(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01V 8/20 20060101AFI20231002BHJP
G01S 17/93 20200101ALI20231002BHJP
【FI】
G01V8/20 Q
G01S17/93
(21)【出願番号】P 2018063375
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501397920
【氏名又は名称】旭光電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136205
【氏名又は名称】佐々木 康
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】樫 俊太郎
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-015415(JP,A)
【文献】特開2006-317237(JP,A)
【文献】特開2000-057389(JP,A)
【文献】特開2014-000305(JP,A)
【文献】特開2000-213932(JP,A)
【文献】特開2008-277163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 17/00-17/95
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットの外周面に沿って配置される物体検知装置であって、
検知光を投光する検知光投光部、
前記検知光の反射光を受光する反射光受光部であって、前記検知光投光部に対応して配置される反射光受光部、
を有する複数の物体検知センサ部、
前記反射光受光部が、対応する前記検知光投光部以外の前記検知光投光部が投光する前記検知光を受光しないように、前記検知光投光部が前記検知光を投光し、及び、前記反射光受光部を前記反射光の受光待機状態とする検知処理を実行する制御部、
を有する物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に係る物体検知装置において、
前記制御部は、
第1の前記検知光投光部が投光する前記検知光以外に、前記検知光を投光した前記第1の検知光投光部に対応する前記反射光受光部が、第2の前記検知光投光部が投光する前記検知光を受光する可能性がある場合、前記第1の検知光投光部と前記第2の検知光投光部とを異なるグループとするセンサグループ情報を用いて、同一グループ内の前記検知光投光部が前記検知光を投光し、所定時間経過後まで、前記検知光を投光した前記検知光投光部に対応する前記反射光受光部を、前記反射光の受光待機状態とする前記検知処理を実行すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項2に係る物体検知装置において、
前記制御部は、
同一の前記グループに属する前記検知光投光部に対して、同時に前記検知光を投光するように制御すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項2、または、請求項3に係る物体検知装置において、
前記制御部は、
ある前記グループに関する前記検知処理が実行されている際に、前記グループとは異なる前記グループに属する前記物体検知センサ部の動作を休止させること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれかに係る物体検知装置において、
前記制御部は、
所定時間の間、前記検知光投光部、及び、前記反射光受光部を動作させ、第1の前記検知光投光部が投光する前記検知光以外に、前記検知光を投光した前記第1の検知光投光部に対応する前記反射光受光部が、第2の前記検知光投光部が投光する前記検知光を受光した場合、前記第1の検知光投光部と前記第2の検知光投光部とを異なるグループとするセンサグループ情報を生成すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
請求項1に係る物体検知装置において、
前記制御部は、
一の前記検知光投光部が前記検知光を投光し、所定時間経過後まで、対応する前記反射光受光部を前記反射光の前記受光待機状態とする前記検知処理を実行すること、
を特徴とする物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置に関し、特に、物体検知センサ部を、設置場所の形状にかかわらず、容易に配置することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物体検知装置について、
図17に示す物体検知装置100Pを用いて説明する。物体検出装置100Pは、複数の光センサユニットSU及び1つの中央制御部115Pを有している。 各光センサユニットSUは、複数の光センサ部111P及び1つのユニット制御部113Pを有している。各光センサユニットSUでは、複数の光センサ部111Pと1つのユニット制御部113Pとが、光センサ用接続線L111を介してスター型に接続されている。1つのグループラインGLに属するユニット制御部113Pは、ユニット制御部用接続線L113を介してカスケード型に接続される。カスケード型に接続されるユニット制御部113Pの一つは、ユニット制御部用接続線L113を介して中央制御部115Pに接続される。このように、フレキシブル性を有するユニット制御部用接続線L113を用いることによって、設置場所の形状に合わせて、自由に光センサユニットSUを配置することができる。また、設置場所での検知範囲を自由に設定することができる。よって、検知範囲を自由に設定できる、空間での物体検出が可能となる。
【0003】
物体検出装置100Pの使用先である産業用ロボット50は、7軸の可動軸を有するロボットである。産業用ロボット50は、アームAM1~AM7、可動回転ジョイントJ1~J13、土台B1、及びハンドH1を有している。アームAM1~AM7、ハンドH1、土台B1の各外周面に物体検出装置100Pが配置されている。
【0004】
アームAM1~AM7、土台B1、及びハンドH1には、それぞれ1つのユニット制御部及び複数の光センサ部111が配置されている。
図17に示すように、光センサ部111は、アームAM1~AM7、ハンドH1、土台B1等、設置場所の形状にかかわらず、いずれの場所にも配置することができる。このように、物体検出装置100Pを設置対象である装置の外表面に容易に光センサ部111Pを配置することができるので、産業用ロボットの周辺に人等の物体を検出したときに、ロボットを緊急停止させることが可能なる。つまり、設置対象装置、例えば産業用ロボットの安全性を高めることができる。
【0005】
