(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】着脱式三味線
(51)【国際特許分類】
G10D 3/095 20200101AFI20231002BHJP
【FI】
G10D3/095
(21)【出願番号】P 2019086680
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591274668
【氏名又は名称】株式会社セベル・ピコ
(72)【発明者】
【氏名】二宮 朝保
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3136320(JP,U)
【文献】実開昭59-060691(JP,U)
【文献】実開昭50-063020(JP,U)
【文献】実開昭49-141819(JP,U)
【文献】米国特許第10490171(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00-3/22
G10H 1/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部(10)と棹部(20)を備えた三味線であって、
前記胴部(10)が前記棹部(20)に対向する対向面(11)に第1連結部(12)が設けられ、
前記棹部(20)が前記胴部(10)に対向する対向面(21)に第1被連結部(22)が設けられ、
前記第1連結部(12)は突出部を有し、
前記第1被連結部(22)は前記突出部と嵌合する受入部を有し、
前記突出部と前記受入部とは、挿脱可能に嵌合されて
おり、
前記胴部(10)の空洞内部へ貫通する貫通孔(14a)が前記対向面(11)に設けられ、
第1棒状部材(30)が前記貫通孔(14a)に差し込まれており、
前記第1棒状部材(30)の一端部は、
前記対向面(11)よりも外部へ突出して
前記第1連結部(12)の前記突出部を形成して
おり、
前記胴部(10)の前記対向面(11)に第2連結部(13)が設けられ、
前記棹部(20)が前記対向面(21)に第2被連結部(23)が設けられ、
前記第2連結部(13)は突出部を有し、
前記第2被連結部(23)は前記突出部と嵌合する受入部を有し、
第2棒状部材(40)が貫通孔(14b)に差し込まれており、
前記第2棒状部材(40)の一端部は、
前記対向面(11)よりも外部へ突出して、
前記第2連結部(13)の突出部を形成していることを特徴とする三味線。
【請求項2】
請求項
1に記載の三味線において、
前記貫通孔(14a)は前記対向面(11)の対極となる対極面(15)にも設けられ、
前記第1棒状部材(30)の他端部は、
前記対極面(15)よりも外部へ突出していることを特徴とする三味線。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の三味線において、
前記第1被連結部(22)の受入部および前記第2被連結部(23)の受入部の内の少なくとも一方は、
前記棹部(20)の長手方向に貫通する貫通孔であることを特徴とする三味線。
【請求項4】
請求項
1又は2に記載の三味線において、
前記第1棒状部材(30)および第2棒状部材(40)の少なくとも一方の他端部には係合部が形成されており、
前記胴部(10)の内側壁部に形成された被係合部(16)と係合していることを特徴とする三味線。
【請求項5】
請求項
1又は2に記載の三味線において、
前記第1棒状部材(30)および前記第2棒状部材(40)の少なくとも一方に当該棒状部材を覆い、
両端がそれぞれ前記胴部(10)の空洞内部の壁面に当接している補強部材(50)を有していることを特徴とする三味線。
【請求項6】
請求項
3に記載の三味線において、
第2棒状部材(40)の一端部は、
前記棹部(20)の第2被連結部23の前記受入部の外側に突出していることを特徴とする三味線。
【請求項7】
請求項
1又は2に記載の三味線において、
前記棹部(20)の前記第2被連結部(23)の前記受入部に連通する挿通孔(24)が設けられ、
前記挿通孔(24)に糸を挿通させることの出来ることを特徴とする三味線。
【請求項8】
請求項
7に記載の三味線において、
一端が糸巻きに固定された糸が、胴の表面および裏面を経由して配設され、
前記糸の他端が挿通孔(24)を通して固定されていることを特徴とする三味線。
【請求項9】
請求項
3に記載の三味線において、
前記第1棒状部材(30)および前記第2棒状部材(40)の少なくとも一方にはネジ溝が設けられ、
当該棒状部材は前記胴部(10)の内部に螺入されて、
