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特許7357625制御可能なビームサイズの処理噴霧を有する小型電子機器処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】制御可能なビームサイズの処理噴霧を有する小型電子機器処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230929BHJP
   B05B 1/06 20060101ALI20230929BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20230929BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
H01L21/304 645A
B05B1/06
H01L21/304 651B
B08B5/02 Z
B08B3/08 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020543187
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019018405
(87)【国際公開番号】W WO2019161328
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】62/632,131
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508151552
【氏名又は名称】ティーイーエル マニュファクチュアリング アンド エンジニアリング オブ アメリカ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ムバナソ,チマオビ ダブリュ.
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-175681(JP,A)
【文献】特開昭55-106538(JP,A)
【文献】特開2016-076703(JP,A)
【文献】特開2015-041646(JP,A)
【文献】特表2002-504016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B05B 1/06
B08B 5/02
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型電子機器試料を処理噴霧で処理するシステムであって、
a.処理の間、前記小型電子機器試料が配置される試料ホルダを有する真空処理チャンバであって、制御可能な真空圧力を有する、真空処理チャンバと、
b.前記真空処理チャンバと流体連通された予備チャンバであって、該予備チャンバから前記真空処理チャンバに分配された流体処理ビームが、前記試料ホルダに配置された前記小型電子機器試料に誘導され、前記真空処理チャンバに分配される前記流体処理ビームは、前記真空処理チャンバ内の圧力変化に応じて調整可能なビームサイズを有し、前記ビームサイズは、前記制御可能な真空圧力を調整することにより、要求に応じて調整可能である、予備チャンバと、
c.前記予備チャンバと流体連通された、少なくとも一つのノズルであって、該ノズルは、前記予備チャンバに流体噴霧を分配し、前記ノズルから分配される前記流体噴霧は、前記予備チャンバから前記真空処理チャンバに、前記流体処理ビームとして分配される前に、前記予備チャンバにおいて形状化された流体ビームに制限され形状化される、少なくとも一つのノズルと、
を有し、
前記真空圧力を高めることにより、前記小型電子機器試料の表面を円形スポット状に処理できる前記流体処理ビームが得られ、前記真空圧力を低下させることにより、前記小型電子機器試料の表面を環状に処理できる前記流体処理ビームが得られる、システム。
【請求項2】
さらに、プログラム指令を含む制御システムを有し、
前記プログラム指令は、前記真空圧力を制御することを含む、1または2以上の処理制御ステップにより、前記流体処理ビームのビームサイズを制御可能に平行化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記真空処理チャンバは、前記小型電子機器試料の上を覆う天井を有し、
前記真空処理チャンバの天井は、前記天井と前記小型電子機器試料の間にギャップを提供するのに有効な態様で配置され、前記流体処理ビームが前記小型電子機器試料にわたって、半径方向外向きに流れることが助長される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ギャップは、20mmから100mmの範囲である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御システムは、処理の間、前記制御可能な真空圧力を調節する、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御システムは、異なる処理の間、前記制御可能な真空圧力を調節する、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御システムは、前記制御可能な真空圧力を調整し、異なるサイズを有する一連の流体処理ビームにより、基板の共通の領域を処理する、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御システムは、比較的大きな流体処理ビームを有する第1の処理部分が生じ、前記第1の処理部分の発生の前後に、比較的集束された流体処理ビームを用いる第2の処理部分が生じるように、前記制御可能な真空圧力を調整する、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御可能な真空圧力は、1ミリTorrから750Torrの範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御可能な真空圧力は、50Torr未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御可能な真空圧力は、25Torr未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ノズルは、前記予備チャンバ内に、対称で奥まった配置を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記予備チャンバは、側壁およびカバーを有し、
前記ノズルは、前記予備チャンバの前記側壁および前記カバーから奥まった位置に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記予備チャンバは、中心軸を有する筒状形状を有し、
前記ノズルは、前記中心軸上に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ノズルには加圧冷却流体が供給され、
前記加圧冷却流体は、70Kから150Kの範囲の温度であり、10psigから100psigの範囲の圧力であり、
前記加圧冷却流体の少なくとも99質量%は、気相である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記ノズルには加圧冷却流体が供給され、
前記加圧冷却流体は、70Kから150Kの範囲の温度であり、10psigから100psigの範囲の圧力であり、
前記加圧冷却流体の少なくとも10質量%は、液相であり、1質量%未満は、固相である、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記ノズルには加圧冷却流体が供給され、
前記加圧冷却流体は、窒素および/またはアルゴンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記ノズルには加圧冷却流体が供給され、
前記加圧冷却流体は、窒素を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記ノズルには加圧冷却流体が供給され、
前記加圧冷却流体は、アルゴンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記ノズルは、出口オリフィスを有し、該出口オリフィスは、前記予備チャンバの出口に対して、5mmから200mmの範囲の距離だけ、前記予備チャンバから奥まって配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記ノズルは、流体供給部に結合された第1の本体と、ノズルオリフィスを有する第2の本体とを有し、
前記第2の本体は、前記第1の本体に、取り外し可能に取り付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
処理噴霧により小型電子機器試料を処理するシステムであって、
a.処理の間、前記小型電子機器試料が配置される試料ホルダを有する真空処理チャンバであって、制御可能な真空圧力を有する、真空処理チャンバと、
b.前記真空処理チャンバおよび前記小型電子機器試料に流体処理ビームを供給するノズルシステムであって、(i)前記真空処理チャンバと流体連通された予備チャンバ、および(ii)前記予備チャンバに収容され、奥まって配置された、少なくとも一つのノズルを有する、ノズルシステムと、
を有し、
i.前記ノズルは、加圧冷却流体を有する流体供給システムに結合され、前記ノズルは、前記予備チャンバに前記加圧冷却流体を噴霧し、
ii.前記予備チャンバに噴霧された前記加圧冷却流体は、前記予備チャンバ内で、形状化された流体ビームに制限され形状化され、
iii.前記予備チャンバは、前記真空処理チャンバと流体連通され、前記試料ホルダの上方に配置され、前記形状化された流体ビームは、前記試料ホルダに配置された前記小型電子機器試料に誘導される流体処理ビームとして、前記予備チャンバから前記真空処理チャンバに分配され、
前記真空処理チャンバに分配される前記流体処理ビームは、前記真空処理チャンバにおける圧力変化に応じて、調整可能なビームサイズを有し、前記ビームサイズは、前記制御可能な真空圧力を調整することにより、要求に応じて調整でき
前記真空圧力を高めることにより、前記小型電子機器試料の表面を円形スポット状に処理できる前記流体処理ビームが得られ、前記真空圧力を低下させることにより、前記小型電子機器試料の表面を環状に処理できる前記流体処理ビームが得られる、システム。
【請求項23】
前記真空処理チャンバは、さらに、前記小型電子機器試料の上を覆う天井を有し、
前記真空処理チャンバの天井は、前記天井と前記小型電子機器試料の間にギャップを提供するのに有効な態様で配置され、前記流体ビームが前記小型電子機器試料にわたって、半径方向外向きに流れることが助長される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