また、光センサ用接続線L111の長さを調整することにより、どのような位置にでも光センサ部111Pを配置することができる。よって、角柱状のアームAM1~AM7、円柱状の土台B1等、設置場所の形状にかかわらず、全周囲に光センサ部111を配置することができる。これにより、ロボットの全周縁で人等の物体を検出することができるので、設置対象装置の安全性を高めることができる。
【0006】
さらに、ハンドH1のような複雑な形状であっても、自由に光センサ部111Pを配置することができる。よって、光センサ部111を配置するにあたって死角の発生を防止できるので、設置対象装置の安全性を高めることができる。
【0007】
さらに、可動回転ジョイントJ1~J13のように、光センサ部111Pを配置するアームAM1~AM7等の間に障害物があったとしても、ユニット制御部用接続線L113の長さを調整することにより、障害物を回避しながら、ユニット制御部113P同士を接続することができる。このように、物体検知装置100Pでは、配置する装置の形状にかかわらず、自由に配置することができる。
【0008】
物体検知装置100Pでは、どのような設置形状であっても、光センサ部111P及びユニット制御部113Pの数、配置位置、また、光センサ用接続線L111、ユニット制御部用接続線L113の長さを調整するだけで、容易に物体検知装置を配置することができる。また、物体検知装置100Pは、検知位置、検知範囲の変更、設置位置の変更、設置対象装置の形状の変更等、設置環境の変化にあわせて、光センサ部111P、ユニット制御部113Pの設置位置を変更したり、設置数を追加、減少させたりすることによって、容易に設置環境の変化に対応することができる(以上、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の物体検知装置100Pには、以下に示すような改善すべき点がある。物体検知装置100Pでは、産業用ロボット50において、異なる光センサ部111P同士が正面に対向して配置されたり、産業用ロボット50が動作することによって異なる光センサ部111P同士が、正面に対向して位置したりしてしまうことがある。異なる光センサ部111P同士が対向して位置すると、一方の光センサ部111Pの投光素子(図示せず)が投光する検知光が、対向して位置するもう一方の光センサ部111Pの受光素子(図示せず)で、直接的に受光されてしまい、正確な検知ができない場合がある、という改善すべき点がある。
【0011】
なお、物体検知装置100Pにおいて検知が正確にできなくなる理由として、以下が考えられる。対向して位置する光センサ部111Pにおいて、一方の投光素子が投光した検知光を受光する他方の受光素子は、物体に跳ね返ってきた反射光ではなく、一方の投光素子が発光した直接光である。このため、投光素子にける検知光の投光から対応する受光素子での反射光の受光まで、つまり、検知する物体までの往復した時間に基づき物体までの距離を検知する物体検知装置100Pでは、正確に物体までの距離を検知できない。
【0012】
また、受光素子は、投光素子が投光する直接的な検知光であるため、光強度が強すぎて、受光素子においてオーバーフローしてしまい、正確に物体までの距離を検知できない。
【0013】
そこで、本発明は、検知光を投光する投光素子及び反射光を受光する受光素子の配置位置に影響されることなく正確に物体を検知できる物体検知装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0015】
本発明に係る物体検知装置は、検知光を投光する検知光投光部、前記検知光の反射光を受光する反射光受光部であって、前記検知光投光部に対応して配置される反射光受光部、を有する複数の物体検知センサ部、前記反射光受光部が、対応する前記検知光投光部以外の前記検知光投光部が投光する前記検知光を受光しないように、前記検知光投光部が前記検知光を投光し、及び、前記反射光受光部を前記反射光の受光待機状態とする検知処理を実行する制御部、を有する。
【0016】
これにより、反射光受光部が対応する検知光投光部以外の検知光投光部が投光した検知光を受光することを防止でき、検知光の誤受光を防止できる。よって、物体検知装置は、検知光を投光する投光素子及び反射光を受光する受光素子の配置位置に影響されることなく正確に物体を検知できる。
【0017】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、第1の前記検知光投光部が投光する前記検知光以外に、前記検知光を投光した前記第1の検知光投光部に対応する前記反射光受光部が、第2の前記検知光投光部が投光する前記検知光を受光する可能性がある場合、前記第1の検知光投光部と前記第2の検知光投光部とを異なるグループとするセンサグループ情報を用いて、同一グループ内の前記検知光投光部が前記検知光を投光し、所定時間経過後まで、前記検知光を投光した前記検知光投光部に対応する前記反射光受光部を、前記反射光の受光待機状態とする前記検知処理を実行すること、を特徴とする。
【0018】
これにより、センサグループ情報を用いるだけで、簡単に、反射光受光部が対応する検知光投光部以外の検知光投光部が投光した検知光を受光することを防止でき、検知光の誤受光を防止できる。よって、物体検知装置は、検知光を投光する投光素子及び反射光を受光する受光素子の配置位置に影響されることなく正確に物体を検知できる。
【0019】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、同一の前記グループに属する前記検知光投光部に対して、同時に前記検知光を投光するように制御すること、を特徴とする。
【0020】
これにより、センサグループ情報を用いる場合であっても、短時間で検知処理を実行することができる。
【0021】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、ある前記グループに関する前記検知処理が実行されている際に、前記グループとは異なる前記グループに属する前記物体検知センサ部の動作を休止させること、を特徴とする。
【0022】
これにより、異なるグループ間での誤検知を、確実に防止できる。
【0023】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、所定時間の間、前記検知光投光部、及び、前記反射光受光部を動作させ、第1の前記検知光投光部が投光する前記検知光以外に、前記検知光を投光した前記第1の検知光投光部に対応する前記反射光受光部が、第2の前記検知光投光部が投光する前記検知光を受光した場合、前記第1の検知光投光部と前記第2の検知光投光部とを異なるグループとするセンサグループ情報を生成すること、を特徴とする。
【0024】
これにより、センサグループ情報を自動的に生成できるため、より容易に検知光の誤受光を防止でき、検知光を投光する投光素子及び反射光を受光する受光素子の配置位置に影響されることなく正確に物体を検知できる。
