部での置換は、Fcγ受容体、特にFcγRI受容体に対する親和性を低下させる(例えば、米国特許第6,624,821号を参照されたい)。エフェクター機能を低下させるために、ヒトIgG1の234位、235位、および237位のアラニン置換を用いることができる。いくつかの抗体は、エフェクター機能を低下させるために、ヒトIgG1の234位、235位および237位にアラニン置換を有する。任意選択で、ヒトIgG2の234位、236位および/または237位をアラニンで置換し、235位をグルタミンで置換する(例えば、米国特許第5,624,821号を参照されたい)。いくつかの抗体では、ヒトIgG1のEU番号付けによる241位、264位、265位、270位、296位、297位、322位、329位、および331位の1つまたは複数の位置での変異を用いる。いくつかの抗体では、ヒトIgG1のEU番号付けによる318位、320位、および322位の1つまたは複数の位置での変異を用いる。いくつかの抗体では、234位および/または235位をアラニンで置換し、かつ/または329位をグリシンで置換する。いくつかの抗体では、配列番号27でのように、234位および235位をアラニンで置換する。いくつかの抗体では、アイソタイプはヒトIgG2またはIgG4である。
【0260】
例示的ヒト軽鎖カッパ定常領域は、配列番号24のアミノ酸配列を有する。配列番号24のN末端アルギニンが除去されていてもよく、その場合、軽鎖カッパ定常領域は配列番号25のアミノ酸配列を有する。例示的ヒトIgG1重鎖定常領域は、配列番号21のアミノ酸配列を有する(C末端リジンの有無を問わず)。抗体は、2つの軽鎖と2つの重鎖とが含まれる四量体として、分離した重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvとして、または重鎖と軽鎖の成熟可変ドメインがスペーサーを介して連結される一本鎖抗体として発現させてもよい。
【0261】
ヒト定常領域は個体間でアロタイプ変異およびイソアロタイプ変異を示し、つまり、定常領域は1つまたは複数の多型位置で個体によって異なり得る。イソアロタイプは、イソアロタイプを認識する血清が1つまたは複数の他のアイソタイプの非多型領域と結合するという点でアロタイプとは異なる。したがって、例えば、別の重鎖定常領域はIgG1 G1m3アロタイプのものであり、配列番号22のアミノ酸配列を有する。IgG1 G1m3アロタイプの別の重鎖定常領域は、配列番号23のアミノ酸配列を有する(C末端リジンの有無を問わず)。ヒト定常領域への言及は、任意の天然のアロタイプまたは天然のアロタイプでの位置を占める残基の任意の順列を含む。
【0262】
G.組換え抗体の発現
抗体発現細胞系(例えば、ハイブリドーマ)を用いてキメラ抗体およびヒト化抗体を作製する方法が多数知られている。例えば、周知の方法を用いて抗体の免疫グロブリン可変領域をクローン化し配列を決定できる。1つの方法では、ハイブリドーマ細胞から調製したmRNAを用いるRT-PCRにより重鎖可変VH領域をクローン化する。翻訳開始コドンを含むVH領域リーダーペプチドに対しては、5’プライマーおよびg2b定常領域特異的3’プライマーとしてコンセンサスプライマーを用いる。例示的なプライマーはSchenkによる米国特許公開第2005/0009150号(以下「Schenk」)に記載されている。別個に得た複数のクローンの配列を比較して、増幅の際に変化が導入されないことを確実にできる。VH領域の配列はまた、5’RACE RT-PCR法および3’g2b特異的プライマーによって得られるVHフラグメントの配列のシーケンシングによって、決定または確認することができる。
【0263】
軽鎖可変VL領域は同じようにクローン化できる。1つの方法では、翻訳開始コドンを含むVL領域にハイブリダイズするよう設計した5’プライマーおよびV-J連結領域下流のCk領域に特異的な3’プライマーを用いるVL領域の増幅のために、コンセンサスプライマーセットを設計する。第二の方法では、5’RACE RT-PCR法を用いてVLをコードするcDNAをクローン化する。例示的なプライマーは上記のSchenkに記載されている。次いで、クローン化した配列を、ヒト(またヒト以外の種)の定常領域をコードする配列と組み合わせる。ヒト定常領域をコードする例示的な配列としては、ヒトIgG1定常領域をコードする配列番号32、ならびにヒトカッパ軽鎖定常領域をコードする配列番号33および34が挙げられる。
【0264】
1つの方法では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、それぞれのVDJ連結部またはVJ連結部の下流にスプライスドナー配列をコードするよう再設計し、哺乳動物発現ベクター中に、例えば重鎖はpCMV-hγ1中に、軽鎖はpCMV-Mcl中にクローン化する。これらのベクターは、挿入した可変領域カセットの下流のエキソンフラグメントとしてヒトγ1およびCk定常領域をコードする。配列を検証した後、重鎖および軽鎖の発現ベクターをCHO細胞中に共トランスフェクトしてキメラ抗体を産生させることができる。トランスフェクションから48時間後に馴化培地を収集し、ウエスタンブロット解析により抗体産生に関してアッセイするか、ELISAにより抗原結合に関してアッセイする。キメラ抗体は上記のようにヒト化される。
【0265】
キメラ抗体、ベニヤ化(veneered)抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体は通常、組換え発現によって生産される。組換えポリヌクレオチド構築物は通常、プロモーターなどの天然と結合している発現制御エレメントまたは異種の発現制御エレメントを含む、抗体鎖のコード配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む。発現制御配列は、真核宿主細胞または原核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトできるベクター中のプロモーター系であり得る。ベクターをしかるべき宿主内に組み込んだ後、ヌクレオチド配列の高レベル発現ならびに交差反応抗体の収集および精製に適した条件下で宿主を維持する。
【0266】
上記の発現ベクターは通常、エピソームとしてまたは宿主染色体DNAと一体になった部分として宿主生物体内で複製できる。発現ベクターは通常、所望のDNA配列で形質転換された細胞を検出できるように、選択マーカー、例えばアンピシリン耐性またはヒグロマイシン耐性を含む。
【0267】
大腸菌(E.coli)は、抗体、特に抗体フラグメントの発現に有用な原核宿主の1つである。酵母などの微生物も発現に有用である。サッカロミセス(Saccharomyces)は、所望に応じて発現制御配列、複製起点、終止配列などを有する適切なベクターを持つ酵母宿主の1つである。典型的なプロモーターとしては、3-ホスホグリセリン酸キナーゼをはじめとする糖分解酵素が挙げられる。誘導性の酵母プロモーターとしてはとりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロームC、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用を担う酵素に由来するプロモーターが挙げられる。
【0268】
免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチドの発現に、哺乳動物細胞を用いることができる。Winnacker,From Genes to Clones,(VCH Publishers,NY,1987)を参照されたい。インタクトの異種タンパク質を分泌できる適切な宿主細胞系が多数開発されており、CHO細胞系、様々なCOS細胞系、HeLa細胞、HEK293細胞、L細胞ならびに、Sp2/0およびNS0を含む非抗体産生骨髄腫を含む。細胞は非ヒト細胞であってよい。これらの細胞に用いる発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサーなどの発現制御配列(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))ならびに、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列などの必要なプロセシング情報部位を含み得る。発現制御配列は、内在遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルスなどに由来するプロモーターを含み得る。Coら,J.Immunol.148:1149(1992)を参照されたい。
【0269】
あるいは、抗体コード配列を導入遺伝子に組み込んで、トランスジェニック動物のゲノム内に導入した後トランスジェニック動物の乳の中に発現させてもよい(例えば、米国特許第5,741,957号;米国特許第5,304,489号;および米国特許第5,849,992号を参照されたい)。適切な導入遺伝子としては、カゼインまたはベータラクトグロブリンなどの乳腺特異的遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーと作動可能に連結された、軽鎖および/または重鎖のコード配列が挙げられる。
【0270】
目的とするDNAセグメントを含むベクターは、細胞宿主の種類に応じた方法により宿主細胞に導入できる。例えば、原核細胞には塩化カルシウムトランスフェクションがよく用いられ、他の細胞宿主にはリン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、遺伝子銃、またはウイルスベースのトランスフェクションを用いることができる。哺乳動物細胞の形質転換に用いられる方法としては、ポリブレンの使用、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、およびマイクロインジェクションが挙げられる。トランスジェニック動物の作製には、導入遺伝子をマイクロインジェクションにより受精卵母細胞内に注入するか胚性幹細胞のゲノム内に組み込み、そのような細胞の核を除核卵母細胞内に移入できる。
【0271】
抗体の重鎖および軽鎖をコードするベクター(1つまたは複数)を細胞培養物中に導入した後、細胞プールを無血清培地中で増殖力および産物の品質についてスクリーニングできる。次いで、最も産生量の多い細胞プールをFACSベースの単一細胞クローン化に供して、モノクローナル系を作製できる。培地1L当たり7.5g超に相当する、1日当たり50pg/細胞または100pg/細胞超の具体的な産生量を用いることができる。単一細胞クローンにより産生される抗体を濁度、ろ過特性、PAGE、IEF、UVスキャン、HP-SEC、炭水化物-オリゴ糖マッピング、質量分析ならびに、ELISAまたはBiacoreなどの結合アッセイについて試験できる。次いで、選択したクローンを複数のバイアルに貯蔵しのちの使用のために凍結保存する。
【0272】
発現後、抗体をプロテインA捕捉、HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当該技術分野の標準的方法に従って精製できる(全般的には、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,NY,1982)を参照されたい)。
【0273】
コドン最適化、プロモーターの選択、転写エレメントの選択、ターミネーターの選択、無血清単一細胞クローン化、細胞バンキング、コピー数増幅のための選択マーカーの使用、CHOターミネーター、またはタンパク質力価の向上を含む、抗体の商業的生産の方法論を用いることができる(例えば、米国特許第5,786,464号;同第6,114,148号;同第6,063,598号;同第7,569,339号;国際公開第2004/050884号;同第2008/012142号;同第2008/012142号;同第2005/019442号;同第2008/107388号;同第W02009/027471号;および米国特許第5,888,809号を参照されたい)。
【0274】
IV.活性な免疫源
本発明はまた、対象においてトランスサイレチン介在性のアミロイドーシスを治療する、またはその予防を実施するための方法であって、TTRに対する抗体を含む免疫応答を誘導する薬剤を投与することを含む、方法を提供する。薬剤は、それ自体で、かつ/または担体に連結されるとき、かつ/またはアジュバントの存在下で、抗体を誘導し得る。能動的免疫感作のために使用されるこのような薬剤は、受動免疫に関連して上に記載したものと同じタイプの抗体を患者において誘導する役割を果たす。いくつかのこのような方法は、抗体18C5が特異的に結合するエピトープを含む免疫原を、TTRに対する抗体を生じさせるのに効果的なレジメンで対象に投与することを含む。いくつかの方法では、免疫原は、抗体18C5が特異的に結合するTTRの最大20個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む。いくつかの方法では、免疫原は、TTRの残基89~127由来の最大20個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む。いくつかの方法では、免疫原は、TTRの残基100~110由来の最大11個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む。いくつかの方法では、免疫原は、TTRの残基101~109由来の最大9個の連続するアミノ酸からなるTTRペプチドを含む。いくつかの方法では、TTRペプチドエピトープは、TTRの残基89~127由来の4~11個の連続するアミノ酸からなる。いくつかの方法では、TTRペプチドエピトープは、TTRの残基100~110由来の4~11個の連続するアミノ酸からなる。いくつかの方法では、TTRペプチドエピトープは、TTRの残基101~109由来の4~9個の連続するアミノ酸からなる。免疫原として使用されるいくつかのTTRペプチドは、T細胞エピトープを欠く。このようなペプチドは、異種担体に連結されてT細胞エピトープを補う。
【0275】
18C5と同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する抗体を誘導するために、これらの抗体のエピトープ特異性をマッピングできる(例えば、TTRにわたる一連の重複するペプチドへの結合を試験することによって)。そのエピトープからなる、またはこれを含む、またはこれと重複するTTRのフラグメントを次いで、免疫原として使用できる。
【0276】
任意選択で、TTRペプチドを異種担体に連結し、かつ/またはアジュバントと組み合わせて投与して、抗体の誘発を促進する。異種担体およびアジュバントは、使用される場合、モノクローナル抗体の作製に使用されるのと同じものであってよいが、医薬品としてヒトでの使用にさらに適するよう選択されてもよい。適切な担体としては、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイドまたは他の病原菌、例えばジフテリア(例えば、CRM197)、大腸菌(E.coli)、コレラ菌、もしくはピロリ菌(H.pylori)などに由来するトキソイド、あるいは弱毒化毒素誘導体が挙げられる。T細胞エピトープも適切な担体分子である。免疫刺激性ポリマー分子(例えば、トリパルミトイル-S-グリセリンシステイン(Pam3Cys)、マンナン(マンノースポリマー)、またはグルカン(aβ1→2ポリマー))、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-1アルファおよびβペプチド、IL-2、γ-INF、IL-10、GM-CSF)、ならびにケモカイン(例えば、MIP1-αおよびβ、ならびにRANTES)へ本発明の薬剤を連結することによって、いくつかのコンジュゲートを形成できる。スペーサーアミノ酸(例えば、gly-gly)を用いて、または用いずに免疫原を担体に連結し得る。ほかの担体としては、ウイルス様粒子が挙げられる。偽ビリオンまたはウイルス由来粒子とも呼ばれるウイルス様粒子(VLP)は、in vivoで輪郭が明確な球対称のVLPへと自己集合できるウイルスカプシドおよび/またはエンベロープタンパク質の複数のコピーからなるサブユニット構造を示す(Powilleitら,(2007)PLoS ONE 2(5):e415)。あるいは、ペプチド免疫原を、汎用DRエピトープ(「PADRE」)などの大部分のMHCクラスII分子を結合できる少なくとも1つの人工T細胞エピトープに連結してもよい。PADREは、米国特許第5,736,142号、国際公開第95/07707号、およびAlexander Jら,Immunity,1:751-761(1994)に記載されている。活性な免疫原は、免疫原の複数コピーおよび/またはその担体が単一の共有結合分子として提示される多量体形態で提示できる。
【0277】
