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特許7357885リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノアジュバントの作製及びワクチンアジュバントとしてのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノアジュバントの作製及びワクチンアジュバントとしてのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20231002BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 39/25 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/00 G
A61P37/04
A61K39/25
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021570808
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2020082443
(87)【国際公開番号】W WO2020238394
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】201910459715.6
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519326323
【氏名又は名称】シァメン・ユニヴァーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】521009430
【氏名又は名称】シァメン・イノヴァックス・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN INNOVAX BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1st Floor, 50 Shan Bian Hong East Road, Haicang District, Xiamen, Fujian 361022, China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ジァオ、チンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、シァオフェン
(72)【発明者】
【氏名】リ、イケ
(72)【発明者】
【氏名】ニー、メイフェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、スーイー
(72)【発明者】
【氏名】シア、ニンシャオ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225784(WO,A1)
【文献】特開2016-053024(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04244422(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~8:1の亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比で、亜鉛とリセドロン酸とを含むリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項2】
前記リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが1:1、4:1及び8:1から選択される亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比を有する、請求項1に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項3】
以下のいずれか1つ、
(1)前記リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、更にリン酸塩を1~8:1のZn:リン酸塩のモル濃度比で含む;及び
(2)前記リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、更にリン酸塩を、1.5:1及び4:1から選択されるZn:リン酸塩のモル濃度比で含む;
ことを特徴とする、請求項1に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項4】
以下のいずれか1つ、
(1)前記リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、更にアルミニウムを0.02~1:1のZn:アルミニウムのモル濃度比で含む;及び
(2)前記リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントは、更にアルミニウムを0.375:1、0.5:1及び0.8:1から選択されるZn:アルミニウムのモル濃度比で含む;
ことを特徴とする、請求項1に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項5】
以下の1つ以上:
)前記リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが1μm~10μmの粒径を有すること;
)前記リセドロン亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが4.0~11.4の粒子ゼロ電荷点を有すること;及び
)前記リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが60%超のタンパク質吸着率を有することであって、ここで、前記タンパク質吸着率は、150mM NaCl水溶液が溶媒として用いられる、ウシ血清アルブミンが用いられる、かつ前記ウシ血清アルブミンの溶媒中の濃度が0.5mg/gLであるという条件で決定される
を特徴とする、請求項1に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項6】
前記タンパク質がウシ血清アルブミンを含む、請求項に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバント。
【請求項7】
リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを作製する方法であって、
a)亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液を準備する工程と、
b)連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈の様式で、工程a)の前記可溶性塩溶液とリセドロン、水酸化ナトリウムとを均一に混合するか、又は工程a)の前記可溶性塩溶液とリセドロン酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム溶液とを均一に混合し、リセドロン酸亜鉛アジュバントを得る工程と、
を含み、得られるリセドロン酸亜鉛アジュバントが、1~8:1の亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比を有する、方法。
【請求項8】
前記得られるリセドロン酸亜鉛アジュバントが1:1、4:1及び8:1から選択される亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比を有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
以下の1以上、
(1)前記可溶性塩溶液が塩酸の溶液を含む;及び
(2)前記方法が、工程b)の混合物を滅菌に供して、後の使用のために2℃~8℃で保管することを更に含む;
ことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
以下の1以上、
(1)前記滅菌が高温及び高圧滅菌法を用いる滅菌を含む;及び
(2)前記滅菌が、121℃で30分~60分間行われる滅菌を含む;
ことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
以下の1以上、
(1)得られるリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、8.0~9.0の滅菌前のpHを有する;
(2)得られるリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、6.0~8.0の滅菌後のpHを有する;
(3)得られるリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、1μm~10μmの粒径を有する;
(4)得られるリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、4.0~11.4の粒子ゼロ電荷点;及び
(5)得られるリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントが、60%超のタンパク質吸着率を有する、ここで、前記タンパク質吸着率は150mM NaCl水溶液が溶媒として用いられる、ウシ血清アルブミンが用いられる、かつ前記ウシ血清アルブミンの溶媒中の濃度が0.5mg/gLであるという条件で決定される
ことを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質がウシ血清アルブミンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを含むワクチンアジュバント、医薬組成物又は免疫原性組成物。
【請求項14】
抗原と請求項1~のいずれか一項に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントとを含むワクチン組成物。
【請求項15】
以下の1以上、
(1)前記抗原がタンパク質抗原を含む;及び
(2)前記抗原が水痘帯状疱疹ウイルスgE糖タンパク質抗原を含む;
ことを特徴とする、請求項14に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
