(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】改善された非対称なフロー誘導を備えた鼻カニューレ
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
A61M16/06 C
(21)【出願番号】P 2021513950
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2019074124
(87)【国際公開番号】W WO2020053220
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102018122516.4
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515233591
【氏名又は名称】ハミルトン メディカル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・シュヴァイガー
(72)【発明者】
【氏名】サンドロ・ヴァルカー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0158127(US,A1)
【文献】特表2016-509953(JP,A)
【文献】特開2009-233375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087323(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0067704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に治療用ガスを経鼻供給するための鼻カニューレ(10;110;210)であって、
前記鼻カニューレは、分配管(20;120;220)を備えた分配管部材(12;112;212)を含んでおり、
前記分配管は、仮想の、前記分配管の中央を貫通する分配軌道(V)に沿って延在しており、前記分配軌道(V)は長手方向を画定しており、前記分配管(20;120;220)は、2つの分岐開口部(26b、28b;126b、128b;226b、228b)を有しており、前記分岐開口部(26b、28b;126b、128b;226b、228b)それぞれを始点として、患者に治療用ガスを供給するための供給管(26、28;126、128;226、228)がそれぞれ、前記分配管(20;120;220)から分岐しており、前記分配管(20;120;220)は、前記分岐開口部(26b、28b;126b、128b;226b、228b)に加えて、前記分岐開口部(26b、28b;126b、128b;226b、228b)と間隔を置いて配置された2つの連結開口部(22、24;122、124;222、224)を有しており、
前記鼻カニューレ(10;110;210)はストッパ(14;114;214)を含んでおり、
前記ストッパによって、両方の前記連結開口部(22、24;122、124;222、224)の内の一方が、前記ストッパ(14;114;214)を通じた封止開口部(22;122;222)として、ガスの貫流に関して封止可能であり、両方の前記連結開口部(22、24;122、124;222、224)の内の他方は、供給開口部(24;124;224)として、ガス供給導管(16、18;116、118;216、218)を前記分配管(20;120;220)に接続するように構成されている、鼻カニューレ(10;110;210)において、
前記ストッパ(14;114;214)が、露出したフロー誘導面(44;144;244)を備えたフロー誘導構造(42;142;242)を有しており、前記フロー誘導面(44;144;244)は、前記ストッパ(14;114;214)が所定の通り前記封止開口部(22;122;222)を封止するように前記鼻カニューレ(10;110;210)に接して配置されている基準状態において、前記分配管(20;120;220)内の、少なくとも1つの前記分岐開口部(26b、28b;126b、128b;226b、228b)の長手方向延在領域に配置されていると共に、前記フロー誘導面が前記分配管(20;120;220)内で前記供給開口部(24;124;224)から前記分配軌道(V)に沿って流れてくる治療用ガスを、前記分岐開口部(26b、28b;126b、128b;226b、228b)の内の少なくとも一方に向けて方向転換させるように、前記分配軌道(V)に対して傾斜していることを特徴とする鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項2】
前記フロー誘導面(44;144;244)が、凹形の湾曲を有していることを特徴とする、請求項1に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項3】
前記フロー誘導面(44;144;244)が、前記分配軌道に直交する湾曲軸(K)の周りで、少なくとも部分的に凹形又は/及び凸形に湾曲していることを特徴とする、請求項2に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項4】
前記フロー誘導面(144)が、前記分配軌道(V)に沿って延在する湾曲軸の周りでも、凹形に湾曲していることを特徴とする、請求項3に記載の鼻カニューレ(110)。
【請求項5】
前記鼻カニューレ(10;110;210)が、コネクタ(16;116;216)を有しており、前記コネクタは、前記ガス供給導管(16、18;116、118;216、218)の接続のために、前記供給開口部(24;124;224)に挿入可能であり、前記コネクタ(16;116;216)を通るガスフローを誘導する前記コネクタ(16;116;216)の内側面(52;152;252)は、所定の通り、動作可能な状態で前記鼻カニューレ(10;110;210)に接して配置された場合に、前記フロー誘導面(44;144;244)と共に、フローを誘導する連続的な面(54;154;254)を形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項6】
前記ストッパ(14;114;214)が形状接続構造を有し、前記コネクタが形状接続相手側構造を有し、前記形状接続構造と前記形状接続相手側構造とは、動作可能な状態において、互いに形状接続係合していることを特徴とする、請求項5に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項7】
前記形状接続構造と前記形状接続相手側構造とは、動作可能な状態においてのみ、互いに形状接続係合していることを特徴とする、請求項6に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項8】
前記コネクタ(16;116;216)が配置構造(62;162;262)を有していること、及び、前記分配管部材(12;112;212)が、前記供給開口部(24;124;224)の領域において、配置相手側構造(60;160;260)を有しており、前記配置構造(62;162;262)と前記配置相手側構造(60;160;260)とは、前記鼻カニューレ(10;110;210)の動作可能な状態において、互いに形状接続係合していることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項9】
前記配置構造(62;162;262)と前記配置相手側構造(60;160;260)とは、前記鼻カニューレ(10;110;210)の動作可能な状態においてのみ、互いに形状接続係合していることを特徴とする、請求項8に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項10】
前記ストッパ(14;114;214)が、方向付け構造(58;158;258)を有していること、及び、前記分配管部材(12;112;212)は、前記封止開口部(22;122;222)の領域において、方向付け相手側構造(56;156;256)を有しており、前記方向付け構造(58;158;258)と前記方向付け相手側構造(56;156;256)とは、前記鼻カニューレ(10;110;210)の動作可能な状態において、互いに形状接続係合していることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項11】