小型電子機器試料を処理流体で処理する方法であって、
a.小型電子機器試料を提供するステップであって、前記小型電子機器試料は、真空処理チャンバ内の試料ホルダに支持され、前記真空処理チャンバは、制御可能な真空圧力を有する、ステップと、
b.側壁およびカバーを有する予備チャンバに、ノズルを介して加圧冷却流体を噴霧するステップであって、前記ノズルは、前記真空処理チャンバに開放された予備チャンバ出口に対して、陥凹距離だけ前記予備チャンバ内に奥まって配置された、少なくとも一つのノズルオリフィスを有し、該ノズルオリフィスは、前記予備チャンバの前記側壁および前記カバーから奥まって配置される、ステップと、
c.前記予備チャンバ内で前記噴霧された加圧冷却流体を形状化し、形状化された流体ビームを提供するステップと、
d.前記形状化された流体ビームを、ビームサイズを有する分配流体処理ビームとして、前記予備チャンバから前記真空処理チャンバおよび前記小型電子機器試料に分配するステップであって、前記ビームサイズは、前記真空処理チャンバ内の圧力変化により調整され、前記ビームサイズは、前記制御可能な真空圧力を調整することにより、要求に応じて調整できる、ステップと、
e.前記制御可能な真空圧力を変化させ、前記分配流体処理ビームのビームサイズを維持または調整する、制御システムを提供するステップと、
を有し、
前記真空圧力を高めることにより、前記小型電子機器試料の表面を円形スポット状に処理できる前記分配流体処理ビームが得られ、前記真空圧力を低下させることにより、前記小型電子機器試料の表面を環状に処理できる前記分配流体処理ビームが得られる、方法。
【請求項25】
前記真空処理チャンバは、さらに、前記小型電子機器試料の上を覆う天井を有し、
さらに、前記小型電子機器試料に十分に接近させて、前記天井を配置し、前記天井と前記小型電子機器試料の間にギャップを提供するステップを有し、前記分配流体処理ビームが前記小型電子機器試料にわたって、半径方向外向きに流れることが助長される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
小型電子機器試料を処理流体で処理する方法であって、
a)小型電子機器試料を提供するステップであって、前記小型電子機器試料は、真空処理チャンバ内の試料ホルダに支持され、前記真空処理チャンバは、制御可能な真空圧力を有する、ステップと、
b)前記小型電子機器試料の上方の少なくとも一つの予備チャンバ出口を介して、前記真空処理チャンバと流体連通された予備チャンバを提供するステップと、
c)前記予備チャンバ出口、前記予備チャンバの側壁、および前記予備チャンバのカバーから、前記予備チャンバ内に奥まって配置されたノズルオリフィスから、前記予備チャンバ内に加圧冷却流体を噴霧するステップと、
d)前記予備チャンバ内に分配された噴霧流体を用いて、ビームサイズを有する流体処理ビームを形成するステップであって、前記ビームサイズは、前記真空処理チャンバの圧力変化により調整され、前記ビームサイズは、前記制御可能な真空圧力を調整することにより、要求に応じて調整できる、ステップと、
e)前記予備チャンバからの前記流体処理ビームを前記小型電子機器試料に分配するステップと、
を有し、
前記真空圧力を高めることにより、前記小型電子機器試料の表面を円形スポット状に処理できる前記流体処理ビームが得られ、前記真空圧力を低下させることにより、前記小型電子機器試料の表面を環状に処理できる前記流体処理ビームが得られる、方法。
【請求項27】
さらに、前記真空処理チャンバの前記真空圧力を制御し、前記流体処理ビームのビームサイズを調整するステップを有する、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「制御可能なビームサイズの処理噴霧を有する小型電子機器処理システム」という名称の2018年2月19日に出願された米国仮出願第62/632,131号の優先権を主張するものであり、この全内容は、本願の参照として取り入れられる。
【0002】
本開示は、例えば、残渣、デブリおよび他の材料を小型電子機器基板の表面からクリーニングするような、1または2以上の小型電子機器基板の表面を処理する機器および方法に関する。特に、本開示は、圧力の制御により、1または2以上の小型電子機器基板の表面を処理するために使用される、処理ストリームのビームサイズが調整される、そのような機器に関する。
【背景技術】
【0003】
小型電子機器技術の進展により、活性部材の密度の増加が進んでもなお、集積回路(IC)は、半導体基板のような基板上に形成されている。ICの形成は、基板上の各種材料の設置、処理、および選択的除去の一連のプロセスにより行われる。また、形成の間、基板の露出表面に対して、処理残渣およびデブリを周期的に除去するためのクリーニングステップが必要となる。半導体基板処理プロセスにおいて、基板から特定の種類の材料を除去するため、各種組成物が開発されており、これには、ドライおよびウェットの両クリーニング技術が含まれる。また、いくつかの異なる種類の設備が使用され、各種条件の下、基板がクリーニング用化学成分に暴露される。この設備の重要な態様は、均一な状態で基板をクリーニングし、設備によって生じる、いかなるデブリまたは粒子をも最小限に抑制したまま、高スループットを得ることである。
【0004】
小型電子機器分野において既知の一つのクリーニング対応は、粒子のストリームを使用して、試料表面から汚染物を除去することである。これらは、気体、液体、および/または固体粒子のストリームを含み得る。これらの処理の実用的に重要な種類は、極低温処理として知られている。極低温処理では、1または2以上の好適なノズルを使用して、加圧冷却流体(これは、液体および/または気体であってもよく、ノズルに供給されるある種の同伴固体材料を含んでもよい)が低圧処理チャンバ内で膨張される。これにより、流体は、活性な気体、液体、および/または固体粒子の処理ストリームを生じさせる。このストリームのエネルギーを用いることにより、表面から汚染物質が押しのけられ、除去される。各種極低温処理ストリームは、極低温エアロゾル、極低温エアロゾルジェット、ナノエアロゾル粒子、およびガスジェットクラスタ等として知られている。極低温クリーニングツールの好適な例は、米国ミネソタ州Chaska、TEL FSI社から市販の商品名ANTARES(登録商標)、ANTARES(商標)-Nano、およびARCTURUS(商標)により利用できる。
【0005】
典型的な極低温処理では、好適な真空度に維持された処理チャンバに、少なくとも一つのノズルから処理噴霧が分配される。ANTARESツールの場合、小型電子機器基板の形態の試料は、回転式のまたは並進移動式のチャックのような、小型ホルダに保持される。回転構成では、レコードプレーヤの針がレコードを走査するように、ノズルが回転基板を走査する。しかしながら、極低温ツールにおいて、走査ノズルは現実的ではない。現実的な方法で、極低温回転結合を提供することは難しいからである。回転基板を走査する代替例として、並進チャックを有する、ANTARESツールのような極低温ツールが構成され、この並進チャックにより、基板にわたる経路に沿って、基板がノズルの下方に通される。チャックの並進および/または回転により、ノズルは、実質的に、基板表面の全体または一部を所望のように処理できる。
【0006】
いくつかの方法で基板クリーニング機器が設計され、効果的で均一なクリーニング結果が得られ、粒子を最小限に抑制した状態で、高いスループットが得られる。有意な挑戦は、極低温処理を使用して、小さな粒子、例えば、約100nm未満のサイズを有する汚染粒子を除去することである。通常、小さな粒子は、大きな粒子に比べて除去が難しい。従って、この分野においては、スループットを改善することとともに、特に小さな粒子に対するクリーニング効率(例えば粒子/欠陥の低減)または均一性に対するいかなる改善も望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、制御可能なビームサイズの処理ビームを形成するシステムおよび方法に関する。一実施例では、処理チャンバ圧力の制御により、処理ビームのビームサイズが調整され、これが1または2以上の小型電子機器基板の表面の処理に使用される。圧力を用いてビームサイズを制御することは、所与のツール構成用のサイズの選択肢の広い範囲内で処理ビームを調整するために、処理環境に対する物理的変化が不要となる点で有意である。ビームサイズに影響を及ぼし、基板を処理またはクリーニングするその機能を調整するため、ビームサイズは、処理の過程で、または異なる処理の間に、調整できる。本発明は、半導体ウェハのような基板を処理する、半導体および小型電子機器の分野において、特に有益である。半導体基板上の好ましくない粒子の汚染は、装置の歩留まりに悪影響を及ぼすため、半導体製造プロセスの異なる段階において、粒子を低減する必要がある。
【0008】
本発明では、基板から粒子をクリーニングするため、ノズルからの流れのビームサイズを集束処理ビームに調整する対応策が開示される。対応策では、処理ビームを調節するため、真空環境のチャンバの特徴、およびチャンバ圧力の調整が使用され、粒子の除去効率を高めるため、集束ビームが形成される。
【0009】
予備チャンバへのノズルの取り付けにより、処理噴霧の形状化が助長され、より適正に定められた処理ビームが提供されることが認められている。そのサイズおよび焦点は、要望に応じて、容易に調整することができる。例えば、真空システムのチャンバ圧力を調整することにより、容易かつ迅速に、処理ビームのサイズを調節し、例えば、要望に応じて、より集束、または拡散させることができる。これは、異なる種類の汚染物質に対して、クリーニング特性が最適となるようにビームが調節できるため、基板上の粒子の除去効率が高まるという利点を提供する。
【0010】
通常、より小さくより集束された処理ビームは、ノズルの直下にクリーニング効果を提供するのに対して、より拡散性のビームは、ウェハの上方のノズルの設置面積に対して、大きな環状の領域の半径方向のより外側をクリーニングする。小さなビームは、高いチャンバ圧力(例えば、あるモードの粒子では19Torr)で形成されるのに対して、より拡散性のビームは、低いチャンバ圧力(例えば、ある実施例では、約4Torr)を用いることにより得られる。小さなビームは、通常、実質的にz軸に沿って、ウェハに向かって直下に流れる。小さなビームは、小さな粒子を除去し、溝のような、ノズルと視野方向に連通する陥凹部をクリーニングする上で、または水平方向もしくは傾斜方向の流れにより損傷を受けやすいデリケートな特徴物を保護する上で、より望ましい場合がある。より拡散性のビームは、より側面から、ウェハに衝突する傾向にある。拡散性のビームは、高いスループットが求められる場合、またはよりロバスト性の特徴物が存在する場合における使用において、より望ましい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特性は、従来の慣例とは反対である。従来の慣例では、通常、低いチャンバ圧力と良好なクリーニング特性とが関連付けられる。本発明の形状化ビームの対応策の使用により、ノズルの直下では、高い圧力において、より良いクリーニング特性が可能になる。
