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特許7357714樹脂吐出装置及び樹脂塗布済対象物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】樹脂吐出装置及び樹脂塗布済対象物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230929BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20230929BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230929BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/00
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022048839
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビリグォーツ
(72)【発明者】
【氏名】坂本 雅樹
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04907727(US,A)
【文献】特開2017-006886(JP,A)
【文献】特開2006-281178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00- 5/04
7/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
B65D83/08-83/76
F04B23/00-23/14
53/00-53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジに含まれた樹脂を吐出する樹脂吐出装置であって、
前記カートリッジは、前記樹脂が充填されているシリンジであって充填されている前記樹脂を吐出する吐出ニードルが先端に設けられているシリンジと、前記シリンジの内部の前記樹脂を封止しながら前記シリンジの軸線方向に移動可能なプランジャと、を有し、
前記樹脂吐出装置は、
前記シリンジを支持する支持具と、
前記支持具に支持された前記シリンジの内部の前記プランジャを押圧する押圧機と、を備え、
前記押圧機は、前記プランジャに接触して前記シリンジの軸線方向に移動可能なロッドと、前記ロッドを前記軸線方向に移動させる駆動機構と、を有し、
前記ロッドは、前記駆動機構に接続されたロッド本体と、前記ロッド本体の先端に設けられて前記プランジャに接触するゴム部材とを有
前記シリンジは、前記樹脂が充填されている主要部分が中空円筒状に形成されており、
前記プランジャは、主要部分の外観形状が円柱状に形成されており、
前記ゴム部材は、最外径が前記シリンジの内径以下かつ前記プランジャの前記主要部分の外径以上の円柱状に形成されている、
樹脂吐出装置。
【請求項2】
前記プランジャは、前記ロッドが接する側の端部に窪みが形成されており、
前記ゴム部材は、前記最外径の部分よりも前記プランジャ側に存在する先端が、前記プランジャに形成されている前記窪みの内側に嵌まり込む大きさに形成されている、
請求項に記載の樹脂吐出装置。
【請求項3】
前記ゴム部材は、硬度がショアA40~ショアA70の範囲である、
請求項1又は請求項に記載の樹脂吐出装置。
【請求項4】
前記ロッドは、前記ゴム部材を前記ロッド本体に固定する固定部材を有する、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の樹脂吐出装置。
【請求項5】
前記カートリッジから吐出された樹脂が塗布される塗布対象物を受ける受台を備える、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の樹脂吐出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の樹脂吐出装置によって吐出された樹脂が塗布対象物に塗布された樹脂塗布済対象物を製造する方法であって、
前記樹脂が塗布される塗布対象物を受台に配置する工程と、
前記受台に配置された前記塗布対象物に、前記樹脂吐出装置から吐出された前記樹脂を塗布する工程と、
前記樹脂が塗布された前記塗布対象物を、前記受台から取り出す工程と、を備える、
