(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】水素冷却装置、水素供給システム及び冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231002BHJP
F25B 41/20 20210101ALI20231002BHJP
F25B 7/00 20060101ALI20231002BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
F25B1/00 101H
F25B1/00 399Y
F25B41/20 D
F25B1/00 304Z
F25B7/00 D
F17C13/00 301Z
(21)【出願番号】P 2019184580
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】内田 実
(72)【発明者】
【氏名】守屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】三塚 賓耶
(72)【発明者】
【氏名】青木 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】樋熊 俊紀
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-243711(JP,A)
【文献】特開2016-053458(JP,A)
【文献】特開平10-122677(JP,A)
【文献】特開平09-318166(JP,A)
【文献】実公平06-041067(JP,Y2)
【文献】特開平08-028993(JP,A)
【文献】特開2018-189350(JP,A)
【文献】特許第5632065(JP,B1)
【文献】特開2017-129259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 7/00
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒をこの順に循環させるように接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分から前記冷凍回路における前記膨張弁の下流側であって前記蒸発器の上流側の部分まで延びるバイパス流路及び前記バイパス流路上に設けられる開閉弁を有するバイパス回路と、を有する冷凍機と、
前記蒸発器と接続し前記蒸発器において前記冷媒により冷却されて前記蒸発器から流出する水素冷却用流体を熱交換器を介して前記蒸発器に循環させる循環路を有し、前記熱交換器において前記水素冷却用流体と水素とを熱交換させる流体循環ユニットと、
を備え、
前記冷凍機は、前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分における前記バイパス流路の接続位置の下流側に設定される第1圧力検出位置での前記冷媒の圧力が第1所定値を越えたときに、前記開閉弁を開き、前記第1圧力検出位置での前記冷媒の圧力が前記第1所定値よりも小さい第2所定値よりも小さくなったときに、前記開閉弁を閉じ
、
前記冷凍機は、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側であって前記圧縮機の上流側の第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が第3所定値よりも小さくなったときに前記開閉弁を開き、前記第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が前記第3所定値よりも大きい第4所定値を越えたときに前記開閉弁を閉じる、水素冷却装置。
【請求項2】
前記バイパス回路は、前記バイパス流路における前記開閉弁の上流側の部分と下流側の部分とを接続する通常流路と、前記通常流路上に設けられる流量調節弁と、をさらに有し、
前記冷凍機は、前記開閉弁が閉じ状態のときに、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側であって前記圧縮機の上流側の第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が所定の目標値に維持されるように前記流量調節弁の開度を調整し、前記開閉弁が開状態のときに前記流量調節弁を閉じる、請求項
1に記載の水素冷却装置。
【請求項3】
前記流体循環ユニットは、前記水素冷却用流体を断熱的に貯留する蓄熱タンクをさらに有する、請求項1
又は2に記載の水素冷却装置。
【請求項4】
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側膨張弁及び高温側蒸発器が高温側冷媒をこの順に循環させるように接続された高温側冷凍回路と、前記高温側冷凍回路における前記高温側圧縮機の下流側であって前記高温側凝縮器の上流側の部分から前記高温側冷凍回路における前記高温側膨張弁の下流側であって前記高温側蒸発器の上流側の部分まで延びる高温側バイパス流路及び前記高温側バイパス流路上に設けられる高温側開閉弁を有する高温側バイパス回路と、を有する高温側冷凍機と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、低温側膨張弁及び低温側蒸発器が低温側冷媒をこの順に循環させるように接続された低温側冷凍回路と、前記低温側冷凍回路における前記低温側圧縮機の下流側であって前記低温側凝縮器の上流側の部分から前記低温側冷凍回路における前記低温側膨張弁の下流側であって前記低温側蒸発器の上流側の部分まで延びる低温側バイパス流路及び前記低温側バイパス流路上に設けられる低温側開閉弁を有する低温側バイパス回路と、を有する低温側冷凍機と、
前記低温側蒸発器と接続し前記低温側蒸発器において前記低温側冷媒により冷却されて前記低温側蒸発器から流出する水素冷却用流体を熱交換器を介して前記低温側蒸発器に循環させる循環路を有し、前記熱交換器において前記水素冷却用流体と水素とを熱交換させる流体循環ユニットと、