前記胴部(10)と前記棹部(20)が連結されていることを特徴とする三味線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱可能な三味線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三味線を胴部と棹部に分けることで、三味線を持ち運びやすくさせることが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の三味線は、胴部と棹部を分離させると、中木の付いた棹部が長くなり、持ち運びにくい場合もあった。また、胴部と棹部との間に隙間が生じて、緩みが生じてしまう場合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明における三味線は、胴部10と棹部20を備えている。胴部10には棹部20と連結するための連結部が設けられ、棹部20には胴部10と連結するための被連結部が設けられている。この連結部と被連結部によって、胴部10と棹部20は自在に着脱出来るようになっている。また、連結部と被連結部の内の一方には突出部が形成され、他方にはこの突出部と嵌合出来る受入部が形成されており、この突出部とこの受入部は、挿脱可能に嵌合することが出来るようになっている。
【0005】
胴部10の空洞内部へ貫通する貫通孔14(14a)が対向面11に設けられ、第1棒状部材30が貫通孔14(14a)に差し込まれている。また、第1棒状部材30の一端部は、対向面11よりも外部へ突出しており、第1連結部12の突出部になる。この第1棒状部材30の一端部が、胴部10の突出部として機能することになる。胴部10の第1連結部12の突出部と、棹部20の第1被連結部22の受入部は挿脱可能に嵌合されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、従来棹部と一体になっていた中木(胴内部への挿入部)が、棹部から無くなることで、棹部の長手方向の長さを短くさせることが出来る。また、保管する上でもスペースを節約することが出来る。さらに、胴部と棹部の緩みを抑えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図(三味線100)
【
図2】胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図(三味線100)
【
図4】胴部10を対向面11側から見た図(三味線100)
【
図5】胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図(三味線100A)
【
図6】胴部10を対向面11側から見た図(三味線100A)
【
図7】胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図(三味線100B)
【
図8】胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図(三味線100C)
【
図9】胴部10を上側から見た図(三味線100C)
【
図10】胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図(三味線100D)
【
図11】胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図(三味線100D)
【
図12】胴部10と棹部20を連結させた前の状態を示す図(三味線100E)
【
図13】胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図(三味線100E)
【
図14】胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図(三味線100F)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で扱う三味線は、胴部10と棹部20とに分離させることが出来る。ここでは、構造の説明を簡略化させる為に基本的には、糸、駒、音緒、糸巻き等の附属品、および棹部の天神側などを省略しており、図面に表示させていない。但し、
図11と
図13には、糸、駒、音緒を表示してある。
ここで言う胴部とは、胴本体、振動膜(表皮や裏皮)、胴内部の部材までも包有した範囲を意味し、棹部とは、天神部までも包有した範囲を意味する。本発明は、図示している形状に限定されるものではない。
【0009】
図1は三味線100における胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図であり、
図2は胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図であり、
図3は胴部10を上側から見た図であり、
図4は胴部10を対向面11側から見た図ある。
図示しているように、三味線100を胴部10と棹部20で分離させることが出来る。胴部10が棹部20に対向する面が対向面11であり、棹部20が胴部10に対向する面が対向面21である。
【0010】
胴部10の対向面11に第1連結部12が設けられ、棹部20の対向面21に第1被連結部22が設けられている。第1連結部12と第1被連結部22は、挿脱自在に連結させることが可能である。また、第1連結部12は突出部を有し、第1被連結部22はその突出部と嵌合する受入部を有している。勿論、この突出部と受入部を挿脱自在に連結させることが可能である。
【0011】
