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特許7357920外装材用の取付部材、外装構造、及びその施工方法
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  • 特許-外装材用の取付部材、外装構造、及びその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】外装材用の取付部材、外装構造、及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/36 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
E04D3/36 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019205902
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021080627
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-180612(JP,A)
【文献】特開平09-184253(JP,A)
【文献】特開2004-036223(JP,A)
【文献】実開昭47-011521(JP,U)
【文献】国際公開第2018/137001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/36
E04F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上フランジ及び下向きリップを備える形鋼からなる構造材に外装材を敷設するための取付部材であって、
上面部と、横状溝と縦状溝を組み合わせた空間部と、前記空間部内に設けられる当接部と、を備える固定部材と、
下端が前記上フランジに着地する脚部と、該脚部の下端前方に位置して前記上フランジ及び前記下向きリップにて形成される角部に係合する隅部状の係合部と、上方に前記外装材が取り付けられる保持部と、を備える本体と、からなり、
前記固定部材の前記上面部前記本体を締着手段にて連結された状態で、前記下向きリップ及び前記上フランジに、前記固定部材の前記空間部を臨ませて回動させることで、前記脚部が前記上フランジに配置されると共に、前記隅部状の係合部が前記角部に係合された状態で、前記締着手段にて締め付けることで、前記固定部材が上昇して前記当接部が前記上フランジの裏面に係着し、前記脚部の下端前記上フランジの表面に押圧されて取り付けられることを特徴とする外装材用の取付部材。
【請求項2】
前記脚部から下方へ延在する垂下片に、前記角部に沿う前記隅部状の係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外装材用の取付部材。
【請求項3】
前記当接部は、前記横状溝の下縁であることを特徴とする請求項1又は2に記載の外装材用の取付部材。
【請求項4】
前記構造材に請求項1~3の何れか一項に記載の取付部材を取り付け、前記保持部に前記外装材を取り付けたことを特徴とする外装構造。
【請求項5】
前記構造材に請求項1~3の何れか一項に記載の取付部材を取り付ける施工法であって、
前記固定部材の前記上面部に前記本体を前記締着手段にて連結した状態で、前記構造材の前記上フランジ及び前記下向きリップに、前記固定部材の前記空間部を臨ませて回動させる第1の工程と、
回動された前記脚部が、前記上フランジに配置されると共に、前記隅部状の係合部が前記角部に係合される第2の工程と、
前記締着手段にて締め付けることによって、前記固定部材が上昇して前記当接部が前記上フランジの裏面に係着し、前記脚部の下端前記上フランジの表面に押圧されて取り付けられる第3の工程と、
からなることを特徴とする外装材用の取付部材の施工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶接にて取り付けるため、工事の音が静かで、溶接による飛び火等の恐れがなく、近隣住民に配慮した工法を実現でき、しかも作業性に優れた外装材用の取付部材、外装構造、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間工事や住宅地における騒音や飛び火による火災等に配慮した工法が望まれており、各種形鋼等からなる躯体を構成する構造材に溶接を行うことなく受け金具等を取り付ける方法として、例えば特許文献1等が提案されている。
