(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】発射体の組立体と電気回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20230929BHJP
F41F 7/00 20060101ALI20230929BHJP
F42B 3/12 20060101ALI20230929BHJP
B23D 15/14 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
H01H39/00 C
F41F7/00
F42B3/12
B23D15/14
(21)【出願番号】P 2021504046
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008293
(87)【国際公開番号】W WO2020179663
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019037135
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】中橋 勝弘
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522834(JP,A)
【文献】特開2018-006082(JP,A)
【文献】特開2016-151318(JP,A)
【文献】登録実用新案第3134430(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0056680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/59-37/74
H01H 39/00
F41A 1/00-99/00
F41B 1/00-15/10
F41C 3/00-33/08
F41F 1/00- 7/00
F41G 1/00-11/00
F41H 1/00-13/00
F41J 1/00-13/02
F42B 1/00-99/00
F42C 1/00-99/00
F42D 1/00-99/00
B23D 15/00-19/08
B23D 23/00-31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー内に発射体および点火器が収容配置された発射体の組立体であって、
前記シリンダーが、第1開口部、前記第1開口部と軸方向反対側の第2開口部、および前記第1開口部側の周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有しており、
前記点火器が、点火部と導電ピンを備えた点火器本体部と前記点火器本体部を包囲する樹脂部を有しており、
前記樹脂部が、前記シリンダーの第1開口部と複数の貫通孔を閉塞し、かつ前記シリンダーの貫通孔周辺の内壁面に当接されており、
前記発射体が合成樹脂からなり、
前記シリンダー内の第1開口部側に点火器が配置され、前記シリンダー内の点火器と第2開口部の間に発射体が配置されており、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部と前記第2開口部側の周壁部の両方が内側にかしめられて第1かしめ部と第2かしめ部が形成されており、前記第1かしめ部が前記点火器の樹脂部に当接されている、発射体の組立体。
【請求項2】
前記発射体が、前記シリンダーの第1開口部側の大径部と前記シリンダーの第2開口部側の小径部を有し、大径部の外径(d1)>小径部の外径(d2)の関係を有しており、
前記シリンダーの第2開口部の第2かしめ部がある部分の内径(id)が、d1>id≧d2の関係を有している、請求項1記載の発射体の組立体。
【請求項3】
合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部側からハウジング軸方向反対側の第2端部側に向かって順に、点火器、合成樹脂からなる発射体、および電気回路の一部を形成させるための導体片が配置され、前記第2端部と前記導体片の間に閉鎖された絶縁空間を有しており、
前記ハウジング内にシリンダーが配置され、前記シリンダー内に前記点火器および前記発射体が配置されており、
前記シリンダーが、前記ハウジングの第1端部側の第1開口部、前記ハウジングの第2端部側の第2開口部、および前記第1開口部側の周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有しており、
前記点火器が、点火部と導電ピンを備えた点火器本体部と前記点火器本体部を包囲する樹脂部を有しており、
前記樹脂部が、前記シリンダーの第1開口部と複数の貫通孔を閉塞し、かつ前記シリンダーの貫通孔周辺の内壁面に当接されており、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部と前記第2開口部側の周壁部の両方が内側にかしめられて第1かしめ部と第2かしめ部が形成されており、前記第1かしめ部が前記点火器の樹脂部に当接されており、
前記導体片が、両端側の第1接続部、第2接続部および中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジング軸方向に直交して配置されており、
前記発射体が、前記導体片の切断部とハウジング軸方向に対向されている、電気回路遮断装置。
