(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】乾癬の治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230929BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230929BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230929BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P17/06
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
(21)【出願番号】P 2020567123
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 US2019034423
(87)【国際公開番号】W WO2019232070
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520464500
【氏名又は名称】アブセントラ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リアン,バートランド シー.
(72)【発明者】
【氏名】ルイズ,ステイシー
(72)【発明者】
【氏名】ファリナ,クリストファー ジョン
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポリポタンパク質B100(ApoB100)の断片に結合することができる抗体または抗体断片を含む、医薬組成物であって、乾癬または乾癬性関節炎を治療する、その重症度を軽減する、その進行を減速する、またはそれを抑制することを、それを必要とする対象にて行う方法に使用するための医薬組成物であり、
該方法が、アポリポタンパク質B100(ApoB100)の断片に結合することができる有効量の抗体または抗体断片を前記対象に投与することを含み、
その際、ApoB100の前記断片は配列番号1のアミノ酸配列またはその活性部位を含み、前記抗体はそれぞれ配列番号2、3及び4のHCDR 1(HCDR1)、HCDR 2(HCDR2)及びHCDR 3(HCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つ、または3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と、それぞれ配列番号5、6及び7のLCDR 1(LCDR1)、LCDR 2(LCDR2)及びLCDR 3(LCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つまたは3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む、前記
医薬組成物。
【請求項2】
ApoB100の前記断片がアルデヒド誘導体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗体が配列番号8の重鎖可変領域(V
H)、もしくは配列番号9の軽鎖可変領域(V
L)、またはその双方を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体が配列番号10の重鎖、もしくは配列番号11の軽鎖、またはその双方を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体がオルチクマブである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記乾癬が尋常性乾癬である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記対象が非プラーク形態の乾癬を有さず、前記非プラーク形態が乾癬性紅皮症、滴状乾癬または膿疱性乾癬を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記対象がヒトであり、前記抗体がオルチクマブであり、オルチクマブが約330mg/月の用量で約3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヵ月間皮下投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体がオルチクマブであり、それが少なくとも5mg/kgの初回用量とそれに続く複数回の後続用量、それぞれ少なくとも2mg/kg/週、少なくとも2.5mg/kg/2週、または少なくとも6mg/kg/月で静脈内投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体または抗体断片が1~10μg/kg、10~100μg/kg、100~500μg/kg、200~500μg/kg、300~500μg/kg、400~500μg/kg、1~5mg/kg、5~10mg/kg、10~15mg/kg、15~20mg/kg、20~25mg/kg、25~50mg/kg、
または50~75mg/kgで投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象がさらに、前記投与前にアテローム性動脈硬化症の症状を示し、且つ前記投与後、前記対象が動脈内で低下したプラーク体積を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記方法が、さらに、局所コルチコステロイド、ビタミンD類似体、局所レチノイド、角質溶解剤、コールタール、紫外線A、紫外線B、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、抗インターロイキン(IL)-12/23抗体、抗IL-23抗体、抗IL-17抗体、またはそれらの組み合わせを投与することを含み、前記ビタミンD類似体がカルシトリオール、カルシポトリエン、マキサカルシトールまたはタカルシトールを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記対象が、乾癬または乾癬性関節炎の症状を示し、UVA療法、UVB療法、局所ステロイド、またはそれらの組み合わせに対して不応性である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
乾癬または乾癬性関節炎がない対照の対象と比べて、前記対象が高い量の腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、C-反応性タンパク質(CRP)、またはそれらの組み合わせを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記方法が、さらに、乾癬もしくは乾癬性関節炎の症状を示す対象または乾癬もしくは乾癬性関節炎と診断されている対象を選択することを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ApoB100の断片に結合することができる抗体または抗体断片を含む、
乾癬または乾癬性関節炎に対する受動免疫を
対象に付与する方法に使用するための医薬組成物であって、前記方法が、乾癬または乾癬性関節炎の治療のためにApoB100の断片に結合することができる治療有効量の抗体または抗体断片を投与することを含み、ApoB100の前記断片が配列番号1またはその活性部位であり、前記抗体がそれぞれ配列番号2、3及び4のHCDR 1(HCDR1)、HCDR 2(HCDR2)及びHCDR 3(HCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つまたは3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と、それぞれ配列番号5、6及び7のLCDR 1(LCDR1)、LCDR 2(LCDR2)及びLCDR 3(LCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つまたは3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む、前記医薬組成物。
【請求項17】
前記抗体が配列番号8の重鎖可変領域(V
H)、もしくは配列番号9の軽鎖可変領域(V
L)、またはその双方を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗体が配列番号10の重鎖、もしくは配列番号11の軽鎖、またはその双方を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記抗体がオルチクマブであり、それが約330mg/月の用量で約3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヵ月間皮下投与される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記対象が乾癬または乾癬性関節炎と診断され、乾癬または乾癬性関節炎がない対象と比べて高い量の腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、C-反応性タンパク質(CRP)、またはそれらの組み合わせを特徴とする、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願には、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2018年5月29日に出願された米国仮特許出願第62/677,590号の米国特許法第119条のもとでの優先権の主張が含まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は患者における乾癬の治療及び乾癬患者におけるアテローム性動脈硬化症の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書における刊行物はすべて、各個々の刊行物または特許出願が具体的に且つ個々に参照によって組み込まれることが指示されたかのような同じ程度に参照によって組み込まれる。以下の記載には本発明を理解することにおいて有用であり得る情報が含まれている。本明細書で提供される情報のいずれかが先行技術であること、もしくは現在請求されている発明に関連すること、または具体的にもしくは暗黙的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
乾癬は、角化細胞の過剰増殖及び活性化された免疫細胞が原因で発生する皮膚の鱗屑性変色部として現れる慢性炎症性疾患である。治療には通常、例えば、局所コルチコステロイドを含む抗炎症剤、紫外線(UV)A及びB光療法または細胞毒性薬の使用のような免疫介在が関与する。局所治療及び/またはUVA/B療法に不応性である患者では、例えば、TNFα、IL-12/23及びIL-17に対するモノクローナル抗体、またはIL-23のみに対する抗体のような抗炎症性生物療法を開始する。
【0005】
乾癬に対する全身性治療の多くは、例えば、脂質異常症及び高血圧症のような循環器系の有害効果を有する。乾癬の炎症によって作り出される高度に酸化的な環境は、アテローム性動脈硬化症発症の2つの重要な寄与因子であるLDLの酸化及び内皮の機能障害を促進する。
【0006】
LDLが動脈壁の内皮下腔に浸潤し、反応性酸素種に接触すると酸化LDL(oxLDL)を生じ、それは乾癬で高度に上方調節される。LDLの酸化の過程を介して種々の付加体(例えば、マロンジアルデヒド[MDA])が形成され、それはさらにLDLを修飾する(すなわち、MDA-LDL)。酸化された/修飾されたLDLは炎症及びアテローム性動脈硬化症を支える数多くの方法で作用する。理論に束縛されないで、そのような分子は、おそらくレクチン型の酸化LDL受容体1(LOX-1)への結合を介して血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖及び移動に影響を及ぼし、それはアテローム性動脈硬化症のプラークの進行において重要な事象である。酸化された/修飾されたLDLはまたマクロファージによって取り込まれ、泡沫細胞になり、血管プラークにおける壊死性コアの蓄積及びプラークへの追加の単球の動員の双方を生じる炎症誘発性の応答を刺激する。この過程はプラークの成長と同様にプラークの不安定性に寄与する慢性炎症のフィードフォワードのループを提供する。高いレベルのoxLDL及びMDA-LDLはLOX-1と同様にCVD及び炎症を発症するリスクがある患者のプラーク及び血漿の双方で見いだされている。
【0007】
したがって、本発明の目的は対象にて乾癬を治療する、乾癬の重症度を軽減する、または乾癬の可能性を減らすことで使用するための組成物、及び対象にて乾癬を治療する、乾癬の重症度または可能性を軽減する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
以下の実施形態及びその態様は、例示的であり、且つ説明に役立つ、範囲を限定するものではないことが意図される組成物及び方法と併せて記載され、説明される。
【0009】
乾癬を治療する、その重症度を軽減する、その進行を減速するまたはそれを抑制することを、それを必要とする対象にて行う方法が提供されるが、それには、アポリポタンパク質B100(ApoB100)の断片に結合することができる抗体または抗体断片の有効量を対象に投与することが含まれ、その際、ApoB100の断片は配列番号1のアミノ酸配列またはその活性部位を含み、抗体は、それぞれ配列番号2、3及び4のHCDR_1(HCDR1)、HCDR_2(HCDR2)及びHCDR_3(HCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つまたは3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と、それぞれ配列番号5、6及び7のLCDR_1(LCDR1)、LCDR_2(LCDR2)及びLCDR_3(LCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つまたは3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む。
【0010】
さらなる実施形態は、乾癬を治療する、乾癬の重症度または可能性を軽減する方法がApoB100の配列番号1のエピトープに結合する抗体または抗体断片と併用して(例えば、順次または同時に)1つ以上の治療剤または治療法を投与することを含むと定めている。oxLDLの阻害剤またはマロンジアルデヒド修飾したLDLの阻害剤に対する例示的な追加の治療剤または治療法には、コルチコステロイド、紫外線(UV)A療法、UVB療法、抗TNFα抗体、抗IL-12/23抗体またはIL-23だけに結合する抗IL-23抗体、及び抗IL-17抗体が挙げられる。他の実施形態では、組成物はこれらの追加の治療剤または治療法を含まない。
【0011】
対象は、乾癬ではない対照の対象と比べて高い量の腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、C-反応性タンパク質(CRP)またはそれらの組み合わせを特徴とするとき乾癬であると診断され得る。他の態様では、対象は尋常性乾癬であると診断され、非尋常性乾癬の症状を有さないまたは示さない。
【0012】
開示されている方法の種々の実施形態には、乾癬を治療するためにまたは受動免疫を提供するためにほぼ1カ月間隔の期間あたり約330mgの抗体(例えば、オルチクマブ( o r t i c u m a b ))または抗体断片を成人ヒト対象に皮下投与することが含まれる。
【0013】
他の実施形態は、少なくとも5mg/kgまたは好ましくは少なくとも8mg/kgの量での初回用量で本明細書に記載されている方法にて有効量の抗LDL抗体または抗oxLDL抗体を投与することを提供する。いくつかの実施形態では、初回用量は患者にて乾癬の改善及び治療を生じるのに十分である。さらなる実施形態では、方法はさらに、少なくとも約2mg/kg/週、少なくとも約2.5mg/kg/2週、または少なくとも約6mg/kg/月である量での後続用量の組成物を複数回投与することを含む。通常、記載されている方法における抗LDL抗体または抗oxLDL抗体の有効量は循環にて少なくとも4μg/mL、好ましくは循環にて少なくとも12μg/mLの抗体量を生じ;抗LDL抗体または抗oxLDL抗体の有効量は、長期間(例えば、少なくとも30分、1時間、2時間、3時間、4時間、1日、2日、3日、1週、2週、3週、1ヵ月、2ヵ月、または3ヵ月)、循環にて少なくとも4μg/mL、好ましくは循環にて少なくとも12μg/mLの抗体量を生じる複数回の用量を含む。いくつかの態様では、後続用量のそれぞれの量は初回用量とほぼ同じまたは初回用量未満であり、その際、後続用量は少なくとも3日、5日、7日、2週、3週または1カ月、互いに時間内で分離される。
【0014】
別の例示的な実施形態は、ネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体の段階的漸増用量を投与して乾癬を治療することを提供する。この実施形態では、ネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体(例えば、オルチクマブ)の単回用量投与の例示的な(出発)用量は0.005~0.01mg/kgの間であり(例えば、静脈内で);単回用量投与で投与される他の例示的な投与量のレベルは0.01~0.15mg/kgの間、0.15~0.75mg/kgの間、0.75~2.5mg/kgの間、2.5~7.5mg/kgの間、及び7.5~30mg/kgの間(例えば、静脈内で)である。例えば、単回用量の静脈内投与におけるオルチクマブの出発用量は0.007mg/kgであり;他の例示的な投与量は後続の単回用量の静脈内投与では0.05、0.25、1.25、5.0または15.0mg/kgであることができる。別の実施形態では、ネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体の単回用量の皮下投与は0.5~6mg/kgの間であり、複数回用量の皮下投与も0.5~6mg/kgの間である。例えば、1.25mg/kgでのネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体が皮下投与される。種々の実施形態では、投与量は各投与の日の特定された時間範囲の範囲内で投与され、複数回用量治療(例えば、4用量、3用量、5用量、または6用量)における各用量は±1日の時間ウインドウで1週間間隔にて投与される。別の例では、ネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体(例えば、オルチクマブ)は300mg~450mgの間(例えば、360mg)でヒト対象に投与され、任意で300mg~450mgの間(例えば、360mg)でのヒト対象への別の用量がそれに続き、その際、第2の用量は第1の用量から少なくとも70日間(最大91日まで)離す。抗体(例えば、オルチクマブ)は皮下投与での使用のために100~170mg/mL(例えば、150mg/mL)の濃度で製剤化されてもよく、または静脈内点滴のために大容量に希釈されてもよい。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の実施形態の種々の特徴を説明している添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0016】
例示的な実施形態は参照される図にて説明されている。本明細書で開示されている実施形態及び図は制約ではなく説明に役立つと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】8mg/kgの皮下(SC)負荷用量とそれに続く2mg/kgの毎週のSC投薬(実線)の後でのヒト薬物動態(PK)プロファイルのシミュレーションを示す。点線はオルチクマブの血清濃度の2つの所望の閾値(4μg/mL、一般に最低線、及び12μg/mL、さらに高い点線)を示す。