この特許文献1に記載の提案は、受金具(本体)と台座を回動可能とし、所定位置で楔(固定用楔部材)を押し込むことで構造材に取り付けられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3313956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この特許文献1の提案は、前記台座を組み付けた受金具(本体)とは別体の楔(固定用楔部材)という部材を用いるため、台座を組み付けた受金具を構造材に取り付けている間に楔が落下する可能性があり、作業上の危険があり、部材管理が面倒であった。また、2部材で構成されるため、作業効率の悪いものであった。また、受金具自体の形状が特殊であるため、製造コストが嵩むという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、1部材として取り扱うことができるため、前述の問題を生ずることがなく、作業性に優れた外装材用取付部材、外装構造、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、少なくとも上フランジ及び下向きリップを備える形鋼からなる構造材に外装材を敷設するための取付部材であって、上面部と、横状溝と縦状溝を組み合わせた空間部と、前記空間部内に設けられる当接部と、を備える固定部材と、下端が前記上フランジに着地する脚部と、該脚部の下端前方に位置して前記上フランジ及び前記下向きリップにて形成される角部に係合する隅部状の係合部と、上方に前記外装材が取り付けられる保持部と、を備える本体と、からなり、前記固定部材の前記上面部前記本体を締着手段にて連結された状態で、前記下向きリップ及び前記上フランジに、前記固定部材の前記空間部を臨ませて回動させることで、前記脚部が前記上フランジに配置されると共に、前記隅部状の係合部が前記角部に係合された状態で、前記締着手段にて締め付けることで、前記固定部材が上昇して前記当接部が前記上フランジの裏面に係着し、前記脚部の下端前記上フランジの表面に押圧されて取り付けられることを特徴とする外装材用の取付部材に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記取付部材において、脚部から下方へ延在する垂下片に、前記角部に沿う前記隅部状の係合部が形成されていることを特徴とする外装材用の取付部材をも提案する。
【0008】
また、本発明は、前記取付部材において、当接部は、横状溝の下縁であることを特徴とする外装材用の取付部材をも提案する。
【0009】
さらに、本発明は、構造材に前記取付部材を取り付け、前記本体の保持部に外装材を取り付けたことを特徴とする外装構造をも提案するものである。
【0010】
また、本発明は、構造材に前記取付部材を取り付ける施工法であって、前記固定部材の上面部に前記本体を締着手段にて連結した状態で、前記構造材の上フランジ及び下向きリップに、前記固定部材の空間部を臨ませて回動させる第1の工程と、回動された前記脚部が、前記上フランジに配置されると共に、前記隅部状の係合部が前記角部に係合される第2の工程と、前記締着手段にて締め付けることによって、前記固定部材が上昇して前記当接部が前記上フランジの裏面に係着し、前記脚部の下端前記上フランジの表面に押圧されて取り付けられる第3の工程と、からなることを特徴とする外装材用の取付部材の施工法をも提案するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外装材用の取付部材は、上フランジ及び下向きリップを備える形鋼からなる構造材に、無溶接にて、具体的には締着手段にて取り付けることができ、深夜等でも工事の音が静かで、飛び火等の恐れがなく、近隣住民に配慮した工法を実現できる。また、取付部材を構成する固定部材も本体も、共に簡易な形状構成であるため、容易に部材を作製できる。さらに、固定部材と本体とを予め組み合わせた一部材として取り扱うことができるため、複数部材から構成される前記従来技術(特許文献1)に比べて作業性に優れ、具体的には部材が落下する可能性がなく、安全に作業ができ、部材管理も容易である。
また、脚部に、構造材の上フランジ及び下向きリップにて形成される角部に係合する隅部状の係合部が形成され、該係合部が前記角部に係合された状態で、締着手段を締め付けるので、この締付作業を安定に行うことができる。
【0012】