樹脂塗布済対象物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は樹脂吐出装置及び樹脂塗布済対象物の製造方法に関し、特に比較的粘度の高い樹脂の吐出に適した樹脂吐出装置及び樹脂塗布済対象物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布対象物に塗布する樹脂には、以下のような容器に収容されて提供されているものがある。その容器は、樹脂を吐出するノズルを有する筒状容器に樹脂が充填され、樹脂を挟んでノズルの反対側に筒状容器内を移動可能なプランジャが設けられることにより、筒状容器内に樹脂が封止されている。このような容器に収容された樹脂を吐出する装置として、筒状容器を支持する固定部保護ケースと、プランジャを筒状容器の先端側に押圧可能なピストンとを備えるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6898640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器に収容されている樹脂の粘度が比較的高い場合、ノズルから樹脂を吐出しようとしてプランジャを押圧した際に、プランジャを破損してしまうことがあった。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、プランジャの破損を抑制する樹脂吐出装置及びこの装置を用いた樹脂塗布済対象物の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る樹脂吐出装置は、カートリッジに含まれた樹脂を吐出する樹脂吐出装置であって、前記カートリッジは、前記樹脂が充填されているシリンジであって充填されている前記樹脂を吐出する吐出ニードルが先端に設けられているシリンジと、前記シリンジの内部の前記樹脂を封止しながら前記シリンジの軸線方向に移動可能なプランジャと、を有し、前記樹脂吐出装置は、前記シリンジを支持する支持具と、前記支持具に支持された前記シリンジの内部の前記プランジャを押圧する押圧機と、を備え、前記押圧機は、前記プランジャに接触して前記シリンジの軸線方向に移動可能なロッドと、前記ロッドを前記軸線方向に移動させる駆動機構と、を有し、前記ロッドは、前記駆動機構に接続されたロッド本体と、前記ロッド本体の先端に設けられて前記プランジャに接触するゴム部材とを有する。
【0007】
このように構成すると、シリンジから樹脂を吐出させる際に、ゴム部材がプランジャに接触してプランジャを押圧するので、プランジャの破損を抑制することができる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る樹脂吐出装置は、上記本開示の第1の態様に係る樹脂吐出装置において、前記シリンジは、前記樹脂が充填されている主要部分が中空円筒状に形成されており、前記プランジャは、主要部分の外観形状が円柱状に形成されており、
前記ゴム部材は、最外径が前記シリンジの内径以下かつ前記プランジャの前記主要部分の外径以上の円柱状に形成されている。
【0009】
このように構成すると、プランジャをシリンジ内に押し込んだときに、シリンジに充填されている樹脂がプランジャ及びゴム部材とシリンジとの間から漏れることを抑制することができる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る樹脂吐出装置は、上記本開示の第2の態様に係る樹脂吐出装置において、前記プランジャは、前記ロッドが接する側の端部に窪みが形成されており、前記ゴム部材は、前記最外径の部分よりも前記プランジャ側に存在する先端が、前記プランジャに形成されている前記窪みの内側に嵌まり込む大きさに形成されている。
【0011】
このように構成すると、プランジャをシリンジ内に押し込んだときに、プランジャの窪みに嵌まり込んだゴム部材がプランジャの外側面をシリンジの内壁に押し付けるように作用することとなり、吐出ニードルから樹脂を吐出しながら、シリンジに充填されている樹脂がプランジャとシリンジとの間から漏れることを回避することができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る樹脂吐出装置は、上記本開示の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る樹脂吐出装置において、前記ゴム部材は、硬度がショアA40~ショアA70の範囲である。
【0013】
このように構成すると、ゴム部材がプランジャを適切に押圧することができると共に、プランジャがシリンジ内に押し込まれたときにシリンジに充填されている樹脂がプランジャ及びゴム部材とシリンジとの間から漏れることを抑制することができる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る樹脂吐出装置は、上記本開示の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る樹脂吐出装置において、前記ロッドは、前記ゴム部材を前記ロッド本体に固定する固定部材を有する。
