(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】電解液及び該電解液を含む電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230929BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230929BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230929BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20230929BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20230929BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20230929BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230929BHJP
H01M 10/054 20100101ALN20230929BHJP
H01M 4/587 20100101ALN20230929BHJP
H01M 4/38 20060101ALN20230929BHJP
H01M 4/48 20100101ALN20230929BHJP
H01M 4/485 20100101ALN20230929BHJP
H01M 4/36 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01G11/64
H01G11/60
H01G11/62
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/36 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021192061
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】202110927987.1
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521518699
【氏名又は名称】湖州崑崙億恩科電池材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】孫 春勝
(72)【発明者】
【氏名】喬 順攀
(72)【発明者】
【氏名】張 和平
(72)【発明者】
【氏名】頓 温新
(72)【発明者】
【氏名】李 俊傑
(72)【発明者】
【氏名】申 海鵬
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-277170(JP,A)
【文献】国際公開第2021/124958(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163882(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/006977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/052
H01G 11/64
H01G 11/60
H01G 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質、有機溶媒及び式Iで示される添加剤を含む、ことを特徴とする電解液。
【化1】
(但し、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、C1~C10アルキル基、C6~C20芳香族炭化水素基、C3~C10アルコキシ基、C2~C10アルケニル基又はC2~C10アルキニル基のいずれか1種を含み、
前記R
1、R
2、R
3及びR
4の少なくとも1つはC2~C10アルケニル基又はC2~C10アルキニル基であり、
且つR
1
、R
2
、R
3
及びR
4
は同時にC1~C10アルキル基ではなく、
前記R
5はビスフルオロスルホニルイミド基、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド基、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸基、ビス(オキサラト)ホウ酸基、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸基又はヘキサフルオロリン酸基のいずれか1種を含む。)
【請求項2】
前記R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基又はプロパルギル基のいずれか1種を含み、
前記R
1、R
2、R
3及びR
4の少なくとも1つはアリル基又はプロパルギル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記添加剤の構造式は式IIで示される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電解液。
【化2】
(前記R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基又はプロパルギル基のいずれか1種を含み、
前記R
1、R
2、R
3及びR
4の少なくとも1つはアリル基又はプロパルギル基であり、
前記R
5はビスフルオロスルホニルイミド基、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド基、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸基、ビス(オキサラト)ホウ酸基、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸基又はヘキサフルオロリン酸基のいずれか1種を含む。)
【請求項4】
前記添加剤の構造式は式III又は式IVのいずれか1種を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電解液。
【化3】
【化4】
(前記R
5はビスフルオロスルホニルイミド基、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド基又はヘキサフルオロリン酸基のいずれか1種である。)
【請求項5】
前記添加剤は式III又は式IVで示される構造の化合物のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項
4に記載の電解液。
【請求項6】
前記電解質はリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み
、
前記電解質はXClO
4、XPF
6、XBF
4、XTFSI、XFSI、XBOB、XODFB、XCF
3SO
3又はXAsF
6のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、
ただし、XはLi、Na又はKのいずれか1種を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項7】
前記有機溶媒は非水性有機溶媒を含み
、
前記有機溶媒はカーボネート、カルボキシレート、プロピオネート、フルオロエーテル又は芳香族炭化水素のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み