特に、脚部から下方へ延在する垂下片に、構造材の上フランジ及び下向きリップにて形成される角部に沿う隅部が形成されている場合には、該隅部が係合部として作用し、該係合部が構造材の角部に対して安定に且つ強固に係合する。
【0013】
また、当接部は、横状溝の下縁である場合には、空間部の形成と当接部との形成とを同時に行える(当接部の形成を別途行う必要がない)ため、固定部材の形状構成が簡易である。
【0014】
さらに、前記外装材用の取付部材を用いた本発明の外装構造は、前述のように構造に対して締着手段にて取り付けられるものであって、簡易構成の部材を用いて強固に且つ容易に施工されるものである。
【0015】
また、前記外装材用の取付部材を用いた本発明の外装構造の施工方法は、固定部材と本体とを予め組み合わせた1部材を所定箇所に次々に取り付けて締め付け固定し、それらの被嵌合部に嵌合させて外装材を敷設できるので、工期が短期間で行われ、無溶接にて取り付けるため、工事の音が静かで、飛び火等の恐れがなく、深夜等でも騒音や火災等を懸念する近隣住民に配慮した工法である。
特に第2の工程にて、構造材の上フランジ及び下向きリップにて形成される角部に隅部状の係合部が係合された安定な状態で、締着手段を締め付ける第3の工程を行うので、作業を安定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)本発明の一実施例である外装材用の取付部材(第1実施例)を構造材に取り付けて外装材を敷設した外装構造を示す断面図、(b)その正面図である。
図2】(a)第1実施例の取付部材を構造材に取り付けた状態(第3の工程前の状態)を示す側面図、(b)その正面図である。
図3】(a)第1実施例の取付部材を形成する本体の下方部分の展開図、(b)本体の上方部分の展開図、(c)固定部材の展開図である。
図4】(a)第1実施例の取付部材を形成する本体の正面図、(b)その上面図、(c)側面図、(d)固定部材の側面図、(e)その上面図、(f)その正面図である。
図5】(a)~(f)第1実施例の取付部材を構造材に取り付ける第1の工程を示す側面図、(g)第2の工程及び第3の工程を行った状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の外装材用の取付部材は、少なくとも上フランジ及び下向きリップを備える形鋼からなる構造材に、外装材を敷設するために用いるものであって、固定部材と本体とからなる。
前記固定部材は、上面部と、横状溝と縦状溝を組み合わせた空間部と、該空間部内に設けられる当接部と、を備える構成である。
この固定部材は、複数部材から構成されるものでもよいが、後述する図示実施例に示すように単一部材から容易に構成できる。
前記本体は、下端が構造材の上フランジに着地する脚部と、該脚部の下端前方に位置して上フランジ及び下向きリップにて形成される角部に係合する隅部状の係合部と、上方に外装材が取り付けられる保持部と、を備える構成である。
この本体は、脚部を形成する下方部材と、保持部を形成する上方部材とを適宜に組み合わせた複数部材からなる構成でもよいが、後述する図示実施例に示すように下方部材と上方部材とを予め溶接して実質的に単一部材とする構成が、容易に施工に供することができる
【0018】
そして、前記固定部材の上面部に前記本体を締着手段にて連結した状態で、前記構造材の下向きリップ及び上フランジに、前記固定部材の前記空間部を臨ませて回動させることで、前記本体の脚部が前記構造材の上フランジに配置されると共に、前記本体の係合部が前記構造材の前記角部に係合され、前記締着手段にて締め付けることで、前記固定部材が上昇して前記当接部が前記構造材の上フランジの裏面に係着し、前記本体の脚部が上フランジの表面に押圧されて取り付けられる。
【0019】
前記固定部材における上面部は、その取付状態において、構造材の上フランジの表面側に位置するものであり、この上面部から上方に締着手段が延在して本体の保持部と連結されている。この締着手段としては、後述する図示実施例のように縦長のボルト杆とナットなどを用いることができ、ボルト杆の下端(頭部)は、上面部(に形成した孔の裏面側)に配置されるが、溶接等で固定されていないので、ナットを緩く螺合することで自重による落下を生じない。なお、ナットを固く(きつく)螺合しておくと、回動による取付に支障を生ずるので、緩く螺合させておく。
【0020】