を備え、
前記高温側冷凍回路の前記高温側蒸発器と前記低温側冷凍回路の低温側凝縮器とがカスケードコンデンサを構成し、
前記高温側冷凍機は、前記高温側冷凍回路における前記高温側圧縮機の下流側であって前記高温側凝縮器の上流側の部分における前記高温側バイパス流路の接続位置の下流側に設定される
高温側第1圧力検出位置での前記高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値を越えたときに、前記高温側開閉弁を開き、前記高温側第1圧力検出位置での前記高温側冷媒の圧力が前記高温側第1所定値よりも小さい高温側第2所定値よりも小さくなったときに前記高温側開閉弁を閉じ
、
前記高温側冷凍機は、前記高温側冷凍回路における前記高温側蒸発器の下流側であって前記高温側圧縮機の上流側の高温側第2圧力検出位置での前記高温側冷媒の圧力が第3所定値よりも小さくなったときに前記高温側開閉弁を開き、前記高温側第2圧力検出位置での前記高温側冷媒の圧力が前記第3所定値よりも大きい第4所定値を越えたときに前記高温側開閉弁を閉じる、水素冷却装置。
【請求項5】
前記低温側冷凍機は、前記低温側冷凍回路における前記低温側圧縮機の下流側であって前記低温側凝縮器の上流側の部分における前記低温側バイパス流路の接続位置の下流側に設定される
低温側第1圧力検出位置での前記低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値を越えたときに、前記低温側開閉弁を開き、前記低温側第1圧力検出位置での前記低温側冷媒の圧力が前記低温側第1所定値よりも小さい低温側第2所定値よりも小さくなったときに前記低温側開閉弁を閉じる、請求項
4に記載の水素冷却装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれかに記載の水素冷却装置と、
水素が貯蔵された水素貯蔵部と、
前記水素貯蔵部に貯蔵された水素が通流される水素流路と、を備え、
前記水素流路を通流する水素を前記水素冷却装置によって冷却する、水素供給システム。
【請求項7】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒をこの順に循環させるように接続された冷凍回路と、
前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分から前記冷凍回路における前記膨張弁の下流側であって前記蒸発器の上流側の部分まで延びるバイパス流路及び前記バイパス流路上に設けられる開閉弁を有するバイパス回路と、
を備え、
前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分における前記バイパス流路の接続位置の下流側に設定される
第1圧力検出位置での前記冷媒の圧力が第1所定値を越えたときに、前記開閉弁を開き、前記
第1圧力検出位置での前記冷媒の圧力が前記第1所定値よりも小さい第2所定値よりも小さくなったときに、前記開閉弁を閉じ
、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側であって前記圧縮機の上流側の第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が第3所定値よりも小さくなったときに前記開閉弁を開き、前記第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が前記第3所定値よりも大きい第4所定値を越えたときに前記開閉弁を閉じる、冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を冷却するための水素冷却装置、冷却水素を供給する水素供給システム、及びこれら装置又はシステムに好適に用いられ得る冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、発電時に生じる環境汚染物質が極めて少ない等の理由から次世代のエネルギー源として注目されており、普及しつつある。
【0003】
例えば燃料電池を搭載した燃料電池車両は近年普及しつつあるが、燃料電池車両の更なる普及には水素供給ステーションの普及が必要である。
【0004】
水素供給ステーションは通常、水素ガスを圧縮して貯蔵する貯蔵タンクと、貯蔵タンクに接続される供給配管とを有し、貯蔵タンク内の水素を供給配管を介して燃料電池側のタンクに供給する。
【0005】
このような水素供給ステーションでは、供給配管を通過中の水素の温度がジュールトムソン効果によって上昇し得るが、このような温度上昇は例えば燃料電池側のタンクの温度上昇を招くため、抑制することが求められる。そのため、水素供給ステーションには供給配管を冷却するプレクール装置と呼ばれる装置を備えるものがある。本件出願人も、このようなプレクール装置を備える水素供給装置を特許文献1及び特許文献2において提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5632065号公報
【文献】特開2017-129259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水素供給ステーション等の水素供給システムは高温環境や低温環境に設置されることも想定され、様々な環境における動作信頼性を確保することが普及に際して極めて重要となる。ここで、水素供給システムに設けられるプレクール装置は一般に冷凍機を利用して構成されるが、冷凍機は、環境温度に応じて凝縮器や圧縮機に損傷が生じる場合がある。
【0008】