【0015】
このように構成すると、ロッドをプランジャから離れる方向に移動させたときに、ゴム部材がロッド本体から離脱することを防ぐことができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る樹脂吐出装置は、上記本開示の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る樹脂吐出装置において、前記カートリッジから吐出された樹脂が塗布される塗布対象物を受ける受台を備える。
【0017】
このように構成すると、シリンジから吐出された樹脂が塗布対象物に塗布される位置を安定させることができる。
【0018】
また、本開示の第7の態様に係る樹脂塗布済対象物の製造方法は、上記本開示の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る樹脂吐出装置によって吐出された樹脂が塗布対象物に塗布された樹脂塗布済対象物を製造する方法であって、前記樹脂が塗布される塗布対象物を受台に配置する工程と、前記受台に配置された前記塗布対象物に、前記樹脂吐出装置から吐出された前記樹脂を塗布する工程と、前記樹脂が塗布された前記塗布対象物を、前記受台から取り出す工程と、を備える。
【0019】
このように構成すると、樹脂が適切に塗布された樹脂塗布済対象物を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、シリンジから樹脂を吐出させる際に、ゴム部材がプランジャに接触してプランジャを押圧するので、プランジャの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施の形態に係る樹脂吐出装置の斜視図である。
図2】樹脂吐出装置に装着されるカートリッジの概略構成を示す断面図である。
図3】一実施の形態に係る樹脂吐出装置が備える押圧機の概略構成を示す断面図である。
図4】一実施の形態に係る、樹脂塗布済ワークの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
まず図1を参照して、一実施の形態に係る樹脂吐出装置1(以下、単に「吐出装置1」という。)を説明する。図1は、吐出装置1の斜視図である。吐出装置1は、図1に示すように、アーム10と、押圧機20と、受台51と、を備えている。吐出装置1は、提供されたカートリッジ90がアーム10に装着され、適宜アーム10を動かしながら、適時に押圧機20を作動させてカートリッジ90から樹脂を吐出させることで、受台51に載置されたワークWに樹脂を塗布する装置である。吐出装置1は、典型的には制御装置60によって動作が制御される。吐出装置1は、ディスペンサとして機能する。吐出装置1の説明に先立ち、カートリッジ90について説明する。
【0024】
図2は、カートリッジ90の概略構成を示す断面図である。カートリッジ90は、シリンジ91と、プランジャ95と、シリンジ91内に収容されてプランジャ95で封止された樹脂99と、を有している。シリンジ91は、樹脂99を収容する部材である。シリンジ91は、本実施の形態では、主要部分が中空円筒状に形成されている。シリンジ91の、中空円筒状の主要部分の大きさは、用途に応じた適切な寸法を取ることができるが、理解の容易のために、本実施の形態では、直径が約50mm、長さが約200mmであるとして説明する。シリンジ91は、中空円筒状の一端が、径が小さくなったうえで先端に吐出ニードル92が設けられている。吐出ニードル92は、内径を、用途に応じた適切な大きさとすることができ、例えば0.3mm~10mm、好ましくは0.5mm~5.0mmとすることができ、本実施の形態では1.0mmであるとして説明する。なお、シリンジ91は、図2に示す例では、径が小さくなる部分が、吐出ニードル92に近づくに連れて断面積が漸減する形状になっているが、主要部分よりも小径であるが径が変わらない短管状に形成されていてもよい。あるいは、径が小さくなる部分を設けずに、主要部分の端面に吐出ニードル92を設けることとしてもよい。シリンジ91は、典型的にはポリエチレン樹脂で形成されているが、ポリエチレン以外の樹脂で形成されていてもよく、樹脂以外の材料で形成されていてもよい。
【0025】