ワクチンアジュバント、医薬組成物、薬物送達ビヒクル、免疫原性組成物又はワクチン組成物を製造する方法であって、ワクチンアジュバント、医薬組成物、薬物送達ビヒクル、免疫原性組成物又はワクチン組成物に、請求項1~のいずれか一項に記載のリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノ粒子アジュバントを提供することを含む、方法。
【請求項17】
以下の1以上、
(1)前記ワクチンがタンパク質ワクチンである;及び
(2)前記ワクチンが水痘帯状疱疹ウイルス組み換えタンパク質ワクチンである;
ことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術の分野に属する。具体的には、本発明は、主成分である亜鉛イオン及びリセドロン酸の無機化によって形成される、持続放出機能を有するリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノアジュバント、並びにワクチンアジュバントとしてのその使用に関する。本発明は、リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノアジュバントを作製する方法にも関する。本発明は、リセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノアジュバントを含む化学組成物、ワクチンアジュバント及びワクチン組成物にも関する。本発明は、ワクチンアジュバントとしてのリセドロン酸亜鉛マイクロ/ナノアジュバントの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバントは、免疫原に特異的又は非特異的に結合し、身体を刺激して長期の効果的な特異免疫応答を生じさせ、相補的役割を果たすことができる物質である。アジュバントの免疫生物学的効果としては、免疫原の使用量の減少、抗原の免疫原性の増強、及び免疫応答のタイプの変更等が挙げられる。アルミニウムアジュバントは、ヒトワクチンへの使用が認められた最初のアジュバントであり、80年を超える歴史がある。アルミニウムアジュバントは、最も広く使用されている最も安全かつ最も効果的なアジュバントであると一般に認識されている。しかしながら、アルミニウムアジュバントには依然として、Th2免疫応答及び液性免疫応答しか刺激することができず、Th1免疫応答及びCTL応答の刺激での効果は限られているという欠点がある。アルミニウムアジュバントは、或る特定の抗原特異性を有するため、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等に対するワクチンにはアジュバント効果を有しない。多くの新たなワクチンアジュバントと比較して、アルミニウムアジュバントは活性が弱く、ウイルス様粒子抗原以外の殆どの遺伝子操作抗原に対するそれらの免疫増強効果は理想的ではない。アルミニウムアジュバントの欠点の中でも、アルミニウムアジュバントは、身体を効果的に刺激して細胞性免疫応答を生じさせることができないため、治療ワクチンへの適用が制限され、刺激がより弱いことからも、ポリペプチド又は核酸ワクチン等の遺伝子操作ワクチンの一部への適用が制限される。これに基づき、GlaxoSmithKlineのAS04等のアルミニウムアジュバントに基づく一連の発明及び創造が行われている。AS04アジュバントシステムは、GlaxoSmithKline(GSK)によって開発され、TLR-4(Toll様受容体4、TLR4)アゴニスト:3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドA(MPL)を、アルミニウムアジュバントをベースとして添加したものであり、そのグルコサミンのリン酸化のためにAl3+に対して高い親和性を有し、アルミニウムアジュバントに吸着されて複合アジュバントを形成する。同時に、強力なバランスの取れた液性及び細胞性免疫応答を刺激することができ、このことは細胞性免疫応答を必要とする治療ワクチン及び腫瘍ワクチンにとって大きな意義を有する。
【0003】
アルミニウムアジュバントは、水素結合、疎水性相互作用、静電気引力及びリガンド交換によって抗原を吸着するが、これはその免疫増強機構の理由の1つであり、抗原の安定性に影響を及ぼす重要な因子でもある。AS04中のMPLは、アルミニウムアジュバントによるリン酸基の吸着によって新たなタイプの複合アジュバントを形成し、臨床現場でよく使用されている。加えて、可溶性TLR7/8小分子アゴニストは、ヒトにおいて試験したところ、強い局所及び全身毒性を引き起こす可能性があるため、忍容性が低い。TLR7/8の不溶性小分子アゴニストは、良好なアジュバント効果を有するが、その製造及びその製剤の安定化には相当な困難がある。リン酸基の付加により、アゴニストは官能基化され、アルミニウムアジュバントによって吸着される能力を得ることができ、化学修飾及び製剤の最適化を用いることでアジュバントの薬物動態を改善することができ、そのアジュバント活性を確保した上で局所及び全身毒性を低下させることができる。
【0004】
アルミニウムアジュバントと抗原との間の吸着効果は、それらの免疫増強機構の要因の1つである。リガンド交換は、アジュバントと抗原との間の最も強い相互作用力であり、抗原中のリン酸基と水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム中のヒドロキシ基との間のリガンド交換によって生成し、2001年に本発明者のジャオによって提唱されたアルミニウムアジュバントの「リン親和性(Phosphophilicity)」の概念である(非特許文献1)。化学修飾を用いてリン酸(ホスホン酸)基をTLR7/8小分子アゴニスト等の小分子免疫増強剤(small-molecule immune potentiators:SMIP)に付加することで、これらを官能基化し、アルミニウムアジュバントによって吸着される能力を得て、分子アジュバントのリザーバー効果を強化し、アジュバント活性を確保した上で全身毒性を低下させる(非特許文献2、非特許文献3)。SMIPは、それらの明確な化学構造、修飾及び合成の容易さ、並びに拡張可能な製造のために、ワクチンアジュバントの分野で良好な適用の見通しがある。
【0005】
SMIPと同様、ビスホスホネート(BP)は、カルシウム、アルミニウム、亜鉛及びマグネシウムイオンに対して高い親和性を有し、骨粗鬆症、骨パジェット病、並びに悪性腫瘍の骨転移に起因する高カルシウム血症及び骨痛等の骨疾患及びカルシウム代謝疾患の治療に使用される人工化合物群である。同時に、臨床研究により、多発性骨髄腫、乳癌、腎癌、前立腺癌等の疾患の補助療法におけるビスホスホネート、特にリセドロン酸の使用が患者における骨関連疾患の発生率を低下させ、癌の再発率を低下させ、患者の生存及び臨床転帰を改善し得ることが示されている。加えて、ビスホスホン酸は、プラスの免疫調節効果を有し、アジュバント活性を示す。ワクチン製剤中の免疫増強剤として使用されるビスホスホン酸の特許又は発明も報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0006】
亜鉛は、重要な二価金属化学元素であり、その含有量が免疫系の機能に重要な役割を果たす。微量レベルの亜鉛が、重要な構造因子及び触媒因子として細胞代謝に関与する約300種の酵素中に存在し、細胞の情報交換、細胞分裂及び分化、並びに免疫機能の活性化等の生命活動において重要な役割を果たす(非特許文献4、非特許文献5)。Wang Fudiのチームは、マクロファージにおける亜鉛イオンの恒常性調節機構を記載し、亜鉛恒常性の不均衡がマクロファージの食細胞機能の障害及び異常免疫応答を引き起こす可能性があることを記載した概説を発表した(非特許文献6)。ボランティアの群が参加した実験において、亜鉛の欠乏により不均衡なTh1及びTh2に偏向した免疫応答が引き起こされ、IFN-γ及びIL-2等のTh1サイトカインの分泌の減少が認められる一方で、IL-4、IL-6等のTh2関連サイトカインの分泌は影響を受けないことが見出された(非特許文献7)。別の興味深い研究においては、研究者らが、酢酸亜鉛及びメチルイミダゾールによって形成された金属有機構造体(MOF)を使用し、ウイルス抗原をそれで被覆したところ、抗原の安定性が大幅に改善しただけでなく、マウスにおける抗原の免疫原性も改善した(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許第103768595号明細書
【文献】米国特許出願公開第20170281759号明細書
【文献】中国特許出願公開第108289902号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Analytical Biochemistry, 2001, 295(1): 76-81
【文献】J Pharm Sci, 2018. 107(6): p. 1577-1585
【文献】Science translational medicine, 2014. 6(263): 263ra160
【文献】Nutrients, 2017. 9(12): 1286
【文献】Nutrients, 2018. 10(1): 68
【文献】Journal of immunology research, 2018. 2018: 6872621
【文献】J Infect Dis, 2000. 182 Suppl 1: p. S62-8
【文献】ACS Applied Materials & Interfaces, 2019. 11(10): p. 9740-9746
【発明の概要】
【0009】
本発明は、リセドロン酸亜鉛と称された、主成分である亜鉛イオン及びリセドロン酸の無機化によって形成される、持続放出機能を有するマイクロ/ナノアジュバント、その主成分、その作製方法、その物理的及び化学的特性を測定する方法、並びにワクチンアジュバントの製造、予防ワクチン及び治療ワクチンへのその使用を提供する。
【0010】
特定の実施の形態において、本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントは、亜鉛イオンとリセドロン酸、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとの反応により沈殿物を生じさせることによって調製することができる。
【0011】
特定の実施の形態において、亜鉛イオンとリセドロン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとの反応により沈殿物を生じさせるために、様々な混合方法を用いることができる。好ましい実施の形態において、上記様々な混合方法としては、連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は共沈が挙げられるが、これらに限定されない。図1のプロセスの概要図を参照されたい。
