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特許7357900二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20231002BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20231002BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C01B11/02 F
A61L9/01 F
A61L9/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019100597
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193128
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000230630
【氏名又は名称】株式会社ルミカ
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】原田 士郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真也
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540118(JP,A)
【文献】特開2012-036072(JP,A)
【文献】特表2009-524572(JP,A)
【文献】特開2017-024962(JP,A)
【文献】特開2018-080062(JP,A)
【文献】特開2013-177282(JP,A)
【文献】特開2018-035016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/02
A61L 9/00-9/22
A01N 9/00-65/48
A01N 1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸塩、疎水性ヒュームドシリカ、水、およびアルコールを含む第一の組成物を収容する第一の容器と、
酸性物質、疎水性ヒュームドシリカ、水、およびアルコールを含む第二の組成物を収容する第二の容器と、
前記第一の容器および前記第二の容器を収容する外側容器と、
前記第一の容器から放出される前記第一の組成物と、前記第二の容器から放出される前記第二の組成物とを混合して混合組成物とする混合部と、
前記混合部で混合された前記混合組成物を吐出する吐出部と、を有し、
前記第一の容器および前記第二の容器が袋状であり、
前記外側容器が、前記第一の容器および前記第二の容器を収容し、噴射剤が充填された耐圧容器であり、
前記混合部が、前記耐圧容器に収容された前記第一の容器および前記第二の容器に連結された配管の結合部であり、
前記混合部および前記吐出部への前記第一の組成物および前記第二の組成物の放出を調整する開閉弁を有し、
前記開閉弁を開放することで前記混合組成物を前記吐出部から噴射する二酸化塩素発生装置。
【請求項2】
前記亜塩素酸塩が、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、および亜塩素酸カルシウムからなる群から選択される1以上である請求項1に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項3】
酸性物質が、クエン酸、リン酸、酢酸、および塩酸からなる群から選択される1以上である請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項4】
前記第一の組成物のpHが、9以上である請求項1~のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項5】
前記第一の組成物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、および四ホウ酸ナトリウムからなる群から選択される1以上を含有する請求項1~のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項6】
前記第二の組成物のpHが、5以下である請求項1~のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間や物、生体などに浮遊や付着している菌やウイルス等を除去する、除菌や消毒、殺菌、脱臭、防疫用の製品が求められている。このような除菌等に用いられるものとして、二酸化塩素を利用する置き型や、スティック型、スプレー型などの製品が実用化されている。
【0003】
特許文献1は、3~15%の亜塩素酸塩を含む水溶液に緩衝剤を添加しpHを7~9に調整したのち水溶液の温度を20~50℃で1日~5日保持することにより所望する濃度の二酸化塩素を含有させることを特徴とする安定化二酸化塩素水溶液の製造法を開示している。
【0004】
特許文献2は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤を構成成分に有することを特徴とする純粋二酸化塩素液剤を開示している。
【0005】
特許文献3は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及び、pH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤、並びに高吸水性樹脂を含有し、前記pH調整剤がリン酸またはその塩であることを特徴とする、ゲル状組成物を開示している。
【0006】
特許文献4は、(a)亜塩素酸溶液からなり、第1ディスペンサーに装入され、液成分の第1スプレーとして、あるいは液成分の第1ジェットとして吐き出される第1液成分、および(b)酸溶液からなり、第2ディスペンサーに装入され、液成分の第2スプレーとして、あるいは液成分の第2ジェットとして吐き出される第2液成分からなり、前記第1液成分が前記第2液成分と混合されたときに、前記亜塩素酸および前記酸が反応して、二酸化塩素を発生し、そして前記第1液成分および前記第2液成分の等量混合物が、少なくとも15重量%のアルコールを含有し、かつ前記アルコールの少なくとも一部が3-メトキシ-3-メチルブタン-1-オール(MMB)を含有することを特徴とする手指消毒器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-46003号公報