【請求項4】
前記点火器の樹脂部が、点火部側から導電ピン側に向かって順に形成された、第1円板部、第2円板部、第3円板部および第4円板部を有しており、
前記第1円板部の周面が前記シリンダーの内壁面に当接されており、
前記第2円板部が、周面に凹凸を有している不均一な外径を有し、前記凹
凸の凸部が前記シリンダーの第1開口部側の複数の貫通孔に入り込んでおり、
前記第1円板部の外径(D1)と前記第3円板部の外径(D3)が同一であり、前記第3円板部の周面が前記シリンダーの内壁面に当接されており、
前記第3円板部と前記第4円板部の間には、前記第3円板部の外径(D3)と前記第4円板部の外径(D4)がD3>D4の関係を有していることによる環状面が形成されており、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部が内側にかしめられて第1かしめ部が形成され、前記第1かしめ部が前記環状面に当接されている、請求項3記載の電気回路遮断装置。
【請求項5】
前記発射体が、ハウジングの第1端部側の大径部とハウジングの第2端部側の小径部を有し、大径部の外径(d1)>小径部の外径(d2)の関係を有しており、
前記シリンダーの第2開口部の内径(id)が、d1>id≧d2の関係を有している、請求項3または4記載の電気回路遮断装置。
【請求項6】
前記発射体が、ハウジングの第1端部側の大径部とハウジングの第2端部側の小径部を有し、大径部の外径(d1)>小径部の外径(d2)の関係を有しており、
前記点火器の点火部が前記大径部に形成された凹部内に入り込んだ状態で配置されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の電気回路遮断装置。
【請求項7】
請求項1または2記載のシリンダー内に発射体および点火器が収容配置された発射体の組立体の製造方法であり、
第1開口部、第1開口部側の周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔、および第2開口部を有するシリンダーを用意し、内部に点火器本体部を配置した後、前記シリンダーと点火器を金型内に配置する第1工程、
前記シリンダーの第1開口部側から樹脂を射出して、前記点火器の樹脂部を成形する第2工程、
前記シリンダーの第2開口部側から
合成樹脂を射出して、発射体を成形する第3工程、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部と第2開口部側の周壁部の両方をかしめて第1かしめ部と第2かしめ部を形成して、第1かしめ部により前記点火器の樹脂部を固定して前記
発射体の組立体を得る第4工程を有している、発射体の組立体の製造方法。
【請求項8】
請求項3記載の電気回路遮断装置の製造方法であって、
ハウジング内に請求項1または2記載の
合成樹脂からなる発射体を含む発射体の組立体を配置する工程を含む、電気回路遮断装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、その幾つかの側面において、点火器の作動により瞬時に発射体を移動させることができる発射体の組立体とその製造方法、自動車や家庭電化製品などの電気回路に使用することができる電気回路遮断装置とその製造方法に関する。
背景技術
【0002】
例えば自動車や家庭電化製品などの電気回路や前記電気回路を含むシステムなどにおいては、電気回路自体やシステム全体の異常時などにおいて、電気回路を遮断することで大きな被害を未然に防止する電気回路遮断装置が使用されている。例えば電気自動車の電気回路では電気回路遮断装置の重要性が特に大きくなっている。電気回路遮断装置としては、以下に示す特許文献に記載のように、ハウジング内に点火器、発射体(ピストン)、導体などが収容されたものが知られている。
【0003】
米国特許出願公開第2005/0083164号明細書および米国特許出願公開第2005/0083165号明細書に記載の遮断装置では、ハウジングの材質として、金属、セラミックス、ポリマーが例示されており、特定のポリマーが好ましいと記載されている(米国特許出願公開第2005/0083164号明細書の2~3頁、米国特許出願公開第2005/0083165号明細書の2頁)。
【0004】
米国特許出願公開第2012/0234162号明細書にも金属やプラスチック製のハウジングを有する遮断装置が記載されている。特開平11-232979号公報の遮断装置では、ケーシング13はステンレスからなるものである(段落番号0011)。特開2014-49300号公報に記載の遮断装置では、ケース30は、電気絶縁性を有し、かつ強度の高い材料(例えば樹脂材料)によって形成されている(段落番号0034)。
【0005】
ハウジングの材料としてポリマー材料(樹脂材料)を使用したときは、例えば、米国特許出願公開第2005/0083164号明細書、米国特許出願公開第2005/0083165号明細書、および特開2014-49300号公報のそれぞれの
図1などからも理解できるとおり、必要な強度を付与する点から、ハウジング(ケーシング)を厚肉にする必要がある。特開平11-232979号公報のようにステンレスのケーシング13を使用したときは、質量の増加が大きくなるほか、絶縁ケース14を組み合わせて配置する必要があるため、構造および組み立てが複雑になる。特開2016-85947号公報に記載の電気回路遮断装置では、金属製のシリンダーを使用して樹脂製のハウジングを補強することで、以上に述べた特許文献に記載の装置にはない作用効果が得られている。