【
図2】SC投薬に基づいたヒトPKプロファイルのシミュレーションを示す。Aでは、0~96時間の間での上の実線は2mg/kgでの毎週頻度の投薬を示し;一般に24~96時間の間での真ん中の実線は2mg/kgでの隔週頻度の投薬を示し;一般に下の実線は2mg/kgでの毎月頻度の投薬を示す。Bでは、実線は5mg/kgでの負荷用量及び2mg/kgでの2週ごとの後続用量を示す。一般に、下の点線はオルチクマブの血清濃度の4μg/mLの所望の閾値を示す。一般に上の点線はオルチクマブの血清濃度の12μg/mLの所望の閾値を示す。
【
図3】フェーズIのデータ由来のPKパラメーターを用いた毎週のSC投薬後のヒトPKプロファイルのシミュレーションを示す。グラフにおける下から上への実線は0.5、1、1.25、2、2.5、4または6mg/kgでの投与量を表す。
【
図4】フェーズIのデータ由来のPKパラメーターを用いた隔週のSC投薬後のヒトPKプロファイルのシミュレーションを示す。グラフにおける下から上への実線は1、1.5、2または2.5mg/kgでの投与量を表す。
【
図5】フェーズIのデータ由来のパラメーターを用いた毎月のSC投薬後のヒトPKプロファイルのシミュレーションを示す。グラフにおける下から上への実線は2、3、4または6mg/kgでの投与量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で引用されている参考文献はすべて、まるで完全に記述されたかのように全体として参照によって組み込まれる。特に定義されない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語は本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,3rd ed.,Revised,J.Wiley & Sons(New York,NY,2006);March,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure,7th ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY,2013);及びSambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY,2012)は本出願で使用されている用語の多数に対する一般的な指針を当業者に提供する。抗体の調製の仕方の参考文献については、D.Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor NY,2013);Kohler and Milstein(1976),Eur.J.Immunol.6:511;Queen et al.米国特許第5,585,089号;及びRiechmann et al.,Nature,332:323(1988);米国特許第4,946,778号;Bird,Science,242:423-42(1988);Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988);Ward et al.,Nature,334:544-54(1989);Tomlinson I.and Holliger P.(2000)Methods Enzymol,326,461-479;Holliger P.(2005)Nat.Biotechnol.Sep;23(9):1126-36)を参照のこと。
【0019】
当業者は本明細書に記載されているものに類似するまたはそれらと同等である、本発明の実践で使用されてもよい多数の方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は記載されている方法及び材料に決して限定されない。本発明の目的で以下の用語が以下で定義されている。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、広義であり、ポリクローナル抗体、マウスの、ヒトの、ヒト適応、ヒト化された及びキメラのモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗体断片、二重特異性または多重特異性の抗体、二量体、四量体または多量体の抗体、ならびに単鎖抗体を含む免疫グロブリン分子を含む。
【0021】
免疫グロブリンは重鎖定常領域のアミノ酸配列に応じて5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに割り当てることができる。IgA及びIgGはさらにアイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として細分される。脊椎動物種の抗体軽鎖はその定常領域のアミノ酸配列に基づいて2つの明瞭に異なる型、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)の一方に割り当てることができる。
【0022】
「抗体断片」という用語は、例えば、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3、重鎖可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)のような重鎖及び/または軽鎖の抗原結合部位を保持する免疫グロブリン分子の一部を指す。抗体断片には、VL、VH、CL及びCHIのドメインからなる一価の断片であるFab断片;ヒンジ領域にてジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab)2断片;VH及びCHIのドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVL及びVHのドメインからなるFv断片;VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al(1989)Nature 341:544-546)が含まれる。VHドメイン及びVLドメインを操作し、合成リンカーを介して一緒に連結して、VH/VLドメインは分子内で対合して、またはVHドメインとVLドメインが別々の単鎖抗体構築物によって発現される場合、分子間で対合して一価の抗原結合部位、例えば、PCT国際公開番号WO1998/44001、WO1988/01649、WO1994/13804、及びW01992/01047にて記載された、単鎖Fv(scFv)またはジアボディを形成する、種々の型の単鎖抗体設計を形成することができる。これらの抗体断片は当業者に周知の技法を用いて得られ、断片は完全長抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0023】
抗体可変領域は3つの「抗原結合部位」によって中断される「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は相補性決定領域(CDR)のような種々の用語を用いて定義されており、VHにおける3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVLにおける3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)は配列の多様性に基づき(Wu and Kabat J Exp Med 132:211-50,1970;Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、または「超可変領域」、「HVR」もしくは「HV」、VHにおける3つ(H1、H2、H3)及びVLにおける3つ(L1、L2、L3)はChothia及びLesk(Chothia and Lesk Mol Biol 196:901-17,1987)によって定義されたような構造にて超可変である抗体の可変ドメインの領域を指す。他の用語には「IMGT-CDR」(Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55-77,2003)及び「特異性決定残基利用」(SDRU)(Almagro,Mol Recognit 17:132-43,2004)が含まれる。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベースは抗原結合部位の標準化された番号付け及び定義を提供する。CDR、HV、及びIMGTの概要説明の間の対応は、Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55-77,2003に記載されている。
【0024】
「フレームワーク」または「フレームワーク配列」は、抗原結合部位であると定義されたもの以外の可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記に記載されているように種々の用語によって定義することができるので、フレームワークの正確なアミノ酸配列は、抗原結合部位がどのように定義されたかによって決まる。
【0025】
「ヒト化抗体」は、抗原結合部位が非ヒト種に由来し、可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークが発現されたヒト免疫グロブリンまたは生殖細胞系遺伝子配列の正確なコピーではなくてもよいように、フレームワーク領域に置換を含んでもよい。
【0026】
「ヒト適応」抗体または「ヒトフレームワーク適応(HFA)」抗体は、米国特許公開番号US2009/0118127に記載された方法に従って適応させたヒト化抗体を指す。ヒト適応抗体は、CDR1及びCDR2のループと軽鎖CDR3ループの一部との最大のCDR及びFR類似性、長さ互換性ならびに配列類似性に基づいてアクセプターヒトフレームワークを選択することによってヒト化される。
【0027】
「ヒト抗体」は、フレームワーク及び抗原結合部位の双方がヒト起源の配列に由来する重鎖及び軽鎖の可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もまたヒト起源の配列に由来する。
【0028】
ヒト抗体は、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖または軽鎖の可変領域を含み、抗体の可変領域は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子または再構成された免疫グロブリン遺伝子を使用するシステムから得られる。そのようなシステムには、ファージ上に表示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリー、及び本明細書に記載されているようなヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するマウスのようなトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。「ヒト抗体」は、例えば、フレームワークまたは抗原結合部位における天然に存在する体細胞突然変異または置換の意図的な導入のために、ヒト生殖細胞系または再構成された免疫グロブリン配列と比較した場合、アミノ酸の差異を含有してもよい。通常、ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系または再構成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列で少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えば、Knappik et al.,J Mol Biol 296:57-86,2000)に記載されているようなヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列、または、例えば、Shi et al.,J Mol Biol 397:385-96,2010及びIntl.Pat.Publ.No.WO2009/085462に記載されているようなファージ上に表示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーに組み込まれた合成HCDR3を含有してもよい。抗原結合部位が非ヒト種に由来する抗体は、ヒト抗体の定義には含まれない。
【0029】
本明細書で使用されるとき「組換え抗体」という用語には、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックもしくはトランス染色体である動物(例えば、マウス)またはそれから調製されるハイブリドーマ(以下でさらに説明)から単離される抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離される抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、及びヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列に対するスプライシングを含む他の手段によって調製され、発現され、作成されまたは単離される抗体、あるいは二重特異性抗体のようなFabアーム交換を用いて試験管内で生成される抗体のような、組換え手段によって調製され、発現され、作成されまたは単離される抗体すべてが含まれる。
【0030】
本明細書で使用されるとき「モノクローナル抗体」という用語は単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示し、または二重特異性モノクローナル抗体の場合、2つの異なるエピトープに対して二重の結合特異性を示す。
【0031】
本明細書で使用されるとき「エピトープ」という用語は抗体が特異的に結合する抗原の一部を意味する。エピトープはふつう、アミノ酸または糖側鎖のような部分の化学的に活性がある(例えば、極性、非極性または疎水性)表面群から成り、特定の3次元構造特性と同様に特定の電荷特性を有することができる。エピトープは立体的な空間単位を形成する隣接する及び/または隣接しないアミノ酸で構成することができる。隣接していないエピトープについては、抗原の線形配列の異なる部分に由来するアミノ酸がタンパク質分子の折り畳みを介して3次元空間にて近接する。
【0032】
本明細書で使用されるとき「変異体」は、1つ以上の修飾、例えば、置換、挿入または欠失によって参照ポリペプチドまたは参照ポリヌクレオチドとは異なるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。
【0033】
「投与すること」及び/または「投与する」は本明細書で使用されるとき、医薬組成物を患者に送達するための任意の経路を指す。送達経路には、非侵襲性の経口(口から)、局所(皮膚)、経粘膜(鼻、頬/舌下、膣、眼及び直腸)及び吸入経路、と同様に非経口経路、及び当該技術分野で知られている他の方法が挙げられてもよい。非経口は、眼窩内、注入、動脈内、頚動脈内、被膜内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜、または経気管を含む、一般に注射に関連する送達経路を指す。非経口経路を介して、組成物は、注入用もしくは注射用の溶液もしくは懸濁液の形態、または凍結乾燥粉末としての形態であってもよい。
【0034】
「有益な結果」には、病状の重症度の軽減もしくは緩和、病状の悪化の防止、病状の治癒、病状の発症の防止、病状を発症する患者の機会の低下、及び/または患者の寿命もしくは平均余命の延長が含まれてもよいが、決してこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、病状は乾癬、または乾癬とアテローム性動脈硬化症の合併である。
【0035】
本明細書で使用されるとき「有効量」という用語は、疾患または障害の少なくとも1つ以上の症状を減少させるための医薬組成物の量を指し、所望の効果を提供するのに十分な量の薬理学的組成物に関する。本明細書で使用されるとき「治療有効量」という表現は、任意の医療に適用できる合理的な利益/リスクの比率で障害を治療するのに十分な組成物の量を意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている医薬組成物はさらに薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、治療用医薬組成物は、例えば、乾癬または乾癬とアテローム性動脈硬化症の合併及び/または関連する症状を治療する、抑制する、及び/またはその重症度及び/または期間を低減することを、それを必要とする対象にて行うのに使用される。
【0036】
症状の治療上または予防上で有意な軽減は、対照もしくは未治療の対象または本明細書に記載されている組成物を投与する前の対象の状態と比べて、測定されたパラメータにて、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上である。測定されるまたは測定可能なパラメーターには、臨床的に検出可能な疾患のマーカー、例えば、生体マーカー、と同様に臨床的に認められた症状のスケールあるいは乾癬及び/またはアテローム性動脈硬化症のマーカーに関連するパラメーターのレベルの上昇または低下が挙げられる。しかしながら、本明細書で開示されているような組成物及び製剤の合計1日使用量は、合理的な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。求められる正確な量は、治療される疾患の種類、対象の性別、年齢、及び体重のような要因に応じて異なるであろう。「効果のない」治療とは、対象に治療が施されたとき、1%、2%、3%、4%または5%未満の症状の改善があることを指す。
【0037】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、診断、予後、または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、家畜、農業用動物、動物園動物、スポーツ動物、愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、チチウシ;類人猿、サル、オランウータン及びチンパンジーのような霊長類;イヌやオオカミのようなイヌ科動物;ネコ、ライオン及びトラのようなネコ科動物;ウマ、ロバ及びシマウマのようなウマ科動物;ウシ、ブタ及びヒツジのような食用動物;シカやキリンのような有蹄動物;マウス、ラット、ハムスター及びモルモットのようなげっ歯類、等々が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、哺乳動物はヒト対象である。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「治療する」、「治療」、「治療すること」、または「改善」という用語は、疾患、障害、または病状に関連して使用される場合、治療上の処置及び予防的または予防上の措置の双方を指し、目的は症状または状態の進行または重症度を予防する、反転する、緩和する、改善する、抑制する、軽減する、減速する、または停止することである。「治療すること」という用語は、状態の少なくとも1つの副作用または症状を軽減するまたは緩和することを含む。1つ以上の症状または臨床マーカーが軽減すれば、治療は一般に「効果的」である。あるいは、病状の進行が低下または停止すれば、治療は「効果的」である。すなわち、「治療」には、症状またはマーカーの改善だけでなく、治療の非存在下で予想される症状の進行または悪化の停止または少なくとも減速も含まれる。また、「治療」は、有益な結果を追求するもしくは得ること、または治療が最終的に上手く行かなくても、個人が状態を発症する可能性を下げることを意味してもよい。治療を必要とする者には、状態を既に持つ者、と同様に状態を有する傾向にある者、または状態を予防する必要がある者が挙げられる。例えば、実施例3は、治療有効性、例えば、症状の改善を測定する実施形態を記述している。一態様では、ベースラインからの乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアの低下は改善を示している。別の態様では、ベースラインと比べて5ポイント制の治験責任医師の全般的評価(IGA)尺度が2ポイント改善し、「なくなった」または「ほぼなくなった」という指定ポイントに到達することは改善を示す。