前記方向付け構造(58;158;258)と前記方向付け相手側構造(56;156;256)とは、前記鼻カニューレ(10;110;210)の動作可能な状態においてのみ、互いに形状接続係合していることを特徴とする、請求項10に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項12】
両方の前記連結開口部(22、24;122、124;222、224)が、両方の前記連結開口部(22、24;122、124;222、224)のいずれもが前記封止開口部(22;122;222)でも前記供給開口部(24;124;224)でもあり得るという点において、同じように構成されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項13】
前記ストッパ(214)が、前記基準状態において、前記封止開口部(222)に近い方の前記分岐開口部(226b)を少なくとも部分的に封止していることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(210)。
【請求項14】
前記フロー誘導構造(142)が、
第1のフロー誘導面(44;144;244)として前記フロー誘導面(44;144;244)を備えた第1のフロー誘導構造(142)であり、前記第1のフロー誘導構造(142)は、前記供給開口部(124)から前記分配軌道(V)に沿って流れてくる治療用ガスを前記分岐開口部(126b、128b)の内の一方の分岐開口部(126b)へ方向転換
し、前記ストッパ(114)は、第2のフロー誘導面(166)を備えた第2のフロー誘導構造(164)を有しており、前記第2のフロー誘導構造は、前記分配
軌道(V)に沿って、前記第1のフロー誘導構造(142)から間隔を置いて配置されており、前記基準状態において、前記供給開口部(124)から前記分配軌道(V)に沿って流れてくる治療用ガスを、それぞれ他方の前記分岐開口部(128b)へ方向転換することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(110)。
【請求項15】
前記第2のフロー誘導構造(164)が、前記分配管(120)の部分横断面にわたってのみ延在しており、前記第2のフロー誘導構造の延在領域では、前記分配軌道(V)に沿って流れてくる治療用ガスを、それぞれ他方の前記分岐開口部(128b)に方向転換させ、前記第2のフロー誘導構造の延在領域の外側では、前記分配管(120)と共に、前記第2のフロー誘導構造(164)の側を通り、前記第1のフロー誘導面(144)に向かう治療用ガスフローのための貫流開口部(168)を形成しており、前記貫流開口部を通って、前記供給開口部(124)から流れてくる治療用ガスの一部が、前記第1のフロー誘導構造(142)に向かって流れることができることを特徴とする、請求項14に記載の鼻カニューレ(110)。
【請求項16】
前記第2のフロー誘導構造(164)が、前記分配軌道(V)の周りの所定の、複数の互いに間隔を置いて位置している部分角度領域から任意で形成された角度領域を越えて、前記分配管(120)の内壁に接していることを特徴とする、請求項14又は15に記載の鼻カニューレ(110)。
【請求項17】
治療用ガスが貫流可能である前記貫流開口部(168)の横断面面積が、前記貫流開口部(168)の位置における前記分配管(120)の横断面面積の半分よりも大きいか、又は、小さいことを特徴とする、請求項15、又は請求項15を引用する場合の請求項16に記載の鼻カニューレ(110)。
【請求項18】
前記分配管部材(12;112;212)が、前記ストッパ(14;114;214)又は/及び前記コネクタ(16;116;216)の材料よりも低い弾性係数を有する材料から形成されており、これによって、前記分配管部材(12;112;212)は、前記ストッパ(14;114;214)又は/及び前記コネクタ(16;116;216)から成る挿入部材の前記分配管部材(12;112;212)への挿入の際に、前記挿入部材それぞれによって変形可能であることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項19】
両方の前記連結開口部(22、24;122、124;222、224)が、前記分配管(20;120;220)のそれぞれ反対の長手方向端部に位置していることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項20】
前記分配軌道(V)は、両方の前記連結開口部(22、24;122、124;222、224)の間を直線状に延在していることを特徴とする、請求項19に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項21】
両方の前記分岐開口部(26b、28b;126b、128b;226b、228b)は、前記連結開口部(22、24;122、124;222、224)の間で中央に位置していることを特徴とする、請求項19又は20に記載の鼻カニューレ(10;110;210)。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の鼻カニューレ(10;110;210)と、少なくとも2つの前記ストッパ(14;114;214)と、を含む鼻カニューレ治療用キットであって、前記ストッパが、第1のフロー誘導構造(42;142;242)若しくは/及び第2のフロー誘導構造(164)の長さにおいて、又は/並びに、第1のフロー誘導面(44;144;244)若しくは/及び第2のフロー誘導面(166)の形状において、又は/並びに、前記第2のフロー誘導構造(164)と前記分配管(120)とから形成された、前記第2のフロー誘導構造(164)の側を通る治療用ガスフローのための貫流開口部(168)の大きさ若しくは/及び形状において異なっている鼻カニューレ治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、患者に治療用ガスを経鼻供給するための鼻カニューレに関するものであり、当該鼻カニューレは、分配管を備えた分配管部材を含んでおり、分配管は、仮想の、分配管の中央を貫通する分配軌道に沿って延在しており、分配軌道は長手方向を画定しており、分配管は、2つの分岐開口部を有しており、各分岐開口部を始点として、患者に治療用ガスを供給するための供給管がそれぞれ、分配管から分岐しており、分配管は、分岐開口部に加えて、当該分岐開口部と間隔を置いて配置された2つの連結開口部を有しており、鼻カニューレはストッパを含んでおり、当該ストッパによって、両方の連結開口部の内の一方が、ストッパを通じた封止開口部として、ガスの貫流に関して封止可能であり、両方の連結開口部の内の他方は、供給開口部として、ガス供給導管を分配管に接続するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
このような鼻カニューレは、特許文献1から知られている。この既知の鼻カニューレの大きな利点は、両方の連結開口部の内のいずれにストッパを挿入するか、及び、両方の連結開口部の内のいずれにガス供給導管を接続するかに応じて、両方の連結開口部のいずれもが、供給開口部及び封止開口部であり得ることにある。従って、既知の鼻カニューレは、身体の両側のいずれが、それぞれの患者の状況に依存した治療用ガスの供給に関して有利であるかに応じて、患者の身体の右側又は左側から、治療用ガスを患者に供給することを可能にする。ストッパは、ガスの供給には不要である連結開口部を封止するために用いられ、これによって、治療用ガスの分配管からの望ましくない流出が回避される。そうでなければ、治療用ガスは、分岐開口部から流出せず、従って、患者に到達しないであろう。
【0003】
