(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】インナーライナー用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20231002BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231002BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20231002BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L9/00
C08L23/22
B60C5/14 A
(21)【出願番号】P 2019225585
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 昌樹
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0057069(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1125559(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0289197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体のゴム成分100質量部に対して、1,2-ビニル基が30モル%以下であり、常温で液体のポリブタジエン1~20質量部を含有
し、
常温で固体のゴム成分100質量部中の含有割合が、ブチル系ゴムが30~100質量%、ジエン系ゴムが0~70質量%であり、
常温で液体のポリブタジエンの数平均分子量が、5000~50000である、
インナーライナー用ゴム組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載のインナーライナー用ゴム組成物からなるインナーライナーを備えた、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーライナー用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの内面には、タイヤの空気圧を一定に保持するために空気透過抑制層としてインナーライナーが設けられている。インナーライナーは、一般に、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴムなどの気体が透過しにくいゴム層で構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インナーライナーを備えた空気入りタイヤとして、液状ポリイソプレンを含有するゴム組成物を用いた空気入りタイヤが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ガスバリア性の低下を抑えながら、低温耐久性を向上する熱可塑性エラストマー組成物として、液状ポリブタジエンを含有する熱可塑性エラストマー組成物が記載され、明細書段落0025には、液状ポリブタジエンとして、1,2-結合成分の含有量が85モル%以上であることが好ましい旨記載されている。
【0005】
特許文献3には、液状ジエン系ゴムを含むゴム組成物からなるインナーライナーを具備する空気入りタイヤが記載され、実施例では液状ジエン系ゴムとして、液状ポリイソプレンゴムが用いられている。
【0006】
しかしながら、従来のインナーライナー用ゴム組成物は、耐空気透過性及び耐低温疲労性について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-37198号公報
【文献】特開2019-38903号公報
【文献】特許5032771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、優れた耐空気透過性及び耐低温疲労性を有するインナーライナー用ゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るインナーライナー用ゴム組成物は、常温で固体のゴム成分(以下、「固体状ゴム成分」ともいう)100質量部に対して、1,2-ビニル基が30モル%以下であり、常温で液体のポリブタジエン(以下、「液状ポリブタジエン」ともいう)1~20質量部を含有するものとする。「固体状ゴム成分」とは、常温23℃において、固体状のゴムのことを指し、「固体状」とは流動性を有しない状態を言うものとする。また、「液状ポリブタジエン」とは、常温23℃において、液体状のポリブタジエンのことを指し、「液体状」とは流動性を有する状態を言うものとする。
【0010】
本発明に係るインナーライナー用ゴム組成物は、固体状ゴム成分100質量部中の含有割合が、ブチル系ゴム30~100質量%と、ジエン系ゴム0~70質量%とすることができる。
【0011】
液状ポリブタジエンの数平均分子量は、5000~50000であるものとすることができる。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記インナーライナー用ゴム組成物からなるインナーライナーを備えたものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物によれば、耐空気透過性及び耐低温疲労性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係るインナーライナー用ゴム組成物は、常温で固体のゴム成分100質量部に対して、1,2-ビニル基が30モル%以下であり、常温で液体のポリブタジエン1~20質量部を含有するものとする。
