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  • 特許-ホスホノパラフィン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ホスホノパラフィン
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/40 20060101AFI20230929BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C07F9/40 E
C09K3/00 103P
C09K3/00 Q
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021186081
(22)【出願日】2021-11-16
(62)【分割の表示】P 2017247185の分割
【原出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2022043037
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】15/404,106
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バラード, マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー, フィリップ スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ, スーザン ワン-イー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, キャメロン デーヴィッド
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101818069(CN,A)
【文献】国際公開第2016/152747(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/067540(WO,A1)
【文献】特表2009-537636(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第705224(GB,A)
【文献】米国特許第3158640(US,A)
【文献】特開平5-209087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホノパラフィンを調製する方法であって、
ハロパラフィン、亜リン酸エステル、及びヨウ化ナトリウムを混合して、反応混合物を形成することと、
前記反応混合物を加熱して、ホスホノパラフィンを形成することと
を含み、前記反応混合物において、ハロパラフィンのハロゲン部分ごとに少なくとも1モル当量のヨウ化ナトリウムが存在する、方法。
【請求項2】
ホスホノパラフィンを40%から60%の間の総収率で分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
亜リン酸エステルが、以下の化学式、
によって表され、式中、R、R、及びRのそれぞれが、独立して、C1‐20アルキル、C1‐20シクロアルキル、又はアリールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
亜リン酸エステルが、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリペンチル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリヘプチル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリノニル、亜リン酸トリデシル、又はこれらの混合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
亜リン酸エステル:ハロパラフィンのモル比が、2:1から6:1の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヨウ化ナトリウム:ハロパラフィンのモル比が、2:1から6:1の間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、概して、ホスホノパラフィン(phosphono paraffin)、ホスホノパラフィンを有する油圧流体、及びホスホノパラフィンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、自動車、トラック等の多くのビークルは、1つ又は複数の油圧システムを有する。この油圧システムは、加圧油圧流体を用いて、油圧機械に動力を供給する駆動装置又は動力伝達装置である。例えば、初期型のビークルは、油圧ブレーキシステムを有していた。ビークルがより複雑になるにつれて、油圧動力を備えたより新しいシステムが開発された。例えば、航空機内の油圧システムは、ビークル構成要素(着陸装置、フラップ、飛行操縦翼面、及びブレーキなど)の動作をもたらす。
【0003】
油圧システムは、電力発生装置、(ポンプ)リザーバ、アキュムレータ、熱交換器、及びフィルタリングシステムを有する。システム作動圧力は、小さなビークルや回転翼航空機における平方インチ当たり数百ポンド(psi)から、大きなビークルにおける5000psiまで変動し得る。
【0004】
油圧システムの流体(油圧流体)は、使用中に油圧システムの構成要素を通って流れ、油圧システムの様々な構成要素に力を伝達且つ分配する。システムの中に数多くの乗客がいる場合、システムの様々な構成要素を通して、圧力が分配され得る。油圧操作では、流体摩擦に起因する損失は取るに足らないものである。
