(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】凸形プラテン表面を有する注入ポンプ機器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
A61M5/142 502
(21)【出願番号】P 2022503782
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 US2020047166
(87)【国際公開番号】W WO2021096578
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-07
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502300657
【氏名又は名称】ゼヴェクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】エイザパジック,アズール
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ケント・エフ
(72)【発明者】
【氏名】スタンフィールド,ジェイ・ライアン
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201461339(CN,U)
【文献】特表平05-507007(JP,A)
【文献】特開平11-148460(JP,A)
【文献】特表2010-509525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を患者に送達するための、ポンプと共に使用されるカセットであって、
単一の凸部を有する凸形プラテン表面を含むカセット本体と、
前記カセット本体にマウントされて液体の流れを輸送する、弾力的に変形可能な
管セグメントであって、前記管セグメントの少なくとも一部が、前記凸形プラテン表面によって決定される非線形経路に沿って、前記凸形プラテン表面に隣接して延在する、弾力的に変形可能な
管セグメントと
を備え
、
前記ポンプは、蠕動圧送機構を備え、
前記圧送機構が、複数の圧送指部と、前記複数の圧送指部にそれぞれ関連付けられた複数のカムとを含み、
前記複数のカムが、1対の端部カムと、前記1対の端部カムの間の少なくとも1つの中間カムとを含み、
前記凸部は、上流側の前記端部カムに関連付けられた圧送指部と対向するように構成された上流表面領域と、下流側の前記端部カムに関連付けられた圧送指部と対向するように構成された下流表面領域と、前記上流表面領域と前記下流表面領域との間の中間表面領域とを含む、カセット。
【請求項2】
前記凸形プラテン表面が台形のプロファイルを有し
、前記管セグメントが前記凸形プラテン表面の前記台形のプロファイルに沿う、請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記上流表面領域および前記下流表面領域が前記中間表面領域について対称である、請求項2に記載のカセット。
【請求項4】
前記上流表面領域が、前記管セグメントの軸方向において前記中間表面領域より長い、請求項2に記載のカセット。
【請求項5】
前記下流表面領域が、前記管セグメントの軸方向において前記中間表面領域より長い、請求項2に記載のカセット。
【請求項6】
前記凸形プラテン表面が湾曲したプロファイルを有する、請求項1に記載のカセット。
【請求項7】
前記凸形プラテン表面が、傾斜した線形プロファイルをそれぞれ有する
前記上流表面領域および
前記下流表面領域と、前記上流表面領域および前記下流表面領域を連結し、湾曲したプロファイルを有する
前記中間表面領域とによって画定されるハイブリッドプロファイルを有する、請求項1に記載のカセット。
【請求項8】
液体を患者に送達するための機器であって、
液体の流れを輸送するための、弾力的に変形可能な
管セグメントと、
単一の凸部を有する凸形プラテン表面と、
前記凸形プラテン表面に対向する蠕動圧送機構と
を備え、
前記管セグメントの少なくとも一部が、前記凸形プラテン表面によって決定される非線形経路に沿って、前記凸形プラテン表面に隣接して延在し、前記圧送機構によって係合されるように前記凸形プラテン表面と前記圧送機構との間に配置され
、
前記圧送機構が、複数の圧送指部と、前記複数の圧送指部にそれぞれ関連付けられた複数のカムとを含み、
前記複数のカムが、1対の端部カムと、前記1対の端部カムの間の少なくとも1つの中間カムとを含み、