【0017】
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物において、固体状ゴム成分としては、特に限定されないが、ブチル系ゴムやジエン系ゴムが挙げられ、ブチル系ゴム単独か、あるいは、ブチル系ゴムとジエン系ゴムとの併用であることが好ましい。
【0018】
本実施形態に係るブチル系ゴムとしては、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、臭素化ブチルゴム(BIIR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)など)、及びブチルゴム(IIR)が挙げられる。
【0019】
本実施形態に係るジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレンゴム、ブタジエン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴムなどが挙げられる。
【0020】
本実施形態に係るゴム成分は、ブチル系ゴム30~100質量%、ジエン系ゴム0~70質量%の割合で含有するのが好ましく、ブチル系ゴム50~100質量%、ジエン系ゴム0~50質量%の割合で含有するのがより好ましく、ブチル系ゴム80~100質量%、ジエン系ゴム0~20質量%の割合で含有するのがさらに好ましい。
【0021】
上記液状ポリブタジエンは、1,2-ビニル基が30モル%以下であり、20モル%以下であることが好ましい。ここで、1,2-ビニル基の含有量は、液状ポリブタジエンに含まれているブタジエンユニットの含有量に対する1,2-ビニル基の含有量であり、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0022】
上記液状ポリブタジエンのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、-80℃以下であることが好ましく、-90~-100℃であることがより好ましい。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて(測定温度範囲:-150℃~50℃)測定される値である。
【0023】
上記液状ポリブタジエンの数平均分子量は、特に限定されないが、5000~50000であることが好ましく、8000~30000であることがより好ましい。ここで、数平均分子量は、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)での測定により、ポリスチレン換算にて求めた値とする。
【0024】
このような液状ポリブタジエンとしては市販されているものを利用することもでき、例えば、クラレ(株)製「LBR-302」や、「LBR-305」、「LBR-307」などが挙げられる。
【0025】
液状ポリブタジエンの含有量は、特に限定されないが、固体状ゴム成分100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態に係るゴム組成物は、1,2-ビニル基が30モル%以下であり、液状ポリブタジエンを含有することにより、耐空気透過性及び耐低温疲労性を改善できる。そのメカニズムは定かではないが、次のように推測できる。すなわち1,2-ビニル基含有量が30モル%以下である場合、低温環境下での柔軟性が付与され、耐低温疲労性が改善する。また、液状ポリブタジエンはオイルと比較して分子量が大きく高粘性であるため、ゴム組成物の粘性流動が抑制され、気体分子の拡散が抑制されることで、耐空気透過性が改善するものと推測できる。
【0027】
本実施形態に係るゴム組成物は、オイルを含有するものであってもよく、含有する場合その含有量は、ゴム成分100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、耐ガス透過性の観点からは実質的に含まれないこと(詳細には1質量部未満)が好ましい。
【0028】
オイルと液状ポリブタジエンとの含有割合(オイル:液状ポリブタジエン)は、特に限定されないが、0:10~9:1であることが好ましく、3:7~6:4であることがより好ましい。
【0029】
本実施形態に係るゴム組成物は、瀝青炭を細かく砕いた瀝青炭粉砕物を含むことができる。瀝青炭粉砕物は耐空気透過性を向上することができる。瀝青炭粉砕物の平均粒子径は、0.5~100μmであることが好ましく、1~30μmであることがより好ましい。平均粒子径はレーザー回折散乱法で測定できる。
【0030】
瀝青炭粉砕物としては、例えば、アスペクト比が5~30であるものを用いることができる。アスペクト比は、長径(平面部における最大寸法)の厚みに対する比である。アスペクト比は透過型電子顕微鏡(TEM)で求めることができる。具体的には、TEMの画像において、無作為に抽出された10個の粒子について、長径と厚みとを計測して各粒子のアスペクト比を算出する。「瀝青炭粉砕物のアスペクト比」は、これらのアスペクト比の相加平均である。
【0031】
瀝青炭粉砕物の量は、ゴム成分100質量部に対して、5~50質量部以上であることが好ましく、5~40質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態に係るゴム組成物は、フィラーとしてカーボンブラックを含むことができる。カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は、例えば15mg/g~55mg/gであることができる。ヨウ素吸着量は、JIS K6217-1に準拠して測定される値である。カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、例えば75cm3/100g~125cm3/100gであることができる。DBP吸油量は、JIS K6217-4に準拠して測定される値である。具体的には、GPF級カーボンブラックが好ましい。
