(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】有線ローカルエリアネットワークのための信号対ノイズ比及びビット誤り率推定並びに関連システム、デバイス、及び方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20230929BHJP
H04B 3/46 20150101ALI20230929BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
H04L1/00 C
H04B3/46
H04L25/03 E
(21)【出願番号】P 2022510902
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 US2020070364
(87)【国際公開番号】W WO2021042107
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】201910784063.3
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397050741
【氏名又は名称】マイクロチップ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROCHIP TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジアチ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ディクソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ケビン
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0045564(US,A1)
【文献】特開2007-306128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0069199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04B 3/46
H04L 25/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理層デバイスであって、
信号をスレッショルドと比較するように構成されたコンパレータであって、前記信号は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体から受信される、コンパレータと、
信号品質インジケータ(SQI)回路であって、
複数の異なる期間中に、複数の異なるスレッショルドに対応する前記コンパレータの出力のビット誤り率を取得する
ために、前記スレッショルドを調整することであって、前記複数の異なるスレッショルドは前記複数の異なる期間に対応する、調整することと、 前記複数の異なるスレッショルドのための前記ビット誤り率に基づいて前記信号の信号対ノイズ比(SNR)を決定することと、を行うように構成されている、SQI回路と、を含む、物理層デバイス。
【請求項2】
前記SQI回路は、
前記スレッショルドを第1の値に調整し、第1の期間中の前記コンパレータの前記出力の第1のビット誤り率を取得することと、
前記スレッショルドを第2の値に調整し、第2の期間中の前記コンパレータの前記出力の第2のビット誤り率を取得することと、
前記第1のビット誤り率及び前記第2のビット誤り率に基づいて前記信号の前記SNRを決定することと、を行うように構成されている、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項3】
前記共有伝送媒体から受信された前記信号を処理するように構成された受信回路を更に含む、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項4】
前記受信回路は、前記信号を中間スレッショルドレベルと比較するように構成された受信コンパレータを含み、前記中間スレッショルドレベルは、前記信号の論理レベル高と論理レベル低との間の中間である、請求項
3に記載の物理層デバイス。
【請求項5】
前記SQI回路は、前記信号の前記SNRに基づいて前記信号のビット誤り率(BER)を決定するように更に構成されている、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項6】
変換データが記憶されているデータ記憶デバイスを更に含み、前記変換データは、複数のSNR値と、前記複数のSNR値に対応する複数のBER値と、を含み、前記SQI回路は、前記複数のSNR値から、前記信号の前記決定されたSNRに最も近い、前記SNR値のうちの1つを特定することによって前記信号の前記BERを決定し、前記複数のBER値からの対応するBERを前記信号の前記BERとして選択するように構成されている、請求項
5に記載の物理層デバイス。
【請求項7】
変換データが記憶されているデータ記憶デバイスを更に含み、前記変換データは、複数のSNR値と、前記複数のSNR値に対応する複数の対のビット誤り率(BER)値と、を含み、前記SQI回路は、第1のビット誤り率及び第2のビット誤り率に最も近いBER対に対応する、前記複数のSNR値のうちの1つを選択することによって前記信号の前記SNRを決定するように構成されている、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項8】
前記物理層デバイスは、前記信号の前記SNRを含むSQI情報を、前記共有伝送媒体を介して前記有線ローカルエリアネットワークに報告するように構成されている、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項9】
前記SQI回路は、搬送波感知多重アクセス/衝突検出(CSMA/CD)モード又は物理層衝突回避モードのうちの1つで前記信号の前記SNRを決定するように構成されている、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項10】
前記SQI回路は、複数の異なる送信者から受信された信号のSNRを決定するように構成されている、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項11】
前記SQI回路は、前記信号が所定の特定の送信者から受信されたと判定された場合に、前記信号の前記SNRを決定するように構成されている、請求項1に記載の物理層デバイス。
【請求項12】
物理層デバイスであって、前記物理層デバイスは、
信号をスレッショルドと比較するように構成されたコンパレータであって、前記信号は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体から受信される、コンパレータと、
前記信号を追加のスレッショルドと比較するように構成された追加のコンパレータと、含み、
SQI回路であって、前記SQI回路は、
前記スレッショルドを調整し、複数の異なるスレッショルドに対応する前記コンパレータの出力のビット誤り率を取得することと、
前記スレッショルドを第1の値に調整し、期間中の前記コンパレータの前記出力の第1のビット誤り率を取得することと、
前記追加のスレッショルドを第2の値に調整し、前記期間中の前記追加のコンパレータの出力の第2のビット誤り率を取得することと、
前記第1のビット誤り率及び前記第2のビット誤り率に基づいて前記信号の信号ノイズ比(SNR)を決定することと、を行うように構成されている、SQI回路と、を含む物理層デバイス。
【請求項13】
信号の信号対ノイズ比(SNR)を推定する方法であって、
物理層デバイスのコンパレータのスレッショルドを第1の値に設定するステップと、
前記コンパレータに信号を印加するステップであって、前記信号は、有線ローカルエリアネットワークの通信バスから受信され、前記通信バスは共有伝送媒体を含む、ステップと、
前記スレッショルドが前記第1の値に設定されている前記コンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定するステップと、
前記コンパレータの前記スレッショルドを前記第1の値とは異なる第2の値に設定するステップと、
前記コンパレータに前記信号を印加するステップと、
前記スレッショルドが前記第2の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の第2のビット誤り数を決定するステップと、
前記第1のビット誤り数及び前記第2のビット誤り数に基づいて前記信号のSNRを決定するステップと、を含む、方法。
【請求項14】
前記決定されたSNRに基づいて前記信号のビット誤り率を決定するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数のSNRに対応する複数のビット誤り率を含む変換データを記憶するステップを更に含み、前記信号のビット誤り率を決定するステップは、前記記憶された変換データを参照することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
データ記憶デバイスに、第1のビット誤り数と第2のビット誤り数との組み合わせに対応する複数のSNRを含む変換データを記憶するステップを更に含み、
前記SNRを決定するステップは、前記記憶された変換データを参照して、前記第1のビット誤り数及び前記第2のビット誤り数を、前記変換データに記憶された前記複数のSNRからのSNRに対応付けることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記スレッショルドが前記第1の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の前記第1のビット誤り数を決定するステップは、
前記決定された第1のビット誤り数が第1の所定のスレッショルド値より小さい場合、前記スレッショルドの前記第1の値をより高くなるように調整するステップと、
前記決定された第1のビット誤り数が第2の所定のスレッショルド値より大きい場合、前記スレッショルドの前記第1の値をより低くなるように調整するステップと、
前記スレッショルドが前記調整された第1の値に設定されている前記コンパレータに前記信号を印加している間に測定された置換値で、前記第1のビット誤り数を置換するステップと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記コンパレータは、第1のコンパレータ及び第2のコンパレータを含み、