前記空間部は、前記固定部材に設けられ、構造材の上フランジの側方から遊嵌状に臨ませるものであって、横状溝と縦状溝を組み合わせた略L字状に形成される。この空間部内に当接部が設けられるが、横状溝の下縁である場合には、空間部の形成と当接部との形成とを同時に行え、当接部の形成を別途行う必要がないため、固定部材の形状構成が簡易である。
なお、この当接部は、その取付状態において、構造材の上フランジの裏面に圧着状に当接するが、当初の取付時、即ち前記空間部を構造材に遊嵌状に臨ませた際には、当接していなくてもよい。締着手段による締着の際に、固定部材が引っ張り上げられるように上昇してこの当接部が上フランジの裏面に圧着状に当接する。
【0021】
前記本体における脚部は、前述のように下端が構造材の被固定部に着地するものであって、前述のように下方部材に形成される。この下方部材には、前記脚部の下端前方に位置し、前記構造材の上フランジ及び下向きリップにて形成される角部に係合する係合部も形成される。
この脚部は、その上部に保持部(上方部材)が固定され、前記固定部材の上面部から上方へ延在する前記締着手段(ボルト杆)が貫挿される空間を有するので、後述する図示実施例のように一側方が開放するコ字状の枠体として形成することが望ましい。
また、係合部は、前記脚部から下方へ延在する垂下片に、隅部状に形成することが望ましい。
【0022】
前記保持部は、前述のように上方部材に形成され、上方に外装材が嵌合する被嵌合部を有するものであって、前記固定部材の上面部から上方へ延在する締着手段(ボルト杆)によって連結されている。この締着手段としては、前述のように縦長のボルト杆とナットなどを用いることができ、保持部に設けた貫通孔からボルト杆の上端が突出し、この突出部分にナットが軸着される。
【0023】
前記構成の外装材用の取付部材の被嵌合部に嵌合して保持部に保持される外装材は、被嵌合部に嵌合する嵌合部を備える以外の構成は特に限定するものではない。この外装材用の取付部材は、構造材と直交する桟状に配設されるので、例えば後述する図示実施例のように、隣り合う外装材用の取付部材間が谷部となって、外装材用の取付部材に支持される部分が山部となる連続波状の外装面が構築されるようにしてもよい。
【0024】
前記構造材に、前記構成の取付部材を施工するには、前記固定部材の上面部に前記本体を締着手段にて連結した状態で、前記構造材の上フランジ及び下向きリップに、前記固定部材の空間部を臨ませて回動させる第1の工程と、回動された前記本体の脚部が、前記構造材の上フランジに配置されると共に、前記係合部が角部に係合される第2の工程と、前記締着手段にて締め付けることによって、前記固定部材が上昇して前記当接部が構造材の上フランジの裏面に係着し、前記本体の脚部が上フランジの表面に押圧されて取り付けられる第3の工程と、を行う。
【0025】
前記第1の工程では、前記固定部材の上面部に前記本体を締着手段にて連結した状態で、前記構造材の上フランジ及び下向きリップに、前記固定部材の空間部を臨ませて回動させる。この第1の工程における締着手段は、ボルト杆の先端にナットを緩く取り付けた状態である。
前記第2の工程では、回動された前記本体の脚部が、前記構造材の上フランジに配置されると共に、前記係合部が前記構造材の角部に係合される。この第2の工程では、係合部が角部に係合することで、この取付部材が構造材に強固に取り付けられ、前後方向(流れ方向)への滑りが防止される。
前記第3の工程では、前記締着手段にて締め付けることによって、前記固定部材が上昇して前記当接部が構造材の上フランジの裏面に係着し、前記本体の脚部が上フランジの表面に押圧されて取り付けられる。この第3の工程では、保持部から突出させたボルト杆の上端に軸着したナットを締め付けるが、固定部材が上方へ引っ張り上げられて前記当接部を上フランジの裏面に係着させ、それと共に、本体の脚部が下方へ押し付けられて上フランジの表面に取り付けられる。
【0026】
このような施工法では、工期が短期間で行われ、無溶接にて取り付けるため、工事の音が静かで、飛び火等の恐れがなく、深夜等でも騒音や火災等を懸念する近隣住民に配慮した工法である。
【実施例
【0027】
図1及び図2に示す本発明の一実施例(第1実施例)である外装材用の取付部材(以下、単に取付部材という)1は、リップ溝付きC形鋼からなる構造材4に外装材5を敷設するために用いるものであって、固定部材2と本体3(上方部材3A,下方部材3B)とからなる。
この第1実施例における固定部材2、上方部材3A、下方部材3Bは、図3に示すように何れも平板状鋼板を原料として適宜に打ち抜き加工等を施し、施工以前には図4に示すように何れも略コ字状の成形材として成形している。