【0005】
必要とされる特性が非圧縮性と流動性のみである場合、油圧システムでは、ほとんどの濃厚過ぎない流体を使用することができる。しかしながら、特定の油圧システムに対して所望の油圧流体を選択する際には、他の特性も考慮すべきである。
【0006】
これらの特性のうちの1つは、粘度である。粘度は、流体の、流れることに対する抵抗である。粘度が低いガソリンなどの液体は、容易に流れるが、粘度が高いタールなどの液体は、ゆっくりと流れる。温度が下降するにつれて、粘度が高くなる。所与の油圧システム用の液体は、ポンプ、バルブ、及びピストンにおいて優れた密封をもたらすよう十分な粘度をもつべきであるが、流動に対する抵抗をもたらすほどに濃厚であってはならない。抵抗をもたらすほどに濃厚であると、動力が失われ、作動温度が上昇して、油圧システムの構成要素の摩耗が促進される場合がある。十分に粘性のない流体は、可動部品又は重い荷重がかかる部品を摩耗させる場合がある。
【0007】
油圧流体に属するもう一つの特性は、流体の燃焼点である。燃焼点は、スパーク又は火炎に曝されたときに点火して継続的に燃焼するのに十分な量で、物質が蒸気を放つ温度である。引火点のように、高い燃焼点が油圧流体には望ましい。
【0008】
周知の油圧流体は、上述の理想的な特性を持たない。ポリアルファオレフィン系油圧流体は、耐火性であるが、粘度が高く、-40°Fまでの使用に限られる。リン酸エステル系(Skydrol(登録商標))油圧流体は、完全に耐火性ではなく、特定の条件下で燃焼する。さらに、ポリアルファオレフィン系油圧流体及びリン酸エステル系油圧流体は、互いに混合することはない。さらに、フルオロカーボン系油圧流体は、油圧システムの油圧管路の塗料及びチタン製連結器を劣化させる傾向がある。クロロカーボン系及びフルオロカーボン系油圧流体は、その毒性及び弱い生分解性のゆえに、禁止される動きがある。例えば、クロロパラフィンは、土壌では安定しており、長年土壌で存続し、少なくとも数か月から数年の半減期(T1/2)を有する。
【0009】
さらに、油圧流体の合成は、困難であり、コストがかかる傾向がある。アルブーゾフ(Arbuzov)反応などの従来の反応では、上述の理想的な特性を有する油圧流体は産出されない。アルブーゾフ反応は、第1級アルキルハライドを亜リン酸エステルと反応させ、第1級ホスホノ置換体(primary phosphono-substituted product)を形成することにより、進行する。アルブーゾフ反応は、第1級、第2級、又は第3級フルオロアルカン出発物質を使用したり、或いは、第2級又は第3級のクロロアルカン出発物質、ブロモアルカン出発物質、ヨードアルカン出発物質を使用したりすることによっては、容易に進行しない。
【0010】
したがって、当該技術分野では、新しくて且つ改善された油圧流体、及び油圧流体を調製する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
一態様では、ホスホノパラフィンを調製する方法は、ハロパラフィン、亜リン酸エステル、及びヨウ化ナトリウムを混合することにより反応混合物を形成することを含む。組成物を調製する当該方法は、反応混合物を加熱して、ホスホノパラフィンを形成することを含む。
【0012】
別の態様では、ホスホノパラフィンは、以下の化学式(I)、
によって表され、式中、Rの各例は、独立して、-H又は
であり、R及びRの各例は、独立して、直鎖又は分岐のC1‐20アルキル、C3‐20シクロアルキル、又はアリールであり、且つRが化学式(I)の
である例の数は、約2と約8との間であり、且つnは、4と22との間の整数である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の上述の特徴が詳細に理解されるように、上記で簡潔に要約された本開示のより具体的な説明は、態様を参照することによって得ることができる。その一部は添付の図面に示されている。しかしながら、添付図面は、本開示の典型的な態様のみを示しており、それゆえ、本開示の範囲を限定するとみなすべきではなく、本開示は、その他の等しく有効な態様を認め得ることに留意されたい。
【0014】
図1】セレクロール(Cereclor)AS45のH NMRスペクトルである。
図2】実施例1の反応生成物のH NMRスペクトルである。
【0015】
理解しやすくするため、各図面に共通する同一の要素を指定する際に、可能であれば、同一の参照番号が使用されている。図面は、縮尺どおりに描かれているわけではないが、明瞭性のために簡略化され得る。一態様の要素及び特徴を、有利には、さらに詳述することなく、他の態様に組み込んでもよいと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の態様は、ホスホノパラフィンを調製する方法を含む。ヨウ化ナトリウムは、ハロパラフィン及び亜リン酸エステルが存在する中で、ホスホノパラフィンの形成を容易に促進することが発見された。少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンを調製する方法は、ハロパラフィンを亜リン酸エステル及びヨウ化ナトリウムと混合することを含む。
【0017】
本開示の方法は、新規クラスのホスホノパラフィン化合物の入手をもたらす。したがって、本開示の態様は、約6から約24の炭素及び約2から約8のホスホノ置換基(phosphono substituent)を有するホスホノパラフィンをさらに含む。これらの化合物は、耐火性且つ生物分解性の油圧流体として使用され得る。理論に縛られることなく、ホスホノパラフィンは、理想的な粘度のための長いアルキル鎖、及び耐火性且つ生物分解性の所望のパラメータを満たすホスホン酸エステル部分を有するので、耐火性の油圧流体として使用するための実現可能な候補であると考えられている。