【0012】
本発明の実施例では、チャンバ圧力は、流れが迅速に焦点化され、平行化されるように調整され、クリーニング特性が改善される。この調整は、処理レシピ内において、リアルタイムで迅速に生じる。ツールの停止および再始動は不要である。ビームエネルギーを異なる種類の粒子に最適化するため、処理内で、圧力プロファイルが使用できる。調整は、十分に早く、必要な場合、同じウェハ上で、一部が比較的小さな集束されたビームにより処理され、他の部分がより大きな拡散性のビームで処理されるように、ビームを調節することができる。別の選択肢では、必要な場合、異なるビームサイズを使用して、共通の領域が順番に処理される。
【0013】
本方法は、特に、100nm未満の小さな粒子サイズにおいて、限定された粒子除去効率を克服する手段を提供し、ノズルの直下の基板から粒子を除去する上で必要となる要求の方向性を得る可能性を高める。そのような垂直な、平行化エアロゾル流路の利点には、ノズルの直下における小さな粒子(<100nm)のクリーニングが含まれる。このような粒子は、より拡散性の流れでは、小さな時間枠において容易にクリーニングすることはできない。また、平行化流のスポットクリーニングプロファイルが的確なサイズに修正できるため、基板の特定の領域において、目的のクリーニングが実施される。また、本クリーニング方法では、改善された視野方向(line-of-sight)のため、パターンに埋設された粒子をより効率的に除去することができる。
【0014】
本発明の原理は、ミネソタ州ChaskaのTEL FSI社から利用可能なARCTURUS極低温ツール、およびANTARES-Nanoに導入されることが有意である。これらの原理は、新たなツールに導入することができ、あるいは既存のツールに後から導入できる。
【0015】
ある態様では、本発明は、処理噴霧で小型電子機器試料を処理するシステムに関する。本システムは、処理の間、小型電子機器試料が配置される試料ホルダを有する真空処理チャンバを有し、該真空処理チャンバは、制御可能な真空圧力を有する。また、当該システムは、真空処理チャンバと流体連通された予備チャンバを有し、予備チャンバから真空処理チャンバに分配される流体処理ビームは、試料ホルダに配置された小型電子機器試料に誘導され、真空処理チャンバに分配される流体処理ビームは、真空処理チャンバの圧力変化に応じて調整可能なビームサイズを有し、該ビームサイズは、制御可能な真空圧力を調整することにより、要望に応じて調整することができる。また、当該システムは、予備チャンバと流体連通された、少なくとも一つのノズルを有し、該ノズルは、予備チャンバに流体噴霧を分配し、ノズルから分配される前記流体噴霧は、予備チャンバから真空処理チャンバに、前記流体処理ビームとして分配される前に、予備チャンバにおいて形状化された流体ビームに制限され形状化される。ある実施例では、処理チャンバは、試料の上を覆う天井を有し、処理チャンバの天井は、該天井と基板の間にギャップを提供するのに有効な態様で配置され、処理ビームが小型電子機器試料にわたって、半径方向外向きに流れることが助長される。ある実施例では、当該システムは、さらに、プログラム指令を含む制御システムを有し、プログラム指令は、真空処理チャンバの真空圧力を制御することを含む、1または2以上の処理制御ステップにより、流体処理ビームのビームサイズを制御可能に平行化する。
【0016】
別の態様では、本発明は、処理噴霧により小型電子機器試料を処理するシステムに関する。当該システムは、処理の間、小型電子機器試料が配置される試料ホルダを有する真空処理チャンバを有し、該真空処理チャンバは、制御可能な真空圧力を有する。また、当該システムは、真空処理チャンバおよび小型電子機器試料に流体処理ビームを供給するノズルシステムを有し、該ノズルシステムは、(i)前記真空処理チャンバと流体連通された予備処理チャンバ、および(ii)予備チャンバに収容され、奥まって配置された、少なくとも一つのノズルを有する。前記ノズルは、加圧冷却流体を有する流体供給システムに流体的に結合され、前記ノズルは、予備チャンバに前記加圧冷却流体を噴霧する。予備チャンバに分配された流体噴霧は、予備チャンバ内で、形状化された流体ビームに制限され形状化される。予備チャンバは、真空処理チャンバと流体連通され、試料ホルダの上方に配置され、形状化された流体ビームは、試料ホルダに配置された小型電子機器試料に誘導される流体処理ビームとして、予備チャンバから真空処理チャンバに分配される。真空処理チャンバに分配された流体処理ビームは、真空処理チャンバにおける圧力変化に応じて調整可能なビームサイズを有し、前記ビームサイズは、制御可能な真空圧力を調整することにより、要求に応じて調整できる。ある実施例では、処理チャンバは、さらに、試料の上を覆う天井を有し、処理チャンバの天井は、該天井と基板の間にギャップを提供するのに有効な態様で配置され、処理ビームが小型電子機器試料にわたって、半径方向外向きに流れることが助長される。
【0017】
別の態様では、本発明は、小型電子機器試料を処理流体で処理する方法に関する。小型電子機器試料が提供され、該小型電子機器試料は、真空処理チャンバ内の試料ホルダに支持され、真空処理チャンバは、制御可能な真空圧力を有する。側壁およびカバーを有する予備チャンバに、ノズルを介して加圧冷却流体が噴霧され、前記ノズルは、真空処理チャンバに開放された予備チャンバ出口に対して、陥凹距離だけ予備チャンバ内に奥まって配置された、少なくとも一つのノズルオリフィスを有し、該ノズルオリフィスは、予備チャンバの側壁およびカバーから奥まって配置される。噴霧された加圧冷却流体は、予備チャンバ内で形状化され、形状化された流体ビームが提供される。形状化された流体ビームは、ビームサイズを有する分配流体処理ビームとして、予備チャンバから真空処理チャンバおよび小型電子機器試料に分配され、前記ビームサイズは、真空処理チャンバ内の圧力変化により調整され、前記ビームサイズは、前記制御可能な真空圧力を調整することにより、要求に応じて調整できる。ある実施例では、前記制御可能な真空圧力を変化させ、流体処理ビームのビームサイズを維持または調整する、制御システムが提供される。ある実施例では、処理チャンバは、試料の上を覆う天井を有し、該天井は、基板に十分に接近させて配置され、天井と基板の間にギャップが提供され、処理ビームが小型電子機器試料にわたって、半径方向外向きに流れることが助長される。
【0018】
別の態様では、本発明は、小型電子機器試料を処理流体で処理する方法に関する。小型電子機器試料が提供され、該小型電子機器試料は、真空処理チャンバ内の試料ホルダに支持され、真空処理チャンバは、制御可能な真空圧力を有する。小型電子機器試料の上方の少なくとも一つの予備チャンバ出口を介して、真空処理チャンバと流体連通された予備チャンバが提供される。予備出口、予備チャンバの側壁、および予備チャンバのカバーから予備チャンバ内に奥まって配置されたノズルオリフィスから、予備チャンバ内に加圧冷却流体が噴霧される。予備チャンバ内に分配された噴霧流体を用いて、ビームサイズを有する流体処理ビームが形成され、前記ビームサイズは、真空処理チャンバの圧力変化により調整され、前記ビームサイズは、制御可能な真空圧力を調整することにより、要求に応じて調整できる。流体処理ビームは、予備チャンバから小型電子機器試料に分配される。
【0019】
別の態様では、本発明は、処理噴霧により小型電子機器試料を処理するシステムに関する。当該システムは、真空処理チャンバを定めるハウジングを有し、前記真空処理チャンバは、処理の間、小型電子機器試料が配置される試料ホルダを有し、ハウジングは、カバー構造を有する。また、当該システムは、カバー構造における予備チャンバ出口を介して、真空処理チャンバと流体結合された予備チャンバを有し、予備チャンバから真空処理チャンバへの出口が提供される。予備チャンバ出口の設置面積は、小型電子機器試料の設置面積よりも小さい。また、当該システムは、1または2以上の流体を含む流体供給システムを有する。また、当該システムは、少なくとも一つのスプレーノズルを有し、該スプレーノズルは、前記1または2以上の流体が、流体噴霧として効果的に分配するように、流体供給システムに結合される。スプレーノズルは、流体噴霧が予備チャンバに分配された後、予備チャンバから真空処理チャンバ内の小型電子機器試料に分配されるように、予備チャンバ内に奥まって配置される。
【0020】
別の態様では、処理噴霧により小型電子機器試料を処理するシステムに関する。当該システムは、処理の間、小型電子機器試料が配置される試料ホルダを有する真空処理チャンバを有し、該真空処理チャンバは、制御可能な真空圧力を有する。また、当該システムは、真空処理チャンバと流体連通され、前記処理の間、試料の上方に配置された出口を有する予備チャンバを有する。また、当該システムは、真空処理チャンバに開放されたノズル出口オリフィスを有する、少なくとも一つのノズルを有し、該ノズルは、予備チャンバの出口がノズル出口オリフィスと重なるように配置され、ノズル出口オリフィスから処理噴霧が分配された際に、試料が処理される。
【0021】
本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施例を示し、上記本発明の一般的記載、および以下の詳細な説明とともに、本発明を説明する一助となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による機器の概略図を含む図である。機器は、処理チャンバと流体連通する予備チャンバを有し、予備チャンバにはノズルが取り付けられる。
図2図1の機器を示した図である。真空処理チャンバ内の圧力が低い結果、幅広で、より拡散性のある処理ビームが得られる。
図3図1の機器を示した図である。真空処理チャンバ内の圧力が高い結果、小さく、より集束された処理ビームが得られる。
図4図1の機器の一部の側断面である。予備チャンバおよびノズルがより詳しく示されている。
図5】試験結果を概略的に示した図である。図1の機器の真空処理チャンバにおける圧力の調整方法を用いて、処理ビームのサイズを調整し、そのクリーニングプロファイルを変化させることが示されている。
図6a】例2の試験3および4において得られた、クリーニングプロファイルを示した図である。
図6b】例2の試験5および6において得られた、クリーニングプロファイルを示した図である。
図7】粒子ウェハマップの形式における試験結果を示した図である。ツール配置および処理条件の調整方法を用いて、処理ビームの形状のサイズおよびクリーニングプロファイルを調整することが示されている。
図8図7の粒子ウェハマップに対応する試験結果を示した図である。図8の試験結果は、クリーニング効率プロファイルの形式である