【0028】
前記固定部材2は、図3(c)に示す原料鋼板を、図4(d)~(f)に示す成形材として成形したものであって、上面部21と、空間部23と、構造材4の裏面に位置する当接部24とを備え、前記上面部21から上方に締着手段としてのボルト杆2Aが延在するように取り付けられている。このボルト杆2Aの上端は、本体3(上方部材3A)を貫通し、その先端にはナット2Bが緩く螺合されている。
この固定部材2は、下方及び前後方が開放する略コ字状であり、言い換えれば左右の側面(側面部22)と上面(上面部21)とからなり、前記側面部22には、横状溝23aと、縦状溝23bとを組み合わせたL字溝状の空間部23が形成され、該空間部23内に設けられる当接部24は、前記横状溝23aの下縁に相当する。また、その内部には、ボルト杆2Aの下端(頭部)が配設され、上面部21に設けた孔21hから上方へ延在し、下方部材3Bの内部空間30を貫通し、上方部材3Aに設けた孔31hから突出させた上端にナット2Bを螺合させて本体3と一体化している。
【0029】
前記本体3は、図4(a)~(c)に示すように上方部材3Aと下方部材3Bとが、予め一体的に組み付けられており、上方部材3Aには、外装材5が嵌合する被嵌合部321を有する保持部32,32が設けられ、下方部材3Bには、下端34が構造材4の上フランジ41に着地する脚部33と、該脚部33の下端前方に位置して構造材4の上フランジ41及び下向きリップ411にて形成される角部に係合する係合部35とが設けられる。図示実施例の本体3は、前方が開放する略コ字状の下方部材3Bの上端を、上方が開放する略コ字状の上方部材3Aの底面部31と溶接(図中に示すWが溶接部分を示す)して連結している。
【0030】
前記保持部32は、図3(b)に示す原料鋼板を、上方が開放する略コ字状に成形された上方部材3Aに設けられ、底面部31の前後両面に対向状に立ち上がる略イチョウ葉状であって、左右に突出する凸部及びその下方の凹部が被嵌合部321であり、中央上端に形成された矩形状の空間が被嵌合溝322である。
この保持部32(上方部材3A)は、前記固定部材2の上面部21と締着手段によって連結されている。具体的には、前記上面部21の裏面側に下端(頭部)が配置されたボルト杆2Aが、上面部21の孔21hから上方へ延在し、下方部材3Bの内部空間30を貫通し、底面部31に設けた孔31hから突出させた上端にナット2Bを緩く螺合させて前記固定部材2と連結されている。
【0031】
前記脚部33は、図3(a)に示す原料鋼板を、前方が開放する略コ字状に成形された下方部材3Bに設けられ、その上端を、前記上方部材3Aの底面部31と溶接して連結しており、その下端34が構造材4の上フランジ41に着地する。この脚部33を構成する左右側面及び後面で囲まれる内部空間30は、前記底面部31の下方に位置し、締着手段であるボルト杆2Aが縦方向に貫通している。
【0032】
前記係合部351は、前記脚部33の下端前方に位置して構造材4の上フランジ41及び下向きリップ411にて形成される角部に係合するものであり、この第1実施例では、脚部33の下端から更に下方へ延在する垂下片35に、隅部状に形成されているので、角部に対して安定に且つ強固に係合する。
【0033】
このような構成の取付部材1を取り付ける構造材4は、前述のようにリップ溝付きC形鋼であって、縦ウエブ42の上下端にフランジ41,43を有するものであって、各フランジ41,43の先端に内側へ向かう縦片411,431が設けられた構成である。
【0034】
また、前記取付部材1に取り付ける外装材5は、隣り合う取付部材1,1間に配設されるものであって、略平坦状の面板部51の左右端縁を傾斜状に立ち上げた側縁成形部52,52を、取付部材1の保持部32に保持させて敷設されるものである。
図示実施例の外装材5は、図1(b)に示すように側縁成形部52の途中に、取付部材1の被嵌合部321と嵌合する略Z字状の嵌合部521を有し、その上方に延在する折り曲げ傾斜面が裏面側を保持部32の上端に支持される被支持部522であり、更にその上端に断面略U字状の第二嵌合部523を有する。
また、隣接する外装材5,5間には、カバー材6が取り付けられて外装面を構築しているが、このカバー材6は、略傘状の覆い部61の左右側縁に前記嵌合部521の裏面側に嵌合する嵌合保持部62,62を備える。
【0035】