【0018】
ホスホノパラフィン(Phosphono Paraffins)
本開示のホスホノパラフィンは、約6から約24の炭素及び約2から約8のホスホノ置換基を有する。少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、約200℃を越える燃焼点、例えば、約220℃を越えたり、約240℃を越えたりする燃焼点を有する。少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、約150℃を越える引火点、例えば、約170℃を越えたり、約190℃を越えたりする引火点を有する。少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、約-40℃未満の融点、例えば、約55℃未満であったり、約70℃未満であったりする融点を有する。
【0019】
ホスホノパラフィンの引火点及び燃焼点は、John Morris Scientific Pty Ltdが提供するSetaFlash Series 3 Open Cup引火点テスターを使用し、ASTM D92-12によって決定することができる。ホスホノパラフィンの融点は、以下の手順で決定され得る:約1mlの流体が、3mm直径のガラスNMRチューブの中に置かれ、ステンレス鋼製熱電対プローブ(thermocouple probe)が流体の中に挿入される。流体を凍らせるために、次にチューブが液体窒素の中に置かれ、凍った流体の中の熱電対プローブの動きが防止される。次にチューブがゆっくりと暖められ、液体が次第に溶解する。液体が溶解したら、熱電対プローブを引き抜いてもよい。熱電対を液体から引き抜くことができる温度が融点とみなされる。この工程は、あと2回繰り返され、平均融点値が得られる。
【0020】
少なくとも一態様では、本開示のホスホノパラフィンは、化学式(I)によって表される:
式中、Rの各例は、独立して、-H又は
であり、R及びRの各例は、独立して、直鎖又は分岐のC1‐20アルキル、C3‐20シクロアルキル、又はアリールであり、且つRが化学式(I)の
である例の数は、約2と約8との間であり、且つnは、4と22との間の整数である。C1‐20アルキルは、C1‐10アルキル及びC1‐5アルキルを含む。C3‐20シクロアルキルは、C3‐10シクロアルキル及びC3‐6シクロアルキルを含む。少なくとも一態様では、R及びRの各例は、独立して、直鎖C1‐20アルキルである。C1‐20アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルを含む。nは、4と22との間の整数であり、例えば、約6と約18との間であったり、約10と約16との間であったりする整数である。少なくとも一態様では、R及びRは同一である。少なくとも一態様では、R及びRのそれぞれは、イソプロピル、ブチル、又はフェニルである。
【0021】
少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、
及びこれらの組み合わせを含み、R及びRの各例は、独立して、直鎖又は分岐のC1‐20アルキル、C3‐20シクロアルキル、又はアリールである。C1‐20アルキルは、C1‐10アルキル及びC1‐5アルキルを含む。C3‐20シクロアルキルは、C3‐10シクロアルキル及びC3‐6シクロアルキルを含む。少なくとも一態様では、R及びRの各例は、独立して、直鎖C1‐20アルキルである。C1‐20アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、及びイコサニルを含む。少なくとも一態様では、R及びRは同一である。少なくとも一態様では、R及びRのそれぞれは、イソプロピル、ブチル、又はフェニルである。
【0022】
少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、
及びこれらの混合物を含む。
【0023】
少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、
及びこれらの混合物を含む。
【0024】
少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、
及びこれらの混合物を含む。
【0025】
少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、
及びこれらの混合物を含む。
【0026】
ホスホノパラフィンを調製する方法
従来のアルブーゾフ反応条件下でホスホノパラフィンを合成しても、ホスホノパラフィンが形成されないことが発見された。さらに、ハロパラフィン及び亜リン酸エステルをヨウ化ナトリウムと混合することにより、ホスホノパラフィンの形成が促進されることが発見された。少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンを調製する方法は、ハロパラフィンを亜リン酸エステル及びヨウ化ナトリウムと混合することにより反応混合物を形成することを含む。ハロパラフィンは、クロロパラフィン、ブロモパラフィン(bromoparaffin)、又はヨードパラフィン(iodoparaffin)を含む。ハロパラフィンは、1つ又は複数の第2級ハロゲン部分(secondary halogen moieties)を含み得る。反応混合物が加熱され、ホスホノパラフィンを有する反応生成物が形成される。ホスホノパラフィンは、約20%から約80%の間、例えば、約40%から約60%の間の総収率で反応生成物から分離することができる。