前記凸部は、上流側の前記端部カムと対向するように構成された上流表面領域と、下流側の前記端部カムと対向するように構成された下流表面領域と、前記上流表面領域と前記下流表面領域との間の中間表面領域とを含む、機器。
【請求項9】
前記凸形プラテン表面が台形のプロファイルを有し
、前記管セグメントが、前記凸形プラテン表面の前記台形のプロファイルに沿う、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記上流表面領域および前記下流表面領域が前記中間表面領域について対称である、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記上流表面領域が、前記管セグメントの軸方向において前記中間表面領域より長い、請求項9に記載の機器。
【請求項12】
前記下流表面領域が、前記管セグメントの軸方向において前記中間表面領域より長い、請求項9に記載の機器。
【請求項13】
前記凸形プラテン表面が湾曲したプロファイルを有する、請求項8に記載の機器。
【請求項14】
前記凸形プラテン表面が、傾斜した線形プロファイルをそれぞれ有する
前記上流表面領域および
前記下流表面領域と、前記上流表面領域および前記下流表面領域を連結し、湾曲したプロファイルを有する
前記中間表面領域とによって画定されるハイブリッドプロファイルを有する、請求項8に記載の
機器。
【請求項15】
前記圧送機構および前記凸形プラテン表面が注入ポンプの構造的構成要素である、請求項8に記載の機器。
【請求項16】
前記圧送機構が注入ポンプの構造的構成要素であり、前記凸形プラテン表面が前記注入ポンプに装填可能なカセットの構造的構成要素である、請求項8に記載の機器。
【請求項17】
前記管セグメントが前記カセットの構造的構成要素である、請求項16に記載の機器。
【請求項18】
前記
複数の圧送指部が、複数の平行な圧送指
部を含み、前記複数のカムが、カム軸を中心に回転するように駆動シャフトに連結されて、前記複数の平行な圧送指部を前記管セグメントに係合するよう周期的に駆動させ
、前記1対の端部カムのうちの少なくとも一方が、それぞれの中間カムのカムストロークよりも大きいカムストロークを有する、請求項8に記載の機器。
【請求項19】
前記1対の端部カムのそれぞれが、それぞれの中間カムのカムストロークよりも大きいカムストロークを有する、請求項18に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は2019年11月14日出願の米国特許出願第16/683,735号の優先権を主張し、その開示全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本発明は、蠕動注入ポンプ、およびそこに取外し可能に装填可能なカセットに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]プログラム可能注入ポンプが、経腸栄養向けの流動食および疼痛管理などの種々の目的のための液体薬剤の制御された送達を行うために使用されている。一般的な装置では、注入ポンプが、可撓性の管を備える使い捨ての投与セットを受け、その可撓性の管を通して注入液体が圧送される。投与セット管の一セグメントは弾力的に変形可能でもよく、注入ポンプの蠕動圧送機構によって係合されるように設計される。圧送機構は、変形可能な管セグメントに沿って配置される一連の圧送指部を含むことができる。圧送指部は周期的に駆動されて、圧送方向において管に液体を流れさせるように蠕動式に管セグメントに作用することができる。管セグメントの圧送機構から反対側の面にはプラテン表面が提供されて、圧送セグメントが圧送指部によって順次係合されている間、管セグメントを支える。プラテン表面は、ポンプの一部、たとえば投与セットがポンプに装填されたときに管セグメントを覆って閉じる扉の内側表面でもよい。別法として、投与セットは、ポンプに装填可能であり管セグメントがそこを通って延在するカセットを含んでもよく、プラテン表面はカセットの一部でもよい。
【0004】
[0004]プログラム可能注入ポンプでは、容積的な確度および患者への液体流の連続性を得るために、液体流の線形性(すなわち一定流量)が非常に重要である。蠕動圧送機構は流れの線形性および連続性に関して固有の欠点を有するが、これは圧送サイクルが流れのない領域およびバックサクション領域を有するからであり、これらは管セグメント内の液体の押しのけ容積から上流の管セグメントの局所的に変形させられた部分が、その非変形状態へと弾力的に戻ることが可能になるときに発生する。これは通常は圧送サイクルの約30%であり、すなわち30%の時間は流れがない。