図9】予備チャンバ組立体の代替配置を有する、本発明の機器の別の実施例を示した図である。
図10】代替予備チャンバ組立体構成、および予備チャンバに対する代替ノズル配置を含む、図9の機器の変更を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に示す本発明の実施例は、排他的なものではなく、以下の詳細な説明に記載された実際の形態に、本発明を限定することを意図するものでもない。むしろ、選定され記載された実施例は、本発明の原理および原則に対する当業者の理解が容易となることを目的とする。
【0024】
本発明の原理は、任意の小型電子機器処理または製造システムに使用され得る。小型電子機器基板は、1または2以上の処理の間、真空処理チャンバ内で回転式チャックに支持される。本発明の原理により、処理噴霧のビームサイズが容易に制御され、ビームは、所望の通り、より集中され(すなわちビームサイズは、試料のより小さな領域に向かって、処理噴霧のエネルギーが集中するように減少する)、あるいはより拡散される(すなわちビームサイズは、試料のより大きな領域にわたって、処理噴霧のエネルギーが分配されるように増加される)。そのようなビーム変調を用いることにより、異なる処理間で、処理の結果が最適化される。また、特定の処理が実施された際に、異なる処理効果を得るため、ビームサイズは、特定の処理の過程の間に変調されてもよい。
【0025】
ある実施例では、本発明の原理は、ミネソタ州ChaskaのTEL FSI社から市販されているANTARES(登録商標)極低温クリーニングツールのような、極低温クリーニングツールに導入される。これらのツールは、並進可能なチャックを使用して、クリーニング処理を実施し、1または2以上の処理ストリームを介して、基板表面を走査する。処理噴霧のビームサイズを調整できる本発明の特徴は、既存のANTARES(登録商標)、または他のツールに後付けすることができ、あるいは新たなツールに導入できる。
【0026】
極低温処理には、通常、流体(気体、液体、および/または固体の粒子ストリーム)供給ストリームから、処理ストリームを発生させる実施が含まれる。供給ストリームは、通常、加圧され、必要な場合、冷却される。1または2以上の好適なノズルを介して膨張した際に、圧力が開放され、材料がさらに冷却される。得られるストリームは、エアロゾル噴霧、ガスジェット噴霧、またはガスクラスタ等の形態であってもよい。極低温処理ストリームは、十分なエネルギーを衝突させることにより、少なくとも一部において、汚染物質と小型電子機器基板の間の密着力を超えるように、小型電子機器基板表面上の汚染物質を押しのける。従って、適正エネルギーのそのような処理ストリーム(ある実施例では、例えばエアロゾル噴霧、および/またはガスクラスタジェット噴霧)の形成は、望ましい。処理噴霧のエネルギーは、クリーニングパワーと相関し、ストリーム成分の質量、速度、および/またはエネルギー密度を含む因子の関数である。エネルギーは、速度または質量を高めることにより、増加され得る。処理噴霧のビームサイズを調整することにより、単位面積当たりまたは単位体積当たりのビームのエネルギーは、集中され、またはより拡散される。エネルギーおよび/または単位面積当たりのエネルギーを高めることは、大きな汚染物質、および汚染物質が小さい場合(<100nm)のいずれにおいても、汚染物質と基板の表面の間の強い密着力を超える上で重要である。大きな粒子を処理し、および/またはデリケートな特徴物への損傷を回避するため、より拡散性のおよび/またはよりエネルギー集中的なビームが望ましい場合がある。
【0027】
ある実施モードでは、異なるサイズの粒子を除去し最適化するため、処理は、処理中に、ビームサイズを変調するステップを含んでもよい。例えば、第1の処理部分は、例えば、寸法が100nmを超えるような大きな粒子を除去する上で効率的な、比較的大きなビームサイズで生じてもよい。第2の処理部分は、例えば寸法が100nm未満の、より小さな汚染物質の除去に効果を発揮する傾向にある、より集中されたビームを用いて、第1の処理部分の前後に実施されてもよい。必要な場合、これらの処理は、1または2以上の追加のサイクルを経て、繰り返されてもよい。また、他の種類の粒子または粒子サイズの除去を最適化するため、より高い、低い、もしくは中間のエネルギーまたはビームサイズで、少なくとも一つの追加処理部分が処理に加えられてもよい。
【0028】
図1乃至4を参照すると、極低温処理システム100の形態の機器により、本発明の原理が示されている。システム100は、ハウジング102を有する。ハウジング102は、真空処理チャンバ104と、該真空処理チャンバ104に開口された予備チャンバ120とを提供するように構成される。また、ハウジング102は、排気プレナム108を提供するように構成され、これを介して、流体が処理チャンバ104から回収される。真空処理チャンバは、1または2以上の処理の少なくとも一部の間、真空環境を構築するように作動されてもよい。真空圧力は、時間の関数としての真空圧力プロファイルにより、真空圧力が維持され、上昇され、減少され、および/または変調されるように制御され、あるいは所望の値に調整される。実際の代表的なモードでは、処理チャンバ内に形成される真空は、1ミリTorrから750Torrの範囲であってもよい。しばしば、圧力は、50Torr未満、または25Torr未満であり、エアロゾルおよび/またはガスクラスタを有する処理ビーム128の形成が助長される。
【0029】
通常、予備チャンバ20内の周囲圧力は、予備出口122により提供されるチャンバ間の開放連通の観点から、チャンバ104内の圧力に近づくように整合される。従って、チャンバ104内に真空環境が構築されると、予備チャンバ120にも、同様の真空環境が構築される。
【0030】
基板110は、真空処理チャンバ104内の、回転式および並進式のチャック112の形態の試料ホルダに保持される。基板110は、1または2以上の処理の少なくとも一部の間、該基板110が並進および/または回転される際に、移動可能なチャック112により保持される。予備チャンバ120は、ハウジング102のカバー部103に一体化され、予備チャンバ120は、予備出口122を介して、基板110の上方の上部空間124に開放される。図に示すように、予備チャンバ出口122の設置面積は、基板110の設置面積よりも小さい。その結果、基板110は、該基板110が回転および/または並進した際に、出口122を通過するように走査される。予備チャンバ120は、チャンバ天井123に導入された出口122を介して、真空処理チャンバ104と流体連通される。チャンバ天井123は、処理チャンバ104に対してある位置に固定され、あるいは天井123は、処理チャンバ104にアクセスするために開閉可能なチャンバ蓋に設置され、移動可能であってもよい。処理ビーム128は、予備チャンバ120から放射され、基板110に衝突する。極低温処理では、衝突により、基板110から汚染物質が押しのけられ、あるいはこれの除去が助長される。
【0031】
この構成は、天井123と基板110の間にギャップ126(図4参照)を提供する。ギャップ126により提供される天井123と基板110の間の近傍では、処理ビーム128の初期の下向き経路に対する半径方向のクリーニング効果の形成が助長されることにより、クリーニング特性が継続される。処理ビーム128は、まず、下方に向かってチャンバ104に流れ、その次に、この初期の下方経路に対して、基板110の表面にわたって半径方向外向きに流れる傾向がある。その結果、基板110のクリーニング面積の全体は、予備チャンバ120から放出される処理ビーム128のサイズよりも広くなる。また、下向きと半径方向の動作の組み合わせにより、クリーニング特性の向上が助長される。一方、ギャップ126が極めて大きい場合、半径方向のクリーニング動作は、低減し、さらには存在しなくなる。
【0032】
このギャップ126のサイズ、すなわち、天井123と基板110の間の距離は、各種好適な距離にされ、あるいは半径方向のクリーニング動作の所望の度合いを調整するため、特定の処理過程の間、または異なる処理間で、調整可能であってもよい。距離が極めて狭い場合、本発明の原理を用いて処理ビーム128のサイズを変調することが難しくなり得る。距離が極端に大きい場合、半径方向のクリーニング動作が予想よりも小さくなり得る。また、ビーム128が基板110に衝突する前に、ビーム128により、予想以上の大きなエネルギーが消失する可能性がある。これらの懸念を調整するため、ギャップ126の好適なギャップサイズは、10mm~200mmの範囲であり、好ましくは20mmから100mm、より好ましくは30mm~75mmの範囲である。
【0033】
回転式および並進式チャック112は、把持特徴部および/または支持特徴部(いずれも図示されていない)を有し、チャック112への基板110の固定が助長されてもよい。基板110は、半導体処理プロセスの分野において広く実施されている技術のいずれかのような、様々なそのような把持特徴部および/または支持特徴部を用いて、チャック112に保持されてもよい。これらには、これに限られるものではないが、機械的ファスナーもしくはクランプ、真空クランプ、グリップフィンガー、レストパッド、静電クランプ、およびこれらの組み合わせが含まれる。基板を保持する特徴部の一例は、以下に詳しく示されている。また、チャック112は、リフトピン、操作ピン、およびピボットアーム等(図示されていない)を有し、ウェハハンドリングシステム(図示されていない)を介して、手動または自動で、基板110が処理チャンバ104に導入され、または処理チャンバ104から持ち上げられた際に、移動式チャック112からの、または移動式チャック112への、基板110の並進が助長されてもよい。
【0034】
そのような把持および昇降機能を有する、回転式および並進式チャックの一実施例は、本願においてペンディング出願1と称する、2017年11月8日に出願された、William P.Inhofer,Sean Moore,Lance Van Elsenらの「処理チャンバ内で小型電子機器基板を処理するための磁気的浮揚回転チャック」という名称の米国特許出願第15/806,760号(米国特許出願公開第2018/0130694として公開されている)、および本願においてペンディング出願2と称する、2017年11月28日に出願された、Edward Deneen Hanzlik,Michael Gruenhagen,Tim W.Herbstらの「処理チャンバ内で小型電子機器基板を処理するための移動および回転チャック」という名称の米国特許出願第15/824,021号(米国特許出願公開第2018/0151396として公開されている)に記載されている。ペンディング出願1、2の各々は、本願の参照として取り入れられている。
【0035】
図1では、基板110は、チャック112の上部表面118と直接接するように、概略的に示されている。実際のより好適なモードでは、ペンディング出願1、2に示すように、基板110は、基板110と上部表面118の間に小さなギャップ(図示されていない)が提供されるようにして、支持されてもよい。