【0039】
「統計的に有意」または「有意に」という用語は、差異があるという統計的証拠を指す。それは、帰無仮説が実際に真である場合に、帰無仮説を棄却する決定を下す確率として定義される。決定はp値を用いて行われることが多い。
【0040】
本明細書で使用されるとき「循環器疾患」は、心臓及び血管の障害を指し、動脈、静脈、細動脈、細静脈、及び毛細血管の障害を含む。循環器疾患の非限定的な例には、うっ血性心不全、不整脈、心膜炎、急性心筋梗塞、梗塞性心筋、冠状動脈疾患、冠状動脈性心疾患、虚血性心疾患、心筋症、脳卒中、高血圧性心疾患、心不全、肺心疾患、虚血性症候群、冠状動脈微小血管疾患、心不整脈、リウマチ性心疾患、大動脈瘤、心房線維化、先天性心疾患、心内膜炎、炎症性心疾患、心内膜炎、炎症性心肥大、心筋炎、弁心疾患、脳血管疾患、及び末梢動脈疾患、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0041】
「乾癬」は、皮膚に現れる隆起した赤い鱗屑性の変色部を引き起こす免疫介在性疾患を指す。皮膚の状態として、乾癬は皮膚細胞のライフサイクルを加速し、細胞を皮膚の表面に急速に蓄積させ、時にはかゆみ及び痛みを伴う。乾癬はさまざまな型を有することができる。例えば、尋常性乾癬(または尋常性乾癬)はこの疾患の一般的な形態であり、死んだ皮膚細胞または鱗屑の銀白色の蓄積で覆われた隆起した赤い変色部として現れる。これらの変色部またはプラークは、頭皮、膝、肘及び腰に現れることが多い。別の形態は滴状乾癬であり、それは皮膚の小さな赤い斑点で胴体及び手足に現れることが多いが、顔面及び頭皮にも現れ得る。斑点はふつう、尋常性乾癬ほど厚くないが、時間の経過とともに尋常性乾癬に発展し得る。屈曲性乾癬または逆乾癬は乾癬の別の形態であり、乳房の下または脇の下または鼠径部のような皮膚のひだに現れることが多い。この型の乾癬は赤く、光沢があり滑らかであることが多い。皮膚のひだからの汗及び水分は、この形態の乾癬が皮膚の鱗屑を落とすのを防ぐ。膿疱性乾癬は重症形態の乾癬であり、赤い皮膚に囲まれた多数の白い膿疱の形態で急速に進展する。3種の膿疱性乾癬、すなわち、von Zumbusch型、掌蹠膿疱症、及び肢端膿疱症は異なる症状及び重症度を有し得る。さらに、乾癬性紅皮症、または剥離性乾癬は、重度の火傷のように見える稀な乾癬の型である。この形態の乾癬は、広範囲に及び、赤く、鱗屑状である。この深刻な状態は、体温を制御できない患者を生じ得る。
【0042】
「乾癬性関節炎」は、乾癬を有する一部の人々に影響を与える炎症性関節炎の形態であり―銀色の鱗屑が上に付いた赤い皮膚の変色部を特徴とする状態である。乾癬性関節炎については、ほとんどの人が先ず乾癬を発症し、後に乾癬性関節炎と診断されるが、皮膚病変が現れる前に関節の問題が始まり得る。
【0043】
抗体とエピトープとの間の相互作用に関して「結合する」、「選択的に結合する」または「特異的に結合する」は、細胞表面上に存在する分子のような標的に10-5M(10000nM)以下、例えば、10-6M、10-7M、10-8M以下、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M以下のKDで結合する本明細書に記載されている抗体またはその抗体断片の能力を指す。特異的結合は、例えば、ポリペプチド剤の親和性及び結合力、ならびにポリペプチド剤の濃度によって影響を受け得る。当業者は、好適な細胞結合アッセイにおけるポリペプチド剤の滴定のような任意の好適な方法を用いて、本明細書に記載されているポリペプチド剤が標的を選択的に結合する適切な条件を決定することができる。
【0044】
本明細書で使用されるとき「と併用して」という用語は、2つ以上の治療剤を、混合物で一緒に、単剤として同時に、または任意の順序で単剤として連続して対象に投与できることを意味する。
【0045】
方法及びシステム
種々の実施形態は、アポリポタンパク質B100(ApoB100)の少なくとも1つの断片に結合する抗体または抗体断片を対象に投与することによって、乾癬を治療し、乾癬の重症度を軽減する方法を提供する。種々の実施形態では、該方法は受動免疫による乾癬の治療を提供する。
【0046】
種々の実施形態は、アポリポタンパク質B100(ApoB100)の少なくとも1つの断片に結合する抗体または抗体断片を対象に投与することによって、対象において乾癬を有する可能性を低減する方法を提供する。種々の実施形態では、該方法は乾癬を有する可能性を低減するために対象に受動免疫を提供する。
【0047】
種々の実施形態は、本明細書で開示されている方法における抗体または抗体断片がApoB100のネイティブの及び/または酸化されたエピトープp45に結合すると定めている。種々の実施形態は、本明細書で開示されている方法における抗体または抗体断片がApoB100のネイティブの及び/または酸化されたエピトープp45のみに結合すると定めている。ApoB100のP45はIEIGLEGKGFEPTLEALFGK(配列番号1)のポリペプチド配列を有する。酸化されたエピトープまたは酸化されたリポタンパク質には、リシン及びヒスチジンにマロン-ジ-アルデヒド(MDA)基を運ぶためのエピトープもしくはリポタンパク質の修飾、銅による酸化によって誘導される修飾(例えば、CuOxLDL)、ヒドロキシノネナールを運ぶための修飾、またはアルデヒドのハプテンを運ぶための修飾が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態は、本明細書で開示されている方法における抗体または抗体断片がさらにApoB100の1つ以上の断片に結合すると定めている。
【0048】
ApoB100はP1-P302として同定され得るペプチド断片を含有するが、それは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開番号US/2017/0340702ならびに米国特許第7,468,183号及び同第7,704,499号に記載されているような、隣接するペプチド間で重複するアミノ酸を有する。
【0049】
種々の実施形態は、対象にて乾癬を治療またはその重症度を軽減する方法が、オルチクマブ、あるいはオルチクマブのそれと同一の重鎖及び/または軽鎖を有する、またはオルチクマブのそれと同一の相補性決定領域を有するオルチクマブの変異体を投与することを含むが、これらに限定されないと定めており、それは以下でも詳述される。
【0050】
種々の実施形態は、対象における乾癬の可能性を低減する方法が、オルチクマブ、あるいはオルチクマブのそれと同一の重鎖及び/または軽鎖を有する、またはオルチクマブのそれと同一の相補性決定領域を有するオルチクマブの変異体を投与することを含むが、これらに限定されないと定めており、それは以下でも詳述される。さらなる態様では、該方法は対象に受動免疫を提供して乾癬を有する可能性を低減する。
【0051】
本明細書で開示されている方法の種々の実施形態は、治療後の対象には治療前と比べて、乾癬プラークがなくなったもしくはほぼなくなった、または5ポイント制の治験責任医師の静的全般的評価の2011年修正版(sIGA)、医師の全般的評価(PGA)尺度、及び膿疱性症状のスコア(PSS)の1つ以上に従った乾癬測定において2ポイント以上の改善を有することを含む。
【0052】
種々の実施形態は、本明細書で開示されている方法が、治療後の対象は治療前と比べて、4つの身体領域、すなわち頭頚部、上肢、体幹、及び下肢のうちの1つ以上にてプラーク面積を減少させていることを含むと定めている。他の実施形態は、本明細書で開示されている方法が治療後の対象は乾癬面積及び重症度指数(PASI)を減少させていることを含むと定めている。PASIは、頭頚部(H)、上肢(UL)、体幹(T)及び下肢(LL)の4つの身体領域の評価を組み合わせる。各領域における乾癬の影響を受けた皮膚の比率は、関与した比率:1(0~9%)、2(10~29%)、3(30~49%)、4(50~69%)、5(70~89%)または6(90~100%)を表す数値スコアが与えられる。各領域(H、UL、T、LL)内で、3つのプラーク徴候の重症度―紅斑(E)、肥厚/硬結(I)及び落屑/鱗屑(D)は0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)、または4(非常に重度)の5ポイント尺度で評価される。
【0053】
オルチクマブは、それぞれ配列番号2、3及び4に記述されるような重鎖相補性決定領域(HCDR)1(HCDR1)、2(HCDR2)及び3(HCDR3)と、それぞれ配列番号5、6及び7に記述されるような軽鎖相補性決定領域(LCDR)1(LCDR1)、2(LCDR2)及び3(LCDR3)とを含有するヒトモノクローナル抗体である。オルチクマブは配列番号8の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、配列番号9の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含有する。オルチクマブは配列番号10の重鎖アミノ酸配列、配列番号11の軽鎖アミノ酸配列を含有する。
【0054】
HCDR1、すなわち配列番号2はFSNAWMSWVRQAPGである。
【0055】
HCDR2、すなわち配列番号3はSSISVGGHRTYYADSVKGRである。
【0056】
HCDR3、すなわち配列番号4はARIRVGPSGGAFDYである。
【0057】
LCDR1、すなわち配列番号5はCSGSNTNIGKNYVSである。
【0058】
LCDR2、すなわち配列番号6はANSNRPSである。
【0059】
LCDR3、すなわち配列番号7はCASWDASLNGWVである。
【0060】
重鎖可変領域(VH)、すなわち配列番号8は示されているとおりである:
EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS NAWMSWVRQA PGKGLEWVSS ISVGGHRTYY ADSVKGRSTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYYCARIR VGPSGGAFDY WGQGTLVTVS。
【0061】
軽鎖可変領域(VL)、すなわち配列番号9は、示されているとおりである:
QSVLTQPPSA SGTPGQRVTI SCSGSNTNIG KNYVSWYQQL PGTAPKLLIY ANSNRPSGVP DRFSGSKSGT SASLAISGLR SEDEADYYCA SWDASLNGWV FGGGTKLTVL。
【0062】
重鎖、すなわち、配列番号10は示されているとおりである:
EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS NAWMSWVRQA PGKGLEWVSS ISVGGHRTYY ADSVKGRSTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYYCARIR VGPSGGAFDY WGQGTLVTVS SASTKGPSVF PLAPSSKSTS GGTAALGCLV KDYFPEPVTV SWNSGALTSG VHTFPAVLQS SGLYSLSSVV TVPSSSLGTQ TYICNVNHKP SNTKVDKKVE PKSCDKTHTC PPCPAPELLG GPSVFLFPPK PKDTLMISRT PEVTCVVVDV SHEDPEVKFN WYVDGVEVHN AKTKPREEQY NSTYRVVSVL TVLHQDWLNG KEYKCKVSNK ALPAPIEKTI SKAKGQPREP QVYTLPPSRD ELTKNQVSLT CLVKGFYPSD IAVEWESNGQ PENNYKTTPP VLDSDGSFFL YSKLTVDKSR WQQGNVFSCS VMHEALHNHY TQKSLSLSPG K。
【0063】
軽鎖、すなわち配列番号11は示されているとおりである:
QSVLTQPPSA SGTPGQRVTI SCSGSNTNIG KNYVSWYQQL PGTAPKLLIY ANSNRPSGVP DRFSGSKSGT SASLAISGLR SEDEADYYCA SWDASLNGWV FGGGTKLTVL GQPKAAPSVT LFPPSSEELQ ANKATLVCLI SDFYPGAVTV AWKADSSPVK AGVETTTPSK QSNNKYAASS YLSLTPEQWK SHRSYSCQVT HEGSTVEKTV APTECS。
【0064】
ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含む、対象にて乾癬を治療するまたはその重症度を軽減する方法が提供され、抗体はそれぞれ配列番号2~7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の1つ以上を含有する。
【0065】
ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含む、対象にて乾癬を治療するまたはその重症度を軽減する方法も提供され、抗体はそれぞれ配列番号2~7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の1つ以上を含有する。
【0066】
「HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の1つ以上」を含有する抗体は、抗体がCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3)の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つまたは6つすべてを含有する実施形態を包含する。本発明の一態様は、抗体オルチクマブの対応するCDRのアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体を提供し;さらに好ましくは、抗体が、抗体オルチクマブの対応するCDRの配列を有する2つまたは3つまたは4つまたは5つのCDRを有する;抗体が抗体オルチクマブの対応するCDRの配列を有する3または4のCDRを有するならば、抗体が抗体オルチクマブの対応するCDRの配列を有する3つの重鎖CDRすべてまたは3つの軽鎖CDRすべてを有することが好ましい;したがって、本発明のこの態様が、抗体オルチクマブの対応する3つの軽鎖CDRの配列を有する3つの軽鎖CDR、または抗体オルチクマブの対応する3つの重鎖CDRの配列を有する3つの重鎖CDRを含む抗体を含む;一層さらに好ましくは、抗体が抗体オルチクマブの対応するCDRの配列を有する3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDRを含む;抗体が抗体オルチクマブの対応するCDRの配列を有する6つのCDRすべてを含むわけではない場合、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの「非同一」CDRの一部またはすべてが抗体オルチクマブの対応するCDRの配列の変異体(「変異体」によって我々は、変異体が対応するCDRの配列と少なくとも50%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも 70%、一層さらに好ましくは少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する、最も好ましくは、変異体は、抗体オルチクマブの対応するCDRの配列と96%または97%または98%または99%の配列同一性を有する;通常、「変異体」CDR配列は抗体オルチクマブの対応するCDRの配列と5または4または3または2またはたった1のアミノ酸残基の差異を有するという意味を含む)を含むことが好ましい;且つ、本発明のこの態様は抗体オルチクマブを含むと定めている。例えば、実施形態の一態様は投与される抗体が配列番号2に記述されているようなHCDR1を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号3に記述されているようなHCDR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号4に記述されているようなHCDR3を含有すると定めている。さらに別の態様は投与される抗体が配列番号5に記述されているようなLCDR1を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号6に記述されているようなLCDR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号7に記述されているようなLCDR3を含有すると定めている。さらに別の態様は投与される抗体が配列番号2に記述されているようなHCDR1と配列番号3に記述されているようなHCDR2とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号2に記述されているようなHCDR1と配列番号4に記述されているようなHCDR3とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号2に記述されているようなHCDR1と配列番号5に記述されているようなLCDR1とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号2に記述されているようなHCDR1と配列番号6に記述されているようなLCDR2とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号2に記述されているようなHCDR1と配列番号7に記述されているようなLCDR3とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号3に記述されているようなHCDR2と配列番号4に記述されているようなHCDR3とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号3に記述されているようなHCDR2と配列番号5に記述されているようなLCDR1とを含有すると定めている。