、
前記カーボネートはハロゲン化カーボネート及び/又は非ハロゲン化カーボネートを含み
、
前記カルボキシレートは酪酸プロピル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸エチル,プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル又はプロピオン酸プロピルのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み
、
前記フルオロエーテルは炭素原子数が7個以下であり
、
前記芳香族炭化水素はハロゲン化芳香族炭化水素及び/又は非ハロゲン化芳香族炭化水素を
含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項8】
前記非ハロゲン化カーボネートはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はメチルエチルカーボネートのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の電解液。
【請求項9】
前記ハロゲン化カーボネートはフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビスフルオロプロピレンカーボネート、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロエチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、4-トリフルオロメチルエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、トリフルオロプロピオン酸メチル、3,3,3-トリフルオロ酢酸エチル、2-トリフルオロメチル安息香酸メチル、4,4,4-トリフルオロ酪酸エチル又は1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレートのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の電解液。
【請求項10】
前記ハロゲン化芳香族炭化水素はモノフルオロベンゼン、ビスフルオロベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、トリフルオロトルエン、2-フルオロトルエン又は2,4-ジクロロトリフルオロトルエンのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の電解液。
【請求項11】
前記電解液における前記電解質の重量パーセントは8%~49%であり
、
前記電解液における前記有機溶媒の重量パーセントは40%~85%であり
、
前記電解液における前記式Iで示される添加剤の重量パーセントは0.01%~5%であり
、
前記電解液は他の添加剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載の電解液。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の電解液を含む、ことを特徴とする電池。
【請求項13】
前記電池はリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池又はスーパーコンデンサを含み
、
前記リチウムイオン電池の負極材料はグラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、単結晶シリコンとグラファイトの複合材料、一酸化シリコンとグラファイトの複合材料、チタン酸リチウム又は五酸化二ニオブのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項
12に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池の技術分野に関し、特に電解液及び該電解液を含む電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の電解液は、電池の使用寿命、保管寿命、容量発揮、高温と低温及び安全性能などに重大な影響を及ぼす。現在、市販の電解液は、主にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解された環状カーボネートと鎖状カーボネートの二元又は三元混合溶媒系であり、この系は、溶解性がよく、イオン導電率が高く、グラファイトの負極表面で安定した固体電解質界面膜(SEI膜)を形成できるなどの特性を有し、電解液溶媒系の最適な選択と考えられる。しかしながら、有機カーボネート系溶媒は、揮発性、可燃性、耐酸化性が不十分であるなどの欠点があり、これは電池の安全性の低下を引き起こす。
【0003】
電解液に少量の非エネルギー貯蔵物質を加えると、電解液の導電率、正極と負極のマッチング性能、電池の容量、サイクル効率、サイクル寿命、可逆容量及び安全性能などの電池のある性能を効果的に改善させることができる。添加剤は、その作用メカニズムに応じて、SEI成膜添加剤、導電性添加剤、難燃性添加剤、過充電防止添加剤、電解液低温性能向上添加剤、電解液熱安定性改善添加剤、電解液における酸・水含有量制御添加剤などに分けられる。
【0004】
CN110911750Aは、高電圧リチウムイオン電池用電解液、添加剤及び該添加剤の調製方法を開示しており、これに開示されている添加剤は、チオ尿素誘導体塩であり、これに開示されている添加剤の調製方法は、まず、溶媒、誘導体及びチオ尿素を反応容器に入れ、徐々に有機酸を滴下し、氷水浴で重縮合反応を行い、チオ尿素エステル系化合物を得るステップ(1)と、分水器と高温減圧蒸留によって副生成物を分離し、チオ尿素エステル系化合物の粗生成物を得るステップ(2)と、溶媒を用いて生成物を抽出し、再結晶で精製し、乾燥してからチオ尿素エステル系化合物を得るステップ(3)とを含む。該チオ尿素エステル系化合物は、高電圧リチウムイオン電池用電解液の添加剤として使用可能であり、高電圧下で正極材料により生成された酸素ラジカルを捕捉できるか、又はSEI膜を形成できる。
【0005】
CN103094616Aは、電解液添加剤と、該電解液添加剤を含む高電圧電解液及びリチウムイオン電池を開示しており、これに開示されている電解液添加剤は、無水マレイン酸C4H2O3又はその誘導体の1種であり、これに開示されている高電圧電解液は、正極と負極の表面に安定した界面膜を形成し、電極表面の反応活性を抑制し、電解液の酸化分解を低減し、ガスの膨張を効果的に抑制することにより、リチウムイオン電池の安全性能、常圧及び高電圧下でのサイクル性能と使用寿命を向上させることができる。
【0006】
しかし、工業生産では、高エネルギー密度の需要及び大容量高電圧電極材料への要求がますます高まっているため、電池の放電レート性能、サイクル性能及び低温放電性能を向上できる電解液を開発することが非常に重要である。
【発明の概要】
【0007】
従来の技術の不足について、本発明の目的は、電池の放電レート性能、サイクル性能、低温放電性能を向上できる電解液及び該電解液を含む電池を提供することにある。
【0008】
この目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
第1の態様では、本発明は電解質、有機溶媒及び式Iで示される添加剤を含む電解液を提供する。
【0009】
【0010】