【0006】
本開示は、その幾つかの側面において、点火器の作動により瞬時に発射体を移動させることができる発射体の組立体とその製造方法、組み立てが容易な電気回路遮断装置とその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
本開示は、その一つの例示的な実施形態において、シリンダー内に発射体および点火器が収容配置された発射体の組立体であって、
前記シリンダーが、第1開口部、前記第1開口部と軸方向反対側の第2開口部、および前記第1開口部側の周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有しており、
前記点火器が、点火部と導電ピンを備えた点火器本体部と前記点火器本体部を包囲する樹脂部を有しており、
前記樹脂部が、前記シリンダーの第1開口部と複数の貫通孔を閉塞し、かつ前記シリンダーの貫通孔周辺の内壁面に当接されており、
前記発射体が合成樹脂からなり、
前記シリンダー内の第1開口部側に点火器が配置され、前記シリンダー内の点火器と第2開口部の間に発射体が配置されており、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部と前記第2開口部側の周壁部の両方が内側にかしめられて第1かしめ部と第2かしめ部が形成されており、前記第1かしめ部が前記点火器の樹脂部に当接されている、発射体の組立体を提供する。
【0008】
本開示のこの例による発射体の組立体では、シリンダー内に発射体および点火器が収容配置されている。シリンダーは外殻容器となり、第1開口部、前記第1開口部と軸方向反対側の第2開口部、および前記第1開口部側の周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有している。貫通孔の数に特に制限はなく、例えば第1開口部に軸方向に隣接する周壁部に、例えば2~6個を周方向に均等に、または異なる間隔で設けることができる。樹脂部を固定する目的を達成できるのであれば、貫通孔の形状や大きさにも特に制限はない。シリンダーの材料としては、ステンレス、アルミニウムなどの金属、炭素繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂から選ばれるものを使用することができる。
【0009】
発射体は、シリンダー内部に収容できる形状と大きさを有している。発射体は合成樹脂からなり、樹脂材料は用途に応じて選択することができる。選択に際しては、要求される電気絶縁性や軽量化の程度、強度などを考慮してよい。
【0010】
一つの例によれば、発射体は、全長にわたって同一外径の円柱形状のもののほか、部分的に異なる外径を有しているものでもよい。発射体が異なる外径を有している部分を含む場合には、シリンダー内に配置したとき、第1開口部側から第2開口部側に向かって、大径部と小径部の組み合わせ、小径部と大径部の組み合わせ、小径部、大径部および小径部の組み合わせ、さらに所望の位置に形成された中間径部を含む組み合わせを使用することができる。なお、小径部の外径<中間径部の外径<大径部の外径の関係を有している。
【0011】
発射体が異なる外径を有している部分を含む場合には、異なる外径により形成された段差部が環状平面(大径部または小径部と環状平面の間の角度が約90度)であるものまたは環状斜面であるものを使用することができる。前記段差部の環状平面または環状斜面の角度は、第2かしめ部の内側面の角度に対応させることが好ましい。
【0012】
一つの例によれば、シリンダーの内周面と発射体の外周面は、互いに接触していてもよいが、作動時に移動し易くするため、両者の間に僅かな隙間が形成されて配置されていることが好ましい。シリンダーの幅方向(半径方向)の断面形状と発射体の断面形状は、同じであることが好ましいが、部分的に異なっていてもよい。
【0013】
点火器は、例えば、公知の電気回路遮断装置や自動車のエアバッグ装置のガス発生器で使用する点火器などであることができる。一つの例によれば、点火器は、点火薬を備えた点火部と通電するための導電ピンを備えた点火器本体部と、点火器本体部を包囲した樹脂部を有していることができ、作動時には、外部電源から通電することで点火薬を燃焼させ、燃焼ガスや火炎などの燃焼生成物を発生させることができる。
【0014】
本開示の一つの例によれば、発射体の組立体では、点火器はシリンダーの第1開口部側に、すなわち第1開口部に近接してシリンダー内に収容配置されており、発射体は点火器とシリンダーの第2開口部の間に収容配置されている。点火器は、例えばシリンダー内に樹脂部となる樹脂を射出成形することで、点火器本体部が樹脂を介してシリンダーと一体化されたものとすることができる。一つの例によれば、発射体もシリンダー内に樹脂を射出成形することで成形されたものであることができる。
【0015】
一つの例によれば、点火器は、樹脂部がシリンダーの第1開口部と複数の貫通孔を閉塞し、かつシリンダーの貫通孔周辺の内壁面に当接されて配置されている。点火器は、シリンダーの第1開口部側の周壁部が内側にかしめられて樹脂部に当接されていることにより、シリンダーに対して固定されていることが好ましい。
【0016】