別の態様は投与される抗体が配列番号3に記述されているようなHCDR2と配列番号6に記述されているようなLCDR2とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号3に記述されているようなHCDR2と配列番号7に記述されているようなLCDR3とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号4に記述されているようなHCDR3と配列番号5に記述されているようなLCDR1とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号4に記述されているようなHCDR3と配列番号6に記述されているようなLCDR2とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号4に記述されているようなHCDR3と配列番号7に記述されているようなLCDR3とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号5に記述されているようなLCDR1と配列番号6に記述されているようなLCDR2とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号5に記述されているようなLCDR1と配列番号7に記述されているようなLCDR3とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号6に記述されているようなLCDR2と配列番号7に記述されているようなLCDR3とを含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2~4に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3及び5に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びLDCR1を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3及び6に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は、投与される抗体がそれぞれ配列番号2、4及び5に記述されているようなHCDR1、HCDR3及びLDCR1を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、4及び6に記述されているようなHCDR1、HCDR3及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、4及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR3及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、5及び6に記述されているようなHCDR1、LDCR1及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、5及び7に記述されているようなHCDR1、LDCR1及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、6及び7に記述されているようなHCDR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、4及び5に記述されているようなHCDR2、HCDR3及びLDCR1を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、4及び6に記述されているようなHCDR2、HCDR3及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、4及び7に記述されているようなHCDR2、HCDR3及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、5及び6に記述されているようなHCDR2、LDCR1及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、5及び7に記述されているようなHCDR2、LDCR1及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、6、及び7に記述されているようなHCDR2、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号4、5、及び6に記述されているようなHCDR3、LDCR1及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号4、5、及び7に記述されているようなHCDR3、LDCR1及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号4、6、及び7に記述されているようなHCDR3、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号5~7に記述されているようなLCDR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。さらに別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2~5に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3及びLDCR1を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2~4及び6に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2~4及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3、5及び6に記述されているようなHCDR1、HCDR2、LDCR1及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3、5及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、LDCR1及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3、6及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、4、5及び6に記述されているようなHCDR1、HCDR3、LDCR1及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、4、5及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR3、LDCR1及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、4、6及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR3、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体が配列番号2、5、6及び7に記述されているようなHCDR1、LDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3~6に記述されているようなHCDR2、HCDR3、LDCR1及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3~5及び7に記述されているようなHCDR2、HCDR3、LDCR1及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、4、6及び7に記述されているようなHCDR2、HCDR3、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3、5、6及び7に記述されているようなHCDR2、LDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号4、5、6及び7に記述されているようなHCDR3、LDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。さらに別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2~6に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1及びLDCR2を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2~5及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3、4、6及び7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、3、5~7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、LDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2、4~7に記述されているようなHCDR1、HCDR3、LDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号3~7に記述されているようなHCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。さらに別の態様は投与される抗体がそれぞれ配列番号2~7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有すると定めている。
【0067】
本発明のさらなる態様は、乾癬を治療する、その重症度を軽減する、または乾癬に対する受動免疫を対象に提供する方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することから成り、抗体が、それぞれ配列番号2~7に記述されているようなHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含有すると定めている。
【0068】
ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含む乾癬を治療するまたはその重症度を軽減する方法が提供され、抗体は配列番号8に記述されているような可変重鎖領域(VH)及びそれぞれ配列番号5~7に記述されているようなLDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有する可変軽鎖領域(VL)を含有する。さらなる態様は、乾癬を治療するもしくはその重症度を軽減する方法、及び/または受動免疫を提供する方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号9の可変軽鎖領域(VL)と、それぞれ配列番号2~4に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含有する可変重鎖領域(VH)とを含有すると定めている。本発明のさらに別の態様は、対象にて乾癬を治療し、その重症度を軽減する方法、及び/または対象における乾癬の可能性を低減する方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号8の可変重鎖領域(VH)と配列番号9の可変軽鎖領域(VL)とを含有すると定めている。
【0069】
ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することが含む、乾癬の可能性を低減する方法、または対象に乾癬に対する受動免疫を提供する方法が提供され、抗体は配列番号8に記述されているような可変重鎖領域(VH)と、それぞれ配列番号5~7に記述されているようなLDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有する可変軽鎖領域(VL)とを含有する。さらなる態様は、対象にて乾癬を治療し、その重症度を軽減する方法及び/または乾癬の可能性を低減する方法が、ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号9の可変軽鎖領域(VL)と、それぞれ配列番号2~4に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含有する可変重鎖領域(VH)とを含有すると定めている。本発明のさらに別の態様は、対象にて乾癬を治療し、その重症度を軽減する方法及び/または対象において乾癬を有する可能性を低減する方法が、ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号8の可変重鎖領域(VH)と配列番号9の可変軽鎖領域(VL)とを含有すると定めている。
【0070】
乾癬を治療するまたはその重症度を軽減する方法も提供され、それには、ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することが含まれ、抗体は配列番号10の重鎖と、それぞれ配列番号5~7に記述されているようなLDCR1、LDCR2及びLDCR3を含有する軽鎖とを含有する。実施形態のさらなる態様は、方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号10の重鎖と配列番号9の可変軽鎖領域(VL)を含有する軽鎖とを含有すると定めている。本発明の別の態様は、方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号11の軽鎖と、それぞれ配列番号2~4に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含有する重鎖とを含有すると定めている。さらに別の態様は、方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号11の軽鎖と、配列番号8の可変重鎖領域(VH)を含有する重鎖とを含有すると定めている。あるいは、方法はApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体は配列番号10の重鎖と配列番号11の軽鎖とを含有する。
【0071】
乾癬の可能性を低減する方法、または乾癬に対する受動免疫を対象に提供する方法も提供され、それには、ApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することが含まれ、抗体は配列番号10の重鎖と、それぞれ配列番号5~7に記述されているようなLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含有する軽鎖とを含有する。実施形態のさらなる態様は、方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号10の重鎖と配列番号9の可変軽鎖領域(VL)を含有する軽鎖とを含有すると定めている。本発明の別の態様は、方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号11の軽鎖と、それぞれ配列番号2~4に記述されているようなHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含有する重鎖とを含有すると定めている。さらに別の態様は、方法がApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体が配列番号11の軽鎖と、配列番号8の可変重鎖領域(VH)を含有する重鎖とを含有すると定めている。あるいは、方法はApoB100の配列番号1に記述されている断片に結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体は配列番号10の重鎖と配列番号11の軽鎖とを含有する。
【0072】
方法のさらなる実施形態は、対象にて乾癬と診断された対象の治療に好適であるネイティブLDL、酸化されたLDL(oxLDL)またはMDA修飾されたLDLの阻害剤を投与することと、乾癬の重症度を軽減することと、任意でアテローム性動脈硬化症の重症度またはそれを発症する可能性を軽減することとを含む。一実施形態では、阻害剤はアポリポタンパク質B100の酸化された断片に結合することができる抗oxLDL抗体またはその抗原結合断片である。別の実施形態では、酸化されたLDLの阻害剤はアポリポタンパク質B100の酸化された断片に結合することができる小分子、ポリペプチド、ペプチド、または核酸分子である。他の実施形態では、酸化されたLDLの阻害剤は、マロンジアルデヒド修飾されたLDLに結合することができる抗体または抗原結合断片である。例示的な実施形態では、酸化されたまたはマロンジアルデヒド修飾されたLDLの阻害剤は、LDLの酸化されたまたはMDA修飾された形態を標的とする、オルチクマブのようなモノクローナル抗体である。
【0073】
患者の選択
本明細書で開示されている方法は、いくつかの実施形態では、乾癬の1つ以上の形態を治療するまたは抑制することを、それを必要とする対象に有効量のオルチクマブを投与することによって行うことを含む。
【0074】
開示されている方法で提供されるいくつかの実施形態はさらに、乾癬の症状を示す、または乾癬と診断されている対象を選択することを含む。例えば、乾癬のある対象は乾癬のない対照の対象と比べて高い量の腫瘍壊死因子-α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、C-反応性タンパク質(CRP)、またはそれらの組み合わせを特徴とすることができる。いくつかの態様では、方法は、乾癬に対する典型的な治療(例えば、UVAまたはUVBによる治療;局所ステロイド)に不応性である対象における治療のためのものである。
【0075】
他の実施形態では、尋常性乾癬の対象に有効量のオルチクマブを投与することによって尋常性乾癬を治療するまたはその発症を抑制する方法が提供され、対象は少なくとも投与時には、乾癬性紅皮症、滴状乾癬または膿疱性乾癬のような乾癬の非尋常性形態を有さない。
【0076】
種々の実施形態は、本明細書で開示されている方法における乾癬が尋常性乾癬であり、乾癬性紅皮症、滴状乾癬または膿疱性乾癬のような乾癬の非尋常性形態を含まないと定めている。
【0077】
乾癬を治療するまたはその重症度を軽減する方法の他の実施形態は、尋常性乾癬の症状を示す、または尋常性乾癬と診断されている対象を選択することと、前述の抗体の特徴のいずれかに従って抗体またはその抗体断片を対象に投与することとを含む。
【0078】
本発明のさらなる態様は、乾癬を治療し、その重症度を軽減する方法、及び/または 乾癬の可能性を低減する方法が前述の抗体特徴のいずれかに従って対象に抗体またはその抗体断片を投与することを含み、その際、対象が尋常性乾癬の症状を示す、または尋常性乾癬と診断されているが、乾癬性紅皮症、滴状乾癬または膿疱性乾癬の症状を示さないと定めている。
【0079】
さらに他の実施形態は、本明細書で開示されている方法における対象がさらにアテローム性動脈硬化症と診断されている、またはその症状を示し、且つ方法がさらに尋常性乾癬に加えてアテローム性動脈硬化症の症状を軽減すると定めている。例えば、乾癬及びアテローム性動脈硬化症を治療するまたはその重症度を軽減する方法は、配列番号1に記述されているエピトープに結合する有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含み、抗体はオルチクマブまたはその抗原結合断片であり、対象は尋常性乾癬及びアテローム性動脈硬化症の症状を示す。
【0080】
方法が提供されるのはまた、対象がアテローム性動脈硬化症を有していない、それと診断されていない、またはその症状を示さない実施形態である。
【0081】
本発明の他の実施形態は、乾癬性関節炎を治療するまたはその発症を抑制することを、それを必要とする対象に有効量のオルチクマブを投与することによって行う方法を提供する。いくつかの実施形態における対象は、乾癬性関節炎と診断されている、その症状を示している、または乾癬性関節炎を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、乾癬及びアテローム性動脈硬化症の合併を治療する、その重症度を軽減する、その進行を減速する、または合併を抑制することを、それを必要とする対象において行うための上記に記載されている方法は、ApoB100の配列番号1に結合する抗oxLDL抗体の投与前の対象の尋常性乾癬の量のレベルと比べて抗oxLDL抗体の投与後のその量の低下を特徴とする。
【0083】
併用療法