プランジャ95は、シリンジ91内に樹脂99を封止しながら樹脂99を押圧することができる部材である。プランジャ95は、シリンジ91の内部をシリンジ91の軸線が延びる方向に移動することができるように、シリンジ91の内部に設けられている。プランジャ95は、外観形状が、概ね円柱状に形成されている。プランジャ95は、シリンジ91内の移動に支障がないように、プランジャ95の外径がシリンジ91の内径よりもわずかに小さくなっている。例えば、プランジャ95の外径は、シリンジ91の内径よりも、0.1mm~0.5mm程度小さく形成されていてもよく、本実施の形態では0.2mm小さく形成されていることとする。このような外径をもつプランジャ95の部分を、プランジャ95の主要部分ということとする。概ね円柱状のプランジャ95の外周側面には、円周方向の全周に渡って外側に突き出た厚さが薄いリング状片96が設けられている。リング状片96は、1つ又は複数が設けられている。プランジャ95は、シリンジ91内に入れられたときに、リング状片96がシリンジ91の内壁に接することで、樹脂99の漏洩を抑制するようになっている。プランジャ95は、概ね円柱状の一方の端面が、外側にやや凸になるように形成されていてもよい。このプランジャ95の外側にやや凸になり得る端面は、シリンジ91内で樹脂99に接する側となる。プランジャ95は、外側にやや凸になり得る端面とは反対側の端面に、窪み97が形成されている。プランジャ95は、窪み97が形成されている部分の外周の厚さ(窪み97の外側のプランジャ95の厚さ)が、例えば1mm~2mmに形成されていてもよく、1.25mm~1.5mmに形成されていてもよい。プランジャ95は、典型的にはポリエチレン樹脂で形成されているが、ポリエチレン以外の樹脂で形成されていてもよく、樹脂以外の材料で形成されていてもよい。
【0026】
樹脂99は、比較的粘度が高い樹脂が用いられる。例えば、温度が25℃のときの粘度が、700000mPa・s~1100000mPa・s程度、好ましくは800000mPa・s~1000000mPa・s程度の室温硬化性樹脂(常温硬化樹脂)を樹脂99として用いることができる。樹脂99は、主剤として、シリコーン、変性シリコーン、又はウレタン樹脂を含むものを用いることができる。樹脂99の具体的な例として、ワッカーケミーAG社のELASTOSIL(登録商標)N9111Blackが挙げられる。このような高粘度の樹脂99は、従来の吐出装置(ディスペンサ)を用いてシリンジ91から吐出させようとしてロッドでプランジャ95を押した際に、ロッドで押す力が大きくなると、問題が生じることがあった。その問題の例として、吐出ニードル92から吐出される樹脂99の流量が追いつかずに、シリンジ91とプランジャ95との隙間から樹脂99が漏れてしまう、プランジャ95がロッドの圧力で破損してしまう、等が挙げられる。本実施の形態に係る吐出装置1(図1参照)は、比較的高粘度の樹脂99を扱う際に、上述の問題の発生を抑制するものである。
【0027】
図1に戻って、吐出装置1の構成を説明する。なお、以下の説明において、カートリッジ90の構成に言及しているときは、適宜図2を参照することとする。アーム10は、樹脂99が収容されているカートリッジ90を保持するものであり、支持具に相当する。アーム10は、カートリッジ90に収容された樹脂99を適切な位置に吐出することができるように、保持したカートリッジ90を動かすことができるように構成されている。アーム10は、本実施の形態では、第1アーム11と、第2アーム12と、第3アーム13とを有している。第1アーム11は、カートリッジ90を支持する棒状の部材である。第1アーム11は、典型的には、開閉扉を有する収納ケース(不図示)が設けられており、この収納ケース(不図示)にカートリッジ90を装着できるようになっている。第1アーム11は、上下方向(図1中z軸方向)に移動可能に、第2アーム12に支持されている。第2アーム12は、第1アーム11を支持する棒状の部材である。第2アーム12は、左右方向(図1中x軸方向)に移動可能に、第3アーム13に支持されている。第3アーム13は、第2アーム12を支持する棒状の部材である。第3アーム13は、前後方向(図1中y軸方向)に移動可能に、レール(不図示)に支持されている。第1アーム11、第2アーム12、及び第3アーム13の移動は、典型的には制御装置60によって制御される。
【0028】
押圧機20は、カートリッジ90のプランジャ95を押圧して樹脂99を押し出すものである。押圧機20は、本実施の形態では、第1アーム11に取り付けられている。押圧機20は、カートリッジ90が第1アーム11に保持されたときに、カートリッジ90よりも上側(受台51の反対側)となる位置で、第1アーム11に取り付けられている。押圧機20は、本実施の形態では、駆動機構31によりロッド21を動かし、ロッド21がプランジャ95を押圧することで、シリンジ91から樹脂99が吐出されるようになっている。以下、押圧機20のより詳細な構成を説明する。
【0029】