【0025】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、一の前記検知光投光部が前記検知光を投光し、所定時間経過後まで、対応する前記反射光受光部を前記反射光の前記受光待機状態とする前記検知処理を実行すること、を特徴とする。
【0026】
これにより、簡単に、反射光受光部が対応する検知光投光部以外の検知光投光部が投光した検知光を受光することを防止でき、検知光の誤受光を防止できる。よって、物体検知装置は、検知光を投光する投光素子及び反射光を受光する受光素子の配置位置に影響されることなく正確に物体を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る物体検知装置の一実施例である物体検知装置100を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す図である。
【
図3】物体検知センサ部113のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】制御部117のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】産業用ロボットRBTの動作を示す図である。
【
図7】物体検知装置100の動作の状態を示すタイミング図である。
【
図8】物体検知装置100の動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明に係る物体検知装置の一実施例である物体検知装置200を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す図である。
【
図10】物体検知装置100の動作の状態を示すタイミング図である。
【
図11】物体検知装置100の動作を示すフローチャートである。
【
図12】本発明に係る物体検知装置の一実施例である物体検知装置300を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す図である。
【
図13】物体検知装置300の動作を示すフローチャートである。
【
図14】物体検知装置のその他の実施例を示す図である。
【
図15】物体検知装置のその他の実施例を示す図である。
【
図16】物体検知装置のその他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0029】
本発明に係る物体検知装置について、
図1に示す物体検知装置100を例に説明する。物体検知装置100は、周囲に物体が存在するか否かを検知し、物体の検知結果に基づき所定の動作をさせるものである。
【0030】
第1 構成
1. 産業用ロボット
物体検知装置100が配置される産業用ロボットRBTについて、
図1を用いて説明する。産業用ロボットRBTの外表面に物体検知装置100が配置される。産業用ロボットRBTは、5軸の可動軸を有するロボットである。産業用ロボットRBTは、アームAM1~AM7、回転土台B、及びハンドHを有している。アームAM1~AM7は、それぞれ、一端にアームの長手方向を回転軸とする回転ジョイント、他端にアームの短手方向を回転軸とする回転ジョイントを有している。ハンドH1は、先端で対象物を挟持するための可動挟持部を有している。
【0031】
物体検知装置100は、複数の物体検知センサユニット111、制御部117、及び、接続ハーネス119を有している。物体検知センサユニット111は、アームAM1~AM7、回転土台B、及び、ハンドHの各外周面に沿って配置され、周りに存在する検知対象物体を検知する。なお、物体検知センサユニット111は、検知対象物体までの距離を計測することによって、検知対象物体を検知する。
【0032】
物体検知センサユニット111は、接続ハーネス119を介して制御部117に接続されている。また、制御部117は、産業用ロボットRBTの各回転ジョイントを動作させる動力源(図示せず)に接続されている。制御部117は、動力源の動作を制御することによって、アームAM1~AM7、回転土台B、及び、ハンドHの動作を制御する。
【0033】
2.物体検知装置100
物体検知装置100について、
図2を用いて説明する。物体検知装置100は、複数の物体検知センサユニット111、制御部117、及び、接続ハーネス119を有している。物体検知センサユニット111は、複数の物体検知センサ部113、及び、センサ配置柔軟部材115を有している。
【0034】
物体検知センサ部113は、所定の光を検知光として投光し、検知光の反射を受光することによって、物体までの距離を計測し、物体が存在するか否かを検知する。物体検知センサ部113のハードウェア構成を
図3に示す。
【0035】
物体検知センサ部113は、投光素子113a、投光レンズ113b、受光素子113c、及び、センサ用通信回路113dを有している。投光素子113aは、所定の検知光、例えば近赤外線を投光する。投光レンズ113bは、投光素子113aが投光した検知光を所定の範囲(検知領域R113)に拡散する。受光素子113cは、投光素子113aが投光した検知光の物体による反射光を受光する。
【0036】
投光素子113aとしては、例えば近赤外LED(Light Emitting Diode)等を利用することができる。受光素子113cとしては、例えば、SPAD(Single Photon Avaranche Daiode)を用いることができる。
【0037】
SPADでは、検知光の反射光を受光すると、受光した反射光により自らに発生したキャリヤーをアバランシ増幅を用いて電気的パルスに変換して、その受光時間をTDC(Time to Digital Converter)により計測する。SPADは、反射光を受光した場合、投光素子113aが検知光を投光した時間、及び、計測した反射光の受光時間を用いて、検知光の投光から反射光の受光までの時間である物体検知時間を算出し、検知情報としてセンサ用通信回路113dに送信する。なお、受光素子113cは、所定時間内に反射光を受光しなかった場合や、物体までの距離を正確に算出するのに不十分な光量(フォトン数)しか捕えられなかった場合には、測定可能圏内に物体を検知できない旨を内容とする検知情報を、センサ用通信回路113dに送信する。
【0038】
センサ用通信回路113dは、制御部117のセンサ制御用通信回路117gと接続され、物体検知センサ部113と制御部117とが通信できるようにする。なお、各物体検知センサ部113のセンサ用通信回路113dは、直接的に、つまり、パラレルに制御部117に接続される。
【0039】
このように、物体検知センサ部113は、物体までの距離を検知することによって、物体検知センサ部113を配置する産業用ロボットRBTから任意の設定距離内に侵入した物体や人を検知する。これにより、産業用ロボットRBTからの距離に基づき、産業用ロボットRBTの動作を制御できる
【0040】
