(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物及びコールドスタンピング加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20231002BHJP
C08F 16/32 20060101ALI20231002BHJP
C08F 20/40 20060101ALI20231002BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20231002BHJP
【FI】
B41M5/00 700
B41M5/00 100
B41M5/00 120
C08F16/32
C08F20/40
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2021044805
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391001505
【氏名又は名称】アジア原紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】国保 怜
(72)【発明者】
【氏名】田中 和弘
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177023(JP,A)
【文献】特表2020-525620(JP,A)
【文献】特開2008-201917(JP,A)
【文献】特開2020-055987(JP,A)
【文献】特開2018-044163(JP,A)
【文献】特開2017-177353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、16/32、20/40
B41M 5/00-5/03、5/04-5/10、
5/50-5/52、99/00
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドスタンピング加工の用途に用いられ、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
前記コールドスタンピング加工は、基材に前記活性エネルギー線硬化型組成物を塗布することで前記基材に塗布層を形成する塗布層形成工程と、
前記塗布層に活性エネルギー線を照射することで流動性を低下させた低流動性膜を得る第1照射工程と、
転写用基材を前記低流動性膜に積層させることで、前記転写用基材の転写層と前記低流動性膜が接触した積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体の前記低流動性膜に活性エネルギー線を照射することで、前記低流動性膜を硬化させた硬化膜を形成する第2照射工程と、を備え、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、
(A)ラジカル重合性化合物、及び(B)光重合開始剤を含有し、
前記(A)ラジカル重合性化合物は、(A1)第1重合性化合物、及び(A2)第2重合性化合物の少なくとも一方の重合性化合物を含み、
前記(A1)第1重合性化合物は、ビニルエーテル基及びアリルエーテル基の少なくとも一方のエーテル基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であり、
前記(A2)第2重合性化合物は、芳香族骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であり、
前記(B)光重合開始剤は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物を含み、
前記活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、2.0質量%以上、11.0質量%以下の範囲内である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記(A)ラジカル重合性化合物は
、(A3)第3重合性化合
物を含み
、
前記(A3)第3重合性化合物は、アルカンジオール(メタ)アクリレート化合物、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、及びアルコキシ化アルカンジオール(メタ)アクリレート化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記(B)光重合開始剤は、(B2)硫黄系化合物をさらに含み、
前記(B2)硫黄系化合物は、スルホン系化合物及びチオベンゾイル系化合物の少なくとも一方である、請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記(B)光重合開始剤は、(B3)チオキサントン系化合物をさらに含み、
前記活性エネルギー線硬化型組成物中における(B3)チオキサントン系化合物の含有量は、0.8質量%以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
(C)アミン系化合物をさらに含有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
前記(C)アミン系化合物は、(C1)アミノ変性化合物及び(C2)芳香族アミン系化合物の少なくとも一方を含み、前記(C1)アミノ変性化合物は、アミノ変性アクリレートオリゴマー及びアミノ変性アクリレートポリマーの少なくとも一方である、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
前記(A)ラジカル重合性化合物の官能基数は、1~3である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料を含まない、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項9】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、インクジェット印刷用途に用いられる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項10】
活性エネルギー線硬化型組成物を用いてコールドスタンピング加工品を製造するコールドスタンピング加工品の製造方法であって、
基材に前記活性エネルギー線硬化型組成物を塗布することで前記基材に塗布層を形成する塗布層形成工程と、
前記塗布層に活性エネルギー線を照射することで流動性を低下させた低流動性膜を得る第1照射工程と、
転写用基材を前記低流動性膜に積層させることで、前記転写用基材の転写層と前記低流動性膜が接触した積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体の前記低流動性膜に活性エネルギー線を照射することで、前記低流動性膜を硬化させた硬化膜を形成する第2照射工程と、を備え