【0012】
本発明の一実施の形態において、リセドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比は、概して限定されない。好ましい実施の形態において、リセドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比は、(1~8):1であり得る。好ましくは、亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比は1:1、4:1又は8:1から選択する。
【0013】
リセドロン酸亜鉛アジュバントの一実施の形態において、リセドロン酸が1:1、4:1又は8:1のZn/リセドロン酸のモル濃度比を有することで、亜鉛イオン及びホスホン酸基の沈殿によってリセドロン酸亜鉛アジュバントが形成される。
【0014】
リセドロン酸亜鉛アジュバントの別の実施の形態において、リセドロン酸亜鉛アジュバントは、リン酸塩を更に含んでいてもよく、例えば、リセドロン酸を様々なモル比でリン酸塩に置き換えることができ(完全には置き換えない)、様々な混合方法(例えば連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は同時沈殿等)による亜鉛イオンとホスホン酸基及びリン酸塩ラジカルとの沈殿によってリセドロン酸亜鉛アジュバントを調製する。かかるリセドロン酸亜鉛アジュバントにおいては、Zn:リン酸塩ラジカルのモル濃度比は、概して限定されない。好ましい実施の形態において、Zn:リン酸塩ラジカルのモル濃度比は、(1~8):1であり得る。好ましくは、Zn:リン酸塩ラジカルのモル濃度比は、1.5:1及び4:1から選択し、これにより有機無機ハイブリッドリセドロン酸亜鉛アジュバントが形成される。
【0015】
リセドロン酸亜鉛アジュバントの別の実施の形態において、リセドロン酸亜鉛アジュバントは、アルミニウム(Al)を更に含んでいてもよい。例えば、Znを様々な割合でAlに置き換えることができ(完全には置き換えない)、様々な混合方法(例えば連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は同時沈殿等)による亜鉛イオン及びアルミニウムイオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル又は水酸化物ラジカルとの沈殿によってリセドロン酸亜鉛アジュバントを調製する。かかるリセドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントにおいては、Zn:Alのモル濃度比は、概して限定されない。好ましい実施の形態において、Zn:Alのモル濃度比は、(0.02~1):1であり得る。好ましくは、Zn:Alのモル濃度比は、0.375:1から選択するのが好ましい。
【0016】
リセドロン酸亜鉛アジュバントの実施の形態において、亜鉛化合物の具体的なタイプは限定されず、例えば、リセドロン酸亜鉛アジュバントが亜鉛イオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとの沈殿によって調製される限りにおいて、水酸化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、又は当該技術分野で既知の他の亜鉛アジュバントのタイプであり得る。
【0017】
リセドロン酸亜鉛アジュバントの幾つかの実施の形態において、リン酸塩溶液は、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム(無水、二水和物、七水和物又は十二水和物)、リン酸二水素ナトリウム(無水又は二水和物)、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸、ポリリン酸、及びそれらの任意の混合物から選択することができるが、これらに限定されない。
【0018】
リセドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントの幾つかの実施の形態において、アルミニウム化合物の具体的なタイプは限定されず、例えば、リセドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントが亜鉛及びアルミニウムイオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとの沈殿によって調製される限りにおいて、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、又は当該技術分野で既知の他のアルミニウムアジュバントのタイプであり得る。
【0019】
一態様において、本発明は、可溶性塩溶液中で亜鉛イオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとを別個に又は同時に反応させることで、亜鉛イオンを沈殿させることによってリセドロン酸亜鉛アジュバントを調製することを含む、リセドロン酸亜鉛アジュバントを作製する方法に関する。
【0020】
特定の実施の形態において、上記方法は、
a)亜鉛イオンを含有する可溶性塩溶液を準備する工程と、
b)様々な方法で工程a)の可溶性塩溶液とリセドロン酸及び水酸化ナトリウムのアルカリ溶液又はリセドロン酸及びリン酸ナトリウムのアルカリ溶液とを混合することによって亜鉛イオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとを共沈させ、それによりリセドロン酸亜鉛アジュバントを得る工程と、
を含む。
【0021】
本発明の幾つかの実施の形態において、可溶性塩溶液は、概して限定されず、例えば塩酸の溶液であるのが好ましい。
【0022】
好ましい実施の形態において、上記方法は、混合後に形成された工程b)のリセドロン酸亜鉛アジュバント懸濁液を、121℃の高温高圧条件で60分間オートクレーブ処理することによって滅菌し、室温まで冷却した後、2℃~8℃で静置し、好ましくは後の使用のために4℃で保管することを更に含む。一実施の形態において、本発明の方法によって得られるリセドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比は、(1~8):1であり得る。好ましい実施の形態において、亜鉛:リセドロン酸のモル濃度比は1:1、4:1又は8:1から選択される。
【0023】
別の実施の形態においては、本発明のリセドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントを作製する方法において、0.375のZn/Alのモル濃度比でAlを導入し、亜鉛イオン及びアルミニウムイオンとホスホン酸基、リン酸塩ラジカル及び水酸化物ラジカルとを様々な混合方法(例えば連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は同時沈殿等)で沈殿させることによってリセドロン酸亜鉛-アルミニウムアジュバントを調製する。
【0024】
本明細書において使用される亜鉛イオンの可溶性塩溶液は、亜鉛イオンの任意の可溶性塩溶液とすることができ、好ましくは亜鉛イオンの塩酸溶液である。
【0025】
本明細書において使用されるリセドロネート溶液は、好ましくはリセドロン酸及び水酸化ナトリウムのアルカリ溶液である。
【0026】
本明細書において使用される亜鉛及びホスホン酸基を沈殿させる方法は、亜鉛イオンの可溶性塩溶液とリセドロン酸及び水酸化ナトリウムのアルカリ溶液とを十分に混合することによって沈殿反応が起こる任意の方法であり得る。好ましくは、リセドロン酸亜鉛アジュバントは、連続沈殿、分離沈殿後の混合、又は同時沈殿等の任意の方法によって調製することができる。
【0027】
本明細書において使用される滅菌は、リセドロン酸亜鉛アジュバントの滅菌に適した任意の方法、好ましくは高温高圧蒸気滅菌法、例えば121℃で30分~60分間、好ましくは60分間行われる滅菌であり得る。
【0028】
一実施の形態において、本発明は、得られるリセドロン酸亜鉛アジュバントの物理的及び化学的特性を測定する方法にも関する。一実施の形態において、アジュバントのpH値、粒径、ゼータ電位、粒子のゼロ電荷点(PZC)、タンパク質吸着及び解離速度、金属イオン沈殿率、有機ホスホン酸沈殿率、in vivo及びin vitroでの沈殿物の溶解速度等を測定する。アジュバントの物理的及び化学的特性は、従来の手法(例えば、米国特許第9573811号明細書、Ai Xulu et al., Analysis of physicochemical properties of three aluminum hydroxide adjuvant , "Chinese Journal of Biological Products", 2015, 28(1): 44-47を参照されたい)によって、また、本明細書の実施例に記載されているように測定することができる。
【0029】
一実施の形態において、本明細書に記載されるリセドロン酸亜鉛アジュバントは、以下の特性の1つ以上を有する:リセドロン酸亜鉛アジュバントが8.0~9.0の滅菌前のpHを有すること、リセドロン酸亜鉛アジュバントが6.0~8.0の滅菌後のpHを有すること、リセドロン酸亜鉛アジュバントが1μm~10μmの粒径を有すること、リセドロン酸亜鉛アジュバントが4.0~11.4の粒子のゼロ電荷点を有すること、リセドロン酸亜鉛アジュバントが99%超の金属イオン沈殿率を有すること、及びリセドロン酸亜鉛アジュバントが60%超のタンパク質吸着率を有すること。
【0030】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリセドロン酸亜鉛アジュバントを含む組成物、特に医薬製剤又は組成物に関する。
【0031】
医薬製剤又は組成物を作製する方法は、リセドロン酸亜鉛アジュバントと担体及び/又は任意に1つ以上の補助成分とを組み合わせる工程を含む。
【0032】
概して、製剤は、リセドロン酸亜鉛アジュバントと液体担体若しくは微粉固体担体、又はその両方とを均一かつ密接に組み合わせ、その後、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0033】