【0033】
カーボンブラックの含有量は、ゴム組成物中のゴム100質量部に対して、30~70質量部であることが好ましく、40~60質量部であることがより好ましい。
【0034】
カーボンブラックと瀝青炭粉砕物との合計量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、35~120質量部であることが好ましく、40~110質量部であることがより好ましく、50~100質量部であることがさらに好ましい。
【0035】
本実施形態に係るゴム組成物には、酸化亜鉛を配合してもよい。酸化亜鉛は、ハロゲン化ブチルゴムの加硫剤(架橋剤)として配合されるものであり、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.5~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態に係るゴム組成物には、粘着付与剤を配合してもよい。粘着付与剤は、未加硫ゴム組成物に粘着性を付与する添加剤であり、タッキファイヤーとも称される。粘着付与剤としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂などの炭化水素樹脂が好ましく、より好ましくは炭素数4~5個相当の石油留分であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られるC5系石油樹脂である。粘着付与剤の配合量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態に係るゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作成することができる。例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ジエン系ゴムに対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加して混練し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加して混練することにより、ゴム組成物を調製することができる。
【0038】
本実施形態に係るゴム組成物には、上述した各成分の他、老化防止剤、加工助剤、硫黄、加硫促進剤など、インナーライナー用ゴム組成物に通常配合される各種添加剤を配合することができる。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられ、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して3質量部以下(配合しなくてもよい。)であることが好ましく、より好ましくは2質量部以下である。
【0039】
本実施形態に係るインナーライナー用ゴム組成物は、例えば、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどの重荷重用タイヤを含む各種の自動車用タイヤ、また自転車を含む二輪車用タイヤなど、各種の空気入りタイヤに適用することができる。
【0040】
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤ1の断面図である。図示するように、空気入りタイヤ1は、リム組みされる一対のビード部2と、該ビード部2からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部3と、該一対のサイドウォール部3間に設けられた路面に接地するトレッド部4とから構成される。一対のビード部2には、それぞれリング状のビードコア5が埋設されている。有機繊維コードを用いたカーカスプライ6が、ビードコア5の周りを折り返して係止されるとともに、左右のビード部2間に架け渡して設けられている。また、カーカスプライ6のトレッド部4における外周側には、スチールコードやアラミド繊維などの剛直なタイヤコードを用いた2枚のベルトプライからなるベルト7が設けられている。
【0041】
カーカスプライ6の内側にはタイヤ内面の全体にわたってインナーライナー8が設けられている。本実施形態では、このインナーライナー8として上記インナーライナー用ゴム組成物が用いられている。インナーライナー8は、
図1中の拡大図に示すように、タイヤ内面側のゴム層であるカーカスプライ6の内面に貼り合わされており、より詳細には、カーカスプライ6のコードを被覆するトッピングゴム層の内面に貼り合わされている。
【0042】
本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法としては、例えば、インナーライナー用ゴム組成物をインナーライナーとして用いて、成形ドラムの外周にインナーライナーを筒状に装着し、その上にカーカスプライを貼り付け、更にベルト、トレッドゴム及びサイドウォールゴムなどの各タイヤ部材を貼り重ね、インフレートすることによりグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)が作製され、該グリーンタイヤをモールド内で加硫成形することにより、空気入りタイヤが得られる。なお、