、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、
(A)ラジカル重合性化合物、及び(B)光重合開始剤を含有し、
前記(A)ラジカル重合性化合物は、(A1)第1重合性化合物、及び(A2)第2重合性化合物の少なくとも一方の重合性化合物を含み、
前記(A1)第1重合性化合物は、ビニルエーテル基及びアリルエーテル基の少なくとも一方のエーテル基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であり、
前記(A2)第2重合性化合物は、芳香族骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であり、
前記(B)光重合開始剤は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物を含み、
前記活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、2.0質量%以上、11.0質量%以下の範囲内である、コールドスタンピング加工品の製造方法。
【請求項11】
前記第1照射工程及び前記第2照射工程で用いる活性エネルギー線は、いずれも280nm以上、420nm以下の範囲内の波長を有する、請求項10に記載のコールドスタンピング加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物及びコールドスタンピング加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、文字等が記録された記録物の意匠及び訴求性を向上させるために、記録物の表面に金属箔やホログラム等の特殊な光学特性を有する層が設けられる場合がある。このような特殊な光学特性を有する層を設ける方法としては、特殊な光学特性を有する層を記録物の表面に転写させるコールドスタンピング加工が知られている。コールドスタンピング加工では、記録物の表面に接着層を配置し、さらに接着層上に転写用基材を配置する。転写用基材は、基材シートと基材シート上に積層された転写層とを有している。この転写層を接着層に転写させることにより、転写層を有する記録物を得ることができる。このようなスタンピング加工の接着層を得る組成物としては、特許文献1,2に開示されるように、活性エネルギー線硬化型組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-525620号公報
【文献】特開2009-226880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコールドスタンピング加工において、活性エネルギー線硬化型組成物から得られる硬化膜には、転写用基材の転写層がより高精度で転写されることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様では、コールドスタンピング加工の用途に用いられ、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型組成物であって、(A)ラジカル重合性化合物、及び(B)光重合開始剤を含有し、前記(B)光重合開始剤は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物を含み、前記活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、2.0質量%以上、11.0質量%以下の範囲内である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コールドスタンピング加工における転写精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】コールドスタンピング加工における転写性の評価方法を説明する図であり、(a)は、塗布層付き基材を示す平面図であり、(b)は、低流動性膜付き基材を示す平面図である。
【
図2】(a)は、第1積層体を示す平面図であり、(b)は、第2積層体を示す平面図である。
【
図3】(a)は、評価用試料を示す平面図であり、(b)は、評価用試料を拡大した画像を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、活性エネルギー線硬化型組成物及びコールドスタンピング加工品の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、コールドスタンピング加工の用途に用いられる。活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する。活性エネルギー線硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性化合物、及び(B)光重合開始剤を含有する。
【0009】
<(A)ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は、活性エネルギー線が照射されると重合反応により硬化する化合物である。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)、及び電子線(EB)が挙げられる。
【0010】
ラジカル重合性化合物は、単官能基又は多官能基を有するラジカル重合性化合物であり、モノマーであってもよいし、オリゴマーであってもよい。
単官能基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレートが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ブチルシクロヘキサノールアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β-カルボキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレートが挙げられる。
【0011】
多官能基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリジプロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0012】
多官能基を有するラジカル重合性化合物としては、さらに、例えば、トリアクリレート、テトラアクリレート、ヘキサアクリレート、及びオリゴアクリレートが挙げられる。トリアクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。テトラアクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。ペンタアクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレートが挙げられる。ヘキサアクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。オリゴアクリレートとしては、例えば、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、及びペンタエリスリトールオリゴアクリレートが挙げられる。