フラグメントを多くの場合、薬学的に許容されるアジュバントとともに投与する。アジュバントは、ペプチドが単独で使用された場合と比較して誘導される抗体の力価および/または誘導される抗体の結合親和性を増大させる。様々なアジュバントをTTRの免疫原性フラグメントと組み合わせて使用して、免疫応答を誘発できる。好ましいアジュバントは、応答の質的形態に影響を及ぼす免疫原の立体構造を変化させることなく、免疫原に対する内因性の応答を増強する。好ましいアジュバントとしては、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、3De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL(商標))(英国特許第2220211号(RIBI ImmunoChem Research社、ハミルトン、モンタナ州、現在Corixa社の一部)を参照されたい)が挙げられる。Stimulon(商標)QS-21は、南米にみられるキラヤ(Quillaja saponaria Molina)の木の樹皮から単離されたトリテルペングリコシドまたはサポニンである(see Kensilら,Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(PowellおよびNewman編,Plenum Press,NY,1995);米国特許第5,057,540号を参照されたい)、(Aquila BioPharmaceuticals社、フレーミングハム、マサチューセッツ州;現在Antigenics社、ニューヨーク、ニューヨーク州)。他のアジュバントは、任意選択でモノホスホリルリピドA(Stouteら,N.Engl.J.Med.336,86-91(1997)を参照されたい)、プルロニックポリマーおよび死菌マイコバクテリアなどの免疫刺激剤と組み合わせた、水中油型乳剤(スクアレンまたはラッカセイ油など)免疫刺激剤である。Ribiアジュバントは水中油型乳剤である。Ribiは、Tween 80を含有する生理食塩水で乳化した代謝可能な油(スクアレン)を含む。Ribiはまた、免疫刺激剤として作用する精製マイコバクテリア産物および細菌モノホスホリルリピドAを含む。別のアジュバントはCpG(国際公開第98/40100号)である。アジュバントは、治療用組成物の成分として活性薬剤とともに投与されるか、治療剤の投与とは別に、治療剤の投与前に、治療剤の投与と同時に、または治療剤の投与後に投与されてよい。
【0278】
TTRに対する抗体を誘導するTTRの天然のフラグメントの類似体を使用してもよい。例えば、このようなペプチド中の1つもしくは複数の、またはすべてのLアミノ酸をDアミノ酸で置換できる。アミノ酸の順序を逆にしてもよい(レトロペプチド)。任意選択で、ペプチドは、すべてのDアミノ酸を逆の順序で含む(レトロ-インバースペプチド)。必ずしもTTRペプチドとの顕著なアミノ酸配列類似性を有するわけではないペプチドおよび他の化合物は、それでもTTRペプチドの模倣体としての役割を果たし、同じような免疫応答を誘導する。上記のTTRに対するモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体を使用してもよい。このような抗Id抗体は、抗原を模倣し、それに対する免疫応答を生じる(Essential Immunology,Roit編,Blackwell Scientific Publications,Palo Alto,CA 6th ed.,p.181を参照されたい)。
【0279】
ペプチドをコードする核酸の形態でペプチド(および任意選択で、ペプチドに融合された担体)を投与し、患者においてin situで発現させてもよい。免疫原をコードする核酸セグメントは通常、調節エレメント、例えば患者の目的とする標的細胞でDNAセグメントを発現させるプロモーターおよびエンハンサーなどに連結される。免疫応答の誘導に望ましい血液細胞での発現には、軽鎖もしくは重鎖免疫グロブリン遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーエレメント、またはCMV主要中間初期プロモーターおよびエンハンサーが発現を指令するのに適している。連結された調節エレメントとコード配列を多くの場合、ベクター中にクローン化する。抗体を、抗体の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸の形態で投与してもよい。重鎖および軽鎖がともに存在する場合、鎖を一本鎖抗体として連結するのが好ましい。受動的投与のための抗体を例えば、ペプチド免疫原で処置した患者の血清からアフィニティークロマトグラフィーにより調製してもよい。
【0280】
DNAを、ネイキッド形態で(すなわち、コロイド物質も封入物質も用いずに)送達できる。あるいは、レトロウイルス系(例えば、LawrieおよびTumin,Cur.Opin.Genet.Develop.3,102-109(1993)を参照されたい);アデノウイルスベクター(例えば、Bettら,J.Virol.67,5911(1993)を参照されたい);アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、Zhouら,J.Exp.Med.179,1867(1994)を参照されたい)、ワクシニアウイルスおよびトリポックスウイルスを含むポックス科のウイルスベクター、アルファウイルス属のウイルスベクター、例えば、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス(例えば、Dubenskyら,J.Virol.70,508-519(1996)を参照されたい)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(米国特許第5,643,576号を参照されたい)およびラブドウイルス、例えば水疱性口内炎ウイルス(国際公開第96/34625号を参照されたい)およびパピローマウイルス(Oheら,Human Gene Therapy 6,325-333(1995);Wooら,国際公開第94/12629号ならびにXiaoおよびBrandsma,Nucleic Acids.Res.24,2630-2622(1996))などに由来するものなどを含む多数のウイルスベクター系を使用できる。
【0281】
免疫原をコードするDNAまたは免疫原を含むベクターを、リポソーム中にパッケージングできる。適切な脂質および関連する類似体は、米国特許第5,208,036号、同第5,264,618号、同第5,279,833号および同第5,283,185号によって記載されている。免疫原をコードするベクターおよびDNAを微粒子担体に吸着または結合させてもよく、このような担体の例としては、ポリメチルメタクリラートポリマーおよびポリラクチドおよびポリ(ラクチド-co-グリコリド)が挙げられる(例えば、McGeeら,J.Micro Encap.1996を参照されたい)。
【0282】
H.抗体スクリーニングアッセイ
抗体に結合アッセイ、機能スクリーニング、TTR沈着物による疾患の動物モデルを用いるスクリーニング、および診療試験を含むいくつかのスクリーニングを実施できる。結合アッセイでは、単量体TTRまたはそのフラグメントに対する特異的結合ならびに、任意選択で親和性およびエピトープ特異性を試験する。例えば、結合アッセイによって、天然のTTR四量体では埋没しており単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRでは露出しているエピトープである、アミノ酸残基101~109と結合する抗体をスクリーニングできる。同様にして、このような結合特異性を有する抗体を誘導する能力について活性な免疫原をスクリーニングできる。この場合、活性な免疫原を用いて実験動物を免疫感作し、得られた血清について、結合特異性が適切なものであるかどうかを試験する。抗体はまた、天然のTTRの立体構造ではなく前原線維性の非天然の立体構造のTTRおよびTTRアミロイド原線維を結合する能力についてスクリーニングされる。例えば、抗体は、実施例その他に記載されるように、天然の四量体TTRの解離または脱凝集によって生じる単量体型TTRと結合する能力についてスクリーニングされ、かつ天然の四量体TTRに対してカウンタースクリーニングされる。同じように、抗体はまた、健常組織に対してではなくTTR媒介性アミロイドーシス組織に対するそれらの免疫反応性についてスクリーニングされる。このようなスクリーニングは場合によっては、18C5またはIgG1カッパアイソタイプの可変領域を有する抗体などの例示的抗体と競合して実施する。このようなアッセイでは、任意選択で抗体またはTTR標的を固定化する。
【0283】
機能アッセイは、天然にTTRを発現する細胞またはTTRもしくはそのフラグメントをコードするDNAをトランスフェクトした細胞を含む細胞モデルで実施できる。適切な細胞としては、TTRアミロイド形成が認められる心組織または他の組織に由来する細胞が挙げられる。細胞は、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRのレベル低下について(例えば、細胞の抽出物または上清のウエスタンブロッティングまたは免疫沈降によって)または単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRに起因する毒性低下に関してスクリーニングされる。例えば、抗体は、TTRの凝集を阻害もしくは軽減する能力、TTR原線維形成を阻害もしくは軽減する能力、TTR沈着物を減少させる能力、凝集したTTRを除去する能力、またはTTRの非毒性立体構造を安定化する能力について試験される。
【0284】
その他の機能アッセイを溶液中で実施でき、例えば、溶液中の単量体TTRまたはミスフォールドTTR中間体を抗体と接触させたとき、抗体がTTR原線維形成を妨害または軽減することができるかどうかなどを試験できる。原線維の形成度は、例えば、温度制御ユニットを備えた紫外可視光分光光度計で400nmでの濁度測定によって調べることができる。チオフラビンTもまた、アミロイド原線維の形成度の評価に用いることができる。例えば、5倍モル過剰のチオフラビンTをTTR試料に加え、室温で30分間放置した後、測定を実施できる。チオフラビンTの蛍光は蛍光光度計を用いてモニターできる。米国特許出願公開第2014/0056904号を参照されたい。
【0285】
動物モデルを用いるスクリーニングでは、TTRまたはTTR沈着物の蓄積に関連するヒト疾患を模倣する動物モデルにおける徴候または症状を治療または予防する抗体または活性な免疫原の能力を試験する。このような疾患としては、野生型ATTRアミロイドーシス(老人性全身性アミロイドーシス、SSAとも呼ばれる)、老人性心アミロイドーシス(SCA)、家族性アミロイドニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、および中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)などの各種TTRアミロイドーシスが挙げられる。モニターし得る適切な徴候または症状としては、消化管または心臓などの様々な組織でのアミロイド沈着物の存在および程度が挙げられる。活性な免疫原を血清中での抗体の誘導について試験してもよい。活性な免疫原アミロイド沈着物の減少度は、しかるべき対照、例えば対照抗体(例えば、アイソタイプが一致する対照抗体)もしくは対照免疫原、プラセボを投与した対照動物、または治療を一切実施していない対照動物中のTTRアミロイド沈着物のレベルなどとの比較によって求めることができる。TTRアミロイドーシスに対する活性を試験するための例示的動物モデルは、内在性マウスTtr遺伝子座でのヌル変異と、家族性アミロイド性多発性ニューロパチーと関連するV30M変異を含むヒト変異型TTR遺伝子とを有するマウスモデルである。例えば、Kohnoら,Am.J.Path.150(4):1497-1508(1997);CardosoおよびSaraiva,FASEB J 20(2):234-239(2006)を参照されたい。同様のモデルも存在し、家族性のTTRアミロイドーシスの他のモデルおよび孤発性のTTRアミロイドーシスのモデルがこれに含まれる。例えば、Tengら,Lab.Invest.81(3):385-396(2001);Recent Advances in Transthyretin Evolution,Structure,and Biological Functions,pp.261-280のItoおよびMaeda,Mouse Models of Transthyretin Amyloidosis(2009)(Springer Berlin Heidelberg)を参照されたい。トランスジェニック動物は、ヒトTTR導入遺伝子、例えばTTRアミロイドーシスに関連する変異を有するTTR導入遺伝子または野生型TTR導入遺伝子などを含み得る。動物モデルでの試験を容易にするため、動物モデルに適した定常領域を有するキメラ抗体を使用できる(例えば、ラットでの抗体の試験にはマウス-ラットキメラを使用し得る)。あるヒト化型の抗体は、対応するマウス抗体またはキメラ抗体がしかるべき動物モデルで効果的であり、かつそのヒト化抗体が同程度の結合親和性(例えば、1.5倍、2倍または3倍などの実験誤差の範囲内で)を有する場合、効果的であると結論付けることができる。
【0286】
臨床試験では、TTRアミロイドーシスに関連する疾患を有するヒトを対象に安全性および有効性を試験する。
【0287】
I.核酸
本発明はさらに、上記の重鎖および軽鎖のいずれかをコードする核酸(例えば、配列番号2、4、18および20)を提供する。このような核酸は任意選択で、シグナルペプチドをさらにコードし、定常領域に連結されたシグナルペプチド(例えば、配列番号36(重鎖)および38(軽鎖)によってそれぞれコードされ得る配列番号35(重鎖)および配列番号37(軽鎖)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチド)とともに発現させることができる。コード配列を確実に発現させるため、核酸のコード配列はプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終止シグナルなどの制御配列と作動可能に連結され得る。重鎖および軽鎖をコードする核酸は、分離形態で存在しても、1つまたは複数のベクター中にクローン化されていてもよい。核酸は、例えば固相合成または重複するオリゴヌクレオチドのPCRによって合成できる。重鎖と軽鎖をコードする核酸は、例えば発現ベクター内で、1つの連続する核酸として連結されていてもよく、または例えばそれぞれの発現ベクター中にクローン化されて、分離していてもよい。
【0288】
J.コンジュゲート抗体
病原性形態のTTRでは露出しているが天然の四量体形態のTTRでは露出していない抗原、例えばTTRのアミノ酸残基101~109(配列番号30)と特異的に結合するコンジュゲート抗体は、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、もしくは原線維形態のTTRの有無の検出;TTRアミロイドーシスと診断された患者の治療に使用される治療剤の有効性のモニタリングおよび評価;TTRの凝集の阻害もしくは軽減;TTR原線維形成の阻害もしくは軽減;TTR沈着物の減少もしくは除去;TTRの非毒性立体構造の安定化;または患者のTTRアミロイドーシスの治療もしくは予防に有用である。例えば、このような抗体は別の治療部分、別のタンパク質、別の抗体、および/または検出可能な標識とコンジュゲートできる。国際公開第03/057838号;米国特許第8,455,622号を参照されたい。
【0289】
コンジュゲートされる治療部分は、患者の望ましくない病態または疾患、例えばTTRアミロイドーシスを治療、対処、寛解、予防、または改善するために使用し得る任意の薬剤であり得る。治療部分としては、例えば、抗体の活性を促進または増強する免疫調節物質または任意の生物学的に活性な薬剤が挙げられる。免疫調節物質は、免疫応答の発現または維持を刺激または抑制する任意の薬剤であり得る。このような治療部分を単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRに特異的な抗体、例えば本明細書に記載される抗体にカップリングすると、カップリングされた治療部分は、非天然の病原性形態のTTRに対して天然の四量体形態のTTRを上回る特異的親和性を有するようになる。このため、コンジュゲート抗体の投与は病原性形態のTTRを含む組織を直接標的とし、周囲の正常な健常組織への損傷は最小限である。これは、毒性が強すぎてそのものを投与できない治療部分に関して特に有用である。さらに、より少量の治療部分を使用できる。
【0290】