本発明は上記の点に着目してなされたものであり、冷凍機を利用する水素冷却装置であって、環境温度に起因する冷凍機の構成部品の損傷を回避することにより、長期運転の信頼性を向上させることができる水素冷却装置、水素供給システム及び冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる水素冷却装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒をこの順に循環させるように接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分から前記冷凍回路における前記膨張弁の下流側であって前記蒸発器の上流側の部分まで延びるバイパス流路及び前記バイパス流路上に設けられる開閉弁を有するバイパス回路と、を有する冷凍機と、前記蒸発器と接続し前記蒸発器において前記冷媒により冷却されて前記蒸発器から流出する水素冷却用流体を熱交換器を介して前記蒸発器に循環させる循環路を有し、前記熱交換器において前記水素冷却用流体と水素とを熱交換させる流体循環ユニットと、を備え、前記冷凍機は、前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分における前記バイパス流路の接続位置の下流側に設定される第1圧力検出位置での前記冷媒の圧力が第1所定値を越えたときに、前記開閉弁を開き、前記第1圧力検出位置での前記冷媒の圧力が前記第1所定値よりも小さい第2所定値よりも小さくなったときに、前記開閉弁を閉じる、水素冷却装置である。
【0010】
この構成では、例えば水素冷却装置の周辺が極高温環境になることに伴い、凝縮器で凝縮される冷媒の凝縮圧力が高くなり、その結果、圧縮機が流出させる冷媒の圧力が凝縮器に悪影響を及ぼす程度に高くなり得る場合に、悪影響を及ぼす程度と見做される冷媒の圧力として定められる第1所定値を基準として、圧縮機が流出させる冷媒を凝縮器の下流側にバイパスさせることができる。これにより、凝縮器に過剰に高圧の冷媒が流入することによる悪影響を回避することができる。よって、環境温度に起因する冷凍機の構成部品の損傷を回避することが可能となり、長期運転の信頼性を向上させることができる。
【0011】
前記冷凍機は、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側であって前記圧縮機の上流側の第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が第3所定値よりも小さくなったときに前記開閉弁を開き、前記第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が前記第3所定値よりも大きい第4所定値を越えたときに前記開閉弁を閉じてもよい。
【0012】
この構成では、例えば水素冷却装置の周辺が極低温環境になることに伴い、凝縮器で凝縮される冷媒の凝縮圧力が低くなり、その結果、蒸発器における冷媒の蒸発圧力が圧縮機に悪影響を及ぼす程度に低くなり得る場合に、悪影響を及ぼす程度と見做される冷媒の圧力として定められる第3所定値を基準として、圧縮機が流出させる冷媒を膨張弁の下流側にバイパスさせることができる。これにより、冷媒の蒸発圧力を上昇させることで過剰に低圧の冷媒による悪影響を回避することができる。よって、環境温度に起因する冷凍機の構成部品の損傷を回避することが可能となり、長期運転の信頼性を向上させることができる。
【0013】
前記バイパス回路は、前記バイパス流路における前記開閉弁の上流側の部分と下流側の部分とを接続する通常流路と、前記通常流路上に設けられる流量調節弁と、をさらに有し、前記冷凍機は、前記開閉弁が閉じ状態のときに、前記第2圧力検出位置での前記冷媒の圧力が所定の目標値に維持されるように前記流量調節弁の開度を調整し、前記開閉弁が開状態のときに前記流量調節弁を閉じてもよい。
【0014】
この構成では、水素冷却装置の周辺が通常の温度環境であるときに、圧縮機に戻る冷媒の圧力を安定的に所望状態に維持できるため、安定的な冷却を行うことができる。
【0015】
前記流体循環ユニットは、前記水素冷却用流体を断熱的に貯留する蓄熱タンクをさらに有してもよい。
【0016】
この構成では、水素冷却装置の周辺が極高温環境又は極低温環境になることにより冷凍機の冷凍能力が低下した場合に、蓄熱タンクに貯留された水素冷却用流体が熱交換器における冷凍能力の急激な低下を抑制するため、水素を適正に冷却できる状態をある程度の期間、維持することができる。特に開閉弁を開けた際には、蒸発器における冷凍能力が低下するが、このような状況における流体循環ユニットの冷凍能力の低下を効果的に抑制できる。また水素冷却用流体の急激な膨張や、開閉弁を閉じた後の正常運転への復帰にかかる時間を抑制できる。
【0017】
本発明にかかる水素冷却装置は、高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側膨張弁及び高温側蒸発器が高温側冷媒をこの順に循環させるように接続された高温側冷凍回路と、前記高温側冷凍回路における前記高温側圧縮機の下流側であって前記高温側凝縮器の上流側の部分から前記高温側冷凍回路における前記高温側膨張弁の下流側であって前記高温側蒸発器の上流側の部分まで延びる高温側バイパス流路及び前記高温側バイパス流路上に設けられる高温側開閉弁を有する高温側バイパス回路と、を有する高温側冷凍機と、低温側圧縮機、低温側凝縮器、低温側膨張弁及び低温側蒸発器が低温側冷媒をこの順に循環させるように接続された低温側冷凍回路と、前記低温側冷凍回路における前記低温側圧縮機の下流側であって前記低温側凝縮器の上流側の部分から前記低温側冷凍回路における前記低温側膨張弁の下流側であって前記低温側蒸発器の上流側の部分まで延びる低温側バイパス流路及び前記低温側バイパス流路上に設けられる低温側開閉弁を有する低温側バイパス回路と、を有する低温側冷凍機と、前記低温側蒸発器と接続し前記低温側蒸発器において前記低温側冷媒により冷却されて前記低温側蒸発器から流出する水素冷却用流体を熱交換器を介して前記低温側蒸発器に循環させる循環路を有し、前記熱交換器において前記水素冷却用流体と水素とを熱交換させる流体循環ユニットと、を備え、前記高温側冷凍回路の前記高温側蒸発器と前記低温側冷凍回路の低温側凝縮器とがカスケードコンデンサを構成し、前記高温側冷凍機は、前記高温側冷凍回路における前記高温側圧縮機の下流側であって前記高温側凝縮器の上流側の部分における前記高温側バイパス流路の接続位置の下流側に設定される圧力検出位置での前記高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値を越えたときに、前記高温側開閉弁を開き、前記高温側第1圧力検出位置での前記高温側冷媒の圧力が前記高温側第1所定値よりも小さい高温側第2所定値よりも小さくなったときに前記高温側開閉弁を閉じる、水素冷却装置である。