【0027】
スキーム1、2、及び3で示されているように、ホスホノパラフィンを調製する方法は、ハロパラフィン(例えば、クロロパラフィン)を以下の化学式(II)、
によって表された亜リン酸エステルと混合して、次いでヨウ化ナトリウムを加えることによって反応混合物を形成することを含む。R及びRは、以上で説明されている。Rは、C1‐20アルキル、C3‐20シクロアルキル、又はアリールなどの求電子性原子を有する任意の適切な置換基である。C1‐20アルキルは、C1‐10アルキル及びC1‐5アルキルを含む。C3‐20シクロアルキルは、C3‐10シクロアルキル及びC3‐6シクロアルキルを含む。少なくとも一態様では、亜リン酸エステルは、亜リン酸トリエチル(triethyl phosphite)、亜リン酸トリブチル(tributyl phosphite)、亜リン酸トリペンチル(tripentyl phosphite)、亜リン酸トリヘキシル(trihexyl phosphite)、亜リン酸トリヘプチル(triheptyl phosphite)、亜リン酸トリオクチル(trioctyl phosphite)、亜リン酸トリノニル(trinonyl phosphite)、亜リン酸トリデシル(tridecyl phosphite)、又はこれらの混合物を含む。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
反応混合物の中のヨウ化ナトリウムの存在が、ホスホノパラフィンの形成を促進する。代替的に、ホスホノパラフィンを調製する方法は、ヨウ化ナトリウムをハロパラフィンと混合して、次いで亜リン酸エステルを加えることにより、反応混合物を形成することを含む。代替的に、ホスホノパラフィンを調製する方法は、ヨウ化ナトリウムを亜リン酸エステルと混合して、次いでハロパラフィンを加えることにより、反応混合物を形成することを含む。スキーム1に示すように、出発物質のうちの少なくとも1つの反応を促進して、ホスホノパラフィンを有する反応生成物を形成するために、反応混合物を加熱することができる。例えば、反応混合物は、約120℃と約200℃との間の温度、例えば、約130℃と約190℃との間であったり、約140℃と約180℃との間である温度に加熱することができる。さらに、ホスホノパラフィン形成は、典型的に発熱性であり、これらの温度での暴走反応を防ぐために発熱(exotherm)を制御することができる。発熱を制御する2つの非限定的方法には、以下が含まれる:(1)アルブーゾフ反応が副生成物としてアルキルハライドを生成して、反応混合物からこの副生成物を蒸留することにより幾らかの熱を取り除くこと、及び/又は(2)亜リン酸エステルを、冷却し、且つ/又は、反応混合物にゆっくりと加え、温度を低減すること。
【0032】
少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンを調製する方法は、亜リン酸エステル及びハロパラフィンを混合することにより反応混合物を形成し、反応混合物を加熱且つ/又は反応混合物を撹拌することを含む。反応混合物は、約120℃と約200℃との間の温度、例えば、約130℃と約180℃との間であったり、約140℃と約160℃との間である温度に加熱され得る。所定期間後、反応混合物を、例えば、室温まで冷却してもよい。亜リン酸エステルを、冷却された反応混合物に加えて、第2の反応混合物を形成することができる。第2の反応混合物を加熱(且つ/又は撹拌)して、反応生成物を形成することができる。第2の反応混合物は、約120℃と約200℃との間の温度、例えば、約130℃と約180℃との間であったり、約140℃と約160℃との間である温度に加熱され得る。第1の及び/又は第2の反応混合物は、反応混合物を所望の温度、例えば、上述の温度で維持する任意の適切な冷却槽を用いて冷却することができる。所定期間後、反応生成物を、例えば、室温まで冷却してもよい。
【0033】
本開示の反応混合物は、無溶媒(ニート)であってもよく、或いは、1つ又は複数の適切な溶媒をさらに含んでもよい。溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロベンゼン、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、キシレン、及びこれらの混合物を含み得る。反応混合物を撹拌することができる。
【0034】
一態様では、少なくとも1モル当量の亜リン酸エステルが、ハロパラフィン出発材料のハロゲン部分ごとに対して、反応混合物内に存在する。例えば、ハロパラフィンが3つの塩素部分を有する場合、亜リン酸エステル:ハロパラフィンのモル比は、少なくとも3:1である。亜リン酸エステル:ハロパラフィンのモル比は、例えば、約1:1と約10:1との間、例えば、約2:1と約6:1との間、例えば、約3:1と約5:1との間である。
【0035】
一態様では、少なくとも1モル当量のヨウ化ナトリウムが、ハロパラフィン出発材料のハロゲン部分ごとに対して、反応混合物内に存在する。例えば、ハロパラフィンが3つの塩素部分を有する場合、ヨウ化ナトリウム:ハロパラフィンのモル比は、少なくとも3:1である。ヨウ化ナトリウム:ハロパラフィンのモル比は、例えば、約1:1と約10:1との間、例えば、約2:1と約6:1との間、例えば、約3:1と約5:1との間である。
【0036】
本開示の方法の途中又は後のホスホノパラフィン形成の進行は、薄層クロマトグラフィー及び/又は核磁気共鳴(NMR)分光法によってモニタリングすることができる。
【0037】