有効成分の経口投与のための液体投与形態としては、薬学的に許容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。リセドロン酸亜鉛アジュバントに加えて、液体投与形態は、当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタン無水物の脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含有していてもよい。
【0034】
経口組成物は、不活性希釈剤に加えて、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味料、矯味剤、着色料、香料及び防腐剤等のアジュバントを含んでいてもよい。
【0035】
懸濁製剤は、リセドロン酸亜鉛アジュバントに加えて、懸濁化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタン無水物のエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントゴム、並びにそれらの混合物を含有し得る。
【0036】
本発明の直腸又は膣内投与用の医薬組成物は坐剤として提供することができ、これは、リセドロン酸亜鉛アジュバントと1つ以上の好適な非刺激性の賦形剤又は担体(例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックス、又はサリチル酸塩を含む)とを混合することによって調製することができ、室温で固体であり、体温で液体であるため、直腸又は膣内で溶融してリセドロン酸亜鉛アジュバントを放出する。本発明の膣内投与に適した製剤としては、当該技術分野で既知の好適な担体を含有する膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーも挙げられる。
【0037】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、リセドロン酸亜鉛アジュバントと組み合わせて、溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルション、又は使用前に滅菌注射用溶液若しくは分散液に再構成することができる滅菌粉末を含み、酸化防止剤、緩衝液、製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含有していてもよい1つ以上の薬学的に許容可能な滅菌等張水性又は非水性担体を含む。
【0038】
本発明の医薬組成物に用いることができる好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びそれらの好適な混合物、オリーブ油等の植物油、並びにオレイン酸エチル等の注射用有機エステルが挙げられる。例えばレシチン等のコーティング材料の使用、必要とされる粒径の維持(分散液の場合)、及び界面活性剤の使用によって適当な流動性を維持することができる。
【0039】
これらの組成物は、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントを含有していてもよい。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に加えることが望ましい場合もある。加えて、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅らせる作用物質を加えることにより、注射用医薬品形態の持続的吸収をもたらすことができる。
【0040】
注射用デポー形態は、リセドロン酸亜鉛アジュバントのマイクロカプセル化(microencapsule)マトリックスを生分解性ポリマー(ポリラクチド-ポリグリコリド等)中で形成することによって作製することができる。リセドロン酸亜鉛アジュバントとポリマーとの比率及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、リセドロン酸亜鉛アジュバントの放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、リセドロン酸亜鉛アジュバントを生体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルションに封入することによっても調製される。注射用材料を、例えば細菌保持フィルターに通して濾過することで滅菌することができる。
【0041】
製剤は、単回投与又は複数回投与用の密閉容器(例えばアンプル及びバイアル)内で与えることができ、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保管することができる。即時注射溶液及び懸濁液を上記のタイプの滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0042】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリセドロン酸亜鉛アジュバントと1つ以上の抗原とを含む免疫原性組成物にも関する。
【0043】
本明細書において使用される免疫原性組成物は、被験体又は動物に投与した場合に、それに含まれる上記の1つ以上の抗原に対する防御免疫応答を刺激する。
【0044】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリセドロン酸亜鉛アジュバントと1つ以上の抗原とを含むワクチン組成物にも関する。
【0045】
本明細書において使用されるワクチン組成物は、被験体又は動物に投与した場合に、例えば微生物に対する防御免疫応答を刺激するか、又は被験体若しくは動物を感染から効果的に保護する。
【0046】
ワクチン組成物は、免疫応答の調整に有利に応答する病的状態を予防又は改善するために使用することができる。かかるワクチン組成物は、予防ワクチン又は治療ワクチンであり得る。ワクチン組成物は遺伝子操作ワクチン、例えばタンパク質ワクチン、例えば水痘帯状疱疹ウイルス組み換えタンパク質ワクチンを含むのが好ましい。
【0047】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリセドロン酸亜鉛アジュバントを含むワクチンアジュバントにも関する。例えば、かかるワクチンアジュバントは、下記のような二次アジュバントを含んでいてもよい。
【0048】
「アジュバント」又は「ワクチンアジュバント」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原に対する免疫応答を非特異的に加速、延長又は増強することが可能な物質を指す。
【0049】
有利なことに、アジュバントは、防御免疫応答に必要とされる免疫の回数又は抗原の量を低減することもできる。
【0050】
アジュバント自体は免疫応答を全く又は殆ど刺激しないが、アジュバントが抗原に対する免疫応答を高めることが知られている。したがって、本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントを1つ以上の抗原と組み合わせて、個体において免疫応答を刺激するために使用され得る免疫原性組成物又はワクチンを作製することができる。様々な物質を免疫原型又はワクチン型の複合体又は製剤において抗原として使用することができる(例えば、弱毒化及び不活化したウイルス性及び細菌性病原体、精製巨大分子、タンパク質、多糖、トキソイド、組み換え抗原、病原体に由来する外来遺伝子を有する生物、合成ペプチド、ポリヌクレオチド、抗体及び腫瘍細胞等)。抗原は、予防ワクチン及び治療ワクチンの両方に使用することができる。抗原としては、水痘帯状疱疹ウイルスgE糖タンパク質抗原(VZV gE)等のタンパク質抗原が挙げられる。
【0051】
様々な免疫調節分子を本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントと組み合わせて使用して、個体における免疫応答を変化させることもできる。本明細書に記載される免疫調節剤は、身体の免疫機能を調節し、バランスを取り、回復させることができる製剤の一種を指す。一般に使用される免疫調節剤には、免疫促進剤、免疫抑制剤及び免疫双方向性調節剤)の3つの主要なカテゴリーが含まれる。
【0052】
本発明のワクチン組成物中の抗原及びリセドロン酸亜鉛アジュバントの量及びその投与量は、医薬分野の当業者に既知の手法によって決定され、以下のような要因を考慮する必要がある:特定の抗原、特定の動物又は患者の年齢、性別、体重、種及び状態、並びに投与経路。
【0053】
好ましい実施の形態において、本発明のワクチン組成物は、界面活性剤、吸収促進剤、吸水性ポリマー、酵素分解を阻害する物質、アルコール、有機溶媒、油、pH調整剤、防腐剤、浸透圧調整剤、噴射剤、水及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される1つ以上の成分を更に含む。
【0054】
本発明のワクチン組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含んでいてもよい。担体の量は、他の成分について選択される量、所望の抗原の濃度、投与経路の選択(経口又は非経口)等によって決まる。担体は、任意の好都合な時点でワクチンに添加することができる。凍結乾燥ワクチンの場合、担体を、例えば投与前に添加することができる。代替的には、担体を用いて最終生成物を製造してもよい。
【0055】
適切な担体の例としては、滅菌水、生理食塩水、緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、緩衝塩化ナトリウム、植物油、最小必須培地(MEM)、HEPES緩衝液を含むMEM等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
任意に、本発明のワクチン組成物は、従来の二次アジュバントをアジュバント及び所望の結果に応じて様々な量で含有し得る。
【0057】