【0036】
回転式および並進式チャック112は、並進経路130に沿って、横方向に横断するように移動してもよい。そのような移動は、直線および/または非直線経路に沿ってもよい。一例では、経路130は、直線である。また、並進式および回転式チャック112は、基板110を回転軸132の周りで回転させ、回転自由度134を提供するように構成される。処理の間、並進および回転は、同時に行われても、個々に行われてもよい。並進および回転は、予備チャンバ出口122の下方において、処理ビーム128を経由した基板110の並進的な走査を容易にする。
【0037】
処理ビーム128は、ビーム幅131を有する。本発明の実施例では、必要に応じて、真空処理チャンバ104の圧力を単に変更するだけで、ビーム幅131を容易に調整することができる。チャンバ圧力を高めると、小さく、より集中されたビーム幅131が提供される傾向がある。小さなビームは、より高い単位体積当たりのエネルギーを有し、小さな粒子、例えば100nm未満のサイズの粒子の除去が、より効率的となる傾向がある。チャンバ圧力を低下させると、より大きな、非集中性のビーム幅131が得られる傾向にある。大きなビームは、単位体積当たりのエネルギーがより小さく、大きな粒子の除去がより効率的となる傾向があり、単位時間当たりより大きな領域がクリーニングでき、および/または基板110上のデリケートな特徴物の損傷のリスクが高まる。
【0038】
図1、2、3には、機器100のチャンバ圧力とビーム幅131の間の関係を概略的に示す。3つ全ての図において、機器100は、チャンバ圧力が相互に異なることを除いて、同じである。例えば、図1には、チャンバがあるチャンバ圧力、例えば12Torrにある場合の、ビーム幅31を有する処理ビーム128を示す。図3には、処理ビーム128の別の実施例を示す。ここでは、チャンバ圧力は、例えば19Torrまで上昇している。高いチャンバ圧力の結果、図3において、ビーム幅131は、より小さくなる。図2には、処理ビーム128のさらに別の実施例を示す。ここでは、チャンバ圧力は、図1図3におけるチャンバ圧力よりも小さく、例えば4Torrである。低い圧力の結果、ビーム幅131は、より広くなる。
【0039】
回転式および並進式チャック112は、並進機構136に取り付けられる。並進機構136は、出口122の下方の並進経路130に沿って、移動式チャック112を並進させる上で効果的な態様で、チャック112に結合され、小型電子機器基板110は、予備チャンバ120から分配される処理ビーム128を経由して移動される。実際の効果では、基板110が回転および/または並進された際に、チャック112の並進は、基板110にわたる処理ビーム128の走査を助長する。並進は回転と区別され、チャック112の並進により、チャック112の回転軸132は、チャンバ104内のある位置から別の位置に移動する。回転においては、チャック112がチャンバ110内で並進移動しても、回転軸132とチャック112の間の相対位置は、変化しない。並進機構136は、並進ロッド138により、チャック11に結合される。その結果、並進機構136の動作により、チャック112の対応する並進が生じる。
【0040】
1または2以上の並進ロッド138は、処理チャンバ104の内側と外側の両方の部分を有する。ロッド138が前後に移動するように操作されると、ロッド138の連続部分は、チャンバ104により提供されるチャンバ104の保護された囲い(極低温処理の場合、しばしば、真空囲いである)に出入りする。シール界面は、ハウジング出口142に、ロッド138の環境気密シールを提供し、この並進中に、チャンバ104内での保護された環境、例えば真空環境の維持が助長される。
【0041】
並進機構136は、ロッド138の動作を可能にする、いかなる電気的、機械的、電気機械的、油圧式、または気圧式装置を有してもよい。並進機構136は、小型電子機器基板110の所望の並進が可能になる上で十分な範囲の動きを提供するように設計され、ロード、アンロード、および処理動作が容易化されてもよい。例えば、処理の間、基板110は、予備チャンバ120から放射される処理ビーム108の領域を介して、少なくとも一部が走査される。処理中、基板110は、該基板110の直径の一部または全体にわたって、ビーム128を介して、例えば最大300mm/秒のような好適な速度で、ノズル105が基板110の所望の位置を走査するように、並進および/または回転される。
【0042】
処理噴霧152は、1または2以上の好適なノズルを介して、予備チャンバ120内に分配される。一例では、予備チャンバ120に、単一のノズル146が取り付けられる。ノズル146の詳細は、図1乃至図3に概略的に示され、図4により詳しく示されている。ノズル146は、第1の端部148から第2の端部150まで延伸する。第1の端部148は、1または2以上の流体源166を有する流体供給システム164と流体的に結合される。流体源166の少なくとも一つは、加圧および冷却流体を有する。ノズル146は、1または2以上のオリフィスを有し、これらを介して、処理噴霧が分配される。一例では、第2の端部150は、単一のノズルオリフィス151を有し、処理噴霧152が予備チャンバ120に導入されると、これを介して、流体システム164から得られる1または2以上の流体が、ノズル146から分配される。
【0043】
ノズル146の第2の端部150は、好適な陥凹距離154(図4参照)で、予備チャンバ120内に奥まって配置される。また、ノズルオリフィスは、予備チャンバ120の側壁156およびカバー158から奥まって配置され、ノズルオリフィスの上部、側部、および下部に、上部空間124が形成される。好適実施例では、予備チャンバ120は、円筒形状を有し、ノズル146は、チャンバ120の中心軸160(図4参照)上に配置される。この対称的で奥まったノズルの配置により、処理噴霧152が最初に予備チャンバ120内に確実に分配されることが助長される。予備チャンバ120は、処理チャンバ104と開放流体連通されているため、処理噴霧152は、チャック112に保持された基板110の上に誘導される処理ビーム128として、予備チャンバ120から処理チャンバ104内に分配される。処理ビーム128は、チャンバ104内の圧力変化によって調整されるビームサイズまたは幅131を有することが有意であり、この場合、ビームサイズまたは幅131は、必要に応じて、チャンバ104の制御可能な真空圧力を調節することにより調整できる。
【0044】
また、理論に拘束されることを望むものではないが、予備チャンバ120に対して対称で奥まったノズル配置は、限られた体積内の限られた度合いで、予備チャンバ120により提供される処理噴霧が、処理ビーム128として処理チャンバ104内に分配される前に、均一に形状化され、膨張されることを確実に助長すると考えられる。この形状化効果は、少なくとも部分的に予備チャンバ120を満たす形状化ストリーム162として、概略的に示されている。この効果は、洗練された処理ビーム128の提供を助長し、このサイズは、必要に応じて、単にチャンバ圧力を調整することにより、容易かつ正確に調整できる。処理噴霧152が直接、処理チャンバ104内の基板110の上部の上部空間124に分配される場合、そのような洗練された制御可能な処理ビーム128を形成する機能は、低減される。
【0045】
予備チャンバ120にノズル146を取り付けることにより、さらなる利点が得られる。第1の追加の利点は、加熱された処理チャンバにおける極低温クリーニングの有効性に関する。ある実施のモードでは、処理環境の1または2以上の態様が加熱され得る。そのような態様は、チャンバカバー部103、チャック112、および/または予備チャンバ120の壁の1または2以上を加熱することを含む。従来の予想では、予備チャンバ120の壁のような、これらの部材の1または2以上の加熱は、極低クリーニング特性を低下させる。予備チャンバ120により、処理噴霧52が処理ビーム128に形状化される本発明の実施では、そのような低下は、大きく軽減され、ある例では、観測されなくなる。
【0046】
追加の重要な利点は、クリーニング特性に関する。処理ビーム128の基板上パターンは、処理ビーム128内で生じるさらなるクリーニングにより、部分的により均一でより効果的となる。主要ビームの外側の横方向のクリーニングは、あまり顕著ではない。これは、ビームエネルギーが正しく定められた領域に、集中または集束されることを意味する。エネルギーは、正しく定められた領域に集中されるため、単位面積当たりのビームパワーがより高くなり、小さな粒子が除去されるという利点が得られる。
【0047】
ノズル146は、流体ストリームが予備チャンバ120に噴霧152として分配された際に、流体ストリームを膨張させ、冷却するように構成される。ノズル146から、加圧および冷却された流体ストリームが予備チャンバ120の低圧環境に分配されると、供給された加圧冷却流体は、ガスクラスタ、液体クラスタ、および/または固体粒子を有するエネルギーストリームに変換される傾向となる。この変換は、加圧冷却流体がより低い圧力の環境に分配された際に生じる十分な冷却効果により、発生する。これらの粒子は、最終的に、処理ビーム128を形成し、基板110の汚染物質に衝突する。衝突により、汚染物質が押しのけられ易くなり、これらは、基板110から、および排気プレナム108を介して処理チャンバ104から排出される。汚染物質の除去は、基板110のクリーニングに極めて有効であり、これは、小型電子機器産業における装置の製造における基準と合致する。
【0048】
一実施例では、処理噴霧152、形状化ビーム162、および/または処理ビーム128は、極低温エアロゾル、極低温エアロゾルジェット、ナノエアロゾル噴霧、およびガスジェットクラスタなどの形態であってもよい。ただし、本発明は、極低温処理機器に限定することを意図するものではなく、これは、単なる説明のために示される。本発明の原理は、基板110のような試料が真空処理チャンバ内で処理される、いかなる他のシステムに導入されてもよい。各種要求される特性の尺度に合致する本発明の多くの機能の説明として、システム100は、極低温処理における本発明の一実施例を示し、温度、圧力、ガス流速、および他の多くの処理条件は、基板の処理のために制御される。
【0049】
ノズル105は、供給ライン170によりノズル105に結合された1または2以上の流体供給源166を有する流体供給システム164からの流体ストリーム(例えば、1もしくは2以上のガス、および/または1もしくは2以上の液体の流れ)を受容する。必要な場合、流体供給システム164は、さらに、冷却システム168を備え、流体は、ノズル146を介して膨張し予備チャンバ120に分配される前に、所望の温度に冷却される。流体は、ライン172により、流体源166から冷却システム168に供給される。冷却流体は、ライン173を介して、冷却システム168から供給ライン170に供給される。