【0013】
さらに、ラジカル重合性化合物としては、例えば、上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、環状又は直鎖状の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
ラジカル重合性化合物は、一種類又は二種類以上を使用することができる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
ラジカル重合性化合物の官能基数は、活性エネルギー線硬化型組成物を低粘度化するという観点から、1~3であることが好ましい。
【0015】
ラジカル重合性化合物は、下記(A1)第1重合性化合物、(A2)第2重合性化合物、及び(A3)第3重合性化合物から選ばれる少なくとも一種の重合性化合物を含むことが好ましい。この場合、活性エネルギー線の照射による反応性に優れるとともに、スタンピング加工の際に適度な柔軟性を有する硬化膜が得られ易くなる。
【0016】
(A1)第1重合性化合物は、ビニルエーテル基及びアリルエーテル基の少なくとも一方のエーテル基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。(A2)第2重合性化合物は、芳香族骨格を有する(メタ)アクリレート化合物である。(A3)第3重合性化合物は、アルカンジオール(メタ)アクリレート化合物、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、及びアルコキシ化アルカンジオール(メタ)アクリレート化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0017】
(A1)第1重合性化合物としては、例えば、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、商品名:VEEA)、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、商品名:VEEM)、及び2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル(日本触媒社製、商品名:AOMA(FX-AO-MA))が挙げられる。
【0018】
(A2)第2重合性化合物としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレンポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
(A3)第3重合性化合物としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びアルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
活性エネルギー線硬化型組成物中におけるラジカル重合性化合物の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中における重合性化合物の含有量は、98質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは89質量%以下である。
【0021】
<(B)光重合開始剤>
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりラジカル重合性化合物の重合反応を開始させる。光重合開始剤としては、光ラジカル重合型の光重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合型の光重合開始剤としては、例えば、分子内開裂型の光重合開始剤、及び水素引き抜き型の光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、一種類又は二種類以上を使用することができる。
【0022】
(B)光重合開始剤は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物を含む。(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、及びフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニル)ホスフィンオキシドが挙げられる。(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物は、一種類又は二種類以上を使用することができる。
【0023】
活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、2.0質量%以上、11.0質量%以下の範囲内であり、好ましくは2.3質量%以上、8.5質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは2.6質量%以上、7.0質量%以下の範囲内である。活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量が2.0質量%以上の場合、塗布層に活性エネルギー線を照射することにより塗布層の流動性を低下させ易くなる。このように塗布層の流動性を低下させることで得られる低流動性膜は、転写用基材を塗布層上に配置したとき、形状が保持され易い。一方、活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量が11.0質量%以下の場合、塗布層に活性エネルギー線を照射したとき、塗布層の硬化が急激に進行することを抑えることができる。これにより、低流動性膜の柔軟性や粘着性が維持され易くなるため、転写性を向上させることができる。
【0024】
(B)光重合開始剤は、(B2)硫黄系化合物をさらに含むことが好ましい。(B2)硫黄系化合物は、スルホン系化合物及びチオベンゾイル系化合物の少なくとも一方である。スルホン系化合物としては、例えば、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン、及びトリブロモメチルフェニルスルホンが挙げられる。チオベンゾイル系化合物としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル4´-メチルジフェニルスルフィド、及び1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)が挙げられる。