図2に戻って、センサ配置柔軟部材115は、柔軟性を有する部材であって、取り付ける対象物の表面に沿って配置できる。センサ配置柔軟部材115を形成し得る素材としては、例えば、薄いゴムプレートを用いることができる。物体検知センサ部113は、所定の間隔でセンサ配置柔軟部材115に配置されている。センサ配置柔軟部材115には、所定の固定部材、接着剤、ネジ等、所定の固定手段によって、物体検知センサ部113が固定される。
【0041】
制御部117は、各物体検知センサ部113から、接続ハーネス119を介して検知情報を受信する。制御部117は、各物体検知センサユニット111の各物体検知センサ部113が有する投光素子113aに、所定のタイミングで検知光を投光するように制御し、また、受光素子113cから検知情報を取得する。
【0042】
制御部117のハードウェア構成について
図4を用いて説明する。制御部117は、CPU117a、メモリ117b、センサ制御用通信回路117g、及び、動作制御用通信回路117hを有している。
【0043】
CPU117aは、メモリ117bに記録されているオペレーティング・システム(OS)、センサ制御プログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ117bは、CPU117aに対して作業領域を提供するとともに、オペレーティング・システム(OS)、センサ制御プログラム等その他のアプリケーションのプログラム、及び、センサグループ情報(後述)等、各種データを記録保持する。
【0044】
センサ制御用通信回路117gは、物体検知センサ部113のセンサ用通信回路113d(
図3参照)と、接続ハーネス119(
図2参照)を介して接続され、両者間での情報の送受信を行う。なお、センサ制御用通信回路117gは、物体検知センサ部113のそれぞれと、直接的に、つまり、パラレルに接続される。動作制御用通信回路117hは、物体検知センサユニット111による物体の存在検知に基づき、動作を制御する対象に接続され、両者間での情報の送受信を行う。
【0045】
図2に戻って、接続ハーネス119は、各物体検知センサ部113と制御部117とを直接的に接続する。つまり、接続ハーネス119は、各物体検知センサ部113を制御部117に対してパラレル接続するための接続線である。
【0046】
第2 センサ制御プログラムの動作
センサ制御プログラムに基づくCPU117aの動作について、以下において説明する。
【0047】
1.物体検知センサ部113のグルーピング
物体検知装置100が有する各物体検知センサユニット111を、以下の条件に従いグルーピングしておく。物体検知装置100では、物体検知センサユニット111をグルーピングすることによって、物体検知センサユニット111に属する物体検知センサ部113についてもグルーピングしている。産業用ロボットRBTに配置されている物体検知センサユニット111の物体検知センサ部113において、産業用ロボットRBTの動作にともない、自身が有する投光素子113aが投光する検知光以外に、他の物体検知センサユニット111の物体検知センサ部113が有する投光素子113aが投光する検知光を受光し、正常に物体検知ができなくなる可能性があるか否かを基準に、物体検知センサユニット111をグルーピングする。
【0048】
なお、以下においては、産業用ロボットRBTに配置されている物体検知センサユニット111の物体検知センサ部113において、産業用ロボットRBTの動作にともない、自身が有する投光素子113aが発する検知光以外に、他の物体検知センサユニット111の物体検知センサ部113が有する投光素子113aが発する検知光を、自身が有する投光素子113aに対応する受光素子113cが受光し、物体検知センサ部113での正常な物体検知ができなくなる可能性があることを、物体検知センサユニット111同士が「干渉する」といい、そのような可能性がないことを、物体検知センサユニット111同士が「干渉しない」ということとする。
【0049】
例えば、
図1に示す産業用ロボットRBTにおいては、
図5に示すように、回転土台B、及び、アームAM1と、アームAM7、及び、ハンドHとが、対向して位置する場合が存在する。したがって、回転土台B、及び、アームAM1と、アームAM7、及び、ハンドHとは、「干渉する」。よって、回転土台B、及び、アームAM1と、アームAM7、及び、ハンドHとは、別グループに属するようにグルーピングする。なお、回転土台B、及び、アームAM1が属するグループをグループXと、アームAM7、及び、ハンドHが属するグループをグループYとする。
【0050】
一方、アームAM3、AM5については、回転土台B、アームAM1とは「干渉しない」、また、アームAM7、ハンドHとも「干渉しない」。よって、アームAM3、AM5は、グループX、グループY、いずれのグループに属させてもいいが、ここでは、グループXに属させることにする。
【0051】
物体検知センサユニット111のグルーピングを記述した情報をセンサグループ情報としてメモリ117bに記憶保持する。センサグループ情報を
図6に示す。センサグループ情報は、対象物体検知センサユニット記述部、及び、グループ記述領域を有している。対象物体検知センサユニット記述部には、産業用ロボットRBTに配置される物体検知センサユニット111の識別情報が記述される。グループ記述領域には、対応する対象物体検知センサユニット記述部に記述される識別情報で識別される物体検知センサユニット111が属するグループが記述される。
図6のセンサグループ情報においては、例えば、識別子「A1」で識別されるアームAM1に配置される物体検知センサユニット111がグループ「X」に属することを示している。
【0052】
同一グループに属する物体検知センサユニット111については、互いに「干渉しない」ため、同時に検知光を投光し、検知光の反射光を受光するか否かを判断する検知処理を実行する。なお、一のグループに属する物体検知センサユニット111において検知処理を実行している間は、他のグループに属する物体検知センサユニット111においては検知処理を実行せず、休止にする。そして、一のグループにおける検知処理を実行した後、他の一のグループにおいて、同様の検知処理を実行する。
【0053】
例えば、
図7に示すタイミング図のように、同一グループ内では、各物体検知センサユニット111の各物体検知センサ部113にほぼ同時に検知開始情報SSが送信され、各物体検知センサ部113は、ほぼ同時に検知処理を開始するため、各物体検知センサ部113が、順次、検知処理を実行する場合に比して、短時間で検知処理を行える。また、異なるグループ間では、順次、検知処理を実行し、重複した検知処理を実行しないため、異なる物体検知センサユニット111間において、検知光の誤受光が生じない。よって、物体検知センサユニット111における誤作動を防止できる。
【0054】