【文献】特開平11-278808号公報
【文献】特開2013-230974号公報
【文献】特開2013-540118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3のように二酸化塩素を含む二酸化塩素液剤などが知られている。これらの文献でも安定化について検討されているように、二酸化塩素の状態では安定性が低く長期保管に適さない。また、安定化等の処理を行っても、二酸化塩素が容器を侵食したり、保管中に気化等して二酸化塩素濃度が低下したりするなど、一液型の二酸化塩素液剤などは、長期保管に適していない場合がある。
【0009】
特許文献4は、亜塩素酸溶液を第一ディスペンサーに装入し、酸溶液を第2ディスペンサーに装入している。しかし、液状のままで使用すると、付着した場所から速やかに揮発したり流れ落ちる等して短時間で効果がなくなる場合があった。また、高分子等のゲル化剤だけを加えても、二酸化塩素等に対するこれらのゲル化剤の安定性や、ゲル化した溶液の使用しやすさには問題が生じる場合があった。
【0010】
かかる状況下、本発明は、長期保管に適し、使用対象に留まり安定して効果を奏する二酸化塩素発生装置や二酸化塩素発生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0012】
<1> 亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む第一の組成物を収容する第一の容器と、酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物を収容する第二の容器と、前記第一の容器および前記第二の容器を収容する外側容器と、前記第一の容器から放出される前記第一の組成物と、前記第二の容器から放出される前記第二の組成物とを混合して混合組成物とする混合部と、前記混合部で混合された前記混合組成物を吐出する吐出部と、を有する二酸化塩素発生装置。
<2> 前記第一の容器および前記第二の容器が袋状であり、前記外側容器が、前記第一の容器および前記第二の容器を収容し、噴射剤が充填された耐圧容器であり、前記混合部が、前記耐圧容器に収容された前記第一の容器および前記第二の容器に連結された配管の結合部であり、前記混合部および前記吐出部への前記第一の組成物および前記第二の組成物の放出を調整する開閉弁を有し、前記開閉弁を開放することで前記混合組成物を前記吐出部から噴射する<1>記載の二酸化塩素発生装置。
<3> 前記ヒュームドシリカが、疎水性ヒュームドシリカである<1>または<2>に記載の二酸化塩素発生装置。
<4> 前記亜塩素酸塩が、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、および亜塩素酸カルシウムからなる群から選択される1以上であり、第一の組成物が、分散媒として、水およびアルコールを含有する<1>~<3>のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
<5>酸性物質が、クエン酸、リン酸、酢酸、および塩酸からなる群から選択される1以上であり、第二の組成物が、分散媒として、水およびアルコールを含有する<1>~<4>のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
<6> 前記第一の組成物のpHが、9以上である<1>~<5>のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
<7> 前記第一の組成物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、および四ホウ酸ナトリウムからなる群から選択される1以上を含有する<1>~<6>のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
<8> 前記第二の組成物のpHが、5以下である<1>~<7>のいずれかに記載の二酸化塩素発生装置。
<9> 亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む第一の組成物と、酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物とを含み、前記第一の組成物または前記第二の組成物のいずれか一方の組成物を収容する内側容器と、前記一方の組成物の、他方の組成物を収容する外側容器と、を有し、前記内側容器が前記外側容器に内包されてなり、かつ、前記内側容器から放出される前記一方の組成物と、前記外側容器に収容されている前記他方の組成物とを混合して混合組成物とする混合部と、前記混合部で混合された前記混合組成物を吐出する吐出部と、を有する二酸化塩素発生装置。
<10> 亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む第一の組成物と、酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物と、を有し、前記第一の組成物と前記第二の組成物とを混合した混合組成物から二酸化塩素を発生させる二酸化塩素発生システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二酸化塩素発生装置や二酸化塩素発生システムは、長期保管に適し、二酸化塩素を発生する混合物は使用時に使用対象に留まり安定して効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る二酸化塩素発生装置の第一の実施形態を示す概要図である。
図2】本発明に係る二酸化塩素発生装置の第二の実施形態を示す概要図である。
図3】本発明に係る二酸化塩素発生装置の第三の実施形態を示す概要図である。
図4】本発明に係る二酸化塩素発生装置により噴射した二酸化塩素を発生する混合組成物のゲルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0016】