胴部10の対向面11と対極する位置にある面が対極面15である。胴部10の対向面11および対極面15には、胴部10にはその空洞内部へ貫通する貫通孔14(14a)が設けられている。この貫通孔14(14a)の形状は、角部を有し、略正方形になっている。この貫通孔14(14a)は、第1棒状部材30を差し込むことが出来る大きさを有しており、第1棒状部材30が貫通孔14に挿通され、胴部10の空洞内部を跨がるように差し込まれている。
【0012】
第1棒状部材30の長手方向の大きさは、胴部10の対向面11から対極面15までの間の距離よりも大きい。第1棒状部材30の一端部は、対向面11の外側に突出している。換言すれば、第1棒状部材30の一端部は、胴部10の第1連結部12の突出部を形成するようになる。
また、第1棒状部材30の他端部は、胴部10の対極面15の外側に突出している。その突出部には、従来の中木先と同じように用いることが出来、音緒等をかけて三味線の糸の一方の端と連結させることが可能である。
【0013】
図5は三味線100Aにおける胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図であり、
図6は胴部10を対向面11側から見た図である。
図示しているように、胴部10の対向面11に第2連結部13が設けられ、棹部20の対向面21に第2被連結部23が設けられている。第2連結部13と第2被連結部23は、挿脱自在に連結させることが可能である。
また、第2連結部13は突出部を有し、第2被連結部23はその突出部と嵌合する受入部を有している。勿論、この突出部と受入部を挿脱自在に連結させることが可能である。
【0014】
第2棒状部材40が貫通孔14(14b)に挿通され、胴部10の空洞内部を跨がるように差し込まれている。第2棒状部材40の長手方向の大きさは、胴部10の対向面11から対極面15までの間の距離よりも大きい。第2棒状部材40の一端部は、対向面11の外側に突出している。換言すれば、第2棒状部材40一端部は、第2連結部13の突出部を形成するようになる。
【0015】
図示している第1棒状部材30の断面が略真円である為、胴部10と棹部20が第1棒状部材30を中心にして回動してしまう恐れがあるが、第2棒状部材40によって、胴部10と棹部20とが互いに回動することを防ぐことが出来る。また、第2棒状部材40によって胴部10と棹部20が連結した際に密着度を高めることが出来る。さらに、第1棒状部材30の一本の場合よりも、第1棒状部材30と第2棒状部材40の二本の方が、棹部20から胴部10へより多くの振動を伝えることが出来る。
【0016】
胴部10の対向面11に対して反対側の壁面内部に被係合部16が形成されており、この被係合部16は、凹形状、または貫通孔となっている。第1棒状部材30の一端は、第1連結部12の突出部を形成しており、他端には、係合部が形成されている。この係合部は、凸形状であり、被係合部16と係合することが出来る。
第1棒状部材30の他端の係合部と被係合部16が係合することで、胴部10と第1棒状部材30との係合が強まり、第1棒状部材30が胴部10から外れにくくなる。
【0017】
図7は三味線100Bにおける胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図である。
図示しているように、第1棒状部材30と第2棒状部材40は、補助部材50に覆われている。
換言すれば、補助部材50は、第1棒状部材30と第2棒状部材40に挿通された状態で、胴部10の内部に収まっている。補助部材50の形状は、中空のパイプ状であり、補助部材50の両端は、胴部10の空洞内部の壁面に接近しており、胴部10の空洞内部の壁面に接触または当接した状態になっている。
【0018】
補助部材50により、胴部10の強度を高めることが可能であり、不意の力が外部から掛かった際に胴部10が変形してしまうことを防止することが可能になる。換言すれば、胴部10の両側からの圧縮によって、胴部10が変形してしまうことを防ぐことが出来る。
【0019】
図8は三味線100Cにおける胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図であり、
図9は胴部10を上側から見た図である。
図示しているように、胴部10の対向面11と対極面15の中間にある側面にも貫通孔14
(14c)が形成されており、第3棒状部材60がその貫通孔14
(14c)に差し込まれている。この第3棒状部材60により、胴部10の強度をさらに高めることが可能である。
胴の形状は、
図3で示した方形の形状以外にも、
図9で示す丸形(略真円)の形状でもよい。
胴部10が丸形であれば、胴部10を軽量化させることも出来ると同時に、胴部10の角部が無くなることで、胴部10と演奏者が接触した際に演奏者の身体を傷付ける恐れを軽減させることも出来る。
【0020】
また、第2棒状部材40は棹部20第2被連結部23に差し込まれて固定されている。勿論、第2棒状部材40が、棹部20の第2被連結部23に差し込まれている状態でも、胴部10と棹部20を連結させることが可能である。すなわち、胴部10には突出部と受入部が設けられ、棹部20には受入部と突出部が設けられている場合もあり得る。
【0021】