【0025】
活性エネルギー線硬化型組成物中における(B2)硫黄系化合物の含有量は、0.4質量%以上であることが好ましい。この場合、塗布層に活性エネルギー線を照射することにより塗布層の流動性を低下させ易くなる。
【0026】
(B)光重合開始剤は、(B3)チオキサントン系化合物をさらに含むことが好ましい。(B3)チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、及び2-イソプロピルチオキサントンが挙げられる。活性エネルギー線硬化型組成物中における(B3)チオキサントン系化合物の含有量は、0.8質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0027】
光重合開始剤は、必要に応じて、上記以外の化合物を含んでいてもよい。光重合開始剤における上記以外の化合物としては、アルキルフェノン系化合物、イミダゾール系化合物、及びトリアジン系化合物が挙げられる。但し、光重合開始剤としては、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化した硬化膜の色調に影響を与え難いものを選択して用いることが好ましい。特に、着色剤を含まない透明な硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型組成物の場合、硬化膜の黄変等の着色の要因とならない光重合開始剤を選択して用いることが好ましい。
【0028】
アルキルフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-{2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル}-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが挙げられる。
【0029】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2´-ビス(2-クロロフェニル)-4,4´,5,5´-テトラフェニル-1,2´-ビイミダゾール、2,2´-ビス(2-クロロフェニル)-4,4´,5,5´-テトラフェニル-1,2´-ビイミダゾール、及び2,2´,4-トリス(2-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-4´,5´-ジフェニル-1,1´-ビイミダゾールが挙げられる。
【0030】
トリアジン系化合物としては、例えば、2-[2-(4-メトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、及び2-[4´-エチル(1,1´-ビフェニル)-4-イル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0031】
活性エネルギー線硬化型組成物中における光重合開始剤の含有量は、2.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2.3質量%以上であり、さらに好ましくは2.6質量%以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中における光重合開始剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは18質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0032】
<上記以外の成分>
活性エネルギー線硬化型組成物は、(C)アミン系化合物を含有することが好ましい。
(C)アミン系化合物としては、例えば、(C1)アミノ変性化合物、(C2)芳香族アミン系化合物、及び(C3)脂肪族アミン系化合物が挙げられる。
【0033】
(C1)アミノ変性化合物は、アミノ変性アクリレートオリゴマー及びアミノ変性アクリレートポリマーの少なくとも一方である。(C1)アミノ変性化合物としては、例えば、ダイセル・オルネクス社製の市販品(商品名:EBECRYL80、EBECRYL7100)、東亜合成社製の市販品(商品名:アロンDA)、KJケミカルズ社製の市販品(商品名:DMAPAA)、RAHN社製の市販品(商品名:GENOMER5142、GENOMER5161、GENOMER5271、GENOMER5275、GENOMER5695)、及びサートマー社製の市販品(商品名:CN383、CN371NS、CN386、CN549NS、CN550、CN551NS、CN373)が挙げられる。
【0034】
(C2)芳香族アミン系化合物としては、例えば、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、{α-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ(オキシエチレン)-ポリ〔オキシ(1-メチルエチレン)〕-ポリ(オキシエチレン)}4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート、ポリ(エチレングリコール)ビス(p-ジメチルアミノベンゾエート)、N,N-ジメチルベンジルアミン、(メチルアミノ)ジエタン-2,1-ジイルビス〔4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート〕、及び4,4´-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが挙げられる。
【0035】
(C3)脂肪族アミン系化合物としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンが挙げられる。
(C)アミン系化合物は、(C1)アミノ変性化合物及び(C2)芳香族アミン系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化型組成物中における(C)アミン系化合物の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(C)アミン系化合物の含有量は、20質量%以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(C)アミン系化合物の含有量は、0.5質量%以上、15質量%以下の範囲内であることがより好ましくは、さらに好ましくは1.0質量%以上、10質量%以下の範囲内である。
【0037】
活性エネルギー線硬化型組成物には、ポリマーを含有させることもできる。ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエステル樹脂が挙げられる。ポリマーは、一種類又は二種類以上を使用することができる。