前記スレッショルドが前記第1の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の前記第1のビット誤り数を決定するステップは、前記第1のコンパレータの第1のスレッショルドが前記第1の値に設定されている前記第1のコンパレータの第1の出力の前記第1のビット誤り数を決定するステップを含み、
前記スレッショルドが前記第2の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の前記第2のビット誤り数を決定するステップは、前記第2のコンパレータの第2のスレッショルドが前記第2の値に設定されている前記第2のコンパレータの第2の出力の前記第2のビット誤り数を決定するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のコンパレータの前記第1の出力の前記第1のビット誤り数を決定するステップは、前記第2のスレッショルドが前記第2の値に設定されている前記第2のコンパレータの前記第2の出力の前記第2のビット誤り数を決定するステップと少なくとも部分的に同時に実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記スレッショルドが前記第1の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の前記第1のビット誤り数を決定するステップ及び前記スレッショルドが前記第2の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の前記第2のビット誤り数を決定するステップは、少なくとも部分的に同時に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記スレッショルドが前記第1の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の前記第1のビット誤り数を決定するステップ及び前記スレッショルドが前記第2の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の前記第2のビット誤り数を決定するステップは、別個の期間にわたって実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
物理層デバイスであって、
1つ以上のプロセッサと、
コンピュータ可読命令が記憶されている1つ以上のデータ記憶デバイスであって、前記コンピュータ可読命令は、前記1つ以上のプロセッサに、
物理層デバイスのコンパレータに信号が印加されている間に、前記物理層デバイスの前記コンパレータのスレッショルドを第1の値に設定することであって、前記信号は、有線ローカルエリアネットワークの通信バスから受信され、前記第1の値は、前記信号の論理電圧レベル間の中間である中間スレッショルド値とは異なり、前記通信バスは、共有伝送媒体を含む、ことと、
前記スレッショルドが前記第1の値に設定されている前記コンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定することと、
前記信号が前記コンパレータに印加されている間に、前記コンパレータの前記スレッショルドを第2の値に設定することであって、前記第2の値は、前記第1の値及び前記中間スレッショルド値とは異なる、ことと、
前記スレッショルドが前記第2の値に設定されている前記コンパレータの前記出力の第2のビット誤り数を決定することと、
前記第1のビット誤り数及び前記第2のビット誤り数に基づいて前記信号の信号対ノイズ比(SNR)を決定することと、を命令するように構成されている、1つ以上のデータ記憶デバイスと、を含む、物理層デバイス。
【請求項23】
前記1つ以上のプロセッサ及び前記1つ以上のデータ記憶デバイスを収容する半導体チップパッケージを更に含む、請求項22に記載の物理層デバイス。
【請求項24】
前記コンピュータ可読命令は、前記1つ以上のプロセッサに、前記信号の前記SNRに基づいて前記信号のビット誤り率(BER)を決定することを命令するように更に構成されている、請求項22に記載の物理層デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2019年8月23日に出願された中国特許出願第201910784063.3号「Signal To Noise Ratio and Bit Error Rate Estimation for Wired Local Area Networks and Related Systems,Devices,and Methods」の出願日の利益を主張し、2019年9月30日に出願された係属中の米国特許出願第16/588,764号「Signal To Noise Ratio and Bit Error Rate Estimation for Wired Local Area Networks and Related Systems,Devices,and Methods」の出願日の利益を主張するものであり、それぞれの開示は、本参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、信号対ノイズ比(SNR)推定に関し、より更に具体的には、いくつかの実施形態は、一般に、有線ローカルエリアネットワークにおけるSNR推定に関する。
【背景技術】
【0003】
IEEE802.2.3cg(商標)は、自動車センサ、オーディオ、他のデバイス、及びこれらの組み合わせとともに使用する10BASE-T1S(「cg」としても知られる)を定義している。cgの他の標的市場セグメントには、バックプレーン及びモノのインターネット(IoT)ネットワークが含まれる。
【0004】
cg規格は、搬送波感知多重アクセス(CSMA)を物理層衝突回避(PLCA)とともに使用する10メガビット/秒(Mbps)マルチドロップバスを標的とする。
本開示は、特定の実施形態を具体的に指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本開示の範囲内の実施形態の様々な特徴及び利点は、添付の図面と併せて読むと、以下の説明からより容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】いくつかの実施形態による、リンク層デバイスのMACと、物理層(PHY)デバイスとを含む、ネットワークセグメントの機能ブロック図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、信号ノイズとBERとの関係を示す信号ノイズ図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、ビット誤り確率図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、BERと信号レベルスレッショルドとの関係を示す信号ノイズ図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、異なるスレッショルドに対する異なるBERを示す信号ノイズ図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、SNRの計算の詳細を示すためのノイズの多い信号図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、異なるSNR値を、異なるスレッショルドに対応する様々な値の測定されたBERに対応するプロットである。
【
図8】
図1のネットワークセグメントのPHYの部分のブロック図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、信号のSNRを推定する方法を示すフローチャートである。
【
図10】いくつかの実施形態による、コンパレータのスレッショルドを適当な値に設定する方法を示すフローチャートである。
【
図11】いくつかの実施形態において使用され得るコンピューティングデバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部をなし、本開示を実施し得る実施形態の具体例を例示として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施できるように十分に詳細に説明される。しかしながら、本明細書において可能な他の実施形態が用いられ得、本開示の範囲から逸脱することなく、構造、材料、及びプロセスを変えられ得る。
【0007】
本明細書に提示する図は、任意の特定の方法、システム、デバイス、又は構造の実際の図であることを意図するものではなく、本開示の実施形態を説明するために用いられる理想化した表現にすぎない。場合によっては、様々な図面における類似の構造又は構成要素は、読者の便宜のために同一又は類似の付番を保持し得る。しかしながら、付番における類似性は、構造又は構成要素がサイズ、組成、構成、又は任意の他の特性において同一であることを必ずしも意味するものではない。
【0008】
以下の説明は、当業者が開示される実施形態を実施することを可能にするのを補助するための実施例を含み得る。「例示的な」、「例として」、「例えば」という用語の使用は、関連する説明が、説明的なものであることを意味し、本開示の範囲は、実施例及び法的等価物を包含することを意図するものであり、かかる用語の使用は、実施形態又は本開示の範囲を特定の構成要素、ステップ、特徴、機能などに限定することを意図するものではない。
【0009】
本明細書で概して説明され、図面に例示される実施形態の構成要素は、多種多様な異なる構成で配置及び設計され得ることが容易に理解されるであろう。したがって、様々な実施形態の以下の説明は、本開示の範囲を限定することを目的とするものではなく、単に様々な実施形態を表すものである。実施形態の様々な態様が図面に提示され得るが、図面は、具体的に指示されていない限り、必ずしも尺度どおりに描画されていない。
【0010】