【0018】
この構成では、二元冷凍が利用されることで、極高温環境下においても所望される冷凍能力を確保し易くなり、且つ単元の場合に比べて所望の冷凍能力までの到達時間を低減できる。また、例えば水素冷却装置の周辺が極高温環境になることに伴い、高温側凝縮器で凝縮される高温側冷媒の凝縮圧力が高くなり、その結果、高温側圧縮機が流出させる高温側冷媒の圧力が高温側凝縮器に悪影響を及ぼす程度に高くなり得る場合に、悪影響を及ぼす程度と見做される高温側冷媒の圧力として定められる高温側第1所定値を基準として、高温側圧縮機が流出させる高温側冷媒を高温側凝縮器の下流側にバイパスさせることができる。これにより、高温側凝縮器に過剰に高圧の高温側冷媒が流入することによる悪影響を回避することができる。よって、環境温度に起因する高温側冷凍機の構成部品の損傷を回避することが可能となり、長期運転の信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、前記低温側冷凍機は、前記低温側冷凍回路における前記低温側圧縮機の下流側であって前記低温側凝縮器の上流側の部分における前記低温側バイパス流路の接続位置の下流側に設定される圧力検出位置での前記低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値を越えたときに、前記低温側開閉弁を開き、前記低温側第1圧力検出位置での前記低温側冷媒の圧力が前記低温側第1所定値よりも小さい低温側第2所定値よりも小さくなったときに前記低温側開閉弁を閉じてもよい。
【0020】
この構成では、例えば水素冷却装置の周辺が極高温環境になることに伴い、低温側凝縮器で凝縮される低温側冷媒の凝縮圧力も高くなり、その結果、低温側圧縮機が流出させる低温側冷媒の圧力も低温側凝縮器に悪影響を及ぼす程度に高くなり得る場合に、悪影響を及ぼす程度と見做される低温側冷媒の圧力として定められる低温側第1所定値を基準として、低温側圧縮機が流出させる低温側冷媒を低温側凝縮器の下流側にバイパスさせることができる。これにより、低温側凝縮器に過剰に高圧の低温側冷媒が流入することによる悪影響を回避することができる。よって、環境温度に起因する低温側冷凍機の構成部品の損傷を回避することが可能となり、長期運転の信頼性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明にかかる水素供給システムは、前記の水素冷却装置と、水素が貯蔵された水素貯蔵部と、前記水素貯蔵部に貯蔵された水素が通流される水素流路と、を備え、前記水素流路を通流する水素を前記水素冷却装置によって冷却する、水素供給システムである。
【0022】
この水素供給システムによれば、水素を安定的に冷却できる。
【0023】
また、本発明にかかる冷凍機は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が冷媒をこの順に循環させるように接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分から前記冷凍回路における前記膨張弁の下流側であって前記蒸発器の上流側の部分まで延びるバイパス流路及び前記バイパス流路上に設けられる開閉弁を有するバイパス回路と、を備え、前記冷凍回路における前記圧縮機の下流側であって前記凝縮器の上流側の部分における前記バイパス流路の接続位置の下流側に設定される圧力検出位置での前記冷媒の圧力が第1所定値を越えたときに、前記開閉弁を開き、前記圧力検出位置での前記冷媒の圧力が前記第1所定値よりも小さい第2所定値よりも小さくなったときに、前記開閉弁を閉じる、冷凍機である。
【0024】
この冷凍機によれば、環境温度に起因する冷凍機の構成部品の損傷を回避することが可能となり、長期運転の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、環境温度に起因する冷凍機の構成部品の損傷を回避することが可能となり、長期運転の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る水素供給システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す水素供給システムを構成する高温側冷凍機の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図1に示す水素供給システムを構成する低温側冷凍機の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態に係る水素供給システムSの概略構成を示す図である。本実施の形態に係る水素供給システムSは、二元冷凍ユニット1と、水素冷却用流体循環ユニット2と、水素貯蔵部3と、水素流路4と、制御装置5とを備えている。このうちの二元冷凍ユニット1、水素冷却用流体循環ユニット2及び制御装置5は、本発明でいう水素冷却装置を構成する。水素貯蔵部3は水素を貯蔵しており、水素流路4は水素を外部に供給する際に水素貯蔵部3からの水素を外部に向けて通流させる。水素供給システムSは、水素冷却用流体循環ユニット2が循環させる水素冷却用流体を二元冷凍ユニット1によって冷却し、冷却された水素冷却用流体によって水素流路4を冷却することで水素流路4内の水素を冷却する。以下、水素供給システムSの各構成について説明する。
【0029】
<二元冷凍ユニット>