【0050】
一実施例では、流体システム164からノズル146に供給される、少なくとも一つの流体は、10psigから900psigの範囲の圧力で供給され、好ましくは10psigから500psigの範囲の圧力、より好ましくは10psigから100psigの範囲の圧力で供給されてもよい。流体の温度は、50Kから320Kの範囲であり、好ましくは70Kから320Kの範囲であり、より好ましくは70Kから150Kの範囲であってもよい。流体ストリームがチャンバ106および106に流れ、分配される限り、実施のモードは、気体、液体、および/または同伴固体材料を有する流体の供給を含んでもよい。好ましくは、流体は、該流体が気体、および/または液体を含むような、圧力および温度で供給される。ある実施のモードでは、加圧冷却流体は、加圧冷却流体の少なくとも99重量%が気体となるように、ノズル146に供給されてもよい。別の実施のモードでは、加圧冷却流体は、少なくとも流体の10質量%が液体であり、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満が固相となるように、ノズル146に供給されてもよい。流体供給源166は、1または2以上の加圧冷却流体を有してもよい。そのような流体は、気体および/または液体であってもよい。好ましくは、加圧冷却流体は、少なくとも一種のガスを含む。好適なガスまたは液体の例は、窒素、アルゴン、He、水素、Xe、CO2、ネオン、クリプトン、およびこれらの組み合わせの1または2以上を含む。ある実施例では、加圧冷却ガスまたは液体は、アルゴンである。別の実施例では、加圧冷却ガスまたは液体は、窒素である。別の実施例では、加圧冷却ガスまたは液体は、窒素とアルゴンを、アルゴン対窒素のモル比で、1:100から100:1の範囲、好ましくは1:20から20:1、より好ましくは1:10から10:1の範囲で含む。
【0051】
二酸化炭素、窒素、および/またはアルゴンを含むこれらの実施例では、流体は、さらに、1または2以上の追加のガスまたは液体を有してもよい。ある実施例では、追加のガスまたは液体は、ヘリウム、水素、ネオン、またはこれらの組み合わせを含み、アルゴン、二酸化炭素、および/または窒素に対する追加ガスの全量のモル比は、1:100から100:1の範囲であり、好ましくは、1:1から10:1の範囲である。特定の混合物には、アルゴンおよびヘリウム;アルゴンおよび水素;アルゴン、水素、およびヘリウム;窒素およびヘリウム;窒素および水素;窒素、水素、およびヘリウム;二酸化炭素およびヘリウム;二酸化炭素および水素;二酸化炭素、水素、およびヘリウムが含まれる。
【0052】
チャンバ110に分配される処理材料は、真空システム174を用いて排出されてもよい。また、真空システム174を使用して、処理チャンバ104が適当なサブ大気圧の処理圧力に維持されてもよい。真空システム174は、1または2以上のポンプを有し、真空圧力が所望のレベルにされてもよい。
【0053】
処理情報のモニター、受信、および/または保管に、制御システム176(1または2以上の集積制御装置を有してもよい)が使用されてもよい。例えば、制御システム176は、メモリ178を有し、処理レシピ、コマンド構造、ユーザインターフェース、リアルタイム処理情報、履歴処理情報、フィード供給、温度制御、圧力制御、加熱制御、チャック浮遊および回転、チャック並進、基板ロードおよびアンロード、チャック112上の基板固定、および処理制御フィードバックなどが保管されてもよい。制御システム176は、コンピュータプロセッサ180を使用して、これらの動作を実施し、システム100の他の部材とインターフェース化されたネットワーク182にわたって、他の信号および指令を受信し、指示してもよい。
【0054】
図4には、機器100の予備チャンバおよびノズルをより詳しく示す。ハウジング102は、予備チャンバ120をハウジング102のカバー部103に一体化する特徴部を有する。これらの部材は、チャンバ本体186およびチャンバカバー158を有する。チャンバ本体186は、円筒状貫通ボアを有し、予備チャンバ120に円筒形状が提供される。また、チャンバ本体186は、スペーサブロックとして機能し、ノズル146のノズルオリフィス151と予備チャンバ120の出口122の間に、所望の陥凹距離154を提供することを助長する。背の高いチャンバ本体186を使用することにより、陥凹距離154が大きくなる一方、短いチャンバ本体186の使用では、陥凹距離154が小さくなる。従って、チャンバ本体86の適切な長さを選定することにより、ノズルオリフィス151と基板110の間の全体の距離を調整する方法が提供される。
【0055】
上部シール192は、円筒状本体186とカバー158の間に、環境気密シール界面を提供することを助長する。下部シール194は、円筒状本体186と蓋カバー部103の間に環境気密シール界面を提供することを助長する。
【0056】
この実施例では、供給ライン170(図1乃至3、および図4参照)は、真空被覆導管として示されている。この構成は、加圧冷却流体がノズル146に供給される際に、加圧冷却流体を低温に維持することを助長する。供給ライン170は、結合部材196によりノズルに接続される。結合部材196は、メス部材198およびオス部材200を有し、これらが嵌合され、ノズル146が供給ライン170の端部にクランプ固定される。ガスケット202を用いて、ノズル146と供給ライン170の間の環境気密シールの提供が助長されてもよい。
【0057】
所与のノズル146において、背の高いチャンバ本体186は、通常、深い(大きな)陥凹距離を提供するのに対し、短いチャンバ本体186は、通常、浅い(小さな)陥凹距離を提供する。本発明の実施では、各種範囲の陥凹距離が使用され得る。一実施例では、陥凹距離154は、5mmから200mmの範囲であり、好ましくは10mmから50mmの範囲であってもよい。特定の実施例では、23.5mmの陥凹距離が好適であると認められる。
【0058】
ノズル146は、第1の本体210および第2の本体222を有する。第1の本体210は、供給ライン170に接続される。第2の本体222は、第1の本体210に取り外し可能に取り付けられ、オリフィス151を有する。このオリフィスを介して、加圧冷却流体が分配され、処理噴霧152(図1乃至3に示されている)が提供される。本実施例では、機械式ネジ203を使用して、第2の本体222が第1の本体210に取り付けられる。第2の本体222は、必要な際に、異なる処理に対応する異なるノズル出口形状およびサイズを提供するため、容易に除去され、別の第2の本体と置換される。
【0059】
図1乃至図4には、機器100の実施例を示す。図において、チャンバ天井123は、通常、予備チャンバ120の出口122と同一平面にされる。天井123と下側の基板110の間の限られた空間は、ノズル146から放出される処理ビーム(例えば噴霧152)を制限し、誘導することを助長する。ある実施のモードでは、この制限および誘導により、基板110の表面にわたって、処理ビームの半径方向の流れ成分が促進され、助長される。図9には、機器400の別の実施例を示す。図において、予備チャンバ組立体402の構成が、主として、小さな閉じ込めおよび誘導機能を提供することを助長する点を除き、予備チャンバ組立体402の別の配置により、処理ビーム404の小さな閉じ込めおよび誘導を提供することが助長される。ある実施のモードにおいて、この制限は、基板410の表面にわたる処理ビーム404の半径方向の流れを促進する。
【0060】
図9を参照すると、機器400は、処理チャンバ408を定める処理チャンバハウジング406に固定された、予備チャンバ組立体402を示す。回転式および並進式チャック412上に、小型電子機器基板410の形態の試料が支持される。チャック412は、必要に応じて、時計回りまたは反時計回りの回転の自由度415で、軸413の周りを回転するように操作される。少なくとも2つの並進可能な方向における並進の自由度417を提供するため、回転式および並進式チャック412は、並進機構424に取り付けられる。並進機構424は、移動式チャック412が移動経路に沿って効果的に並進される態様で、チャック412に結合され、これにより小型電子機器基板410の、処理ビーム404を経由した移動が可能となる。そのような並進は、直線状であっても、非直線状であってもよい。並進機構424は、1または2以上の並進アーム426により、チャック412に結合され、並進機構424の操作により、チャック412の対応する移動が生じる。
【0061】
並進アーム426は、処理チャンバ408の内側および外側の、両方の部分を含む。並進の自由度417により、アーム426が前後に移動するように操作された際に、アーム426の一連の部分は、チャンバ408(極低温処理の場合、しばしば、真空囲いである)の保護された囲いに出入りする。好適なシール界面により、ハウジングの出口425に、環境気密シールが提供され、この移動中、チャンバ408内の保護された環境、例えば真空、を維持することが助長される。
【0062】
チャンバ408に分配される処理材料は、好適な真空システム423を用いて、排気ライン422から排出されてもよい。また、そのような真空システム423を使用して、処理チャンバ408を、適切なサブ大気圧の処理圧力に維持してもよい。そのような真空システム423は、1または2以上のポンプを有し、真空圧力が所望のレベルにされてもよい。
【0063】
予備チャンバ組立体402は、ノズル414を収容する予備チャンバ433を定める。予備チャンバ組立体402は、上端部431から下端部432まで延在する、筒状側壁430を有する。環状フランジ436は、下端部432から半径方向外側に向かって突出し、基板410の上部に天井を提供する。下端部432およびフランジ436、さらには天井の機能は、チャンバ408に向かって下方に突出し、フランジ436とチャンバハウジング406の上部表面442の間には、ギャップ440が設けられる。この構成により、予備チャンバ組立体402の突出により提供される天井438は、処理ビーム404の流れが基板410の表面に収容され、誘導され、その後基板410の表面を覆うことを助長する。
【0064】
予備チャンバ組立体402は、ノズル414を有する。ノズル414は、上端部431に近接して組立体402に取り付けられる。ノズル414は、ノズル出口オリフィス415を有し、これは、予備チャンバ433の内部に奥まって設置される。この構成の結果、処理ビーム404は、まず、ノズル414から予備チャンバ433に放射され、処理ビーム404が形状化される。次に、処理ビーム404は、処理チャンバ408に向かって下方に誘導され、基板410が処理される。
【0065】