更に、図示及び説明する具体的な実装形態は、単なる例であり、本明細書において別段の指定がない限り、本開示を実施する唯一の方式と解釈されるべきでない。要素、回路、及び機能は、不要に詳述して本開示を不明瞭にしないように、ブロック図の形態で示され得る。逆に、図示し、説明する具体的な実装形態は、単に例示的なものであり、本明細書において別段の指定がない限り、本開示を実装する唯一の方法と解釈されるべきではない。更に、様々なブロック間での論理のブロック定義及びパーティショニングは、例示的な具体的な実装形態である。当業者には、本開示が多数の他のパーティショニングソリューションによって実施され得ることが容易に明らかになるであろう。大部分については、タイミングの考察などに関する詳細は省略されており、かかる詳細は、本開示の完全な理解を得るために必要ではなく、当業者の能力の範囲内である。
【0011】
当業者であれば、情報及び信号は、様々な異なる技術及び技法のいずれかを使用して表され得ることを理解するであろう。いくつかの図面は、表示及び説明を明確にするために、単一の信号として信号を例示してよい。当業者は、信号が信号のバスを表し得、このバスは様々なビット幅を有してよく、本開示は、単一のデータ信号を含む任意の数のデータ信号で実施され得ることを理解するであろう。
【0012】
本明細書に開示する実施形態に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、及び回路は、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくは他のプログラマブル論理デバイス、別個のゲート若しくはトランジスタ論理、別個のハードウェア構成要素、又は本明細書で説明される機能を実行するように設計されたこれらの任意の組み合わせを用いて実装、又は実行され得る。汎用プロセッサ(本明細書では、ホストプロセッサ又は単にホストと呼ばれこともある)は、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシンでもあってもよい。プロセッサはまた、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のかかる構成の組み合わせとして実装されてよい。プロセッサを含む汎用コンピュータは専用コンピュータとみなされ、汎用コンピュータは、本開示の実施形態に関連するコンピューティング命令(例えば、ソフトウェアコード)を実行するように構成されている。
【0013】
実施形態は、フローチャート、フロー図、構造図、又はブロック図として示すプロセスに関して説明され得る。フローチャートは、順次プロセスとして動作行為を説明し得るが、これらの行為の多くは、別の順序で、並行して、又は実質的に同時に実行できる。加えて、行為の順序は再調整され得る。プロセスは、メソッド、スレッド、関数、プロシージャ、サブルーチン、サブプログラム、他の構造、又はこれらの組み合わせに対応し得る。更に、本明細書に開示する方法は、ハードウェア、ソフトウェア、又はその両方で実施されてもよい。ソフトウェアで実装される場合、機能は、コンピュータ可読メディア上の1つ以上の命令又はコードとして記憶されてよい、又は送信されてよい。コンピュータ可読メディアは、コンピュータ記憶メディア及び、コンピュータプログラムのある場所から別の場所への転送を容易にする任意のメディアなどの通信メディアの両方を含む。
【0014】
「第1」、「第2」などの表記を使用した、本明細書の要素に対する任意の言及は、かかる制限が明示的に記載されていない限り、それらの要素の数量又は順序を限定しない。むしろ、これらの表記は、本明細書において、2つ以上の要素又は要素の例を区別する便利な方法として使用され得る。したがって、第1の要素及び第2の要素への言及は、2つの要素のみが用いられ得ること、又は何らかの方法で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味するものではない。加えて、特に明記しない限り、要素のセットは、1つ以上の要素を含んでよい。
【0015】
本明細書で使用されるとき、所与のパラメータ、特性、又は条件に言及する際の「実質的に(substantially)」という用語は、所与のパラメータ、特性、又は条件が、例えば許容可能な製造許容差の範囲内などの、小さいばらつきを満たすことを当業者が理解するであろう程度を意味し、かつ含む。一例として、実質的に満たされる特定のパラメータ、特性、又は条件に応じて、パラメータ、特性、又は条件は、少なくとも90%満たされ得るか、少なくとも95%満たされ得るか、更には少なくとも99%満たされ得る。
【0016】
自動車、トラック、バス、船舶、及び/又は航空機などの車両は、車両通信ネットワークを含んでもよい。車両通信ネットワークの複雑性は、ネットワーク内の電子デバイスの数に応じて変化することがある。例えば、高度車両通信ネットワークは、例えば、エンジン制御、変速機制御、安全制御(例えば、アンチロックブレーキ)、及び排出制御のための様々な制御モジュールを含んでもよい。これらのモジュールをサポートするために、車載産業は様々な通信プロトコルに依存している。
【0017】
10SPE(すなわち、10Mbps Single Pair Ethernet)は、IEEE 802.3cg(商標)として、米国電気電子学会により現在開発中のネットワーク技術仕様である。10SPEを使用して、マルチドロップネットワーク上でのコリジョンのない決定論的伝送を提供し得る。IEEE802.3cg(商標)は、自動車センサ、オーディオ、他のデバイス、又はこれらの組み合わせとともに使用する10BASE-T1S(「cg」としても知られる)を定義している。10BASE-T1Sはまた、バックプレーン及びモノのインターネット(IoT)ネットワークで使用され得る。cg規格は、搬送波感知多重アクセス(CSMA)を物理層衝突回避(PLCA)とともに使用する10メガビット/秒(Mbps)マルチドロップバスを標的とする。
【0018】
場合によっては、有線ローカルエリアネットワーク(LAN)(例えば、イーサネット)の通信バスを介して受信された信号の信号品質インジケータ(SQI)を提供することが望ましいことがある。SQIの例としては、ビット誤り率(BER)、信号対ノイズ比(SNR)、他のインジケータ、又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。従来、ポイントツーポイントリンクのSQIは、実装するための比較的大きなチップ領域及び動作するための比較的高い電力消費を伴う複雑なデジタル信号処理(DSP)技術に依存する。BERが既知である場合、SNRは推定され得る。
【0019】
ガウスノイズの振幅は、ガウス分布に従う。データ信号振幅が
【数1】
で、ガウスノイズ振幅が
【数2】
であると仮定すると、受信信号振幅
【数3】
として表現され得る。ガウスノイズ
【数4】
が信号に追加される場合、ノイズ
【数5】
は、ガウス分布に従うはずである。受信信号振幅
【数6】
の確率分布が既知であり、かつ信号振幅
【数7】
が既知である場合、ノイズは、ガウスノイズ分布等式に従って計算することができ、SNRはそれによって決定され得る。
【0020】
実際の用途では、しかしながら、信号振幅
【数8】
及びノイズ
【数9】
の両方が、通常は不明である。ノイズ
【数10】
は、検出されたビット誤りに基づいて経時的に推定することができるが、場合によっては、ビット誤りは、SNRが比較的高いときに比較的稀であることがあるため(例えば、SNRが18dBであるとき、1ヶ月半ごとに約1個のビット誤りが予想される)、ノイズ
【数11】
を決定するのに非常に長い時間を要し得る。
【0021】
本明細書に開示される実施形態は、有線LAN(例えば、イーサネット)の通信バスから受信された信号のSQIメトリックの提供に関する。本明細書に開示される実施形態は、10BASE-T1のエンドポイント及びスイッチで使用するSQIメトリックの提供に関連し得る。SQIの監視は、性能及び機能的安全上の理由から有用であり得る。いくつかの実施形態では、受信信号のSNRの測定が開示される。いくつかの実施形態では、受信信号のSNRの等級付けが開示される。非限定的な例として、受信信号は、SNRのいくつかのレベル(例えば、8つのレベル)のうちの1つを有するものとして等級付けされ得る。また、必要に応じて、修正処置を取ることができるように、SNRは、良好、限界、又は不良として報告され得る。
【0022】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、受信信号が2つの別個のスレッショルドより小さいか又は大きいかを、それらのスレッショルドを復旧されたデータと比較することによってチェックするために設定される、2つのコンパレータ(調整可能なスレッショルドを有する1ビットアナログ-デジタル変換器(ADC)によって実装され得る)スレッショルド(例えば、V1及びV2)の使用に関する。特定の期間にわたって比較結果をカウントすることにより、受信信号が2つのスレッショルドより小さくなる確率が決定され得る。これら2つの確率により、SNR及びBERは、デジタルCDR技術を使用して決定することができる。より具体的には、2つのスレッショルドに基づく連立方程式が、SNRを決定するために使用され得る。例えば、受信信号振幅がスレッショルドの各々より小さくなる確率がわかっている場合、信号振幅
【数12】
及びノイズ
【数13】
を計算することができ、SNRが決定され得る。BERはノイズ振幅
【数14】
が信号振幅
【数15】
より大きくなる確率に等しいため、受信信号のBERもまた、計算され得る。したがって、これらのSQIパラメータ(BER及びSNR)は、従来のDSPシステム又は位相同期ループ(PLL)を使用せずに決定され得、あまり複雑でなく、従来の解決策より小さいチップ領域及び電力を使用する方法を利用する。
【0023】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、BER推定に基づくSNR計算アルゴリズムに関する。BERは、信号の論理レベル間の中間にあるレベルとは異なる値に設定されたスレッショルドを有する信号コンパレータを使用して計算される。いくつかの実施形態では、プログラム可能なスレッショルドを有する1ビットアナログ-デジタル変換器が、コンパレータとして使用され得る。スレッショルドは、異なる信号及びノイズレベルに適合するように動的に調整され得る。例えば、信号が、論理レベル低及び論理レベル高にそれぞれ対応する3.3ボルトと+3.3ボルトとの間で振動するように設定されている場合、ゼロボルトのスレッショルドは、高論理レベルと低論理レベルとの間の中間点になり得る。この場合、ビット誤りの確率を測定可能なレベルに高めるために、2つの非ゼロボルトのスレッショルドが使用され得る。中間点スレッショルドのBER及びSNRは、2つの非ゼロボルトのスレッショルドで測定されたビット誤り率に基づいて外挿され得る。場合によっては、SNRを決定するために、ビット誤りカウントにSNRを関連付けているルックアップテーブルが使用され得る。結果として、SNRは、1ビットADCに限定される場合であっても、決定され得る。