一つの例によれば、本開示の発射体の組立体は、シリンダー内において点火器が作動して発生した燃焼生成物による圧力を受けて、発射体がシリンダーの第2開口部から飛び出すよう動作するものであり、前記飛び出した発射体を別部材に衝突させることで、前記別部材を切断したり、押し出したり、変形させたりすることで特有の効果を得ることができる。このとき発射体は、全部がシリンダーから完全に飛び出すようにしてもよいし、一部がシリンダー内に留まるようにしてもよい。
【0017】
一つの例によれば、本開示の発射体の組立体の好ましい実施形態では、前記発射体が、前記シリンダーの第1開口部側の、すなわち第1開口部を向いた大径部と前記シリンダーの第2開口部側の、すなわち第2開口部を向いた小径部を有し、大径部の外径(d1)>小径部の外径(d2)の関係を有し、前記シリンダーの第2開口部の第2かしめ部がある部分の内径(id)が、d1>id≧d2の関係を有している。
【0018】
本実施形態では、d1>id≧d2の関係を有していることで、作動時において発射体の小径部がシリンダーから飛び出し、大径部がシリンダー内に留まるようにされている。
【0019】
本開示は、別の例示的な実施形態によれば、合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部側からハウジング軸方向反対側の第2端部側に向かって順に、点火器、合成樹脂からなる発射体、および電気回路の一部を形成させるための導体片が配置され、前記第2端部と前記導体片の間に閉鎖された絶縁空間を有しており、
前記ハウジング内にはシリンダーが配置され、前記シリンダー内に前記点火器および前記発射体が配置されており、
前記シリンダーが、前記ハウジングの第1端部側の第1開口部、前記ハウジングの第2端部側の第2開口部、および前記第1開口部側の周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有しており、
前記点火器が、点火部と導電ピンを備えた点火器本体部と前記点火器本体部を包囲する樹脂部を有しており、
前記樹脂部が、前記シリンダーの第1開口部と複数の貫通孔を閉塞し、かつ前記シリンダーの貫通孔周辺の内壁面に当接されており、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部と前記第2開口部側の周壁部の両方が内側にかしめられて第1かしめ部と第2かしめ部が形成されており、前記第1かしめ部が前記点火器の樹脂部に当接されており、
前記導体片が、両端の第1接続部と第2接続部、およびこれらの接続部の中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジング軸方向に直交して配置されており、
前記発射体が、前記導体片の切断部とハウジング軸方向に対向されている、電気回路遮断装置を提供する。
【0020】
この例において、ハウジングは合成樹脂からなり、外形は取り付け部位に応じて適宜決定されることができる。ハウジングは、点火器、発射体、シリンダー、導体片などの部品を収容したり、取り付けたりすることができる形状、構造および大きさを有している。
【0021】
点火器は、例えば、公知の電気回路遮断装置で使用されている点火器のほか、自動車のエアバッグ装置のガス発生器で使用する点火器などであることができる。一つの例によれば、点火器は、点火薬を備えた点火部と通電するための導電ピンを備えた点火器本体部と、点火器本体部を包囲した樹脂部を有していることができ、作動時には、外部電源から通電することで点火薬を燃焼させ、燃焼ガスや火炎などの燃焼生成物を発生させることができる。
【0022】
一つの例によれば、導体片は、公知の電気回路遮断装置で使用されているものと同じものを使用することができる。一つの例によれば、導体片は、両端の接続部(第1接続部と第2接続部)とこれらの接続部の中間部分の切断部を含む板片であることができ、電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成することができる。導体片の形状は、ハウジングに対して導体片を取り付ける部分の形状および構造に対応した形状になっていることができる。
【0023】
一つの例によれば、発射体は、点火器の作動により発生した燃焼生成物の圧力を受けて、ハウジング内を軸方向に第2端部側に向けて移動し、導体片を切断して、電気回路を遮断することができる。発射体の先端面は、切断部と当接されていてもよいし、間隔をおいて対向されていてもよい。発射体は樹脂からなり、一つの例では、ハウジングと同じ合成樹脂からなるものを使用することができる。樹脂は特に限定されるものではなく、必要とされる強度、成形性、電気絶縁性などに応じて適宜選択可能である。
【0024】
一つの例によれば、シリンダーはハウジングを補強するためのものであり、ハウジングの第1端部側の、すなわち第1端部により近い第1開口部、ハウジングの第2端部側の、すなわち第2端部により近い、前記第1開口部と軸方向反対側の第2開口部、および第1開口部側の、すなわち第1開口部近傍のシリンダー周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有している。貫通孔の数に特に制限はなく、例えば第1開口部に軸方向に隣接する周壁部に、例えば2~6個を周方向に均等に、または異なる間隔で設けることができる。樹脂部を固定する目的を達成できるのであれば、貫通孔の形状や大きさにも特に制限はない。