なお、グループを切り替える際に、物体検知センサ部113を立ち上げるための時間、及び、物体検知センサ部113を休止するための切り替え時間が必要となるが、各物体検知センサ部113を順次に動作させて検知処理を実行する際に比して、切り替え回数を低減することができるため、短時間で全体的な検知処理を実行することができる。
【0055】
2.フローチャート
CPU117aが実行するセンサ制御プログラムに基づく物体検知処理について
図8に示すフローチャートを用いて説明する。CPU117aは、メモリ117bからセンサグループ情報を取得する(S701)。CPU117aは、センサグループ情報に記述されているグループのうち一のグループを検知対象グループとして選択する(S703)。
【0056】
CPU117aは、検知対象グループに属する一の物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとして選択する(S705)。CPU117aは、検知対象センサユニットに属する全ての物体検知センサ部113の投光素子113aに対して、検知光を投光するとともに、対応する受光素子113cに対して検知光の反射光の受光待機状態とする旨の検知開始情報SS(
図7参照)を、センサ制御用通信回路117g(
図4参照)、センサ用通信回路113d(
図3参照)を介して、一斉に送信する(S707)。なお、どの物体検知センサ部113がどの物体検知センサユニット111に属するのかについては、センサ情報として、メモリ117bに記憶保持されている。
【0057】
物体検知センサ部113の投光素子113aは、検知開始情報を取得すると、検知光を投光するとともに、受光素子113cは、受光待機状態とする。自らに対応する投光素子113aが投光した検知光の反射光を受光した受光素子113cは、検知光の投光から反射光の受光までの時間である物体検知時間を内容とする検知情報を、一方、所定時間内に反射光を受光しなかった場合や、物体までの距離を正確に算出するのに不十分な光量(フォトン数)しか捕えられなかった場合には、測定可能圏内に物体を検知できない旨を内容とする検知情報を、センサ用通信回路113d(
図3参照)、センサ制御用通信回路117g(
図4参照)を介して、CPU117aに送信する。
【0058】
CPU117aは、検知情報を受信すると(S709)、検知情報の内容が物体検知時間であるか否かを判断する(S711)。CPU117aは、検知情報の内容が物体検知時間であると判断すると、取得した物体検知時間から、検知対象物体までの距離を算出する(S713)。検知対象物体までの距離の算出にあたっては、物体検知時間は検知対象物体までの検知光の往復時間に相当することを利用して、検知光の速度を用いて算出する。検知対象物体までの距離の算出に必要なデータについては、予めメモリ117bに記憶保持している。
【0059】
CPU117aは、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満であるか否かを判断する(S715)。動作停止距離とは、制御部117が動作を制御する対象である産業用ロボットRBTの動作を停止させる必要があると判断する検知物体までの距離をいう。動作停止距離は、物体検知センサ部113毎に設定されている。なお、動作停止距離は、メモリ117bに記憶保持されている。
【0060】
CPU117aは、算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満であると判断すると、産業用ロボットRBTを動作させる駆動装置に対して、動作を停止させる動作停止情報を送信する(S717)。CPU117aは、産業用ロボットRBTの動作を停止させた後、動作再開情報を取得すると(S719)、検知処理を終了しなければ(S729)、検知処理を再開する。
【0061】
CPU117aは、ステップS715において算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満でない、つまり、産業用ロボットRBTの所定の周囲には物体が存在しないと判断すると、検知対象センサユニットの全ての物体検知センサ部113について、ステップS709~S715までの処理を実行したか否かを判断する(S721)。
【0062】
CPU117aは、検知対象センサユニットの全ての物体検知センサ部113について、ステップS709~S715までの処理を実行したと判断すると、全ての物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとしてステップS707~S721の処理を実行したか否か判断する(S723)。CPU117aは、ステップS723において、全ての物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとしてステップS709~S721の処理を実行していないと判断すると、残りの物体検知センサユニット111に対してステップS709~S721の処理を実行し、一のグループに属する全て物体検知センサユニット111に対して、検知開始情報を送信する。
【0063】
CPU117aは、所定のインターバル期間IT(
図7参照)が経過したと判断すると(S725)、全てのグループを検知対象グループとしてステップS705~S725の処理を実行したか否か判断する(S727)。なお、インターバル期間ITについては、次の測定を開始するまでに必要な時間であり、物体検知センサ部113の性能、物体検知センサユニット111と制御部117までの距離、物体検知センサユニット111と制御部117との間の通信方式、通信環境等を勘案して予め決定し、メモリ117bに記憶保持しておく。
【0064】
CPU117aは、ステップS727において、全てのグループを検知対象グループとしてステップS703~S725の処理を実行したと判断すると、検知処理を終了しなければ(S729)、産業用ロボットRBTに配置されている全ての物体検知センサユニット111について検知処理を実行した、つまり、物体検知センサユニット111における検知処理を1周回したとして、次の周回の検知処理を実行する。
【0065】
一方、CPU117aは、ステップS727において、全てのグループを検知対象グループとしてステップS705~S725の処理を実行していないと判断すると、他の一のグループについてステップS705~S725の処理を実行する。つまり、CPU117aは、一のグループに対する物体検知処理が終了したと判断し、他の異なるグループに対する物体検知処理を開始する。例えば、
図7に示すように、グループXに対する物体検知処理が終了したと判断し、グループXとは異なるグループYに対する物体検知処理を実行する。
【実施例2】
【0066】