好適な二次アジュバントの例としては、安定剤;乳化剤;水酸化ナトリウム、塩酸等のpH調整剤;Tween(商標)80(ポリソルベート80、Sigma Chemical Co.(St. Louis, Mo.)から市販されている)等の界面活性剤;リポソーム;iscomアジュバント;ムラミルジペプチド等の合成グリコペプチド;デキストラン等の増量剤;カルボキシポリメチレン;マイコバクテリア細胞壁抽出物等の細菌細胞壁;コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)等のそれらの誘導体;プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acne);マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、例えばウシ型カルメットゲラン桿菌(Bovine Calmette Guerin:BCG);ワクシニア又は動物ポックスウイルスタンパク質;オルビウイルス等のサブウイルス粒子アジュバント;コレラ毒素;N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-プロパンジアミン(ピリジン);モノホスホリルリピドA;ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA、Kodak(Rochester, N.Y.)から市販されている);それらの合成物及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
好適な安定剤の例としては、スクロース、ゼラチン、ペプトン、NZ-Amine又はNZ-Amine AS等の消化タンパク質抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤の例としては、鉱油、植物油、ラッカセイ油、及び注射剤又は鼻腔内ワクチン組成物に有用な他の標準的な代謝可能な非毒性油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明の目的上、これらのアジュバントは、リセドロン酸亜鉛アジュバントと抗原物質との組合せが抗原物質に対する液性免疫応答を顕著に高めることができるため、単に上記のリセドロン酸亜鉛アジュバントに対比して、本明細書で「二次」とされる。二次アジュバントは、主に加工助剤としてワクチン製剤に含まれるが、或る特定のアジュバントは、免疫増強特性を或る程度有し、二重の目的がある。
【0060】
従来の防腐剤は、約0.0001重量%~約0.1重量%の範囲の有効量でワクチン組成物に添加することができる。製剤に用いられる防腐剤に応じて、この範囲を下回る又は上回る量が有用であり得る。典型的な防腐剤としては、例えばソルビン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、フェノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール、等が挙げられる。
【0061】
不活化、改変又は他のタイプのワクチン組成物の選択及び本発明の改善されたワクチン組成物製剤の調製は、当業者には既知であるか、又は容易に決定される。
【0062】
一般に、本発明のワクチン組成物は経口的、非経口的(皮下、筋肉内、静脈内、皮内又は腹腔内)、口腔内、鼻腔内又は経皮的に都合よく投与することができる。本発明によって企図される投与経路は、抗原物質及び製剤化助剤によって決まる。例えば、ワクチン組成物がサポニンを含有する場合、サポニンは経口又は鼻腔内投与では非毒性であるが、強力な溶血剤として機能するため、サポゲニングリコシドを血流に注射しないように注意を払わなければならない。また、多くの抗原は、経口摂取した場合に効果的ではない。ワクチン組成物を筋肉内に投与するのが好ましい。
【0063】
ワクチン組成物の投与量は、特に選択される抗原、投与経路、種及び他の標準要因に左右される。当業者が各抗原に対する免疫原性応答に適切な投与量を容易かつ即座に滴定し、効果的な免疫量及び投与経路を決定し得ることが企図される。
【0064】
本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントは、ワクチンアジュバントとして、より弱い抗原(例えば高度に精製された又は組み換え抗原)の免疫原性を増強するか、免疫応答に必要とされる抗原の量を減少させるか、又は防御免疫に必要とされる免疫の回数を減少させることによってワクチンの有効性を改善することができる。本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントは、免疫応答が低下した又は弱まった個体(例えば新生児、高齢者及び免疫不全の個体)におけるワクチンの有効性を改善することができ、標的組織におけるワクチンの有効性を高めることができる。代替的には、本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントは、特定のサイトカインプロファイルを誘発することによって細胞性免疫応答及び/又は液性免疫応答を促進することができる。
【0065】
抗原及び/又は免疫調節分子と本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントとの組合せは、当該技術分野で既知の様々な前臨床毒性及び安全性研究において試験することができる。
【0066】
例えば、かかる組合せは、抗原が免疫原性であることが見出され、ヒトの臨床試験について提案されているのと同じ経路で再現性よく免疫され得る動物モデルにおいて評価することができる。
【0067】
抗原及び/又は免疫調節分子と本発明のリセドロン酸アジュバントとの組合せは、例えば生物製品評価研究センター/食品医薬品局及び国立アレルギー感染症研究所によって規定されているアプローチによって試験することができる(Goldenthal, KL et al. AID Res Hum Retroviruses, 9: S45-9 (1993))。
【0068】
抗原及び/又は免疫調節分子と本発明の複合アジュバントとの特定の組合せについて、特定の動物種における特定の病的状態の治療に有用である、適切な抗原ペイロード、免疫の経路、用量、抗原の純度及びワクチン接種レジメンを決定する方法が当業者には知られている。
【0069】
免疫応答を誘導するための本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、薬学的に許容可能な媒体とともに溶液又は懸濁液として投与することができる。
【0070】
かかる薬学的に許容可能な媒体は、例えば水、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水若しくは他の緩衝生理食塩水(physiologically buffered saline)、又は他の溶媒若しくはビヒクル、例えばグリコール、グリセロール、及びオリーブ油等の油、若しくは注射用有機エステルであり得る。また、薬学的に許容可能な媒体は、リポソーム又はミセルを含有していてもよく、ポリペプチド又はペプチド抗原と洗浄剤及びグリコシド(Quil A等)とを混合することによって調製される免疫刺激複合体を含有していてもよい。
【0071】
本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、免疫応答を刺激するために様々な経路によって投与することができる。例えば、免疫原性組成物又はワクチンは皮下、皮内、リンパ内、筋肉内、腫瘍内、膀胱内、腹腔内及び脳内に送達することができる。
【0072】
本発明のリセドロン酸亜鉛アジュバントの特定の製剤に適切な送達経路を選択する方法が当業者には知られている。
【0073】
本発明の好ましい実施の形態において、哺乳動物における感染の治療又は予防のためのワクチン接種方法は、本発明のワクチンの使用を含み、ワクチンを特に筋肉内に投与する。ワクチンは単回投与として投与しても、又は好ましくは一次免疫/追加免疫戦略に従って数回、例えば1週間若しくは1ヶ月に2回、3回若しくは4回投与してもよい。適切な用量は、様々なパラメーターによって決まる。
【0074】
一態様において、本発明は、ワクチンアジュバント、医薬組成物、免疫原性組成物又はワクチン組成物の製造のための本明細書に記載されるリセドロン酸亜鉛アジュバントの使用にも関する。ワクチンは、水痘帯状疱疹ウイルスタンパク質組み換えワクチン等のタンパク質ワクチンを含むのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】アジュバントを調製するための3つの調製プロセスの概要図である。
図2】リセドロン酸亜鉛アジュバントの電子顕微鏡像である。
図3】リセドロン酸亜鉛アジュバントの粒径を示す図である。
図4】組み換えVZV gEタンパク質と組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバントのアジュバント活性の決定を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
図5】マウス抗体アイソタイプに対する組み換えVZV gEタンパク質と組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバントの影響を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
図6】B型肝炎治療用タンパク質と組み合わせたリセドロン酸ナトリウムアジュバント及びリセドロン酸亜鉛アジュバントのアジュバント活性の決定を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
図7】リセドロン酸亜鉛アジュバント活性の用量効果関係に関する研究を示す図である。平均±SD:n=5、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明を実施するための具体的なモデル
以下、本発明の実施形態を実施例と併せて詳細に説明する。実施例において具体的な条件が示されていない場合には、従来の条件又は製造業者によって推奨される条件に従って行うものとする。製造業者の指定なしに使用される試薬又は機器は全て、商業的に購入することができる従来の製品である。
【0077】
調製例1:リセドロン酸亜鉛アジュバント(Zn-リセドロン酸(1/0.25))の調製
リセドロン酸ナトリウム(C10NNaO):Hunan Huateng Pharmaceutical Co., Ltd.から購入
無水塩化亜鉛(ZnCl):Xilong Chemicalから購入
リン酸水素二ナトリウム十二水和物(NaHPO・12HO):Xilong Chemicalから購入
水酸化ナトリウム(NaOH):Xilong Chemicalから購入
【0078】
溶液の調製:
1:0.25のZn/リセドロン酸のモル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(7.78mMリセドロン酸+36mM水酸化ナトリウム+15.55mMリン酸水素二ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0079】