【0025】
シリンダーの材料としては、ステンレス、アルミニウムなどの金属、炭素繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂から選ばれるものを使用することができる。ハウジング内壁面とシリンダーの外周面は、互いに接触していることが好ましい。
【0026】
一つの例によれば、シリンダーの内周面と発射体の外周面は、互いに接触していてもよいが、作動時に移動し易くするため、両者の間に僅かな隙間が形成されて配置されていることが好ましい。シリンダーの幅方向(半径方向)の断面形状と発射体の断面形状は、同じであることが好ましいが、部分的に異なっていてもよい。
【0027】
点火器と発射体はシリンダー内に収容配置されており、一つの例では点火器はシリンダーの第1開口部側に、すなわち第1開口部に近接してシリンダー内に収容配置されており、発射体は点火器とシリンダーの第2開口部の間に収容配置されている。点火器は、例えばシリンダー内に樹脂部となる樹脂を射出成形することで、点火器本体部が樹脂を介してシリンダーと一体化されたものとすることができる。
【0028】
一つの例によれば、点火器は、樹脂部がシリンダーの第1開口部と複数の貫通孔を閉塞し、かつシリンダーの貫通孔周辺の内壁面に当接されて配置されている。一つの例によれば、点火器は、樹脂部がシリンダーの貫通孔を閉塞し、かつシリンダーの第1開口部側の周壁部が内側にかしめられていることでシリンダーに対して固定されている。
【0029】
一つの例によれば、本開示の電気回路遮断装置では、特開2018-6081号に記載のように、点火器が作動すると発射体が軸方向に移動して、先端面が導体片の切断部を切断したあと、突起部が閉鎖されたガス充填空間のガス出口を破壊して、絶縁空間内にガスを流出させるように構成可能である。このように切断部が切断されることで、電気的に不通となり、電気回路が遮断されると共に、絶縁空間内にガスが流出されるため、アークが発生しても速やかに消弧される。
【0030】
一つの例によれば、本開示の電気回路遮断装置の好ましい実施形態では、前記点火器の樹脂部が、点火部側から導電ピン側に向かって順に形成された、第1円板部、第2円板部、第3円板部および第4円板部を有しており、
前記第1円板部の周面が前記シリンダーの内壁面に当接されており、
前記第2円板部が、周面に凹凸を有している不均一な外径を有し、前記凹凸の凸部が前記シリンダーの第1開口部側の複数の貫通孔に入り込んでおり、
前記第1円板部の外径(D1)と前記第3円板部の外径(D3)が同一であり、前記第3円板部の周面が前記シリンダーの内壁面に当接されており、
前記第3円板部と前記第4円板部の間には、前記第3円板部の外径(D3)と前記第4円板部の外径(D4)がD3>D4の関係を有していることによる環状面が形成されており、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部が内側にかしめられて第1かしめ部が形成され、前記第1かしめ部が前記環状面に当接されている。
【0031】
点火器は、例えば射出成形された樹脂部を介してシリンダーと一体化されたものであるため、樹脂部はシリンダーの形状に対応した外形を有することができる。第3円板部と第4円板部の間には、それらの外径差に起因する環状面が形成されていることで、第1かしめ部が当接されて固定され易くなっている。
【0032】
本開示の電気回路遮断装置の別の好ましい実施形態では、前記発射体が、ハウジングの第1端部側の、すなわちハウジングの第1端部により近い大径部と、ハウジングの第2端部側の、すなわちハウジングの第2端部により近い小径部を有し、大径部の外径(d1)>小径部の外径(d2)の関係を有し、
前記シリンダーの第2開口部の内径(id)が、d1>id≧d2の関係を有している。
【0033】
シリンダーの第2開口部は、例えば内側に突き出された環状部などが形成されることで、前記d1>id≧d2の関係を満たすことができるようになっている。前記d1>id>d2の関係を満たしていると、シリンダーの第2開口部が作動時における発射体(発射体の大径部)のストッパとして機能することになる。なお別の例では、シリンダーに発射体のストッパを形成することに代えて、ハウジングに発射体のストッパを形成することもできる。
【0034】
一つの例によれば、本開示の電気回路遮断装置の別の好ましい実施形態では、前記発射体が、ハウジングの第1端部側の、すなわちハウジングの第1端部により近い大径部と、ハウジングの第2端部側の、すなわちハウジングの第2端部により近い小径部を有し、大径部の外径(d1)>小径部の外径(d2)の関係を有し、
前記点火器の点火部が前記大径部に形成された凹部内に入り込んだ状態で配置されている。
【0035】
点火器の点火部が大径部に形成された凹部内に入り込んだ状態で配置されていると、作動時において点火器から生じた燃焼生成物の圧力の全部が発射体の大径部に衝突されるため好ましい。
【0036】
また本開示は、一つの実施形態において、上記の点火器、発射体およびシリンダーからなる組立体の製造方法を提供し、この製造方法は、
第1開口部、第1開口部側の周壁部において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔、および第2開口部を有するシリンダーを用意し、内部に点火器本体部を配置した後、前記シリンダーと点火器を金型内に配置する第1工程、