【0024】
本開示の実施形態は、物理層回路が、10SPE用途においてSQI及びSNRを報告することを可能にする。このSQI及びSNRは、許容可能な時間内に計算され得、低い電力消費及び低い実装の複雑さを有し得る。また、本開示の実施形態は、10SPE通信バスから受信された信号のSNRの計算を可能にする。更に、本開示の実施形態は、経時的にビット誤りを直接カウントすることによってBERを検出することが困難であり得る高SNR環境でも、SQIの迅速な検出及び報告を可能にする。
【0025】
10SPEに準拠しているいくつかの実施形態では、信号のSQIパラメータ(例えば、SNR、BER)は、搬送波感知多重アクセス/衝突検出のCSMA/CDモード又はPLCAモードのいずれかで以下に論じられるように決定され得る。10SPEは、CSMA/CDモード又はPLCAモードのいずれかで機能し得るマルチドロップシステムを規定する。PLCAモードにあるとき、受信されたパケットの送信者は、既知であり得る。したがって、本明細書に開示されるSQIパラメータ推定技術は、パケットを運ぶ信号のSQIパラメータ(例えば、SNR、BER)を決定するために各送信者に個別に適用され得る。また、本明細書に開示されるSQIパラメータ推定技術は、パケットを運ぶ信号のSQIパラメータ(例えば、SNR、BER)を決定するために、受信されたパケットの特定の選択された送信者に適用されてもよい。
【0026】
図1は、いくつかの実施形態による、リンク層デバイスであるMAC104と、物理層(PHY)デバイスであるPHY102とを含むネットワークセグメント100の機能ブロック図である。非限定的な例として、ネットワークセグメント100は、マルチドロップネットワークのセグメント、マルチドロップサブネットワークのセグメント、混合メディアネットワークのセグメント、又はこれらの組み合わせ若しくはこれらの副次的組み合わせであってもよい。非限定的な例として、ネットワークセグメント100は、限定するものではないが、マイクロコントローラ型の埋め込みシステム、ユーザ型コンピュータ、コンピュータサーバ、ノートブックコンピュータ、タブレット、ハンドヘルドデバイス、モバイルデバイス、無線イヤフォンデバイス若しくはヘッドフォンデバイス、有線イヤフォンデバイス若しくはヘッドフォンデバイス、電化製品サブシステム、照明サブシステム、音声サブシステム、建物管理システム、住宅監視システム(例えば、限定するものではないが、セキュリティ又はユーティリティ使用のための)システム、エレベータシステム若しくはサブシステム、公共交通機関制御システム(例えば、限定するものではないが、地上列車、地下鉄、トロリー、又はバスの場合)、自動車システム若しくは自動車サブシステム、又は産業制御システムであってもよく、それらの一部であってもよく、又はそれらのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0027】
PHY102は、MAC104とインターフェースするように構成され得る。非限定的な例として、PHY102及び/又はMAC104は、本明細書に記載される実施形態の全て又は一部を実行するように構成されたメモリ及び/又はロジックを含むチップパッケージであってもよい。非限定的な例として、PHY102及びMAC104は、単一チップパッケージ(例えば、システムインパッケージ(system-in-a-package、SIP))内の別個のチップパッケージ又は回路(例えば、集積回路)として実装され得る。
【0028】
PHY102はまた、ネットワークセグメント100の一部であるノードの通信経路である物理媒体、又はそれぞれのPHY102及びMAC104を含むノードを含む、ネットワークセグメント100がその一部であるネットワークである共有伝送媒体106とインターフェースする。非限定的な例として、共有伝送媒体106は、シングルペアイーサネットに使用されるような単一のツイストペアであってもよい。
【0029】
共有伝送媒体106を介して受信された信号は、特に、ノイズの影響を特に受けやすい環境(例えば、自動車環境)において、ノイズに悩まされ得る。場合によっては、SQIを提供して、受信信号の信号品質の監視を可能にすることが有用であり得る。いくつかの実施形態では、PHY102は、SQIを決定及び提供するように構成され得る。
【0030】
図2は、いくつかの実施形態による、信号ノイズとBERとの関係を示す信号ノイズ
図200である。信号ノイズ
図200は、論理レベル高S1及び論理レベル低S0を有する信号202を含む。中間スレッショルド204は、信号202が中間スレッショルド204を超えているとき、信号202が高であると判定され、信号202が中間スレッショルド204を下回っているとき、信号202が低であると判定されるように、論理レベル高S1を論理レベル低S0から分けている。
【0031】
信号ノイズ
図200はまた、論理レベル高S1のノイズ確率分布関数又は確率密度関数(PDF)206及び論理レベル低S0のノイズPDF208も含む。別の言い方をすれば、ノイズPDF206及びノイズPDF208は、それぞれ、論理レベル高S1及び論理レベル低S0中に信号202が特定の電圧レベルになる確率を示す。
【0032】
いくつかの実施形態では、ノイズPDF206及びノイズPDF208は、ガウス分布でモデル化され得る。パルス振幅変調(PAM)では、Yが、SNRの決定を所望される受信信号(例えば、信号202)である場合、受信信号Yは、論理レベル高(例えば、ビット「1」)が伝送されるときはY=S1+Nによって、論理レベル低(例えば、ビット「0」)が伝送されるときはY=S0+Nによって与えられ得、S1は論理レベル高の電圧レベルであり、S0は論理レベル低の電圧レベルであり、Nはノイズである。PDF206又はPDF208のノイズは、以下のガウスPDFに従うガウスノイズであり得、
【数16】
式中、ガウスPDFの平均μ=0、ガウスPDFの分散σ
2=N
0、xは受信信号Yの値であり、N0はノイズパワーである。
【0033】
次いで、受信信号Yの条件付きPDFが決定され得る。受信信号Yが論理レベル低S0である状態では、PDFは次のように与えられ、
【数17】
これは、ノイズPDF208に対応する。受信信号Yが論理レベル高S1である状態では、PDFは次のように与えられ、
【数18】
これは、ノイズPDF206に対応する。
【0034】
図3は、いくつかの実施形態による、ビット誤り確率
図300である。ビット誤り確率
図300は、論理レベル低S0及び論理レベル高S1、並びに中間スレッショルド(例えば、
図3のビット誤り確率
図300では、中間スレッショルドは0ボルトに設定されている)を示す電圧レベル
図304を含む。
図3に示すように、前述の条件付きPDF式から、論理レベル低S0は
【数19】
に対応し、論理レベル高S1は
【数20】
に対応する。量
【数21】
は、条件付きPDFのサブPDFの平均をS0及びS1にそれぞれシフトさせる。
【0035】
ビット誤り確率
図300はまた、電圧レベル
図304に対してプロットされた条件付きPDF302を含む。
図3に示すように、条件付きPDF302は、p(Y│S0)及びp(Y│S1)を含む前述の条件付きPDF式の断片を含む。論理レベル低S0のビット誤りの確率306及び論理レベル高S1のビット誤りの確率308もまた、条件付きPDF302の下方に示されている。
【0036】
PAM変調では、エッジ信号(例えば、1、-1)に対し、誤り確率は次のように与えられ、
【数22】
式中、
【数23】
である。
【0037】
そのような実施形態では、信号202の片側のBER(例えば、論理レベル高S1又は論理レベル低S0のいずれかに対応する)は次のように与えられる。
【数24】
【0038】
この結果は、BERが既知である場合、BERを使用してSNRを計算することができることを示している(及びSNRが既知である場合、SNRを使用してBERを計算することができる)。
【0039】
以下の表1は、様々な検出されたBERに対する様々なSNRを示す。
表1
【表1】
【0040】
図1及び
図2を一緒に参照すると、信号202におけるビット誤りは、ノイズの大きさが、信号レベルS1及びS0とスレッショルド(この事例では、中間スレッショルド204であり、これは、場合によっては、ゼロボルトに設定され得る)との間の差より大きいときに存在し得る。BERを最小限に抑えるために、中間スレッショルド204は、信号レベルS1とS0との間の中間にあるように選択される。しかしながら、結果として得られるBERは、短時間での実用的な検出には低すぎることがある。例えば、SNRが約18dBである場合、1ヶ月半ごとに約1個のビット誤りのみが予想される(例えば、対応するBERは、上記の表1により、約1e-14である)。BERを迅速に検出するための実用的な方法がない場合、BERonesideの上記の式を使用して正確なSNRを提供することは困難であり得る。結果として、SQIパラメータを報告することは困難であり得る。
【0041】
信号202のBERを検出するための1つの方法は、中間スレッショルド204を、信号レベルS1とS0との間の中間から離れている異なるスレッショルドで置き換え、BERを検出可能なレベルに増加させることである。以下の
図4は、中間スレッショルド204を、信号レベルS1とS0との間の中間から離れている異なるスレッショルドで置き換えることが、BERをどのように増加させるかを示している。
【0042】
論理レベル高S1のノイズPDF206及び信号レベル低S0のノイズPDF208はガウス分布であることに留意されたい。いくつかの実施形態では、信号ノイズをモデル化するために他のタイプの分布が使用され得る。例えば、三角波分布、ラプラシアン分布、均一分布、又はいくつかの他の分布が使用され得る。
【0043】
図4は、いくつかの実施形態による、BERと信号レベルスレッショルドとの関係を示す信号ノイズ
図400である。信号ノイズ
図400は、信号202、中間スレッショルド204、及び論理レベル高S1のノイズPDF206を含む。信号ノイズ
図400はまた、中間スレッショルド204(
図4の実施例ではゼロボルトの直流に設定される)とは異なるスレッショルド402を含む。信号ノイズ
図400では、ノイズPDF206及びスレッショルド402によって画定される領域が、