Zn-リセドロン酸(1/0.25)アジュバント懸濁液の調製並びにその物理的及び化学的特性の決定:
図1Aに示すスキームに従い、溶液A及び溶液Bを使用してリセドロン酸亜鉛アジュバント懸濁液を形成した。すなわち、調製した溶液Bを1:1の体積比で全てが添加されるまで溶液Aに滴加し、懸濁液を形成した。
【0080】
図1Aに従う混合工程後に、得られるリセドロン酸亜鉛アジュバントを121℃の高圧蒸気によって60分間、1回滅菌し、減菌後のpH値、粒径及び粒子形態等のその物理的及び化学的特性を測定した。
【0081】
調製例2:リセドロン酸亜鉛アジュバント(Zn-リセドロン酸(1/1))の調製
試薬の供給元は調製例1に見ることができる。
【0082】
溶液の調製:
1:1のZn/リセドロン酸のモル濃度比に従い、50mLの31.11mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの溶液(31.11mMリセドロン酸+60mM水酸化ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0083】
Zn-リセドロン酸(1/1)アジュバント懸濁液の調製並びにその物理的及び化学的特性の決定:
詳細については調製例1を参照されたい。
【0084】
調製例3:リセドロン酸亜鉛アジュバント(Zn-リセドロン酸(1/0.125))の調製
試薬の供給元は調製例1に見ることができる。
【0085】
溶液の調製:
1:0.125のZn/リセドロン酸のモル濃度比に従い、1Lの124.44mM塩化亜鉛溶液を調製し、溶液Aとし、1Lの溶液(15.56mMリセドロン酸+60mM水酸化ナトリウム+184mMリン酸水素二ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液A及び溶液Bを後の使用のために0.22μmのフィルター膜で濾過した。
【0086】
Zn-リセドロン酸(1/0.125)アジュバント懸濁液の調製並びにその物理的及び化学的特性の決定:
詳細については調製例1を参照されたい。
【0087】
調製例4:アルミニウムアジュバントAl-002の調製
溶液の調製:試薬の供給元は調製例1に見ることができる。
【0088】
0.3:1のリン酸塩ラジカル/Alのモル濃度比に従い、50mLの62.22mM塩化アルミニウム溶液を調製し、溶液Aとし、50mLの9.33mMリン酸水素二ナトリウム溶液(50mM水酸化ナトリウム)を調製し、溶液Bとした。溶液を後の使用のために0.22μmの膜フィルターで濾過した。
【0089】
アルミニウムアジュバントAl-002懸濁液の調製
溶液A及び溶液Bを1:1の体積比で調製した。調製は図1Aのスキームに従って行い、調製した溶液Bを1:1の体積比で全てが添加されるまで溶液Aに滴加し、懸濁液を形成した。混合後に得られた懸濁液を121℃で60分間滅菌した。
【0090】
調製例5:アルミニウムアジュバントAl-001-840の調製
溶液の調製:試薬の供給元は調製例1に見ることができる。
【0091】
0.15のリン酸塩/Alモル濃度比に従い、0.5Lの124mM塩化アルミニウム溶液を調製し、溶液Aとし、0.5Lの18.6mMリン酸水素二ナトリウム溶液(150mM水酸化ナトリウムも含有する)を調製し、溶液Bとした。溶液を後の使用のために0.22μmの膜で濾過した。
【0092】
アルミニウムアジュバントAl-001-840懸濁液を、アルミニウアジュバントAl-002懸濁液の調製を参照して同じ方法で調製した。
【0093】
実施例1:リセドロン酸亜鉛アジュバント(Zn-リセドロン酸(1/0.125))の物理的及び化学的特性の決定
混合後に得られたリセドロン酸亜鉛懸濁液を121℃で60分間、1回滅菌し、減菌後のpH値、粒径及び粒子形態、金属イオン沈殿率等の物理的及び化学的特性、並びに他の物理的及び化学的特性を測定した。
【0094】
以下の検出方法は、任意のZn/リセドロン酸モル比、すなわち、任意のリセドロン酸亜鉛アジュバント、例えば無機リン酸をドープしたリセドロン酸亜鉛アジュバントに適用可能であった。
【0095】
(1)アジュバント粒子の形態の観察
リセドロン酸亜鉛アジュバントを脱イオン水で50倍希釈した後、日本電子株式会社のJEM-2100透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行った。具体的な工程は以下の通りであった:アジュバントサンプルを、炭素膜でコーティングした銅メッシュ上に滴下し、10分間吸着させ、残液を濾紙で拭き取り、サンプルを透過型電子顕微鏡のサンプルチャンバーに送ってサンプルの形態を観察し、更なる分析のために撮影する。
【0096】
実験結果:図2に示すように、Zn-リセドロン酸(1/1)アジュバントが非晶質クラスター形状を有する一方で、Zn-リセドロン酸(1/0.25)及びZn-リセドロン酸(1/0.125)アジュバントにおいては、球状ナノコア粒子をはっきりと見ることができた。
【0097】
(2)pH測定
試験対象のサンプルを取り、室温で少なくとも30分間平衡化し、SartoriusのpHガラス電極を用いて測定した。
【0098】
標準緩衝液(pH7.00)、標準緩衝液(pH4.01)及び標準緩衝液(pH10.01)を選択し、取扱説明書の要件に従って機器を較正した。
【0099】
「Mode」ボタンを押してpHモードとmVモードとを切り替えることができた。通常、溶液のpH値を決定する場合はpHモードを選択した。
【0100】
ディスプレイにClear bufferと示されるまで「SETUP」ボタンを押した後、「ENTER」ボタンを押して、以前の較正データを確定し、消去した。
【0101】
ディスプレイに緩衝溶液群「4.01、7.00、10.01」が示されるまで「SETUP」ボタンを押した後、「ENTER」ボタンを押して確定した。
【0102】
電極を電極保存液から慎重に取り出し、電極を脱イオン水で十分にすすぎ、よくすすいだ後に表面上の水を濾紙で乾燥させた(電極を拭かないように注意する)。
【0103】
電極を第1の緩衝溶液(pH7.00)に浸漬し、値が安定し、「S」が表示された後に「STANDARDIZE」ボタンを押すことで、機器が自動的に較正された。較正が成功すると、「7.00」及び電極スロープが表示された。
【0104】
電極を第1の緩衝溶液から取り出し、電極を脱イオン水で十分にすすぎ、電極を第2の緩衝溶液(pH4.01)に順に浸漬し、値が安定し、「S」が表示された後に「STANDARDIZE」ボタンを押すことで、機器が自動的に較正された。較正が成功すると、「4.01 7.00」及び「Slope」のメッセージが表示された。Slopeには測定された電極スロープ値が表示され、これは90%~105%の範囲内で許容可能であった。
【0105】
理論値から大きく逸脱している場合にはエラーメッセージ(Err)が表示され、電極を洗浄する必要があり、較正のために上記の工程を繰り返す必要がある。
【0106】
上記の操作を繰り返して、3点目(pH10.01)の較正を完了した。
【0107】
較正が完了した後、電極を脱イオン水で十分にすすぎ、続いて濾紙で軽く乾燥させた。サンプル溶液を均一に振盪し、ガラス電極をサンプル溶液に浸漬し、pH値が1分間で±0.05を超えて変化しなくなった後、読み取り値を確定した。
【0108】
サンプル溶液を均一に振盪し、再び測定を行った。2つのpH値の差が0.1を超えてはならない。2つの読み取り値の平均を試験品のpH値とみなした。
【0109】
実験結果:Zn-リセドロン酸(1/0.125)アジュバントは、滅菌前に6.9~7.3及び減菌後に6.4~6.8のpHを有していた。
【0110】
(3)粒径の決定
BeckmanのLS 13320レーザー粒径分析装置の電源を入れ、15分間予熱した。
【0111】
分析装置の制御ソフトウェアを起動し、サンプルセルの閉鎖コンパートメントを開け、サンプルセルをサンプル槽から取り出し、12mLの精製水を添加した。
【0112】
サンプルセルをサンプル槽上に置き、コンパートメントの蓋を閉めた。
【0113】
「start cycle」をクリックし、「Measure Offsets」、「Align」、「Measure Background」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、ポップアップダイアログボックスの「OK」をクリックして、ブランクバックグラウンドの較正を開始した。
【0114】
サンプルセルを取り出し、一定量の標準サンプル(分析装置に付属)を添加した。「start cycle」をクリックし、「Measure Loading」、「Enter Sample Info」、「Enter run setting」、「start runs」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、標準サンプルの名前をポップアップダイアログボックスに入力し、ソフトウェアの「Obscuration」パラメーターが8%~12%になった時点で「OK」をクリックすることで、標準サンプルの測定を行った。
【0115】
実験データの精度及び信頼性を確保するために、ブランクバックグラウンドを較正する必要があり、各測定を行う前に標準サンプルのサイズを測定する必要がある。
【0116】
サンプルセルの閉鎖コンパートメントを開け、サンプルセルを取り出した。
【0117】
サンプルセル内の標準サンプルを含有する水溶液を捨て、脱イオン水をサンプルセルに添加し、サンプルセルを3回洗浄した。
【0118】
洗浄後に12mLの脱イオン水を添加し、サンプルセルをサンプル槽上に置き、コンパートメントの蓋を閉めた。
【0119】
「start cycle」をクリックし、「Measure Offsets」、「Align」、「Measure Background」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、ポップアップダイアログボックスの「OK」をクリックして、ブランクバックグラウンドの較正を開始した。
【0120】
サンプルセルを取り出し、一定量の試験サンプルを添加し、サンプル試験コンパートメントの蓋を開け、サンプルセルをサンプル槽上に置き、コンパートメントの蓋を閉めた。
【0121】
「start cycle」をクリックし、「Enter Sample Info」、「Enter run setting」、「start runs」を順に選択し、最後に「start」をクリックし、標準サンプルの名前をポップアップダイアログボックスに入力し、ソフトウェアの「Obscuration」パラメーターが8%~12%になった時点で「OK」をクリックし、測定されたサンプルの粒径を記録した。