[本発明の二酸化塩素発生装置]
本発明の第一の二酸化塩素発生装置は、亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む第一の組成物を含む第一の容器と、酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物を含む第二の容器と、前記第一の容器および前記第二の容器を収容する外側容器と、前記第一の容器と前記第二の容器から放出される前記第一の組成物と前記第二の組成物を混合して混合組成物とする混合部と、前記混合部で混合された前記混合組成物を吐出する吐出部と、を有する。
【0017】
また、本発明の第二の二酸化塩素発生装置は、亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む第一の組成物と、酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物とを含み、前記第一の組成物または前記第二の組成物のいずれか一方の組成物を収容する内側容器と、前記一方の組成物の、他方の組成物を収容する外側容器と、を有し、前記第一の容器が前記外側容器に内包されてなり、かつ、前記内側容器から放出される前記一方の組成物と、前記外側容器に収容されている前記他方の組成物とを混合して混合組成物とする混合部と、前記混合部で混合された前記混合組成物を吐出する吐出部と、を有する。
本願において、本発明の第一の二酸化塩素発生装置と本発明の第二の二酸化塩素発生装置とを合わせて、本発明の二酸化塩素発生装置と呼ぶ。本発明の二酸化塩素発生装置は、長期保管に適し、吐出した混合物は使用時に使用対象に留まり安定して二酸化塩素を発生する。
【0018】
[本発明の二酸化塩素発生システム]
本発明の二酸化塩素発生システムは、亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む第一の組成物と、酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物と、を有し、前記第一の組成物と前記第二の組成物とを混合した混合組成物から二酸化塩素を発生させる。本発明の二酸化塩素発生システムは、第一の組成物と第二の組成物とを分離しておくことで、長期保管に適し、使用時に混合して用いることで、使用対象に留まり安定して二酸化塩素を発生する。本発明の二酸化塩素発生システムは、本発明の二酸化塩素発生装置に用いることができ、互いに共通する構成は相互に援用することができる。
【0019】
[第一の実施形態]
図1は、本発明に係る二酸化塩素発生装置の第一の実施形態を示す概要図である。二酸化塩素発生装置101は、第一の容器11と、第二の容器21を有し、これらの容器は外側容器31に収容されている。外側容器31の内部は混合部41となり、切欠き61を切断することで吐出部51が開口される。
【0020】
[第一の容器11]
二酸化塩素発生装置101は、第一の容器11を有する。第一の容器11は、第一の組成物を収容する容器である。第一の組成物は、亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む。第一の容器11は、例えば、四辺が閉じた袋状の容器などを用いることができる。二酸化塩素発生装置101の保管時に第一の容器11内から第一の組成物が漏出しないように、第一の容器11は密閉されている。
【0021】
また、第一の容器11は、二酸化塩素発生装置101の使用時に、第一の組成物が放出されるように、破割などにより開口しやすい部分を設けた構造である。例えば、ヒートシール性が弱い部分を設けたり、厚みが薄い部分を設けたり、接着部が狭い領域を設けることで破割等により開口しやすい部分を設けることができる。また、第一の容器11は、亜塩素酸塩やヒュームドシリカ、また、これらの分散媒(水やアルコールなど)などを含む第一の組成物と接触しても安定な素材で成形されている。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンなどを用いたシートの袋などを用いることができる。
【0022】
[第二の容器21]
二酸化塩素発生装置101は、第二の容器21を有する。第二の容器21は、第二の組成物を収容する容器である。酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物を含む。第一の組成物に代え第二の組成物を収容する点を除き、第二の容器21の他の構成は第一の容器11に準じるものとすることができる。第二の容器21は、四辺が閉じた袋状の容器などを用いることができる。二酸化塩素発生装置101の保管時に第二の容器21内から第二の組成物が漏出しないように、第二の容器21は密閉されている。
【0023】
また、第二の容器21は、二酸化塩素発生装置101の使用時に、第二の組成物が放出されるように、破割などにより開口しやすい部分を設けた構造である。また、第二の容器21は、酸性物質やヒュームドシリカ、また、これらの分散媒(水やアルコールなど)などを含む第二の組成物と接触しても安定な素材で成形されている。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンなどを用いたシートの袋などを用いることができる。
【0024】
[外側容器31]
二酸化塩素発生装置101は外側容器31を有する。外側容器31は第一の容器11と第二の容器21を収容する容器である。外側容器31は、吐出部51とするための凸部を設け、他は閉じた袋状とすることができる。外側容器31は、第一の組成物や、第二の組成物を構成する成分やこれらが反応して発生する二酸化塩素などと接触しても安定な素材で成形されている。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンなどを用いたシートの袋などを用いることができる
【0025】
[混合部41]