二元冷凍ユニット1は、高温側冷凍機100と低温側冷凍機200とを備え、高温側冷凍機100と低温側冷凍機200とがカスケードコンデンサCCを構成するようにこれら高温側冷凍機100と低温側冷凍機200とを接続している。カスケードコンデンサCCでは、高温側冷凍機100が循環させる高温側冷媒と低温側冷凍機200が循環させる低温側冷媒とが熱交換し、低温側冷媒が凝縮される。高温側冷媒としては例えばR410Aを用いることができ、低温側冷媒としては例えばR23を用いることができるが、これら冷媒の組合せは特に限定されるものではない。
【0030】
(高温側冷凍機)
高温側冷凍機100は、高温側圧縮機101、高温側凝縮器102、高温側膨張弁103及び高温側蒸発器104が高温側冷媒をこの順に循環させるように配管により接続された高温側冷凍回路105と、高温側バイパス回路110とを有している。詳細は後述するが、高温側バイパス回路110は、高温側圧縮機101から流出した高温高圧の冷媒を高温側膨張弁103と高温側蒸発器104との間の部分に流入させるために設けられている。
【0031】
高温側冷凍回路105では、高温側圧縮機101によって圧縮された高温側冷媒が、高温側凝縮器102に流入し、高温側凝縮器102に流入した冷媒は、空冷又は液冷(本例では、空冷)により凝縮される。その後、高温側冷媒は、高温側膨張弁103によって減圧されて低温の気液混合状態となり、高温側蒸発器104に流入する。高温側蒸発器104は上述したカスケードコンデンサCCを構成しており、カスケードコンデンサCCにおいて高温側冷媒は低温側冷凍機200が循環させる低温側冷媒と熱交換を行った後に、高温側圧縮機101に流入する。その後、高温側冷媒は高温側圧縮機101によって再度圧縮される。
【0032】
高温側バイパス回路110は、高温側冷凍回路105における高温側圧縮機101の下流側であって高温側凝縮器102の上流側の部分から高温側冷凍回路105における高温側膨張弁103の下流側であって高温側蒸発器104の上流側の部分まで延びる高温側バイパス流路111と、高温側バイパス流路111上に設けられる高温側開閉弁112とを有している。また、本実施の形態における高温側バイパス回路110は、高温側バイパス流路111における高温側開閉弁112の上流側の部分と下流側の部分とを接続する高温側通常流路113と、高温側通常流路113上に設けられる高温側流量調節弁114とをさらに有する。
【0033】
高温側開閉弁112は開状態と閉じ状態との2位置を切り替えるように構成されており、例えばソレノイド弁等で構成されてもよい。高温側流量調節弁114は開度を調節可能に構成されており、例えばモータバルブ等で構成されてもよい。高温側開閉弁112及び高温側流量調節弁114は制御装置5に電気的に接続され、制御装置5によって動作を制御されるようになっている。
【0034】
高温側開閉弁112は高温側冷媒の圧力異常時に、大量の高温側冷媒を高温側膨張弁103の下流側に流入させるために設けられており、高温側流量調節弁114は通常の運転時に高温側圧縮機101に戻る高温側冷媒の圧力の一定化を図るために設けられている。
【0035】
また、
図1における符号116は、高温側冷凍回路105における高温側圧縮機101の下流側であって高温側凝縮器102の上流側の部分における高温側バイパス流路111の接続位置の下流側に設定される高温側第1圧力検出位置HP1での高温側冷媒の圧力を検出する高温側第1圧力センサを示している。また、符号117は、高温側冷凍回路105における高温側蒸発器104の下流側であって高温側圧縮機101の上流側の高温側第2圧力検出位置HP2での高温側冷媒の圧力を検出する高温側第2圧力センサを示している。
【0036】
高温側第1圧力センサ116及び高温側第2圧力センサ117は制御装置5に電気的に接続され、制御装置5に検出した情報を送出するようになっている。制御装置5は、高温側第1圧力センサ116及び高温側第2圧力センサ117からの情報に基づいて、高温側開閉弁112及び高温側流量調節弁114の動作を制御するようになっている。
【0037】
(低温側冷凍機)
低温側冷凍機200は、低温側圧縮機201、低温側凝縮器202、低温側膨張弁203及び低温側蒸発器204が低温側冷媒をこの順に循環させるように配管により接続された低温側冷凍回路205と、低温側バイパス回路210とを有している。低温側バイパス回路210は、低温側圧縮機201から流出した高温高圧の冷媒を低温側膨張弁203と低温側蒸発器204との間の部分に流入させるために設けられている。
【0038】
低温側冷凍回路205では、低温側圧縮機201によって圧縮された低温側冷媒が、低温側凝縮器202に流入する。ここで、低温側凝縮器202は上述したカスケードコンデンサCCを構成しており、カスケードコンデンサCCにおいて低温側冷媒は高温側冷媒により凝縮される。その後、低温側冷媒は、低温側膨張弁203によって減圧されて低温の気液混合状態となり、低温側蒸発器204に流入する。ここで、低温側蒸発器204に流入した低温側冷媒は、水素冷却用流体循環ユニット2が循環させる水素冷却用流体と熱交換し、当該水素冷却用流体を冷却する。その後、低温側冷媒は、低温側圧縮機201に流入した後、低温側圧縮機201によって再度圧縮される。
【0039】
低温側バイパス回路210は、低温側冷凍回路205における低温側圧縮機201の下流側であって低温側凝縮器202の上流側の部分から低温側冷凍回路205における低温側膨張弁203の下流側であって低温側蒸発器204の上流側の部分まで延びる低温側バイパス流路211と、低温側バイパス流路211上に設けられる低温側開閉弁212とを有している。また、本実施の形態における低温側バイパス回路210は、低温側バイパス流路211における低温側開閉弁212の上流側の部分と下流側の部分とを接続する低温側通常流路213と、低温側通常流路213上に設けられる低温側流量調節弁214とをさらに有する。
【0040】
上述の高温側開閉弁112と同様に、低温側開閉弁212は開状態と閉じ状態との2位置を切り替えるように構成されており、例えばソレノイド弁等で構成されてもよい。また、低温側流量調節弁214は開度を調節可能に構成されており、例えばモータバルブ等で構成されてもよい。低温側開閉弁212及び低温側流量調節弁214は制御装置5に電気的に接続され、制御装置5によって動作を制御されるようになっている。