図3は、押圧機20の概略構成を示す断面図である。押圧機20は、上述のように、ロッド21と、駆動機構31とを有している。ロッド21は、駆動機構31の作動により、第1アーム11(図1参照)に保持されたシリンジ91の軸線が延びる方向に往復移動することができる部材である。ロッド21は、ロッド本体22と、ゴム部材25と、固定部材28とを有している。ロッド本体22は、駆動機構31の動作をプランジャ95に伝達するための主要な部材である。ロッド本体22は、典型的には直線状に延びた細長い丸棒状の部材であるが、長手方向に直交する断面の形状は、楕円形あるいは四角形や六角形等の多角形など、円形以外の形状であってもよい。ロッド本体22は、典型的には金属で形成されているが、樹脂等の金属以外の材料で形成されていてもよい。ロッド本体22は、丸棒状の軸線が、シリンジ91の軸線の仮想延長線上に位置するように配置されている。また、ロッド本体22は、一端が駆動機構31に接続されており、他端は、第1アーム11(図1参照)に保持されたカートリッジ90のプランジャ95に近接している。
【0030】
ゴム部材25は、プランジャ95に接触する部材である。ゴム部材25は、ロッド本体22の先端に取り付けられている。ゴム部材25が取り付けられたロッド本体22の端部は、駆動機構31に接続された端部とは反対側の端部である。ゴム部材25は、外観の基本形状が円柱状に形成されており、一方の端面の側にテーパー部26が形成されている。また、ゴム部材25は、円柱状の軸線の位置に、ボルト29を挿通可能な孔が形成されている。ゴム部材25は、テーパー部26の側がプランジャ95に接するように配置されることとなる。ゴム部材25は、本実施の形態では、テーパー部26以外の部分の円柱状の側面の外径に変化はなく、この側面の外径が最外径になっている。ゴム部材25は、円柱状の側面の最外径が、シリンジ91の主要部分の内径以下でプランジャ95の主要部分の外径以上に形成されていることが好ましい。ゴム部材25は、本実施の形態では、円柱状の側面の最外径が、シリンジ91の主要部分の内径よりも小さく、プランジャ95の主要部分の外径よりも大きく形成されており、例えば、シリンジ91の主要部分の内径よりも0.1mm小さく形成されている。ゴム部材25は、円柱状の側面の最外径はプランジャ95の窪み97の内径よりも大きいが、テーパー部26の途中までの先端の径は窪み97の内径よりも小さく形成されている。このため、ゴム部材25は、プランジャ95に向けて押圧したときに、テーパー部26の先端側の一部はプランジャ95の窪み97の内側に嵌まり込み、残りのテーパー部26及び最外径の部分はプランジャ95の上端に位置することとなる。
【0031】
ゴム部材25は、所定の硬度を有する高分子物質で形成されている。ゴム部材25は、本実施の形態では、ウレタンゴム等のポリウレタン材料が用いられている。ゴム部材25の所定の硬度は、シリンジ91とプランジャ95との隙間からの樹脂99の漏洩を抑制する観点、及びプランジャ95を押圧したときのプランジャ95の破損を抑制する観点から決定するとよい。このような観点を考慮して、ゴム部材25の所定の硬度は、ショアA40~ショアA70の範囲とすることが好ましい。本実施の形態ではショアA50のゴム部材25を用いている。その理由は、前述の構成のカートリッジ90(前述のシリンジ91に前述の製品の樹脂99が充填されたもの)を用いた場合に、樹脂99の漏洩が無い範囲で吐出ニードル92からの樹脂99の出が最も良好であったからである。ゴム部材25は、上述の硬度で前述の形状及び寸法のものを用いた場合、ロッド本体22でプランジャ95に向けて押圧されると、弾性変形によって、円筒状の軸線方向のみならず径方向にも、プランジャ95に対して外力を与える。これにより、プランジャ95は、シリンジ91の軸線方向に押されて吐出ニードル92から樹脂99を吐出させると共に、窪み97が形成されている部分の外周がシリンジ91の内壁に押し付けられて樹脂99の漏洩を抑制することができる。別の観点から見ると、プランジャ95の外側面と窪み97の内側との間(プランジャ95の外周壁)の前述の厚さは、当該外周壁がシリンジ91の内壁側に撓む程度とするとよい。
【0032】