適切な治療部分の例としては、TTRレベルを低下させる薬物、TTRの天然の四量体構造を安定化させる薬物、TTRの凝集を阻害する薬物、TTR原線維もしくはTTRアミロイドの形成を妨害する薬物、または細胞毒性を打ち消す薬物が挙げられる。例えば、AlmeidaおよびSaraiva,FEBS Letters 586:2891-2896(2012);Saraiva,FEBS Letters 498:201-203(2001);Andoら,Orphanet Journal of Rare Diseases 8:31(2013);Ruberg and Berk,Circulation 126:1286-1300(2012);Johnsonら,J.Mol.Biol.421(2-3):185-203(2012,UedaおよびAndo,Translational Neurodegeneration 3:19(2014)ならびにHawkinsら,Annals of Medicine 47:625-638(2015))を参照されたい。例えば、抗体をタファミジス,ジフルニサル,ALN-TTR01、ALNTTR02、IONIS TTRRx(イノテルセン)などのアンチセンスオリゴヌクレオチド、パチシランもしくはレブシランなどのsiRNA、ドキシサイクリン(doxy)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、Doxy-TUDCA、シクロデキストリン(CyD)、4’-ヨード-4’-デオキシドキソルビシン(IDOX)、エピガロカテキンガラート(EGCG)、クルクミン、レスベラトロール(3,5,4’-トリヒドロキシスチルベン)、または血清アミロイドP成分(SAP)に対する抗体にコンジュゲートできる。他の代表的な治療部分としては、TTRアミロイドーシスまたはTTRアミロイドーシスの症状の治療、管理、または寛解に有用であることが知られている他の薬剤が挙げられる。例えば、よくみられるTTRアミロイドーシスの臨床症状およびその症状の治療に使用される典型的な薬剤については、Andoら,Orphanet Journal of Rare Diseases 8:31(2013)を参照されたい。
【0291】
抗体はまた、他のタンパク質とカップリングできる。例えば、抗体はフィノマーとカップリングできる。フィノマーは、ヒトFyn SH3ドメインに由来する小さい結合タンパク質(例えば、7kDa)である。それらは安定かつ可溶性であり、システイン残基およびジスルフィド結合を欠くこともある。フィノマーは、抗体と同じ親和性および特異性で標的分子と結合するよう設計できる。フィノマーは、抗体をベースとする多特異性融合タンパク質の作製に適している。例えば、フィノマーを抗体のN末端および/またはC末端に融合して、異なる構造を有する二特異性FynomAbおよび三特異性FynomAbを作製できる。最適な特性を有するフィノマーを効率的に選択できるFACS、Biacore、および細胞ベースのアッセイを用いるスクリーニング技術によりフィノマーライブラリーを用いて、フィノマーを選択できる。フィノマーの例は、Grabulovskiら,J.Biol.Chem.282:3196-3204(2007);Bertschingerら,Protein Eng.Des.Sel.20:57-68(2007);Schlatterら,MAbs.4:497-508(2011);Bannerら,Acta.Crystallogr.D.Biol.Crystallogr.69(Pt6):1124-1137(2013);およびBrackら,Mol.Cancer Ther.13:2030-2039(2014)に開示されている。
【0292】
本明細書に開示される抗体はまた、1つまたは複数の他の抗体にカップリングまたはコンジュゲートできる(それにより例えば、抗体ヘテロコンジュゲートを作製する)。そのような他の抗体は、TTRもしくはその一部分の中の異なるエピトープと結合するか、異なる標的抗原と結合できる。18C5のものとは異なるTTRエピトープと結合するこのような抗TTR抗体としては、表3の抗体が挙げられる。
【0293】
抗体はまた、検出可能な標識とカップリングできる。このような抗体は、例えば、TTRアミロイドーシスの診断、TTRアミロイドーシスの進行のモニタリング、および/または治療効果の評価に用いることができる。このような抗体は、TTRアミロイドーシスに罹患しているか罹患しやすい対象中で、またはそのような対象から採取したしかるべき生体試料で上記のような決定を実施するのに特に有用である。本明細書に開示される抗体にカップリングまたは連結し得る代表的な検出可能な標識としては、様々な酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ;ストレプトアビジン、アビジン、またはビオチンなどの補欠分子族;蛍光物質、例えばウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリン;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどの発光物質;放射性物質、例えばイットリウム90(90Y)、放射性銀-111、放射性銀-199、ビスマス213、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(5S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Tin;様々な陽電子放射断層撮影法を用いる陽電子放出金属;非放射性常磁性金属イオン;ならびに放射標識した分子または特定の放射性同位元素にコンジュゲートした分子が挙げられる。本明細書に開示される抗体にカップリングまたは連結し得る代表的な検出可能な標識としては、電気化学発光標識、例えばMSD GOLD SULFO-TAG HS-Ester(SULFO-TAG)(Meso Scale Diagnostics社、ロックビル、メリーランド州)が挙げられる。
【0294】
抗体への放射性同位元素の連結は、従来の二官能性キレートを用いて実施し得る。放射性銀-111および放射性銀-199の連結には、硫黄系リンカーを用い得る。Hazraら,Cell Biophys.24-25:1-7(1994)を参照されたい。銀放射性同位元素の連結は、免疫グロブリンをアスコルビン酸で還元することを含み得る。111Inおよび90Yなどの放射性同位元素には、イブリツモマブチウキセタンを用いることができ、イブリツモマブチウキセタンは上記の同位体と反応して、それぞれ111In-イブリツモマブチウキセタンおよび90Y-イブリツモマブチウキセタンを形成する。Witzig,Cancer Chemother.Pharmacol.,48 Suppl 1:S91-S95(2001)を参照されたい。
【0295】
治療部分、その他のタンパク質、その他の抗体、および/または検出可能な標識は、当該技術分野で公知の技術を用いて、マウス、キメラ、ベニヤ化(veneered)またはヒト化18C5抗体に直接カップリングまたはコンジュゲートしても、介在物(例えば、リンカー)を介して間接的にカップリングまたはコンジュゲートしてもよい。例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(編),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985)のArnonら,「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」;Controlled Drug Delivery(第2版),Robinsonら(編),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987)のHellstromら,「Antibodies For Drug Delivery」;Monoclonal Antibodies 84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(編),pp.475-506(1985)のThorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」;Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(編),pp.303-16(Academic Press 1985)の「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」;およびThorpeら,Immunol.Rev.,62:119-58(1982)を参照されたい。適切なリンカーとしては、例えば、切断可能なリンカーおよび切断可能でないリンカーが挙げられる。酸性または還元性の条件下で、特定のプロテアーゼに曝露したとき、またはその他の定められた条件下で、カップリングした治療部分、タンパク質、抗体、および/または検出可能な標識を放出する様々なリンカーを用いることができる。
【0296】
V.治療応用
上記の抗体は、トランスサイレチン(TTR)により少なくとも部分的に、および特に単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRにより媒介される疾患を有するか、そのような疾患のリスクのある患者における疾患の治療または予防に使用できる。実施にあたって機序を理解する必要はないが、上記の抗体を用いるTTRアミロイドーシスの治療に以下の機序:TTR凝集および原線維形成の抗体介在性阻害、TTRの非毒性立体構造(例えば、テトラマー形態)の抗体介在性安定化、または凝集TTR、オリゴマーTTR、もしくは単量体TTRの抗体介在性除去のいずれかまたは全部が寄与するものと考えられる。抗体-薬物コンジュゲートは、コンジュゲート部分によって決まるさらなる作用機序を有し得る。
【0297】
抗体は有効なレジメン、つまり、発症を遅らせ、重症度を軽減し、さらなる増悪を抑制し、かつ/または治療する障害の少なくとも1つの徴候もしくは症状を寛解する用量、投与経路および投与頻度で、投与される。患者が既に障害に罹患している場合、そのレジメンを治療上有効なレジメンと呼ぶことができる。患者が一般集団よりも障害のリスクが高いが未だ症状を認めない場合、そのレジメンを予防上有効なレジメンと呼ぶことができる。いくつかの場合には、治療有効性または予防有効性が、個々の患者において既存対照または同一患者での過去の経験と比較して観察され得る。別の場合には、治療有効性または予防有効性は、前臨床試験または臨床試験で、治療を実施した患者の集団と未治療患者の対照集団とを比較して明らかにできる。
【0298】
投与頻度は、様々な因子のなかでもとりわけ、循環血中の抗体の半減期、患者の状態および投与経路によって決まる。頻度は、患者の状態または治療する障害の進行度の変化に応じて、連日、週1回、月1回、年4回、または不規則な間隔であり得る。静脈内投与の例示的な頻度は、治療の連続的な原因にわたって週1回~年4回であるが、より多いまたは少ない頻度も可能である。皮下投与では、例示的な投与頻度は連日~月1回であるが、より多いまたは少ない投与頻度も可能である。
【0299】
投与回数は、障害が急性であるのか慢性であるのか、および障害の治療に対する応答によって決まる。急性障害または慢性障害の急性増悪には、多くの場合1~10回で十分である。急性障害または慢性障害の急性増悪には、任意選択で分割形態での、単回ボーラス投与で十分なこともある。急性障害または急性増悪の再発に対して治療を反復し得る。慢性障害には、抗体を少なくとも1年間、5年間または10年間、ないし患者の生涯にわたって定期的な間隔で、例えば週1回、隔週、月1回、年4回、6か月に1回、投与し得る。
【0300】
VI.医薬組成物および使用方法
本明細書では、トランスサイレチン(TTR)により少なくとも部分的に、および特に単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRにより媒介される疾患または病態(例えば、TTRアミロイドーシス)を診断、モニタリング、治療または予防するいくつかの方法が提供される。このような疾患の例としては、家族性アミロイド心筋症(FAC)などの家族性TTRアミロイドーシス、または運動選手もしくは他の過度の有酸素運動を実施している者の心筋症または心肥大、家族性アミロイドニューロパチー(FAP)、または中枢神経系選択性アミロイドーシス(CNSA)、および老人性全身性アミロイドーシス(SSA)または老人性心アミロイドーシス(SCA)などの孤発性TTRアミロイドーシスが挙げられる。TTRアミロイドーシスはまた、組織または器官の変性または外傷を特徴とする様々な疾患および病態の原因または結果と関連し得る。TTR沈着物の蓄積は、疾患または病態に関連する器官または組織の機能不全の一因である。本発明の薬剤および方法による治療または予防が適しているこのような病態の例は、脊柱管狭窄症(Westermarkら,Upsala J.Medical Sciences 119,223-238(2014)およびYanagisawaら.,Modern Pathology 28,201-207(2015))である。同様に治療または予防に適しているまた別の疾患は、変形性関節症(Takanashiら,Amyloid 20,151-155(2013)、Guら,Biomed & Biotechnol.15,92-99;Takinamiら,Biomarker Insights 8,85-95(2014);Akasakiら,Arthritis Rheumatol.67,2097-2107(2015))である。同様に治療または予防に適しているまた別の疾患は、関節リウマチ(Clementら,JCI Insight 1 epublish(2016))である。治療または予防に適しているまた別の疾患は、若年性特発性関節炎(Sharmaら,PLoS One 9,e93905;1-12(2014))である。治療または予防に適しているまた別の疾患は、加齢黄斑変性(滲出型または乾燥型)である。同様に治療または予防に適しているまた別のクラスの病態は、靭帯および腱の障害、例えば回旋筋腱板の障害(Sueyoshiら,Human Pathol.42,1259-64(2011)などである。
【0301】
上記の抗体は、上記のいずれかの疾患および病態の治療または予防で使用する医薬組成物中に組み込まれ得る。一般に、抗体または抗体を含有する医薬組成物が、それを必要とする対象に投与される。治療に適する患者としては、TTRアミロイドーシスのリスクはあるが症状を認めない個体ならびに、現時点で症状を呈する患者が挙げられる。患者によっては、TTRアミロイドーシスの前駆段階の間に治療され得る。
【0302】
医薬組成物は、TTRアミロイドーシスの既知の遺伝的リスクのある個体に予防的に投与できる。このような個体としては、そのような疾患を経験した親類をもつ個体および、本明細書に提供される診断方法の使用を含む遺伝子マーカーまたは生化学マーカー(例えば、TTRアミロイドーシスに関連するTTR中の変異)の分析によってリスクが決定される個体が挙げられる。例えば、TTRをコードする遺伝子中に、TTRアミロイドーシスに関与する100種類を超える変異がある。例えば、米国特許出願公開第2014/0056904号;Saraiva,Hum.Mutat.17(6):493-503(2001);DamasおよびSaraiva,J.Struct.Biol.130:290-299;DwuletおよびBenson,Biochem.Biophys.Res.Commun.114:657-662(1983)を参照されたい。
【0303】
TTRアミロイドーシスに罹患している個体は、(1)特に心不全に関わる、神経障害性疾患の家族歴;(2)原因不明の神経因性疼痛または進行性感覚障害;(3)原因が明らかでなく、特に両側性で外科的開放を必要とする手根管症候群;(4)原因不明の消化管運動障害または自律神経機能不全(例えば、勃起不全、起立性低血圧症、神経因性膀胱);(5)高血圧がみられず心室壁肥厚を特徴とする心疾患;(6)原因が不明であり、特に心肥大を伴う高度房室ブロック;および(6)綿花状の硝子体封入体の1つまたは複数を含むTTRアミロイドーシスの臨床症状から認識されることもある。Andoら,Orphanet Journal of Rare Diseases 8:31(2013)を参照されたい。しかし、TTRアミロイドーシスの確定診断は通常、標的器官の生検を頼りにし、次いで、析出組織をアミロイド特異的色素であるコンゴー赤で組織学的に染色する。検査結果がアミロイド陽性である場合、次いでTTRに関して免疫組織化学染色および質量分析による同定を実施して、アミロイド形成の原因である前駆体タンパク質が実際にTTRであることを確認する。家族性の疾患では、TTRをコードする遺伝子に変異があることを次いで明らかにしてから診断を下す必要がある。
【0304】
対象の特定は、臨床現場で実施しても、あるいはそれ以外の場所で、例えば対象の自宅で、例えば対象自身が自己検査キットを用いて実施してもよい。例えば、末梢性ニューロパチー(感覚性ニューロパチーおよび運動性ニューロパチー)、自律神経性ニューロパチー、胃腸障害、心筋症、腎障害、または眼内沈着などの様々な症状に基づいて対象を特定できる。Andoら,Orphanet Journal of Rare Diseases 8:31(2013)を参照されたい。対象はまた、実施例に開示されるように、対照試料に比して対象からの血漿試料中の非天然形態のTTRのレベルが上昇していることによっても特定できる。
【0305】
家族歴、遺伝子検査、または医学的スクリーニングによってTTRアミロイドーシスが裏付けられると、任意の年齢(例えば、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳または70歳)で治療を開始し得る。治療は通常、一定期間にわたる反復投与を必要とし、治療剤(例えば、アミノ酸残基101~109を含む、短縮形態のTTR)に対する抗体または活性化されたT細胞もしくはB細胞の応答を経時的にアッセイすることによってモニターできる。応答が低下した場合、追加投与が適応される。
【0306】