【0041】
低温側冷凍機200においても、低温側開閉弁212は低温側冷媒の圧力異常時に、大量の低温側冷媒を低温側膨張弁203の下流側に流入させるために設けられており、低温側流量調節弁214は通常の運転時に低温側圧縮機201に戻る低温側冷媒の圧力の一定化を図るために設けられている。
【0042】
また、
図1における符号216は、低温側冷凍回路205における低温側圧縮機201の下流側であって低温側凝縮器202の上流側の部分における低温側バイパス流路211の接続位置の下流側に設定される低温側第1圧力検出位置LP1での低温側冷媒の圧力を検出する低温側第1圧力センサを示している。また、符号217は、低温側冷凍回路205における低温側蒸発器204の下流側であって低温側圧縮機201の上流側の低温側第2圧力検出位置LP2での低温側冷媒の圧力を検出する低温側第2圧力センサを示している。
【0043】
低温側第1圧力センサ216及び低温側第2圧力センサ217は制御装置5に電気的に接続され、制御装置5に検出した情報を送出するようになっている。制御装置5は、低温側第1圧力センサ216及び低温側第2圧力センサ217からの情報に基づいて、低温側開閉弁212及び低温側流量調節弁214の動作を制御するようになっている。
【0044】
<水素冷却用流体循環ユニット>
次に水素冷却用流体循環ユニット2は、低温側蒸発器204と接続し低温側蒸発器204において低温側冷媒により冷却されて低温側蒸発器204から流出する水素冷却用流体を熱交換器21を介して低温側蒸発器204に循環させる循環路20を有する。熱交換器21は水素冷却用流体と水素とを熱交換させることにより、水素を冷却する。なお、水素冷却用流体として不凍液(ブライン)が用いられるが特に限定されるものではない。
【0045】
本実施の形態における水素冷却用流体循環ユニット2は、循環路20上に、水素冷却用流体を循環させるための液送ポンプ22と、余剰の水素冷却用流体を貯留するタンクユニット23とをさらに有している。タンクユニット23は、複数の蓄熱タンク23A~23C(第1蓄熱タンク23A、第2蓄熱タンク23B、第3蓄熱タンク23C)と、補充用タンク23Dとを含んでなる。
【0046】
第1蓄熱タンク23A、第2蓄熱タンク23B及び第3蓄熱タンク23Cはそれぞれ、例えば断熱材によって覆われており、水素冷却用流体を断熱的に貯留するようになっている。また第1蓄熱タンク23A、第2蓄熱タンク23B及び第3蓄熱タンク23Cは配管により直列状に接続されており、水素冷却用流体の循環時には、水素冷却用流体が第1蓄熱タンク23A、第2蓄熱タンク23B及び第3蓄熱タンク23Cの順で通流する。
【0047】
第1蓄熱タンク23A、第2蓄熱タンク23B及び第3蓄熱タンク23Cは、二元冷凍ユニット1による冷凍能力が異常低下した場合に、熱交換器21における水素に対する冷凍能力が急激に低下することを抑制するために設けられている。第1蓄熱タンク23A、第2蓄熱タンク23B及び第3蓄熱タンク23Cにおいて貯留される合計の水素冷却用流体の体積V1は、循環路20におけるタンクユニット23を除く流路部分(点UEから左周りに点DEまでの部分)の体積V2の20倍以上、特に26~30倍とするのがよい。一方、補充用タンク23Dは開閉可能に構成されており、水素冷却用流体を補充又は排出可能に水素冷却用流体を貯留する。
【0048】
<水素貯蔵部及び水素流路>
水素貯蔵部3は例えば圧縮された水素を貯蔵するものであり、水素流路4は、水素を燃料電池や燃料電池車両等の外部に供給する際に水素貯蔵部3からの水素を外部に向けて通流させる。水素流路4の水素貯蔵部3側とは反対側の端部には供給ノズル4Aが設けられ、供給ノズル4Aは水素を外部に流出させる。水素流路4は水素冷却用流体循環ユニット2の熱交換器21に接続されており、熱交換器21は、低温側冷媒によって冷却された水素冷却用流体によって水素流路4を冷却することで水素流路4内の水素を冷却する。
【0049】
<制御装置>
制御装置5は、上述したように高温側開閉弁112、高温側流量調節弁114、低温側開閉弁212及び低温側流量調節弁214の動作を制御する。なお、制御装置5はCPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータで構成されてもよく、この場合、記憶されたプログラムに従って各部の動作を制御してもよい。制御装置5の処理は、詳しくは以下の通りである。
【0050】
(高温側冷凍機における制御)
制御装置5はまず、高温側冷凍回路105を循環する高温側冷媒の圧力が正常であると判断される場合には、高温側開閉弁112を閉じ状態にし、高温側流量調節弁114の開度を高温側第2圧力センサ117の検出値に基づいて制御する。具体的に制御装置5は、高温側第2圧力センサ117が検出する高温側第2圧力検出位置HP2での高温側冷媒の圧力が所定の目標値に維持されるように高温側流量調節弁114の開度を調整する。
【0051】
一方で、制御装置5は、高温側第1圧力センサ116が検出する高温側第1圧力検出位置HP1での高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値を越えたときに、高温側冷媒の圧力が異常と判断し、また高温側第2圧力センサ117が検出する高温側第2圧力検出位置HP2での高温側冷媒の圧力が高温側第3所定値よりも小さくなったときに、高温側冷媒の圧力が異常と判断する。
【0052】
そして、高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値を越えたとき、制御装置5は、高温側開閉弁112を開き、高温側流量調節弁114を閉じ状態にする。そして制御装置5は、高温側開閉弁112を開いた後、高温側第1圧力検出位置HP1での高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値よりも小さい高温側第2所定値よりも小さくなったときに高温側開閉弁112を閉じるようにする。
【0053】