混合部41は、第一の組成物と第二の組成物が混合する場である。二酸化塩素発生装置101は、第一の容器11と第二の容器21の周囲であり、外側容器31の内部が、混合部41となる。使用時に外側容器31の外部から押圧などして、内圧の変化などにより第一の容器11や第二の容器21の一部を破割等させて、第一の容器11から第一の組成物を放出させ、第二の容器21から第二の組成物を、外側容器31内に放出させる。それぞれの容器から放出された、第一の組成物と第二の組成物は、外側容器31内で混合され混合組成物となる。
【0026】
[吐出部51]
吐出部51は、混合組成物を吐出する部分である。外側容器31の凸部に設けられた切欠き61を引き裂くと、外側容器31に開口部が設けられ、この開口部が吐出部51となる。混合部41で混合された混合組成物が吐出される。混合組成物には、亜塩素酸塩と、酸性物質が含まれており、これらが反応して、混合物は二酸化塩素を発生させる組成物となる。これにより、混合組成物を付着させた任意の部分で二酸化塩素を発生させることができる。
【0027】
[第二の実施形態]
図2は、本発明に係る二酸化塩素発生装置の第二の実施形態を示す概要図である。二酸化塩素発生装置102は、第一の容器12と、第二の容器22を有し、これらの容器は外側容器32に収容されている。外側容器32内には噴射剤が充填され、第一の容器12、第二の容器22に圧力がかかった状態となっている。第一の容器12は内部に配管121が連結され、第二の容器22は内部に配管221が連結され、配管121と配管221はボタン62を押すと結合部で内部の空間が接続できる構造となっており、ボタン62が押されていない状態では、結合部は閉じた状態となり、配管121と配管221は分離されている。ボタン62を押すと、混合部で配管121と配管221が接続され、噴射剤による圧力により第一の容器12と第二の容器22に収容されている組成物が押し出され、吐出部52から、混合された混合組成物が吐出される。
【0028】
[第一の容器12]
第一の容器12は袋状であり、第一の組成物を収容している。また、第一の容器12は外側容器32内に収容されている。第一の容器12内には、配管121が配置されており、配管121は混合部42内に連結されている。ボタン62が押下されていない状態では、混合部42内の配管121と配管221との結合部分は閉じた状態となり、第一の組成物が含まれる第一の容器12および配管121内の空間は、第二の容器22等の他の空間と分離されている。
【0029】
また、第一の容器12は、亜塩素酸塩やヒュームドシリカ、また、これらの分散媒(水やアルコールなど)などを含む第一の組成物と接触しても安定な素材であり、かつ、外側容器32内の圧力に対して安定であり、可撓性を有する素材で成形されている。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンなどを用いたシートの袋などを用いることができる。
【0030】
[第二の容器22]
第二の容器22は袋状であり、第二の組成物を収容している。また、第二の容器22は外側容器32内に収容されている。第二の容器内には、配管221が配置されており、配管221は混合部42内に連結されている。ボタン62が押下されていない状態では、混合部42内の配管121と配管221との結合部分は閉じた状態となり、第二の組成物が含まれる第二の容器22および配管221内の空間は、第一の容器12等の他の空間と分離されている。
【0031】
また、第二の容器22は、亜塩素酸塩やヒュームドシリカ、また、これらの分散媒(水やアルコールなど)などを含む第二の組成物と接触しても安定な素材であり、かつ、外側容器32内の圧力に対して安定であり、可撓性を有する素材で成形されている。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンなどを用いたシートの袋などを用いることができる。
【0032】
[外側容器32]
外側容器32は、第一の容器12や第二の容器22等を収容している。また、外側容器32内の第一の容器12や第二の容器22の周囲には、噴射剤が充填されている。噴射剤を充填することで外側容器32内は陽圧となっており、ボタン62を押して、吐出部52への流路を開くと、第一の容器12や第二の容器22に収容されている組成物が混合されて噴射される。この外側容器32はこのような高圧に耐えられる耐圧容器である。例えば、この耐圧容器は、金属製の容器や強度が高い樹脂などで成形することができる。また、耐圧容器は、適宜、多重構造の容器としてもよい。
【0033】
噴射剤は圧縮ガスを用いることができる。圧縮ガスは、汎用されており、比較的安全なものなどを適宜用いることができ、例えば、窒素ガスや炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、およびこれらの混合ガスなどが用いられる。耐圧容器内の噴射剤が充填された容器内の圧力は、例えば、常温25℃における圧力として、0.3~1.2MPa程度を目安とすることができる。
【0034】
[混合部42、吐出部52、ボタン62]
混合部42内は、配管121、配管221の配管が連結され結合する部分を有する。この結合部分で配管121を通り放出される第一の組成物と、配管221を通り放出される第二の組成物が混合され、吐出部52から吐出される。混合部42内の結合部分への配管は、放出されようとする組成物の内圧や、ばね構造などにより閉じた状態となる逆止弁(図示せず)などの噴射を調整する開閉弁を有するものとすることができる。ボタン62を開放している状態では各容器からこの逆止弁が蓋をする状態となり、配管121と配管221が分離され、第一の組成物と第二の組成物が混合されず、吐出部52から吐出されないものとすることができる。ボタン62を押下すると、逆止弁が開放され、配管121、配管221が連結され、第一の組成物と第二の組成物が連結部で混合されて吐出部52から噴射する。
【0035】
ボタン62は、混合部42上に設けられたボタンであり、押下せず開放した状態では内圧やばね等により上昇した状態であり、使用時に押下することで、逆止弁を開放するなどの混合部42内の開閉弁を調整するためのボタンである。吐出部52は、配管121、配管221、またこれらの連結部と連結した開口部である。ボタン62を押下して、開閉弁を開いたとき、吐出部52から、混合組成物が噴射する。
【0036】