【0005】
[0005]たとえば米国特許第6,267,559号に開示されているような線形蠕動注入ポンプが知られている。圧送指部はまっすぐな管セグメントに沿って互いに平行に配置されており、概して正弦曲線状に、各カムまたは作動装置によって独立して駆動させることができる。線形蠕動ポンプでは、圧送サイクルの流れのない領域およびバックサクション領域を軽減するために独立して作動される補償指部を提供することにより、流れの線形性を改善するための努力がなされてきた。
【0006】
[0006]曲線蠕動注入ポンプが米国特許第6,164,921号から知られている。このポンプは単一の回転可能カムを有し、単一の回転可能カムは、カムが回転すると複数の圧送指部を概して半径方向に周期的に駆動させるように構成される。投与セットの管セグメントは、半径方向の圧送指部とポンプのヒンジ式の扉に設けられた凹形プラテン表面との間の湾曲した経路に沿って配置される。湾曲したプラテン表面を用いると、同じ圧送機構長さに対して管セグメントをより長くすることが可能になり、それにより、それぞれの圧送指部ストロークがより大きい体積の液体を圧送するので、このタイプのポンプにより、線形蠕動ポンプに比べて圧送効率が改善される。しかし、曲線蠕動ポンプでは、圧送指部は単一のカムによって半径方向に作動され、したがって独立して制御され得ないので、独立して作動される補償指部を実施することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本開示には、線形蠕動圧送機構に対向して凸形プラテン表面を有する蠕動注入ポンプシステムが記載されている。凸形プラテン表面は、注入ポンプに取外し可能に装填可能な投与セットのカセットの一部でもよい。別法として、凸形プラテン表面はポンプ自体のフィーチャでもよい。本開示によれば、独立して制御される補償指部を有し得ることを断念することなく圧送効率が改善される。
【0008】
[0008]一実施形態によれば、液体を患者に送達するための、ポンプと共に使用されるカセットが、凸形プラテン表面を含むカセット本体と、カセット本体にマウントされて液体の流れを輸送する、弾力的に変形可能な管のセグメントとを備え、管セグメントの少なくとも一部は、凸形プラテン表面によって決定される非線形経路に沿って、凸形プラテン表面に隣接して延在する。凸形プラテン表面は台形のプロファイルを有することができ、上流表面領域、下流表面領域、および上流表面領域と下流表面領域との間の中間表面領域を含むことができ、管セグメントは、凸形プラテン表面の台形のプロファイルに沿う。凸形プラテン表面は湾曲したプロファイルを有してもよい。凸形プラテン表面は、傾斜した線形プロファイルをそれぞれ有する上流表面領域および下流表面領域と、上流表面領域および下流表面領域を連結し、湾曲したプロファイルを有する中間表面領域とによって画定されるハイブリッドプロファイルを有してもよい。
【0009】
[0009]別の実施形態によれば、注入ポンプは、投与セット管を覆って閉じるためのヒンジ式の扉を含み、凸形プラテン表面がポンプ扉の下側に設けられる。凸形プラテン表面は、上に概要を示した種々の凸形プロファイルのうちのいずれかを有することができる。
【0010】
[0010]次に、添付図面と共に解釈される以下の詳細な説明において、本発明の特質および動作モードをより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[0011]本開示の一実施形態に従って形成された注入ポンプおよび投与セットの一部を示す分解斜視図である。
【
図2】[0012]ポンプの内部の構成要素を見せるためにポンプのハウジングが取り外された状態の、
図1に示した注入ポンプの図である。
【
図3】[0013]
図3Aは
図1に示した投与セットのカセットの平面図であり、カセットのピンチアームがその閉位置で示されている。[0014]
図3Bは
図3Aに示したカセットの底面図である。
【
図4】[0015]
図4Aはカセットの別の平面図であり、カセットのピンチアームはその開位置で示されている。[0016]
図4Bは
図4Aに示したカセットの底面図である。
【
図5】[0017]ポンプの扉を閉じる前に注入ポンプに装填されたカセットを示す斜視図である。
【
図6】[0018]概ね
図4Aの線VI-VIに沿って取られた、カセットの断面図である。
【
図7】[0019]カセットの凸形プラテン表面および管セグメントと共に圧送機構を示す概略図である。
【