図2のノイズPDF206及び中間スレッショルド204によって画定される領域より大きいことを見ることができる。結果として、スレッショルド402を使用することによってもたらされるBERは、中間スレッショルド204を使用することによってもたらされるBERより大きい。
【0044】
特定のスレッショルドでのBERは、SNR、及び信号202の信号振幅と、論理レベルS1とS0との間のスレッショルドとの間の差(例えば、信号振幅からスレッショルドを差し引いたもの)に依存する。
【0045】
BERonesideの上記の式を詳しく調べることによって分かるように、信号202の信号振幅及びSNRは、未知の要因である。結果として、異なる既知のスレッショルドに対する異なる観察されたBERが使用されてSNRを決定し得る、そのような方程式の系である。2つの未知数(SNR、信号振幅)があるので、SNRを決定するために、各々が異なるスレッショルド値に対応する、2つの方程式の系が使用され得る。
【0046】
図5は、いくつかの実施形態による、異なるスレッショルドに対する異なるBERを示す信号ノイズ
図500である。信号ノイズ
図500は、
図2を参照して上述したように、信号202、中間スレッショルド204、論理レベル高S1、及び論理レベル低S0を含む。信号ノイズ
図500はまた、ノイズ(例えば、ガウスノイズ)が追加された状態の論理レベル高S1である間に異なる電圧レベルをとる信号202の確率を示すために、第1のスレッショルド502に対するものと、第2のスレッショルド504に対するものとである、ノイズPDF506の2つの実例を含む。
【0047】
信号ノイズ
図500は、ノイズPDF506及び第1のスレッショルド502によって画定される第1の領域508が、ノイズPDF506及び第2のスレッショルド504によって画定される第2の領域510より大きいことを示している。結果として、第2のスレッショルド504のBER(例えば、BER2)より大きなBER(例えば、BER1)が、第1のスレッショルド502からもたらされることが予想されるであろう。第1の領域508及び第2の領域510が、比較的短期間で検出可能なビット誤りについての十分に高い確率に対応するほど十分に大きいと仮定すると、BER(例えば、BER1及びBER2)は、比較的短期間で検出可能であり得る。スレッショルド(例えば、第1のスレッショルド502及び第2のスレッショルド504)は既知の値であり、かつBERは測定可能であるので、信号202のSNRを決定するために、2つの方程式(第1のスレッショルド502に対応する第1の方程式及び第2のスレッショルド504に対応する第2の方程式)の系が作成され得る。
【0048】
BER(例えば、BER1及びBER2)は、コンパレータの出力のビット誤り数(例えば、第1のスレッショルド502に対応する第1のビット誤り数及び第2のスレッショルド504に対応する第2のビット誤り数)をカウントすることによって決定され得、コンパレータは、期間にわたって第1のスレッショルド502及び第2のスレッショルド504に交互に設定されている。BERは、ビット誤り数を期間で割ることによって計算され得る。次に、BER1、BER2、第1のスレッショルド502、及び第2のスレッショルド504からSNRを計算するための数学を、
図6を参照して説明する。
【0049】
図6は、いくつかの実施形態による、SNRの計算の詳細を示すためのノイズの多い信号
図600である。ノイズの多い信号
図600は、上述の信号202、中間スレッショルド204、及び論理レベル高S1を含む。ノイズの多い信号
図600はまた、中間スレッショルド204からの差aに設定された第1のスレッショルド602、及び中間スレッショルド204からの差bに設定された第2のスレッショルド604を示す。ノイズの多い信号
図600は、以下のパラメータを更に定義する。
●
【数25】
これは、論理レベル高の信号レベルS1と中間スレッショルド204との間の差である。
●
【数26】
これは、論理レベル高の信号レベルS1と第1のスレッショルド602との間の差である。
●
【数27】
これは、論理レベル高の信号レベルS1と第2のスレッショルド604との間の差である。
【0050】
これらのパラメータに基づいて、第1のスレッショルド602に対応するSNRは、次のように与えられ得る。
【数28】
【0051】
【0052】
第2のスレッショルド604に対応するSNRは、次のように与えられ得る。
【数30】
【0053】
【0054】
第1のスレッショルド602及び第2のスレッショルド604(SNR1及びSNR2)に対するSNR式を組み合わせると、次のようになる。
【数32】
【0055】
結果として、信号202のSNRは、次のように与えられ得る。
【数33】
【0056】
SNR1及びSNR2は、次の式を使用してBER1及びBER2から計算され得、
【数34】
式中、erfc(x)は、以下のように与えられる、量xの相補誤差関数であり、
【数35】
式中、erf(x)は、以下のように与えられる、量xの誤差関数である。
【数36】
【0057】
結果として、入力信号サンプルポイントレベルが、受信回路によって使用さる受信データスレッショルド(例えば、中間スレッショルド204)より大きい場合、第1のスレッショルド602のBER(BER1)及び第2のスレッショルド604のBER(BER2)を使用して、信号202のSNRを計算することができる。したがって、BER1及びBER2は、第1のスレッショルド602で信号から取られたデータを、中間スレッショルド204で取られたデータと比較することによって取得され得る。データが同じである場合、ビット誤りはない。データが同じである場合、ビット誤りがある。したがって、BER1は、第1のスレッショルド602に基づいて取得されたデータを、中間スレッショルド204に基づいて取得されたデータと比較することによって取得され得、BER2は、第2のスレッショルド604に基づいて取得されたデータを、中間スレッショルド204に基づいて取得されたデータと比較することによって取得され得る。
【0058】
上記の数学を詳しく調べることによって見ることができるように、SNRの決定に関与する計算は比較的複雑であり得る。結果として、これらの計算をリアルタイムで実行するのではなく、本明細書の実施形態は、動作中に実行される計算量を低減するために、SNRの以前に計算された値に依存し得る。例えば、BER1及びBER2の様々な値に対応付けられた異なるSNRに対応するデータが記憶され得る。結果として、BER1及びBER2が決定されると、対応するSNRは、SNRを直接計算するのではなく、記憶されたデータでルックアップされ得る(例えば、ルックアップテーブルと同様)。以下の
図7は、1つのそのような例を示す。
【0059】
図7は、いくつかの実施形態による、異なるSNR値を、異なるスレッショルドに対応する様々な値の測定されたBERに対応付けるプロット700である。プロット700の水平軸は、第1のスレッショルドに対応するBER1を対象とし、プロット700の垂直軸は、第2のスレッショルドに対応するBER2を対象とする。プロット700は、SNR<12dBのゾーン702、SNR>12dBのゾーン704、SNR>14dBのゾーン706、SNR>16dBのゾーン708、SNR>18dBのゾーン710、SNR>20dBのゾーン712、SNR>20dBのゾーン714、SNR>22dBのゾーン716、及びSNR>24dBのゾーン718を含む複数の異なるSNRゾーンに分けられる。
【0060】
受信信号のSNRを近似するために、コンパレータのスレッショルドは第1の値に設定され得、第1のBER(BER1)が測定され得る。コンパレータのスレッショルドは第2の値に設定され得、第2のBER(BER2)が測定され得る。受信信号のSNRの近似は、プロット700のどのSNRゾーンがBER1とBER2との間の交点を含むかを特定することによって推定され得る。例えば、BER1が0.2であり、かつBER2が0.1である場合、SNRはSNR>14dBのゾーン706に入る。したがって、信号のSNRは14dB~16dBであると決定され得る。
【0061】
図8は、
図1のネットワークセグメント100のPHY102の部分800のブロック図である。部分800は、SQI回路828及び受信機回路806を含む。SQI回路828は、有線ローカルエリアネットワーク(例えば、イーサネット)の共有伝送媒体(例えば、
図1の共有伝送媒体106)から受信された受信信号202のSQI情報830(例えば、SNR824、BER826)を推定するように構成されている。受信機回路806は、信号202を処理するように構成されている。いくつかの実施形態では、受信機回路806は、信号202を処理する際のビット誤りを最小限に抑えるために、スレッショルドが中間スレッショルド(例えば、
図2の中間スレッショルド204)に設定されているコンパレータ(例えば、1ビットアナログ-デジタル変換器(ADC))を含む。
【0062】
本明細書に開示される実施形態に従って、PHY102が、信号202のSNRを決定し、SQIメトリックを報告することを可能にするために、SQI回路828は、コンパレータ802と、コンパレータ802のスレッショルド820を制御するように構成されたスレッショルド回路808とを含む。いくつかの実施形態では、コンパレータ802は、1ビットADCを含む。コンパレータ802は、信号202を受信するように配置されている。スレッショルド回路808は、スレッショルド820を中間スレッショルドとは異なるものになるように制御して、コンパレータ802の出力のBERを(例えば、ビット誤りの確率を増加させることによって)迅速に検出可能なレベルに増加させるように構成されている。
【0063】
SQI回路828は、コンパレータ802の出力におけるビット誤りを検出し、検出されたBER818をSQI検出回路812に提供するように構成されたビット誤り検出器810を更に含む。SQI検出回路812は、スレッショルド820の少なくとも2つの異なる値に対応する検出されたBER818を使用して、信号202のSNR824を決定するように構成されている。
【0064】
いくつかの実施形態では、SQI検出回路812は、スレッショルド回路808を制御してスレッショルド820を調整するように構成されている。いくつかの実施形態では、SQI検出回路812自体は、スレッショルド820の値を設定し、それらの値をスレッショルド回路808に提供するように構成されている。そのような実施形態では、SQI検出回路812は、SNR824を決定する際に使用するスレッショルド値を有する(例えば、