ただし、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、C1~C10(例えば、C2、C4、C6、C8など)アルキル基、C6~C20(例えば、C8、C10、C12、C14、C16、C18など)芳香族炭化水素基、C3~C10(例えば、C4、C6、C8など)アルコキシ基、C2~C10(例えば、C2、C4、C6、C8など)アルケニル基又はC2~C10(例えば、C2、C4、C6、C8など)アルキニル基のいずれか1種を含み、
前記R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはC2~C10アルケニル基又はC2~C10アルキニル基であり、
前記R5はビスフルオロスルホニルイミド基(FSI)、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド基(TFSI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸基(DFOB)、ビス(オキサラト)ホウ酸基(BOB)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸基(DFOP)又はヘキサフルオロリン酸基(PF6)のいずれか1種を含む。
【0011】
本発明は、式Iで示される化合物を添加剤として用い、正極の重合及び成膜に寄与し、電池の放電レート性能、サイクル性能及び低温放電性能、特に負極材料がグラファイト、単結晶シリコンとグラファイトの複合材料又は一酸化シリコンとグラファイトの複合材料であるリチウムイオン電池の放電レート性能、サイクル性能及び低温放電性能を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る「C1~C10」とは、対応する基の炭素原子の数が1~10であり、「C6~C10」などは同等であることを意味する。
【0013】
好ましくは、前記R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基又はプロパルギル基のいずれか1種を含み、
前記R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはアリル基又はプロパルギル基である。
【0014】
好ましくは、前記添加剤の構造式は式IIで示される。
【0015】
【0016】
前記R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基又はプロパルギル基のいずれか1種を含み、
前記R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはアリル基又はプロパルギル基であり、
前記R5はビスフルオロスルホニルイミド基、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド基、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸基、ビス(オキサラト)ホウ酸基、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸基又はヘキサフルオロリン酸基のいずれか1種を含む。
【0017】
上記R5の構造式はそれぞれ次のとおりである。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
好ましくは、前記添加剤の構造式は式III又は式IVのいずれか1種を含む。
【0025】
【0026】
【0027】
前記R5はビスフルオロスルホニルイミド基、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド基又はヘキサフルオロリン酸基のいずれか1種である。
【0028】
好ましくは、前記添加剤は式III又は式IVで示される構造の化合物のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、例えば、添加剤は下記の化合物を含むがこれらに限定されない。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
好ましくは、前記電解質はリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0034】
好ましくは、前記電解質はXClO4、XPF6、XBF4、XTFSI、XFSI、XBOB、XODFB、XCF3SO3又はXAsF6のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、ただし、典型的であるが非限定的な組み合わせは、XClO4とXPF6の組み合わせ、XBF4、XTFSI、XFSI及びXBOBの組み合わせ、XBF4、XTFSI、XFSI、XBOB、XODFB、XCF3SO3及びXAsF6の組み合わせなどを含み、
ただし、XはLi、Na又はKのいずれか1種を含む。
【0035】
好ましくは、前記有機溶媒は非水性有機溶媒を含む。
【0036】
好ましくは、前記有機溶媒はカーボネート、カルボキシレート、プロピオネート、フルオロエーテル又は芳香族炭化水素のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、ただし、典型的であるが非限定的な組み合わせは、カーボネートとカルボキシレートの組み合わせ、カルボキシレート、プロピオネート及びフルオロエーテルの組み合わせ、カルボキシレート、プロピオネート、フルオロエーテル及び芳香族炭化水素の組み合わせなどを含む。
【0037】
好ましくは、前記カーボネートはハロゲン化カーボネート及び/又は非ハロゲン化カーボネートを含む。
【0038】
好ましくは、前記非ハロゲン化カーボネートはエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)又はメチルエチルカーボネート(EMC)のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0039】
好ましくは、前記ハロゲン化カーボネートはフルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、ビスフルオロプロピレンカーボネート、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロエチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、4-トリフルオロメチルエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、トリフルオロプロピオン酸メチル、3,3,3-トリフルオロ酢酸エチル、2-トリフルオロメチル安息香酸メチル、4,4,4-トリフルオロ酪酸エチル又は1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレートのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0040】
好ましくは、前記カルボキシレートは酪酸プロピル(PB)、酢酸プロピル(PA)、酢酸イソプロピル(IPA)、プロピオン酸ブチル(BP)、プロピオン酸イソプロピル(IPP)、酪酸エチル(EB)、プロピオン酸メチル(EM)、プロピオン酸エチル(EP)又はプロピオン酸プロピル(PP)のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0041】
好ましくは、前記フルオロエーテルは炭素原子数が7個(例えば、5個、6個など)以下である。