固定部材28は、ゴム部材25をロッド本体22に固定する部材である。固定部材28は、本実施の形態では、外観が、直径が異なる2つの円板状部材が結合したような形状(実際には一体に形成されている)になっている。固定部材28は、例えば、大きい方の円板状部材の直径が、小さい方の円板状部材の直径の概ね1.5倍程度となっていてもよい。固定部材28は、大きい方の円板状部材の直径が、プランジャ95の窪み97の内径よりも小さく形成されている一方、ゴム部材25の意に反する変形を抑制する観点から、接触するゴム部材25の面の直径以上に形成されていることが好ましい。固定部材28は、円板状部材の図心を通る位置に、ボルト29を挿通することができる孔が形成されている。なお、固定部材28は、ゴム部材25がプランジャ95を押圧する機能に差し支えなければ、直径が異なる2つの円板状部材が結合した形状ではなく、直径が変わらない1つの円板状部材(又は円柱状部材)であってもよい。固定部材28は、典型的にはアルミニウムで形成されているが、ステンレス等のアルミニウム以外の金属で形成されていてもよく、金属以外の材料で形成されていてもよい。固定部材28は、そのボルト29を挿通する孔が、ゴム部材25に形成されたボルト29を挿通する孔に通ずるようにして、ゴム部材25のテーパー部26の先端に接触させられたうえで、ボルト29により、ゴム部材25と共に、ロッド本体22に固定されている。固定部材28及びゴム部材25の孔を通ったボルト29は、ロッド本体22の先端に形成されたねじに締結されている。固定部材28によってゴム部材25がロッド本体22に固定されていることで、ロッド本体22をプランジャ95から離れる方向に移動させたときに、ゴム部材25がプランジャ95に取り残されることを防ぐことができる。
【0033】
駆動機構31は、ロッド21を、第1アーム11に保持されたシリンジ91の軸線が延びる方向に移動させる装置である。換言すれば、駆動機構31は、ロッド21を移動させる駆動装置である。駆動機構31は、本実施の形態では、エアシリンダが用いられている。駆動機構31は、中空円筒状のシリンダ32の中に、円板状のピストン33が収容されている。円板状のピストン33は、一方の面に、ピストンロッド34が取り付けられている。ピストンロッド34は、シリンダ32の軸線方向に延びており、シリンダ32の一端面を貫通してシリンダ32の外側に突出している。シリンダ32の内壁に接するピストン33の外周と、シリンダ32の端面のピストンロッド34が貫通する部分には、それぞれパッキン(不図示)が装着されていて、シリンダ32の内部のピストン33の両側の空間が気密になっている。ピストンロッド34は、シリンダ32の外側にある端部において、ゴム部材25が取り付けられた側とは反対側のロッド本体22の端部に接続されている。ピストンロッド34とロッド本体22とは、それぞれの軸線がつながるようにして接続されている。また、駆動機構31は、電磁弁35を有している。
【0034】
電磁弁35は、空気源(不図示)から供給された空気を、ヘッド側チューブ36に供給するのとロッド側チューブ38に供給するのとを切り替えると共に、シリンダ32内の空気の排出を調節することができるように構成されている。ヘッド側チューブ36は、シリンダ32のヘッド側ポート37に接続されている。ロッド側チューブ38は、シリンダ32のロッド側ポート39に接続されている。ヘッド側ポート37は、ピストン33がカートリッジ90から最も離れたときのピストン33の位置よりもピストンロッド34とは反対側のシリンダ32に形成されている。ロッド側ポート39は、ピストン33がカートリッジ90に最も近づいたときのピストン33の位置よりもピストンロッド34側のシリンダ32に形成されている。駆動機構31は、電磁弁35を操作して、ヘッド側ポート37からシリンダ32内に空気を供給すると共にロッド側ポート39からシリンダ32の空気を排出することで、ピストン33を介してロッド21をカートリッジ90の側に押圧することができる。また、駆動機構31は、電磁弁35を操作して、ロッド側ポート39からシリンダ32内に空気を供給すると共にヘッド側ポート37からシリンダ32の空気を排出することで、ピストン33を介してロッド21をカートリッジ90から引き出すことができる。電磁弁35の操作は、典型的には制御装置60が行う。
【0035】
再び図1に戻って、吐出装置1の説明を続ける。なお、以下の説明において、押圧機20の構成に言及しているときは、適宜図3を参照することとする。上述のように構成された押圧機20は、上述のように、カートリッジ90が第1アーム11に保持されたときに、シリンジ91の軸線の仮想延長線に、ロッド本体22の軸線が一致するように、第1アーム11に取り付けられている。換言すれば、カートリッジ90を保持する収納ケース(不図示)は、ロッド本体22の軸線の仮想延長線上にシリンジ91の軸線が来る位置で、カートリッジ90を保持するように構成されている。そして、制御装置60は、アーム10を適宜動かしながら、適切なタイミングで駆動機構31を作動させてロッド21をカートリッジ90に押圧することにより、カートリッジ90から適切に樹脂99を吐出することができる。
【0036】