図1に示す例では、インナーライナー用ゴム組成物をカーカスプライの内面側に設けたが、タイヤ内部からの空気の透過を防止して、タイヤの空気圧を保持することができる態様、即ち内圧保持のための空気透過抑制層として設けられるものであれば、例えば、カーカスプライの外面側などの種々の位置に設けることができ、特に限定されない。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、ノンプロ練り工程で、加硫促進剤を除く成分を添加混合し(排出温度=150℃)、プロ練り工程で、加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、インナーライナー用ゴム組成物を調製した。表1中の各成分は以下の通りである。
【0045】
・臭素化ブチルゴム:日本ブチル(株)製「ブロモブチル2222」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストV」
・瀝青炭粉砕物:Coal Fillers,Inc.製「オースチンブラック325」
・粘着付与剤:東燃化学(株)製「T-REZ RA100」
・オイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC-140」、粘度=0.03Pa・s
・液状ゴムA:クラレ(株)製「LBR-305」、ポリブタジエン、数平均分子量=8000、Tg=-95℃、1,2-ビニル基含有量=9モル%、粘度=1.5Pa・s
・液状ゴムB:クラレ(株)製「LBR-307」、ポリブタジエン、数平均分子量=26000、Tg=-95℃、1,2-ビニル基含有量=15モル%、粘度=40Pa・s
・液状ゴムC:クラレ(株)製「LIR-30」、ポリイソプレン、数平均分子量=28000、Tg=-63℃、1,2-ビニル基含有量=0モル%、粘度=70Pa・s
・液状ゴムD:日本曹達(株)製「B-3000」、ポリブタジエン、数平均分子量=3200、Tg=-15℃、1,2-ビニル基含有量=90モル%、粘度=21Pa・s
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・加硫促進剤:大内新興化学(株)製「ノクセラーDM-P」
【0046】
液状ゴムの粘度、数平均分子量、ガラス転移温度、及び1,2-ビニル基含有割合(モル%)の測定方法は次の通りである。
【0047】
・粘度:JIS K7117-1に準拠し、38℃において、ブルックフィールド型粘度計を用いて測定した。
【0048】
・数平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)での測定により、ポリスチレン換算にて求めた。詳細には、測定試料は各サンプル0.2mgをTHF1mLに溶解させたものを用いた。(株)島津製作所製「LC-20DA」を使用し、測定試料をフィルター透過後、温度40℃、流量0.7mL/分でカラム(Polymer Laboratories社製「PL Gel3μm Guard×2」)を通し、Spectra System社製「RI Detector」で検出した。
【0049】
・ガラス転移温度:JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて(測定温度範囲:-150℃~50℃)測定した。
【0050】
・1,2-ビニル基含有割合(モル%):NMRにより構造同定を行い、得られたNMRスペクトルから、液状ゴムにおける1,2-ビニル基の含有量を算出した。NMRスペクトルは、1HNMRスペクトルの積分比により算出される値である。
【0051】
得られたゴム組成物について、耐空気透過性、及び耐低温疲労性を評価した。各評価方法は次の通りである。
【0052】
・耐空気透過性:160℃×30分で加硫した厚み1mmの加硫ゴムシートについて、ガス透過率試験器(東洋精機製作所製「BT-3」)を用いて空気透過率を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど耐空気透過性に優れることを示す。
【0053】
・耐低温疲労性:JIS K6260に準拠し、160℃×30分で加硫した試験片について、デマチャ屈曲試験機を用い、-35℃における亀裂長さ10mmに達するまでの屈曲回数を測定した。比較例1の屈曲回数を100とした際の指数で表示し、数値が小さいほど耐低温屈曲疲労性に優れることを示す。なお、亀裂長さには、自然発生した亀裂の長さを加算した。
【0054】
【0055】
結果は表1に示す通りであり、実施例1~6と比較例1との対比から、1,2-ビニル基の含有量が30モル%以下であり、常温で液体のポリブタジエンを含有する場合、耐空気透過性及び耐低温疲労性が改善したことがわかる。
【0056】
比較例1と比較例2との対比から、オイルを増量した場合、耐空気透過性が悪化したことがわかる。
【0057】
比較例1と比較例3との対比から、液状イソプレンゴムを含有する場合、耐低温疲労性が悪化したことがわかる。
【0058】
比較例1と比較例4との対比から、液状ポリブタジエンを20質量部を超えて含有する場合、耐空気透過性が悪化したことがわかる。
【0059】
比較例1と比較例5との対比から、1,2-ビニル基の含有量が30モル%を超える液状ポリブタジエンを含有する場合、耐低温疲労性が悪化したことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るインナーライナー用ゴム組成物は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤのインナーライナーに用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・空気入りタイヤ
2・・・ビード部
3・・・サイドウォール部
4・・・トレッド部
5・・・ビードコア
6・・・カーカスプライ
7・・・ベルト
8・・・インナーライナー