さらなる実施形態は、乾癬を治療するまたはその重症度を軽減する方法が、別の治療剤と併用して有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含むと定めている。別の治療剤と併用して有効量の抗体または抗体断片を対象に投与することを含む、対象にて乾癬の可能性を低減する方法の実施形態も提供される。この併用で使用するための例示的な治療剤には、コルチコステロイド(例えば、コルチゾール、コルチコステロン、コルチゾン、アルドステロン)、ビタミンD類似体(例えば、カルシポトリオール、マキサカルシトール、タカルシトール及びカルシトリオール)、レチノイド(例えば、ソリアタン、アシトレチン、及びタザロテン)、角質溶解剤(例えば、サリチル酸)、コールタール、紫外線(UV)A療法、UVB療法、TNFαの阻害剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、エタネルセプトのような抗TNFα抗体;サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド;ペントキシフィリンのようなキサンチン誘導体;ブプロピオン)、抗IL-12/23抗体(例えば、ウステキヌマブ、STELARA(登録商標))、IL-23のみに結合するがIL-12には結合しない抗IL-23抗体(例えば、リサンキズマブ、グセルクマブ、チルドラキズマブ)、及び抗IL-17抗体(例えば、セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ)が挙げられる。
【0084】
該方法はまた、配列番号1に結合する抗体または抗体断片、別の治療剤、及び一般的に使用されるアジュバントを投与して抗体または抗体の混合物の吸収を増強することも含んでもよい。
【0085】
種々の実施形態では、開示された方法で投与される組成物は任意の投与経路を介した送達のために製剤化される。例えば、方法は、エアロゾル、鼻内、経口、経粘膜、経皮、非経口または経腸の経路を介した投与を含む。「非経口」は、眼窩内、注入、動脈内、被膜内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜、または経気管を含む、一般に注射に関連する投与経路を指す。非経口経路を介して、組成物は、注入用もしくは注射用の溶液もしくは懸濁液の形態、または凍結乾燥粉末としての形態であってもよい。非経口経路を介して、組成物は、注入用または注射用の溶液または懸濁液の形態であってもよい。経腸経路を介して、医薬組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、糖被覆錠剤、シロップ、懸濁液、溶液、粉剤、顆粒剤、エマルション、ミクロスフェアもしくはナノスフェア、または制御放出を可能にする脂質小胞もしくはポリマー小胞の形態であることができる。通常、組成物は注射によって投与される。
【0086】
投与量
通常、本明細書で開示されている方法における抗oxLDL抗体もしくは抗LDL抗体、または配列番号1に結合する抗体の有効量は、対象にて少なくとも4μg/mL、好ましくは少なくとも12μg/mLの血漿濃度を生じる。
【0087】
実施形態は、対象にて乾癬を治療するまたはその重症度を軽減する方法が、上記に開示されている抗体または抗体断片を約330mg/月で約3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヵ月以上対象に皮下投与することを含み、対象は成人であると定めている。
【0088】
他の実施形態は、乾癬を治療するために、または受動免疫を提供するために少なくとも8mgのオルチクマブ/患者のkg(例えば、83kgの平均的なヒト患者に対して664mg)で抗体または抗体断片を投与することを提供する。いくつかの実施形態は、5mgのオルチクマブ/患者のkg(例えば、83kgの平均的なヒト患者に対して415mg)~8mg/kgの間で抗体または抗体断片を投与することを提供する。いくつかの実施形態は、上記の投与量での毎月の投与計画でオルチクマブを投与することを提供する。
【0089】
他の実施形態は、乾癬を治療するために2mg/kg/週(83kgの平均的なヒト患者に対して166mg)以上;好ましくは4mg/kg/週(83kgの平均的なヒト患者に対して332mg)で抗体または抗体断片を毎週投与することを提供する。別の態様では、抗oxLDL抗体の組成物は、>2.5mg/kg/2週(例えば、83kgの平均的なヒト患者に対して208mg)にて隔週で投与される。さらに別の態様では、抗oxLDL抗体の組成物は、約6mg/kg/月(例えば、83kgの平均的なヒト患者に対して498mg)で毎月投与される。例えば、毎月の投薬は12ヵ月間または3ヵ月間実施されてもよい。
【0090】
さらに他の実施形態は、乾癬を治療するために800~900mg、900~1000mg、1000~1100mg、1100~1200mg、1200~1300mg、1300~1400mg、1400~1500mg、または1500~1600mgの少なくとも初回用量で抗体または抗体断片を投与することを提供する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法における有効量は、約1000~1500mgのオルチクマブの初回用量、続いて2、3、4もしくは5週間毎週投与される、及び/または1、2もしくは3ヵ月間毎月さらに投与される700~900mgの抗体の後続用量を含む。
【0091】
他の実施形態は、ネイティブLDLまたは酸化されたLDLに対する(例えば、配列番号1に結合する)抗体の段階的漸増用量を投与することを提供する。この実施形態では、ネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体(例えば、オルチクマブ)の単回用量投与の例示的な(出発)用量は0.005~0.01mg/kgの間であり(例えば、静脈内で);単回用量投与で投与される他の例示的な投与量レベルは0.01~0.15mg/kgの間、0.15~0.75mg/kgの間、0.75~2.5mg/kgの間、2.5~7.5mg/kgの間、及び7.5~30mg/kgの間(例えば、静脈内で)である。例えば、単回用量の静脈内投与におけるオルチクマブの出発用量は0.007mg/kgであり;他の例示的な投与量は後続の単回用量の静脈内投与における0.05、0.25、1.25、5.0または15.0mg/kgであることができる。別の実施形態では、ネイティブLDLまたは酸化されたLDLに対する抗体の単回用量皮下投与は、0.5~5mg/kgの間であり、且つ、複数回用量の皮下投与も0.5~5mg/kgの間である。例えば、1.25mg/kgでのネイティブLDLまたは酸化されたLDLに対する抗体が皮下投与される。種々の実施形態では、投与量は各投与の日の特定された時間範囲の範囲内で投与され、複数回用量治療(例えば、4用量、3用量、5用量、または6用量)における各用量は±1日の時間ウインドウで1週間間隔にて投与される。別の例では、ネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体(例えば、オルチクマブ)は300mg~450mgの間(例えば、360mg)でヒト対象に投与され、任意で300mg~450mgの間(例えば、360mg)でのヒト対象への別の用量がそれに続き、その際、第2の用量は第1の用量から少なくとも70日間(最大91日まで)離れている。抗体(例えば、オルチクマブ)は、さらに希釈することなく皮下投与での使用のために100~170mg/mL(例えば、150mg/mL)の濃度で製剤化されてもよく、または静脈内点滴のために大容量に希釈されてもよい。
【0092】
さらなる実施形態は、約10~50μg/期間、50~100μg/期間、100~150μg/期間、150~200μg/期間、100~200μg/期間、200~300μg/期間、300~400μg/期間、400~500μg/期間、500~600μg/期間、600~700μg/期間、700~800μg/期間、800~900μg/期間、900~1000μg/期間、1000~1100μg/期間、1100~1200μg/期間、1200~1300μg/期間、1300~1400μg/期間、1400~1500μg/期間、1500~1600μg/期間、1600~1700μg/期間、1700~1800μg/期間、1800~1900μg/期間、1900~2000μg/期間、2000~2100μg/期間、2100~2200μg/期間、2200~2300μg/期間、2300~2400μg/期間、2400~2500μg/期間、2500~2600μg/期間、2600~2700μg/期間、2700~2800μg/期間、2800~2900μg/期間または2900~3000μg/期間の範囲内である有効量の、配列番号1に結合し、且つ配列番号2~11の1つ以上の配列を有する抗体または抗体断片を対象に投与することを含む。期間は、1日、1週間、1ヵ月、または別の長さの時間である。一態様は、抗体(例えば、オルチクマブ)が期間ごとに上述の投与量のいずれかの毎週、隔週、または毎月の頻度で投与されることである。
【0093】
いくつかの実施形態では、方法は、酸化されたLDLの阻害剤(例えば、オルチクマブ)を対象に1~5日間、1~5週間、1~5ヵ月、または1~5年間投与することを含む。例えば、抗体は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20回の用量で対象に投与され、各用量は少なくとも3日、5日、1週間、2週間、1ヵ月、2ヵ月、またはそれらの組み合わせによって区切られる。他の実施形態では、第2の用量は、第1の用量の約2~3週間または約3週間後に投与され、第3の用量は、第1の用量の約5~6週間または約6週間後、等に投与される。別の実施形態では、第2の用量は第1の用量の約2~3ヵ月後、約2ヵ月後、約3ヵ月後または約4ヵ月後に投与され、第3の用量は第1の用量の約4~6ヵ月後、約5~6ヵ月後、約5ヵ月後または約6ヵ月後に投与される。
【0094】
他の実施形態は、乾癬を治療するために、または受動免疫を提供するために、ネイティブLDLまたは酸化されたLDLに対する抗体の段階的漸増用量を投与することを提供する。この実施形態では、ネイティブLDLまたは酸化されたLDLに対する抗体(例えば、オルチクマブ)の単回用量投与の例示的な(出発)用量は0.005~0.01mg/kgの間であり(例えば、静脈内で);単回用量投与で投与される他の例示的な投与量レベルは0.01~0.15mg/kgの間、0.15~0.75mg/kgの間、0.75~2.5mg/kgの間、2.5~7.5mg/kgの間、及び7.5~30mg/kgの間(例えば、静脈内で)である。例えば、単回用量の静脈内投与におけるオルチクマブの出発用量は0.007mg/kgであり;他の例示的な投与量は後続の単回用量の静脈内投与における0.05、0.25、1.25、5.0または15.0mg/kgであることができる。別の実施形態では、ネイティブLDLまたは酸化されたLDLに対する抗体の単回用量の皮下投与は0.5~5mg/kgの間であり、且つ、複数回用量の皮下投与も0.5~5mg/kgの間である。例えば、1.25mg/kgでのネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体が皮下投与される。種々の実施形態では、投与量は各投与の日の特定された時間範囲の範囲内で投与され、複数回用量治療(例えば、4用量、3用量、5用量、または6用量)における各用量は±1日の時間ウインドウで1週間間隔にて投与される。別の例では、ネイティブのまたは酸化されたLDLに対する抗体(例えば、オルチクマブ)は300mg~450mgの間(例えば、360mg)でヒト対象に投与され、任意で300mg~450mgの間(例えば、360mg)でのヒト対象への別の用量がそれに続き、その際、第2の用量は第1の用量から少なくとも70日間(最大91日まで)離す。抗体(例えば、オルチクマブ)は、さらに希釈することなく皮下投与での使用のために100~170mg/mL(例えば、150mg/mL)の濃度で製剤化されてもよく、または静脈内点滴のために大容量に希釈されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている方法と共に使用するための、抗LDL抗体もしくは抗oxLDL抗体、またはその類似体、医薬同等物もしくはペプチド模倣物の治療有効量は、用量当たり対象のkg当たり:1~10μg/kg、10~100μg/kg、100~500μg/kg、200~500μg/kg、300~500μg/kg、400~500μg/kg、1~5mg/kg、5~10mg/kg、10~15mg/kg、15~20mg/kg、20~25mg/kg、25~50mg/kg、50~75mg/kgであり;その際、各用量は毎日、毎週、毎月、または他の間隔で投与される。
【0095】
いくつかの実施形態では、乾癬を治療するための抗体または抗体断片の1つ以上のバイアル/用量に加えて、使用のための取扱説明書、希釈剤用のバイアル、またはその双方もキットに含まれる。
【0096】
組成物または薬剤
種々の実施形態では、本発明は、乾癬を治療する、その重症度を軽減する及び/または本明細書に記載されている乾癬の可能性を低減する方法において使用するための医薬組成物を提供する。医薬組成物は、ApoB100の配列番号1のエピトープに結合する抗oxLDL抗体のような酸化LDLの阻害剤と、薬学的に許容される担体とを含む。さらなる実施形態は、乾癬の症状を示す、または乾癬と診断されている対象にて乾癬を治療する、その重症度を軽減する、もしくは乾癬に対する予防を促進する、またはアテローム性動脈硬化症を治療する、その重症度を軽減する、もしくはアテローム性動脈硬化症に対する予防を促進するのに使用するための組成物または薬物を提供し、その際、薬物の組成物は、上記に開示されているようなApoB100の配列番号1のエピトープに結合する抗oxLDL抗体を、投与量(またはバイアル)あたり300mg~400mg、好ましくは約330mgの量にて、任意で薬学的に許容される担体と共にそれぞれ(例えば、対象への毎月の皮下投与のために)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヵ月以上含有する。他の実施形態は、組成物または薬物が、上記に開示されているようなApoB100の配列番号1のエピトープに結合する抗oxLDL抗体を、1回投与量(またはバイアル)における患者のkgあたり少なくとも5、6、7または8mgのオルチクマブの量で、及び任意で少なくとも2mg/kg/週、少なくとも2.5mg/kg/2週、または少なくとも6mg/kg/月のさらに多い投与量で3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヵ月以上含有すると定めている。さらなる実施形態は、組成物または薬物が、100~170mg/mLの濃度(例えば、150mg/mL)で且つさらに希釈せずに皮下投与で使用するために、または静脈内点滴用に大容量に希釈して使用するために抗体(オルチクマブ等)を含有すると定めている。
【0097】
本明細書で使用されるとき「薬学的に許容される担体」は、対象とする化合物をある組織、器官、または身体の一部から別の組織、器官、または身体の一部に運ぶことまたは輸送することに関与する薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクルを指す。例えば、担体は、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくはカプセル化材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。賦形剤の例には、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、防腐剤、抗酸化剤、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤、硬化剤、硬化剤、懸濁剤、界面活性剤、保湿剤、担体、安定剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、担体の各成分は、製剤の他の成分と相溶性でなければならないという点で「薬学的に許容可能」でなければならない。また、接触してもよい組織または器官と接触して使用するのに好適でなければならず、これは、それが毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または治療効果を過度に上回る任意のその他の合併症のリスクを伴ってはならないことを意味する。
【0098】
本発明に係る医薬組成物は治療有効量で送達されてもよい。正確な治療有効量は、所与の対象における治療の有効性に関して最も効果的な成績をもたらす組成物の量である。この量は、治療用化合物の特性(活性、薬物動態、薬力学、及び生物学的利用率を含む)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類及び病期、一般的な体調、所与の投与量に対する応答性、ならびに薬物の種類を含む)、製剤中の薬学的に許容される担体(単数)または担体(複数)の性質、及び投与経路を含むが、これらに限定されない種々の要因に応じて変化するであろう。臨床及び薬理学の当業者は、例えば、化合物の投与に対する対象の応答をモニターし、それに応じて投与量を調整することによって日常的な実験を介して治療有効量を決定することができるであろう。追加の助言については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro ed.20th edition,Williams & Wilkins PA,USA)(2000)を参照のこと。
【0099】
方法にて抗体を調製する
いくつかの実施形態では、前述の方法は特定の抗原エピトープに結合する抗体を含み、抗体は1つ以上の定義された配列を含有する。例えば、最新の組換えライブラリー技術を用いて、ネイティブのApoB、酸化されたApoB、またはMDA修飾されたApoBに対する治療用抗体を調製する。マウスハイブリドーマ細胞は大量の同一抗体を産生する一方で、これらの非ヒト抗体は人体によって異物として認識され、その結果、アレルギー反応を誘発することに加えてそれらの有効性及び血漿半減期が低下する。この問題を解決するために、アプローチの1つは、抗体のマウス可変ドメインがヒト定常領域に移され、主にヒトである抗体を生じるキメラ抗体を作成することである。このアプローチのさらなる改良は、抗原と接触したマウス抗体の領域、いわゆる相補性決定領域(CDR)がヒト抗体フレームワークに移され、ヒト化抗体を生じるヒト化抗体を開発することである。別のアプローチは、特定の抗体を生成するための動物の免疫付与に依存しない組換え技術を用いて完全にヒトの抗体を作り出すことである。代わりに、組換えライブラリーは膨大な数の既製の抗体変異体を含み、ライブラリーは任意の抗原に特異的な少なくとも1つの抗体を有する可能性がある。抗体断片が繊維状ファージ粒子の表面上でファージコートタンパク質との融合物として発現され、表示されるファージディスプレイシステムが使用されてもよい一方で、ファージディスプレイシステムは表示された分子をコードする遺伝子情報を同時に運ぶ。特定の抗原に特異的な抗体断片を表示するファージは、問題の抗原に結合することを介して選択されてもよい。次いで、単離されたファージを増幅してもよく、選択した抗体可変ドメインをコードする遺伝子を任意で、例えば、完全長免疫グロブリンのような他の抗体型に移し、当該技術分野で周知の適切なベクター及び宿主細胞を用いて大量に発現させてもよい。ファージ粒子上に表示される抗体特異性の型は異なってもよい。最も一般的に使用される型は双方とも抗体の可変抗原結合ドメインを含有するFab及び単鎖(scFv)である。単鎖型は、柔軟なリンカーを介して軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)で構成される。分析試薬または治療剤として使用する前に、表示された抗体の特異性は、FabまたはscFvのような可溶性型に移行させ、そのように分析される。後の工程では、望ましい特性を有すると同定された抗体断片を、完全長抗体のようなさらに他の型に移行させてもよい。
【0100】
ハイブリドーマを用いた抗体産生
細胞融合は免疫学の分野での当業者に周知の標準的な手順によって達成される。融合相手の細胞株及び融合方法及びハイブリドーマを選択すること及びmAbをスクリーニングすることは当該技術分野で周知である。例えば、これらの参照の内容が参照によって完全に本明細書に組み込まれる、Ausubel,下記、Harlow,下記、及びColligan,下記を参照のこと。