反応生成物を形成するために所望の期間にわたって本開示の反応混合物を加熱した後、反応生成物を、例えば、室温まで冷却してもよい。反応生成物のホスホノパラフィンは、次いで、任意の未反応のハロパラフィン、亜リン酸エステル及びヨウ化ナトリウム出発物質、並びに塩化ナトリウムなどのハロゲン化ナトリウム副生成物(sodium halide byproduct)から分離され得る。例えば、少なくとも一態様では、水が反応生成物に加えられ、水相及び有機相を有する二相性混合物が形成される。二相性混合物を勢いよく撹拌したり、振盪したりして、2相の混合を促進することができる。撹拌/振盪の後、混合物が二相性混合物を作り直す。水相は、ヨウ化ナトリウム及びハロゲン化ナトリウム副生成物を含む。有機相は、ホスホノパラフィン及び未反応のハロパラフィン(存在する場合)及び/又は亜リン酸エステル(存在する場合)を含む。有機相は、水相から排出することができる。有機相が、ハロパラフィン及び/又は亜リン酸エステルを含む場合、ハロパラフィン及び/又は亜リン酸エステルは、ホスホノパラフィンから蒸留されてもよく、それより、分離されたホスホノパラフィンが産出される。さらに、一部のホスホノパラフィンは、撹拌/振盪の後、水相内に存在し得る。したがって、水相は、有機溶媒(ヘキサン等)で撹拌/振盪され、沈降後に二相性混合物が形成される。この二相性混合物は、水相及び有機(ヘキサン)相を有する。有機相は、水相から排出することができ、その後、ヘキサン(及び存在する場合、ハロパラフィン/亜リン酸エステル)の蒸留が続き、分離したホスホノパラフィンが産出される。
【0038】
少なくとも一態様では、ヨウ化ナトリウムの代わりに、又は、ヨウ化ナトリウムに加えて、ヨウ化カリウム又は臭化カリウムが本開示の反応混合物内に含まれる。
【0039】
実施例1:
スキーム2は、2,5,6,11,14‐ペンタクロロペンタデカン(セレクロールAS45)と、亜リン酸トリブチル及びヨウ化ナトリウムとの反応を示す。
【0040】
【0041】
セレクロールAS45(現在はIXOMとして知られているOrica、15.39g)は、亜リン酸トリブチル(Acros、150.19g)内で溶解した。ヨウ化ナトリウム(Riedel-de Haen、29.98g)が次に加えられ、反応混合物が形成された。反応混合物は、撹拌され、窒素雰囲気の下に置かれ、約160℃まで加熱された。この時点で、発熱反応が始まり、温度が約30分のタイムスパンで約245℃まで上昇した。混合物は、次いで追加の30分のタイムスパンにわたってゆっくりと冷却された。一旦室温に至ると、脱イオン水(100ml)が反応生成物に加えられ、二相性混合物が形成される。混合物は勢いよく撹拌され、次に、水と有機相との分離が可能となった。有機相は、水相から排出され、次いで、真空下で蒸留されて、残留水及び未反応亜リン酸トリブチル及びセレクロールAS45が取り除かれた。蒸留は、0.618mbarにおいて、153℃で達成された。反応生成物の最終重量は、26.98g(収率58%)であった。
【0042】
出発物質及び生成物は、以下の物理的特性を有した:
【0043】
図1は、セレクロールAS45出発物質のH NMRスペクトル(CDCl3溶媒)である。図1で示すように、NMRスペクトルは、約0.7ppmから約2.5ppmとの間、且つ、約3.5ppmから約4.5ppmとの間の多重線を含む。図2は、実施例1の反応生成物のH NMRスペクトル(CDCl3溶媒)である。反応生成物は、構造(75)を有する:
【0044】
図2で示すように、NMRスペクトルは、約0.75ppmから約0.9ppmとの間の多重線、約1.3ppmから約1.4ppmとの間の多重線、約1.5ppmから約1.8ppmとの間の多重線、及び約3.9ppmから約4ppmとの間の多重線を含む。
【0045】
比較例:
スキーム4で示すように、ヨウ化ナトリウムの代わりに他の塩を用いて、比較反応が行われた。
【0046】
【0047】
臭化ナトリウムがセレクロールAS45及び亜リン酸トリブチルと混合されて加熱されても、ホスホノパラフィンは形成されなかった。
【0048】
さらに、ヨウ素(12)をセレクロールAS45及び亜リン酸トリブチルと混合して、反応混合物を加熱しても、ホスホノパラフィンは形成されない。その理由は、少なくとも、ヨウ素の沸点が反応温度の160℃よりも低いからである。
【0049】
最後に、20モル%のZnBrが、セレクロールAS45及び亜リン酸トリエチルと混合されて加熱されると、蒸留による亜リン酸トリエチルの除去の後に残留する材料の量は、セレクロールAS45の、ホスホノパラフィンを有する反応生成物への約30%変換を示し、H NMRスペクトルの生成物は、材料判定の量と一致している。さらに、予期される亜鉛塩は、反応生成物から析出されない。亜鉛塩は、油圧流体として使用されるホスホノパラフィンのために除去されるべきである。それに比べて、本開示の方法の途中で形成されるNaClなどのナトリウム塩は、ホスホノパラフィン反応生成物から析出されない。さらに、ZnBrは、NaIよりも遥かに高価であり、大規模化学反応用の試剤としてのZnBrの産業上の利用可能性が妨げられている。
【0050】
その後のホスホノパラフィン形成のためのハロパラフィンの形成:ハロパラフィンは、C1-20アルカンをハロゲン元素(例えば、F、Cl、I、Br)と混合して、反応混合物を形成することによって形成することができる。次いで、反応混合物は、紫外線(UV)光及び/又はラジカル開始剤に曝露され、ハロパラフィンが形成される。ラジカル開始剤は、過酸化水素などの過酸化物を含む。
【0051】