図8】[0020]本開示の代替実施形態による、カセットプラテン表面の別の考えられる構成を示す断面図である。
【
図9】[0021]本開示の別の代替実施形態による、カセットプラテン表面のさらに別の考えられる構成を示す、
図8に類似した図である。
【
図10】[0022]本開示の別の実施形態による、凸形プラテン表面を有する注入ポンプの部分断面正面図である。
【
図11】[0023]本開示の一実施形態による圧送機構のカムシャフトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0024]
図1には、注入ポンプ10と、注入ポンプ10によって取外し可能に受けられるように設計された使い捨ての投与セット30の一部とが示してある。
図2において理解されるように、注入ポンプ10は電気モータ14を有する圧送機構12を含み、この電気モータ14は駆動歯車15に連結させられており、この駆動歯車15は、カムシャフト18に固定された被動歯車16に噛み合わされている。複数の偏心カム20が、カムシャフトと共に回転するようにカムシャフト18にマウントされており、それぞれのカム20は各圧送指部22に係合するように構成されている。理解され得るように、モータ14は、カムシャフト18の軸を中心にカムシャフト18およびカム20を回転させるように動作可能であり、それにより、圧送指部22のそれぞれは、カムシャフト18から離れるように、またカムシャフト18に向かうように往復運動式で半径方向に運動する。偏心カム20は、圧送指部22が運動すると圧送機構12の長手方向に沿って、すなわちカムシャフト18の軸に平行な方向において周期的な蠕動圧送動作が行われるように構成され得る。
図7および
図11では、カム20は1対の端部カム20A、20Cと1対の端部カム20A、20Cの間に位置付けられた中間カム20Bとを区別するようにラベル付けされている。
【0013】
[0025]
図1に示してあるように、投与セット30は、注入液体を輸送するための管32と、注入ポンプ10に装填可能なカセット34とを備える。カセット34は
図3A、
図3B、
図4A、および
図4Bにも示されている。管32は弾力的に変形可能な管セグメント32Bを含むことができ、弾力的に変形可能な管セグメント32Bは、カセット34の一部として設けることができ、カセット34がポンプに装填されたときに注入ポンプ10の圧送機構12によって動作可能に係合されるものである。管32は、注入液体の供給源(図示せず)から来て管セグメント32Bの流入端部に連結される上流管32Aと、管セグメント32Bの流出端部に連結され、患者(図示せず)へと通じる下流管32Cとを追加的に含むことができる。管セグメント32Bは上流管32Aおよび下流管32Cとは異なる材料で製作されてもよく、管セグメント32Bの材料は、圧送機構12によって係合されたときに所望の弾性および流量パラメータを有するように選択される。たとえば、管セグメント32Bは軟質PVCまたはシリコーンで製作されてもよく、管32A、32Cは標準的なPVCの投与セット管でもよい。
【0014】
[0026]管セグメント32Bに加えて、カセット34は一体構造であり得るカセット本体36を備える。本明細書において、用語「一体構造の」は、単一の同質部品として成形された、または単一の同質部品として付加製造されたことを意味する。カセット本体36は、一体構造のプラスチック部品として、成形されてもよく、たとえば3次元プリンティングによって付加製造されてもよい。非限定的な一例として、カセット本体36はポリカーボネートまたはTRITAN(商標)ブランドのプラスチックから成形されてもよい。
【0015】
[0027]カセット本体36は、一体構造のカセット本体の一部として一体に形成された自由流動防止装置37を備えることができる。図示されている実施形態では、自由流動防止装置37は、固定ピンチ要素38と、可動ピンチ要素42を有するピンチアーム40とを含む。ピンチアーム40は、普通は
図3Aおよび
図3Bに示してある閉位置に存在し、閉位置では、可動ピンチ要素42は、管セグメントを通る液体の流れを止めるように、固定ピンチ要素38と協働して管セグメント32Bを変形させる。ピンチアーム40は閉位置から離れて
図4Aおよび
図4Bに示されている開位置へと弾力的に曲がることができ、開位置では、可動ピンチ要素42は、固定ピンチ要素38に対し、管セグメント32Bを通る液体の流れが可能になるように位置決めされ、ピンチアーム40が閉位置から離れるように曲がると、ピンチアームは閉位置に向かってばね付勢される。自由流動防止装置37および注入ポンプ10は、カセット34が注入ポンプ10に適切に装填されたときにピンチアーム40が閉位置から開位置へと曲げられるよう、互いに協働するように構成され得る。たとえば、ポンプ10はカセット34を取外し可能に受けるように構成されたカセットインターフェース60(