【0101】
抗酸化型LDL抗体は、抗体を分泌するハイブリドーマまたはトランスフェクトーマの細胞をマウスの腹腔内に注入し、適切な時間の後、高力価のmAbを含有する腹水を採取し、そこからmAbを単離することによって大量に作り出すことができる。非マウスハイブリドーマ(例えば、ラットまたはヒト)によるmAbのそのような生体内産生については、ハイブリドーマ細胞は好ましくは照射されたマウスまたは無胸腺のヌードマウスにおいて増殖させる。あるいは、抗体は、ハイブリドーマまたはトランスフェクトーマの細胞を試験管内で培養し、分泌されたmAbを細胞培養培地から単離する、または真核細胞もしくは原核細胞において組換え的に単離することによって作り出すことができる。
【0102】
抗酸化型LDL抗体の組換え発現
酸化されたLDLを阻害する組換えマウスまたはキメラマウス-ヒトまたはヒト-ヒト抗体は、本明細書で提供されている教示に基づく既知の技術を用いて本発明に従って提供することができる。例えば、Ausubel et al.,eds.Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,N.Y.(1987,1992,1993);及びSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照のこと。
【0103】
抗酸化型LDL抗体をコードするDNAは、重鎖定常領域(Hc)、重鎖可変領域(Hc)、軽鎖可変領域(Lv)及び軽鎖定常領域(Lc)のうちの少なくとも1つをコードするゲノムDNAまたはcDNAであることができる。マウスV領域抗原結合セグメントをコードするDNAの供給源として染色体遺伝子断片を使用する代わりの便利な方法は、例えば、Liu et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84:3439(1987)及びJ.Immunology 139:3521(1987)によって報告されているような、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築にcDNAを使用することである。cDNAの使用は、所望のタンパク質の合成を達成するために、宿主細胞に適切な遺伝子発現要素を遺伝子と組み合わせることを必要とする。cDNA配列の使用は、適切なRNAスプライシングシステムを欠く細菌または他の宿主でcDNA配列を発現させることができるという点で、ゲノム配列(イントロンを含有する)よりも有利である。
【実施例】
【0104】
以下の実施例は請求されている発明をさらに良好に説明するため提供されるのであって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。特定の材料が言及されている限りにおいて、それは単に説明を目的とするものであり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本発明の能力を行使することなく、且つ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を開発してもよい。
【0105】
実施例1.オルチクマブを投与されたヒト患者にて改善された乾癬の症状。
安定したアテローム性動脈硬化症の患者にてオルチクマブ(LDLのMDA修飾されたエピトープに対するヒトモノクローナルIgG1抗体)を調べるフェーズ2a試験では、登録された4人の患者が乾癬の病歴を有することが分かった。4人の患者のうち3人にオルチクマブを静脈内(IV)投与した(1245mgの初回用量、続いて毎週830mg×3、次に毎月830mg×2)一方で、4人目の患者にはプラセボを投与した。この試験の過程で、乾癬のための併用薬物を投与された患者はいなかった。オルチクマブで治療された3人の患者のうち2人は乾癬の改善を経験した。1人の患者は初回用量の後に改善を報告した。UVA/B及び局所ステロイドに不応性だった第2の患者は肘と膝双方のプラークの改善を報告した。これらの結果は、LDLの酸化形態を標的とする抗炎症性分子であるオルチクマブによる治療が乾癬患者にて治療価値を実証することを示した。
【0106】
実施例2.シミュレーション及び実際の薬物動態(PK)
プラーク内で局所的にマクロファージの炎症誘発性活性を停止するオルチクマブの能力は、その治療活性の根底にある重要なメカニズムであると考えられていたので、焦点となった。オルチクマブを使用することに関する初期仮説は、全身区画からのoxLDLを中和することに関し、これは全身oxLDLの90%を中和するために4μg/mL=約28nM=11mgのオルチクマブを要した。さらなる試験管内のアッセイは、oxLDLが介在するサイトカイン放出の50%または90%の阻害(すなわち、単球走化性タンパク質1、MCP-1の阻害)を達成するために必要とされるオルチクマブの最小有効濃度への洞察を提供した:
MCP-1阻害のためのIC50:約10nM=1.5μg/mL=約4mg
MCP-1阻害のためのIC90:約30~80nM=4.5~12μg/mL=12.4~33mg
【0107】
MCP-1阻害のためのIC90としての低い範囲(12.4mgオルチクマブ)と比べて実施例1の臨床試験における投与量(1245mgの初回用量、続いて毎週830mg×3、次いで毎月830mg×2)は67倍及び100倍多かった。実施例1の臨床試験における投与量は、MCP-1阻害のためのIC90としての高い範囲(33mgのオルチクマブ)と比べて25倍及び38倍多かった。
【0108】
アテローム性動脈硬化症の患者では、高分子に対する内皮透過性が増加し、注入された高分子の動脈壁への取り込みが時間とともに急速且つ直線的であり、1時間以内に循環血流に対する平衡に達することが報告されている(Ross et al.,NEJM,1999)。
【0109】
この背景情報に基づいて、我々はシミュレーションモデルにて最大96時間少なくとも12μg/mLのオルチクマブの定常状態血漿濃度が得られる負荷投与量を提案した(
図1)。8mg/kgの負荷用量(平均83kgの患者で664mg)、続いて隔週~毎週の2mg/kg(166mg)皮下(SC)投薬。この負荷用量は、実施例1における負荷用量の1.9分の1であり、毎週の投薬は実施例1における毎週の投薬の5分の1であった。
【0110】
SC投薬に基づく別の設定のシミュレーションでは:
(1)2mg/kg(166mg)での毎週投薬は2~4日目の間で12μg/mLの閾値を達成した(
図2A);
(2)2mg/kgでの隔週投薬は12μg/mLの閾値を達成しなかったが、1~6日目からの4μg/mLの閾値を達成した(
図2A);
(3)2mg/kgでの毎月投薬は4μg/mLの閾値での持続的な曝露を達成しなかった(
図2A);
(4)5mg/kg(415mg)の負荷用量、続いて2mg/kgでの隔週投薬は12μg/mLの閾値を達成しなかったが、6日目まで4μg/mLを上回る曝露を維持した(
図2B)。
【0111】
オルチクマブの臨床試験では、以下の表1~4はPKデータを要約する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
Cmax、1.25mg/kgでの単回用量:1.25mg/kg=104mg、これはSC投与に対するIV投与で最大曝露量が6.9倍大きかった(半減期は双方とも20日);SC用量は4~12μg/mLの閾値に達していない。Cmax、360mgでの単回用量:360mg=4.34mg/kg(FIH試験の3.5倍)、SC投与に対するIV投与では9.2倍の最大曝露量(SCに対するIVで半減期は24.3日に対して33.5日);SC用量は4~12μg/mLの範囲に入る。
【0112】
その結果、シミュレートしたPKデータ及び実際のPKデータに基づいて、8mg/kg(664mg)が最適であるが、5mg/kg(415mg)でおそらく十分である。臨床試験における単回用量の半減期(すなわち、360mgの単回SC用量で24日)に基づいて毎月の投薬は合理的である。
【0113】
オルチクマブの別の設定の試験では:
(1)1mg/kgの毎週のSC用量及び定常状態での4μg/mLを上回る上記維持濃度。
図3はフェーズIのデータ由来のPKパラメーターを用いた毎週のSC投薬後のヒトPKプロファイルのシミュレーションを示す。SC投与後の生物学的利用率は70%である。
(2)1.5mg/kgの隔週のSC用量及び定常状態での4μg/mLを上回る上記維持濃度。
図4はフェーズIのデータ由来のPKパラメーターを用いた隔週のSC投薬後のヒトPKプロファイルのシミュレーションを示す。
(3)約3~4mg/kgの毎月のSC用量及び4μg/mLを上回る上記維持濃度。
図5はフェーズIのデータ由来のPKパラメーターを用いた毎月のSC投薬後のヒトPKプロファイルのシミュレーションを示す。
【0114】
シミュレートしたPKデータに基づいて、且つ成功の最大見込みのための12μg/mLの閾値の血漿濃度を目標として、毎週の投薬は2mg/kg(166mg)以上であるべきであり;4mg/kg(332)が好ましく、隔週投薬は>2.5mg/kg(208mg)でなければならず;高用量はシミュレートしなかった;且つ、毎月の投薬は6mg/kg(498mg)であるべきである。いくつかの実施形態では、最終的な推奨はSC注射を介した毎月500mgである。毎月500mgの毎月の投薬は12ヵ月の投薬計画にわたって12回用量、または3ヵ月の投薬計画にわたって3回用量投与することができる。毎月330mgの毎月投薬(最低4μg/mLの血漿濃度閾値を満たすための)は、12ヵ月の投薬計画にわたって12回用量、または3ヵ月の投薬計画にわたって3回用量投与することができる。
【0115】
実施例3.慢性尋常性乾癬及び冠状動脈疾患の患者にて毎月投与されるオルチクマブの有効性、安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価するための多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズ2試験。
乾癬の患者はアテローム性動脈硬化症を加速させており、循環器疾患(CVD)を発症するリスクが高くなっている。乾癬及びアテローム性動脈硬化症は双方とも、IL-6、TNFα、C-反応性タンパク質(CRP)のような一般的な炎症性メディエーターを共有する。
【0116】
MDA-LDL及びoxLDLは乾癬患者で有意に増加することが報告されている。重要なことに、oxLDLは乾癬性皮膚病変に特異的に見いだされたのに対して、同じ患者の非病変皮膚にはoxLDLはなかった。さらに、oxLDLに対する抗体は、疾患の重症度(乾癬面積及び重症度指数[PASI]スコア)、と同様に乾癬患者の総コレステロール、LDL、oxLDL、及びCRPと相関すると考えられている。しかしながら、出願人の発明に先立って、oxLDLへの自己抗体の投与が乾癬にどのように影響し得るのかは不明である。
【0117】
この試験の主な目的は、乾癬の病変面積、重症度の低減及び改善に関してプラセボに対するオルチクマブの優位性を評価することである。副次的な目的には、中程度の尋常性乾癬の成人対象におけるオルチクマブの皮下用量の安全性及び忍容性の評価すること;中程度の尋常性乾癬の成人対象におけるオルチクマブの皮下用量の有効性を評価すること;中程度の尋常性乾癬の対象における乾癬の重症度及び面積(複数可)の変化を評価すること;中程度の尋常性乾癬の対象の冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影(CCTA)で血管周囲脂肪減衰の空間的変化をマッピングすることによって冠状動脈炎症の変化を評価すること;中程度の尋常性乾癬の対象においてCCTAによって評価された冠状動脈プラーク容量の変化を評価すること;中程度の尋常性乾癬の成人におけるオルチクマブの薬物動態をわずかな採血で評価すること;中程度の尋常性乾癬の対象におけるオルチクマブの薬力学的効果に対する血漿濃度を評価することが挙げられる。
【0118】
主要な転帰指標には、治療の成功(なくなった=0またはほぼなくなった=1)を達成した乾癬患者の比率及び治験責任医師の5ポイント制の静的全般的評価2011年修正版(sIGA)におけるベースラインからの(≧)2ポイント以上の改善(ベースラインから16週目まで)が挙げられる。
【0119】
副次的な転帰指標には、ベースラインから16週目までに少なくとも75%のPASIスコア(PASI75)の低下を達成している対象の比率;PASI90を達成している[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日でのベースラインPASIスコアからの少なくとも90%の低下(PASI90の応答)の達成]対象の比率;PASI75を達成している[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日でのベースラインPASIスコアからの少なくとも75%の低下(PASI75の応答)の達成]参加者の比率;2、4、6、8、8、10、12及び16週目±3日[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日]でのベースラインPASIスコアからの少なくとも50%の低下(PASI50の応答)を達成している参加者の比率;4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日]でのPASIスコアにおけるベースラインからの平均的変化;4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日]でのsIGA2011年修正版における平均的変化;4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日]でのsIGA2011年修正版におけるベースラインで3のスコアを持つ参加者についてベースラインから(≧)2ポイント以上の改善を達成している対象の比率;4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日]にてベースラインで3のスコアを持つ参加者について5ポイント制のsIGAで、なくなった=0またはほぼなくなった=1を達成している対象の比率;4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日[時間枠:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日]にてベースラインで3のスコアを持つ参加者について5ポイント制のsIGAで、なくなった=0またはほぼなくなった=1、且つベースラインからの(≧)2ポイント以上の改善を達成している対象の比率;4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日[時間枠:ベースライン、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目±3日]にて掻痒数的評価尺度スコアにおけるベースラインからの平均的変化;皮膚科生活の質指数(DLQI)全スコアにおけるベースラインから16週目及び52週目±3日まで[時間枠:ベースライン、16週目及び52週目±3日]のDLQIの平均的変化における変化;体表面積(BSA)におけるベースラインから16週目及び52週目±3日まで[時間枠:ベースライン、16週目及び52週目±3日]のBSA平均の変化;コレステロール及び脂質プロファイルにおける変化(ベースラインから16週目及び52週目±3日までの平均的変化);高感度C-反応性タンパク質の変化(ベースラインから16週目及び52週目±3日までの平均的変化);酸化され、修飾された脂質の変化;LDL、リポタンパク質(a)、oxLDL、及びoxHDLの変化(ベースラインから16週目及び52週目±3日までの平均的変化);1つ以上の治療中に発生した有害事象(AE)または任意の重篤なAEを伴った参加者の数及び比率[時間枠:ベースラインから最大52週目±3日まで];血流力学及びEKGパラメーターの変化[時間枠:ベースラインから最大52週目±3日まで];血液化学及び血液学における変化[時間枠:ベースラインから最大52週目±3日まで];体重及びBMIに対する影響[時間枠:ベースラインから最大52週目±3日まで];身体検査における変化[時間枠:ベースラインから最大52週目±3日まで]が挙げられる。
【0120】
診査指標には、スクリーニングにて-190ハウンズフィールド単位から-30ハウンズフィールド単位までで対象についてCT血管造影法で測定される冠状動脈血管周囲脂肪減衰指数(FAI)の変化;近位右冠状動脈、近位左下行前動脈及び左回旋動脈の周囲のスクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;スクリーニングにて-30ハウンズフィールド単位から-70ハウンズフィールド単位(HU)(低い群)までで対象についてCT血管造影法で測定される冠状動脈血管周囲脂肪減衰指数(FAI)の変化;近位右冠状動脈、近位左下行前動脈及び左回旋動脈の周囲のスクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;スクリーニングにて-71ハウンズフィールド単位(HU)から-110ハウンズフィールド単位(HU)(中程度の群)までで対象についてCT血管造影法で測定される冠状動脈血管周囲脂肪減衰指数(FAI)の変化;近位右冠状動脈、近位左下行前動脈及び左回旋動脈の周囲のスクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;スクリーニングにて>110ハウンズフィールド単位(HU)から-190ハウンズフィールド単位(HU)(高い群)までで対象についてCT血管造影法で測定される冠状動脈血管周囲脂肪減衰指数(FAI)の変化;近位右冠状動脈、近位左下行前動脈及び左回旋動脈の周囲のスクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;スクリーニングにて≦70ハウンズフィールド単位(HU)を持つ対象及び>70ハウンズフィールド単位(HU)(高い群)を持つ対象についてCT血管造影法で測定される冠状動脈血管周囲脂肪減衰指数(FAI)の変化;近位右冠状動脈、近位左下行前動脈及び左回旋動脈の周囲のスクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;冠状アテローム性動脈硬化症の指標としての、冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影法(CCTA)によって評価される石灰化されていない且つ減衰の少ない冠状動脈プラーク体積の変化;スクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;冠状動脈の石灰化スコアの変化;スクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;全プラーク体積(非石灰化プラークに濃厚カルシウムプラークを加える)の変化;スクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;線維状プラーク体積の変化;スクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;減衰の少ないプラーク体積及び線維性脂肪プラーク体積の変化;スクリーニングから52週目±3日まで[時間枠:スクリーニングから52週目±3日まで]の平均的変化;ならびに濃厚石灰化プラーク断面積(DCB)の変化;非石灰化プラーク断面積(NCB)の変化が挙げられる。
【0121】
試験設計