ストッパとガス供給導管とを連結するように、既知の分配管部材に連結開口部を、十分確実に構成することを可能にするために、分配管部材は、分岐開口部の両側において分配軌道に沿って、比較的長い区間にわたって延在している。既知の鼻カニューレの欠点は、ストッパによって封止開口部として用いられる連結開口部と分岐開口部との間の領域に、比較的大きい死腔が形成されており、当該死腔内では、患者に供給する際の治療用ガスが、制御されずに流れ、旋回し、これによって、分岐開口部において不利なことに予測不可能である、ガス流出状況が生じることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本出願の課題は、冒頭に挙げた鼻カニューレを改善し、それによって、封止開口部として用いられる連結開口部内でのストッパの使用にも関わらず、分配管内のフロー状況が従来よりも明確に形成され、従って、一方では分配管内でのフロー損失が減少し、他方では分岐開口部を通過し、患者に向かう治療用ガスの明確な流出が行われるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、本課題は、冒頭に挙げた種類の鼻カニューレによって解決される。当該鼻カニューレでは、ストッパが、露出したフロー誘導面を備えたフロー誘導構造を有しており、フロー誘導面は、ストッパが所定の通り封止開口部を封止するように鼻カニューレに接して配置されている基準状態において、分配管内の、少なくとも1つの分岐開口部の長手方向延在領域に配置されていると共に、フロー誘導面が分配管内で供給開口部から分配軌道に沿って流れてくる治療用ガスを、分岐開口部の内の少なくとも一方に向けて方向転換させるように、分配軌道に対して傾斜している。
【0007】
本出願において、個々の事例に関して異なる記載がなされない限り、本出願の鼻カニューレは、上述の基準状態にあるものとして記載される。
【0008】
基準状態において供給開口部から流れてくる治療用ガスに対向し、治療用ガスによって湿らされ得るフロー誘導構造の露出したフロー誘導面は、供給開口部から流れてくる治療用ガスを、可能な限り無損失に、分岐開口部に向かって方向転換させることが可能であり、分岐開口部の長手方向延在領域には、フロー誘導面が配置されている。当該方向転換機能を実現するために、フロー誘導面は、分配軌道に対して傾斜しており、すなわち、分配軌道は、フロー誘導面と角度を形成している。最も単純な場合では、フロー誘導面は、平らな、又は、少なくとも部分的に平らな面であり得る。しかしながら、治療用ガスフローの特に無損失な方向転換に関しては、フロー誘導面は、少なくとも部分的に湾曲した面であることが好ましい。フロー誘導面は、その長手方向延在部分全体に沿って、分配軌道に沿って湾曲して構成されてもよい。
【0009】
一般的には、まず分配軌道に沿って流れている治療用ガスフローを、分岐開口部に向かって約90°、つまり略直角に方向転換させることが望ましい。可能な限り無損失の方向転換のためには、フロー誘導面が凹形の湾曲を有していると有利である。分配管部材内での治療用ガスフローの可能な限り無損失の方向転換のためには、可能な限り連続的に湾曲したフロー誘導面が有利であり、従って、フロー誘導面は、好ましくはその延在部分の長さ全体にわたって、凹形の湾曲を有し得る。分配軌道から分岐開口部への90°の方向転換を実現するために、フロー誘導面は、好ましくは、分配軌道に直交する湾曲軸の周りで、少なくとも部分的に、凹形に湾曲している。
【0010】
フロー誘導面は、両方の分岐開口部において、可能な限り均一な治療用ガス質量流を供給するために、異なって湾曲した部分を有してもよい。分岐開口部は、一般的に、フロー誘導面に対して異なる距離を有するので、両方の分岐開口部において同じ値の質量流を得ることは難しいが、好ましい発展形態によると、例えば、フロー誘導面が分配軌道に沿って2つの凹形に湾曲した部分を有し、当該部分が当該部分の間に凸形に湾曲した部分を有することによって得られる。好ましくは、フロー誘導面は当該部分のみを有し、当該部分から構成されている。このように数回異なるように湾曲したフロー誘導面は、好ましくは、それぞれの部分において、分配軌道に直交する湾曲軸の周りで湾曲している。分配管の幅方向において、すなわち分配軌道に直交しては、フロー誘導面は好ましくは湾曲していない。
【0011】
フロー誘導面が、上述の分配軌道に直交する湾曲軸の周りで湾曲している場合も、フロー誘導面が、例えば角度を有して角を形成しながら分配管の壁面に合流するのであれば、分配管の壁近くの領域には、渦が形成され得る。このような望ましくない渦の形成を回避するために、本発明の好ましいさらなる発展形態によると、分配軌道に直交する湾曲軸の周りで凹形に湾曲したフロー誘導面は、分配軌道に沿って延在する湾曲軸の周りでも湾曲していることが規定されている。好ましくは、当該フロー誘導面は、凹形に湾曲した平面領域のみを有しているが、凸形に湾曲した平面領域は有していない。
【0012】
基本的に、治療用ガスは、自由流において分岐開口部を通過した直後に、分配管部材から鼻カニューレを装着した患者に向かって、分岐開口部から流出し得る。しかしながら、一般的に、分配管は、ある程度の距離を置いて、鼻孔によって担持される。治療用ガスを効果的に供給するために、鼻カニューレは、供給管を有しており、当該供給管は、分岐開口部を始点として分配管部材から突出している。供給管は、治療の際、患者の鼻孔に達するか、又は、鼻孔を通って、さらに鼻腔内へ延在することさえある。各分岐開口部を、それぞれ1つの供給管が始点としている。これらの供給管は、同一に構成されているか、又は、分岐開口部の間の分配軌道を直交して切断する対称軸に対して鏡面対称に構成されてもよい。
【0013】
フロー誘導面は、その時々の封止開口部に近い方の分岐開口部の、少なくとも長手方向延在領域に、つまり分配軌道に沿った延在領域に延在している。これによって、フロー誘導面が治療用ガスフローを、少なくとも封止開口部に近い方の分岐開口部の方へ、効果的かつ意図的に方向転換させ得ることが保証され得る。しかしながら、フロー誘導面が、その時々の封止開口部から離れた方の分岐開口部の長手方向延在領域内にも延在するか、又は、当該長手方向延在領域を完全に越えて延在することを排除すべきではない。この場合、供給開口部から分配軌道に沿って流れてくる治療用ガスフローの、分配管の長い領域を通じた、円滑で、わずかな損失での方向転換が得られる。
【0014】
フロー誘導面の、それぞれ分配軌道に直交する湾曲軸の周りでの少なくとも部分的に凹形又は/及び凸形の湾曲は、その延在部分に沿って、値を変化させ得る。好ましくは、フロー誘導面の凹形に湾曲した部分の、分配軌道に直交する湾曲軸の周りでの凹形の湾曲は、割り当てられた分岐開口部へ近づくにつれて増大する。すなわち、上述の湾曲軸を始点とする曲率半径は、フロー誘導面が、フロー誘導面に割り当てられた分岐開口部に近づくにつれて小さくなっていく。
【0015】
分配管部材の分配管に治療用ガスを導入するために、鼻カニューレは、好ましくはコネクタを有しており、当該コネクタは、ガス供給導管の接続のために、供給開口部に挿入され得る。分配管内において、又は、治療用ガスフローを分配管部材内で誘導する壁面に沿って渦を形成する段を回避するために、本発明の好ましいさらなる発展形態によると、コネクタを通るガスフローを誘導するコネクタの内側面は、所定の通り、動作可能な状態で鼻カニューレに接して配置された場合に、ストッパのフロー誘導面と共に、フローを誘導する連続的な面を形成することができる。コネクタの内側面とフロー誘導面との結合箇所では、不可避の接合部が生じるが、内側面とフロー誘導面とが、共通の、接合部を越えて同一平面上の、フローを誘導する面を形成する場合、当該接合部において渦は発生しない。共通の、フローを誘導する連続的な面は、好ましくは、上述の接合部において段差及び折れ目を有さない。
【0016】
ストッパ及びコネクタの互いに対する正しい配置を容易にするために、本発明のさらなる発展形態によると、ストッパが形状接続構造を有し、コネクタが形状接続相手側構造を有し、形状接続構造と形状接続相手側構造とは、動作可能な状態において、互いに形状接続係合していることが規定され得る。ストッパ及びコネクタは、その分配軌道に関して動作可能な状態において径方向外側の外側面に、先細の円錐形又は円筒形の外壁を有しているが、その径方向内側の内側面には、フローを径方向外側に向かって限定する、円形の横断面は有さない内壁を有し得る。上述のフローを誘導する連続的な面が、コネクタの内側面及びフロー誘導面によって共に形成されるべき場合、特に、ストッパ及びコネクタの互いに対する正しい相対的な配置が重要である。この正しい相対的な配置は、上述の形状接続構造と形状接続相手側構造とによって、確実に得られる。コネクタとストッパとを互いに対して相対的に誤って配置することが、動作可能状態において排除されているということを確実化するために、形状接続構造と形状接続相手側構造とは、好ましくは動作可能な状態においてのみ、互いに形状接続係合している。