【0122】
実験結果:図3に示すように、Zn-リセドロン酸(1/0.125)アジュバントを例とすると、粒径は0.4μm~30μmであり、粒子の殆どが6μm~7μmのサイズを有していた。
【0123】
(4)PZCの検出:
測定用の機器:Nanobrook Omni(Brookhaven)
【0124】
実験操作:0.1M NaOH/1%HNOを用い、Zn-リセドロン酸(1/0.125)のpHを6.00/5.50/5.00/4.50/4.00/3.50/3.00/2.50/2.00に調整した。
【0125】
電極の不動態化:3mL~4mLのアジュバントをサンプルチューブに添加した。電極を挿入した後、SOPにおけるサイクルを50に設定し、機器を稼働させて電極を不動態化した。
【0126】
サンプル測定:電極を取り出した後、その下端を脱イオン水ですすぎ、続いて対応するサンプルを添加し、SOPにおけるサイクルを15に設定し、測定を3に設定し、pHを各サンプルの対応するpHに設定し、機器を稼働させた。
【0127】
データ処理:異なるpH値において対応するゼータ電位を得て、機器に付属のソフトウェアを実行してPZC値を得た。
【0128】
結果:Zn-リセドロン酸(1/0.125)アジュバントのPZCは4.11であった。
【0129】
(5)リセドロン酸亜鉛アジュバントの吸着率の決定
BSA標準の標準曲線のプロット:希釈バッファーとして150mM NaClを使用し、BSA標準(2mg/mL)を階段希釈し、280nmでの吸光度をUV2100 proで検出した。OD280は、0.2~0.8(0.2~1.5に拡大)で高い精度を示した。
【0130】
BSA勾配希釈(EP):希釈バッファーとして150mM NaClを使用し、一定量のBSAサンプルを秤量し、後の使用のためにEPにおいて指定された濃度勾配:0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、5mg/mL、10mg/mLに希釈した。
【0131】
吸着率の測定の使用条件として設定された、BSA:アジュバント比=3:1(体積比)でBSAをアジュバントと混合した。アジュバントを均一に振盪した後、実験条件に応じて異なる濃度のBSAと混合し、室温での吸着を1時間行い、その間に振盪を5回行った。遠心分離を13000rpm/分で3分間行った後、後の使用のために上清を採取した。
【0132】
タンパク質濃度の決定:ローリー法を用いてEP中のタンパク質濃度を決定した。本実験では、実際の状況に応じ、UV2100proを用いて280nmでの上清の吸光度を直接決定し、読み取り値を0.2~0.8の間に維持したが、そうでなければ上清を希釈する必要がある。
【0133】
吸着率の算出:吸着率=[1-OD280(上清の希釈係数X)/OD280(希釈率Xの吸着率が0の場合)]×100
【0134】
実験結果:Zn-リセドロン酸(1/0.125)を例として、初めにBSA標準曲線を測定した。アジュバント上清中のBSAの含有量を標準曲線に従って算出し、BSAに対するZn-リセドロン酸(1/0.125)アジュバントの吸着率を吸着式に従って算出したところ、BSAが0.5mg/mLである場合に約70%に達することができた。
【0135】
【表1】
【0136】
実施例2:リセドロン酸亜鉛アジュバントの金属イオン沈殿率の決定
方法:フレーム原子吸光分析でアジュバントの上清中の亜鉛元素の含有量を測定することにより、その金属イオン沈殿率を算出した。
【0137】
フレーム法(D2ランプバックグラウンド補正)を用いてリセドロン酸亜鉛アジュバント中の亜鉛含有量を決定し、決定手順を標準化した。検出機器は、原子吸光分光光度計:株式会社島津製作所のAA6300C(P/N 206-52430)であった。
【0138】
標準溶液及び決定対象のサンプルの調製:標準曲線の作成:亜鉛標準の原濃度は500μg/mLであり、これを0.1M塩酸溶液で希釈して、500ng/mL、1000ng/mL、1500ng/mL、2000ng/mL及び2500ng/mLの標準を得た。
【0139】
試験対象の溶液の調製:サンプルを0.1M塩酸溶液で400倍希釈し、ボルテックスミキサーによって振動下でよく混合した。
【0140】
Zn-リセドロン酸(1/0.125)アジュバントを13000r/分で10分間遠心分離し、上清を除去した。サンプルを測定のために超純水で5倍希釈した。測定プロセスは以下の通りであった。
【0141】
AA-6300Cの操作方法及びWizAArdソフトウェアの使用法:
電源を入れる:コンピューター、AA-6300Cの電源スイッチ、エアコンプレッサーのスイッチ(圧力を0.35MPaに設定した)、及び換気システムのスイッチを入れた。
【0142】
アセチレン開放:一次圧力が0.5MPaとなり、二次圧力が0.1MPaとなるようにアセチレンバルブをゆっくりと開けた。
【0143】
WizAArdソフトウェアの基本的な操作手順:WizAArdにログインする→要素を選択する→「未接続機器/パラメーター送信」ページで<接続/パラメーター送信>をクリックする→「機器の初期化」ページで設定する→「フレーム分析機器チェックカタログ」の項目の各々を確認し、チェックマークを入れ、<OK>をクリックする→波長(213.86)、スリット幅(0.7)、照明方法(発光)を設定し、Zn中空陰極ランプの実際の位置とプリセット位置とが同一となるように「光学パラメーター」ページの(ランプ位置設定)を設定し、(ランプ点灯)を選択する→ラインサーチ→バーナーの原点位置調整→メニューバーの(パラメーター)を選択する→(パラメーター編集)→照明方法を<BGC-D2>に変更→ラインサーチ→点火:C2H2がオンになり、圧力が要件を満たしていることを確認した後、点火するまでホストのPURGEボタン及びIGNITEボタンを同時に押す→オートゼロ→MRTワークシート上のブランク群(BLK)、標準品(STD)及び試験サンプル(UNK)を設定し、標準の理論濃度及びサンプルの名前を入力し、ネブライザーから伸びたサンプルチューブを通してサンプルを手動で投入し、サンプル量を毎回少なくとも1mLに設定し、(開始)を選択して試験する→フレームを停止する→データを保存し、機器とコンピューターとの接続を切る→シャットダウン。
【0144】
実験結果:Zn-リセドロン酸(1/0.125)を例とする。
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
実施例3:リセドロン酸亜鉛アジュバントのリセドロン酸沈殿率の決定
方法:UV分光光度法、機器:UV800(Beckman coulter)。
【0148】
リセドロン酸はピリジン環を有し、260nmで最大吸収ピークを有していた。紫外分光光度計によって260nmでアジュバントの上清を検出する具体的なプロセスは、以下の通りであった。
【0149】
初めに、2.374mg/mLリセドロン酸ナトリウム溶液(リセドロン酸Znアジュバント(1/0.125)中の添加したリセドロン酸ナトリウムの含有量)を生理食塩溶液で調製し、生理食塩水で0.08mg/mL、0.06mg/mL、0.04mg/mL、0.03mg/mL、0.02mg/mL、0.015mg/mL、0.01mg/mLに希釈し、260nmの波長で測定し、OD260値をそれぞれ得た。同時に、Zn-リセドロン酸(1/0.125)を13000rpmで10分間遠心分離した後、上清を採取した。アジュバントの上清を等張環境に置き、260nmの波長で検出し、上清中のリセドロン酸ナトリウムの吸光度を得た。結果は以下の通りであった。
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
実施例4:組み換えタンパク質VZV gEと組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバントのアジュバント活性の決定
調製したZn-リセドロン酸アジュバントを、Zn/リセドロン酸のモル濃度比がそれぞれ1:1及び1:0.25のアジュバントとして使用した。これらをアジュバントとして別個に使用し、VZV gE抗原と1:1の体積比で混合してワクチンを形成した後、ワクチンを筋肉内注射によってマウスに投与し、産生された特異抗体価を決定した。具体的な方法は以下の通りであった:
実験動物:Balb/Cマウス、6週~8週、5匹のマウス/群、雌性。
実験群:(1)アルミニウムアジュバント群(Al-002);(2)Zn-リセドロン酸(1/0.25)群;(3)Zn-リセドロン酸(1/1)群。
【0153】
免疫プロトコル:マウス1匹当たり抗原5μgで、アジュバント及びVZV gE抗原を1:1の体積比で混合してワクチンを形成した後、マウスにマウス1匹当たり100μLで各後肢に50μL筋肉内注射した。免疫を0週目、2週目及び4週目に行い、すなわち、免疫の群分けに従った動物の初回免疫の2週間後に、眼窩から血液サンプルを採取して血清中の特異抗体価を決定した。抗体価を初回免疫の2週間後に測定し、追加免疫を2週目に行い、2回目の免疫の2週間後に眼窩から血液サンプルを採取し、血清中の特異抗体価を測定し、同時に3回目の免疫を行い、2週間後に眼窩から血液サンプルを採取し、血清中の抗体価をELISAによって測定した。
【0154】
酵素結合免疫吸着法(ELISA)による抗体結合価の決定:
1.抗原コーティング溶液:1×PB 7.4緩衝溶液(4.343gのNaHPO・7HO;0.456gのNaHPO)。
2.洗浄溶液:PBST、INNOVAX Co.のELISAキット
3.ブロッキング溶液:2×ED(Enzyme Dilution):シーリング及びサンプル希釈のために超純水又は蒸留水で1倍に希釈した1×PBS+0.5%カゼイン+2%ゼラチン+0.1%防腐剤(proclin-300)。
4.発色溶液A:INNOVAX Co.のELISAキット。
5.発色溶液B:INNOVAX Co.のELISAキット。
6.停止溶液:INNOVAX Co.のELISAキット。
【0155】
実験手順:
(1)プレートのコーティング:VZV gE抗原をPB7.4コーティング緩衝溶液で一定濃度に希釈した。これを96ウェルポリスチレンプレートに100μL/ウェルで添加し、プレートを4℃で一晩コーティングした。
(2)ブロッキング:ウェル内のコーティング溶液を捨て、プレートをPBST洗浄溶液で1回洗浄し、遠心乾燥し、ブロッキング溶液を200μL/ウェルで添加し、ブロッキングを室温で4時間行った。