スクリーニング期間(表5)に続いて、対象は2つの群、オルチクマブまたは対応するプラセボの330mg/月の皮下(sc)(1.1ml×2sc投与)の1つに登録されるであろう。各対象はオルチクマブまたはプラセボによる毎月の治療を最大48週間受けるであろう。対象は、各群でオルチクマブまたは対応するプラセボに等しく無作為化されるであろう(約50人の対象がオルチクマブで50人が対応するプラセボ)。単回使用の充填済みバイアル及び対応するプラセボはAbcentra、LLCによって提供されるであろう。参加者は皮下オルチクマブまたは対応するプラセボを投与されるであろう。概算100人の参加者:中程度の慢性尋常性乾癬の男性及び女性の対象―第1群に50人の対象及び第2群に50人の対象が登録を計画されている。
【0122】
各群で少なくとも20人の女性を無作為化するためにあらゆる努力が払われ、スタチンでの同数の対象を各治療群に無作為化するための努力が払われるであろう。加えて、対象が双方の治療群にわたって高、中、低の群にほぼ等しく無作為化されるように、無作為化はコンピューター断層撮影血管造影のスクリーニングでのハウンズフィールド単位測定によって階層化される。
【0123】
計画されている治療はオルチクマブまたは対応するプラセボの330mg sc(1.1ml×2回のsc注射)の毎月の皮下注射である。盲検化された安全性、忍容性、及び有効性のデータは、最初の5人の対象が2週間の投薬を完了した後2週間ごとに16週間まで、及びその後1ヵ月(±1週)ごとにまたは必要に応じて早めに、内部安全性審査委員会(ISRC)によって審査されるであろう。
【0124】
16週目から52週目(表6)まで、盲検化された安全性、忍容性、及び有効性のデータは、少なくとも1ヵ月ごとにまたは必要に応じて早めに52週まで内部安全性審査委員会(ISRC)によって審査されるであろう。
【0125】
安全性モニタリング計画は、試験開始前に完了し、最後の対象が最後の来診を完了するまで続くであろう。この試験では、検査値、バイタルサイン、身体検査、心電図(EKG)、及び有害事象(AE)に基づいて停止基準が利用されるであろう。
【0126】
レスキュー薬:16週目以降、治験責任医師の意見で乾癬を治療するために(現在の盲検治療に加えて)薬物治療を必要とする任意の対象は、局所コルチコステロイド、ビタミンD類似体、局所レチノイド、角質溶解薬、コールタール、カルシポトリオールジスラノール、または試験中どんな期間に必要と見なされてもよい、治験責任医師の医学的判断において対象の乾癬の治療に安全であり、且つ潜在的に有効であろう、任意の併用における処方もしくは非処方の局所乾癬治療を取り入れることが許されてもよい。治験責任医師及び資格のあるスタッフは、これらの薬物の投与を監督する必要があり、関連するログはサイトが完了するために治験依頼者によって提供される。
【0127】
対象すべてがその群での16週間の参加を完了してしまうとすぐに(すなわち、16週間の治療を完全に完了した、または時期尚早に中止した)、一次有効性分析を行ってオルチクマブの有効性を評価する。16週目の分析の目的は、治験の実施を変更することへの影響を最小限に抑えながら、治験からの有効性及び安全性の早期の兆候を治験依頼者に提供することである。治験責任医師及び対象は、治療の割り当てならびに盲検化されていない有効性及び安全性の評価の結果が分からないままであろう。
【0128】
16週間すべてのデータを取得し、すべてのデータクエリを解決し、データベースを仕上げ、盲検化を解き、及び分析するのに時間がかかるので、各群での参加は16週目の分析の実施中も継続するであろう。有効性のために試験を中止する予定はない一方で、16週目の分析結果に基づいて、無用のために試験が中止されてもよく、または試料サイズを修正してもよい。実行される分析の詳細は統計分析計画(SAP)で利用可能になるであろう。
【0129】
試験対象集団
適格
同意時に18~75歳の男性または女性。
月経停止(代わりの医学的原因がなく、12ヵ月間月経がないことと定義され、濾胞刺激ホルモン[FSH]>40mIU/mLによって確認される)及び/または外科的に不妊(子宮摘出術または両側卵巣摘出術)ではない限り、試験に参加中及び試験薬の最終用量の後4ヵ月間、以下の避妊法の1つを使用することに同意する女性対象:
排卵の抑制に関連する(エストロゲン及びプロゲストゲンを含有する)経口、膣内、または経皮のホルモン避妊剤の組み合わせ
排卵の抑制に関連する経口、注射、または埋め込み可能なプロゲストゲンのみのホルモン避妊剤
子宮内避妊器具
子宮内ホルモン放出システム
両側卵管結紮/閉塞
精管切除されたパートナー
性的禁欲(性交なし)
出産の可能性のある女性のパートナーを持つ男性は、試験中及び試験後4ヵ月間、性的に活発になった場合、二重バリア法に同意する必要がある。男性の対象は、試験への参加後4ヵ月間精子を提供してはならない。
以前に候補者であった、または局所療法及び/または光線療法を受けたことがある必要がある。
スクリーニングに先立って少なくとも6ヵ月間の尋常性乾癬の診断。患者は以下の基準すべてを満たさなければならない:
スクリーニング時及び無作為化時の安定した尋常性乾癬
スクリーニング時及びベースライン時、3%~10%の間の体表面積(BSA)のプラークによる被覆
PASI≧4.5、ただしPASI12より低い
スクリーニング時及びベースライン時、3-中程度(5ポイント制)のsIGAスコア
-190ハウンズフィールド単位から―30ハウンズフィールド単位の範囲内でCT血管造影法によって測定されたスクリーニング冠状動脈血管周囲脂肪減衰指数(FAI)。
治験責任医師と上手くコミュニケーションを取り、試験の要件を理解し、遵守することができる。書面によるインフォームドコンセントを理解し、署名する。
バイタルサインは、以下の範囲内であり、且つ安定している必要がある。
収縮期血圧、90~150mmHg
拡張期血圧、50~90mmHg
脈拍数、40~100bpm
血圧(≦150/90mmHg);プロトコール中に安定した用量で推移することを目的とする最大2種の降圧薬の安定した用量(45日以上の使用)が含まれてもよい。
臨床検査のスクリーニング結果(分画を伴うCBC及び血小板及び化学プロファイル)は正常範囲内でなければならず、正常範囲を外れる場合、治験責任医師及び治験依頼者が臨床的に重要ではないと認める必要がある。
対象は、これらの薬剤が一次及び主要な二次の評価項目の解釈を妨げず、プロトコールで除外されたものとして列記されていない限り、試験に参加している間、安定した用量の慢性的併用薬物を続けてもよい。安定した投薬とは、1日目(ベースライン)に先立って少なくとも60日間に薬物の種類に変更がなく、1日目(ベースライン)に先立って少なくとも45日間用量に変更がなく、試験の経過中併用薬物の変更が計画されていないことと定義される。
試験中に脂質低下療法または食事療法を変更する計画がない限り、ベースラインより前に安定した脂質低下療法または脂質改質食事療法を行っている対象を含めてもよい。
【0130】
除外
非プラーク形態の乾癬のいずれか:スクリーニング時またはベースライン時での乾癬性紅皮症、滴状乾癬または膿疱性乾癬
頭皮、手掌または足底の乾癬のみの対象。
重度の乾癬PASI>10
薬物誘発性乾癬(例えば、ベータ遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、またはリチウムによる乾癬の新たな発症または増悪)を有する。
ベースラインに先立って3ヵ月以内の、シクロスポリン、ミコフェノール酸、ピメクロリムス、またはタクロリムスのような、しかし、これらに限定されない他の生物学的療法または免疫抑制剤による治療。
患者が試験に参加するのに適格であるには、以下の最小限の休薬期間が必要であろう。
エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブまたは他の生物製剤のような生物学的療法のスクリーニングに先立って3ヵ月の休薬
シクロスポリン、ミコフェノラート、タクロリムスを含むがこれらに限定されない免疫抑制剤、及びメトトレキサート、アザチオプリン、チオグアニン、プレドニゾン、メルカプトプリン、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチルを含むがこれらに限定されない全身性免疫抑制剤のためのスクリーニングに先立って1ヵ月の休薬
以下:治験責任医師の意見では、疾患の活動性を変えてもよい全身レチノイド、光線療法または光線化学療法、高い効力の局所コルチコステロイド、乾癬の「代替医療」治療、長期の日光曝露または日焼けベッドの使用についてのスクリーニングに先立って2週間の休薬。
試験治療の開始前1週間以内及び試験期間中の局所コルチコステロイド、ビタミンD類似体及び局所レチノイド、角質溶解剤、コールタール及びジスラノールのような、しかし、これらに限定されない薬剤による局所治療
全身投与された生物製剤またはその賦形剤に対するアレルギー/過敏症の病歴。
オルチクマブまたはSC製剤の内容物のいずれかに対する過敏症またはアレルギーの病歴がある対象
投薬初日に先立って2ヵ月以内の治験薬/治験用具を伴う臨床試験への参加。
感染症の素因となる基礎疾患(例えば、免疫不全、制御不良の糖尿病の病歴、脾臓摘出術)を有する。
近親者、試験サイトの従業員である、またはこの試験の実施に関与する試験サイトの従業員と依存関係にある(例えば、配偶者、親、子供、兄弟)、または強要されて同意する可能性がある。
慢性もしくは急性のB型及びC型肝炎、または保因者の状態。抗HBcAb及び検出不可能な抗HBsAbの患者も除外すべきである。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の陽性歴
結核の病歴、結核、または結核の陽性のツベルクリン皮膚検査(TST)。以前にBCGワクチン接種を受けた対象は、インターフェロンガンマ放出アッセイ(IGRA)で陰性反応を示した後、試験に参加することができる。
再発性感染症の病歴
過去5年間での悪性腫瘍の病歴、または治療された皮膚扁平上皮癌もしくは基底細胞癌及び子宮頸部の原位置で治療された癌腫を除く活動性悪性疾患の疑い。
制限された薬物または試験の安全な実施を妨げる可能性が高いと考えられる他の薬剤の摂取
大鬱病性障害、統合失調症、双極性障害、人格障害、または治験責任医師が試験コンプライアンスを著しく妨げると考える他のDSM-V障害の診断。
スクリーニング来診に先立って1年以内の自殺念慮
治験責任医師の意見で、スクリーニング前の8週間における臨床的に有意であったという病気。
治験責任医師の意見では臨床的に重要であると考えられる、または安全性検査、身体検査、もしくは潜在的な有害事象の解釈を妨げる可能性のある肝臓、腎臓、肺、心臓、腫瘍、またはGIの疾患
異常な肝機能検査、SGOT(AST)、アルカリホスファターゼ、もしくは血清ビリルビン(これらの検査のいずれかについて>1.5×ULN)によって示される肝疾患もしくは肝障害、または肝硬変の病歴。
臨床的に有意に異常なクレアチニン、BUN、もしくは尿成分(例えば、アルブミン尿)によって示される腎機能障害の病歴もしくは存在、またはCockroft Gault方程式(GFR<60mL/分)によって定義されるような中程度から重度の腎機能障害
スクリーニングの前の年に薬物もしくは溶剤の乱用の重要な病歴、またはスクリーニング時での薬物乱用(DOA)検査が陽性。
薬物乱用と見なされる可能性のある薬物を合法的な医学的監督下で使用している対象は、治験責任医師が登録の正当性を文書化し、これを治験依頼者と検討した後、治験責任医師の裁量で登録することができる。
スクリーニング前の過去1年間のアルコール乱用の病歴、または現在週に21単位を超える飲酒(3杯または3単位/日)。
冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影に関連する除外;
スティント配置を含む以前の冠状動脈手術;
手順を実行するリスクを高める状態(推定糸球体濾過率<60mL/分/1.73m2またはヨウ素化造影剤に対する既知のアレルギー);
手順を技術的に実行困難にする要因(体重>136kg、10秒間息を止めることができない、頻脈または不整脈(例えば、心房細動)の現在または以前の(昨年内の)診断。
対象は、治験責任医師の意見では試験に参加するのに好適ではない。
3ヵ月以内に>500mLの臨床的に重大な失血または献血。
不十分な静脈アクセス。
【0131】
治験薬:オルチクマブは、特定の酸化された低密度リポタンパク質であるマロンジアルデヒド修飾ヒトApoB100に対して向けられた完全ヒト化組換えモノクローナル抗体である。尋常性乾癬及び冠状動脈炎症のある対象にて抗炎症作用を及ぼすことを目的とする。
【0132】
試験期間:試験には約14.5ヵ月かかり、4週間のスクリーニング期間、48週間の薬物または対応するプラセボの投与、治療評価来診の一端(52週目±3日)及び各群の対象が最後の治療来診後、外来通院に戻るための2週間を含む。
【0133】
対象の持続期間:対象は、スクリーニング(4週間)、治療(48週間)、治療評価来診の一端(52週目±3日)及び経過観察(2週間)を含むすべての試験来診を完了するのに、それぞれ約58週間(14.5ヵ月)かかるであろう。
【0134】
試験手順
スクリーニング(-30日目~-1日目)(表5評価のスケジュールも参照のこと)。インフォームドコンセントが得られ、対象は適格性を判定するための手続きを受けるであろう。試験への参加にインフォームドコンセントを与え、スクリーニングの適格基準すべてを満たし、スクリーニングの除外がない適格な男性及び女性の対象は、スクリーニング期間中に冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影を受け、それがベースライン測定値として使用されるであろう。
【0135】
ベースライン(1日目、1週目、1回目の来診)
適格な男性及び女性の対象は、1日目に適格性ならびにベースラインの有効性及び安全性の評価を再確認した後、330mgのオルチクマブまたは対応するプラセボに無作為に割り当てられるであろう。対象は1.1mlのsc注射として投与される330mgのオルチクマブまたは対応するプラセボによる治療を毎月、治療の48週間±3日間受けるであろう。安全性及び忍容性は、身体検査、AE及び併用薬物の評価、自殺傾向の評価、バイタルサイン、安全性臨床検査(血液学[凝固を含む]、化学、尿検査及びECG)によってモニターされるであろう。
【0136】
以下の測定値は、ベースライン来診時に投薬に先立って得られるであろう(表5評価のスケジュールも参照のこと)。
乾癬面積及び重症度指数―PASI
体表面積(BSA)の乾癬被覆率
治験責任医師の全般的評価(sIGA)
患者の全般的評価(PtGA)
臨床的な掻痒数値評価尺度(INRS)
皮膚科生活の質指数―DPQI
冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影のスクリーニングを完了し、読み取り、解釈した
体表面積の標準化されたデジタル写真(頭部及び鼠径部を除く)―選択された部位
乾癬性関節炎質問表。
【0137】
治療段階[1週目~16週目(1~9回目の来診)]
安全性、忍容性、及び有効性は、最初の5人の対象が2週間の治療を完了した後、及びその後毎月±1週で、または必要に応じて早めに、登録されたすべての対象について内部安全性審査委員会(ISRC)によって審査されるであろう。この試験では、臨床検査値、バイタルサイン、心電図(ECG)、有害事象、及び身体検査(AE)に基づいて個々の基準及び試験の停止基準が利用されるであろう。
【0138】
以下の評価基準は、4、8、12及び16週目±3日に得られるであろう(表5評価のスケジュールも参照のこと)。
乾癬面積及び重症度指数―PASI
治験責任医師の全般的評価(sIGA)
臨床的な掻痒数値評価尺度(INRS)
【0139】
以下も16週目±3日に得られるであろう(表5評価のスケジュールも参照のこと)。
患者の全般的評価(PtGA)
皮膚科生活の質指数―DPQI
乾癬によって影響を受ける体表面積(%)
試験薬管理
身体検査
妊娠検査
実験室評価
3回の12誘導ECG
体表面積の標準化されたデジタル写真(頭部及び鼠径部を除く)―選択された部位
乾癬性関節炎質問表
【0140】
治療段階[20週目~52週目(10~19回目の来診)]
安全性、忍容性、及び有効性は登録されたすべての対象について内部安全性審査委員会(ISRC)によって少なくとも毎月審査されるであろう。この試験では、臨床検査値、バイタルサイン、心電図(ECG)、及び有害事象(AE)に基づいて個々の基準及び試験の停止基準が利用されるであろう。
【0141】
以下の評価基準は、20、24、28、32、36、40、44、48、及び52週目±3日に得られるであろう(表6評価のスケジュールも参照のこと)。
乾癬面積及び重症度指数―PASI
治験責任医師の全般的評価(sIGA)
臨床的な掻痒数値評価尺度(INRS)
乾癬によって影響を受ける体表面積(%)
試験薬管理
【0142】
以下も28、36及び52週目±3日に得られるであろう(表6評価のスケジュールも参照のこと)。
患者の全般的評価(PtGA)
身体検査
実験室評価
3回の12誘導ECG
【0143】
以下も52週目±3日に得られるであろう(表6評価のスケジュールも参照のこと)。
皮膚科生活の質指数―DPQI
妊娠検査
冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影(CCTA)
体表面積の標準化されたデジタル写真(頭部及び鼠径部を除く)―選択された部位
乾癬性関節炎質問表
【0144】
経過観察来診―スクリーニング後54週目(20回目の来診)
【0145】
以下は54週目±3日に得られるであろう(表5評価のスケジュールも参照のこと):バイタルサイン。
【0146】
統計的方法
試料サイズの検討事項:
以前の試験では、主要評価項目についてのプラセボ奏効率は0%から10%に及ぶ。真のプラセボ奏功率を10%と仮定し、アルファ=0.05の有意水準で二項比率の両側2試料比較に基づいて、100人の対象(アームあたり50人の対象)の試料サイズは90%の検出力を提供して27パーセント点の改善を検出し、すなわち、活性がある側で37%の真の奏功率を検出するであろう。母集団のPK推定値については、試料サイズという点では正式な統計的評価は実施されなかった。
【0147】
脂質低下療法の対象をプラセボ群と活性治療群の間で均等に分配するためにあらゆる努力が払われるであろう。
【0148】
一次有効性分析:
一次分析、と同様に他のすべての有効性分析は、すべての無作為化された対象として定義された包括解析(ITT)の分析設定で実施されるであろう。活性剤群とプラセボ群は、アルファ=0.05の有意水準にて両側のCochran-Mantel-Haenszel統計(無作為化階層化変数によって階層化される)を用いて比較する。
【0149】
重要な二次有効性分析:
一次有効性分析が統計的に有意であるならば(p<0.05)、次に、アルファ=0.05の有意水準にて両側のCochran-Mantel-Haenszel統計(無作為化階層化変数によって階層化される)を用いて重要な二次評価項目を分析するであろう。しかしながら、一次分析が統計的に有意でなければ、重要な二次分析の結果は確認ではなく試験的である。
【0150】
データの提示/記述統計学:
人口統計、安全性、PK、及び有効性のデータすべては、表形式にて、且つ適宜、記述統計学によって列記され、要約されるであろう。薬物動態及び有効性のデータも適宜グラフで表示されるであろう。PK及び有効性パラメーターの一対比較も報告されるであろう。群間の比較のために探索的分析が実施されてもよい。
【0151】
統計モデル:
一般に、統計モデルはモデル効果についての推定値及び信頼区間を用いて要約されるであろう。幾何平均比及び区間推定は各時点で比較されたCトラフについて報告されるであろう。
【0152】
転帰指標
乾癬面積及び重症度指数(PASI)―PASIは頭頚部(H)、上肢(UL)、体幹(T)、及び下肢(LL)の4つの身体領域の評価を組み合わせる。各領域における乾癬の影響を受けた皮膚の比率には関与した比率:1(0~9%)、2(10~29%)、3(30~49%)、4(50~69%)、5(70~89%)または6(90~100%)を表す数値スコアが与えられる。各領域(H、UL、T、LL)内で、3つのプラーク徴候の重症度―紅斑(E)、肥厚/硬結(I)及び落屑/鱗屑(D)―は0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)、または4(非常に重度)の5ポイント尺度で評価される。