一例として、窒素雰囲気においてドデカンが5モル当量のBrと混合され、反応混合物が形成された。反応混合物は、UV光に曝露され、ブロモパラフィンを有する反応生成物が産出された。反応生成物は、大気雰囲気に曝露され、水で急冷され、有機溶媒(ヘキサン)が加えられて、水相及び有機(ヘキサン)相を有する二相性混合物が形成された。二相性混合物は、振盪されて、沈降が可能となる。二相性混合物の有機相が排出された。ヘキサン、残留水、及びドデカン出発物質は、有機相から蒸留されて、ブロモパラフィン生成物がもたらされた(収率12%)。
【0052】
油圧流体
本開示のホスホノパラフィンは、油圧流体として使用することができる。本開示のホスホノパラフィンは、油圧流体の使用として好適な粘性、燃焼点、引火点、融点、及び生分解性を有する。例えば、フルオロパラフィン(fluoroparaffin)は、本開示のホスホノパラフィンとは異なり、生分解に対する耐性がある。
【0053】
ホスホノパラフィンは、油圧流体として単独で使用することができ、或いは、他の成分と混合して、油圧流体組成を形成することができる。他の成分には、水、低分子量ホスホン酸エステル(テトラブチルプロピルビスホスホネート(tetrabutyl propyl bisphosphonate)又はリン酸トリブチル)、抗酸化物、鉱油、植物油(大豆、菜種、キャノーラ、又はヒマワリ等)、グリコール(プロピレングリコール等)、エステル、シリコーン油、アルカノール(ブタノール等)、アルキル化芳香族炭化水素、ポリアルファオレフィン(ポリイソブテン等)、腐食抑制剤、又はこれらの混合物が含まれる。
【0054】
エステルには、有機リン酸エステル、フタル酸、アジピン酸、リン酸エステル、及び脂肪酸エステルが含まれる。抗酸化物には、ジ3級ブチルフェニル亜リン酸エステル、オクチル化フェニル-α-ナフチルアミン、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、フェノール、及びチオエーテルが含まれる。
【0055】
本明細書で使用される用語「wt%」は、重量パーセントを意味し、組成物の総重量に基づいている。少なくとも一態様では、油圧流体組成は、約1から約99wt%のホスホノパラフィン、例えば、約10から約80wt%の、約20から約70wt%の、約40から約60wt%のホスホノパラフィンを含む。少なくとも一態様では、油圧流体組成は、約1から約99wt%の他の1つ又は複数の成分、例えば、約10から約80wt%の、約20から約70wt%の、約40wt%から約60wt%の他の1つ又は複数の成分を含む。
【0056】
油圧流体組成 実施例1:ホスホノパラフィン(50~60w/v%、58w/v%等)、リン酸ジブチルフェニル(20~30w/v%)、リン酸ブチルジフェニル(5~10w/v%)、エポキシ改良剤(2-エチルヘキシル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート<10w/v%等)、及びリン酸トリクレジル(1~5w/v%)。
【0057】
油圧流体組成 実施例2:
(1)約10から約80wt%のホスホノパラフィン。少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、約20から約70wt%、例えば、約30から約60wt%で存在する。
(2)約10から約20wt%のアルキルホスホン酸エステル(alkyl phosphonate)。少なくとも一態様では、アルキルホスホン酸エステルは、約5から約15wt%で存在する。
(3)Skydrol添加剤<10wt%
【0058】
アルキルホスホン酸エステルは、式117によって表されるモノホスホン酸エステル(monophosphonate)化合物を含む:
式中、R17、R18、及びR19のぞれぞれは、独立して、C1-20アルキル、アリール、又はC1-20アルキルアリールである。アリールは、単環式又は二環式アリールを含む。アリールは、フェニルであってもよい。C1-10アルキルアリールは、ベンジルなどのC1-10アルキルフェニルを含む。モノホスホン酸エステルには、ベンジルホスホン酸ジエチル、ヘキサンホスホン酸エステルジブチル(dibutylhexanephosponate)、又はオクタンホスホン酸ジブチル(dibutyloctanephosphonate)が含まれる。
【0059】
油圧流体組成 実施例3:
(4)約20から約70wt%のシロキサン。少なくとも一態様では、シロキサンは、約20から約60wt%、例えば、約30から約50wt%で存在する。
(5)約20から約60wt%のホスホノパラフィン。少なくとも一態様では、ホスホノパラフィンは、約30から約50wt%で存在する。
【0060】
シロキサンは、以下の化学構造式118に従って説明することができるポリシロキサン化合物を含む:
式中、yは1から40から選択された整数であり、R1’、R2’、R3’、及びR4’のぞれぞれは、独立して、C1-10アルキル、アリール、又はC1-10アルキルアリールであり、R及びRは、独立して、C1-10アルキル、アリール、又はC1-10アルキルアリールである。
【0061】
ポリシロキサンは、
及びこれらの混合物を含む。
【0062】
本開示のホスホノパラフィンの他の使用には、潤滑剤として、又は、鉱石からのレアアース及びアクチナイド金属の抽出/精製のための溶媒として使用することが含まれる。
【0063】
全体的に、本開示の方法は、ヨウ化ナトリウムを使用してホスホノパラフィンを合成し、油圧流体として使用するための耐火性及び生分解性を有する新規のホスホノパラフィンを提供することを含む。
【0064】
定義