【0017】
形状接続構造と形状接続相手側構造とは、好ましくは、鍵と鍵穴モデルに従って構成されている。このために、形状接続構造及び形状接続相手側構造の内の一方の構造は、突起を有し、それぞれ他方の構造は、凹所を有していてよく、当該凹所には、コネクタとストッパとが互いに対して相対的に正しく方向付けられている場合、特にその分配軌道を中心とする角度方向に関して、互いに対して相対的に正しく方向付けられている場合にのみ、突起が挿入され得る。
【0018】
形状接続構造及び形状接続相手側構造によって、コネクタ及びストッパの互いに対する相対的な回転防止が得られる。形状接続係合が形成された場合、ストッパとコネクタとの互いに対する相対的な回転は防止される。
【0019】
形状接続係合は、一般的に、分配管部材内に、具体的には分配管部材内の看護師又は治療中の医師からは見えない場所に形成されるので、片方の構造又は両方の構造は、形状接続係合の形成のための挿入補助を有し得る。形状接続構造及び形状接続相手側構造の内、突起を有する方の構造は、自由に張り出した端部に向かって先細になってもよい。付加的又は代替的に、突起を受容する凹所が、それぞれ形状接続構造及び形状接続相手側構造の内の他方の構造として、挿入長手方向端部から突起の挿入方向において先細に構成されてもよい。
【0020】
ストッパ及びコネクタの相対的な配置のみが、本明細書で議論される鼻カニューレの正しい機能にとって有利なのではなく、コネクタの分配管部材に対する正しい位置も有利である。分配管部材に対するコネクタの正しい位置は、コネクタが配置構造を有していること、及び、分配管部材が、供給開口部の領域において、配置相手側構造を有しており、配置構造と配置相手側構造とは、動作可能な状態において、互いに形状接続係合していることによって得られる。当該形状接続係合は、コネクタ及び分配管部材の、特に分配軌道周囲に形成された正確な相対配置からの、互いに対する変位を防止する。
【0021】
やはり、コネクタ及び分配管部材の誤った配置を排除するために、上述の配置構造と配置相手側構造との間の形状接続係合が、鼻カニューレの動作可能な状態においてのみ存在する、又は、動作可能な状態をもたらす鼻カニューレの取り付けに際してのみ形成可能であることが好ましい。配置構造及び配置相手側構造のあり得る構成に関しては、形状接続構造及び形状接続相手側構造に関する上述の記載が、形状接続構造に関する記載が配置構造に関して適用されること、及び、形状接続相手側構造に関する記載が配置相手側構造に関して適用されることを条件として、対応して適用される。従って、配置構造及び配置相手側構造の内の一方の構造が突起を有し、それぞれ他方の構造が凹所を有し得る。
【0022】
分配管部材は、コネクタを一般的には径方向外側において包囲し、又は/及び、比較的薄壁に構成されているので、好ましくは、分配管部材は突起を、コネクタは凹所を有している。形状接続構造及び形状接続相手側構造の内の一方の構造は、好ましくは突起を支持する構造から分配軌道に対して平行に張り出している突起であるが、他方、配置構造及び配置相手側構造の内の一方の構造の突起は、好ましくは径方向突起であり、当該径方向突起は、分配軌道に向かって突出しているか、又は、分配軌道から離れて、当該径方向突起を支持する部材から突出していることも同じく可能である。これに対応して、それぞれ他方の構造の凹所も、径方向凹所である。突起は、分配軌道に沿った挿入補助である径方向突起として、減少していく径方向高さ、又は/及び、分配軌道の周りの周方向において測定されるべき、減少していく突起幅を有するように構成されてもよい。
【0023】
ストッパも分配管部材に対して正しく配置するために、ストッパは、方向付け構造を有し得る。同様に、分配管部材は、封止開口部の領域において、方向付け相手側構造を有することが可能であり、方向付け構造と方向付け相手側構造とは、動作可能な状態において、上述の理由から好ましくは動作可能な状態においてのみ、互いに形状接続係合している。
【0024】
ストッパもコネクタも、通常は、軸方向に、つまり分配軌道に沿って分配管部材に挿入されるか、又は、コネクタの場合は、分配管部材の上に留められるので、分配管部材に対するストッパ及びコネクタの共通の配置運動ゆえに、配置構造及び配置相手側構造に関する記載は、同様に方向付け構造及び方向付け相手側構造に関して、配置構造に関する記載が、方向付け構造に当てはまり、配置相手側構造に関する記載が方向付け相手側構造に当てはまるという条件で適用される。これは、形状接続構造に関する記載が方向付け構造に当てはまり、形状接続相手側構造に関する記載が方向付け相手側構造に当てはまることも含んでいる。両方の構造の内の一方は突起であり、それぞれ他方の構造は、当該突起を形状接続係合において受容する凹所であり得る。これによって、分配管部材に対するストッパの回転防止が、分配軌道の周りでの分配管部材に対する回転に対するコネクタの回転防止と同じように形成され得る。
【0025】
鼻カニューレを使用している患者に、治療状況に応じて選択的に、患者の身体のいずれの側からでも治療用ガスを供給できるようにするために、本発明のさらなる発展形態によると、両方の連結開口部は、少なくとも両方の連結開口部のいずれもが封止開口部でも供給開口部でもあり得るという点において、同じように構成されている。少なくとも連結開口部を有する分配管の長手方向端部領域は、鏡面対称に構成されてもよい。
【0026】
ストッパ又は/及びコネクタの配置が、連結開口部のいずれにおいても等しく、分配管における異なるフロー状況をもたらさないようにするために、ストッパ又は/及びコネクタは、そのそれぞれの長手軸を含む対称面に関して、好ましくは鏡面対称に構成されている。基準状態では、分配軌道は、少なくともストッパの対称面におけるフロー誘導面の配置領域に存在する。対応して、コネクタに関しては、少なくともコネクタのガス流出端部で、分配軌道が対称面に位置していることが適用される。
【0027】
多くの治療事例において、患者への治療用ガスの非対称な供給が望まれている。治療用ガスは、分配管部材に、ガス供給部を通じて、供給開口部の位置でのみ導入されるので、分配管部材内部又は/及び供給管内における治療用ガスの非対称な分配が、存在する場合は、もたらされなければならない。
【0028】
先行技術からはすでに、治療用ガスを、鼻カニューレを始点として非対称に、すなわち時間単位当たり異なる量で、患者の各鼻孔に放出するための手段が知られている。例えば、異なる長さ又は/及び異なるフロー断面を有する供給管を用いることが知られている。しかしながら、この、供給管において実現された、患者の両方の鼻孔において治療用ガスを量的に不均等に分配するための手段は、患者との生理的な反作用の状態にあるという欠点を有している。患者は、おそらく、2つの異なる長さの供給管の内の長い方の供給管、又は/及び、より大きな開口部横断面を有する供給管を、その鼻腔内で知覚するであろう。この知覚は、治療の間に不快なものになり、治療の成功を危うくする可能性がある。
【0029】
これに対して、本発明は、患者に治療用ガスを時間単位当たり異なる量で供給する、又は、異なって若しくは非対称に構成された供給管を必要とせずに、分岐開口部を通って治療用ガスが流れるようにする可能性を提供する。従って、好ましくは鏡面対称に配置された供給管を有する鼻カニューレは、異なる大きさの治療用ガス質量流の分配にも用いられ得る。対称に構成された供給管の、供給管対称面は、分岐開口部の間の距離の半分で、分配管軌道を直交して切断する面である。
【0030】
このような両方の分岐開口部を通じた異なる治療用ガス質量流の分配は、本発明の特に好ましいさらなる発展形態によると、ストッパが、動作可能な状態で封止開口部内に配置されている状態において、封止開口部に近い方の分岐開口部を少なくとも部分的に封止することによって得られる。