予防応用では、疾患(例えば、TTRアミロイドーシス)に罹患しやすいか、または疾患のリスクがある対象に、疾患のリスクを軽減する、疾患の重症度を軽減する、または疾患の少なくとも1つの徴候または症状の発現を遅らせるために有効なレジメン(投与の用量、頻度および経路)で、抗体もしくは抗体を誘導する薬剤、またはその医薬組成物を投与する。治療応用では、疾患(例えば、TTRアミロイドーシス)が疑われるか、または既に疾患に罹患している対象に、疾患の少なくとも1つの徴候または症状のさらなる増悪を寛解するか、少なくともそれを抑制するために有効なレジメン(投与の用量、頻度および経路)で、抗体または抗体を誘導する免疫原を投与する。
【0307】
レジメンは、治療を実施した個々の対象が、本明細書に開示される方法による治療を実施していない同等の対象からなる対照集団での平均転帰よりも良好な転帰を達成した場合、あるいはあるレジメンで治療を実施した対象が、対照臨床試験(例えば、第II相、第II/III相または第III相試験)での対照対象または動物モデルよりもp<0.05もしくはp<0.01、場合によってはp<0.001のレベルで良好な転帰を示した場合に、治療上または予防上有効であると見なされる。
【0308】
ある抗体の有効なレジメンは、例えば、TTR蓄積に関わる病態を有するかそのリスクのある対象中のTTR凝集を阻害もしくは軽減する;TTR蓄積に関わる病態を有するかそのリスクのある対象中のTTR原線維形成を阻害もしくは軽減する;TTR蓄積に関わる病態を有するかそのリスクのある対象中のTTR沈着物もしくは凝集TTRを減少もしくは除去する;TTR蓄積に関わる病態を有するかそのリスクのある対象中のTTRの非毒性立体構造を安定化する;TTR蓄積に関わる病態を有するかそのリスクのある対象中のTTR凝集体、原線維もしくは沈着物の毒性作用を阻害する;アミロイド蓄積を有することが疑われる組織中のTTRアミロイド蓄積の有無を診断する;抗体投与後の対象中の結合抗体の有無を検出することにより対象中のTTR沈着物レベルを決定する;対象中の単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、もしくは原線維形態のTTRの存在を検出する;TTRアミロイドーシスと診断された患者を治療するために使用される治療剤の有効性をモニタリングおよび評価する;対象中でTTRに対する抗体を含む免疫応答を誘導する;対象中でTTRアミロイド蓄積に関わる病態の発症を遅延する;または患者中のTTRアミロイドーシスを治療もしくは予防するために使用できる。
【0309】
有効量は、多数の異なる因子、例えば投与手段、標的部位、対象の生理的状態、対象がヒトであるのか動物であるのか、投与する他の薬剤、および治療が予防的であるのか治療的であるのかなどによって異なる。
【0310】
抗体の例示的な用量範囲は、約0.1~20mg/kg体重、もしくは0.5~5mg/kg体重(例えば、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kgまたは5mg/kg)または固定用量として10~1500mgであり得る。用量は、様々な因子のなかでもとりわけ、患者の状態および、もしあれば以前の治療に対する応答、治療が予防的あるのか治療的であるのか、および障害が急性であるのか慢性であるのかによって決まる。
【0311】
抗体は上記の用量で連日、隔日、週1回、隔週、月1回、年4回、または経験的解析によって定められる他の任意の計画に従って投与し得る。例示的な治療は、例えば、少なくとも6か月間の長期間にわたる反復投与を必要とする。追加の例示的な治療レジメンは、2週間に1回、1か月に1回または3~6か月に1回の投与を必要とする。
【0312】
能動的投与のための薬剤の量は、ヒトへの投与で患者当たり0.1~500μg、より通常には、注射1回当たり1~100μgまたは1~10μgの範囲で異なる。用量は、免疫応答の誘発を促進するために連結する担体を含まない免疫感作のための活性薬剤の重量を指す。注射のタイミングは、1日1回~年1回、~10年に1回で大幅に異なり得る。典型的なレジメンは、免疫感作と、それに続く6週間または2か月などの間隔をあけた追加免疫注射を含む。別のレジメンは、免疫感作と、それに続く1か月後、2か月後、および12か月後の追加免疫注射を含む。別のレジメンは、生涯にわたる2か月毎の注射を含む。あるいは、追加免疫注射を、免疫応答のモニタリングによる適応に応じて不定期で実施し得る。
【0313】
抗体または抗体を誘導する薬剤は末梢経路により投与できる。投与経路としては、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内または筋肉内が挙げられる。抗体投与の例示的経路は、静脈内または皮下であり得る。抗体投与の例示的経路は、静脈内または皮下であり得る。能動的免疫感作の例示的経路には、皮下および筋肉内がある。静脈内投与は、例えば30~90分などの時間にわたる注入によるものであり得る。この種の注射は、腕または脚の筋肉で最も典型的に実施される。いくつかの方法では、薬剤を沈着物が蓄積した特定の組織の中に直接注射し、例えば頭蓋内に注射する。
【0314】
非経口投与用の医薬組成物は、無菌で実質的に等張(250~350mOsm/kg水)であり得、GMP条件下で製造できる。医薬組成物は、単位用量形態(すなわち、単回投与のための用量)で提供できる。医薬組成物は、1つまたは複数の生理的に許容される担体、希釈剤、補形剤または補助剤を用いて製剤化できる。製剤は、選択する投与経路によって決まる。注射用に、抗体を水溶液中、例えばハンクス液、リンガー溶液、生理食塩水または酢酸塩緩衝液などの生理的に適合する緩衝液中で製剤化できる(注射部位の不快感を軽減するため)。溶液は、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの製剤用剤を含有し得る。あるいは、抗体は、使用前に適切な媒体、例えば無菌無発熱物質水で構築するための凍結乾燥形態であり得る。
【0315】
レジメンは、治療する疾患の治療または予防に効果のある別の薬剤と組み合わせて、同時に、または逐次的に投与され得る。このような薬剤としては、TTRの発現を阻害するsiRNAまたは四量体形態のTTRの安定化剤であるVyndaqelが挙げられる。このような薬剤としては、タファミジスまたはジフルニサルなどのTTR四量体安定化剤が挙げられる(例えば、国際公開第2011116123号、米国特許第9,150,489号を参照されたい)、TTR発現を抑制する遺伝子治療剤、例えば、IONIS-TTRRx(イノテルセン)などのアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第8,101,743号、同第8,697,860号、同第9,061,044号、および同第9,399,774号;日本特許第5896175号を参照されたい)またはパチシランもしくはレブシランなどのsiRNA(例えば、国際公開第2016033326号を参照されたい)など、アミロイド分解化合物、例えばドキシサイクリン(doxy)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、Doxy-TUDCA、シクロデキストリン(CyD)、4’-ヨード-4’-デオキシドキソルビシン(IDOX)、または血清アミロイドP成分(SAP)に対する抗体が挙げられる。
【0316】
既に本明細書に開示される抗体による治療を実施した対象に、治療する疾患の治療または予防に効果のある別の薬剤を投与し得る。治療する疾患の治療または予防に効果のある別の薬剤による治療を実施した対象に、本明細書に開示される抗体による治療をもう実施しなくてもよい。
【0317】
本明細書に開示される抗体による治療を、治療する障害に対して効果的な他の治療と併用できる。併用治療は、一緒に処方するか、別個に実施できる。併用療法に有用な治療のいくつかの例として、18C5のものとは異なるエピトープと結合する第二の抗TTR抗体、例えば、表3に開示される抗体が挙げられる。
【0318】
治療後に、対象の状態を評価して、そのような治療の進行状況または有効性を決定できる。このような方法は好ましくは、TTRアミロイドのレベルまたは非天然形態のTTRのレベルの変化を検査する。例えば、TTRアミロイドのレベルを評価して、治療前の同等の状況下での対象のTTRアミロイドのレベルに比する改善を決定し得る。対象のTTRアミロイドのレベルもまた同等の状況下の対照集団と比較できる。対照集団は、(様々な対照対象のなかでもとりわけ)同じように罹患した未治療対象または正常な未治療対象であり得る。同じように罹患した未治療対象に比して改善がみられる場合または諸レベルが未治療の正常対象のレベルに近づいているか到達している場合、それは治療に対する正の応答を示す。
【0319】
TTRアミロイドのレベルは、イメージング技術を含む多数の方法によって測定できる。適切なイメージング技術の例としては、放射標識したそのフラグメントのTTR、TTR抗体またはそのフラグメント、コンゴー赤系のアミロイド造影剤、例えばPIB(米国特許出願公開第2011/0008255号)、アミロイドイメージングペプチドp31(Biodistribution of amyloid-imaging peptide,p31,correlates with amyloid quantitation based on Congo red tissue staining,Wallら,Abstract No.1573,2011 ISNM Annual Meeting)など、およびその他のPET標識を用いるPETスキャンが挙げられる。非天然形態のTTRのレベルは、例えば、実施例に記載されるように、対象からの血漿試料または生検試料に本明細書に開示される抗体を用いてSDS-PAGE/ウエスタンブロットまたはMeso Scale Discoveryプレートアッセイを実施し、対照試料と比較することによって測定できる。
【0320】
A.診断およびモニタリングの方法
TTR沈着または病原性形態のTTR(例えば、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態または原線維形態のTTR)に関連する疾患に罹患しているか罹患しやすい患者中でTTRに対する免疫応答を検出する方法も提供される。この方法は、本明細書に提供される薬剤による治療的処置または予防的処置の経過をモニターするのに使用できる。受動免疫後の抗体プロファイルは通常、抗体濃度の直後のピークとそれに続く指数関数的減衰を示す。さらなる投与を実施しなければ、投与した抗体の半減期に応じて数日~数か月以内に減衰が治療前のレベルに近づく。例えば、いくつかのヒト抗体の半減期は20日程度である。
【0321】
いくつかの方法では、投与前に対象中のTTRに対する抗体のベースライン値を測定し、投与直後に2回目の測定を実施して抗体レベルのピーク値を求め、かつ間隔を空けてさらに1回または複数回の測定を実施して抗体レベルの減衰をモニターする。抗体レベルがベースライン値またはピーク値とベースライン値の差の所定の割合(例えば、50%、25%または10%)に低下したとき、追加の用量抗体を投与する。いくつかの方法では、ピーク値またはその後に測定したレベルからバックグラウンドを減じた値を、予め求めた参照レベルと比較して、他の対象に有益な予防処置または治療処置のレジメンを設定する。測定した抗体レベルが参照レベルよりも有意に低い(例えば、治療から利益を得る対象の集団での参照値の平均マイナス1または、好ましくはマイナス2標準偏差よりも低い)場合、追加の用量の抗体の投与が適応される。
【0322】
対象中の単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRを、例えば、対象由来の試料中のTTRアミロイドまたは病原性形態のTTR(例えば、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTR)を測定することによって、または対象中のTTRのin vivoイメージングによって検出する方法も提供される。このような方法は、上記の病原性形態のTTR(例えば、TTRアミロイドーシス)に関連する疾患、またはそれに対する易罹患性の診断または診断の確定に有用である。この方法はまた、無症候性の対象に用いることができる。単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRの存在は、今後症候性の疾患に罹患しやすいことを示す。この方法はまた、既にTTRアミロイドーシスであると診断されている対象における疾患の進行および/または治療に対する応答をモニタリングするのに有用である。
【0323】
TTRアミロイドーシスを有する、有することが疑われる、または有するリスクのある対象から採取した生体試料を、本明細書に開示される抗体と接触させて、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRの存在を評価できる。例えば、上記の対象中の単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRのレベルを健常対象中のものと比較し得る。あるいは、疾患に対する治療を受けている上記の対象中のTTRアミロイドまたは病原性形態のTTR(例えば、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTR)のレベルを、TTRアミロイドーシスに対する治療を実施していない対象のものと比較してもよい。いくつかのこのような検査は、上記の対象から採取した組織の生検を含む。例えば、液体試料中の単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRのレベルを評価するのに、ELISAアッセイを用いることもできる。いくつかのこのようなELISAアッセイは、天然の四量体形態のTTRと比べて単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRを優先的と結合する抗TTR抗体を含む。
【0324】
いくつかのこのような検査にサンドイッチイムノアッセイがある。いくつかのこのようなイムノアッセイは、Meso Scale Discovery(MSD)電気化学発光プラットフォーム(Meso Scale Diagnostics社、ロックビル、メリーランド州)を用いるものである。いくつかのこのようなイムノアッセイは、レポーター抗体上の電気化学発光標識を用いるもの、例えば、MSDアッセイ(Meso Scale Diagnostics社、ロックビル、メリーランド州)である。例えば、レポーター抗体をSULFO-TAG標識((Meso Scale Diagnostics社、ロックビル、メリーランド州)で標識できる。電気化学発光アッセイに有用なプレートは、電極を組み込むものであり得る(例えば、MSDプレート(Meso Scale Diagnostics社、ロックビル、メリーランド州))。電気化学発光アッセイに有用なプレートは、各ウェルの底に電極を組み込むものであり得る(例えば、MSDプレート(Meso Scale Diagnostics社、ロックビル、メリーランド州))。いくつかのアッセイは、標識した捕捉抗体を用いるものである。例えば、標識した捕捉抗体は、18C5、またはそのヒト化バリアント、キメラバリアントもしくはベニヤ化(veneered)バリアントであり得る。いくつかのアッセイは、標識したレポーター抗体を用いるものである。例えば、標識したレポーター抗体は、18C5、またはそのヒト化バリアント、キメラバリアントもしくはベニヤ化(veneered)バリアントであり得る。標識したレポーター抗体はまた、表3の抗体、またはそのヒト化バリアント、キメラバリアントもしくはベニヤ化(veneered)バリアントであり得る。標識したレポーター抗体は、TTRと結合し、立体構造特異性のない抗体であり得る。一実施形態では、TTRと結合し、立体構造特異性のない抗体は、8C3もしくは7G7、またはそのヒト化バリアント、キメラバリアントもしくはベニヤ化(veneered)バリアントであり得る(例えば、国際公開第2016/120811号を参照されたい)。一実施形態では、TTRと結合し、立体構造特異性のない抗体は、ポリクローナル抗体であり得る。一実施形態では、ポリクローナル抗体はポリクローナルウサギ抗ヒトプレアルブミン(カタログ番号A000202-2、Dako、Agilent Technologies社、サンタクララ、カリフォルニア州)である。一実施形態では、ポリクローナルウサギ抗TTR抗体は、Sigma、カタログ番号HPA002550(Sigma-Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)である。
【0325】