図6に示されるような、それぞれ、スレッショルド604、602と中間スレッショルド204との間の差であるbとaとの間の比が、SNR824を決定するために使用され得る)。いくつかの実施形態では、スレッショルド回路808自体は、スレッショルド820の値を設定するように構成されている。そのような実施形態では、スレッショルド回路808は、スレッショルド820の値をSQI検出回路812に報告し得る。また、SQI検出回路812は、検出されたBER818をスレッショルド回路808に報告し返して、スレッショルド回路808が必要に応じて(例えば、
図10の方法1000に従って)スレッショルド820の値を調整することを可能にし得る。例えば、スレッショルド820が、コンパレータ802の出力のBERを実用的な期間内で検出されるほど十分に高くなるよう促すのに不十分である値に設定されている場合、スレッショルド回路808は、ビット誤りの確率を増加させるために、スレッショルド820の値と中間スレッショルドとの間の差を増加させ得るか、又はこれを増加させるように制御され得る(例えば、
図10の方法1000を使用する)。
【0065】
いくつかの実施形態では、SQI回路828は、信号202のSNRを検出する際に使用する単一のコンパレータ802を含み得る。そのような実施形態では、スレッショルド回路808は、スレッショルド820を第1の値及び第2の値に異なる時点で調整するように構成され得、SQI検出回路812は、それらの異なる時点における検出されたBER818の2つの値に基づいてSNR824を決定し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、SQI回路828は、信号202を受信するように配置された追加のコンパレータ804を含み得、スレッショルド回路808は、コンパレータ802のスレッショルド820を第1の値に調整し、追加のコンパレータ804のスレッショルド822を第2の値に調整するように構成され得る。そのような実施形態では、ビット誤り検出器810は、コンパレータ802及び追加のコンパレータ804の両方の出力におけるビット誤りを少なくとも部分的に同時に(contemporaneously)(例えば、同時に(simultaneously))検出し、コンパレータ802及びコンパレータ804の各々の検出されたBER818をSQI検出回路812に提供するように構成され得る。そのような実施形態では、単一のコンパレータ802のみを使用してBER1及びBER2を別個の期間中に検出する実施形態よりも、SNR824が迅速に決定され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、SQI検出回路812は、変換データ816が記憶されているデータ記憶デバイス814を含み得る。変換データ816は、BER1及びBER2(コンパレータスレッショルドの第1の値及び第2の値に対応する)の様々な値に対応付けられた異なるSNR値に対応する情報を含み得る。結果として、BER1及びBER2が決定されると、対応するSNRは、SNRを直接計算するのではなく、記憶されたデータでルックアップされ得る(例えば、ルックアップテーブルと同様)。言い換えれば、SQI回路828は、BER1及びBER2に最も近い(例えば、一致する)BER対に対応する、複数のSNR値のうちの1つを選択することによって、信号202のSNRを決定するように構成されている。非限定的な例として、変換データ816は、
図7のプロット700に対応するデータを含み得る。この実施例では、8つの異なるレベルのSNRが使用され得、PHY102(
図1)によって報告されるSQIパラメータ(例えば、SQI情報830)は、
図7に示される8つのSNRレベルのうちの1つであり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、SQI検出回路812はまた、信号202のBER826を決定するように構成され得、これは、PHY102によってSQI情報830として報告され得る。いくつかの実施形態では、SQI検出回路812は、SNR824に基づいてBER826を決定するように構成され得る。非限定的な例として、SQI検出回路812は、
図3を参照して上述した方程式を使用してSNR824に基づいてBER826を計算するように構成され得る。また、非限定的な例として、SQI検出回路812は、上記の表1の情報など、複数のBER値を複数のSNR値に関連付ける情報を変換データ816に記憶するように構成され得る。この実施例では、SQI検出回路812は、変換データ816に記憶されているSNR824に対応するBERの記憶された値のうちの1つとなるように、BER826を推定し得る。言い換えれば、SQI回路828は、複数のSNR値から、信号202の決定されたSNR824に最も近い、SNR値のうちの1つを特定することによって、信号のBERを決定し、複数のBER値からの対応するBERを信号のBER826として選択するように構成され得る。PHY102の部分800は、いくつかの実施形態では、SQI情報830を共有伝送媒体106に報告するように構成され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、部分800は、部分800の動作を実行するように構成された1つ以上のプロセッサを含む。いくつかの実施形態では、部分800の一部又は全部は、1つ以上のデータ記憶デバイスによって記憶され、処理回路によって実行されるソフトウェア又はファームウェアを使用して実装され得る(
図11のコンピューティングデバイス1100を参照)。いくつかの実施形態では、部分800の一部又は全部は、組み合わせ論理などの電気ハードウェア構成要素を使用して実装され得る。非限定的な例として、部分800の一部又は全部は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、他の論理デバイス、又はこれらの組み合わせを使用して実装され得る。
【0070】
図9は、いくつかの実施形態による、信号のSNRを推定する方法900を示すフローチャートである。動作902で、方法900は、物理層デバイス(例えば、
図1のPHY102)のコンパレータのスレッショルドを第1の値に設定する。上述のように、スレッショルドの第1の値は、コンパレータの出力のBERを迅速に検出可能なレベルに増加させるために、中間スレッショルド(例えば、
図2の中間スレッショルド204)とは異なる。動作904で、方法900は、有線ローカルエリアネットワーク(例えば、イーサネットネットワーク)の通信バス(例えば、
図1の共有伝送媒体106)から受信された信号をコンパレータに印加する。動作906で、方法900は、スレッショルドが動作904の第1の値に設定されている、コンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定する。いくつかの実施形態では、スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定することは、以下の
図10の方法1000を含む。
【0071】
動作908で、方法900は、コンパレータのスレッショルドを第1の値とは異なる第2の値に設定する。動作910で、方法900は、信号をコンパレータに印加する。動作912で、方法900は、スレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定する。いくつかの実施形態では、スレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することは、スレッショルドの第2の値及び第2のビット誤り数に対して、
図10の方法1000を実行することを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、コンパレータは、第1のコンパレータ及び第2のコンパレータを含む。いくつかの実施形態では、コンパレータは、単一のコンパレータを含む。いくつかの実施形態では、スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定することは、第1のコンパレータの第1のスレッショルドが第1の値に設定されている第1のコンパレータの第1の出力の第1のビット誤り数を決定することを含む。いくつかの実施形態では、スレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することは、第2のコンパレータの第2のスレッショルドが第2の値に設定されている第2のコンパレータの第2の出力の第2のビット誤り数を決定することを含む。いくつかの実施形態では、第1のコンパレータの第1の出力の第1のビット誤り数を決定することは、第2のスレッショルドが第2の値に設定されている第2のコンパレータの第2の出力の第2のビット誤り数を決定することと少なくとも部分的に同時に実行される。いくつかの実施形態では、スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定すること及びスレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することは、少なくとも部分的に同時に実行される。いくつかの実施形態では、スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定すること及びスレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することは、別個の期間にわたって実行される。
【0073】
動作914で、方法900は、第1のビット誤り数及び第2のビット誤り数に基づいて信号のSNRを決定する。いくつかの実施形態では、第1のビット誤り数に基づいて信号のSNRを決定することは、決定されたSNRに基づいて信号のビット誤り率を決定することを含む。いくつかの実施形態では、決定されたSNRに基づいて信号のビット誤り率を決定することは、複数のSNRに対応する複数のBERを含む変換データを記憶し、記憶された変換データを参照することによって信号のBERを決定することを含む。いくつかの実施形態では、SNRを決定することは、データ記憶デバイスに、第1のビット誤り数と第2のビット誤り数との組み合わせに対応する複数のSNRを含む変換データを記憶し、記憶された変換データを参照して、第1のビット誤り数及び第2のビット誤り数を、変換データに記憶された複数のSNRからのSNRに合わせることを含む。