また、高温側冷媒の圧力が高温側第3所定値よりも小さくなったときにも、制御装置5は、高温側開閉弁112を開き、高温側流量調節弁114を閉じ状態にする。そして制御装置5は、高温側開閉弁112を開いた後、高温側第2圧力検出位置HP2での高温側冷媒の圧力が高温側第3所定値よりも大きい高温側第4所定値を越えたときに高温側開閉弁112を閉じるようにする。
【0054】
(低温側冷凍機における制御)
一方で、低温側冷凍機200における制御は次の通りである。すなわち、制御装置5はまず、低温側冷凍回路205を循環する低温側冷媒の圧力が正常であると判断される場合には、低温側開閉弁212を閉じ状態にし、低温側流量調節弁214の開度を低温側第2圧力センサ217の検出値に基づいて制御する。具体的に制御装置5は、低温側第2圧力センサ217が検出する低温側第2圧力検出位置LP2での低温側冷媒の圧力が所定の目標値に維持されるように低温側流量調節弁214の開度を調整する。
【0055】
また制御装置5は、低温側第1圧力センサ216が検出する低温第1圧力検出位置LP1での低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値を越えたときに、低温側冷媒の圧力が異常と判断し、また低温側第2圧力センサ217が検出する低温第2圧力検出位置LP2での低温側冷媒の圧力が低温側第3所定値よりも小さくなったときに、低温側冷媒の圧力が異常と判断する。
【0056】
そして、低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値を越えたとき、制御装置5は、低温側開閉弁212を開き、低温側流量調節弁214を閉じ状態にする。そして制御装置5は、低温側開閉弁212を開いた後、低温側第1圧力検出位置LP1での低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値よりも小さい低温側第2所定値よりも小さくなったときに低温側開閉弁212を閉じるようにする。
【0057】
また、低温側冷媒の圧力が低温側第3所定値よりも小さくなったときにも、制御装置5は、低温側開閉弁212を開き、低温側流量調節弁214を閉じ状態にする。そして制御装置5は、低温側開閉弁212を開いた後、低温側第2圧力検出位置LP2での低温側冷媒の圧力が低温側第3所定値よりも大きい低温側第4所定値を越えたときに低温側開閉弁212を閉じるようにする。
【0058】
<動作>
次に、水素冷却システムSの動作について説明する。水素冷却システムSを動作させる際には、まず、高温側圧縮機101、低温側圧縮機201及び液送ポンプ22が駆動される。この際、高温側冷凍機100では高温側開閉弁112は閉じられるが、高温側流量調節弁114は開度調節可能な状態とされる。同様に、低温側冷凍機200では高温側開閉弁112が閉じられるが、低温側流量調節弁214は開度調節可能な状態とされる。このような始動誤、低温側冷凍機200の低温側凝縮器202を通流する低温側冷媒は高温側冷凍機100の高温側蒸発器104を通流する高温側冷媒によって冷却される。そして、水素冷却用流体循環ユニット2が循環させる水素冷却用流体は低温側冷凍機200の低温側蒸発器204を通流する低温側冷媒によって冷却される。そして冷却された水素冷却用流体によって水素流路4が冷却され、水素流路4内の水素が冷却される。
【0059】
このような運転時において、高温側冷凍機100は
図2に示すフローチャートに従って動作する。なお、以下の動作は、制御装置5が高温側冷凍機100を制御することにより行われる。
【0060】
図2に示すように高温側冷凍機100は、まずステップS21において高温側第1圧力センサ116が検出する高温側第1圧力検出位置HP1での高温側冷媒の圧力が、高温側第1所定値を越えているか否かを判断する。ここで、高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値を越えていない場合(高温側第1所定値以下の場合)には、処理がステップS22に移行し、越えている場合には、処理がステップS24に移行する。
【0061】
高温側第1圧力検出位置HP1での高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値を越えていない場合のステップS22では、制御装置5は、高温側第2圧力センサ117が検出する高温側第2圧力検出位置HP2での高温側冷媒の圧力が高温側第3所定値よりも小さい否かを判断する。ここで、高温側冷媒の圧力が高温側第3所定値以上の場合には、処理がステップS23に移行し、高温側第3所定値よりも小さい場合には、処理がステップS27に移行する。
【0062】
ステップS23は高温側冷媒の圧力が正常と判断される状態であり、この場合、制御装置5は、高温側第2圧力センサ117が検出する高温側第2圧力検出位置HP2での高温側冷媒の圧力が所定の目標値に維持されるように高温側流量調節弁114の開度を調整する。その後、処理はステップS21に戻る。
【0063】
一方で、ステップS24は高温側冷媒の圧力が異常と判断される状態であり、この場合、制御装置5は、高温側開閉弁112を開き、高温側流量調節弁114を閉じ状態にする。次いで、制御装置5は、ステップS25において高温側第1圧力検出位置HP1での高温側冷媒の圧力が高温側第1所定値よりも小さい高温側第2所定値よりも小さくなったか否か判定する。そして、高温側冷媒の圧力が高温側第2所定値よりも小さくなったときには、ステップS26において高温側開閉弁112が閉じられ、処理がステップS21に戻る。一方で、高温側冷媒の圧力が高温側第2所定値よりも小さくならない場合には、高温側開閉弁112の開状態が維持される。
【0064】
また、ステップS27も、高温側冷媒の圧力が異常と判断される状態であり、この場合、制御装置5は、高温側開閉弁112を開き、高温側流量調節弁114を閉じ状態にする。次いで、制御装置5は、ステップS28において高温側第2圧力検出位置HP2での高温側冷媒の圧力が高温側第3所定値よりも大きい高温側第4所定値を越えたか否か判定する。そして、高温側冷媒の圧力が高温側第4所定値を越えたときには、ステップS29において高温側開閉弁112が閉じられ、処理がステップS21に戻る。一方で、高温側冷媒の圧力が高温側第4所定値を越えない場合には、高温側開閉弁112の開状態が維持される。