いくつかのアッセイは、試料中の全ミスフォールドTTR(すなわち、単量体および多量体を含めたあらゆるミスフォールド形態のTTR)を検出するものである。他のアッセイは、単量体ミスフォールドTTRまたは多量体ミスフォールドTTRを特異的に検出するものである。他のアッセイは、あらゆる形態のTTR(ミスフォールド形態および天然の四量体形態)を検出するものである。いくつかのこのようなアッセイは、TTRの残基101~109内のエピトープと特異的に結合する捕捉抗体と、TTRの異なるエピトープと特異的に結合するレポーター抗体とを用い;試料中にミスフォールドTTRが存在する場合、捕捉抗体およびレポーター抗体がミスフォールドTTRと結合してサンドイッチ複合体を形成し;ミスフォールドTTRと結合するレポーター抗体が存在すればそれを検出することにより、試料中に存在するあらゆるミスフォールド形態のTTRの有無を示すものである。このようなレポーター抗体としては、9D5、14G8、5A1、6C1、AD7F6、RT24、NIー301.35G11、MFD101、MDF102、MFD103、MFD105、MFD107、MFD108、MFD109、MFD111、MFD114、またはそのキメラ型もしくはヒト化型が挙げられる。このようなレポーター抗体としては、TTRの残基89~97、118~122、115~124、53~63、54~61、36~49、49~61、109~121、30~66、70~127、80~127、90~127、100~127、110~127、または115~127内に結合する抗体が挙げられる。このレポーター抗体としては、8C3または7G7が挙げられる(例えば、国際公開第2016/120811号を参照されたい)。このようなレポーター抗体としては、ポリクローナルウサギ抗ヒトプレアルブミン(カタログ番号A000202~2、Dako、Agilent Technologies社、サンタクララ、カリフォルニア州)またはポリクローナルウサギ抗TTR抗体(Sigma、カタログ番号HPA002550、Sigma~Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)が挙げられる。
【0326】
いくつかのアッセイは、試料中の多量体形態のミスフォールドTTRを検出するものである。このようなアッセイは、単量体ミスフォールドTTRより優先的に、または単量体ミスフォールドTTRに対して排他的に多量体ミスフォールドTTRを検出するよう構成できる。いくつかのアッセイは、TTRの101~109内のエピトープと特異的に結合する捕捉抗体と、TTRの101~109内のエピトープと特異的に結合するレポーター抗体とを用いるものである。このような捕捉抗体とレポーター抗体の組合せは、TTRのコピーが複数存在することにより、抗体が結合するエピトープが複数存在することになるため、単量体TTRより優先的に、または単量体TTRに対して排他的に多量体TTRと結合できる。多量体ミスフォールドTTRと結合するレポーター抗体が存在すればそれを検出することにより、多量体ミスフォールドTTRの有無が示される。いくつかのこのようなアッセイでは、レポーター抗体がTTRとの結合に関して捕捉抗体と競合し、かつ/またはレポーター抗体と捕捉抗体がTTRの同じ、または重複するエピトープと結合する。いくつかのこのようなアッセイでは、捕捉抗体が多量体ミスフォールドTTR内の第一のミスフォールドTTR分子と結合し、レポーター抗体が多量体ミスフォールドTTR内の第二のミスフォールドTTR分子と結合する。捕捉抗体とレポーター抗体との間で結合が競合することにより、(競合が重複エピトープの結果であるか、立体障害の結果であるかによって)単量体ミスフォールドTTRの同時の結合および検出が妨げられるか、少なくとも減少する。いくつかのこのようなアッセイでは、多量体TTR内の第二のミスフォールドTTR分子と結合するレポーター抗体の結合を検出することにより、多量体ミスフォールドTTRの有無が示される。
【0327】
本明細書に開示される抗体は、生体試料中の総多量体ミスフォールドトランスサイレチン(TTR)のレベルと総ミスフォールドTTRのレベルの比を決定する方法に使用できる。生体試料の第一の部分について、単量体ミスフォールドTTRおよび多量体ミスフォールドTTRを検出するアッセイで試料中の全ミスフォールドTTR(すなわち、単量体および多量体を含めたあらゆるミスフォールド形態のTTR)をアッセイできる。第一のアッセイは、TTRの残基101~109内のエピトープと特異的に結合する捕捉抗体と、TTRの異なるエピトープと特異的に結合するレポーター抗体とを用いるものであり得る。試料中にミスフォールドTTRが存在する場合、捕捉抗体およびレポーター抗体がミスフォールドTTRと結合してサンドイッチ複合体を形成する。ミスフォールドTTRと結合するレポーター抗体が存在すればそれを検出することにより、試料中のミスフォールドTTRの有無が示される。生体試料の第二の部分について、単量体ミスフォールドTTRより優先的に多量体ミスフォールドTTRを検出するアッセイで生体試料中の多量体形態のミスフォールドTTRをアッセイできる。第二のアッセイは、TTRの残基101~109内のエピトープと特異的に結合する捕捉抗体と、TTRの残基101~109内のエピトープと特異的に結合するレポーター抗体とを用いるものであり得る。試料中に多量体ミスフォールドTTRが存在する場合、捕捉抗体およびレポーター抗体が多量体ミスフォールドTTRと結合してサンドイッチ複合体を形成する。多量体ミスフォールドTTRが存在すれば、捕捉抗体とレポーター抗体が同時に、それと優先的または排他的に結合して、多量体ミスフォールドTTRの有無を示すことができる。いくつかのこのようなアッセイでは、レポーター抗体は、TTRとの結合に関して捕捉抗体と競合するか、捕捉抗体と同じエピトープまたは重複するエピトープと結合する。いくつかのこのようなアッセイでは、捕捉抗体が多量体ミスフォールドTTR内の第一のミスフォールドTTR分子と結合し、レポーター抗体が多量体ミスフォールドTTR内の第二のミスフォールドTTR分子と結合する。捕捉抗体とレポーター抗体との間で競合が競合することにより、(競合が重複エピトープの結果であるか、立体障害の結果であるかによって)単量体ミスフォールドTTRの同時の結合および検出が妨げられるか、少なくとも減少する。いくつかのこのようなアッセイでは、多量体TTR内の第二のミスフォールドTTR分子と結合するレポーター抗体の結合を検出することにより、多量体ミスフォールドTTRの有無が示される。いくつかのアッセイでは、多量体ミスフォールドTTRと全ミスフォールドTTRの比を算出する。
【0328】
本明細書に開示される抗体はまた、生体試料中の全ミスフォールドTTRのレベルと総TTR(ミスフォールド形態および天然の四量体形態)の比を決定する方法に使用できる。生体試料の第一の部分について、単量体ミスフォールドTTRおよび多量体ミスフォールドTTRを検出するアッセイで試料中の全ミスフォールドTTR(すなわち、単量体および多量体を含めたあらゆるミスフォールド形態のTTR)をアッセイできる。第一のアッセイは、TTRの残基101~109内のエピトープと特異的に結合する捕捉抗体と、TTRの異なるエピトープと特異的に結合するレポーター抗体とを用いるものであり得る。試料中にミスフォールドTTRが存在する場合、捕捉抗体およびレポーター抗体がミスフォールドTTRと結合してサンドイッチ複合体を形成する。ミスフォールドTTRと結合するレポーター抗体が存在すればそれを検出することにより、試料中のミスフォールドTTRの有無が示される。生体試料の第二の部分について、総TTRを検出する第二のアッセイで総TTR(ミスフォールド形態および天然の四量体形態)をアッセイできる。第二のアッセイは、TTRと結合し、立体構造特異性のない捕捉抗体と、TTRと結合し、立体構造特異性のないレポーター抗体とを用いるものであり得る。試料中にTTRが存在する場合、捕捉抗体およびレポーター抗体がTTRと結合してサンドイッチ複合体を形成する。TTRと結合するレポーター抗体が存在すればそれを検出することにより、試料中に存在するTTRの有無が示される。全ミスフォールドTTRと総TTR(ミスフォールド形態および天然の四量体形態)の比を算出できる。
【0329】
in vivoイメージング法は、試薬、例えば対象の単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRと結合する抗体を投与した後、その試薬が結合してからそれを検出することによって実施できる。このような抗体は通常、TTRの残基101~109内のエピトープと結合する。必要に応じて、完全長の定常領域を欠く抗体フラグメント、例えばFabを使用することによって除去応答を回避できる。いくつかの方法では、同じ抗体が治療試薬および診断試薬の両方の役割を果たし得る。
【0330】
診断試薬は、対象の体内への静脈内注射によって、または妥当であると考えられるその他の経路により投与できる。試薬の用量は、治療方法のものと同じ範囲内に収めるべきである。通常、試薬を標識するが、いくつかの方法では、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRに対する親和性を有する一次試薬は非標識であり、二次標識剤を用いて一次試薬に結合させる。標識の選択は検出手段によって決まる。例えば、蛍光標識は光学的検出に適している。常磁性標識の使用は、外科的介入のない断層撮影による検出に適している。放射性標識もまた、PETまたはSPECTを用いて検出され得る。
【0331】
診断は、標識部位の数、大きさ、および/または強度を対応するベースライン値と比較することによって実施する。ベースライン値は、未罹患の個体の集団での平均レベルであり得る。ベースライン値はまた、同じ対象で以前に求めたレベルであり得る。例えば、治療開始前に対象におけるベースライン値を求め、測定した値をその後にベースライン値と比較できる。値がベースライン値に比べ低下していることは一般に、治療に対する正の応答を示す。
【0332】
ミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、抗TTR抗体結合などの量の変化をモニターすることにより、治療に応じて治療レジメンを調整することが可能になる。次いで、治療を調整するかどうかを決定し、必要に応じ、モニタリングに応じて治療を調整できる。有意な変化は、治療後のパラメータの値と基底値とを比較することにより、治療が有益な効果をもたらしたか、そうでないかを示す何らかの証拠が得られることを意味する。いくつかの場合には、患者のパラメータの値の変化そのものが、治療が有益な効果をもたらしたか、そうでないかを示す証拠となる。他の場合には、患者に値の変化があり、治療を受けていない患者の代表的な対照集団に値の変化があれば、それらを比較する。特定の患者の応答と対照患者の正常な応答との間の差(例えば、平均+標準偏差の分散)も、治療レジメンによって患者に有益な効果が得られるかどうかを示す証拠となり得る。治療を調整するかどうか、どのように治療を調整するかを決定するにあたって、上記のTTRパラメータの変化を副作用などの徴候または症状の他の変化(1つまたは複数)と組み合わせることもできる。
【0333】
一部の患者では、モニタリングにより、ミスフォールドTTRの量、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、または抗TTR抗体結合が、以前に検出されたもの以上であることが示される。このような患者では、許容できない副作用がみられない場合、治療レジメンをそのまま継続するか、最大推奨用量に未だ達していなければ投与頻度および/または投与量を増やすことさえできる。
【0334】
一部の患者では、モニタリングにより、ミスフォールドTTR、ミスフォールド多量体TTR、トランスサイレチン沈着物、抗TTR抗体結合などの検出可能な減少がみられるが、そのミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、または抗TTR抗体結合の量が依然として正常を上回っていることが示される。このような患者では、許容できない副作用がみられない場合、治療レジメンをそのまま継続するか、最大推奨用量に未だ達していなければ投与頻度および/または投与量を増やすことさえできる。あるいは、一部のこのような患者では、治療レジメンを中止し、治療を他の薬剤、例えば、TTR四量体安定化剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療法、RNA干渉(RNAi)ベースの治療法、またはドキシサイクリン+タウロウルソデオキシコール酸などに置き換えることができる。
【0335】
モニタリングにより、患者のミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、抗TTR抗体結合などの量が既に、正常レベルのミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物の量、または抗TTR抗体結合の量まで、またはその付近まで減少していることが示される場合、治療レジメンを導入の治療レジメン(すなわち、ミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、または抗TTR抗体結合の量のレベルを低下させるもの)から維持の治療レジメン(すなわち、ミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、または抗TTR抗体結合の量をほぼ一定レベルに維持するもの)に調整できる。このようなレジメンは、投与量および/または治療を実施する頻度を減らすことによって実施できる。あるいは、一部の患者では、治療レジメンを中止し、治療を他の薬剤、例えば、TTR四量体安定化剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療法、RNA干渉(RNAi)ベースの治療法、またはドキシサイクリン+タウロウルソデオキシコール酸などに置き換えることができる。
【0336】
他の患者では、モニタリングにより、治療レジメンが幾分有益な効果を示すが、最適以下の効果であることが示され得る。最適な効果は、治療開始後の所与の時点における、治療レジメンを実施していない患者の代表的な試料にみられるミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物の量、または抗TTR抗体結合の量の変化の上位2分の1または4分の1に含まれるミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、または抗TTR抗体結合の量の減少の割合と定義できる。減少が少ない患者、またはミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、もしくは抗TTR抗体結合の量が依然として一定であるか、程度は少ないにせよ、治療レジメンを実施しない場合に予想される量(例えば、治療レジメンを実施していない患者の対照群から推測される量)よりも増加さえしている患者は、正であるが最適以下の応答がみられるものに分類できる。このような患者には任意選択で、薬剤を投与する量および/または頻度を増やすレジメンの調整を実施できる。上記のものに代えて、またはこれに加えて、上方調整で応答の改善が得られない場合、一部のこのような患者では、治療レジメンを中止し、治療を他の薬剤、例えば、TTR四量体安定化剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドベースの治療法、RNA干渉(RNAi)ベースの治療法、またはドキシサイクリン+タウロウルソデオキシコール酸に置き換えることができる。
【0337】
一部の患者では、ミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、または抗TTR抗体結合の量が、治療を実施していない患者のミスフォールドTTR、多量体ミスフォールドTTR、トランスサイレチン沈着物、または抗TTR抗体結合と同程度またはそれ以上まで増大し得る。このような増大が一定期間にわたって持続する場合、必要に応じて治療を中止し、1つまたは複数の他の薬剤による治療を優先できる。
【0338】
本明細書に開示される抗体を用いる診断方法を、18C5のものとは異なるエピトープと結合する第二の抗TTR抗体、例えば、表3に開示される抗体と組み合わせて実施できる。
【0339】
また、トランスサイレチン介在性のアミロイドーシスと非TTRアミロイドーシス、例えば原発性全身性アミロイドーシスとしても知られるアミロイド軽鎖(AL)アミロイドーシスとを鑑別する方法が提供される。
【0340】
IX.キット
本発明はさらに、本明細書に開示されるヒト化18C5抗体と、それに関連する材料、例えば使用指示書(例えば、添付文書)とを含む、キット(例えば、容器)を提供する。使用指示書は、例えば、抗体および任意選択で1つまたは複数の追加の薬剤の投与に関する指示を含み得る。抗体の容器は、単位用量、バルク包装(例えば、複数用量包装)、または小単位用量であり得る。
【0341】
添付文書は、治療用製品の市販の包装品に慣例的に含まれ、そのような治療用製品の使用に係る適応症、用法、用量、投与、禁忌および/または注意事項に関する情報を含む指示書を指す。
【0342】
キットはまた、薬学的に許容される緩衝液、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびブドウ糖溶液を含む、第二の容器を含み得る。それはまた、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む商業上の観点および使用者の観点から望ましい他の材料を含み得る。
【0343】
X.その他の応用