第1棒状部材30と第3棒状部材60は、補強部材50で覆われている。補強部材50の両端は、それぞれ胴部10の内部壁に接触しており、胴部10の縦横方向の耐久性を高めることが出来る。
【0022】
図10は三味線100Dにおける胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図であり、
図11は胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図である。
図示しているように、棹部20の受入部に連通する挿通孔が設けられている。糸をこの挿通孔24に挿通させた後に、糸の端部近傍に結び目を作り、糸と棹部20を連結させることが出来る。一端が糸巻きに固定された糸を、胴の表面および裏面を経由して配設させることで、胴部10と棹部20を連結させることが可能である。
【0023】
図12は三味線100Eにおける胴部10と棹部20を連結させる前の状態を示す図であり、
図13は胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図である。
図示しているように、棹部20の対向面21とは反対側になる面から、第2棒状部材40の一端部が突出している。この突出した部分に、糸の端部を結び付けることの出来る補助部材80を掛けることが可能である。
図11と同様に、一端が糸巻きに固定された糸を、胴の表面および裏面を経由して配設させることで、胴部10と棹部20を連結させることが可能である。
【0024】
図示しているように、第2被連結部23は貫通孔になっている。これにより、胴部10と棹部20を連結させた後で、貫通孔である第2被連結部23から第2棒状部材40を差し込むことも出来るようになる。
棹部20の被連結部の受入部を貫通孔にさせることで、第1被連結部22および第2被連結部23の奥行きが長くなる。それにより、胴部10の連結部である第1連結部12および第2連結部13の突出部の長さを大きくさせることが出来る。連結部および被連結部が互いに長くなることで、嵌合された状態での安定度を高め、糸の張力によるブレを抑えることが出来る。
【0025】
図14は三味線100Fにおける胴部10と棹部20を連結させた後の状態を示す図である。
図示しているように、第1棒状部材30Fと第2棒状部材40Fには、ネジ溝が形成されており、ナット85やワッシャー86と係合されている。第1棒状部材30は対極面15より外部に突出しており、キャップ87で覆われている。このようにすることで、胴部10と棹部20をより強固に連結させることが可能であり、三味線を安全に利用することが出来る。修理等が必要な時は、工具を用いて、胴部10と棹部20を分離出来る。
また、ナット85の位置を動かすことで、胴部10の重心の調整をすることが出来る。これにより、演奏者が弾きやすい位置に、三味線の重心を移動させることも出来る。
【0026】
図示していないが、胴部10と棹部20とを一時的に固定させることも出来る。
胴部10と棹部20は、着脱可能に仮固定または準固定されている。固定させる方法としては、ネジ、釘、ボルト、くさびなどの金具を用いると良い。通常の状態では、胴部10と棹部20は一体となっているので、不用意に分離してしまうことを防ぐことが出来る。必要に応じて、工具を用いれば、胴部10と棹部20を分離させることが出来る。換言すれば、子供たちが使用している間に、不意に胴部10と棹部20が外れてしまう事故を防ぎ、子供たちの使用が終わった後で、保護者によってボルトなどの金具を外すことがより安全に利用することが出来る。
【0027】
<固定する方法>
胴部10と第1棒状部材30を、ボンド等の接着剤や金具などで固定させることも可能である。胴部10と第1棒状部材30が固定されていることで、胴部10と棹部20の挿脱をより安定的に行うことが可能になる。
同様に、胴部10と第2棒状部材40をボンド等の接着剤や金具などで固定させることも可能である。
【0028】
<副次的効果>
胴部と棹部を分離・結合させる仕組みを備えることで、胴の入れ替えをスムーズに行うことが出来、さらに胴の別売りも可能になる。また、子供でも簡単に取り外すことが出来ようになる。
【0029】
胴部10の素材は、木材、段ボール、薄板、プラスチック、紙などを利用することが可能であり、第1棒状部材30や第2棒状部材40の素材は、木材、セラミック、合成樹脂、プラスチック、合金、ステンレス鋼、金、銀、銅、アルミ、真鍮、チタン等の各種金属などを利用することが可能であり、補助部材50の素材は、合金、ステンレス鋼、金、銀、銅、アルミ、真鍮、チタン等の各種金属や、セラミック、合成樹脂、プラスチック、合成ゴムなどを利用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
10…胴部
11…対向面
12…第1連結部
13…第2連結部
14…貫通孔
15…対極面
16…被係合部
20…棹部
21…対向面
22…第1被連結部
23…第2被連結部
24…挿通孔
30…第1棒状部材
40…第2棒状部材
50…補強部材
60…第3棒状部材
70…糸
80…補助部材
85…ナット
86…ワッシャー
87…キャップ
90…駒
100…三味線