(3)一定希釈度の血清の添加:ウェル内のブロッキング溶液を捨て、プレートをPBSTで1回洗浄し、遠心乾燥し、最初のウェルに試験対象の血清を150μL/ウェルで添加し、その後のウェルのそれぞれにED希釈剤を100μL/ウェルで添加し、3倍の勾配で希釈し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(4)酵素標識抗体(GAM-HRP)の添加:ウェル内の血清希釈剤を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、酵素標識抗体(GAM-HRP、V:V=1:5000)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(5)発色:ウェル内の二次抗体を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、A及びBを同量で混合した100μL/ウェルの発色溶液を添加し、25℃で10分間反応させた。
(6)停止:2M硫酸停止溶液を50μL/ウェルで添加し、反応を停止させた。
(7)プレートの読取り:450nm及び630nmの二波長をマイクロプレートリーダーでの測定波長として設定し、各反応ウェルのOD値を測定した。
【0156】
実験結果を図4に示した。
【0157】
マウスの1回の免疫の2週間後に、Zn-リセドロン酸アジュバント群(1/0.25、1/1)の抗体価は対照群よりも高く、すなわち、アルミニウムアジュバント群の10倍超であり、作用の急速な発現の特徴を示した。2回の免疫後に液性免疫応答増強の利点が依然として顕著であった。4週目に、Zn-リセドロン酸アジュバント群(1/0.25)の抗体価は、アルミニウムアジュバント群の7.5倍であり、Zn-リセドロン酸アジュバント群(1/1)ではアルミニウムアジュバント群の18倍であった。3回の免疫後、6週目に、Zn-リセドロン酸アジュバント群(1/0.25)の抗体価は、対照群の10倍であり、Zn-リセドロン酸アジュバント群(1/1)では対照群の7.5倍であった。
【0158】
実施例5:特異抗体アイソタイプに対する組み換えタンパク質VZV gEと組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバントによるマウスの免疫の影響
調製したZn-リセドロン酸アジュバントを、Zn/リセドロン酸のモル濃度比が1:0.25のアジュバントとして使用した。これをアジュバントとしてVZV gE抗原と組み合わせてマウスに筋肉内注射し、産生された特異抗体価を測定した。具体的な方法は以下の通りであった:
実験動物:Balb/Cマウス、6週~8週、5匹のマウス/群、雌性。
実験群:(1)アルミニウムアジュバント群(Al-002);(2)Zn-リセドロン酸(1/0.25)群。
【0159】
免疫プロトコル:マウス1匹当たり抗原5μgで、アジュバント及びVZV gE抗原を1:1の体積比で混合してワクチンを形成した後、マウスにマウス1匹当たり100μLで各後肢に50μL筋肉内注射した。免疫を0週目、2週目及び4週目に行い、3回の免疫注射が完了した後、試験のために2週間後に眼窩から血液サンプルを採取し、ELISAを用いて血清中の特異抗体アイソタイプのレベルを決定した。
【0160】
実験材料:
1.抗原コーティング溶液:1×PB 7.4緩衝溶液(4.343gのNaHPO・7HO;0.456gのNaHPO)。
2.洗浄溶液:PBST、Beijing Wantai社のELISAキット。
3.ブロッキング溶液:2×ED(Enzyme Dilution):シーリング及びサンプル希釈のために超純水又は蒸留水で1倍に希釈した1×PBS+0.5%カゼイン+2%ゼラチン+0.1%防腐剤(proclin-300)。
4.発色溶液A:Beijing Wantai社のELISAキット。
5.発色溶液B:Beijing Wantai社のELISAキット。
6.停止溶液:Beijing Wantai社のELISAキット。
【0161】
実験手順:
(1)プレートのコーティング:VZV gE抗原をPB7.4コーティング緩衝溶液で一定濃度に希釈し、96ウェルポリスチレンプレートに100μL/ウェルで添加し、プレートを4℃で一晩コーティングした。
(2)ブロッキング:ウェル内のコーティング溶液を捨て、プレートをPBSTで1回洗浄し、遠心乾燥し、ブロッキング溶液を200μL/ウェルで添加し、ブロッキングを室温で4時間行った。
(3)試験対象の血清の添加:ウェル内のブロッキング溶液を捨て、プレートをPBSTで1回洗浄し、遠心乾燥し、一定希釈度の試験対象の血清を100μL/ウェルで添加し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(4)酵素標識抗体の添加:ウェル内の血清希釈剤を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、各抗体アイソタイプ(IgG1、V:V=1:30000;IgG2a、V:V=1:1000;IgG2b、V:V=1:1000)を特異的に認識する酵素標識抗体を100μL/ウェルで添加し、25℃で1時間インキュベートして反応させた。
(5)発色:ウェル内の酵素標識抗体を捨て、プレートをPBSTで5回洗浄し、遠心乾燥し、発色溶液、すなわちA及びBを同量で混合し、3倍希釈した発色溶液を100μL/ウェルで添加し、25℃で10分間反応させた。
(6)停止:50μL/ウェルの2M硫酸停止溶液を添加して、反応を停止させた。
(7)プレートの読取り:450nm及び630nmの二波長をマイクロプレートリーダーでの測定波長として設定し、各反応ウェルのOD値を測定した。
【0162】
実験結果を図5に示した。
【0163】
実施例4に記載の実験手順を用いて、組み換えタンパク質VZV gEと組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバント又はアルミニウムアジュバントでマウスを筋肉内注射によって免疫した。免疫手順は実施例4と同じであった。3回の注射の後、血液サンプルを2週間後に採取し、マウス血清抗体の各アイソタイプのレベルの結果を図5に示した。アルミニウムアジュバント群と比較して、リセドロン酸亜鉛アジュバント群は、より強いIgG2a及びIgG2bアイソタイプ抗体レベルを刺激することができ、IgG2a及びIgG2bに対するIgG1の比率は、アルミニウムアジュバント群よりも低く、Th1免疫経路に対して或る特定の刺激効果を有することが示された。
【0164】
実施例6:B型肝炎治療用タンパク質と組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバントのアジュバント活性の決定
実施例4に記載の実験手順を用いて、B型肝炎治療用タンパク質と組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバントでマウスを筋肉内注射によって免疫し、血清抗体価を検出した。具体的な方法は以下の通りであった:
実験動物:Balb/Cマウス、6週~8週、5匹のマウス/群、雌性。
実験群:(1)生理食塩水;(2)アルミニウムアジュバント群(Al-001-840);(3)リセドロン酸ナトリウム群;(4)Zn-リセドロン酸(1/0.125)群;このうち、群(3)のリセドロン酸ナトリウムの含有量は、群(4)のリセドロン酸亜鉛と同じであった。詳細については調製例3を参照されたい。
【0165】
免疫プロトコル:マウス1匹当たり抗原1.2μgで、アジュバント及びB型肝炎治療用タンパク質を1:1の体積比で混合してワクチンを形成した後、マウスにマウス1匹当たり150μLで各後肢に75μL筋肉内注射した。免疫を0週目、2週目、3週目、4週目、5週目及び6週目にマウス1匹当たり1.2μgの抗原で行い、6週目の後に眼窩から血液サンプルを採取し、ELISAを用いて血清中の特異抗体のレベルを決定した。詳細については実施例4を参照されたい。
【0166】
実験結果:図6に示すように、アルミニウムアジュバント群と比較して、リセドロン酸亜鉛アジュバント群は、マウスにおいて1回の免疫注射後の急速かつ強力な発現を特徴とし、その差は統計的に有意であった。3回の免疫注射後、すなわち4週目に、その液性免疫増強の利点がアルミニウムアジュバント群と比較して依然として有意であり、5回の免疫注射後にアルミニウムアジュバント群よりも僅かに良好であった。一方、リセドロン酸ナトリウム自体も或る特定の液性免疫刺激効果を有し、アルミニウムアジュバントと比較して統計的有意差を示さなかった。
【0167】
実施例7:リセドロン酸亜鉛アジュバント活性の用量効果関係に関する研究
実施例4に記載の実験手順を用いて、B型肝炎治療用タンパク質と組み合わせたリセドロン酸亜鉛アジュバントでマウスを筋肉内注射によって免疫し、血清抗体価を検出した。具体的な方法は以下の通りであった:
実験動物:Balb/Cマウス、6週~8週、5匹のマウス/群、雌性。
実験群分け1:(1)アルミニウムアジュバント群(Al-001-840);(2)2×Zn-リセドロン酸(1/0.125)群;(3)0.75×Zn-リセドロン酸(1/0.125)群;(4)0.35×Zn-リセドロン酸(1/0.125)群。
実験群分け2:(1)アルミニウムアジュバント群(Al-001-840);(2)2×Zn-リセドロン酸(1/0.125)群;(3)1×Zn-リセドロン酸(1/0.125)群。
【0168】
免疫プロトコル:マウス1匹当たり抗原1.2μgで、アジュバント及びB型肝炎治療用タンパク質を1:1の体積比で混合してワクチンを形成した後、マウスにマウス1匹当たり100μLで各後肢に50μL筋肉内注射した。免疫を0週目、2週目及び4週目に行い、0週目、2週目、3週目、4週目、5週目及び6週目に眼窩から血液サンプルを採取し、ELISAを用いて血清中の特異抗体のレベルを決定した。詳細については実施例4を参照されたい。
【0169】
実験結果:図7に示すように、2回の免疫注射の2週間後の血清抗体価を比較することで、Zn-リセドロン酸(1/0.125)を2×(2×はワクチン製剤中のアジュバントの濃度である)から0.75×及び0.35×に減少させた場合に、その液性免疫増強レベル及びアジュバントの使用量が有意な用量効果関係を示すことが見出された。一方、Zn-リセドロン酸(1/0.125)を2×から1×に減少させた場合、その液性免疫応答増強レベルは統計的有意差を示さなかった。全てのデータを考慮すると、Zn-リセドロン酸(1/0.125)が顕著な液性免疫増強効果を有し、将来的に免疫増強剤としてワクチンに使用され得ることが確認される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7