抗体は、臨床診断、臨床治療または研究において単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、もしくは原線維形態のトランスサイレチン(TTR)またはそのフラグメントを検出するのに用いることができる。例えば、抗体を用いて、生体試料がTTRアミロイド沈着物を含むことの指標として生体試料中の単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRの存在を検出できる。生体試料への抗体の結合を、対照試料への抗体の結合と比較できる。対照試料と生体試料は、同じ組織を起源とする細胞を含み得る。対照試料と生体試料は、同じ個体または異なる個体から同じ機会または異なる機会に採取され得る。必要に応じて、複数の生体試料と複数の対照試料を複数の機会に評価して、試料間の差とは無関係のランダムな変動から保護する。次いで、生体試料(1つまたは複数)と対照試料(1つまたは複数)とを直接比較して、生体試料(1つまたは複数)への抗体の結合(すなわち、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRの存在)が対照試料(1つまたは複数)への抗体の結合に比して増大しているのか、減少しているのか、同じであるのかを決定できる。生体試料(1つまたは複数)への抗体の結合が対照試料(1つまたは複数)に比して増大していることは、生体試料(1つまたは複数)中に単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRが存在することを示す。いくつかの場合には、抗体結合の増大は統計的に有意である。任意選択で、生体試料への抗体の結合は、対照試料への抗体の結合より少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、または100倍高い。
【0344】
さらに、抗体を用いて、TTRアミロイドーシスと診断された患者を治療するために使用される治療剤の有効性をモニタリングおよび評価するために生体試料中の単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRの有無を検出できる。治療剤で治療を開始する前に、TTRアミロイドーシスと診断された患者からの生体試料を評価して試料への抗体の結合のベースライン値(すなわち、試料中に単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRが存在するときのベースライン値)を設定する。いくつかの場合には、患者からの複数の生体試料を複数の機会に評価して、ベースライン値および治療とは無関係のランダムな変動の測定値の両方を設定する。次いで、治療剤をレジメンに従って投与する。レジメンは、一定期間にわたる薬剤の反復投与を含み得る。任意選択で、患者からの複数の生体試料中の抗体の結合(すなわち、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRの存在)を複数の機会に評価して、ランダムな変動の測定を行いかつ免疫療法に対する応答の傾向を明らかにする。生体試料への抗体結合の様々な評価を次いで比較する。評価を2回のみ実施する場合、2回の評価を直接比較して、抗体結合(すなわち、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態または原線維形態のTTRの存在)が2回の評価の間で増大したのか、減少したのか、同じままなのかを決定できる。評価を3回以上実施する場合、治療剤で治療する前に始まり治療過程を進行する経時変化として測定値を解析できる。生体試料への抗体の結合(すなわち、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、または原線維形態のTTRの存在)が減少した患者では、患者におけるTTRアミロイドーシスを治療するのに治療剤が効果的であると結論付けることができる。抗体結合の減少は統計的に有意であり得る。任意選択で、結合は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減少する。抗体結合の評価は、TTRアミロイドーシスの他の徴候および症状の評価とともに実施できる。
【0345】
抗体はまた、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、もしくは原線維形態のTTRまたはそのフラグメントを検出する際の研究用の研究試薬として使用できる。このような用途では、抗体は蛍光分子、スピン標識分子、酵素、または放射性同位元素で標識され、検出アッセイを実施するのに必要な全試薬を収納したキットの形態で提供され得る。抗体はまた、例えばアフィニティークロマトグラフィーによって、単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、もしくは原線維形態のTTR、または単量体形態、ミスフォールド形態、凝集形態、もしくは原線維形態のTTR結合パートナーを精製するのに使用できる。
【0346】
抗体はまた、生体試料のTTRの凝集を阻害もしくは軽減する、TTR原線維形成を阻害もしくは軽減する、TTR沈着物もしくはTTR凝集体を減少もしくは除去する、またはTTRの非毒性立体構造を安定化するために使用できる。生体試料は、例えば血液、血清、血漿、または組織(例えば、心臓、末梢神経系、自律神経系、腎臓、眼球、または消化管由来の組織)を含み得る。いくつかの場合には、TTR凝集、TTR原線維形成、またはTTR沈着は少なくとも10%、20%、25%、30%、40%、50%、または75%(例えば、10%~75%または30%~70%)阻害または軽減される。原線維形成を検出するアッセイについては本明細書の別の箇所に記載する。米国特許出願公開第2014/0056904号も参照されたい。
【0347】
これまでに、またはのちに引用される特許出願、ウェブサイト、その他の刊行物、アクセッション番号などはいずれも、個々の項目の全体があらゆる目的で参照により組み込まれることが具体的かつ個別に明記された場合と同様に組み込まれる。ある配列の様々なバージョンを様々な時点のアクセッション番号と関連付ける場合、本願の有効出願日の時点のアクセッション番号と関連するバージョンとする。有効出願日は、該当するアクセッション番号に関して実際の出願日または優先出願の出願日のうち早い方を意味する。同じように、刊行物、ウェブサイトなどの公開時期が版によって異なる場合、特に明記されない限り、本願の有効出願日の時点で最新版のものとする。特に明記されない限り、本発明の任意の特徴、段階、要素、実施形態、または態様を他の任意のものと組み合わせて用いることができる。ここまで、本発明を明確に示し理解させることを目的に、説明および具体例によってある程度詳細に記載してきたが、添付の「特許請求の範囲」の範囲内で何らかの変更および修正を施し得ることは明らかであろう。
【0348】
(実施例)
実施例1.18C5に対する免疫原の調製および免疫感作またはマウス
F87MおよびL110Mでの変異を用いて設計し、トランスサイレチン二重変異体(TTR-DM)と称するトランスサイレチンをBALB/cおよびC57BL/6の両雌マウスに注射した。BALB/c5匹を用いて週1回、RIBIアジュバントに乳濁させたTTR-DMの腹腔内注射を50μg/マウスで3回、次いで25μg/マウスで3回、次いで10μg/マウスで4回実施し、さらに、RIBIアジュバントに乳濁させたものをC57BL/6マウス5匹に50μg/マウスで3回、25μg/マウスで3回、10μg/マウスで4回注射した。TTR-DM、天然の四量体TTR、およびhis-MCAMに対してマウスの力価を求めた。TTR-DMに対する力価が最も高いマウスと、天然の四量体TTRおよびhis-MCAMに対する力価が最も低いマウス(BALB/c番号1および5とC57BL/6番号4および5)を、ケーラーとミルスタインの改変法により融合した。得られたハイブリドーマをTTR-DM、天然の四量体TTR、およびhis-MCAMに対してスクリーニングした。TTR-DMに対して特異性を示すハイブリドーマをクローン化し、さらに特徴付けた。18C5が確認された。
【0349】
実施例2.BIAcoreによる18C5の特徴付け
6M塩酸グアニジンで変性させた組換えヒトTTR(Gu-hTTR)、6M塩酸グアニジンで変性させたカニクイザルTTR(Gu-cTTR)、および天然の四量体ヒトTTRに対するマウス抗体の結合親和性を比較するため、Biacore T200を用いて解析を実施した。抗マウス抗体をアミンカップリングによりセンサーチップCM3(GE Healthcare Life Sciences社)上に固定化し、分析物の結合が最大50RU(約250RUのリガンド結合)になるレベルまでマウス抗体(リガンド)を捕捉させた。捕捉されたリガンドの上に(0.4nM~100nMの範囲内の)様々な濃度のGu-TTRをランニング緩衝液(HBS+0.05%P-20、1mg/mL BSA、50mM Gu-HCl)中、50μL/分で、300秒の結合時間および900秒の解離時間にわたって通過させた。pH1.7の10mMグリシン-HClを2回、短時間注入することにより、チップ表面を再生させた。使用したGu-cTTRの濃度は1~1000nMに範囲内であり、ヒトTTR四量体の濃度は10nM~10,000nMの範囲内であった。リガンドを含まないセンサーおよび分析物濃度0nMの両方に対して、データからブランクを減算した。Biacore Evaluationソフトウェア(v3.0)で全般的な1:1フィットを用い、バルク屈折率をゼロRUに設定して解析を実施した。結合データを表6に示す。
【0350】
【0351】
実施例3.BIAcoreによるキメラ18C5の特徴付け
6M塩酸グアニジンで変性させた組換えヒトTTR(Gu-hTTR)に対するマウス抗体およびキメラ抗体の結合親和性を比較するため、Biacore T200を用いて解析を実施した。センサーチップCM3(GE Healthcare Life Sciences社)上のフローセル1および2に抗ヒト抗体を、フローセル3および4に抗マウス抗体を、それぞれアミンカップリングにより固定化した。分析物の結合が最大50RU(約250RUのリガンド結合)になるレベルまでキメラ18C5抗体およびマウス18C5抗体(リガンド)を捕捉させた。捕捉されたリガンドの上に(0.4nM~100nMの範囲内の)様々な濃度のGu-TTRをランニング緩衝液(HBS+0.05%P-20、1mg/mL BSA、50mM Gu-HCl)中、50μL/分で、300秒の結合時間および900秒の解離時間にわたって通過させた。3M塩化マグネシウムを2回またはpH1.7の10mMグリシン-HClを2回、短時間注入することにより、チップ表面を再生させた。リガンドを含まないセンサーおよび分析物濃度0nMの両方に対して、データからブランクを減算した。Biacore Evaluationソフトウェア(v3.0)で全般的な1:1フィットを用い、バルク屈折率をゼロRUに設定して解析を実施した。結合データを表5に示す。
【0352】
キメラ18C5抗体の成熟重鎖可変領域アミノ酸配列を配列番号81として記載し、キメラ18C5抗体の成熟軽鎖可変領域アミノ酸配列を配列番号87、配列番号17のヒト重鎖定常領域アミノ酸配列、および配列番号19のヒト軽鎖定常領域アミノ酸配列として記載する。
【0353】
【0354】
実施例4.18C5のエピトープマッピング
最初のマッピングでは、18C5に対するエピトープが配列番号26の87~127内にあることがわかった。さらなるマッピングでは、同エピトープが配列番号26の101~109の間にあることがわかった。ミスフォールドカニクイザルTTRに対する親和性がはるかに低いことは、アミノ酸104がヒトTTRとカニクイザルTTRの間にみられる唯一のアミノ酸置換であることから、同アミノ酸が重要であることを示唆するものである。
【0355】
実施例5.18C5の配列
18C5ハイブリドーマクローンLA89 18C5.A1.A1凍結細胞ペレットをmRNAの抽出および精製に用いた。Oligotex direct mRNAミニキット(Qiagen社、カタログ番号72022)のプロトコルを用いて、mRNAの単離および精製を実施した。簡潔に述べれば、RNアーゼを不活化し変性力の高いグアニジン-イソチオシアナート緩衝液の存在下でハイブリドーマクローン細胞9×106個を溶解させ、ホモジナイズした。この溶解混合物にOligotex懸濁液を加え、oligotex粒子のオリゴdT30とmRNAのポリAテールとの間でハイブリダイゼーションを生じさせた。次いで、夾雑物を洗浄し、ポリ-A+RNAを溶離させた。Marathon cDNA増幅キット(Clontech社、カタログ番号634913)を用いて、mRNAをcDNAに逆転写した。cDNAの5’末端にアダプターをライゲートした。5’RACE法を用いてV領域を増幅した。PCRには5’V領域コンセンサスプライマーおよび定常領域特異的アンカープライマーを用いた。増幅したV領域をpTOPOクローニングベクターにクローン化し、Top10大腸菌(E.coli)に形質転換した。15~20の個々のクローンを成長させ、精製したプラスミドの配列を決定した。クローン配列が以下の基準、すなわち、
Met領域とC領域の間に終止コドンがない
配列に抗体V領域の重要な特徴が含まれている
配列に定義可能なCDRが含まれている。
ORFがマッチする最低3つの独立したクローン
を満たす場合、それを真のV領域配列とした。
【0356】
決定した可変領域配列を発現ベクターにクローン化し、CHO細胞内にトランスフェクトした。マウス18C5を対照抗体として用い、精製キメラ抗体を結合に関して特徴付けた。
【0357】
18C5の成熟重鎖可変アミノ酸配列を配列番号81として記載し、18C5の成熟軽鎖可変アミノ酸配列を配列番号87として記載する。Kabat/Chothia重鎖複合体CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号5、7、および9として記載する。Kabat/Chothia軽鎖複合体CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号11、13、および15として記載する。
【0358】
実施例6.ウエスタンブロット解析によって示した18C5の特異性
18C5の非天然(変性)TTRに対する立体構造特異性を示すため、ウエスタンブロット解析を以下の通りに実施した:
【0359】
手順:
SDS-ポリアクリルアミドゲル
天然TTR:LDS試料緩衝液(Life Technologies社)に組換えヒトTTRを入れた試料1.0μg、0.5μg、および0.1μgを10%NuPAGEビス‐トリスゲル(MES緩衝液;90V、105分)上で泳動させ、ニトロセルロース膜に転写して、ウエスタンブロット解析に供した。
【0360】
変性TTR:LDS試料緩衝液が還元剤を含有し、SDS-PAGEの前に煮沸によって試料を変性させた以外、天然TTRについて上に記載した通りに組換えヒトTTRを調製した。
【0361】
ウエスタンブロット解析
SDS-PAGEゲルをニトロセルロース膜(iBlot、Life Technologies社)上にブロットし、ブロッキング緩衝液(LI-COR社、リンカーン、ネブラスカ州)で処理し、1.0μg/mLの一次抗体中でインキュベートし、1×TBSで洗浄し、1:20,000希釈のIRDye 800CWコンジュゲートヤギ抗マウスおよび抗ウサギ二次抗体(LI-COR社、リンカーン、ネブラスカ州)に入れ、次いで、Odyssey CLx赤外線撮像装置(LI-COR社、リンカーン、ネブラスカ州)で撮像した。
【0362】
結果および結論:
天然組換えTTRと変性TTRのウエスタンブロット(
図1)から、18C5は天然TTR種に対する反応性は極めて弱い(レーン1~3)が、変性TTR単量体(約15kDa)に対する反応性は極めて強く、変性二量体(約30kDa)に対する反応性は弱い(レーン5~7)ことがわかった。レーン4は分子量マーカーを示している。
【0363】
これとは対照的に、立体構造的に特異的でない市販のTTR抗体(Sigma社、カタログ番号HPA002550)は、天然TTRと変性TTRとを識別することはなく、単量体および二量体の天然TTRおよび変性TTRに対して極めて強い反応性を示した(
図2)。レーン1~3は天然TTRの結果を示し;レーン4は分子量マーカーを示し、レーン5~7は変性TTRの結果を示している。
【0364】
実施例7.ヒト化18C5抗体の設計
ヒト化の出発点、つまりドナー抗体をマウス抗体18C5とした。成熟m18C5の重鎖可変アミノ酸配列を配列番号81として記載する。成熟18C5の軽鎖可変アミノ酸配列を配列番号87として記載する。重鎖Kabat/Chothia複合体CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号5、7、および9として記載する。軽鎖Kabat CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号11、13、および15として記載する。全体を通じてKabat番号付けを用いる。
【0365】