【0038】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸n-ブチルとの共重合体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、三菱レイヨン社製の市販品(商品名:ダイヤナールBR、ダイヤナールHR、ダイヤナールHW、ダイヤナールLP、ダイヤナールLR、ダイヤナールLW、ダイヤナールLX、ダイヤナールSE)、日立化成工業社製の市販品(商品名:ヒタロイド7975、ヒタロイド7988、ヒタロイド7975D)、根上工業社製の市販品(商品名:ハイパールM-4006、ハイパールM-4501、ハイパールM-5000、ハイパールM-5001)、及び荒川化学社製の市販品(商品名:ビームセット243NS、ビームセット255、ビームセット261、ビームセット271)が挙げられる。
【0040】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等が挙げられる。
ケトン樹脂としては、例えば、ケトン・アルデヒド縮合樹脂、ホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物を反応させて得られたケトン樹脂、及びウレタン変性ケトン樹脂が挙げられる。ケトン樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製の市販品(商品名:K-90)、EVONIK Industries AG社製の市販品(商品名:VariPlus AP、VariPlus SK、VariPlus 1201TF、VariPlus CA)が挙げられる。
【0041】
ジアリルフタレート樹脂としては、例えば、大阪ソーダ社製の市販品(商品名:ダイソーダップ、ダイソーイソダップ、ダイソーダップモノマー、ダイソーダップ100モノマー)が挙げられる。
【0042】
塩素化ポリオレフィン樹脂としては、例えば、日本製紙社製の市販品(スーパークロン814HS、スーパークロン390S)、及び東洋紡社製の市販品(商品名:ハードレン13-LLP、ハードレン15-LLP)が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、例えば、日信化学工業社製の市販品(商品名:ソルバインCL、ソルバインCNL、ソルバインC5R、ソルバインTA5R)、及びカネカ社製の市販品(商品名:カネビニールMシリーズ、カネビニールHMシリーズ、カネビニールT5シリーズ)が挙げられる。
【0043】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、積水化学工業社製の市販品(商品名:エスレックB、エスレックKX、エスレックKW)が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、高松油脂社製の市販品(商品名:ペスレジンAシリーズ、ペスレジンSシリーズ)、及び東洋紡社製の市販品(商品名:バイロン103、バイロン200、バイロン220)が挙げられる。
【0044】
活性エネルギー線硬化型組成物中におけるポリマーの含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは3質量部以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中におけるポリマーの含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0045】
活性エネルギー線硬化型組成物には、表面張力調整剤を含有させることもできる。表面張力調整剤は、活性エネルギー線硬化型組成物の表面張力を所定の範囲に調整可能な化合物である。表面張力調整剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性シリコーンオイル、及び有機溶剤が挙げられる。
【0046】
イオン性界面活性剤のアニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ベンゼンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、ポリオキシエチレン硫酸エステル塩類、及びリン酸エステル塩類が挙げられる。
【0047】
脂肪酸塩類としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、及び半硬化牛脂脂肪酸ナトリウムが挙げられる。
アルキル硫酸エステル塩類としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、及びオクタデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0048】
ベンゼンスルホン酸塩類としては、例えば、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0049】
ナフタレンスルホン酸塩類としては、例えば、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、及びナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
スルホコハク酸エステル塩類としては、例えば、スルホコハク酸ジドデシルナトリウム、及びスルホコハク酸ジオクタデシルナトリウムが挙げられる。
【0050】
ポリオキシエチレン硫酸エステル塩類としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0051】
リン酸エステル塩類としては、例えば、ドデシルリン酸カリウム、及びオクタデシルリン酸ナトリウムが挙げられる。
イオン性界面活性剤のカチオン性界面活性剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。第四級アンモニウム塩類としては、例えば、酢酸オクタデシルアンモニウム、ヤシ油アミン酢酸塩等のアルキルアミン塩類、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、及び塩化ドデシルベンジルジメチルアンモニウムが挙げられる。
【0052】
イオン性界面活性剤の両性イオン性活性剤としては、例えば、アルキルベタイン類、及びアミンオキシド類が挙げられる。アルキルベタイン類としては、例えば、ドデシルベタイン、及びオクタデシルベタインが挙げられる。アミンオキシド類としては、例えば、ドデシルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル類、オキシラン重合体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビトール脂肪酸エステル類、及びグリセリン脂肪酸エステル類が挙げられる。
【0054】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、及びポリオキシエチレン(9-オクタデセニル)エーテルが挙げられる。