【0074】
図10は、いくつかの実施形態による、コンパレータのスレッショルドをある値に設定する方法1000(例えば、
図9の動作902及び/又は動作908)を示すフローチャートである。このスレッショルド調整は、BER1を取得するための第1のスレッショルドと、BER2を取得するための第2のスレッショルドとの両方に適用されて、これらのスレッショルドが妥当な範囲内のBERをもたらすことを確実にし得る。例えば、安定したビット誤りカウントを確実にするために、BERに対して最大(すなわち、
図10の第2の所定の値)及び最小(すなわち、
図10の第1の所定の値)の制限が設定されている。スレッショルドにより、カウントされたビット誤り数が小さすぎる
(例えば、検出期間中にゼロ~2個のビット誤り)という結果がもたらされる場合、BERは安定せず、許容可能でないことがある。また、スレッショルドにより、カウントされたビット誤り数が大きすぎるという結果がもたらされる場合(例えば、スレッショルドレベルが信号以上である)、ビット誤り率を正確に決定するには、ビット誤りが多すぎる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、ビット誤りカウントの最小制限に対応する第1の所定の値は、検出期間中の2つのビット誤りに設定され得る。ビット誤りカウントの最大制限に対応する第2の所定の値は、スレッショルドが信号の大きさに設定されていることに対応するビット誤りカウントに設定され得る。開示された実施形態の異なる実装形態の詳細に応じて、第1の所定の値及び第2の所定の値に対する他の設計選択が行われ得ることに留意されたい。
【0075】
判定1002で、方法1000は、決定されたビット誤り数が所定のスレッショルド値(例えば、第1の所定の値及び第2の所定の値)の間にあるかどうかを判定する。動作1004で、方法1000は、決定されたビット誤り数が第1の所定のスレッショルド値より小さい場合、スレッショルドの値をより高くなるように調整する。動作1006で、方法1000は、決定されたビット誤り数が第2の所定のスレッショルド値より大きい場合、スレッショルドの値をより低くなるように調整する。第1及び第2の所定のスレッショルド値は、ビット誤りの実用的な検出レベルに対応するレベルに設定され得る。例えば、1ミリ秒(1ms)内のコンパレータの出力のBERを検出することが望ましい場合、1ミリ秒内の複数の予想されるビット誤りに対応する適切なスレッショルド値が選択され得る。BERが低すぎる場合、ビット誤り間の時間が、実用的な期間内でビット誤り数を決定するには長すぎる可能性がある。BERが高すぎる場合、コンパレータの出力が有するビット誤りの数が、BERを正確に決定するには多すぎる可能性がある。
【0076】
動作1008で、方法1000は、動作1004又は動作1006の調整されたスレッショルドのデジタル信号をコンパレータに印加している間に測定された置換値で、ビット誤り数を置換する。方法1000は、判定1002に戻り、決定された第1のビット誤り数が、所定のスレッショルド値を下回ることも、所定のスレッショルド値を上回ることもなくなるまで繰り返し、その後、方法1000は1010にて終了する。
【0077】
図11は、いくつかの実施形態で使用され得るコンピューティングデバイス1100のブロック図である。コンピューティングデバイス1100は、1つ以上のデータ記憶デバイス1104(本明細書では「記憶装置」1104と称されることもある)に動作可能に結合された1つ以上のプロセッサ1102(本明細書では「プロセッサ」1102と称されることもある)を含む。記憶装置1104は、その記憶装置に記憶されたコンピュータ可読命令を含む。コンピュータ可読命令は、プロセッサ1102に、本明細書で開示される実施形態の動作を実行するように命令するように構成されている。例えば、コンピュータ可読命令は、
図9の方法900及び/又は
図10の方法1000の少なくとも一部分又は全体を実行するようにプロセッサ1102に命令するように構成され得る。別の例として、コンピュータ可読命令は、PHY102(
図1)の部分800(
図8)について述べた動作の少なくとも一部分又は全体を実行するようにプロセッサ1102に命令するように構成され得る。特定の非限定的な例として、コンピュータ可読命令は、SQI検出回路812、スレッショルド回路808、ビット誤り検出器810、コンパレータ802、コンパレータ804、受信機回路806、本明細書で論じられる他のデバイス、又はこれらの組み合わせ(
図8を参照)について述べた動作の少なくとも一部分又は全体を実行するようにプロセッサ1102に命令するように構成され得る。
【0078】
本開示で使用するとき、用語「モジュール」又は「構成要素」は、コンピューティングシステムの汎用ハードウェア(例えば、コンピュータ可読メディア、処理デバイスなど)に記憶され、及び/又はその汎用ハードウェアによって実行され得るモジュール若しくは構成要素及び/又はソフトウェアオブジェクト若しくはソフトウェアルーチンのアクションを実行するように構成された特定のハードウェア実装を指し得る。いくつかの実施形態では、本開示に記載される異なる構成要素、モジュール、エンジン、及びサービスは、(例えば、別個のスレッドとして)コンピューティングシステムで実行するオブジェクト又はプロセスとして実装され得る。本開示に記載されるシステム及び方法のいくつかは、一般に、ソフトウェア(汎用ハードウェアに記憶され、かつ/又は実行される)ソフトウェアに実装されるものとして記載されているが、特定のハードウェア実装、又はソフトウェアと特定のハードウェア実装との組み合わせも可能であり、企図される。
【0079】
本開示で使用するとき、複数の要素を参照した用語「組み合わせ」は、全要素の組み合わせ、又は一部の要素の任意の様々な異なる副組み合わせを含み得る。例えば、「A、B、C、D、又はこれらの組み合わせ」という語句は、A、B、C、又はDのいずれか1つ、A、B、C、及びDの各々の組み合わせ、並びにAとBとC、AとBとD、AとCとD、BとCとD、AとB、AとC、AとD、BとC、BとD、又はCとDなどのA、B、C、又はDの任意の副組み合わせを指し得る。
【0080】
本開示で使用される用語、及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)において使用される用語は、一般に「オープン」用語として意図される(例えば、用語「含んでいる(including)」は、「含んでいるが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有している」という用語は、「少なくとも有している」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」などと解釈されるべきである。
【0081】
加えて、特定の数の導入された請求項列挙が意図される場合、このような意図は請求項に明示的に列挙されることになり、このような列挙がない場合には、このような意図は存在しない。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の請求項は、請求項の列挙を導入するための導入句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含むことがある。しかし、このような語句の使用は、たとえ同じ請求項が導入語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項列挙の導入が、そのような導入された請求項列挙を含む任意の特定の請求項を、そのような列挙のうちの1つのみを含む実施形態に限定するものと解釈されるべきではない(例えば、「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)。請求項列挙を導入するために使用される定冠詞の使用についても同じことが当てはまる。
【0082】
加えて、導入された請求項列挙の特定の数が明示的に列挙されている場合であっても、当業者は、このような列挙が少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを、認識するであろう(例えば、他の修飾語なしでの「2つの列挙」の明白な列挙は、少なくとも2つの列挙又は2つ以上の列挙を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、及びCなどのうちの1つ以上」に類似した慣例が使用される場合、一般に、このような構造は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、又はA、B、及びCを一緒に含むことを意図する。
【0083】
更に、2つ以上の代替用語を提示する任意の離接語又は語句は、説明、請求項、又は図面のいずれかにおいて、用語のうちの1つ、用語のいずれか又は両方の用語を含む可能性を企図するものと理解されるべきである。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるべきである。
【実施例】
【0084】
例示的な実施形態の非網羅的で非限定的なリストは、以下のとおりである。以下にリストされる例示的な実施形態の各々は、以下にリストされる例示的な実施形態及び上で考察された実施形態のうちの他の全てと組み合わせ可能であると個別に示されるわけではない。しかし、これらの例示的な実施形態は、実施形態が組み合わせ可能ではないことが当業者には明らかである場合を除き、全ての他の例示的な実施形態及び上述の実施形態と組み合わせ可能であることが意図される。
【0085】
実施例1:信号をスレッショルドと比較するように構成されたコンパレータであって、信号は、有線ローカルエリアネットワークの共有伝送媒体から受信される、コンパレータと、信号品質インジケータ(SQI)回路であって、スレッショルドを調整して、複数の異なるスレッショルドに対応するコンパレータの出力のビット誤り率を取得することと、ビット誤り率に基づいて信号の信号対ノイズ比(SNR)を決定することと、を行うように構成されている、SQI回路と、を含む、物理層デバイス。
【0086】
実施例2:SQI回路は、スレッショルドを第1の値に調整し、第1の期間中のコンパレータの出力の第1のビット誤り率を取得することと、スレッショルドを第2の値に調整し、第2の期間中のコンパレータの出力の第2のビット誤り率を取得することと、第1のビット誤り率及び第2のビット誤り率に基づいて信号のSNRを決定することと、を行うように構成されている、実施例1に記載の物理層デバイス。