18C5の可変領域配列と、Kabatらによる抗体可変領域のコンセンサス配列とのアライメントから、18C5の重鎖可変領域(VH)が、ヒトVHサブグループ3に対応するマウスVHサブグループ3bに属性ことがわかる。18C5のカッパ軽鎖可変領域(VL)は、ヒトVkサブグループ2に対応するマウスVkサブグループ2に属する。[Kabat E.A.ら,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版.NIH公開番号91-3242.]。
【0366】
VkとメインとVhドメインとの界面にある残基は、Alaが重鎖の37位にあることを除いて共通にみられる残基であるのに対して、ValまたはHeは通常、この位置にある。Vhの95位にあるLeuは通常、Asp、Gly、またはSerである。これらの位置は復帰変異の候補となる。Vk鎖のGlu34は通常、Ala、His、Asn、またはSerであり、これらの位置は復帰変異の候補となる。
【0367】
マーチンによる配列に基づくCDR同定法則を用いて、18C5のVHおよびVLのCDRを同定した。次いで、Martin(Martin ACR.(2010).In:Kontermann RおよびDiibel S(編)Antibody Engineering.Heidelberg,Germany:Springer International Publishing AG.)の表3.5に示されているキー残基のまとめを用いて、CDRをChothiaカノニカルクラスに割り当てた:
CDR-H1は、10個のアミノ酸からなり、Chothiaカノニカルクラス1とほぼ同じである。
CDR-H2は、17個のアミノ酸からなり、Chothiaカノニカルクラス3とほぼ同じである。
CDR-H3は、4個のアミノ酸からなり;CDR-H3のクラスは存在しない。
CDR-L1は、16個のアミノ酸からなり、Chothiaカノニカルクラス4とほぼ同じである。
CDR-L2は、7個のアミノ酸からなり、Chothiaカノニカルクラス1に属する。
CDR-L3は、9個のアミノ酸からなり、Chothiaカノニカルクラス1とほぼ同じである。
【0368】
18C5の大まかな構造モデルになると思われる構造を見つけるため、PDBデータベースのタンパク質配列を検索した[Deshpandeら,2005,Nucleic Acids Research 33:D233-D237]。マウス抗ピログルタミン酸Aベータ抗体Fab c#17(PDBコード5MYK)の結晶構造[Piechotta,A.ら((2011)J.Biol.Chem.292:12713-12724]は、解像度に優れ(1.6A)、全体的な配列が18C5のVhおよびVkと類似し、同じループのカノニカル構造を保持していることから、Vh構造およびVk構造にはともにこの結晶構造を用いた。Bioluminateソフトウェアを用いて18C5の大まかな構造をモデル化した。このソフトウェアは、Schrodinger社のライセンスを取得しているものである。
【0369】
18C5のVHおよびVLのフレームワークは、Ultsch M.ら((2016)Sci Rep.6:39374)が設計したヒト化クレネズマブFab(CreneFab)PDB:5VZYの対応する領域と高い配列類似性を共有する。18C5とCreneFabの可変ドメインはまた、CDR-H1、CDR-H2、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3ループについて、同じ長さを共有している。CreneFabのVH(5VZY-VH)およびVL(5VZY-VL)のフレームワーク領域を18C5のCDRに対するアクセプター配列として選択した。Bioluminateソフトウェアを用いて構造をモデル化した。このソフトウェアは、Schrodinger社のライセンスを取得しているものである。
【0370】
抗体ヒト化工程で得た重鎖および軽鎖のバリアント配列についてさらに、EVIGT Domain GapAlignツールを用い、ヒト生殖系列配列と配列比較して、WHO INN委員会ガイドライン(International nonproprietary names(INN)for biological and biotechnological substances(a review)(インターネット)2014。http://www.who.int/medicines/services/inn/BioRev2014.pdfから入手可能)によって概説される通りに重鎖および軽鎖のヒト化度を評価した。ヒト化度を高めるため、可能な場合には、残基を変化させて対応するヒト生殖系列配列と配列比較した。ヒト化VL_v2バリアントには、Q45R変異を導入して、配列をヒト生殖系列遺伝子IGKV2-30*02(GenBankアクセッション番号CAA77315;配列番号90)にさらに類似させた。CreneFabのフレームワークと18C5のCDRとからなるアミノ酸配列をhu18C5-VH_v1およびhu18C5-VL_v1と命名した。
【0371】
様々なフレームワーク残基の抗原結合および免疫原性に対する寄与の評価を可能にするため、ほかの型のhu18C5-VHおよびhu18C5-VLも設計した。変異に考えられる位置としては、以下のものが挙げられる:
-カノニカルCDR立体構造を定める位置(Martin 2010に総括されている)、
-バーニアゾーン内にある位置(Foote JおよびWinter G.(1992).JMolBiol.224(2):487-99)、
-VH/VLドメイン界面にある位置(Leger OJPおよびSaldanha J.(2000)Preparation of recombinant antibodies from immune rodent spleens and the design of their humanization by CDR grafting.In:Shepherd P and Dean C(編).Monoclonal Antibodies:a Practical Approach.Oxford,UK:Oxford University Pressに総括されている)、
-グリコシル化もしくはピログルタミン化などの翻訳後修飾を受けやすい位置、
-クレネズマブFabのフレームワーク上に移植した18C5のCDRのモデルに従い、CDRと衝突することが予測される残基によって占められている位置、または
-配列決定されているヒト抗体にはまれであり、親マウス18C5残基もしくは何らかの他の残基の方がはるかに高頻度にみられる残基によって占められている、位置。
【0372】
様々な順列の置換を含むヒト化重鎖可変領域バリアント2種類およびヒト化軽鎖可変領域バリアント2種類:hu18C5-VH_v1およびhu18C5-VH_v2(それぞれ配列番号85~86)ならびにhu18C5-VL_v1およびhu18C5-VL_v2_v6(それぞれ配列番号91~92)(表6および7)を構築した。選択したヒトフレームワークに基づく復帰変異および他の変異を有する例示的なヒト化VkおよびVhの設計を、それぞれ表6および7に示す。表6および7の太字の領域は、Kabat/Chothia複合体によって定義されるCDRを示す。「_」は、示される位置にアミノ酸がないことを示す。配列番号86および92には、表8に示すように、復帰変異および他の変異が含まれている。hu18C5-VH_v1およびhu18C5-VH_v2中の位置にあるアミノ酸を表9に挙げる。hu18C5-VL_v1およびhu18C5-VL_v2中の位置にあるアミノ酸を表10に挙げる。最も類似したヒト生殖系列遺伝子IGHV3-48*01に対するヒト化VH鎖hu18C5-VH_v1およびhu18C5-VH_v2(それぞれ配列番号85~86)のヒト化度のパーセントならびに最も類似したヒト生殖系列遺伝子IGKV2-30*02に対するヒト化VL鎖hu18C5-VL_v1およびhu18C5-VL_v2(それぞれ配列番号91~92)のヒト化度のパーセントを表11に示す。
【0373】
【0374】
【0375】
【0376】
【0377】
【0378】
【0379】
Chothiaクラスカノニカル残基、バーニア残基、または界面/パッキング残基がマウスアクセプター配列とヒトアクセプター配列とで異なる位置が置換の候補となる。Chothiaクラスカノニカル残基の例としては、表6および7のKabat残基H48が挙げられる。界面/パッキング(VH+VL)残基の例としては、6および7のKabat残基H35、H37、H39、H45、H47、H91、H93、H95、H103、L34、L36、L38、L44、L46、L87、L89、L91、L96、およびL98が挙げられる。
【0380】
置換の候補として表6に示した軽鎖可変領域中の位置を選択した根拠は、以下の通りである。
I2VはChothiaカノニカル残基の復帰変異である。
Q45RはIGKV2-30*02生殖系列残基に対する変異である。Qは、ヒトでこの位置にあるのはまれである。Rはこの位置に頻繁にみられる。
【0381】
hu18C5-VL_v1:CreneFabのフレームワーク上に移植した18C5-VL(5VZY-VL)のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3ループ。
【0382】
hu18C5-VL_v2:Chothiaカノニカルクラスを定義するのに重要である、バーニアゾーンの一部である、またはVH/VLドメイン界面にある位置でのあらゆるフレームワーク置換を復帰させる;hu18C5-VL_v2は、ヒトアクセプターである復帰変異I2Vを生殖系列変異Q45Rに組み込んで、これらの位置の抗原結合親和性および免疫原性への寄与の評価を可能にする。
【0383】
軽鎖可変領域:
hu18C5-VH_1(配列番号91)
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVDSNGNTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPLTFGQGTKVEIK
hu18C5-VL_2(配列番号92)
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVDSNGNTYLEWYLQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPLTFGQGTKVEIK
【0384】
置換の候補として表7に示した重鎖可変領域中の位置を選択した根拠は、以下の通りである。
V37A:バーニアゾーン内の復帰変異である。ValはTrp47との反発相互作用を示す。
L45Q:Chothiaによるコア界面残基の復帰変異である。この位置のLeuは反発的なファンデルワールス相互作用を示す。
L47W:界面残基の復帰変異である。マウス18C5では、Trpが47位にあり、TrpがSer35と水素結合を形成し、それにより鎖間ベータシートを安定化する。Leuはいかなる残基とも全く海面を確立することはなく、立体構造を不安定化し得る。
V48I:バーニアゾーン残基と相互作用してこの相互作用を保存する、CDRの復帰変異である。
A49G:バーニアゾーン残基の復帰変異である。
S94R:CDR相互作用を保存する、バーニアゾーン残基の復帰変異である。
【0385】
18C5-VH_v1:CreneFab VHのフレームワーク上に移植した18C5-VH(5VZY-VH)のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3ループ。
【0386】
Hu18C5-VH_v2:Chothiaカノニカルクラスを定義するのに重要である、バーニアゾーンの一部である、またはVH/VLドメイン界面にある位置でのあらゆるフレームワーク置換を復帰させる。18C5-VH_v2は、復帰変異V37A、L45Q、L47W、V48I、A49G、およびS94Rを組み込んで、これらの位置の抗原結合親和性および免疫原性への寄与の評価を可能にする。
【0387】
重鎖可変領域:
hu18C5-VH_1(配列番号85)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFDFSRFWMSWVRQAPGKGLELVAEINPGSSTINYTPSLKDRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCASLGYGNYGWALDYWGQGTTVTVSS
hu18C5-VH_2(配列番号86)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFDFSRFWMSWARQAPGKGQEWIGEINPGSSTINYTPSLKDRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLGYGNYGWALDYWGQGTTVTVSS
【0388】
配列表:
配列番号1
シグナルペプチドを有する18C5 VHアミノ酸配列
MDFGLIFFIVALLKGVQCEVKLLESGGGLVQPGGSLNLSCVASGFDFSRFWMSWARQAPGRGQEWIGEINPGSSTINYTPSLKDKFIISRDNAKNTLFLQMSKVRSEDSALYYCARLGYGNYGWALDYWGQGTSVTVSS
配列番号2
シグナルペプチドを有するマウス18C5 VHをコードするヌクレオチド配列
ATGGATTTTGGGCTGATTTTTTTCATTGTTGCCCTTTTAAAAGGGGTCCAGTGTGAGGTAAAGCTTCTCGAGTCTGGAGGTGGCCTGGTGCAGCCTGGAGGATCCCTGAATCTCTCCTGTGTAGCCTCAGGATTCGATTTTAGTAGATTCTGGATGAGTTGGGCTCGGCAGGCTCCAGGGAGAGGACAGGAATGGATTGGAGAGATTAATCCAGGAAGCAGTACGATAAACTATACGCCATCTCTGAAGGATAAATTCATCATCTCCAGAGACAACGCCAAAAATACGCTGTTCCTGCAAATGAGCAAAGTGAGATCTGAGGACTCAGCCCTTTATTACTGTGCAAGACTGGGGTATGGTAACTACGGATGGGCTCTGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA
配列番号3
シグナルペプチドを有する18C5 VLアミノ酸配列
MKLPVRLLVLMFWIPASRSDVLMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSIVDSNGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGIYYCFQGSHVPLTFGAGTKLELK
配列番号4
シグナルペプチドを有するマウス18C5 VLをコードするヌクレオチド配列
ATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCTGATGTTCTGGATTCCTGCTTCCAGAAGTGATGTTTTGATGACCCAAACTCCACTCTCCCTGCCTGTCAGTCTTGGAGATCAAGCCTCCATCTCTTGCAGATCTAGTCAGAGCATTGTAGATAGTAATGGAAACACCTATTTAGAATGGTACCTGCAGAAACCAGGCCAGTCTCCAAAGCTCCTGATCTACAAAGTTTCCAACCGATTTTCTGGGGTCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGGACAGATTTCACACTCAAGATCAGCAGAGTGGAGGCTGAGGATCTGGGAATTTATTACTGCTTTCAAGGTTCACATGTTCCGCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGTTGGAGCTGAAA
配列番号5
18C5 CDR-H1のアミノ酸配列
GFDFSRFWMS
配列番号6
18C5 CDR-H1をコードする核酸配列
GGATTCGATTTTAGTAGATTCTGGATGAGT
配列番号7
18C5 CDR-H2のアミノ酸配列
EINPGSSTINYTPSLKD
配列番号8
18C5 CDR-H2をコードする核酸配列
GAGATTAATCCAGGAAGCAGTACGATAAACTATACGCCATCTCTGAAGGAT
配列番号9
18C5 CDR-H3のアミノ酸配列
LGYGNYGWALDY
配列番号10
18C5 CDR-H3をコードする核酸配列
CTGGGGTATGGTAACTACGGATGGGCTCTGGACTAC
配列番号11
18C5 CDR-L1のアミノ酸配列
RSSQSIVDSNGNTYLE
配列番号12
18C5 CDR-L1をコードする核酸配列
AGATCTAGTCAGAGCATTGTAGATAGTAATGGAAACACCTATTTAGAA
配列番号13
18C5 CDR-L2のアミノ酸配列
KVSNRFS
配列番号14
18C5 CDR-L2をコードする核酸配列
AAAGTTTCCAACCGATTTTCT
配列番号15
18C5 CDR-L3のアミノ酸配列
FQGSHVPLT
配列番号16
18C5 CDR-L3をコードする核酸配列
TTTCAAGGTTCACATGTTCCGCTCACG
配列番号17
キメラ18C5重鎖定常領域(ヒトIgG1)のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号18