【0031】
好ましくは、分岐開口部は同じ大きさに、又は、上述した供給管鏡面対称面に関して鏡面対称に、しかしながら好ましくは同じ開口部横断面を有するように構成されており、それによって、基本的に、両方の分岐開口部を通じた、値としては同じ大きさである治療用ガス質量流の分配が可能なだけではなく、封止開口部と供給開口部との交換も、分岐開口部を通る、値としては同じ大きさである治療用ガス質量流をもたらすが、それぞれ交換前とは異なる分岐開口部においてである。
【0032】
供給開口部から流れてくる治療用ガスを分岐開口部の方へ方向転換させ、この際に所望の通り、両方の分岐開口部を通る、量的に異なる治療用ガス質量流をもたらす内側のフロー誘導面を、分配管内に有する鼻カニューレの当該態様は好ましいので、出願人は、患者に治療用ガスを経鼻供給するための鼻カニューレに関する特許権を得るよう努めることを決定した。当該鼻カニューレは、分配管を備えた分配管部材を含んでおり、分配管は、仮想の、分配管の中央を貫通する分配軌道に沿って延在しており、分配軌道は長手方向を画定しており、分配管は、2つの分岐開口部を有しており、各分岐開口部を始点として、患者に治療用ガスを供給するための供給管がそれぞれ、分配管から分岐しており、分配管は、分岐開口部に加えて、当該分岐開口部と間隔を置いて配置された供給開口部を有しており、供給開口部は、ガス供給導管を分配管に接続するように構成されており、鼻カニューレは、分配管内で露出したフロー誘導面を備えたフロー誘導構造を有しており、フロー誘導面は、分配管内で、少なくとも1つの分岐開口部の長手方向延在領域に配置されていると共に、フロー誘導面が分配管内で供給開口部から分配軌道に沿って流れてくる治療用ガスを、分岐開口部の内の少なくとも一方に向けて方向転換させるように、分配軌道に対して傾斜しており、フロー誘導面が分配軌道に沿って延在する先の分岐開口部は、それぞれ他方の分岐開口部よりも小さい開口部横断面面積を有している。
【0033】
このような鼻カニューレは、2つ割りにした構造を有することが可能であり、これらの半分の部分は、互いに対して可動であるように形成され、鼻カニューレを構成するように組み立てられ得る。冒頭に挙げた鼻カニューレとは異なり、ストッパを有さず、フロー誘導面が変位不可能に、分配管の境界壁として設けられている当該鼻カニューレは、部分的にストッパによって封止された分岐開口部を有する鼻カニューレと同じ効果を得る。つまり、両方の分岐開口部の内の一方が、より小さい開口部横断面面積を有しているので、より小さい開口部横断面面積を有する分岐開口部(ストッパが設けられた鼻カニューレの場合は、部分的に封止された分岐開口部である)を通って、時間単位当たりに、より大きな開口部横断面面積を有する他方の分岐開口部を通るよりも少ない量の治療用ガスが流出する。
【0034】
供給開口部から流れてくる治療用ガスの、両方の分岐開口部への方向転換を支援するために、本発明のさらなる発展形態では、上述のフロー誘導構造は、供給開口部から分配軌道に沿って流れてくる治療用ガスを分岐開口部の内の一方へ方向転換する第1のフロー誘導構造であってよく、ストッパは、第2のフロー誘導面を備えた第2のフロー誘導構造を有しており、第2のフロー誘導構造は、分配管に沿って、第1のフロー誘導構造から間隔を置いて配置されており、基準状態において、供給開口部から分配軌道に沿って流れてくる治療用ガスを、それぞれ他方の分岐開口部へ方向転換する。
【0035】
第1及び第2のフロー誘導面は、好ましくは、つながった誘導面を形成していないので、これらのフロー誘導面は、好ましくは、1つかつ同一の誘導面の部分ではない。
【0036】
第1のフロー誘導面を備えた第1のフロー誘導構造の構造的な態様に関する上述の記載は、第2のフロー誘導面を備えた第2のフロー誘導構造に関しても適用される。特に、第2のフロー誘導面は、第1のフロー誘導面と同様に、上述の湾曲軸の内の少なくとも1つの周りで凹形に湾曲していてよく、これによって、分配軌道に沿って、流れてくる治療用ガスが、その分岐開口部に向かって方向転換する。好ましくは、第2のフロー誘導面は、第1の誘導面よりも値として小さく、好ましくは、第2のフロー誘導面は、1つのみ又は2つの互いに直交する湾曲軸の周りで凹形に湾曲している。これは、治療中の、分配管内の望ましくない騒音の発生を回避する。
【0037】
供給開口部から分配軌道に沿って流れてくる治療用ガスフローに関して、第1のフロー誘導構造の上流に配置された第2のフロー誘導構造は、第1のフロー誘導構造に向かう治療用ガスフローにとっては、流れの妨げとなる。従って、具体的な構造的態様において、第2のフロー誘導構造は、分配管の部分横断面にわたってのみ延在可能であり、その延在領域では、分配軌道に沿って流れてくるガスフローを、それぞれ他方の分岐開口部に方向転換させ、基準状態において、その延在領域の外側で、分配管と共に、第2のフロー誘導構造の側を通り、第1のフロー誘導面に向かう治療用ガスフローのための貫流開口部を形成することができる。当該貫流開口部を通って、供給開口部から流れてくる治療用ガスの一部が、第1のフロー誘導構造に向かって流れることができる。
【0038】
第2のフロー誘導面による、一部の治療用ガスフローの、それぞれ他方の分岐開口部への可能な限り効果的な方向転換をもたらすためには、第2のフロー誘導構造が、分配軌道の周りの所定の角度領域を越えて、分配管の内壁に接していると有利である。この場合、少なくとも当該角度領域では、第2のフロー誘導構造、特に第2のフロー誘導面と分配管の内壁との間に、隙間は存在しない。このような隙間は望ましくない。なぜなら、治療用ガスが、第2のフロー誘導面によってそれぞれ他方の分岐開口部に方向転換される代わりに、隙間を通って流れることができるからである。当該角度領域は、例えば角度領域がそれぞれ他方の分岐開口部を越えて延在する場合、複数の互いに間隔を置いて配置された部分角度領域から形成されていてよく、当該角度領域では、それぞれ他方の分岐開口部ゆえに分配管の内壁が存在しない。従って、第2のフロー誘導構造も、第2のフロー誘導構造に割り当てられたそれぞれ他方の分岐開口部を少なくとも部分的に覆うことが可能であり、これによって、分配管内の治療用ガスフローが所定の場合に、それぞれ他方の分岐開口部を通って流れる治療用ガス質量流は、量に関して影響を受ける。
【0039】
両方の分岐開口部を通る、又は/及び、供給管から出る、値の異なる治療用ガス質量流が望ましい場合、当該治療用ガス質量流は、分岐開口部を部分的に覆うという上述の手段に加えて、又は、上述の手段に対して代替的に、治療用ガスが貫流可能である貫流開口部の横断面面積が、貫流開口部の位置における分配管の横断面面積の半分よりも大きいか、又は、小さいということによっても得られる。
【0040】
好ましくは、貫流開口部は、貫流開口部の位置における分配管の横断面面積の70%よりも大きいか、又は、分配管の横断面面積の30%よりも小さく、これによって、両方の分岐開口部を通過する、明らかに量的に異なる治療用ガス質量流が形成される。
【0041】
上述したような第2のフロー誘導構造の構成は、例えば鼻カニューレが、2つの鼻カニューレ部材から射出成形で製造されるのであれば、上述したようなストッパを有さない鼻カニューレにおいても実現可能である。
【0042】
冒頭に挙げたストッパを有する鼻カニューレは、分配管部材が、ストッパ又は/及びコネクタの材料よりも低い弾性係数を有する材料から形成されている場合、特に容易に、動作可能な状態に移行できるので、分配管部材は、ストッパ又は/及びコネクタから成る挿入部材の分配管部材への挿入の際に、それぞれの挿入部材によって変形可能である。
【0043】
本発明の好ましいさらなる発展形態によると、供給開口部として用いられる連結開口部へのコネクタの可能な限り容易な接続を可能にするために、両方の連結開口部は、分配管のそれぞれ反対の長手方向端部に位置している。好ましくは、分配軌道は、両方の連結開口部の間を直線状に延在しており、これによって、望ましくない方向転換による損失と騒音の形成とが回避される。付加的又は代替的に、両方の分岐開口部は、長手方向において、連結開口部間の中央に位置しており、これによって、いずれの連結開口部が供給開口部として選択されているかとは無関係に、その他の動作条件が同じであれば、分配管内に、同じではあるが左右逆のフロー状況が形成される。