【0087】
実施例3:信号を追加のスレッショルドと比較するように構成された追加のコンパレータを更に含み、SQI回路は、スレッショルドを第1の値に調整し、期間中のコンパレータの出力の第1のビット誤り率を取得することと、追加のスレッショルドを第2の値に調整し、期間中の追加のコンパレータの出力の第2のビット誤り率を取得することと、第1のビット誤り率及び第2のビット誤り率に基づいて信号のSNRを決定することと、を行うように構成されている、実施例1に記載の物理層デバイス。
【0088】
実施例4:通信バスから受信された信号を処理するように構成された受信回路を更に含む、実施例1~3のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0089】
実施例5:受信回路は、信号を中間スレッショルドレベルと比較するように構成された受信コンパレータを含み、中間スレッショルドレベルは、信号の論理レベル高と論理レベル低との間の中間である、実施例4に記載の物理層デバイス。
【0090】
実施例6:SQI回路は、信号のSNRに基づいて信号のビット誤り率(BER)を決定するように更に構成されている、実施例1~5のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0091】
実施例7:変換データが記憶されているデータ記憶デバイスを更に含み、変換データは、複数のSNR値と、この複数のSNR値に対応する複数のBER値と、を含み、SQI回路は、複数のSNR値から、信号の決定されたSNRに最も近い、SNR値のうちの1つを特定することによって信号のBERを決定し、複数のBER値からの対応するBERを信号のBERとして選択するように構成されている、実施例6に記載の物理層デバイス。
【0092】
実施例8:変換データが記憶されているデータ記憶デバイスを更に含み、変換データは、複数のSNR値と、この複数のSNR値に対応する複数の対のビット誤り率(BER)値と、を含み、SQI回路は、第1のビット誤り率及び第2のビット誤り率に最も近いBER対に対応する、複数のSNR値のうちの1つを選択することによって信号のSNRを決定するように構成されている、実施例1~7のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0093】
実施例9:物理層デバイスは、信号のSNRを含むSQI情報を、共有伝送媒体を介して有線ローカルエリアネットワークに報告するように構成されている、実施例1~8のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0094】
実施例10:信号の信号対ノイズ比(SNR)を推定する方法であって、物理層デバイスのコンパレータのスレッショルドを第1の値に設定することと、コンパレータに信号を印加することであって、信号は、有線ローカルエリアネットワークの通信バスから受信され、通信バスは共有伝送媒体を含む、ことと、スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定することと、コンパレータのスレッショルドを第1の値とは異なる第2の値に設定することと、信号をコンパレータに印加することと、スレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することと、第1のビット誤り数及び第2のビット誤り数に基づいて信号のSNRを決定することと、を含む、方法。
【0095】
実施例11:決定されたSNRに基づいて信号のビット誤り率を決定することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【0096】
実施例12:複数のSNRに対応する複数のビット誤り率を含む変換データを記憶することを更に含み、信号のビット誤り率を決定することは、記憶された変換データを参照することを含む、実施例11に記載の方法。
【0097】
実施例13:データ記憶デバイスに、第1のビット誤り数と第2のビット誤り数との組み合わせに対応する複数のSNRを含む変換データを記憶することを更に含み、SNRを決定することは、記憶された変換データを参照して、第1のビット誤り数及び第2のビット誤り数を、変換データに記憶された複数のSNRからのSNRに対応付けることを含む、実施例10~12のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施例14:スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定することは、決定された第1のビット誤り数が第1の所定のスレッショルド値より小さい場合、スレッショルドの第1の値をより高くなるように調整するステップと、決定された第1のビット誤り数が第2の所定のスレッショルド値より大きい場合、スレッショルドの第1の値をより低くなるように調整するステップと、調整されたスレッショルドに設定されたコンパレータに信号を印加している間に測定された置換値で、第1のビット誤り数を置換するステップと、を含む、実施例10~13のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施例15:コンパレータは、第1のコンパレータ及び第2のコンパレータを含み、スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定することは、第1のコンパレータの第1のスレッショルドが第1の値に設定されている第1のコンパレータの第1の出力の第1のビット誤り数を決定するステップを含み、スレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することは、第2のコンパレータの第2のスレッショルドが第2の値に設定されている第2のコンパレータの第2の出力の第2のビット誤り数を決定するステップを含む、実施例10~14のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施例16:第1のコンパレータの第1の出力の第1のビット誤り数を決定するステップは、第2のスレッショルドが第2の値に設定されている第2のコンパレータの第2の出力の第2のビット誤り数を決定するステップと少なくとも部分的に同時に実行される、実施例15に記載の方法。
【0101】
実施例17:スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定すること及びスレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することは、少なくとも部分的に同時に実行される、実施例10~16のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施例18:スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定すること及びスレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することは、別個の期間にわたって実行される、実施例10~15のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施例19:物理層デバイスであって、1つ以上のプロセッサと、コンピュータ可読命令が記憶されている1つ以上のデータ記憶デバイスであって、コンピュータ可読命令は、1つ以上のプロセッサに、物理層デバイスのコンパレータに信号が印加されている間に、物理層デバイスのコンパレータのスレッショルドを第1の値に設定することであって、信号は、有線ローカルエリアネットワークの通信バスから受信され、第1の値は、信号の論理電圧レベル間の中間である中間スレッショルド値とは異なり、通信バスは、共有伝送媒体を含む、ことと、スレッショルドが第1の値に設定されているコンパレータの出力の第1のビット誤り数を決定することと、信号がコンパレータに印加されている間に、コンパレータのスレッショルドを第2の値に設定することであって、第2の値は、第1の値及び中間スレッショルド値とは異なる、ことと、スレッショルドが第2の値に設定されているコンパレータの出力の第2のビット誤り数を決定することと、第1のビット誤り数及び第2のビット誤り数に基づいて信号の信号対ノイズ比(SNR)を決定することと、を命令するように構成されている、1つ以上のデータ記憶デバイスと、を含む、物理層デバイス。
【0104】
実施例20:1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のデータ記憶デバイスを収容する半導体チップパッケージを更に含む、実施例19に記載の物理層デバイス。
【0105】
実施例21:コンピュータ可読命令は、1つ以上のプロセッサに、信号のSNRに基づいて信号のビット誤り率(BER)を決定することを命令するように更に構成されている、実施例19及び20のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0106】
実施例22:10.SQI回路は、搬送波感知多重アクセス/衝突検出(CSMA/CD)モード又は物理層衝突回避モードのうちの1つで信号のSNRを決定するように構成されている、実施例1~9のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0107】
実施例23:SQI回路は、複数の異なる送信者から受信された信号のSNRを決定するように構成されている、実施例1~9及び22のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0108】
実施例24:SQI回路は、信号が所定の特定の送信者から受信されたと判定された場合に、信号のSNRを決定するように構成されている、実施例1~9及び22~23のいずれか1つに記載の物理層デバイス。
【0109】
結論
本開示は、特定の例示される実施形態に関して本明細書に記載されているが、当業者は、本発明がそのように限定されないことを認識し、理解するであろう。むしろ、以下にそれらの法的等価物とともに特許請求されるような本発明の範囲から逸脱することなく、例示され、説明される実施形態に対して数多くの追加、削除、及び修正を行うことができる。加えて、一実施形態の特徴は、本発明者によって想到されるように、別の開示した実施形態の特徴と組み合わせることができるが、それでも、本開示の範囲内に包含される。