用語「アルキル」は、1から約20の炭素原子を含有する、置換されるか又は置換されない、直鎖又は分岐の非環状アルキル基を含む。少なくとも一態様では、アルキルは、C1-10アルキル、C1-7アルキル、又はC1-5アルキルである。アルキルの例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、及びこれらの構造異性体が含まれる。
【0065】
用語「シクロアルキル」は、3から約20の炭素原子を含有する、置換されるか又は置換されない、環状アルキル基を含む。少なくとも一態様では、シクロアルキルは、C3‐10シクロアルキル又はC3‐6シクロアルキルである。
【0066】
用語「アリール」は、各環に最大6個の炭素原子の任意の単環式、二環式、又は三環式炭素環を指し、少なくとも1つの環は、芳香族であるか、又は、5から14個の炭素原子の芳香族環系であり、この芳香族環系は、5‐又は6‐員のシクロアルキル基と融着した炭素環式芳香族基を含む。アリール基の例には、限定しないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、又はピレニルが含まれる。
【0067】
用語「アルコキシ」は、RO--であり、Rは,本明細書で定義されたアルキルである。アルコキシ基の非限定的例には、メトオキシ、エトキシ、及びプロポキシが含まれる。アルキルオキシ、アルコキシル、及びアルコキシという用語は、交換可能に使用されてもよい。アルコキシの例には、限定しないが、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、ブトキシル、ペントキシル、ヘキシルオキシル(hexyloxyl)、ヘプチルオキシル(heptyloxyl)、オクチルオキシル(octyloxyl)、ノニルオキシル(nonyloxyl)、デシルオキシル(decyloxyl)、及びこれらの構造異性体が含まれる。
【0068】
用語「ホスホノパラフィン」は、1つ又は複数のホスホノパラフィンを有する直鎖又は分岐のアルカンを含む。
【0069】
用語「ハロパラフィン」は、1つ又は複数のハロゲン置換基を有する直鎖又は分岐のアルカンを含む。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を含む。ハロパラフィンは、クロロパラフィン、ブロモパラフィン、又はヨードパラフィンを含む。
【0070】
用語「亜リン酸エステル」は、アルコキシ置換基を有する三価のリン原子を含む。
【0071】
用語「第1級ハロゲン(primary halogen)」は、2個の水素原子及び1個の炭素原子に結合している炭素原子に結合しているハロゲン原子を含み、以下に示される。
【0072】
用語「第2級ハロゲン(secondary halogen)」は、1個の水素原子及び2個の炭素原子に結合している炭素に結合しているハロゲン原子を含み、以下に示される。
【0073】
用語「第3級ハロゲン(tertiary halogen)」は、0個の水素原子及び3個の炭素原子に結合している炭素に結合しているハロゲン原子を含み、以下に示される。
【0074】
本開示の化合物には、化合物の互変異性型、幾何異性型、又は立体異性型が含まれる。さらに、化合物のエステル、オキシム、オニウム、水和物、溶媒和化合物、及びN-オキシド体も本開示に含まれる。本開示はこのような化合物全てを考慮しており、それには、本開示に含まれる、シス及びトランス幾何異性体(Z‐及びE‐幾何異性体)、R‐及びS‐鏡像異性体、ジアステレオマー、d‐異性体、l‐異性体、アトロプ異性体、エピマー、配座異性体、回転異性体、異性体の混合体、これらのラセミ体が含まれる。
【0075】
さらなる態様が以下の条項に従って説明される。
【0076】
条項1
ホスホノパラフィンを調製する方法であって、
ハロパラフィン、亜リン酸エステル、及びヨウ化ナトリウムを混合して、反応混合物を形成することと、
前記反応混合物を加熱して、ホスホノパラフィンを形成することと
を含む方法。
【0077】
条項2
前記ハロパラフィンがクロロパラフィンである、条項1に記載の方法。
【0078】
条項3
前記ハロパラフィンが、1つ又は複数の第2級ハロゲン部分を有する、条項1又は2に記載の方法。
【0079】
条項4
前記ホスホノパラフィンを約40%から約60%の間の総収率で分離することをさらに含む、条項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
条項5
前記亜リン酸エステルが、以下の化学式、
によって表され、式中、R、R、及びRのそれぞれが、独立して、C1‐20アルキル、C3‐20シクロアルキル、又はアリールである、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
条項6
、R、及びRのそれぞれが、独立して、C1‐5アルキル又はC3‐6シクロアルキルである、条項5に記載の方法。
【0082】
条項7
前記亜リン酸エステルが、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリペンチル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリヘプチル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリノニル、亜リン酸トリデシル、又はこれらの混合物を含む、条項5又は6に記載の方法。
【0083】
条項8
約120℃から約200℃の間の温度で加熱が行われる、条項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
条項9