前記シリンダーの第1開口部側から樹脂を射出して、前記点火器の樹脂部を成形する第2工程、
前記シリンダーの第2開口部側から樹脂を射出して、発射体を成形する第3工程、
前記シリンダーの第1開口部側の周壁部と第2開口部側の周壁部の両方をかしめて第1かしめ部と第2かしめ部を形成して、第1かしめ部により前記点火器の樹脂部を固定して前記組立体を得る第4工程を有している。
【0037】
また本開示は、一つの実施形態において、点火器、発射体およびシリンダーからなる組立体をハウジング内に含む、電気回路遮断装置の製造方法を提供する。この製造方法は一つの例によれば、上記のようにして製造された点火器、発射体およびシリンダーからなる組立体をハウジング内に配置する工程を含むことができる。
【0038】
本開示の電気回路遮断装置は、部品としてシリンダー内に発射体と点火器が収容された組立体を含んでいるが、上記で例示したように、前記組立体は、シリンダー内に点火器本体部が配置された状態で樹脂を射出成形して樹脂部を成形し、さらに発射体もシリンダー内に樹脂を射出成形することで成形されたものであることができる。
【0039】
このため、シリンダー内に点火器や発射体を圧入する作業が不要になり、点火器や発射体に対する取り付け時の負荷がなくなる。また、シリンダーと発射体の接触部分のクリアランスが無くなり、シリンダーと発射体の間に配置するOリングが不要になる。
【0040】
さらに樹脂が射出成形されて成形された発射体は、成形後においてシリンダーの内壁面に引っ付いた状態になっているため、外部からの振動を受けた場合でも、作動前の状態では軸方向に移動することはなく、導体片に衝突して切断するような問題が生じることがない。
さらに発射体と導体片の間の距離が確保されるため、作動時における運動エネルギーも利用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本開示の例による電気回路遮断装置の軸方向断面図。
【
図2】
図1の電気回路遮断装置に含まれる例示的な発射体の組立体の拡大図。
【
図3】
図1の電気回路遮断装置に含まれる例示的なシリンダーの拡大図。
【
図4】(a)~(c)は、
図2の発射体の組立体の例示的な組み立て工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<電気回路遮断装置>
図1により本開示の例示的な電気回路遮断装置1の実施形態を説明する。合成樹脂からなるハウジング(樹脂ハウジング)10は、第1端部11側が開口され、第2端部12側が閉塞された筒状空間13を有している。
【0043】
ハウジング10の筒状空間13内には、第1端部11側から第2端部12側に向かって順に、点火器20、合成樹脂からなる発射体40、導体片50、および絶縁空間60が配置されている。
【0044】
図1に示すとおり、電気回路遮断装置1は、点火器20と発射体40がシリンダー30内に収容配置された組立体2(
図2)を含んでいる。
図3に示すように、シリンダー30は、ハウジングの第1端部11側の、すなわちハウジングの第1端部11により近い第1開口部31、ハウジングの第2端部12側の、すなわちハウジングの第2端部
12により近い第2開口部32、第1開口部31側の、すなわち第1開口部31に近い周壁部33の部分において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔34を有している。一つの例では、貫通孔34は2~6個が好ましい。また貫通孔34の周方向の間隔は相互に同じであっても、異なっていてもよい。貫通孔34は例えば円形、楕円形、矩形、長方形などであることができる。
【0045】
図3に見られるように、シリンダー30の第1開口部31側の周壁部33の部分は、内側にかしめられた第1かしめ部35を有しており、第2開口部32側の周壁部33の部分は、内側にかしめられた第2かしめ部36を有している。点火器20はシリンダー30内の第1開口部31側に、すなわち第1開口部31に近接して収容配置され、発射体40はシリンダー30内の第2開口部32側に、すなわち第1開口部31よりも第2開口部32に近接して収容配置されている。
【0046】
第1開口部31は、点火器20が取り付けられることで閉塞されており、点火器20と第1端部11の開口部の間には、使用時において電源とリードワイヤで接続されたコネクタが嵌め込まれる嵌め込み部15が形成されている。点火器20は、点火部21と導電ピン22を有する点火器本体部の一部が樹脂で包囲された樹脂部23を有しており、樹脂部23から点火部21が突き出されている。
【0047】
発射体40は、第1開口部31側の、すなわち第1開口部31により近い大径部41と第2開口部32側の、すなわち第2開口部32により近い小径部42を有し、大径部41の外径(d1)>小径部42の外径(d2)の関係を有しており、大径部41と小径部42の境界部には、それらの外径差に起因して環状傾斜面部45が形成されている。環状傾斜面部45の角度は、第2かしめ部36の内側面の角度に対応していることが好ましい。なお、環状傾斜面部45は、半径方向に画定された環状平面部45(大径部41または小径部42と環状平面部45の間の角度が約90度)であってもよく、このとき、第2かしめ部36の内側面の角度も約90度にすることが好ましい。発射体40の大径部41は、第1開口部31に向いた底面部に凹部44を有しており、凹部44に点火器20の点火部21が嵌め込まれている。