【0044】
本発明はさらに、鼻カニューレ治療用キットにも関しており、当該キットは、上述したような鼻カニューレと、少なくとも2つ、又は、好ましくは2つよりも多くのストッパとを含んでおり、当該ストッパは、第1若しくは/及び第2のフロー誘導構造の長さにおいて、又は/並びに、第1若しくは/及び第2のフロー誘導面の形状において、又は/並びに、第2のフロー誘導構造と分配管とから形成された、第2のフロー誘導構造の側を通る治療用ガスフローのための貫流開口部の大きさ若しくは/及び形状において異なっている。
【0045】
鼻カニューレ治療用キットでは、唯一の分配管部材と少なくとも2つ、好ましくは多数のストッパとを用いて、鼻カニューレが、利用可能である多数のストッパから、そのフロー条件に関して、それぞれ用いられるストッパを選択することによって、それぞれの治療事例に対して個別に適応可能である。ストッパが上述のように異なっていること、例えばストッパの長さが異なること、を通じて、分岐開口部がストッパによって、又は、フロー誘導構造によって覆われる程度が変更され得る。付加的又は代替的に、フロー誘導面の形状に関するストッパの選択によって、流れてくる治療用ガスの、それぞれフロー誘導面に割り当てられた分岐開口部への方向転換を変更することができる。
【0046】
さらに、付加的又は代替的に、異なる貫流開口部を有する複数のストッパからのストッパの選択によって、両方の分岐開口部に供給される治療用ガスのフロー割合を変更することができる。従って、鼻カニューレは、複数のストッパからのストッパの選択によって、非常に容易に、非常に多くの異なる治療処置に適応することができる。
【0047】
以下に、添付の図面を用いて、本発明を詳細に説明する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明に係る鼻カニューレの第1の実施形態の概略的な分解図である。
【
図2】
図1に係る実施形態の概略的な縦断面図であり、切断面が分配軌道を含む縦断面図である。
【
図3】
図2に係る鼻カニューレとは異なるストッパを備えた、本発明に係る鼻カニューレの第2の実施形態の、
図2の図に対応する縦断面図である。
【
図4】さらに異なるストッパを備えた、本発明に係る鼻カニューレの第3の実施形態の、
図2及び
図3の図に対応するさらなる縦断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係るストッパの底面図を伴う、部分的に断面を示した分配管部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1では、本発明に係る鼻カニューレの第1の実施形態が、全体として参照符号10で示されている。鼻カニューレ10は、分配管部材12とストッパ14とコネクタ16とを含んでいる。通常の動作条件下では、分配管部材12に背向するコネクタ16の長手方向端部16bに、供給ホース18を取り付けることが可能であり、特に螺合可能である。
【0050】
分配管部材12は、分配軌道Vに沿って延在する分配管20を有している。分配管部材12の分配軌道Vに関してそれぞれ反対の軸方向長手方向端部には、それぞれ連結開口部22又は24が形成されており、当該連結開口部を通過して、分配管20がアクセス可能である。分配管部材12からは、2つの供給管26及び28が分岐しており、当該供給管は、分配管部材12の分配管20に合流している。ストラップ30及び32を用いて、分配管部材12と、従って鼻カニューレ10とが、既知の方法で、患者によって身につけられ、装着され得る。
【0051】
供給管26及び28とストラップ30及び32とを含む分配管部材12は、好ましくは一体的に、例えば射出成形によって形成されている。
【0052】
供給管26及び28は、鼻カニューレ10の治療作業において、供給管の分配管20から離れた長手方向端部26a又は28aで、患者の鼻孔に近づけられているか、又は、鼻孔を通って患者の鼻腔に進入している。
【0053】
分配管部材12は、直線状の分配軌道Vを供給管26と供給管28との間隔の中央で直角に切断する対称面Sに関して、鏡面対称に構成されている(
図2を参照)。この鏡面対称の構成は、連結開口部22及び24が同一の構成を有し、従って、いずれもストッパ14としてもコネクタ16としても利用可能であるという利点を有している。
【0054】
図1に示された分解図では、鼻カニューレ10は、鼻カニューレ10を装着した患者の左側からガスを供給するように構成されている。連結開口部24は、従って、供給開口部24である。
【0055】
連結開口部22を通る、分配管20からの治療用ガスの望ましくない流出を回避するために、ストッパ14が、分配管20内に配置するために、連結開口部22を通って配置され、設けられている。従って、連結開口部22は、封止開口部22を形成している。
【0056】
好ましくは一体的に構成された、射出成形によって製造されたストッパ14は、その一方の長手方向端部に把持突起34を有しており、当該把持突起は、ストッパディスク36から突出しており、当該ストッパディスクは、連結開口部22の内法横断面面積よりも大きな面積を有している。従って、ストッパディスク36は、連結開口部22の縁部から突出しており、分配管20にストッパ14が過度に挿入されることを物理的に防止している。ストッパディスク36は、鼻カニューレ10の動作可能な状態においては、連結開口部22を画定する分配管部材12の縁部に接しており、分配管部材12と共に機械的なストッパを形成している。
【0057】
ストッパディスク36の把持突起34と反対の側には、固定溝38が構成されており、当該固定溝には、鼻カニューレ10の動作可能な状態において、分配軌道Vの周りを取り巻いている分配管部材12の径方向突起40が、固定するように係合している(
図2を参照)。径方向突起40と固定溝38とは、克服可能な形状接続固定係合を形成しており、これによって、例えば分配管20内に存在する治療用ガスフローによる、ストッパ14の分配管部材12からの望ましくない解除が防止される。
【0058】
固定溝38には、ストッパ14の挿入長手方向端部14aに向かう方向において、フロー誘導構造42が接続されている。フロー誘導構造42は、その把持突起34から離れる方向の側において、フロー誘導面44によって限定されており、フロー誘導面44は、ストッパ14が分配管部材12に分配軌道Vに沿って連結開口部22を通って挿入されている場合、分配管20のフロー空間を画定する壁を形成する。フロー誘導面44には、治療作業中、患者に治療用ガスを供給するためにコネクタ16から流出した治療用ガスが流れてくる。
【0059】
第1の実施例では、フロー誘導面44は単軸に、具体的には専ら、分配軌道Vに直交して配置されている湾曲軸の周りで湾曲している。例示的な湾曲軸Kが
図1に示されている。図示された実施例では、フロー誘導面44は湾曲軸Kに沿って湾曲していない。つまり、フロー誘導面44は、分配軌道Vに直交する切断面において直線状の境界線を有している。
【0060】
図1に示された第1の実施例では、フロー誘導面44は、異なる種類の湾曲を有する3つの領域を備えている。つまり、挿入長手方向端部14aに最も近い、凹形の湾曲を有する領域44aと、分配軌道Vに沿って領域44aに接続された、凸形の湾曲を有する領域44bと、領域44bに接続された、凹形の湾曲を有する第3の領域44cと、である。従って、フロー誘導面44は、2つの凹形の湾曲領域44a及び44cと、分配軌道Vに沿って、当該湾曲領域間に位置する凸形の湾曲領域44bと、を有している。凹形の湾曲領域44cが供給管26(又は、連結開口部22若しくは24のいずれを通じてストッパ14が分配管20に挿入されるかに応じて、供給管28も)に近づくにつれて、第3の湾曲領域44cの湾曲は大きくなり、つまり、その曲率半径は小さくなる。これは、
図1に示された例において、まず軸方向に、分配軌道Vに沿って流れている治療用ガスフローの、ストッパ14のフロー誘導面44に割り当てられた供給管26への、損失及び騒音の少ない方向転換に資するものである。
【0061】
ストッパ14は、連結開口部22及び24のいずれを通っても、同じフロー誘導作用を有して分配管20内に配置され得るように、分配軌道Vに対して平行かつ湾曲軸Kに対して直角な対称面に関して対称である。