この外装構造は、隣り合う取付部材1,1間に前記外装材5が配され、外装材5の側縁成形部52,52の嵌合部521,521が取付部材1の被嵌合部321に嵌合されて敷設されている。その際、外装材5の被支持部522が保持部32の上端に支持され、更に左右の外装材5,5の第二嵌合部523,523が保持部32の被嵌合溝322に嵌合させて取り付けられている。
更に、前記構成のカバー材6が、その嵌合保持部62,62を外装材5,5の嵌合部521,521の裏面側に嵌合されて取り付けられている。
【0036】
以下に、この取付部材1をリップ溝付きC形鋼である構造材4に取り付ける手順について図5に示す例に基づいて説明する。
予め、前記構成の上方部材3Aと下方部材3Bとを溶接にて一体化させて本体3とすると共に、該本体3を、締着手段(ボルト杆2A及びナット2B)を用いて固定部材2と連結させておく。
【0037】
まず、図5(a)は、構造材4の下向き片411に対し、前記取付部材1を略90度寝かせた状態で空間部23を臨ませ、下方から上方へ略垂直状に持ち上げて挿着状に配設させている。
次に、図5(b)は、下向き片411が空間部23に位置する状態を維持させつつ取付部材1を回動させ、順に図5(c)、図5(d)、図5(e)、図5(f)と、回動させているが、このような回動を可能としているのは、L字状の上フランジ41及び下向き片411に対し、空間部23が、それぞれ広幅の横状溝23aと縦状溝23bとを組み合わせているばかりでなく、その交差部を切欠しているからである。
これらの図5(a)~図5(f)は、全て構造材4の上フランジ41及び下向きリップ411に、固定部材2の空間部23を臨ませて回動させる第1の工程に相当する。
そして、図5(g)は、取付部材1が上フランジ41上に載置される状態まで回動させると共に下方部材3Bに形成した係合部351が角部に係合される第2の工程と、続く第3の工程とを示している。
即ちナット2Bを締め付けることによって、固定部材2が引っ張り上げられるように上昇して当接部24が上フランジ41の裏面に係着し、逆に下方部材3Bの脚部33の下端34を下方へ押し下げて上フランジ41の表面に押圧されて取り付けられている。
【0038】
なお、前述のように図5(g)では、第2の工程と第3の工程とを連続的に行った状態を示しているが、第3の工程を行う前の状態については、図2(a)、(b)に示している。
即ちこの図2(a)、(b)では、取付部材1が上フランジ41上に載置され、係合部351が角部に係合されているが、第3の工程におけるナット2Bの締め付けは行っていない。
この状態では、取付部材1には締着手段(ボルト杆2Aとナット2B)の作用が働いていないので、自重で上フランジ41上に載置しているに過ぎず、例えば挿通している孔21h、31hの径が大きければ、ボルト杆2Aとナット2Bを、手動で上下させることができる。
この状態から第3の工程におけるナット2Bの締め付けを行うと、ボルト杆2Aの下端(頭部)が固定部材2の上面部21の裏面に当接するまで引っ張り上げられ、当接部24が上フランジ41の裏面に係着すると共に、下方部材3Bの脚部33の下端34を下方へ押し下げて上フランジ41の表面に押圧して取り付ける。
【0039】
このように本発明の取付部材1は、無溶接にて、具体的には締着手段にて取り付けるため、深夜等でも工事の音が静かで、飛び火等の恐れがなく、近隣住民に配慮した工法である。
また、作業者は、予め締着手段(ボルト杆2A+ナット2B)にて組み付けられた実質的に一部材である取付部材1(固定部材2+本体3)を構造材4上に持ち運んで作業すればよいので、複数部材を持ち込む必要がある前記従来技術(特許文献1)に比べて極めて作業性に優れている。
【0040】
こうして施工される外装構造は、前記取付部材1を用いたので、工期が短期間で行われ、無溶接にて取り付けるため、工事の音が静かで、飛び火等の恐れがなく、深夜等でも騒音や火災等を懸念する近隣住民に配慮したものである。
【符号の説明】
【0041】
1 (外装材用)取付部材
2 固定部材
21 上面部
21h 孔
22 側面部
23 空間部
23a 横状溝
23b 縦状溝
24 当接部
2A ボルト杆(締着手段)
2B ナット(締着手段)
3 本体
3A 上方部材
3B 下方部材
32 保持部
321 被嵌合部
322 被嵌合溝
33 脚部
34 下端
35 垂下片
351 係合部
4 構造材
41 上フランジ
411 下向き片
5 外装材
51 面板部
52 側縁成形部
521 嵌合部
522 被支持部
523 第二嵌合部
6 カバー材
62 嵌合保持部
図1
図2
図3
図4
図5