二酸化塩素発生装置102は、二液混合型のエアゾール製品の構造を利用したものとすることができる。例えば特開2016-160186号公報に開示されている二液混合型エアゾール製品などを適宜参照したものとすることができる。
【0037】
混合部41で混合された混合組成物が吐出される。混合組成物には、亜塩素酸塩と、酸性物質が含まれており、これらが反応して、混合物は二酸化塩素を発生させる組成物となる。これにより、混合組成物を付着させた任意の部分で二酸化塩素を発生させることができる。
【0038】
[第三の実施形態]
図3は、本発明に係る二酸化塩素発生装置の第三の実施形態を示す概要図である。この第三の実施形態は、本発明の第二の二酸化塩素発生装置に係る実施形態である。二酸化塩素発生装置103は、内側容器13が、外側容器33に収容されている。外側容器33の内部は混合部43となり、切欠き63を切断することで吐出部53が開口される。なお、二酸化塩素発生装置103は、第一の実施形態に係る二酸化塩素発生装置101に準じる構造であり、第一の容器11に代え内側容器13を有し、第二の容器21がなく、外側容器31に代え外側容器33を有し、外側容器33内に直接第二の組成物が収容されている。
【0039】
二酸化塩素発生装置103は、内側容器13を有する。内側容器13は、第一の組成物を収容している。内側容器13は、第一の容器11に準じるものであり、第一の容器11を内側容器13として用いることができる。
【0040】
二酸化塩素発生装置103は、二酸化塩素発生装置101で第二の容器21に収容されていた第二の組成物は、外側容器33に収容されている。また外側容器33内で、内側容器13の包装により第一の組成物と第二の組成物は分離されている。なお、外側容器に収容されている第二の組成物は、第二の容器21に収容されたものを用いることができる。
【0041】
外側容器33は、第一の組成物と、第二の組成物を収容する容器である。二酸化塩素発生装置103において、外側容器33は、第一の組成物を収容した内側容器13と、第二の組成物を収容している。すなわち、二酸化塩素発生装置101の第二の容器21を有さず、第二の組成物を直接収容する点を除いては、外側容器33は外側容器31と同様の構造とすることができる。
【0042】
二酸化塩素発生装置103は、内側容器13の周囲であり、外側容器33内部が、第一の組成物と第二の組成物が混合する場となる混合部43となる。使用時に外側容器3の外部から押圧などして、内圧の変化などにより内側容器13の一部を破割等させて、内側容器13から第一の組成物を放出させ、外側容器33内で第二の組成物と混合され混合組成物となる。
【0043】
外側容器33の凸部に設けられた切欠き63を引き裂くと、外側容器33に開口部が設けられ、この開口部が吐出部53となる。混合部43で混合された混合組成物が吐出される。混合組成物には、亜塩素酸塩と、酸性物質が含まれており、これらが反応して、混合物は二酸化塩素を発生させる組成物となる。これにより、混合組成物を付着させた任意の部分で二酸化塩素を発生させることができる。
【0044】
なお、第三の実施形態に係る二酸化塩素発生装置103は、内側容器に第一の組成物を収容したものを例にするが、本発明の第二の二酸化塩素発生装置は、内側容器に第二の組成物を収容して、その周囲であり外側容器33内に、第一の組成物を収容するものとして、同様に混合組成物を付着させた任意の部分で二酸化塩素を発生させるものも含む。この第二の組成物を収容する内側容器は、第二の容器21に準じるものとすることができる。
【0045】
これらの二酸化塩素発生装置101~103は、それらの保管時に、亜塩素酸塩と、酸性物質とが分離されているため、反応が生じにくく、二酸化塩素も発生しないため長期保管に適している。また、第一の組成物と、第二の組成物には、ヒュームドシリカが含まれており、それぞれがゲル状の組成物となっている。二酸化塩素発生装置101~103の使用時に、これらを混合した混合組成物もゲル状であり、いずれの組成物もゲル状であることから均質な混合をさせやすい。さらに、ゲル状で任意の場所に付着させることができ使用対象に留まり安定して効果を奏する。
【0046】
[第一の組成物]
本発明の二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生システムは、亜塩素酸塩およびヒュームドシリカを含む第一の組成物を用いる。亜塩素酸塩と第二の組成物の酸性物質が反応することで使用時に二酸化塩素が発生する。また、pH調整剤を含むことで、保管時に色調の変化などが生じにくく安定する。また、単独でもゲル状となるが、本発明に用いる第二の組成物と混合した状態でもゲル状となり、ゲル状で使用対象物に付着して、長時間、その効果を奏する。
【0047】
[亜塩素酸塩]
第一の組成物は、亜塩素酸塩を含む。第一の組成物に用いる亜塩素塩は、第二の組成物と混合することで二酸化塩素が発生するものを単独、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。例えば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、および亜塩素酸カルシウムからなる群から選択される1以上を用いることができる。特に亜塩素酸ナトリウムや、亜塩素酸カリウムが取り扱いやすく適している。
【0048】
第一の組成物中の亜塩素酸塩の濃度は、使用時に二酸化塩素を発生させる程度等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、第一の組成物全体に占める亜塩素酸塩の質量比(亜塩素酸塩の質量/第一の組成物の質量)は、0.1~12質量%程度とすることができる。好ましくは、0.5~10質量%や、1~8質量%、2~5質量%としてもよい。
【0049】
[ヒュームドシリカ]
第一の組成物は、ヒュームドシリカを含む。また、第二の組成物もヒュームドシリカを含む。
ヒュームドシリカは、熱分解により製造された二酸化ケイ素であり、四塩化ケイ素等の蒸発可能なケイ素化合物を、例えば、水素と酸素の混合物中で燃焼させ、加水分解することにより製造されたものである。そのため、ヒュームドシリカの表面には、シラノール基が存在しており、一般的に親水性を示す。このようなヒュームドシリカとしては、例えば、日本アエロジル株式会社のアエロジル(登録商標)や、旭化成ワッカーシリコーン株式会社のフュームドシリカHDK(登録商標)等を用いることができる。また、ヒュームドシリカは無機物であるため、第一の組成物や第二の組成物中での安定性にも優れている。