図1)と、扉62とを含むことができ、扉62は、
図5に示された装填位置と、扉が閉じられ、カセットを覆う圧送位置との間で、カセットインターフェース60に対して動くことができる。図示されている実施形態では、カセット34は、カセット34の管セグメント32Bが圧送機構12に向き、圧送機構によって動作可能に係合され得るよう、
図5に示すようにカセットインターフェース60に配置され、扉62は、扉62のカム表面64がピンチアーム40に係合し、ピンチアームをその閉位置(
図3Aおよび
図3B)からその開位置(
図4Aおよび
図4B)へと曲げるようにカセット34を覆って閉じられ、それにより、管セグメント32Bを通る流れが可能になる。
【0016】
[0028]カセット本体36は、圧送機構12とは反対側の管セグメント32Bの面を安定化させるためのプラテン表面44を含み、したがって、圧送指部22がプラテン表面44に向かって変位すると、管セグメント32Bは弾力的に変形して、蠕動的に管セグメントに液体を流す。管セグメント32Bの少なくとも一部は、凸形プラテン表面によって決定される非線形経路に沿って、凸形プラテン表面44に隣接して延在する。カセット本体36は、プラテン表面44に隣接して管セグメント32Bを保持するための少なくとも1つの把持具50を含むことができる。たとえば、第1の把持具および第2の把持具50が、プラテン表面44の両端部の近くにそれぞれ配置されてもよい。
【0017】
[0029]
図6および
図7において最もよく理解されるように、プラテン表面44は管セグメント32Bに向かって凸形である。たとえば、図示されている実施形態では、プラテン表面44は台形のプロファイルを有することができ、傾斜した上流表面領域44A、傾斜した下流表面領域44C、および上流表面領域44Aと下流表面領域44Cとの間に延在する平坦な中間表面領域44Bを含むことができ、管セグメント32Bは凸形プラテン表面44の台形のプロファイルに沿う。プラテン表面44の台形のプロファイルは等脚台形のプロファイルとして構成されてもよく、すなわち上流表面領域44Aおよび下流表面領域44Cは中間表面領域44Bについて対称になり得る。上流表面領域44Aは管セグメント32Bの軸方向において中間表面領域44Bより長くてもよい。同様に、下流表面領域44Cは管セグメント32Bの軸方向において中間表面領域44Bより長くてもよい。図示されている実施形態では、上流表面領域44Aおよび下流表面領域44Cは、台形のプロファイルにおいて中間表面領域44Bと共に約188°の各優角を形成する。しかし、プラテン表面44は隣接する表面領域同士の間の他の優角値で構成されてもよく、上流表面領域44Aと中間表面領域44Bとの間に形成される優角は、中間表面領域44Bと下流表面領域44Cとの間に形成される優角と等しい必要はない。
【0018】
[0030]
図8には、本開示の代替実施形態による、凸形に湾曲したプロファイルを有するカセットプラテン表面144を含むカセット134が示してある。湾曲したプラテン表面144は一定の曲率半径によって画定された円弧形状のプロファイルを有してもよく、または湾曲したプラテン表面144は様々な曲率半径によって画定された複数の湾曲部分を含む混合湾曲プロファイルを有してもよい。
【0019】
[0031]
図9には、本開示の別の実施形態による、ハイブリッド凸形構成を有するカセットプラテン表面244を含むカセット234が示してある。凸形プラテン表面244は、傾斜した線形プロファイルをそれぞれ有する上流表面領域244Aおよび下流表面領域244C、ならびに湾曲したプロファイルを有する中間表面領域244Bを含むことができる。理解され得るように、中間表面領域244Bは上流表面領域244Aと下流表面領域244Cとの間に延在し、それらを連結する。
図6および
図7を参照して上に述べた台形のプロファイルと同様に、上流表面領域244Aおよび下流表面領域244Cのプロファイルは、中間表面領域244Bについて対称でもよい。上流表面領域244Aは管セグメント32Bの軸方向において中間表面領域244Bより長くてもよい。同様に、下流表面領域244Cは管セグメント32Bの軸方向において中間表面領域244Bより長くてもよい。
【0020】
[0032]上述の実施形態では、凸形プラテン表面44、144、および244は、使い捨ての投与セットの一部として提供されるカセットの一部として形成される。