受台51は、樹脂99が塗布されるワークWを受けるものである。ワークWは、樹脂99が塗布される対象物であり、塗布対象物の一形態である。受台51は、典型的にはワークWが載置される載置台であり、載置されたワークWを固定する固定手段(不図示)を有することが好ましい。固定手段の例として、ワークWを押さえる爪片を設けることとしてもよく、ワークWを真空吸着できるように受台51に吸引孔を適宜設けることとしてもよい。受台51自体は、本実施の形態では、固定されて動かないようになっている。
【0037】
引き続き図4を参照して、ワークWに樹脂99が塗布された樹脂塗布済ワークを製造する方法を説明する。ここで説明する樹脂塗布済ワークの製造は、上述の吐出装置1を用いて行われる。以下の樹脂塗布済ワークの製法の説明は、吐出装置1の作用の説明を兼ねる。以下の説明において、吐出装置1及びカートリッジ90の構成に言及しているときは、適宜図1図3を参照することとする。
【0038】
樹脂塗布済ワークの製造にあたり、まず、樹脂99が充填されたカートリッジ90を、吐出装置1の第1アーム11に装着する(S1)。このとき、吐出ニードル92が受台51の方を向き、シリンジ91の軸線とロッド本体22の軸線とが同一の仮想直線上に乗るようにして、カートリッジ90を第1アーム11に装着する。次に、樹脂99を塗布する対象のワークWを、受台51に配置する(S2)。受台51に固定手段(不図示)が設けられている場合は、受台51にワークWを載置した後、固定手段(不図示)によってワークWを受台51に対して動かないように固定する。なお、図4では、説明の便宜上、カートリッジ90を第1アーム11に装着(S1)した後に、ワークWを受台51に配置する(S2)こととしているが、順番を逆にして、ワークWを受台51に配置した後に、カートリッジ90を第1アーム11に装着してもよい。しかしながら、カートリッジ90を装着する際にワークWに何かが接触することを防ぐ観点から、図4に示すように、カートリッジ90を第1アーム11に装着(S1)した後に、ワークWを受台51に配置する(S2)ことが好ましい。
【0039】
カートリッジ90をアーム10に装着して、ワークWを受台51に配置したら、カートリッジ90内の樹脂99をワークWに塗布する(S3)。このとき、制御装置60は、まず、第2アーム12及び第3アーム13を適宜動かし、樹脂99を塗布すべきワークWの位置の上方に吐出ニードル92が位置するようにカートリッジ90を移動さる。その後、制御装置60は、第1アーム11を動かして、吐出ニードル92をワークWに接近させる。このとき、吐出ニードル92の先端とワークWの表面との距離は、塗布される樹脂99の厚さよりもわずかに大きくするとよい。なお、第2アーム12及び第3アーム13を動かしながら、第1アーム11を動かしてもよい。カートリッジ90を上述の位置に移動させたら、制御装置60は、駆動機構31を作動させ、ロッド21をカートリッジ90に向けて移動させる。ロッド21をこのように移動させると、プランジャ95がロッド21に押されて吐出ニードル92の方に移動し、シリンジ91内に充填されている樹脂99が圧縮されて、樹脂99が吐出ニードル92から出ようとする。本実施の形態では、シリンジ91に充填されている樹脂99が比較的高粘度なので、吐出ニードル92から樹脂99を吐出させるために、比較的大きな力でプランジャ95を押すこととなる。本実施の形態では、ロッド本体22の先端にゴム部材25が設けられているので、ロッド21でプランジャ95を押圧したときに、ゴム部材25の先端のテーパー部26の一部がプランジャ95の窪み97に入り込んでプランジャ95を押圧する。プランジャ95に接するゴム部材25は、適切な硬さの材料で適切な形状に形成されているので、ロッド本体22の押圧力を吸収しつつ、適切な押圧力をプランジャ95に与えることができる。このため、ゴム部材25が設けられていない場合に生じ得る、ロッド本体22の押圧力でプランジャ95を破損してしまうという不都合の発生を抑制することができる。また、ゴム部材25がプランジャ95を押圧する際、ゴム部材25は、ロッド本体22によって軸線方向に圧縮されたときの弾性変形により、径方向に伸びる。このゴム部材25の軸線方向の圧縮に伴う横ひずみにより、プランジャ95の窪み97の外側の外周部分が、径方向に広がって、シリンジ91の内壁に押し付けられることとなる。このため、シリンジ91とプランジャ95との密着度が増加し、シリンジ91とプランジャ95との間からの樹脂99の漏洩を抑制することができる。
【0040】