ヒュームドシリカは、増粘剤として機能し、ヒュームドシリカを含むことで、第一の組成物、第二の組成物、およびこれらの混合物をゲル状とする。
【0050】
ヒュームドシリカは、疎水性ヒュームドシリカを用いることが好ましい。疎水性ヒュームドシリカとは、一般的な親水性のヒュームドシリカをシランまたはシロキサンなどで化学的に処理することによって製造され、一般的なヒュームドシリカの表面の酸化物に処理剤が化学的に結合し疎水性を示す。例えば、日本アエロジル株式会社のアエロジル(登録商標)の疎水性フュームドシリカなどが、疎水性ヒュームドシリカとして市販されている。疎水性ヒュームドシリカは、亜塩素酸塩や酸性物質との反応が生じにくく、保管時の安定性が特に優れている。
【0051】
第一の組成物に含まれるヒュームドシリカの割合は、保管時や使用時のゲル化の程度等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、第一の組成物全体に占めるヒュームドシリカの質量比(ヒュームドシリカの質量/第一の組成物の質量)は、0.5~30質量%程度とすることができる。この下限は好ましくは、1質量%以上や、2質量%以上としてもよい。この上限は、他の組成等によりゲル状の粘性等にもよるが、25質量%以下や20質量%以下としてもよい。また、後述するアルコールの併用や、pHの調整により疎水性ヒュームドシリカ等を用いたときゲル化しやすくなるため、15質量%以下や10質量%以下としてもよい。
【0052】
[分散媒]
第一の組成物は、亜塩素酸塩やヒュームドシリカを含み、これらを分散媒に分散させたものである。なお、本願において、亜塩素酸塩や酸性物質、ヒュームドシリカ、pH調整剤等は、温度や濃度によって溶解したり、溶解しきれず分散した状態となるが、保管や使用上、いずれの状態でも二酸化塩素を発生させることができるため、分散には、溶解したものも含み、分散媒は溶媒として機能するものも含む。
【0053】
分散媒には、水や有機溶媒などの常温で液体のものを用いることができる。特に、有効成分を適宜イオン化や電荷を帯びさせて反応させやすくするために、極性が高い液体を用いることが好ましく、例えば水やアルコール等を用いることが好ましい。分散媒の組成として、いずれかの液体単独としてもよいが、水およびアルコールを併用することが好ましい。
【0054】
水を含む分散媒の場合、分散媒全体に占める水の質量の割合(水の質量/分散媒の質量)の下限は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。またその上限は、90質量%以下や、80質量%以下、70質量%以下としてもよい。この残部は、アルコールなどの他の分散媒とすることができる。水は、精製水や浄水などを用いることができる。
【0055】
分散媒にはアルコールも含むことが好ましい。アルコールも含む分散媒の場合、分散媒全体に占めるアルコールの質量の割合(水の質量/分散媒の質量)の下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより好ましい。またその上限は80質量%以下や、70質量%以下としてもよい。この残部は、水などの他の分散媒とすることができる。特に、疎水性ヒュームドシリカを用いるとき、水のみでは分散性が低下したり、ゲル化させるための疎水性ヒュームドシリカ濃度が非常に高くなる場合があるが、アルコールも含むことで、分散性に優れ、ゲル化しやすいものとなる。アルコールは、メチルアルコールや、エチルアルコール、ブチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールなどを好適に用いることができる。特に、二酸化塩素発生装置をヒトや動物などの周囲で用いる場合もあり、かつ疎水性ヒュームドシリカの分散性等の改善のために併用することから、安全性等も鑑み、イソプロピルアルコール(IPA)を用いることが好ましい。
【0056】
[pH]
第一の組成物は、亜塩素酸塩と、ヒュームドシリカと、分散媒とを含むものであればよい。これらに加えて、pH調整剤などを含むものとしてもよい。第一の組成物は、pH8以上であることが好ましく、pH9以上であることがより好ましく、pH9.5以上や、pH9.8以上、pH10.0以上であることがさらに好ましい。第一の組成物中の成分からプロトンが放出されるとき、亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素が発生する場合があるが、pHを高くすることでこのような意図しない二酸化塩素の発生を抑制でき、長期保管に適したものとなる。
【0057】
第一の組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、および四ホウ酸ナトリウムなどから選択される1以上の成分を含むことが好ましい。これらの成分を含むことで、第一の組成物中の成分からプロトンが放出されるとき、亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素が発生することを防止することができる。これらの成分は適宜組み合わせて混合して用いてもよい。これらの成分が第一の組成物全体に含まれる濃度(成分/第一の組成物の全量)は、0.005質量%以上や0.01質量%以上、0.02質量%以上とすることができる。また、その上限は、5.0質量%以下や、3.0質量%以下、2.0質量%以下とすることができる。これらの成分は前述したpHの調整に用いるpH調整剤とすることができ、所定のpHとなるような濃度で、適宜組み合わせて混合してもよい。
【0058】
第一の組成物は、少なくとも常温・常圧でゲル状であることが好ましい。第一の組成物をゲル状とすることで、第二の組成物との粘性等の物性の相違を抑えて、混合されやすいものとすることができ、また、混合組成物としてもゲル状のものとなり、任意の場所に付着して流動しにくくなる。第一の組成物は、例えば、回転粘度計により測定した25℃の粘度の下限が、1,000mPa・s以上や、5,000mPa・s以上とすることができる。粘度が高すぎる場合、混合されにくかったり、吐出や噴射しにくい場合があるため、その上限は、1,000Pa・s以下や、500Pa・s以下としてもよい。