【0055】
ポリオキシエチレンフェニルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。
オキシラン重合体類としては、例えば、ポリ酸化エチレン、及びコ-ポリ酸化エチレン酸化プロピレンが挙げられる。
【0056】
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、ソルビタンドデカン酸エステル、ソルビタンヘキサデカン酸エステル、ソルビタンオクタデカン酸エステル、ソルビタン(9-オクタデセン酸)エステル、ソルビタン(9-オクタデセン酸)トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンドデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9-オクタデセン酸)エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン(9-オクタデセン酸)トリエステルが挙げられる。
【0057】
ソルビトール脂肪酸エステル類としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビトール(9-オクタデセン酸)テトラエステルが挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、グリセリンオクタデカン酸エステル、グリセリン(9-オクタデセン酸)エステルが挙げられる。
【0058】
変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチレン変性シリコーンオイル、オレフィン変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、及びアルキル変性シリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルの中でも、活性エネルギー線硬化型組成物に対して良好な溶解性を示すことから、各種有機基を導入した変性シリコーンオイルを使用することが好ましい。各種有機基を導入した変性シリコーンオイルとしては、例えば、末端(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、末端エポキシ変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0059】
変性シリコーンオイルは、基材に形成した硬化膜の表面に過剰にブリードすることがない。このため、硬化膜の表面のべたつきや、硬化膜の表面を通してのオイルの移行を抑えることができる。変性シリコーンオイルの中でも、活性エネルギー線硬化性の照射により硬化する化合物が好ましく、例えば、シリコーンポリエーテルアクリレート、及びポリエーテル変性シロキサンコポリマー及びエポキシ変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0060】
有機溶剤としては、例えば、エステル類、ケトン類、環状エーテル類、アミド類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、ジエチレングリコールエステル類、脂肪族炭化水素類、及びアルコール類が挙げられる。
【0061】
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0062】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、及びジオキサンが挙げられる。アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0063】
芳香族炭化水素類としては、例えば、キシレン、トルエン、及びソルベントナフサが挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、及びエチルセロソルブが挙げられる。
【0064】
ジエチレングリコールエステル類としては、例えば、カルビトールアセテートが挙げられる。
脂肪族炭化水素類としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、及びミネラルスピリットが挙げられる。
【0065】
アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、及びプロピルアルコールが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型組成物中における表面張力調整剤の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中における表面張力調整剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
【0066】
活性エネルギー線硬化型組成物には、重合禁止剤を含有させることもできる。重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ニトロソアミン系化合物、ヒドロキノン系化合物、ベンゾキノン系化合物、リン系化合物、及び硫黄系化合物が挙げられる。
【0067】
活性エネルギー線硬化型組成物には、フィラーを含有させることもできる。フィラーを含有させることにより、硬化膜の表面の滑り性や耐擦過性を高めることができる。また、フィラーを含有させることにより、艶消しの硬化膜を得ることができる。フィラーとしては、例えば、体質顔料、及び樹脂ビーズが挙げられる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、球状シリカ、及び中空シリカが挙げられる。
【0068】
活性エネルギー線硬化型組成物には、着色成分を含有させることもできる。着色成分としては、例えば、顔料及び染料が挙げられる。顔料は、有機顔料であってもよいし、無機顔料であってもよい。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、及び炭酸カルシウムが挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系赤色顔料、イソインドリノン系顔料、ピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キノフタロン系有機顔料、及びイソインドリン系顔料が挙げられる。染料としては、例えば、直接染料、反応染料、酸性染料、カチオン染料、ナフトール染料、及び分散染料が挙げられる。
【0069】
活性エネルギー線硬化型組成物にフィラーや着色成分を含有させる場合、必要に応じて分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えば、高分子型分散剤、及び低分子型分散剤が挙げられる。