吐出装置1は、上述のように押圧機20でプランジャ95を押圧してカートリッジ90から樹脂99を吐出しながら、必要に応じてアーム10を動かし、ワークWの必要箇所に樹脂99を塗布する。ワークWへの樹脂99の塗布が完了したら、制御装置60は、カートリッジ90が受台51の上方から退避した位置(典型的には待機時に位置する基準位置)に来るようにアーム10を動かして、樹脂99が塗布されたワークW(樹脂塗布済ワーク)を受台51から取り出す(S4)。このとき、固定手段(不図示)によってワークWを受台51に固定していたときは、固定手段(不図示)を外してからワークWを取り出す。以上で、1つの樹脂塗布済ワークの製造が終了する。1つの樹脂塗布済ワークの製造が終了したら、次に樹脂99を塗布するワークWがあるか否かを判断する(S5)。次のワークWがある場合、ワークWを受台51に配置する工程(S2)に戻り、以降、上述のフローを繰り返す。次のワークWがない場合、樹脂塗布済ワークの製造を終了する。なお、樹脂塗布済ワークの複数個を連続的に製造している途中で、カートリッジ90内の樹脂99が無くなった場合は、シリンジ91に樹脂99が充填されている新しいカートリッジ90に交換すればよい。このとき、使用済みのカートリッジ90に入り込んでいるロッド21を、駆動機構31によってカートリッジ90から離れる方向に移動させた後、新しいカートリッジ90に交換すればよい。本実施の形態では、ゴム部材25が固定部材28によってロッド本体22に固定されているので、使用済みのカートリッジ90に入り込んでいるロッド21をカートリッジ90から離れる方向に移動させたときに、ゴム部材25もプランジャ95から離れる。したがって、ゴム部材25がシリンジ91内に残存することを防ぐことができる。
【0041】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吐出装置1によれば、ロッド本体22の先端にゴム部材25が設けられており、ゴム部材25が適切な硬さの材料で適切な形状に形成されている。このため、シリンジ91から樹脂99を吐出させる際にプランジャ95が破損してしまうことを抑制することができ、シリンジ91とプランジャ95との間から樹脂99が漏洩することを抑制することができる。また、ゴム部材25が固定部材28によってロッド本体22に固定されているので、ロッド21をカートリッジ90から引き出すときに、ゴム部材25がロッド本体22から離脱することを防ぐことができる。
【0042】
以上の説明では、駆動機構31が複動式のエアシリンダであるとしたが、単動式のエアシリンダでもよく、あるいは、エアシリンダに代えて、油圧等を含む流体圧シリンダとしてもよく、電動でロッド21を動かすものでもよい。
【0043】
以上の説明では、受台51が固定されていてアーム10が動くことで樹脂99が任意の位置に吐出されることとしたが、アーム10を固定して受台51が三次元に移動することができることとしてもよい。あるいは、アーム10及び受台51の双方が移動することができるように構成されていてもよい。このとき、アーム10及び受台51が協働して三次元に移動することができれば、アーム10及び/又は受台51の移動が、一次元又は二次元に制限されていてもよい。
【0044】
以上の説明では、吐出装置1は、外部から提供されたカートリッジ90が装着されて利用されることとしたが、吐出装置1がカートリッジ90を構成要素として含み、樹脂99を補充しながら利用することとしてもよい。
【0045】
以上の説明では、本開示の実施の形態に係る樹脂吐出装置及び樹脂塗布済部材の製造方法を、一例として図1図4を用いて説明したが、各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
1 吐出装置
10 アーム(支持具)
20 押圧機
21 ロッド
22 ロッド本体
25 ゴム部材
28 固定部材
31 駆動機構
51 受台
90 カートリッジ
91 シリンジ
92 吐出ニードル
95 プランジャ
97 窪み
99 樹脂
W ワーク(塗布対象物)
【要約】
【課題】プランジャの破損を抑制する樹脂吐出装置及び樹脂塗布済対象物の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂吐出装置は、シリンジ91とプランジャ95とを有するカートリッジ90のシリンジ91を支持する支持具と、支持具に支持されたシリンジ91の内部のプランジャ95を押圧する押圧機20とを備える。押圧機20は、プランジャ95に接触してシリンジ91の軸線方向に移動可能なロッド21と、ロッド21を軸線方向に移動させる駆動機構31とを有する。ロッド21は、駆動機構31に接続されたロッド本体22と、ロッド本体22の先端に設けられてプランジャ95に接触するゴム部材25とを有する。樹脂塗布済対象物の製造方法は、上記の樹脂吐出装置を用いて、樹脂が塗布される塗布対象物を受台に配置し、配置された塗布対象物に樹脂を塗布し、樹脂が塗布された塗布対象物を受台から取り出す。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4