【0048】
発射体40の大径部41の外径(d1)、小径部42の外径(d2)、シリンダー30の第2開口部32の内径(id)は、d1>id≧d2の関係を有している。そのため、作動時に小径部42は第2開口部32を通過できるが、大径部41は第2開口部32を通過できない。
【0049】
点火器20の樹脂部23は、点火部21側から導電ピン22側に向かって順に形成された、第1円板部24、第2円板部25、第3円板部26および第4円板部27を有している。第1円板部24の周面はシリンダー30の内壁面に当接されている。
【0050】
第2円板部25は、周面に凹凸を有している不均一な外径を有する。一つの例では、第1円板部24と同一径の周面から、周方向に断続する凸部25aが突出しており、凸部相互の間が凹部を形成する。前記凹凸の凸部25aのそれぞれは、シリンダー30の第1開口部31側の複数の貫通孔34に入り込んで閉塞している。
【0051】
第3円板部26の周面は、シリンダー30の内壁面に当接されている。第1円板部24の外径(D1)と第3円板部26の外径(D3)は同一である。第4円板部27は第3円板部26よりも縮径されており、シリンダー30の第1開口部31に軸方向に入り込んで閉塞しており、一部が第1開口部31から軸方向外側に突き出されている。
【0052】
第3円板部26と第4円板部27の間には、第3円板部26の外径(D3)と第4円板部27の外径(D4)がD3>D4の関係を有していることによる環状面28が形成されている。第1かしめ部35は、環状面28に当接されている。点火器20は、樹脂部の第2円板部25の凸部25aがシリンダー30の第1開口部31側の複数の貫通孔34に入り込み、また第1かしめ部35が樹脂部23の環状面28に当接されていることでシリンダー30に対して固定されている。
【0053】
導体片50は、電気回路遮断装置1を電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成させるためのものである。導体片50は、その両端の第1接続部51、第2接続部52とこれらの接続部の中間部分の切断部53からなる板片である。
【0054】
第1接続部51と第2接続部52は、電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)と接続するためのものであり、切断部53は、作動時において切断されて電気回路を遮断できるようにするためのものである。
図1に示す例では、切断部53には第1端部11に向いた側の面に2箇所の脆弱部が形成されているが、反対側の面には形成されていない。しかし脆弱部が反対側に、または両側に形成された構成も可能である。導体片50と発射体40は、発射体40の先端面43が切断部53と軸方向に対向されている。
【0055】
絶縁空間60は、作動時に導体
片50の切断部53の切断片を保持するための空間であり、
図1では切断部53は、樹脂製のストッパ部材62により絶縁空間60に面した部分を除いて囲まれている。なお、ストッパ部材62には他の材料を用いてもよい。またストッパ部材62の絶縁空間60を形成する開口部は発射体40の小径部42に対応する大きさおよび形状とすることができる。
【0056】
次に、
図1に示す電気回路遮断装置1を電気自動車の電気回路の一部に配置したときの動作を説明する。
図1に示す電気回路遮断装置1は、異常電流を検知するセンサーなどと組み合わせて、例えば電気回路に異常電流が流れたときに自動的に作動を開始するようにすることができるほか、人為的に作動するようにすることもできる。
【0057】
電気回路遮断装置1を電気回路に配置するときは、導体片50の第1接続部51と第2接続部52を電気回路を構成するリードワイヤと接続する。電気回路に異常が生じたときには、点火器20が作動して、点火部21から燃焼ガスを含む燃焼生成物が発生する。点火部21から発生した燃焼生成物は、発射体40の大径部41の凹部44に衝突する。
【0058】
燃焼生成物による圧力を受けた発射体40は、軸方向に移動して導体片50の切断部53を切断する。このとき、発射体40の小径部42はシリンダー30の第2開口部32から突き出されて切断部53を切断するが、発射体40の大径部の外径(d1)、小径部の外径(d2)、シリンダー30の第2開口部32の内径(id)は、d1>id≧d2の関係を有しているため、大径部41と小径部42の間の環状傾斜面部45が第2開口部32の第2かしめ部36に衝突して、発射体40の移動は停止される。このとき、環状傾斜面部45が第2開口部32の第2かしめ部36に衝突してシリンダーの第2開口部32が閉塞されるため、シリンダー30と発射体40の大径部41の間から僅かな燃焼生成物が漏れた場合でも、第2開口部32から絶縁空間60に燃焼生成物が漏れることはない。
【0059】
その後、切断部53の切断片が絶縁空間60のストッパ部材62内に移動すると、ストッパ部材62の絶縁空間60に面した開口部は発射体40の小径部42により蓋がされたような状態になっているため、切断部53の切断片が導体片50側に戻ることはない。この動作により導体片50の両端にある第1接続部51と第2接続部52は電気的に不通状態となるため、電気回路遮断装置1を配置した電気回路は遮断される。
【0060】