前述の実施例1にかかる物体検知装置100においては、センサグループ情報を用いて、受光素子113cが、対応する投光素子113a以外の投光素子113aが投光する検知光を受光しないようにした。一方、本実施例にかかる物体検知装置200は、センサグループ情報を用いることなく、受光素子113cが、対応する投光素子113a以外の投光素子113aが投光する検知光を受光しないようにするものである。なお、以下においては、実施例1と同様の構成については、同様の符号を付し、また、詳細な説明を省略する。
【0067】
第1 構成
物体検知装置200の構成について
図9を用いて説明する。
図9は、物体検知装置200を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す。物体検知装置200は、複数の物体検知センサユニット111、制御部117、及び、接続ハーネス119を有している。物体検知装置200の各構成については、実施例1における構成と同様である(
図1~
図4参照)。
【0068】
第2 センサ制御プログラムの動作
物体検知装置200におけるセンサ制御プログラムに基づくCPU117aの動作について、以下において説明する。
【0069】
1.順次検知
物体検知装置200では、センサグループ情報を用いることなく、物体検知装置200が有する全ての物体検知センサ部113における物体検知処理を、互いに「干渉しない」ように、順次、実行する。つまり、
図10に示すように、物体検知センサ部113に検知開始情報SSを送信し、投光素子113aでの検知光の投光、受光有効期間RTにおける受光素子113cでの反射光受信という物体検知処理を、全ての物体検知センサ部113に対して、順次、実行していく。
【0070】
2.フローチャート
物体検知装置200のCPU117aが実行するセンサ制御プログラムに基づく物体検知処理について
図11に示すフローチャートを用いて説明する。CPU117aは、一の物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとして選択する(S1001)。CPU117aは、検知対象センサユニットに属する一の物体検知センサ部113を検知対象センサ部として選択する(S1003)。
【0071】
CPU117aは、検知対象センサ部の投光素子113aに対して、検知光を投光するとともに、対応する受光素子113cに対して、検知光の反射光の受光待機状態とする旨の検知開始情報SS(
図10参照)を送信する(S1005)。なお、どの物体検知センサ部113がどの物体検知センサユニット111に属するのかについては、センサ情報として、メモリ117bに記憶保持されている。
【0072】
検知光を投光した投光素子113aに対応する受光素子113cは、検知光の反射光を受光すると、検知光の投光から反射光の受光までの時間である物体検知時間を内容とする検知情報を、一方、所定時間内に反射光を受光しなかった場合や、物体までの距離を正確に算出するのに不十分な光量(フォトン数)しか捕えられなかった場合には、測定可能圏内に物体を検知できない旨を内容とする検知情報を、センサ用通信回路113d(
図3参照)、センサ制御用通信回路117g(
図4参照)を介して、CPU117aに送信する。
【0073】
CPU117aは、検知情報を受信すると(S1007)、ステップS711~ステップS719の処理を実行する。なお、ステップS711~ステップS719の処理については、実施例1と同様であるため、詳細な記述を省略する。
【0074】
CPU117aは、ステップS715において算出した検知対象物体までの距離が動作停止距離未満でない、つまり、産業用ロボットRBTの所定の周囲には物体が存在しないと判断すると、所定のインターバル時間が経過しているか否かを判断する(S1009)。
【0075】
CPU117aは、所定のインターバル時間が経過したと判断すると、検知対象ユニットの全ての検知対象センサ部に対してステップS1007、S1009、S711~S715の処理を実行したか否か判断する(S1011)。CPU117aは、ステップS1011において、全ての物体検知センサ部113を検知対象センサ部としてステップS1007、S1009、S711~S715の処理を実行していないと判断すると、残りの物体検知センサ部113に対してステップS1007、S1009、S711~S715の処理を実行する。
【0076】
CPU117aは、ステップS1011において、全ての物体検知センサ部113を検知対象センサ部としてステップS1007、S1009、S711~S715の処理を実行したと判断すると、全ての物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとしてステップS1003~S1011、S711~S715の処理を実行したか否か判断する(S1013)。CPU117aは、ステップS1013において、全ての物体検知センサユニット111を検知対象センサユニットとしてステップS1003~S1011、S711~S715の処理を実行していないと判断すると、検知処理を終了しなければ(S729)、産業用ロボットRBTに配置されている全ての物体検知センサユニット111について検知処理を実行した、つまり、物体検知センサユニット111における検知処理を1周回したとして、次の周回の検知処理を実行する。
【実施例3】
【0077】
前述の実施例1にかかる物体検知装置100においては、予め設定したセンサグループ情報を用いて、物体検知を実行した。一方、本実施例にかかる物体検知装置300は、センサグループ情報を自動的に生成するものである。なお、以下においては、実施例1と同様の構成については、同様の符号を付し、また、詳細な説明を省略する。
【0078】
第1 構成
物体検知装置300の構成について
図12を用いて説明する。
図12は、物体検知装置300を産業用ロボットRBTに配置した状態を示す。物体検知装置300は、複数の物体検知センサユニット111、制御部117、及び、接続ハーネス119を有している。物体検知装置300の各構成については、実施例1における構成と同様である(
図1~
図4参照)。
【0079】
第2 センサ制御プログラムの動作
物体検知装置300におけるセンサ制御プログラムに基づくCPU117aの動作について、以下において説明する。物体検知装置300におけるCPU117aは、産業用ロボットRBTの通常動作時に実施する物体検知処理と、産業用ロボットRBTの通常動作前に実施するセンサグループ情報生成処理とを実行する。産業用ロボットRBTの通常動作時に実施する物体検知処理については、実施例1における物体検知処理(
図8参照)と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0080】
1.センサグループ情報生成処理
センサグループ情報生成処理では、産業用ロボットRBTを、通常動作の1サイクル分、通常動作前に実行させ、その間に物体検知センサ部113間の干渉の有無を検知し、干渉する物体検知センサ部113については、異なるグループに属するようにセンサグループ情報を生成する。
【0081】