溶媒を前記ハロパラフィン、亜リン酸エステル、及びヨウ化ナトリウムと混合することをさらに含み、前記溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロベンゼン、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、キシレン、又はこれらの混合物を含む、条項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
条項10
亜リン酸エステル:ハロパラフィンのモル比が、約2:1から約6:1の間である、条項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
条項11
ヨウ化ナトリウム:ハロパラフィンのモル比が、約2:1から約6:1の間である、条項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
条項12
反応生成物を冷却することと、前記ホスホノパラフィンをハロゲン化ナトリウム副生成物から分離することとをさらに含む、条項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
条項13
以下の化学式(I)、
によって表されるホスホノパラフィンであって、
式中、Rの各例が、独立して、-H又は
であり、
及びRの各例が、独立して、C1‐20アルキル、C3‐20シクロアルキル、又はアリールであり、
nが、4と22との間の整数であり、且つ
が化学式(I)の
である例の数は、約2と約8との間である、ホスホノパラフィン。
【0089】
条項14
及びRのそれぞれが、独立して、C1‐5アルキル又はC3‐6シクロアルキルである、条項13に記載のホスホノパラフィン。
【0090】
条項15
が化学式(I)の
である例の数は、約3と約6の間である、条項13又は14に記載のホスホノパラフィン。
【0091】
条項16
nが約10と約16の間の整数である、条項13から15のいずれか一項にホスホノパラフィン。
【0092】
条項17
及びRのそれぞれが、独立して、直鎖C1‐20アルキル又はC3‐20シクロアルキルである、条項13から16のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0093】
条項18
及びRのそれぞれが、独立して、C1‐5アルキル又はC3‐6シクロアルキルである、条項17に記載のホスホノパラフィン。
【0094】
条項19
及びRが、それぞれ同一である、条項13から18のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0095】
条項20
約200℃を越える燃焼点を有する、条項13から19のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0096】
条項21
約150℃を越える引火点を有する、条項20に記載のホスホノパラフィン。
【0097】
条項22
約-40℃未満の融点を有する、条項21に記載のホスホノパラフィン。
【0098】
条項23
前記ホスホノパラフィンが、
を含む、条項13から22のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0099】
条項24
及びRのそれぞれが、独立して、直鎖C1‐20アルキル又はC3‐20シクロアルキルである、条項23に記載のホスホノパラフィン。
【0100】
条項25
及びRのそれぞれが、独立して、C1‐5アルキル又はC3‐6シクロアルキルである、条項24に記載のホスホノパラフィン。
【0101】
条項26
及びRが、それぞれ同一である、条項23に記載のホスホノパラフィン。
【0102】
条項27
及びRのそれぞれが、独立して、イソプロピル、ブチル、又はフェニルである、条項23に記載のホスホノパラフィン。
【0103】
条項28
前記ホスホノパラフィンが、
を含む、条項13から22のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0104】
条項29
前記ホスホノパラフィンが、
及びこれらの混合物を含む、条項13から22のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0105】
条項30
前記ホスホノパラフィンが、
及びこれらの混合物を含む、条項13から22のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0106】
条項31
前記ホスホノパラフィンが、
及びこれらの混合物を含む、条項13から22のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン。
【0107】
条項32
油圧流体であって、
条項13から22のいずれか一項に記載のホスホノパラフィン、並びに
水、低分子量ホスホン酸エステル、抗酸化物、鉱油、植物油、エステル、ポリアルファオレフィン、シリコーン油、アルカノール、アルキル化芳香族炭化水素、腐食抑制剤、又はこれらの混合物を含む1つ又は複数の成分
を含む油圧流体。
【0108】
本開示の様々な態様の説明は、例示を目的として提示されているものであり、網羅的な説明であること、又は開示された態様に限定されることを意図していない。当業者には、記載の態様の範囲及び精神から逸脱することなく、多数の修正例及び変更例が明らかであろう。本明細書で使用された用語は、態様の原理、市場で見られる技術に対する実用的適用又は技術的改善を最もよく説明するため、或いは、他の当業者が本明細書で開示された態様を理解することを可能にするために選択されている。以上は本開示の態様を対象としているが、本開示の他の態様及びさらなる態様は、その基本的な範囲を逸脱しない限り、考案してもよい。
図1
図2