粘度の測定は、例えば、BrookField社製回転粘度計を用いて、使用スピンドル:LV―4、回転速度:0.3RPM、測定温度:25℃として測定することができる。
【0059】
第一の組成物は、他の成分を含むものとしてもよい。例えば、使用箇所を明確にするために着色剤を含めたり、安定剤、保存剤、保湿剤などを含むものとしてもよい。なお、一般的には増粘効果があるポリマー系増粘剤を含むと、保管時に増粘剤と亜塩素酸塩が反応して二酸化塩素が発生したり、使用時に吐出部から糸を曳く(曳糸性)場合がある。このため、ポリマー系増粘剤は2質量%以下や1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下などの上限を設けて、実質含まないものとしてこれらの問題が生じないものしてもよい。
【0060】
[第二の組成物]
本発明の二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生システムは、酸性物質およびヒュームドシリカを含む第二の組成物を用いる。酸性物質と第一の組成物の亜塩素酸塩が反応することで使用時に二酸化塩素が発生する。また、使用時に、単独でもゲル状となるが、本発明に用いる第二の組成物と混合した状態でもゲル状となり、ゲル状で使用対象物に付着して、長時間、その効果を奏する。
【0061】
[酸性物質]
第二の組成物は、酸性物質を含む。第二の組成物に用いる酸性物質は、第一の組成物と混合することで二酸化塩素が発生するものを単独、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。例えば、クエン酸、リン酸、酢酸、および塩酸からなる群から選択される1以上の酸性物質を用いることができる。中でも、クエン酸や、リン酸、酢酸などの弱酸性の有機酸などを好適に用いることができる。これらは保管時の容器等への浸食が生じにくく安全性も高い。特に、保管時や使用時のにおいが少ないクエン酸などが好ましい。
【0062】
第二の組成物中の酸性物質の濃度は、使用時に二酸化塩素発生させる程度等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、第二の組成物全体に占める酸性物質の質量比(亜塩素酸塩の質量/第一の組成物の質量)は、0.5~20質量%程度とすることができる。好ましくは、1~10質量%や、2~5質量%としてもよい。
【0063】
第二の組成物もヒュームドシリカを含む。このヒュームドシリカは前述の第一の組成物に含まれるヒュームドシリカと同様に用いることができる。また、第二の組成物においても疎水性ヒュームドシリカを用いることが好ましい。
【0064】
第二の組成物に含まれるヒュームドシリカの割合は、保管時や使用時のゲル化の程度等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、第二の組成物全体に占めるヒュームドシリカの質量比(ヒュームドシリカの質量/第二の組成物の質量)は、0.5~30質量%程度とすることができる。この下限は好ましくは、1質量%以上や、2質量%以上としてもよい。この上限は、他の組成等によりゲル状の粘性等にもよるが、25質量%以下や20質量%以下としてもよい。なお、アルコールの併用等によりゲル化しやすくなるため、15質量%以下や10質量%以下としてもよい。
【0065】
第二の組成物の分散媒も第一の分散媒の分散媒と同様の分散媒を用いることができる。よって、分散媒としては、水やイソプロピルアルコールなどを適宜混合したものを用いることが好ましい。なお、第二の組成物は、酸性物質により実質的にある程度のpHが定まるが、pHを調整する場合は、pH5以下が好ましく、さらには、pH1~4が好ましい。
【0066】
第二の組成物は、少なくとも常温・常圧でゲル状であることが好ましい。第二の組成物をゲル状とすることで、第一の組成物との粘性等の物性の相違を抑えて、混合されやすいものとすることができ、また、混合組成物としてもゲル状のものとなり、任意の場所に付着して流動しにくくなる。第二の組成物は、例えば、回転粘度計により測定した25℃の粘度の下限が、1,000mPa・s以上や、5,000mPa・s以上とすることができる。粘度が高すぎる場合、混合されにくかったり、吐出や噴射しにくい場合があるため、その上限は、1,000Pa・s以下や、500Pa・s以下としてもよい。
【0067】
第二の組成物は、他の成分を含むものとしてもよい。例えば、使用箇所を明確にするために着色剤を含めたり、安定剤、保存剤、保湿剤、香料などを含むものとしてもよい。なお、一般的には増粘効果があるポリマー系増粘剤を含むと、使用時に吐出部から糸を曳く(曳糸性)場合がある。このため、ポリマー系増粘剤は2質量%以下や1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下などの上限を設けて、実質含まないものとしてこれらの問題が生じないものしてもよい。
【0068】
[混合組成物]
本発明の二酸化塩素発生装置や二酸化塩素発生システムは、第一の組成物と第二の組成物とを混合した混合組成物として、この混合組成物から二酸化塩素を発生させる。この二酸化塩素の発生は、混合組成物において第一の組成物の亜塩素酸塩と、酸性物質とが反応することで生じる。この発生した二酸化塩素は、混合組成物を付着や配置する任意の場で気化するように付近に拡散する。この二酸化塩素により、菌やウイルスを殺滅するなどして消毒等を行うことができる。
【0069】
第一の組成物と第二の組成物との混合比率は、それぞれの有効成分の種類や濃度、二酸化塩素を発生させる速度や期間等を考慮して適宜設定される。例えば、第一の組成物と第二の組成物との質量比(第一の組成物:第二の組成物)を、1:10~10:1程度としてもよい。好ましくは、1:5~5:1や、1:2~2:1程度とすることができる。
【0070】