【0065】
また、低温側冷凍機200は
図3に示すフローチャートに従って動作する。なお、以下の動作は、制御装置5が低温側冷凍機200を制御することにより行われる。
【0066】
図3に示すように低温側冷凍機200は、まずステップS31において低温側第1圧力センサ216が検出する低温側第1圧力検出位置LP1での低温側冷媒の圧力が、低温側第1所定値を越えているか否かを判断する。ここで、低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値を越えていない場合(低温側第1所定値以下の場合)には、処理がステップS32に移行し、越えている場合には、処理がステップS34に移行する。
【0067】
低温側第1圧力検出位置LP1での低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値を越えていない場合のステップS32では、制御装置5は、低温側第2圧力センサ217が検出する低温側第2圧力検出位置LP2での低温側冷媒の圧力が低温側第3所定値よりも小さい否かを判断する。ここで、低温側冷媒の圧力が低温側第3所定値以上の場合には、処理がステップS33に移行し、低温側第3所定値よりも小さい場合には、処理がステップS37に移行する。
【0068】
ステップS33は低温側冷媒の圧力が正常と判断される状態であり、この場合、制御装置5は、低温側第2圧力センサ217が検出する低温側第2圧力検出位置LP2での低温側冷媒の圧力が所定の目標値に維持されるように低温側流量調節弁214の開度を調整する。その後、処理はステップS31に戻る。
【0069】
一方で、ステップS34は低温側冷媒の圧力が異常と判断される状態であり、この場合、制御装置5は、低温側開閉弁212を開き、低温側流量調節弁214を閉じ状態にする。次いで、制御装置5は、ステップS35において低温側第1圧力検出位置LP1での低温側冷媒の圧力が低温側第1所定値よりも小さい低温側第2所定値よりも小さくなったか否か判定する。そして、低温側冷媒の圧力が低温側第2所定値よりも小さくなったときには、ステップS36において低温側開閉弁212が閉じられ、処理がステップS31に戻る。一方で、低温側冷媒の圧力が低温側第2所定値よりも小さくならない場合には、低温側開閉弁212の開状態が維持される。
【0070】
また、ステップS37も、低温側冷媒の圧力が異常と判断される状態であり、この場合、制御装置5は、低温側開閉弁212を開き、低温側流量調節弁214を閉じ状態にする。次いで、制御装置5は、ステップS38において低温側第2圧力検出位置LP2での低温側冷媒の圧力が低温側第3所定値よりも大きい低温側第4所定値を越えたか否か判定する。そして、低温側冷媒の圧力が低温側第4所定値を越えたときには、ステップS39において低温側開閉弁212が閉じられ、処理がステップS31に戻る。一方で、低温側冷媒の圧力が低温側第4所定値を越えない場合には、低温側開閉弁212の開状態が維持される。
【0071】
以上に説明した本実施の形態では、例えば周辺が極高温環境になることに伴い、例えば高温側凝縮器102で凝縮される高温側冷媒の凝縮圧力が高くなり、その結果、高温側圧縮機101が流出させる高温側冷媒の圧力が高温側凝縮器102に悪影響を及ぼす程度に高くなり得る場合に、悪影響を及ぼす程度と見做される高温側冷媒の圧力として定められる高温側第1所定値を基準として、高温側圧縮機101が流出させる高温側冷媒を高温側凝縮器102の下流側にバイパスさせることができる。これにより、高温側凝縮器102に過剰に高圧の冷媒が流入することによる悪影響を回避することができる。また周辺が極低温環境になることに伴い、高温側凝縮器102で凝縮される高温側冷媒の凝縮圧力が低くなり、その結果、高温側蒸発器104における高温側冷媒の蒸発圧力が高温側圧縮機101に悪影響を及ぼす程度に低くなり得る場合に、悪影響を及ぼす程度と見做される高温側冷媒の圧力として定められる高温側第3所定値を基準として、高温側圧縮機101が流出させる高温側冷媒を高温側膨張弁103の下流側にバイパスさせることが可能となる。これにより、高温側冷媒の蒸発圧力を上昇させることで過剰に低圧の高温側冷媒による悪影響を回避することができる。
【0072】
したがって、本実施の形態によれば、環境温度に起因する冷凍機の構成部品の損傷を回避することが可能となり、長期運転の信頼性を向上させることができる。以上、本発明の一実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には各種の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…二元冷凍ユニット
2…水素冷却用流体循環ユニット
3…水素貯蔵部
4…水素流路
5…制御装置
20…循環路
21…熱交換器
22…液送ポンプ
23…タンクユニット
23A…第1蓄熱タンク
23B…第2蓄熱タンク
23C…第3蓄熱タンク
23D…補充用タンク
100…高温側冷凍機
101…高温側圧縮機
102…高温側凝縮器
103…高温側膨張弁
104…高温側蒸発器
105…高温側冷凍回路
110…高温側バイパス回路
111…高温側バイパス流路
112…高温側開閉弁
113…高温側通常流路
114…高温側流量調節弁
116…高温側第1圧力センサ
117…高温側第2圧力センサ
200…低温側冷凍機
201…低温側圧縮機
202…低温側凝縮器
203…低温側膨張弁
204…低温側蒸発器
205…低温側冷凍回路
210…低温側バイパス回路
211…低温側バイパス流路
212…低温側開閉弁
213…低温側通常流路
214…低温側流量調節弁
216…低温側第1圧力センサ
217…低温側第2圧力センサ
S…水素供給システム
HP1…高温側第1圧力検出位置
HP2…高温側第2圧力検出位置
LP1…低温側第1圧力検出位置
LP2…低温側第2圧力検出位置