【0042】
好ましくは、前記芳香族炭化水素はハロゲン化芳香族炭化水素及び/又は非ハロゲン化芳香族炭化水素を含む。
【0043】
好ましくは、前記ハロゲン化芳香族炭化水素はモノフルオロベンゼン、ビスフルオロベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、トリフルオロトルエン、2-フルオロトルエン又は2,4-ジクロロトリフルオロトルエンのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0044】
好ましくは、前記電解液における前記電解質の重量パーセントは8%~49%であり、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%などである。
【0045】
好ましくは、前記電解液における前記有機溶媒の重量パーセントは40%~85%であり、例えば、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%などである。
【0046】
好ましくは、前記電解液における前記式Iで示される添加剤の重量パーセントは0.01%~5%であり、例えば、0.04%、0.06%、0.08%、0.1%、0.3%、0.5%、0.6%、0.8%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%などである。
【0047】
本発明に係る前記電解液における前記添加剤の重量パーセントが0.01%~5%の範囲内で得られる電解液は、電池の総合性能の向上により寄与し、この添加剤が0.01%未満であると、向上作用が著しくなく、5%の含有量を超えると、性能の向上が逆に低下し、且つコストが高すぎる。
【0048】
好ましくは、前記電解液は他の添加剤をさらに含む。
【0049】
本発明に係る他の添加剤とは、式Iで示される添加剤以外の添加剤であり、例えば、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン及び硫酸エチレンなどである。
【0050】
第2の態様では、本発明は第1の態様に係る電解液を含む電池を提供する。
【0051】
好ましくは、前記電池はリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池又はスーパーコンデンサを含む。
【0052】
好ましくは、前記リチウムイオン電池の負極材料はグラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、単結晶シリコンとグラファイトの複合材料、一酸化シリコンとグラファイトの複合材料、チタン酸リチウム又は五酸化二ニオブのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0053】
従来の技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明に係る電解液は、式Iで示される添加剤を加えることにより、電池に使用されると、得られる電池の充放電サイクル性能及び低温放電性能がいずれも向上され、本発明で得られる電池は、常温での3C放電率が80.6%以上、-20℃での1C放電率が81.0%以上、常温での1000サイクル後の1Cレートの容量保持率が80.01%以上、45℃の高温での1Cの1000サイクル後の容量保持率が74.12%以上であり、総合性能に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、具体的な実施形態によって本発明の技術案をさらに説明する。当業者は、下記実施例が本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明に対する具体的な制限と見なされるべきではないことを理解すべきである。
【0055】
実施例1~12及び比較例1~2に係る電解液の組成は表1に示すとおりである。
【0056】
【0057】
性能テスト
実施例1~12及び比較例1~2に係る電解液に対して以下のテストを行った。
実施例1~9、11~12及び比較例1に係る電解液を、負極材料がシリコン-炭素含有負極材料(Better our World S420)、正極材料がNCM811ニッケルコバルトマンガン三元材料(RONBAY TECHNOLOGY S85ES)である電池に加えて調製して1.67Ahのリチウムイオン電池を得た。
実施例10及び比較例2に係る電解液を、負極材料がグラファイト材料(ShanShanCorporation P15)、正極材料がNCM811ニッケルコバルトマンガン三元材料(RONBAY TECHNOLOGY S85ES)である電池に加えて調製して1.67Ahのリチウムイオン電池を得た。
【0058】
次のテストを行った。
(1)放電レート性能:1C電流は1.67A、3C電流は5.01Aであり、充放電の電位範囲は2.75V~4.20Vである。常温での3C放電率は3C放電容量C2と1C放電容量C1の比率である。
(2)サイクル性能:充放電の電位範囲は2.75V~4.20V、充電電流は1C(1.67A)で4.20Vまで充電し、カットオフ電流≦0.02C(0.0334A)まで4.20Vの定電圧で充電し、5分間静置した後に、1C(1.67A)で2.75Vまで放電し、5分間静置し、このように充電と放電を繰り返した。
(3)低温放電性能:常温25℃での1C(1.67A)の放電容量をC1として記し、4.2Vで完全に充電した後に、-20℃で4時間冷凍してから1C(1.67A)で2.75Vまで放電し、放電容量をC2として記した。-20℃下での放電率はC2/C1である。
【0059】
テスト結果を表2~表4に纏める。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表2~表4のデータを分析すると、本発明に係る電解液は式Iで示される添加剤を加えることにより、電池に使用されると、得られる電池の充放電サイクル性能及び低温放電性能がいずれも向上され、本発明で得られる電池は、常温での3C放電率が80.6%以上、-20℃での1C放電率が81.0%以上、常温での1000サイクル後の1Cレートの容量保持率が80.01%以上、45℃の高温での1Cの1000サイクル後の容量保持率が74.12%以上であり、総合性能に優れていることが分かった。
【0064】
比較例1及び実施例1を分析すると、比較例1の性能が実施例1よりも劣ることが分かり、これは、式Iで示される添加剤を加えた電解液が電池の総合性能を向上できることを証明した。
【0065】
比較例2及び実施例10を分析すると、類似な結果を示すことが分かり、これは、式Iで示される添加剤を加えた電解液が負極がシリコン含有材料又はグラファイトである電池の充放電サイクル性能及び低温放電性能に寄与することを証明した。
【0066】
実施例11~12、比較例1及び実施例2を分析すると、比較例1及び実施例12の性能は実施例2及び実施例11よりも劣ることが分かり、これは、電解液における式Iで示される添加剤の重量パーセントが0.01%~5%範囲内にあると、電池の総合性能の向上に寄与することを証明した。
【0067】
本発明は、上記実施例によって本発明の詳細な方法を説明したが、本発明は上記詳細な方法に限定されるものではなく、すなわち、本発明は上記詳細な方法でしか実施できないことを意味するものではない。当業者にとって、本発明に対するいずれの改良、本発明の製品の各原料に対する同等置換及び補助成分の添加、具体的な形態の選択などは、すべて本発明の保護範囲と開示範囲内に属することが分かるはずである。