2.フローチャート
CPU117aが実行するセンサ制御プログラムに基づく物体検知処理について
図13に示すフローチャートを用いて説明する。CPU117aは、センサグループ情報の生成を開始するグループ生成開始情報を取得すると(S1301)、センサグループ情報を初期化し、いずれの物体検知センサユニット111もグループにも属していない状態とする(S1303)。
【0082】
CPU117aは、産業用ロボットRBTの駆動装置に動作開始情報を送信する(S1305)。また、CPU117aは、各物体検知センサ部113に対して、センサグループ情報生成処理において物体検知を開始する旨の初期検知開始情報を、一斉に、送信する(S1307)。
【0083】
初期検知開始情報を取得した投光素子113aは、初期検知終了情報を取得するまで、予め定められたタイミングで検知光を投光する。また、初期検知開始情報を取得した受光素子113cは、受光待機状態とし、初期検知終了情報を取得するまで、投光素子113aの投光タイミングに合わせた予め定められたタイミングで検知情報を制御部117に送信する。
【0084】
ここで、受光素子113cは、予め定められた上限量よりも多い量の検知光を受光した場合、オーバーフローした旨の検知情報を、検知光を受光できなかった場合も含め、予め定められた下限量よりも少ない量の検知光しか受光できなかった場合、物体を検知できなかった旨の検知情報を、上限量から下限量までの設定範囲内の検知光を受光した場合、物体検知時間を、それぞれ検知情報として送信する。
【0085】
なお、受光素子113cが設定範囲内の検知光を受光した場合は、検知光が何らかの物体に反射した反射光を受光した場合に対応する。また、受光素子113cが上限量よりも多い量の検知光を受光した場合は、対向する位置に存在する他の物体検知センサ部113の投光素子113aが投光した検知光を直接的に受光した場合に、つまり、2つの物体検知センサ部113が干渉状態にある場合に対応する。
【0086】
CPU117aは、検知情報を取得すると(S1309)、検知情報の内容が、干渉状態を示すオーバーフローであるか、または、予め定められた最小検知時間よりも短い検知時間であるかを判断する(S1311)。検知情報の内容が、予め定められた最小検知時間よりも小さい検知時間である場合は、対向する位置に近い位置に2つの物体検知センサ部113が存在し、一方の投光素子113aが投光した検知光の一部を、他方の物体検知センサ部113の受光素子113cが受光した場合に対応する。これは、受光素子113cが何らかの物体に反射した検知光の反射光を受光する場合、物体までの往復時間を要する一方、受光素子113cが対向する投光素子113aが投光した検知光の一部を受光する場合は、一方の物体検知センサ部113から他方の物体検知センサ部113までの片道時間しか要しないことによる。なお、検知情報の内容が、予め定められた最小検知時間よりも小さい検知時間である場合も、2つの物体検知センサ部113が干渉状態にある場合とする。
【0087】
CPU117aは、検知情報の内容が干渉状態を示すと判断すると、同じタイミングで、干渉状態を示す他の検知情報を取得しているか否かを判断する(S1313)。干渉状態は、対向して位置する2つの物体検知センサ部113間で生ずるため、一方の物体検知センサ部113の受光素子113cが干渉状態を内容とする検知情報を送信している場合、もう一方の物体検知センサ部113の受光素子113cも干渉状態を内容とする検知情報を送信している。
【0088】
CPU117aは、同じタイミングで、干渉状態を示す検知情報を取得していると判断すると、ステップS1311で干渉状態と判断した検知情報を送信した受光素子113cを有する物体検知センサ部113が属する物体検知センサユニット111と、ステップS1313で干渉状態と判断した検知情報を送信した受光素子113cを有する物体検知センサ部113が属する物体検知センサユニット111とを、異なるセンサグループに属するように、各物体検知センサユニット111のセンサグループを決定する(S1315)。なお、既に2つの物体検知センサユニット111がセンサグループ情報において異なるグループに属している場合には、2つの物体検知センサユニット111に対して新たなグループは決定しない。
【0089】
CPU117aは、ステップS1311において、検知情報の内容が干渉状態でないと判断すると、また、ステップS1313において、干渉状態を示す他の検知情報を取得していないと判断すると、ステップS1317まで移動する。
【0090】
CPU117aは、産業用ロボットRBTが1サイクルの動作が終了するまで、ステップS1309~S1315の処理を繰り返す(S1317)。CPU117aは、産業用ロボットRBTが1サイクルの動作を終了すると(S1317)、初期検知終了情報を各物体検知センサ部113に対して送信する(S1319)。
【0091】
CPU117aは、全ての物体検知センサ部113がいずれかのグループに属しているかを判断する(S1321)。CPU117aは、全ての物体検知センサ部113がいずれかのグループに属していないと判断すると、この段階で存在する各グループに属する物体検知センサ部113がほぼ同数となるように、グループに属していない物体検知センサ部113のグループを決定する(S1323)。各グループに属する物体検知センサ部113の数を同数とすることによって、グループ切り替えの回数が減少するため、結果として、短インターバルでの検知が可能となる。
【0092】
CPU117aは、残りの物体検知センサユニット111に関するグループを決定すると、また、ステップS1321において、全ての物体検知センサ部113がいずれかのグループに属していると判断すると、初期物体検知処理を終了する。
【0093】
[その他の実施形態]
(1)センサグループ情報:前述の実施例1においては、センサグループ情報は、物体検知センサユニット111毎に属するグループを判断したが、物体検知センサ部113毎に属するグループを判断するようにしてもよい。実施例3についても同様である。
【0094】
(2)物体検知センサユニット111:前述の実施例1における物体検知センサユニット111では、センサ配置柔軟部材115を用いて複数の物体検知センサ部113を有する産業用ロボットRBTに配置したが、物体検知センサ部113を配置できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、物体検知センサ部113を直接的に産業用ロボットRBTに配置するようにしてもよい。実施例2、実施例3についても同様である。
【0095】
(3)産業用ロボットRBT:前述の実施例1~実施例3においては、単独の産業用ロボットRBTに物体検知装置100を配置するとしたが、
図14に示すように、複数の産業用ロボットRBT1、RBT2に、物体検知装置400を配置するようにしてもよい。
【0096】