<電気回路遮断装置で使用されている発射体の組立体の製造方法>
図4(a)~(c)により
図2に示す発射体の組立体2の製造方法を説明するが、
図2に示す発射体の組立体の製造方法は以下の製造方法に限定されるものではない。なお、以下の各工程は、2以上の工程を一つの工程にまとめたり、一つの工程を2以上の工程に分けたりすることができる。
【0061】
第1工程では、
図4(a)に示す第1開口部31、第1開口部31側の、すなわち第1開口部31に近接する部分の周壁部33の部分において周方向に間隔をおいて形成された複数の貫通孔34、および第2開口部32を有するシリンダー30を用意する。
【0062】
次に、
図4(a)に示すように、シリンダー30に点火器本体部(点火部21と導電ピン22を有し、樹脂部23がないもの)を配置する。このとき、点火部21が貫通孔34と半径方向に対向せず、貫通孔34よりも軸方向に第2開口部32により近く位置し、導電ピン22が点火部21近傍の部分で貫通孔34と半径方向に対向し、導電ピン22の長さの半分程度がシリンダー30の第1開口部31の外側に位置するように配置する。次に、点火器本体部が配置されたシリンダー30を金型内に置く。金型としては、
図4(b)に示す樹脂部23が成形できる構成の任意の金型を使用することができる。
【0063】
第2工程では、
図4(b)に示すように、シリンダー30の第1開口部31側から樹脂を射出して、点火器20の樹脂部23を成形する。このとき、シリンダー30の貫通孔34にも樹脂が入り込むため、樹脂部23はシリンダー30に対して固定され、点火器20も樹脂部23を介してシリンダー30に対して固定される。点火部21は樹脂で覆われず、露出した状態が維持される。
【0064】
第3工程では、
図4(c)に示すように、シリンダー30の第2開口部32側から樹脂を射出して、発射体40を成形する。このとき金型としては、
図4(c)に示す発射体40が成形できる構成の任意の金型を使用することができる。樹脂を射出成形して発射体40を成形するとき、樹脂は射出時の溶融状態から冷却固化されるため、発射体40の大径部41の外側面41aは、シリンダー30の内壁面30aと点火部21に対して付着されて、作動前には移動できない状態になっている。
【0065】
第4工程では、シリンダー30の第1開口部31側の周壁部33の部分と第2開口部32側の周壁部33の部分の両方をかしめて、第1かしめ部35と第2かしめ部36を形成して、第1かしめ部35により点火器の樹脂部23を固定して組立体2(
図2)を得る。発射体40の大径部の外径(d1)、小径部の外径(d2)、シリンダー30の第2開口部32の内径(id)は、d1>id≧d2の関係を有しているため、作動時に小径部42は第2開口部32を通過できるが、大径部41は第2開口部32を通過できない。点火器20の点火
部21は、発射体40の大径部41に形成された凹部44に嵌め込まれた状態になる。
【0066】
以上の例に示すように、点火器20は射出成形により成形された樹脂部23によりシリンダー30内に固定され、発射体40は射出成形体によりシリンダー30内に成形される。このため、シリンダー30内に点火器20や発射体40を圧入する作業が不要になり、点火器20や発射体40を圧入した場合のような取り付け時の負荷がなくなる。
【0067】
また、シリンダー30と、点火器20および発射体40の接触部分のクリアランスが無くなるため、シリンダー30と、点火器20(樹脂部23)および発射体40の間に配置するOリングが不要になる。さらにシリンダー30と点火器20の間のクリアランス、およびシリンダー30と発射体40の間のクリアランスが無くなるため、点火器20が作動したときに生じる火炎を含む燃焼生成物がシリンダー30と点火器20の間、およびシリンダー30と発射体40の間から漏れることがなくなり、全ての燃焼生成物が発射体40に衝突して、発射体40の移動に使用される。
【0068】
図2の発射体の組立体2において、予め成形体として形成された発射体40を配置した場合では、外部からの振動により発射体40がシリンダー30から飛び出したり引っ込んだりして、導体片50への衝突が繰り返されるおそれがある。しかし、
図2の発射体の組立体2では、発射体40がシリンダーの内壁面30aと点火部21に軽く付着した状態になっているため、外部からの振動により発射体40がシリンダー30から飛び出したり引っ込んだりすることがなくなり、作動時における点火器20からの圧力を受けると、発射体40は瞬時に移動して導体片50を切断する。さらに発射体40と導体片50の間の距離が確保されるため、導体片50を破壊するとき、作動時における運動エネルギーを十分に利用できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示の発射体の組立体を含む電気回路遮断装置は、各種電気回路に配置することができ、特に自動車のバッテリー(例えば、リチウムイオンバッテリー)を含む電気回路用、電気自動車の電気回路用および家庭電化製品の電気回路用、発電所、太陽光発電装置、各種工場における分電盤、産業用リチウムイオン電池、産業用鉛蓄電池などの産業用電池を使用した定置型電池として適している。
【符号の説明】
【0070】
1 電気回路遮断装置
10 ハウジング
20 点火器
23 樹脂部
30 シリンダー
31 第1開口部
32 第2開口部
34 貫通孔
40 発射体
50 導体片
60 絶縁空間