【0153】
病変の重症度及び影響を受けた領域の評価は単一のスコアにまとめられる。最終的なPASI=各領域の重症度パラメーターの合計×面積スコア×領域の加重(その際、頭:0.1、腕:0.2、体:0.3、脚:0.4);考えられる総スコアの範囲:0=疾患なし~72=最大疾患であろう。
【0154】
PASI評価は頭皮、手のひら、指の爪、足の裏、つま先の爪を除外するので測定できる最大PASIスコアは<72であろう。
【0155】
この評価に関与する治験責任医師にはビデオトレーニングが必須であろう。
【0156】
最終的なPASIスコアは次の式を用いて算出されるであろう。
PASI=0.1(EH+IH+HH)AH+0.2(EUL+IUL+HUL)AUL+0.3(ET+IT+HT)AT+0.4(ELL+ILL+HLL)ALL
【0157】
ベースラインからのPASIスコアの低下は改善を示す。変化率は、ベースライン値から16週目及び52週目の値を差し引くことによって算出されるであろう。変化率は、(参加者ごとではなく)各治療群全体ごとに算出されるであろう。ベースラインからの正の変化率は改善を示すであろう。
【0158】
この評価に関与する治験責任医師にはトレーニングが必須であろう。
【0159】
体表面積―乾癬の影響を受けた体表面積の比率としてスコア化される;0~100%。乾癬病変の体表面積を推定するのに一般的に使用される方法は、火傷の表面積を推定するために元々開発された「9の法則」である。それは頭頚部について9%、各腕について9%、前肢及び後肢について9%、4つの体幹四半部についてそれぞれ9%、生殖器について残りの1%の適用範囲として定義されている。BSAは、1つの「手形」がBSAの約1%を反映していると仮定して、影響を受けた患者の手の領域の数によって推定することもできる。
【0160】
この評価に関与する治験責任医師にはトレーニングが必須であろう。
【0161】
治験責任医師の全般的評価―IGAは硬結、紅斑、及び鱗屑に焦点を当てた乾癬の重症度に関する医師の全体的な評価を示す「0=なくなった」、「1=ほぼなくなった」、「2=軽度」、「3=中程度」または「4=重度」を含む5つのカテゴリーの尺度である。「なくなった」または「ほぼなくなった」という治療の成功は、乾癬の兆候がないこと、または病変の色が正常~ピンク色であること、プラークの肥厚がないこと、及び病巣の鱗屑がない~最小限であることからなる。IGAは疾患の臨床徴候及び症状のすべての全般的な評価を捕らえ、分類する。この尺度は固定的評価として、すなわち、以前の評価に関係なくスコア化されるであろう。IGAを成功させるには、「なくなった」または「ほぼなくなった」の指定を有し、ベースラインから2ポイントの改善を示す必要がある。したがって、患者がベースラインで「軽度」の疾患を有するならば、患者は「なくなった」に到達する必要がある。患者がベースラインで「中程度」の疾患を有するならば、「ほぼなくなった」に到達する必要がある。そして、患者がベースラインで「重度」に分類されるならば、患者は3ポイントの改善が必要であるが、それでも「ほぼなくなった」に到達する必要がある。
【0162】
この評価に関与する治験責任医師にはトレーニングが必須であろう。
【0163】
掻痒数値評価尺度―掻痒NRSは、プロトコールで指定された診療所来診中に完了される、自己管理患者が報告する転帰質問表である。対象は、「掻痒なし」を表す0及び「考えられる最悪の掻痒」を表す10にわたる11ポイントの尺度で過去24時間における乾癬による掻痒の最悪のレベルを最もよく表す整数に丸を付けることによって掻痒の重症度を示す。
【0164】
皮膚科生活の質指数(DLQI)―DLQIは乾癬集団に使用される皮膚科固有の生活の質の尺度である。10項目の質問表は、参加者の健康関連の生活の質(日常生活、人間関係、症状及び感情、余暇、仕事及び学校、ならびに治療)を評価する。DLQIの質問は、0(最高)~30(最悪)の総スコア範囲で0(まったくない/関係ない)~3(非常に多い)として参加者によって評価され;スコアが高いほど生活の質が低いことを示す。
【0165】
患者の全般的評価(PtGA)―PtGAは、各項目5ポイントの尺度(0=なくなった;1=ほぼなくなった;2=軽度;3=中程度;4=重度)で時間内にその時点で全体的な皮膚疾患を評価するように参加者に依頼する。
【0166】
冠状動脈血管周囲脂肪減衰指数(FAI)―CT血管造影法で測定した。
【0167】
【0168】
PK=薬物動態;ECG=心電図;ET=早期終了;F/U=経過観察;乾癬面積及び重症度指数-PASI;BSA=乾癬の影響を受けた体表面の割合;治験責任医師の静的全般的評価(sIGA);患者の全般的評価(PtGA);臨床上の掻痒数値評価尺度(INRS);皮膚科生活の質指数(DLQI);冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影(CCTA)
【0169】
a安全上の理由及び/または他の理由から、予定外の来診はどんなときでも行われてもよい。安全性検査、EKG及び身体検査及び他の評価は治験責任医師の裁量で実施されてもよい。
【0170】
b来診は±3日以内に行うべきである。
【0171】
c血液学及び凝固検査、hsCRP、SMA25(血清-アミラーゼ、包括的代謝プロファイル(CMP)(eGFRを含む):(A:G比;アルブミン、血清;アルカリホスファターゼ、血清;ALT(SGPT);AST(SGOT);ビリルビン、合計;BUN;BUN:クレアチニン比;カルシウム、血清;二酸化炭素、合計;塩化物、血清;クレアチニン、血清;グロブリン、合計;グルコース、血清;カリウム、血清;タンパク質、合計、血清;ナトリウム、血清)クレアチンキナーゼ(CK)、合計、血清ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT);乳酸デヒドロゲナーゼ(LD);乳酸、血漿脂質パネル:コレステロール、合計;高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール;低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(計算);トリグリセリド;超低密度リポタンパク質(VLDL)、リポタンパク質(a)oxLDL及びoxHDL;マグネシウム、血清;リン、血清;尿酸、血清を含む。
【0172】
また、指示されたすべての来診での尿検査。スクリーニングでは、尿中薬物検査も行われるであろう。検査のみでの肝炎パネル、FSH検査は閉経後の女性のスクリーニングで行われるであろう。Mantouxツベルクリン皮膚検査は検査でのみ実施される(Bacille Calmette-Guerin(BCG)ワクチン接種を受けている対象には、インターフェロンγ放出アッセイ(IGRA)を提供することができる)。
【0173】
d出産の可能性のある女性について。スクリーニングでの血清妊娠検査(中央検査室)及び言及される他のすべての来診での尿妊娠検査(臨床現場)。
【0174】
e血圧、脈拍数、呼吸数、体温については仰臥位(少なくとも5分)、血圧及び脈拍数については立位(1分後及び3分後)が含まれる。身長はスクリーニング時に1回測定されるであろう。体重を1、4、7及び9回目の来診で測定し、ポンド(lb)で記録し、BMIをCRFに入力する。
【0175】
f対象が仰臥位で5分間静かに休息した後、3回の心電図が記録されるであろう。
【0176】
gスクリーニング及び投与前のベースラインでは、皮膚科検査は銀白色の鱗屑で覆われた隆起した炎症性病変を特徴とする中程度の尋常性乾癬の存在を示さなければならない。鱗屑を削り取って、下にある炎症を起こした皮膚を露出させてもよい。
【0177】
【0178】
PK=薬物動態;ECG=心電図;ET=早期終了;F/U=経過観察;乾癬面積及び重症度指数-PASI;BSA=乾癬の影響を受けた体表面の割合;治験責任医師の静的全般的評価(sIGA);患者の全般的評価(PtGA);治験責任医師の全般的評価(sIGA);臨床上の掻痒数値評価尺度(INRS);皮膚科生活の質指数(DLQI);冠状動脈コンピューター断層撮影血管造影(CCTA)
【0179】
a安全上の理由及び/またはその他の理由から、予定外の来診はどんなときでも行われてもよい。安全性検査、EKG及び身体検査及び他の評価は治験責任医師の裁量で実施されてもよい。
【0180】
b来診は±3日以内に行うべきである。
【0181】
c血液学及び凝固検査、hsCRP、SMA25(血清-アミラーゼ、包括的代謝プロファイル(CMP)(eGFRを含む):(A:G比;アルブミン、血清;アルカリホスファターゼ、血清;ALT(SGPT);AST(SGOT);ビリルビン、合計;BUN;BUN:クレアチニン比;カルシウム、血清;二酸化炭素、合計;塩化物、血清;クレアチニン、血清;グロブリン、合計;グルコース、血清;カリウム、血清;タンパク質、合計、血清;ナトリウム、血清)クレアチンキナーゼ(CK)、合計、血清ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT);乳酸デヒドロゲナーゼ(LD);乳酸、血漿脂質パネル:コレステロール、合計;高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール;低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(計算);トリグリセリド;超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロール(計算);リポタンパク質(a);マグネシウム、血清;リン、血清;尿酸、血清を含む。
【0182】
また、指示されたすべての来診での尿検査。スクリーニングでは尿中薬物検査も行われるであろう。検査のみでの肝炎パネル、FSH検査は閉経後の女性のスクリーニングで行われるであろう。Mantouxツベルクリン皮膚検査は検査でのみ実施される(Bacille Calmette-Guerin(BCG)ワクチン接種を受けている対象には、インターフェロンγ放出アッセイ(IGRA)を提供することができる)。
【0183】
d出産の可能性のある女性について。スクリーニングでの血清妊娠検査(中央検査室)及び言及される他のすべての来診での尿妊娠検査(臨床現場)。
【0184】
e血圧、脈拍数、呼吸数、体温については仰臥位(少なくとも5分)、血圧及び脈拍数については立位(1分後及び3分後)が含まれる。身長はスクリーニング時に1回測定されるであろう。体重を、10、14、19、及び20回目の来診で測定し、ポンド(lb)で記録し、BMIをCRFに入力する。
【0185】
f対象が仰臥位で5分間静かに休息した後、3回の心電図が記録されるであろう。
【0186】
本発明の種々の実施形態は上記の詳細な説明に記載されている。これらの説明は上記の実施形態を直接説明している一方で、当業者は本明細書に示され、記載されている特定の実施形態に対する修正及び/または変形を思いついてもよいことが理解される。この説明の視野の範囲内に入るそのような修正または変形は、同様にそこに含まれることが意図されている。特に言及されない限り、本明細書及びクレームにおける単語及び語句には該当する技術分野(複数可)の当業者に通常の且つ慣習的な意味を与えることが本発明者らの意図である。
【0187】
出願の時点で出願人に知られている本発明の種々の実施形態の前述の説明が提示されており、例証及び説明の目的を対象としている。本説明は、網羅的であることを意図するものではなく、本発明を開示される正確な形態に限定するものでもなく、上記の教示に照らして多くの修正及び変形が可能である。記載されている実施形態は、本発明の原理及びその実際的な応用を説明するのに、ならびに当業者が種々の実施形態で、且つ企図される特定の使用に適しているとして種々の修正とともに本発明を利用するのを可能にするのに役立つ。したがって、本発明は、本発明を実施するために開示されている特定の実施形態に限定されないことが意図されている。
【0188】
本発明の特定の実施形態を示し、説明してきたが、本明細書の教示に基づいて、本発明及びそのより広範な態様から逸脱することなく変更及び修正が行われてもよく、したがって、添付のクレームは、本発明の真の精神及び範囲の範囲内にあるものとして、その範囲内にそのような変更及び修正すべてを包含するものであることが当業者に明白であろう。一般に、本明細書で使用される用語は概して、「限定されない」用語(例えば、用語「含む(including)」は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない」、等、として解釈されるべきである)として意図されることは当業者には理解されるであろう。
【0189】
本明細書で使用されるとき「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、実施形態にとって有用である組成物、方法、及びそれらの各構成要素(複数可)に関して使用されるが、有用であろうとなかろうと、特定されていない要素を含むことに対して制限はない。一般に、本明細書で使用される用語は概して、「限定されない」用語(例えば、用語「含む(including)」は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない」、等、として解釈されるべきである)として意図されることは当業者には理解されるであろう。含む(including)、含有する(containing)または有する(having)のような用語の同義語としての「含む(comprising)」という開放型用語は、本発明を説明し、請求するのに本明細書で使用されるが、本発明またはその実施形態は代わりに、「からなる(consisting of)」または「本質的にからなる(consisting essentially of)」のような代替用語を用いて記載されてもよい。
本発明は以下の実施形態を含む。
[1] 乾癬を治療する、その重症度を軽減する、その進行を減速する、またはそれを抑制することを、それを必要とする対象にて行う方法であって、
アポリポタンパク質B100(ApoB100)の断片に結合することができる有効量の抗体または抗体断片を前記対象に投与することを含み、
その際、ApoB100の前記断片は配列番号1のアミノ酸配列またはその活性部位を含み、前記抗体はそれぞれ配列番号2、3及び4のHCDR1(HCDR1)、HCDR2(HCDR2)及びHCDR3(HCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つ、または3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と、それぞれ配列番号5、6及び7のLCDR1(LCDR1)、LCDR2(LCDR2)及びLCDR3(LCDR3)の配列のからなる群から選択される1つ、2つまたは3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む、前記方法。
[2] ApoB100の前記断片がアルデヒド誘導体である、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記抗体が配列番号8の重鎖可変領域(V
H
)、もしくは配列番号9の軽鎖可変領域(V
L
)、またはその双方を含む、上記[1]に記載の方法。
[4] 前記抗体が配列番号10の重鎖、もしくは配列番号11の軽鎖、またはその双方を含む、上記[3]に記載の方法。
[5] 前記抗体がオルチクマブである、上記[1]に記載の方法。
[6] 前記乾癬が尋常性乾癬である、上記[1]に記載の方法。
[7] 前記対象が非プラーク形態の乾癬を有さず、前記非プラーク形態が乾癬性紅皮症、滴状乾癬または膿疱性乾癬を含む、上記[6]に記載の方法。
[8] 前記対象がヒトであり、前記抗体がオルチクマブであり、オルチクマブが約330mg/月の用量で約3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヵ月間皮下投与される、上記[1]に記載の方法。
[9] 前記抗体がオルチクマブであり、それが少なくとも5mg/kgの初回用量とそれに続く複数回の後続用量、それぞれ少なくとも2mg/kg/週、少なくとも2.5mg/kg/2週、または少なくとも6mg/kg/月で静脈内投与される、上記[1]に記載の方法。
[10] 前記抗体または抗体断片が1~10μg/kg、10~100μg/kg、100~500μg/kg、200~500μg/kg、300~500μg/kg、400~500μg/kg、1~5mg/kg、5~10mg/kg、10~15mg/kg、15~20mg/kg、20~25mg/kg、25~50mg/kg、50~75mg/kgで投与される、上記[1]に記載の方法。
[11] 前記対象がさらに、前記投与前にアテローム性動脈硬化症の症状を示し、且つ前記投与後、前記対象が動脈内で低下したプラーク体積を有する、上記[1]に記載の方法。
[12] さらに、局所コルチコステロイド、ビタミンD類似体、局所レチノイド、角質溶解剤、コールタール、紫外線A、紫外線B、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、抗インターロイキン(IL)-12/23抗体、抗IL-23抗体、抗IL-17抗体、またはそれらの組み合わせを投与することを含み、前記ビタミンD類似体がカルシトリオール、カルシポトリエン、マキサカルシトールまたはタカルシトールを含む、上記[1]に記載の方法。
[13] 前記対象が、乾癬の症状を示し、UVA療法、UVB療法、局所ステロイド、またはそれらの組み合わせに対して不応性である、上記[1]に記載の方法。
[14] 乾癬がない対照の対象と比べて、前記対象が高い量の腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、C-反応性タンパク質(CRP)、またはそれらの組み合わせを有する、上記[1]に記載の方法。
[15] さらに、乾癬の症状を示す対象または乾癬と診断されている対象を選択することを含む、上記[1]に記載の方法。
[16] 対象に受動免疫を付与する方法であって、乾癬の治療のためにApoB100の断片に結合することができる治療有効量の抗体または抗体断片が投与され、ApoB100の前記断片が配列番号1またはその活性部位であり、前記抗体がそれぞれ配列番号2、3及び4のHCDR_1(HCDR1)、HCDR_2(HCDR2)及びHCDR3(HCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つまたは3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と、それぞれ配列番号5、6及び7のLCDR_1(LCDR1)、LCDR_2(LCDR2)及びLCDR_3(LCDR3)の配列からなる群から選択される1つ、2つまたは3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む、前記方法。
[17] 前記抗体が配列番号8の重鎖可変領域(V
H
)、もしくは配列番号9の軽鎖可変領域(V
L
)、またはその双方を含む、上記[16]に記載の方法。
[18] 前記抗体が配列番号10の重鎖、もしくは配列番号11の軽鎖、またはその双方を含む、上記[16]に記載の方法。
[19] 前記抗体がオルチクマブであり、それが約330mg/月の用量で約3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヵ月間皮下投与される、上記[16]に記載の方法。
[20] 前記対象が乾癬と診断され、乾癬がない対象と比べて高い量の腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、C-反応性タンパク質(CRP)、またはそれらの組み合わせを特徴とする、上記[16]に記載の方法。
【配列表】