ノズル414は、供給ライン420によりノズル414に結合された1または2以上の流体供給源448を有する流体供給システム446からの流体ストリーム(例えば、1もしくは2以上のガス、および/または1もしくは2以上の液体)を受容する。必要な場合、流体供給システム446は、さらに、冷却システム450を備え、ノズル414を通じて膨張され、予備チャンバ402に分配される前に、流体が所望の温度に冷却される。流体はライン452により、流体源448から冷却システム450に供給される。ライン453は、冷却システムをライン420に結合する。
【0066】
流体ストリームは、前述の機器100のノズル146に供給される流体ストリームのような、温度および圧力で、ノズル414に供給されてもよい。ノズル414に供給される流体ストリームは、機器100のノズル146に供給される流体ストリームに関して前述したような組成を有してもよい。ノズル414に供給される流体ストリームは、機器100のノズル146に供給される流体ストリームに関して前述したような、ガスおよび/または液体内容物を有してもよい。
【0067】
制御システム460(1または2以上の集積制御装置を有してもよい)は、処理情報のモニター、受信、および/または保管に使用されてもよい。例えば、制御システム460は、メモリ462を有し、処理レシピ、コマンド構造、ユーザインターフェース、リアルタイム処理情報、履歴処理情報、フィード供給、温度制御、圧力制御、加熱制御、チャック浮遊および回転、チャック並進、基板ロードおよびアンロード、チャック112上の基板固定、および処理制御フィードバックなどが保管されてもよい。制御システム460は、コンピュータプロセッサ464を使用して、これらの動作を実施し、機器400の他の部材にインターフェース化されたネットワーク466にわたって、他の信号および指令を受信し、指示してもよい。
【0068】
機器400の動作は、突出する予備チャンバ組立体402がフランジ436を有し、処理ビーム404の制限および誘導が助長される点を除き、機器100の動作と同様である。一方、機器100では、天井123は、主として、機器100に使用される処理ビームの制限および誘導を助長する表面である。
【0069】
図10には、予備チャンバ組立体402の代替構成例を含む機器400が改変される方法を示す。図10において、機器400には、予備チャンバ組立体402が導入され、その出口437は、表面442と同一平面化され、ノズル414は、ノズル出口オリフィス415が処理チャンバ408に向かって突出するように延伸される。この変更例では、表面442は、基板410を覆う天井として機能し、ビーム404の制限および誘導が助長される。また、ノズル出口オリフィス415が予備チャンバ433の内部に奥まって配置されず、代わりにチャンバ433を超えて、処理チャンバ408に突出される場合であっても、予備チャンバ433、およびノズル出口オリフィス415の上部の出口437の位置により、処理チャンバ408内の圧力変化に応答して、ビーム404の形状化が助長されることが予想される。
【0070】
本明細書を通じて参照される「一実施例」または「ある実施例」は、実施例に関連して記載された、特定の特徴物、構造、材料、または性質が、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれることを意味するものの、これらが全ての実施例に存在することを意味するものではない。従って、本明細書の各種箇所における「一実施例」または「ある実施例」と言う用語の出現は、必ずしも本発明の同じ実施例を参照するとは限られない。また、1または2以上の実施例において、特定の特徴物、構造、材料、または性質は、任意の好適な方法で組み合わされてもよい。各種追加の層および/または構造が含まれてもよく、および/または記載された特徴は別の実施例では削除されてもよい。
【0071】
本願に使用される「小型電子機器基板」または「基板」は、概して、本発明による機器のような処理機器において、処理される対象または試料を表し、そのような対象または試料は、小型電子機器装置の一部または全体を構成することを意図する。小型電子機器基板は、特に半導体または他の電子装置のような、装置のいかなる材料部分または構造部分を有してもよく、例えば、半導体基板のようなベース基板構造、または薄膜のような、ベース基板構造の上の、もしくはこれを覆う層であってもよい。従って、基板は、いかなる特定のベース基板構造、下地層もしくは上部層、パターン化されたもしくは非パターン化物に限定されることも意図するものではなく、むしろ,任意のそのような層またはベース基板構造、ならびに層および/またはベース構造の任意の組み合わせを含むことが想定される。以下の記載では、特定の種類の基板を参照するが、これは単に一例を示すためのものであり、限定的ではない。記載された技術は、小型電子機器基板に加えて、フォトリソグラフィー技術を用いた小型電子機器基板のパターン化に使用される、レクチル基板のクリーニングにも利用できる。
【0072】
次に、以下の一例としての実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
【0073】
(実施例1)
図5を参照すると、300nmの小さな粒子のクリーニングを実証するため、試験(試験1、2)が実施された。無垢のシリコンウェハ200は、表面201が30nmのシリカ粒子で汚染された後、それぞれ異なる2つのチャンバ圧力で、極低温エアロゾル処理ビームに暴露された。第1の試験では、19Torrの比較的高いビーム圧力で、比較的集中された処理ビームを使用した。第2の試験では、これが、4Torrのより低いチャンバ圧力で、より大きなより拡散された処理ビームと比較された。他の条件は同じであった。
【0074】
試験用ウェハの準備のため、無垢のシリコンウェハ200の上に、30nmのシリカ粒子を湿式設置し、3時間保持後、図1および図4による極低温処理ツールの真空チャンバに配置した。ツールは、チャンバ圧力が制御できるように構成された。円筒状予備チャンバにはノズルが取り付けられ、ノズルオリフィスは、基板から50mm離された。ノズルオリフィスは、直径が1.9mmであった。また、ノズルは、円筒状予備チャンバ内に27mm奥まって配置された。予備チャンバは、42mmの直径であった。
【0075】
試験の実施のため、ノズルに、-173℃(100K)、21psigで、加圧冷却アルゴンを供給し、ウェハ200に向けて流体処理ビームを形成した。第1の試験は、チャンバ圧力設定値が4Torrの、比較的低い圧力で実施した。低圧での第1の実験では、基板は、15SLM(標準リットル/分)で流れる処理ビームを通るように、ウェハの中心から75mm離れたビームが集束される位置まで、予備チャンバの下方で平行移動させた。次に、ウェハ200は、静止位置に保持され、10秒間、予備チャンバから100SLMが流された。本実験は、19Torrのチャンバ圧力で、繰り返された。
【0076】
各試験の後、ウェハ表面を分析し、処理後にウェハ表面に残留する粒子の分布を評価した。通常、粒子は、得られる処理ビームの設置面積において除去されるが、処理ビームの設置面積の外側の表面では、粒子が残留する。
【0077】
図5には、4Torr(試験1)および19Torr(試験2)の圧力での試験結果が概略的に示されている。結果から、4Torrで形成された処理ビームは、より大きく拡散性であり、ウェハ表面201には、環状のクリーニング設置面積202が得られることが示されている。この環状設置面積202は、ノズルから、4Torrのチャンバ圧力でウェハ200に放射される処理ビームの形状に対応する。また、これは、ノズルの中心軸210からの距離の関数としてのクリーニング効率(すなわち、表面201から除去された粒子の百分率)を示す、対応するクリーニングプロファイル206により示されている。プロファイル206は、環状ゾーン212で生じたクリーニングにおける効率曲線208を示す。ゾーン214により示されるように、ノズルの直下では、実質的にいかなるクリーニングも生じていなかった。
【0078】
19Torrで形成された処理ビームは、ウェハ表面201にタイトな円形のクリーニング設置面積204として示されているように、より小さく緻密であった。このタイトな設置面積204は、ノズルから、19Torrの圧力でウェハ200に放射される処理ビームの形状に対応する。ビームは、4Torrで形成されるビームよりも平行化され、より集束されている。また、これは、ノズルの中心軸220からの距離の関数としてのクリーニング効率を示す、対応するクリーニングプロファイル216により示されている。プロファイル216は、円形ゾーン222で生じるクリーニングにおける効率曲線218を示す。19Torrで形成されるビームは、対応するクリーニングプロファイルに示すように、ノズルの直下にクリーニングを提供する。ノズルの中心軸200は、曲線218の中心領域で中心化され、19Torrでは、ノズルの直下で、実質的なクリーニングが生じていることが示されている。
【0079】
4Torrで形成されるより大きな環状ビームは、大きなクリーニング領域の場合、大きなスループットが提供されるため、より好ましい場合がある。ノズルに対して回転および/または並進させ、ウェハを走査することにより、走査によって、ある時間点において、ノズルの直下の領域がクリーニングされない場合であっても、ウェハ全体が迅速にクリーニングされる。また、4Torrで形成されるより拡散性の流れは、デリケートな構造が含まれていない、未パターン化基板に好適である。
【0080】
19Torrで形成されるより集束された流れは、基板が凹部を有する場合、より大きな角度が付いた横方向の流れに比べて、ビームがそのような凹部に対して、より直接的な視野方向を有する点で、より好ましい。また、小さなビームは、小さな粒子のクリーニング、またはデリケートな構造のクリーニングに、より適する。
【0081】
ビームサイズは、単に圧力を調整することにより、容易かつ迅速に制御される。その結果、同じ基板の走査に際して、ビームサイズを要望に応じて変更することができる。これにより、あるプロファイルで、ある部分を処理し、他の部分を異なるビームプロファイルで処理することができる。他の部分は、順番に、両方のプロファイルで処理されてもよい。そのような順序は、複数のサイクルを経由して、繰り返されてもよい。
【0082】
(例2)
流速およびチャンバ圧力が、ウェハ表面からの粒子のクリーニングに使用される流体処理ビームの形状およびサイズにどのように影響するかを評価する試験を実施した。試験は、30nmのシリカ粒子で表面が汚染された、300mmの無垢のシリコンウェハを用いて実施した。表2-1に示した条件を用い、4つの異なる試験(試験3、4、5、6)において、汚染ウェハを流体処理ビームに暴露した。
【0083】
各試験用の試験ウェハを準備するため、無垢のシリコンウェハ200に、30nmのシリカ粒子を湿式設置し、1時間保持した後、これを図1および図4による極低温処理ツールの真空チャンバに配置した。ツールは、チャンバ圧力が制御できるように構成された。円筒状予備チャンバにはノズルが取り付けられ、ノズルオリフィスは、基板から50mm離された。ノズルオリフィスは、直径が0.0925インチ(2.35mm)であった。また、ノズルは、円筒状予備チャンバ内に27mm奥まって配置された。予備チャンバは、42mmの直径であった。