【0062】
図1に示された例では、コネクタ16は、挿入部分16aで、連結開口部24を通って、分配管部材12の分配管20に挿入可能である。反対側の接続部分16bでは、供給ホース18を接続することが可能であり、特に螺合可能である。
【0063】
部分16aと部分16bとの間では、コネクタ16がストッパリング46を有しており、当該ストッパリングは、連結開口部24を画定する分配管部材12の縁部から径方向に突出し、コネクタ16の分配管20への挿入深度を限定している。挿入部分16aとストッパリング46との間では、コネクタ16も、固定溝48を有しており、当該固定溝には、分配軌道Vの周りを取り巻いている固定突起50が、連結開口部24に近い方の分配管部材12の端部領域で、鼻カニューレ10の動作可能な状態において、克服可能な形状接続固定係合を形成するために係合する。
【0064】
図2には、
図1に係る鼻カニューレ10が、分配軌道Vを含む切断面に沿った縦断面図で示されている。
図2には、分配管部材12の鏡面対称面Sが示されている。鏡面対称面Sは、分配軌道V及び
図2の投影面に直交している。
【0065】
鼻カニューレ10の縦断面の切断面は、分岐開口部26b又は28bを貫通しており、当該分岐開口部を始点として、供給管26及び28が、分配管12から離れる方向に延在している。分岐開口部26b及び28bは、上述の対称条件に基づいて、同じ横断面面積を有しているので、基本的に、患者の両方の鼻孔への同じ治療用ガス質量流の、供給管26及び28を通じた対称な供給が可能である。コネクタ16の内側面52は、ストッパ14のフロー誘導面44と共に、フローを誘導する連続的な面54を形成している。内側面52とフロー誘導面44とは、同一平面上で互いの内に移行する。
【0066】
図2においてさらに認識されることに、ストッパ14のフロー誘導面44は、
図2の投影面に直交する方向において湾曲しておらず、これは
図1に関してすでに言及されたことである。
【0067】
凹形の部分44cは、ストッパ14が正しく設置されている場合には、ストッパ14に最も近く、それゆえに割り当てられている分岐開口部26bの縁部で終端している。フロー誘導面44と、その内特に凹形の部分44cとは、分岐開口部26bの長手方向延在領域に存在している。
【0068】
フロー誘導面44は、分配軌道Vに沿って、分岐開口部28bの長手方向延在領域内にまで延在している。従って、フロー誘導面44の凸形の部分44bは、大部分又は全体までもが、分配軌道Vに沿った長手方向において、分岐開口部26bと分岐開口部28bとの間に存在する。
【0069】
図2から明らかであるように、ストッパ14とコネクタ16とは、分配管部材12においてその位置を問題なく交換することができる可能性があり、その場合には、供給管26及び28の長手方向端部26a及び28aを通じた、左右逆の治療用ガスの供給が行われる可能性がある。
【0070】
図2に示された構成によって、供給開口部24から治療用ガスが流れてくる場合、治療用ガスは、供給管26及び28を概ね対称に貫流し、すなわち略同じ治療用ガス質量流で、両方の供給管26及び28を貫流する。
【0071】
図2では、連結開口部22における径方向突起40は、完全に一周するようには図示されていない。なぜなら、分配管20を画定している分配管部材12の壁の下側には、分配軌道Vに沿って延在し、分配軌道Vに向かって径方向内側に突出した径方向突起56が、方向付け相手側構造として構成されているからである。径方向突起56は、ストッパ14内の方向付け構造である補完的な凹所58に係合している。図示された配置状況では、凹所の形状の方向付け構造58も、径方向突起の形状の方向付け相手側構造56も、分配軌道Vに向かって径方向において、及び、連結開口部22を始点として分配管20の長手方向中央に向かって軸方向において、先細になっている。これによって、連結開口部22から(又は、分配管部材12若しくは少なくとも分配管20の鏡面対称な構成ゆえに、連結開口部24からも)分配管部材内にストッパ14を挿入することが容易になる。
【0072】
方向付け構造58と方向付け相手側構造56との間の、分配軌道Vに沿った些細ではない軸方向長さにわたる形状接続係合によって、ストッパ14が、所定の相対的方向付けにおいてのみ、分配管部材12に挿入可能であり、これによって、フロー誘導面44が、分岐開口部26b及び28bに関して正しく配置されていることが確実化される。
【0073】
分配管部材12は、鏡面対称な構成ゆえに、連結開口部24の長手方向端部領域においても、径方向突起の形状における配置相手側構造60を有しており、当該径方向突起は、凹所の形状におけるコネクタの配置構造62に係合している。やはり、凹所62も径方向突起60も、径方向において分配軌道Vに向かって先細になり、連結開口部24を始点として、分配管部材12の長手方向中央に向かって軸方向において先細になるように構成されている。当該構成によって、分配管部材12内でのコネクタ16の正しい配置と、分配軌道Vの周りでの分配管20に対するコネクタ16の回転防止とがもたらされる。この点では、方向付け相手側構造56と配置相手側構造60とは、鏡面対称な形状と、同じ機能又は作用とを有している。同じことは、一方での方向付け構造58と、他方での配置構造62と、に関しても当てはまる。
【0074】
分配管部材12は、ストッパ14及びコネクタ16よりも柔軟な材料から形成されている。従って、分配管部材12の材料は、ストッパ14及びコネクタ16の材料よりも低い弾性係数を有している。これによっても、ストッパ14及びコネクタ16の分配管部材12への挿入と、固定突起40又は50及び割り当てられた固定溝38又は48の間における形状接続固定係合の形成と、同様に、一方での構造58及び62と他方での相手側構造56及び60との間における形状接続係合の形成とが容易になる。
【0075】
図3には、鼻カニューレ110の第2の実施形態が、
図1に係る鼻カニューレ10と同じ縦断面において示されている。
【0076】
図3に係る第2の実施形態では、
図1及び
図2に係る第1の実施形態と同じ部材、及び、機能が同じ部材には、同じ参照符号に100を加えた参照符号が付されている。
【0077】
以下において、
図3に係る第2の実施形態には、
図1及び
図2に係る第1の実施形態とは異なる点に関してのみ言及する。その他の点については、
図3に係る第2の実施形態を説明するためにも、第1の実施形態に関する説明が参照される。
【0078】
分配管部材112、コネクタ116及び供給ホース118は、第1の実施形態における部材12、16又は18と同一である。ただ、鼻カニューレ110の第2の実施形態のストッパ114のみが、第1の実施形態のストッパ14とは異なっている。
【0079】
一方では、第2の実施形態においては、フロー誘導面144は、分配軌道Vに沿って凹形にのみ湾曲しており、つまり、唯一の凹形の面部分144aを有している。当該面部分は、ストッパ114の挿入長手方向端部114aから、ストッパ114に割り当てられた分岐開口部126bまで延在している。しかしながら、分配軌道Vに直交する湾曲軸の周りで凹形に湾曲した唯一の部分144aに関しても、挿入長手方向端部114aから離れるにつれて、及び、割り当てられた分岐開口部126bに近づくにつれて、湾曲が増大する、つまり、付属する曲率半径がより小さくなる、ということが当てはまる。
【0080】
同時に、フロー誘導面144は、分配軌道Vに沿って延在するさらなる湾曲軸の周りでも、凹形に湾曲している。従って、フロー誘導面144は、ストッパ114の延在領域において、フロー空間の槽状の縁を形成している。
【0081】
ストッパ14に対するストッパ114のさらなる明確な差異は、ストッパ114の挿入長手方向端部114aにおいて、第1のフロー誘導構造142とは別に、第2のフロー誘導面166を備えた第2のフロー誘導構造164が形成されており、第2のフロー誘導面166は、コネクタ116又は供給開口部124から流れてくる治療用ガスフローに対して露出しており、治療用ガスフローによって湿らされ得るということにある。
【0082】