図10には本開示の別の実施形態が示してあり、凸形プラテン表面344が注入ポンプ310の一部として提供されている。
【0021】
[0033]注入ポンプ310は、蠕動圧送機構を含むという点で上述の注入ポンプ10に類似し得る。注入ポンプ310は、ポンプ310の圧送機構と動作可能に係合するように投与セット330の管を受け、位置付けるように構成される。投与セット330は、圧送機構の作用を受ける管セグメント332Bと、注入液体の供給源(図示せず)から来てフランジ付きコネクタ335によって管セグメント332Bの流入端部に連結される上流管332Aと、別のフランジ付きコネクタ335によって管セグメント332Bの流出端部に連結され、患者(図示せず)へと通じる下流管332Cとを有するとして示されている。管セグメント332Bは上流管332Aおよび下流管332Cとは異なる材料で製作されてもよく、管セグメント332Bの材料は、ポンプ310の圧送機構によって係合されたときに所望の弾性および流量パラメータを有するように選択される。たとえば、管セグメント332Bは軟質PVCまたはシリコーンで製作されてもよく、管332A、332Cは標準的なPVCの投与セット管でもよい。
【0022】
[0034]ポンプ310は、投与セット330を取外し可能に受けるように構成された管インターフェース360を含むことができる。たとえば、ポンプインターフェース360は、フランジ付きコネクタ335を受ける凹部を含んで、ポンプ310の圧送機構の上に管セグメント332Bを位置付けることができる。扉362はポンプインターフェース360および投与セット330の装填された部分を覆って閉じるように、ポンプ310の本体311にヒンジ留めされ得る。
図10では、ヒンジ式の扉362は、扉362の下側に設けられ得るプラテン表面344のプロファイルを見せるために切り取られている。凸形プラテン表面344のプロファイルは上述の凸形プラテン表面44、凸形プラテン表面144、または凸形プラテン表面244のプロファイルに類似していてもよい。
【0023】
[0035]
図7および
図11から最もよく理解されるように、本開示による凸形プラテン表面の使用は、圧送機構12の新規な構成を伴う場合がある。上述のように、圧送機構12は、平行な圧送指部22と、平行な圧送指部22にそれぞれ関連付けられたカム20とを含み、カムは、駆動シャフト18の回転軸によって画定されるカム軸を中心に回転するように駆動シャフト18に連結されて、圧送指部22を管セグメントに係合するよう周期的に駆動させる(この係合は、圧送指部22の端部の最上部に配置された可撓性の流体封止部により間接的でもよい)。複数のカム20は、1対の端部カム20A、20Cと、1対の端部カム20A、20Cの間の少なくとも1つの中間カム20Bとを含むことができ、1対の端部カム20A、20Cのそれぞれは、それぞれの中間カム20Bのカムストロークよりも大きいカムストロークを有する。本明細書の文脈では、「カムストローク」は、カムが回転することにより、カム20によって関連付けられた圧送指部22にもたらされた、管セグメント32Bまたは332Bに向かう方向における線形総変位量を指す。たとえば、カム20がカムの幾何中心からある偏心距離だけ間隔を空けられた回転偏心軸を有する円形カムである場合、カムストロークはその偏心距離の2倍になる。それぞれのカム20に対応するカムストロークは、凸形プラテン表面44、144、244、344の特定のプロファイル、およびプラテン表面プロファイルに沿ったカムの位置に合うように設計され得る。
【0024】
[0036]凸形プラテン表面を用いると、同じ圧送機構長さに対して管セグメントをより長くすることが可能になり、それによってそれぞれの圧送指部ストロークがより大きい体積の液体を圧送するので、本開示に記載した改善により、線形蠕動ポンプに比べて圧送効率が向上する。さらに、端部カム20Aおよび20Cの一方または両方は、圧送サイクルの流れのない領域およびバックサクション領域を軽減するために、中間カム20Bとは独立して構成されて、関連付けられたその各圧送指部22を補償指部の方式で作動させることができる。
【0025】
[0037]本開示には例示的な実施形態が記載されているが、詳細な説明は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲を、記載された特定の実施形態に限定するものではない。特許請求の範囲は、特許請求の範囲に記載の範囲に含まれ得る、記載された実施形態の代替形態、修正形態および均等物を対象として含むものである。