【0070】
活性エネルギー線硬化型組成物は、コールドスタンピング加工における転写精度をより高めるという観点から、顔料を含まないことが好ましい。
<活性エネルギー線硬化型組成物が適用される基材>
活性エネルギー線硬化型組成物が適用される基材は、特に限定されない。基材としては、例えば、紙基材、樹脂基材、金属基材、ガラス基材、ゴム基材、及びセラミックス基材が挙げられる。紙基材としては、例えば、コート紙、アート紙、微塗工紙、上質紙、及び合成紙が挙げられる。樹脂基材の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及び塩化ビニル樹脂が挙げられる。樹脂基材の形状としては、例えば、フィルム、シート、プレート、及びその他の成形物が挙げられる。金属基材の金属としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、及び銅が挙げられる。金属基材の形状としては、例えば、プレート、及びその他の成形物が挙げられる。
【0071】
活性エネルギー線硬化型組成物が適用される基材は、例えば文字、写真、イラスト、図、又は記号等の情報が記録された記録物であってもよい。情報の記録方法は、特に限定されない。情報の記録方法としては、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、トナー印刷、フレキソ印刷、昇華印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布、及び刷毛、筆塗布が挙げられる。
【0072】
基材は、異種材料が複合された基材であってもよい。異種材料が複合された基材としては、例えば、金属やセラミックスを樹脂フィルムに蒸着した蒸着フィルムが挙げられる。
<コールドスタンピング加工品の製造方法>
次に、コールドスタンピング加工品の製造方法について説明する。コールドスタンピング加工品の製造方法では、上記活性エネルギー線硬化型組成物を用いる。コールドスタンピング加工品の製造方法は、塗布層形成工程と、第1照射工程と、積層体形成工程と、第2照射工程とを備えている。
【0073】
塗布層形成工程では、基材に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布することで基材に塗布層を形成する。基材上に塗布層を形成する方法としては、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、ロールコーター印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布、及び刷毛塗布が挙げられる。本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、インクジェット印刷用途に好適に用いることができる。
【0074】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を基材に塗布した塗布層は、描画する形状、用途等に応じて厚さを適宜選択でき、例えば、100μm以下であってもよく、85μm以下であってもよい。このような厚さの塗布層はインクジェット印刷によって基材に塗布することで容易に形成することができる。
【0075】
第1照射工程では、塗布層に活性エネルギー線を照射することで流動性を低下させた低流動性膜を得る。積層体形成工程では、転写用基材を低流動性膜に積層させることで、転写用基材の転写層と低流動性膜が接触した積層体を形成する。
【0076】
第2照射工程では、積層体の低流動性膜に活性エネルギー線を照射することで、低流動性膜を硬化させた硬化膜を形成する。活性エネルギー線は、転写用基材を透過させて低流動性膜に照射される。
【0077】
第1照射工程で用いる活性エネルギー線の波長と、第2照射工程で用いる活性エネルギー線の波長とは、互いに同じ波長であってもよいし、互いに異なる波長であってもよい。第1照射工程及び第2照射工程で用いる活性エネルギー線は、いずれも280nm以上、420nm以下の範囲内の波長を有することが好ましい。第1照射工程及び第2照射工程で用いる活性エネルギー線は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物をより選択的に反応させることができるという観点から、350nm以上、420nm以下の範囲内であってもよい。
【0078】
コールドスタンピング加工品の製造方法では、転写用基材の転写層を積層体の硬化膜に接着してなるコールドステンピンク加工品を得ることができる。このコールドスタンピング加工品の製造方法では、基材シートと、基材シートから剥離可能な転写層とを有する転写用基材を用いる。転写用基材の転写層としては、例えば、金属蒸着層、及びホログラム層が挙げられる。転写用基材の材質及び形状は、特に限定されない。この転写用基材を用いるコールドスタンピング加工品の製造方法は、上記第2照射工程の後に、積層体から基材シートを剥離する工程を備える。これにより、基材と硬化膜と転写層とを有するコールドスタンピング加工品が得られる。また、コールドスタンピング加工品の製造方法では、転写用基材の転写層の表面形状を積層体の硬化膜に転写してなるコールドスタンピング加工品を得ることもできる。このコールドスタンピング加工品の製造方法では、基材シートと、硬化膜に凹凸形状を転写する鋳型となる転写層とを有する転写用基材を用いる。転写用基材の材質、全体形状、及び転写層の凹凸形状は、特に限定されない。この転写用基材を用いるコールドスタンピング加工品の製造方法は、上記第2照射工程の後に、積層体から転写用シートを剥離する工程を備える。これにより、基材と、表面に凹凸形状が転写された硬化膜とを有するコールドスタンピング加工品が得られる。
【0079】
<本実施形態の作用及効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)活性エネルギー線硬化型組成物は、コールドスタンピング加工の用途に用いられ、活性エネルギー線の照射により硬化する。活性エネルギー線硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性化合物、及び(B)光重合開始剤を含有する。(B)光重合開始剤は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物を含む。活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、2.0質量%以上、11.0質量%以下の範囲内である。
【0080】