キメラ18C5重鎖定常領域(ヒトIgG1)をコードする核酸
GCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACGCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCCCCGGGTAAATGA
配列番号19
キメラ18C5軽鎖定常領域(ヒトカッパ)のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号20
キメラ18C5軽鎖定常領域(ヒトカッパ)のアミノ酸配列をコードする核酸配列
CGGGGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTAG
配列番号21
例示的IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNVKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号22
例示的IgG1 G1m3重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号23
例示的IgG1 G1m3重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号24
N末端アルギニンを有する例示的軽鎖定常領域のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号25
N末端アルギニンを有さない例示的軽鎖定常領域のアミノ酸配列
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号26
アクセッション番号P02766.1(UniProt)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列
MASHRLLLLCLAGLVFVSEAGPTGTGESKCPLMVKVLDAVRGSPAINVAVHVFRKAADDTWEPFASGKTSESGELHGLTTEEEFVEGIYKVEIDTKSYWKALGISPFHEHAEVVFTANDSGPRRYTIAALLSPYSYSTTAVVTNPKE
配列番号27
アクセッション番号AAB35639.1(GenBank)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列
GPTGTGESKCPLMVKVLDAVRGSPAINVAVHVFRKAADDTWEPFASGKTSESGELHGLTTEEQFVEGIYKVEIDTKSYWKALGISPFHEHAEVVFTANDSGPRRYTIAALLSPYSYSTTAVVTNPKE
配列番号28
アクセッション番号AAB35640.1(GenBank)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列
GPTGTGESKCPLMVKVLDAVRGSPAINVAVHVFRKAADDTWEPFASGKTSESGELHGLTTEEQFVEGIYKVEIDTKSYWKALGISPFHEHAEVVFTANDSGPRRYTIAALLSPYSYSTTAVVTNPKE
配列番号29
アクセッション番号およびABI63351.1(GenBank)で表されるヒトトランスサイレチンのアミノ酸配列
MASHRLLLLCLAGLVFVSEAGPTGTGESKCPLMVKVLDAVRGSPAINVAVHVFRKAADDTWEPFASGKTSESGELHGLTTEEEFVEGIYKVEIDTKSYWKALGISPFHEHAEVVFTANDSGPRRYSYSTTAVVTNPKE
配列番号30
ヒトトランスサイレチンの残基101~109のアミノ酸配列
GPRRYTIAA
配列番号31
ヒトトランスサイレチンの残基87~127のアミノ酸配列
FHEHAEVVFTANDSGPRRYTIAALLSPYSYSTTAVVTNPKE
配列番号32
例示的IgG1 G1m3重鎖定常領域をコードする核酸配列
GCCTCCACCAAGGGTCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCCCCGGGTAAA
配列番号33
N末端アルギニンを有する例示的軽鎖定常領域をコードする核酸配列
CGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGT
配列番号34
N末端アルギニンを有さない例示的軽鎖定常領域をコードする核酸配列
ACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGT
配列番号35
重鎖定常領域シグナルペプチドのアミノ酸配列
MNFGLSLIFLVLVLKGVQC
配列番号36
重鎖定常領域シグナルペプチドをコードする核酸配列
ATGAACTTTGGGCTCAGCTTGATTTTCCTTGTCCTTGTTTTAAAAGGTGTCCAGTGT
配列番号37
軽鎖定常領域シグナルペプチドのアミノ酸配列
MESHTQVFVFVFLWLSGVDG
配列番号38
軽鎖定常領域シグナルペプチドをコードする核酸配列
ATGGAGTCACATACTCAGGTCTTTGTATTCGTGTTTCTCTGGTTGTCTGGTGTTGACGGA
配列番号39
14G8のKabat CDR-H1のアミノ酸配列
SYTMS
配列番号40
14G8のKabat CDR-H2のアミノ酸配列
EINNSGDTTYYPDTVKG
配列番号41
14G8のKabat CDR-H3のアミノ酸配列
HYYYGGGYGGWFFDV
配列番号42
14G8のKabat CDR-L1のアミノ酸配列
RSNKSLLHSNGNTYLY
配列番号43
14G8のKabat CDR-L2のアミノ酸配列
RVSNLAS
配列番号44
14G8のKabat CDR-L3のアミノ酸配列
MQHLEYPLT
配列番号45
5A1のエピトープ
EHAEVVFTA
配列番号46
5A1のKabat CDR-H1のアミノ酸配列
NYAMS
配列番号47
5A1のKabat CDR-H2のアミノ酸配列
SISSGGSTYYPDSVKG
配列番号48
5A1のKabat CDR-H3のアミノ酸配列
YYYGQYFDF
配列番号49
5A1のKabat CDR-L1のアミノ酸配列
KASQDVSTTVA
配列番号50
5A1のKabat CDR-L2のアミノ酸配列
SASYRCT
配列番号51
5A1のKabat CDR-L3のアミノ酸配列
QQHYSTPLT
配列番号52
6C1のKabat CDR-H1のアミノ酸配列
NYYMS
配列番号53
6C1のKabat CDR-H2のアミノ酸配列
YISIDGNNIYHPDSVKG
配列番号54
6C1のKabat CDR-H3のアミノ酸配列
DSDYGYFDV
配列番号55
6C1のKabat CDR-L1のアミノ酸配列
RSSQSIVHSNGNTYLE
配列番号56
6C1のKabat CDR-L2のアミノ酸配列
KVSKRFS
配列番号57
6C1のKabat CDR-L3のアミノ酸配列
FQGSHVPLT
配列番号58
AD7F6のVH領域のアミノ酸配列
EVQLVESGGDLVKPGGSLKLSCAASGFTFSNYGMSWIRQTPDKRLEWVATISSSGTYTYYTESVKGRFTVSRDNAKNTLSLQMSNLKSDDTAMYYCTRQAYGREYFDVWGTGTTVTVSSAKTTPPSVYPLAPGCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPESVTVTWNSGSLSSSVHTFPALLQSGLYTMSSSVTVPSSTWPSQTVTCSVAHPASSTTVDKKLEPSGPISTINPCPPCKECHKCPAPNLEGGPSVFIFPPNIKDVLMISLTPKVTCVVVDVSEDDPDVRISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTIRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPSPIERTISKIKGLVRAPQVYILPPPAEQLSRKDVSLTCLVVGFNPGDISVEWTSNGHTEENYKDTAPVLDSDGSYFIYSKLDIKTSTVGENRFLLMQRETRGSEKLLPEEDULPSPGK
配列番号59
AD7F6のVL領域のアミノ酸配列
DIVMSQSPSSLAVSAGEKVTMSCKSSQSLFDSRTRKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASNRESGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYFCKQSNYLRTFGGGTRVEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATFIKTSTSPIVKSFNRNEC
配列番号60
RT24のCDR-H1のアミノ酸配列
RYWIT
配列番号61
RT24のCDR-H2のアミノ酸配列
DIYPGSGRTNYNEKFKN
配列番号62
RT24のCDR-H3のアミノ酸配列
YYGSTYFYV
配列番号63
RT24のCDR-L1のアミノ酸配列
RSSKSLLYKDGKTYLN
配列番号64
RT24のCDR-L2のアミノ酸配列
LMSTRAS
配列番号65
RT24のCDR-L3のアミノ酸配列
QQLVEYPRT
配列番号66
NI-301.35G11のCDR-H1のアミノ酸配列
SYAMS
配列番号67
NI-301.35G11のCDR-H2のアミノ酸配列
SISGSGDTTKYTDSVKG
配列番号68
NI-301.35G11のCDR-H3のアミノ酸配列
DGSGRIDPFAL
配列番号69
NI-301.35G11のCDR-L1のアミノ酸配列
RSSRSLVYSDGNIYLN
配列番号70
NI-301.35G11のCDR-L2のアミノ酸配列
KVSNRDSG
配列番号71
NI-301.35G11のCDR-L3のアミノ酸配列
MQGTHWPRT
配列番号72
MFD101、MDF102、MFD103、MFD105のエピトープ
ADDTWEPFASGKT
配列番号73
MFD107、MFD108、MFD109、MFD111のエピトープ
TSESGELHGLTTE
配列番号74
MFD114のエピトープ
ALLSPYSYSTTAV
配列番号75
抗体9D5のKabat CDR-H1のアミノ酸配列
SYTMS
配列番号76
抗体9D5のKabat CDR-H2のアミノ酸配列
EISNSGDTTYYPDTVKG
配列番号77
抗体9D5のKabat CDR-H3のアミノ酸配列
HYYYGGGYGGWFFDV
配列番号78
抗体9D5のKabat CDR-L1のアミノ酸配列
RSSKSLLHSNGNTYLY
配列番号79
抗体9D5のKabat CDR-L2のアミノ酸配列
RVSNLAS
配列番号80
抗体9D5のKabat CDR-L3のアミノ酸配列
MQHLEYPLT
配列番号81
マウス18C5抗体の成熟重鎖可変領域のアミノ酸配列
EVKLLESGGGLVQPGGSLNLSCVASGFDFSRFWMSWARQAPGRGQEWIGEINPGSSTINYTPSLKDKFIISRDNAKNTLFLQMSKVRSEDSALYYCARLGYGNYGWALDYWGQGTSVTVSS
配列番号82
マウス抗ピログルタミン酸Aベータ抗体Fab c#17の重鎖可変領域のアミノ酸配列
EVKLVESGGGLVQPGGSRKLSCAASGFTFSDYGMAWVRQAPGKGPEWVAFISLAYSIYYADTVTGRFTISRENAKNTLYLEMSSLRSEDTAMYYCARYDYDNILDYVMDYWGQGTSVTVSS
配列番号83
ヒト化クレネズマブFab(CreneFab)PDB:5VZYの重鎖可変領域のアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLELVASINSNGGSTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCASGDYWGQGTTVTVSS
配列番号84
ヒト生殖系列配列IGHV3-48*01の重鎖可変領域のアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYSMNWVRQAPGKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYFDYWGQGTLVTVSS
配列番号85
ヒト化18C5抗体hu18C5-VH_1の重鎖可変領域のアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFDFSRFWMSWVRQAPGKGLELVAEINPGSSTINYTPSLKDRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCASLGYGNYGWALDYWGQGTTVTVSS
配列番号86
ヒト化18C5抗体hu18C5-VH_2の重鎖可変領域のアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFDFSRFWMSWARQAPGKGQEWIGEINPGSSTINYTPSLKDRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLGYGNYGWALDYWGQGTTVTVSS
配列番号87
マウス18C5抗体の成熟軽鎖可変領域のアミノ酸配列
DVLMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSIVDSNGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGIYYCFQGSHVPLTFGAGTKLELK
配列番号88
マウス抗ピログルタミン酸Aベータ抗体Fab c#17の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
DVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLVHSDGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPTFGGGTKLEIK
配列番号89
ヒト化クレネズマブFab(CreneFab)PDB:5VZYの軽鎖可変領域のアミノ酸配列
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVYSNGDTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQSTHVPWTFGQGTKVEIK
配列番号90
ヒト生殖系列配列IGKV2-30*2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSLVHSDGNTYLNWFQQRPGQSPRRLIYKVSNRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMQGTHWPWTFGQGTKVEIK
配列番号91
ヒト化18C5抗体hu18C5-VL_1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVDSNGNTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVSRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPLTFGQGTKVEIK
配列番号92
ヒト化18C5抗体hu18C5-VL_2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVDSNGNTYLEWYLQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPLTFGQGTKVEIK
配列番号93
マウス18C5抗体のKabat CDR-H1のアミノ酸配列
RFWMS
配列番号94
マウス18C5抗体のChothia CDR-H1のアミノ酸配列
GFDFSRF
配列番号95
マウス18C5抗体のContact CDR-H1のアミノ酸配列
SRFWMS
配列番号96
マウス18C5抗体のChothia CDR-H2のアミノ酸配列
NPGSST
配列番号97
マウス18C5抗体のAbM CDR-H2のアミノ酸配列
EINPGSSTIN
配列番号98
マウス18C5抗体のContact CDR-H2のアミノ酸配列
WIGEINPGSSTIN
配列番号99
マウス18C5抗体のContact CDR-H3のアミノ酸配列
ARLGYGNYGWALD
配列番号100
マウス18C5抗体のContact CDR-L1のアミノ酸配列
NTYLEWY
配列番号101
マウス18C5抗体のContact CDR-L2のアミノ酸配列
LLIYKVSNRF
配列番号102
マウス18C5抗体のContact CDR-L3のアミノ酸配列
FQGSHVPL
【配列表】