第一の組成物と第二の組成物は、混合部などで混合される。二酸化塩素発生装置101では、混合部41内の組成物付近の外側容器31をもむことで混合させることができる。二酸化塩素発生装置102では、ボタン62を押して配管121と配管221との連結部を開放することで、双方の容器に係る圧力により押し出されたゲル状組成物が衝突して混合される。混合組成物は、混合組成物は、ゲル状の組成物で、吐出部から吐出されて、付着させた場所に安定して保持される。この保持された場で、二酸化塩素を発生させる。
【0071】
第一の組成物と第二の組成物の混合は、混合部で行われるものとして装置等として実施してもよく、それぞれの組成物をあらかじめ調製して任意の場所で混合して使用するシステムとしてもよい。
【0072】
本発明の二酸化塩素発生装置や二酸化塩素発生システムは、除菌や消毒、殺菌、脱臭、防疫などの目的で、任意の場所や物を対象に、ゲル状となる混合組成物を付着させて使用することができる。例えば、家やオフィス、病院、交通機関、施設、工場などで、風邪などのウイルスや菌などが原因となる病気の予防や治療用に用いたり、獣舎などで家畜の病気の予防や治療用に用いたりすることができる。
【実施例
【0073】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[試薬等]
・亜塩素酸ナトリウム:大阪ソーダ(株)製
・クエン酸:林純薬工業(株)製
・ヒュームドシリカ(1):日本アエロジル(株)製「A200」
・疎水性ヒュームドシリカ(1):日本アエロジル(株)製「RY200」
・イソプロピルアルコール:林純薬工業(株)製
【0075】
[実験例1]
1)以下の、亜塩素酸ナトリウム水溶液(1)、クエン酸水溶液(1)を調製した。
・亜塩素酸ナトリウム水溶液(1)
精製水93.9質量%、ヒュームドシリカ(1)6質量%、亜塩素酸ナトリウム0.1質量%を混合した。この亜塩素酸ナトリウム水溶液(1)は、pH8.8であった。
・クエン酸水溶液(1)
精製水90質量%、ヒュームドシリカ(1)6質量%、クエン酸4質量%を混合した。このクエン酸水溶液(1)は、pH2.5であった。
2)上記1)で調整した溶液を、第二の実施形態に示す二酸化塩素発生装置102に準じるエアゾール缶にそれぞれ収容して、スプレー噴射試験を行った。クエン酸水溶液(1)の粘度がやや低く、混合性がやや低かったが、ゲル状で任意の場所に付着させることができた。
3)上記1)で調整した溶液を、1日室温雰囲気下に静置して、状態を観察した。亜塩素酸ナトリウム水溶液(1)が黄変し、容器を開放すると二酸化塩素のにおいがした。pHがやや低くヒュームドシリカ(1)のヒドロキシ基によるプロトン放出が生じ、このプロトンと反応していたためと考えられる。
【0076】
[比較例1]
実験例1のクエン酸水溶液(1)に代えて、精製水95質量%、ポリアクリル酸Na1質量%、クエン酸4質量%を混合したクエン酸水溶液を用いてスプレー試験を行った。すなわち、前記クエン酸水溶液(1)における増粘剤をヒュームドシリカに代えてポリアクリル酸Naを混合して、同程度の粘性として前記実験例1の2)と同様にスプレー試験を行った。噴射したゲルは、曳糸性があり取り扱いにくかった。
【0077】
[実験例2]
1)以下の、亜塩素酸ナトリウム水溶液(2)、クエン酸水溶液(2)を調製した。
・亜塩素酸ナトリウム水溶液(2)
精製水90.95質量%、亜塩素酸ナトリウム3質量%、水酸化ナトリウム0.05質量%、ヒュームドシリカ(1)6質量%を混合した。この亜塩素酸ナトリウム水溶液(2)は、pH10.5であった。
・クエン酸水溶液(2)
精製水90質量%、クエン酸4質量%、ヒュームドシリカ(1)6質量%を混合した。このクエン酸水溶液(2)は、pH2.5であった。
2)上記1)で調整した溶液を、第二の実施形態に示す二酸化塩素発生装置102に準じるエアゾール缶にそれぞれ収容して、スプレー噴射試験を行った。吐出部から噴射された混合組成物は、ゲル状の組成物で噴射先に付着した。
また、二酸化塩素の発生を確認することができ、開放状態で3日経過後も継続して二酸化塩素が発生していることも確認された。
3)上記1)で調整した溶液を、1日室温雰囲気下に静置して状態を観察した。いずれも外観上の異常は観察されなかった。
【0078】
[実験例3]
1)以下の、亜塩素酸ナトリウム水溶液(3)、クエン酸水溶液(3)を調製した。
・亜塩素酸ナトリウム水溶液(3)
精製水45.45質量%、イソプロピルアルコール45.5質量%、亜塩素酸ナトリウム3質量%、水酸化ナトリウム0.05質量%、疎水性ヒュームドシリカ(1)6質量%を混合した。この亜塩素酸ナトリウム水溶液(3)は、pH10.5であった。
・クエン酸水溶液(3)
精製水45質量%、イソプロピルアルコール45質量%、クエン酸4質量%、疎水性ヒュームドシリカ(1)6質量%を混合した。このクエン酸水溶液(3)は、pH2.0であった。
なお、亜塩素酸ナトリウム水溶液(3)およびクエン酸水溶液(3)は、いずれも約200Pa・sの粘度であった。
2)上記1)で調整した溶液を、第二の実施形態に示す二酸化塩素発生装置102に準じるエアゾール缶にそれぞれ収容して、スプレー噴射試験を行った。吐出部から噴射された混合組成物は、ゲル状の組成物で噴射先に付着した。このゲル状の組成物は、液だれなども生じず噴射先に安定して付着した。この噴射されたゲル状組成物の様子を図4に示す。疎水性ヒュームドシリカ(1)を用いる実験例3の方が、実験例1、2のヒュームドシリカ(1)を用いる場合よりも、付着した対象に安定して留まった。
また、二酸化塩素の発生を確認することができ、開放状態で3日経過後も継続して二酸化塩素が発生していることも確認された。
3)上記1)で調整した溶液を、1日室温雰囲気下に静置して状態を観察した。いずれも外観上の異常は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の二酸化塩素発生装置や発生システムは、除菌や消毒、殺菌、脱臭、防疫などの目的でゲル状組成物を付着させることで利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0080】
101、102、103 二酸化塩素発生装置
11、12 第一の容器
13 内側容器
121、221 配管
21、22 第二の容器
31、32、33 外側容器
41、42、43 混合部
51、52、53 吐出部
61、63 切欠き
62 ボタン
図1
図2
図3
図4