(4)物体検知センサ部113の機能:前述の実施例1においては、物体検知センサ部113は、物体までの距離を検知することによって、物体の存在を検知するものとしたが、物体の存在のみや物体の方向を検知するものであってもよい。
【0097】
また、物体検知センサ部113は、所定の検知光を用いて物体の存在を検知するものとしたが、物体の存在を検知できるものであれば、赤外線、音波等その他の検知波を用いるようにしてもよい。以上は、実施例2、実施例3についても同様である。
【0098】
(5)制御部117の構成:前述の実施例1においては、CPU117aを用いて制御部117の動作を実現したが、制御部117の動作を実現できる構成であれば、例示のものに限定されない。例えば、専用のロジック回路を設計して用いるようにしてもよい。実施例2、実施例3についても同様である。
【0099】
(6)物体検知センサ部113の接続:前述の実施例1においては、各物体検知センサ部113を制御部117にパラレルに接続するとしたが、各物体検知センサ部113同士をカスケード接続し、端部の物体検知センサ部113を制御部117へ接続するようにしてもよい。
【0100】
また、物体検知装置100では、各物体検知センサユニット111と制御部117とを接続ハーネス119で接続するとしたが、無線によって、接続するようにしてもよい。実施例2、実施例3についても同様である。
【0101】
さらに、物体検知装置100では、物体検知センサ部113と制御部117とを接続ハーネス119を用いて接続するとしたが、複数の物体検知センサ部113を1つの中間インターフェイス部に接続し、中間インターフェイス部を制御部117に接続するように、つまり、中間インターフェイス部を介して、物体検知センサ部113と制御部117とを接続するようにしてもよい。実施例2、実施例3についても同様である。
【0102】
(7)光用フィルタの使用:前述の実施例において、さらに、光用フィルタを用いて、所定の光のみを用いて、物体を検知するようにしてもよい。実施例2、実施例3についても同様である。
【0103】
(8)センサ接続情報:前述の実施例1において、センサ接続情報は、予め、メモリ117bに記憶保持しておくとしたが、物体検知装置100を使用する段階でセンサ接続情報を取得するようにしてもよい。例えば、制御部117の起動時に、制御部117がセンサ用通信回路113dを介して各物体検知センサ部113と情報を送受信し、物体検知センサ部113が接続されているか否かを判断し、センサ接続情報を生成するようにしてもよい。また、センサ用通信回路113dの接続位置(例えば、接続ポート)を判断するようにしてもよい。実施例2、実施例3についても同様である。
【0104】
(9)受光素子113c:前述の実施例1において、受光素子113cは、SPADを用いるとしたが、その他のフォトトランジスタやフォトダイオード、増幅回路内蔵受光素子等を用いることができる。なお、フォトダイオードを使用する場合は、増幅回路やフィルタ回路を、受光素子113cと合わせて配置するようにしてもよい。実施例3についても同様である。
【0105】
(10)物体検知センサ部113の順次制御:前述の実施例2においては、CPU117aは、物体検知センサ部113毎に投光素子113aに対して検知開始情報SSを送信し、対応する受光素子113cで反射光を受光することとしたが(
図10参照)、
図15に示すように、検知対象センサ部を選択した後に(
図11ステップS1003参照)検知対象センサ部に属する投光素子113aに対して検知開始情報SSを送信するようにしてもよい。
【0106】
また、
図16に示すように、検知対象センサユニットを選択する前に(
図11ステップS1001参照)全ての投光素子113aに対して検知開始情報SSを送信するようにしてもよい。いずれの場合も、CPU117aは、検知開始情報を送信してから所定のインターバル時間ITが経過する前に、検知開始情報を送信した投光素子113aに対応する各受光素子113cに、順次、検知情報送信要求情報DSを送信し、各受光素子113cから検知情報を取得するようにしてもよい。
【0107】
なお、物体検知センサ部113は、検知情報を一時的に保存するメモリを有するようにすればよい。また、物体検知センサ部113が有するメモリは、他の構成要素とは独立に設けてもよく、受光素子113c、センサ用通信回路(
図3参照)と一体で設けるようにしてもよい。
【0108】
(11)受光素子113c:前述に実施例3においては、受光素子113cは、予め定められた上限量よりも多い量の検知光を受光した場合、オーバーフローした旨の検知情報を、検知光を受光できなかった場合も含め、予め定められた下限量よりも少ない量の検知光しか受光できなかった場合、物体を検知できなかった旨の検知情報を、上限量から下限量までの設定範囲内の検知光を受光した場合、物体検知時間を、それぞれ検知情報として送信するとしたが、検知の状態を送信できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、検知した物体検知時間(オーバーフロー等、検知が正常に行われなかった場合には設定されなかったり、0を設定したりする場合を含む)と、検知が正常に行われたか否かを示すステータス(例えば、オーバーフローの場合は、異常を設定する)とを1組として送信するようにしてもよい。実施例1、実施例2についても同様である。
【0109】
(12)受光素子113c:前述に実施例1においては、受光素子113cは、SPADを用いる直接TOF(Time Of Flight)法を用いて、物体までに距離を検知するものであったが、物体までの距離を検知できるもの、または、物体の存在を検知できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、間接TOF法を用いて、物体までに距離を検知するものであってもよい。実施例3についても同様である。
【0110】
(13)動作停止距離:前述の実施例1?実施例3においては、動作停止距離は、物体検知センサ部113毎に設定されるとしたが、物体検知センサユニット111毎に設定してもよい。また、全ての物体検知センサユニット111で同一の動作停止距離を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る物体検知装置は、例えば、産業用ロボットに用いることができる。
【符号の説明】
【0112】
100 物体検知装置
111 物体検知センサユニット
113 物体検知センサ部
113a 投光素子
113b 投光レンズ
113c 受光素子
113d センサ用通信回路
115 センサ配置柔軟部材
117 制御部
117a CPU
117b メモリ
117g センサ制御用通信回路
117h 動作制御用通信回路
119 接続ハーネス
200 物体検知装置
300 物体検知装置
400 物体検知装置
SS 検知開始情報
RT 受光有効期間
DS 検知情報送信要求情報