【0084】
4つ全ての試験において、表2-1に示した予備膨張圧力、-173℃(100K)で、ノズルに加圧冷却アルゴンを供給した。ノズルに供給したアルゴンの圧力および温度は、ノズルに供給される加圧冷却アルゴンが供給ラインの中で気体として維持することができ、液体物が回避されることが確実に補償されるように選定した。4つ全ての試験において、流体は、ノズルから予備チャンバに放射され、その後ガスクラスタを含む流体処理ビームとして、処理チャンバに導入された。ガスクラスタは、主に液体粒子および/または固体粒子から形成される処理ビームを用いる場合に比べて、装置特徴物に対する損傷のリスクを低減した状態で、大きな粒子(100nm超)および小さな粒子(100nm未満)の優れたクリーニングを提供するため、有意である。
【0085】
【表2-1】
各試験において、ビームは、静止配置で10秒間、ウェハをクリーニングするため配置され、使用された。各試験の後、ウェハ表面を分析し、処理後にウェハ表面に残留する粒子の分布を評価した。通常、粒子は、得られる処理ビームの設置面積において除去されるが、処理ビームの設置面積の外側の表面には残留する。
【0086】
図6aおよび図6bには、試験の結果を示す。図6aには、試験3(破線)および試験4(実線)における、ノズル軸(mm)からの関数としてのHRE(%)のプロットを示す。図6bには、試験5(破線)および試験6(実線)における、ノズル軸(mm)からの関数としてのHRE(%)のプロットを示す。HRE(%)は、中心ノズル軸からの距離の関数としてのヘイズ除去効率を表す。これは、無垢のシリコンウェハ上に、粒子を意図的に設置し、ヘイズレベルを意図的に変化させた際のヘイズ信号の百分率変化として表され、その後、ヘイズ信号が結果として変化するかどうかを定めるために処理される。ノズル分配からの処理の間、暴露される領域におけるヘイズ信号の変化は、クリーニングに変換される。このアプローチは、粒子走査ツールの解像度よりも小さくできる、小さな粒子におけるビームプロファイルに関する詳細を得る方法である。
【0087】
160slmで実施された試験3および4に関し、図6aには、19Torrの比較的高いチャンバ圧力を用いた場合、ノズルの直下でクリーニングできる、よりタイトなクリーニングビーム(ノズル軸から延伸する半径20mmで、直径約40mm)が得られることを示す。ただし、約10mmの半径では、ノズルの直下に比べて、さらなるクリーニングが生じる。このクリーニングビームの設置領域は、略円形であった。一方、7Torrまでチャンバ圧力を低下させると、ビームは幅広になり、環状設置領域(ノズル軸から、約5mmから約40mm、半径方向外側に延在し、内環境界の直径は、約10mmであり、外環境界の直径は、約80mmである)が現れ、ノズルの直下では、実質的にクリーニングは生じなかった。また、試験4のHREピークが試験3に比べて低下していることにより表されているように、環状の場合、ビーム強度が低下した。
【0088】
図6aに示すように、100slmで実施した試験5および6の場合も、同様のパターンの結果が認められる。ただし、100slmの低い流速では、より小さなHREピークで示されているように、160slmに比べて低強度のビームが提供される。19Torrのチャンバ圧力での試験5(実線)では、ノズルの下をクリーニングする、比較的タイトな円形ビームが形成された。一方、チャンバ圧力が4Torrの試験6(破線)では、小さなHREピークを有する幅広の環状ビームが形成される。
【0089】
また、100slmの流速で、2.35mmのノズルオリフィスを用いた試験5および6の結果が、例1における、100alm、1.9mmの小さなノズルオリフィスを用いた結果と比較される。例1におけるクリーニング効果は、高く、これは、より限縮されたノズルオリフィスでの同等の流れは、高いクリーニング効率を有する、高いエネルギービームを提供する傾向にあることを示唆している。従って、小さなオリフィスを用いることは、高いクリーニング効率を得るための実際の多くのモードにおいて、有益である。ただし、大きなオリフィスの使用も、デリケートな被処理装置特徴物への過度な損傷を回避する上で、依然として有益である。
【0090】
(例3)
流速、ノズルオリフィスサイズ、およびギャップ距離(図4において、ギャップ距離126として示されている)が、ウェハ表面からの粒子のクリーニングに使用される流体処理ビームの形状およびサイズに、どのように影響するかを評価する試験を実施した。試験は、100nmのシリカ粒子で表面が汚染された、300mmの無垢のシリコンウェハを用いて実施した。表3-1に示した条件を用い、3つの異なる試験(試験7、8,9)において、汚染ウェハを流体処理ビームに暴露した。3つ全ての試験において、表3-1に示した予備膨張圧力、-173℃(100K)で、ノズルに加圧冷却アルゴンを供給した。アルゴンの圧力および温度は、ノズルに供給される加圧冷却アルゴンが供給ラインの中で気体として維持することができ、液体物が回避されることが確実に補償されるように選定した。3つ全ての試験において、ノズルは、その出口オリフィスが予備チャンバの外側に配置され、処理チャンバに突出するように配置した。従って、ノズル出口は、予備チャンバ内に奥まっては配置されなかった。予備チャンバは、依然として、放出ビームの上方で開放され、ビーム軸の上部のこの開放体積により、依然、圧力変化に対応して、ビームの形状化が助長されるものと考えられる。流体は、ノズルから放出され、ガスクラスタを含む流体処理ビームとして処理チャンバに入る。
ガスクラスタは、主に液体粒子からおよび/または固体粒子から形成される処理ビームを用いる場合に比べて、装置特徴物に対する損傷のリスクを低減した状態で、大きな粒子(100nm超)および小さな粒子(100nm以下)の優れたクリーニングを提供するため、有意である。
【0091】
【表3-1】
各試験において、ビームは、静止配置で10秒間、ウェハをクリーニングするため配置され、使用された。各試験の後、ウェハ表面を分析し、処理後にウェハ表面に残留する粒子の分布を評価した。通常、粒子は、得られる処理ビームの設置面積において除去されるが、処理ビームの設置面積の外側の表面には残留する。
【0092】
図7および図8には、試験の結果を示す。図7には、ウェハクリーニングマップ300(試験3)、302(試験4)、および304(試験5)を示す。マップは、得られた処理ビームの形状に対応するクリーニング領域、および処理ビームの外側のウェハ表面の領域に対応する未クリーニング領域を示す。図8には、各試験において得られた、クリーニング効率プロファイル308(試験7)、310(試験8)、および312(試験9)を示す。プロファイル308、310、および312には、HRE(%)として表されたクリーニング効率が示されている。
【0093】
ウェハマップ300およびクリーニングプロファイル308は、小さなギャップ、大きなオリフィス、低いチャンバ圧力、および高い流速で形成されたビームが、どのようにして、ウェハ表面に環状のクリーニング設置面積を発生させる環境ビームを形成するかを示す。これは、幅広のクリーニング領域を提供し、ノズルの直下は、実質的にクリーニングされない。この種のビームを用いて、回転および/または並進ウェハをクリーニングした場合、高いスループットで、ウェハ表面全体が迅速に処理される。
【0094】
予備チャンバとウェハ表面の間のそのような小さなギャップで環状クリーニングビームが提供される試験7の機能は、直感に反し、有益である。拘束されることは望まないが、ガスクラスタ処理ビームを使用した際に得られる環状を説明できる、想定される理論が提案される。ノズルの下方の中心領域は、クリーニングが生じる環状領域に比べて、比較的高圧の領域になると考えられる。そのような高圧領域では、ガスクラスタは、そのような狭いギャップ間隔における有効なクリーニング剤になることは難しい。ガスクラスタ間で多くの衝突が生じ、中心領域においてエネルギーが使い尽くされる結果、クリーニングにエネルギーを利用することができなくなるためである。その結果、ノズルの直下には、いわゆるデッドスポットが生じる。デッドスポットは、低いチャンバ圧力で大きなノズルオリフィスを用い、高い流速のガスクラスタを狭いギャップ間隔で用いる特殊性に関連する可能性がある。一方、ガスクラスタは、環状領域において、より大きな速度エネルギーを維持しやすく、そこでのクリーニングが達成される。
【0095】
ウェハマップ302および304、ならびにクリーニング効率プロファイル310および312は、大きなギャップ間隔、小さなオリフィス、および高いチャンバ圧力をどのように用いて、集束され平行化されたガスクラスタ処理ビームが使用される状況を提供し、ノズルの直下をクリーニングする小さな処理ビームを形成するかを示す。そのような集束され、平行化されたビームは、試験7で得られる拡散性の環状ビームに比べて、高いエネルギー密度を有する。前述の記載では、処理システムの特定の形状、ならびに使用される各種部材および処理の記載のような、特定の細部が示された。しかしながら、本願の技術は、これらの特定の細部とは異なる他の実施例において、実施されてもよいことに留意する必要がある。そのような細部は、説明用であり、限定的なものではない。記載された実施例は、添付図面を参照して示されている。同様に、十分な理解を提供するため、説明用に、特定の数、材料、および構成が記載されている。しかしながら、実施例は、そのような特定の細部を含まずに実施されてもよい。同様の参照符号により、実質的に同じ機能の構成を有する部材が示されており、従って、冗長な記載は省略されている。
【0096】
各種実施例の理解を促進するため、複数の別個の動作として、各種技術について説明した。記載の順番は、これらの動作が必ず順番に実施されることが必要であると解されるものではない。むしろ、これらの動作は、記載の順番に実施される必要はない。記載の動作は、示された実施例とは異なる順番で実施されてもよい。各種追加の動作が実施され、および/または追加の実施例では、記載の動作が省略されてもよい。
【0097】
当業者には、同じ発明の目的を達するため、示された技術の動作に、多くの変形例があることが理解される。そのような変形例は、開示の範囲に網羅されることが意図される。従って、本発明の実施例に関する前述の記載は、限定することを意図するものではない。むしろ、本発明の実施例に対するいかなる限定も、以下の特許請求の範囲に提供される。
【0098】
本願に記載の全ての特許、特許出願、および刊行物は、それぞれの全体が参照により取り入れられる。前述の詳細な記載は、理解を明確にする目的のみのため、提供される。これから、いかなる不要な限定も理解されるものではない。本発明は、示され記載された正確な詳細に限定されるものではない。当業者に明らかな変形例は、請求項に定められた本発明の範囲に含まれる。
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