第2のフロー誘導面166は、2軸で湾曲した第1のフロー誘導面144とは異なり、単軸でのみ、つまり分配軌道Vに直交する湾曲軸の周りでのみ湾曲している。しかしながら、必ずしも単軸での湾曲でなくともよい。第2のフロー誘導面166もまた、分配軌道Vに直交する湾曲軸の周りでも、分配軌道Vに対して平行な湾曲軸の周りでも湾曲してもよい。第2のフロー誘導面166は、分岐開口部128bの長手方向延在領域にのみ存在しており、従って分岐開口部128bに割り当てられている。
【0083】
第2のフロー誘導構造164は、第2のフロー誘導構造164の配置箇所において、分配管120の横断面面積の略半分にわたって延在しているので、第2のフロー誘導構造164と、第2のフロー誘導面166に割り当てられた分岐開口部128bと直径上で向かい合っている分配管120の壁部分との間には、貫流開口部168が残存している。貫流開口部168を通って、供給開口部124から流れてくる治療用ガスは、第2の流れ誘導構造164の側を通過し、第1のフロー誘導面144と、従って第1のフロー誘導面144に割り当てられた分岐開口部126bとに到達する。貫流開口部168の横断面面積は、第2のフロー誘導構造164の配置領域における分配管120の横断面面積の略半分に相当する。
【0084】
第2のフロー誘導構造164は、その第2のフロー誘導面166で、分配管120内を流れる治療用ガスの一部を、意図的に一方の供給管128に方向転換させることが可能であり、他方、第1のフロー誘導面144は、残りの治療用ガスを、それぞれ他方の供給管126に方向転換する。
【0085】
設けられたフロー誘導面144及び166によって、治療用ガスを、概ね損失無く、少ない騒音で、極めて意図的に、各分岐開口部126b及び128bに方向転換させることが可能である。
【0086】
1つかつ同一の分配管部材12又は112に挿入可能である、異なる構成を有するストッパ14及び114によって、鼻カニューレ10又は110を装着する患者に関して、異なる治療状況、特に、分岐開口部126b及び128bと、当該分岐開口部に接続された供給管126及び128とを通って、所望した通り、意図的に、異なる大きさの治療用ガス質量流が流れるという治療状況が実現可能である。
【0087】
図4には、第3の実施形態が、
図2及び
図3に対応する縦断面で示されている。
【0088】
第1の実施形態と同じ、及び、同じ機能の部材及び部材部分には、第3の実施形態において、同じ参照符号に200を加えた参照符号が付されている。
【0089】
以下において、
図4に係る第3の実施形態には、第1の実施形態とは異なる点に関してのみ言及する。その他の点については、
図4に係る第3の実施形態を説明するためにも、第1の実施形態に関する説明が参照される。
【0090】
やはり、分配管部材212、コネクタ216及び供給ホース218は、
図1及び
図2に係る第1の実施形態における同種の部材と同一である。
【0091】
ストッパ214は、第1の実施形態に係るストッパ14に概ね一致する。唯一のフロー誘導面244は、分配軌道Vに直交し、
図4の投影面に直交して延在する湾曲軸の周りでのみ湾曲している。第1の実施形態のように、フロー誘導面244は、湾曲の異なる3つの湾曲領域を有している。つまり、挿入長手方向端部214aに最も近い、凹形の面部分244aと、分配軌道Vに沿って面部分244aに接続された、凸形の面部分244bと、分配軌道Vに沿って面部分244bに接続され、割り当てられた分岐開口部226bに達するさらなる凹形の面部分244cと、である。
【0092】
とは言え、第3の実施形態に係るストッパ214のフロー誘導面244は、軸方向、すなわち分配軌道Vに沿って、第1の実施形態に係るフロー誘導面44よりも短く構成されている。ストッパ214のストッパディスク236と挿入長手方向端部214aとの間隔は、第1の実施形態に係るストッパ14の場合と同じであるので、フロー誘導構造242によって、遮断部分242aが形成されており、当該遮断部分は、割り当てられた分岐開口部226bを部分的に封止し、これによって、分岐開口部226bは、依然として封止されず、覆われていない他方の分岐開口部228bよりも小さい、有効なフロー断面を有している。
【0093】
図4に示した第3の実施形態によって、所望の通り、異なる量の治療用ガスが、時間単位当たり、分配管部材212の構造的に同じ大きさの分岐開口部226b及び228bを通って誘導され得るので、患者には、故意かつ意図的に、供給管226及び228を通じて、異なる大きさの治療用ガス質量流を与えることが可能である。
【0094】
ストッパ214も、ストッパ114のように、付加的に第2の流れ誘導構造を有することは、容易に想像できる。
【0095】
さらに、分岐開口部を通る、異なる大きさの治療用ガス質量流を、第2のフロー誘導構造の貫流開口部(
図3の貫流開口部168を参照)が、分配管のフロー断面の半分よりも小さく、又は、大きく構成されていることによって形成することが考えられ得る。
【0096】
これらの、異なる大きさの貫流開口部及びフロー誘導構造242の遮断部分242aという手段もまた、共に、1つかつ同一のストッパに適用可能であり、これによって、意図的に、分岐開口部226b及び228bを通る異なる大きさの治療用ガス質量流が形成される。
【0097】
ストッパ14、114及び214の挿入長手方向端部14a、114a及び214aには、所定の角度領域にわたって、突起又は凹所が構成されていてよく、当該突起は、分配軌道Vに対して平行に、挿入長手方向端部から張り出して、コネクタ16、116、216の挿入部分16a、116a、216aの先行する長手方向端部において、凹所内に突出しているか、又は、分配軌道Vに対して平行に、挿入長手方向端部によって挿入される凹所内に、コネクタの先行する長手方向端部において、対応する突起が突出し、これによって、ストッパとコネクタとが、それぞれ分配管部材に対するだけではなく、互いに対しても、分配軌道Vの周りでの回転から保護される。
【0098】
図5には、部分的に断面を示して、分配管部材12が図示されている。当該図面では、特に、分配管20内の方向付け相手側構造56と、配置相手側構造60とが認識できる。加えて、ストッパ14が、底面図において遠近法を用いて示されているので、方向付け構造58は、軸方向にも径方向にも先細になっている形状において示されている。対称性ゆえに、コネクタにおける配置構造62は、同じ形状を有している。
【0099】
鼻カニューレ10は、異なるストッパ14、114及び214を有することができるので、複数の利用可能なストッパから使用するストッパを選択することによって、具体的な治療状況を作り出すことができる。例えば、容易かつ迅速に構成可能である、治療従事者のための鼻カニューレ治療用キットを供給することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
10;110;210 鼻カニューレ
12;112;212 分配管部材
14;114;214 ストッパ
14a;114a;214a 挿入長手方向端部
16;116;216 コネクタ
16a;116a;216a 挿入部分
16b 長手方向端部、接続部分
18;118;218 供給ホース
20;120;220 分配管
22、24;122、124;222、224 連結開口部
22;122;222 封止開口部
24;124;224 供給開口部
26、28;126、128;226、228 供給管
26a、28a 長手方向端部
26b、28b;126b、128b;226b、228b 分岐開口部
30、32 ストラップ
34 把持突起
36;236 ストッパディスク
38 固定溝
40 径方向突起、固定突起
42;142;242 第1のフロー誘導構造
242a 遮断部分
44;144;244 第1のフロー誘導面
44a、44c;144a;244a、244c 凹形の湾曲領域、凹形の面部分
44b;244b 凸形の湾曲領域、凸形の面部分
46 ストッパリング
48 固定溝
50 固定突起
52;152;252 内側面
54;154;254 フローを誘導する連続的な面
56;156;256 方向付け相手側構造
58;158;258 方向付け構造
60;160;260 配置相手側構造
62;162;262 配置構造
164 第2のフロー誘導構造
166 第2のフロー誘導面
168 貫流開口部
K 湾曲軸
S 鏡面対称面
V 分配軌道