この構成によれば、コールドスタンピング加工における転写精度を高めることが可能となる。詳述すると、上記のように、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量が2.0質量%以上の場合、塗布層に活性エネルギー線を照射することにより塗布層の流動性を低下させ易くなる。このように塗布層の流動性を低下させることで得られる低流動性膜は、転写用基材を塗布層上に配置したとき、形状が保持され易い。一方、上記のように(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量が11.0質量%以下の場合、塗布層に活性エネルギー線を照射したとき、塗布層の硬化が急激に進行することを抑えることができる。これにより、低流動性膜の柔軟性や粘着性が維持され易くなるため、転写性を向上させることができる。これにより、例えば、繊細な形状をコールドスタンピング加工する場合であっても、細部にわたって転写用基材と密着し、転写用基材の転写層の接着不良や転写層の凹凸形状の転写異常が発生し難くなる。すなわち、塗布層の外形に沿った高精度の転写を実現することが可能となる。
【0081】
また、活性エネルギー線硬化型組成物に含有される(A)ラジカル重合性化合物は、カチオン重合性化合物よりも安価で汎用性が高い。このため、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物では、比較的高価なカチオン重合性化合物やカチオン重合性化合物を重合させるための光酸発生剤の使用量を削減することが可能となる。これにより、コールドスタンピング加工品のコストを削減することが可能となる。
【0082】
(2)(A)ラジカル重合性化合物は、上述した(A1)第1重合性化合物、(A2)第2重合性化合物、及び(A3)第3重合性化合物から選ばれる少なくとも一種の重合性化合物を含むことが好ましい。この場合、活性エネルギー線の照射による反応性に優れ、活性エネルギー線の照射により得られた低流動性膜の柔軟性を高めることが可能となる。従って、コールドスタンピング加工における転写精度をより高めることが可能となる。
【0083】
(3)(B)光重合開始剤は、上述した(B2)硫黄系化合物をさらに含むことが好ましい。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物の塗布層の厚さが比較的薄い場合であっても、良好な硬化性を得ることが可能となる。このため、例えば、インクジェット印刷により塗布層を形成するインクジェット印刷用途に好適に用いることができる。
【0084】
(4)(B)光重合開始剤は、(B3)チオキサントン系化合物をさらに含むことが好ましい。この場合、例えば、塗布層に活性エネルギー線を照射して得られる低流動性膜と、転写用基材との密着性を高めることが可能となる。従って、コールドスタンピング加工における転写精度をより高めることが可能となる。ここで、活性エネルギー線硬化型組成物中における(B3)チオキサントン系化合物の含有量は、0.8質量%以下の場合、例えば、塗布層に活性エネルギー線を照射して得られる低流動性膜の柔軟性又は粘着性が低下することを抑えることができる。これにより、コールドスタンピング加工における転写精度をより高めることが可能となる。
【0085】
(5)活性エネルギー線硬化型組成物は、(C)アミン系化合物をさらに含有することが好ましい。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性を向上させることが可能となる。詳述すると、(A)ラジカル重合性化合物のラジカル重合は、活性エネルギー線硬化型組成物中に溶存する酸素や雰囲気中の酸素を要因として阻害され易い。この点、(C)アミン系化合物は、ラジカル重合が酸素を要因として阻害されることを低減すると推測される。すなわち、(C)アミン系化合物は、(B)光重合開始剤による反応を促進することで、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性を向上させると推測される。
【0086】
例えば、活性エネルギー線硬化型組成物が上述した(B2)硫黄系化合物を含有する場合、(B2)硫黄系化合物のスルホン系化合物は、ラジカル発生点となる硫黄原子を有することにより、反応性の高いスルホン酸ラジカルを生成すると推測される。(B2)硫黄系化合物のチオベンゾイル系化合物は、ラジカル発生点となるチオベンゾイル基のケトン基に連なる共役系に硫黄原子を有することにより、反応性の高いチオラジカルを生成すると推測される。また、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物が(B3)チオキサントン系化合物を含有する場合、(B3)チオキサントン系化合物は、ラジカル発生点となるケトン基に連なる共役系に硫黄原子を有することにより、反応性の高いチオラジカルを生成すると推測される。
【0087】
(B2)硫黄系化合物及び(B3)チオキサントン系化合物の作用は、(C)アミン系化合物によって促進される。詳述すると、(C)アミン系化合物は、水素引き抜き型のラジカル生成反応を促進する。さらに、(C)アミン化合物の水素によってチオールやスルホン化物が生成され、これらチオールやスルホン化物が連鎖移動剤としてラジカル反応をさらに促進すると推定される。
【0088】
(6)(C)アミン系化合物は、上述した(C1)アミノ変性化合物及び(C2)芳香族アミン系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性をより向上させることが可能となる。
【0089】
(7)(A)ラジカル重合性化合物の官能基数は、1~3であることが好ましい。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物を低粘度化することが可能となる。従って、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット印刷によって基材に適用する用途に用いた場合、インクジェットヘッドからの吐出性を向上させることができる。
【0090】
(8)活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料を含まないことが好ましい。この場合、コールドスタンピング加工における転写精度をより高めることが可能となる。また、活性エネルギー線の照射による反応性を高めることができるため、エネルギー消費量を抑えることができる。
【0091】
(9)活性エネルギー線硬化型組成物は、インクジェット印刷用途に用いられることが好ましい。この場合、より薄膜化された硬化膜を効率的に得ることにより、コールドスタンピング加工を効率的に行うことができる。
【0092】
(10)活性エネルギー線硬化型組成物にポリマーを含有させることにより、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性、硬化膜の光沢性、硬化膜の柔軟性、基材と硬化膜との密着性等の性能を高めることが可能となる。
【0093】
(11)コールドスタンピング加工品の製造方法は、上記活性エネルギー線硬化型組成物を用いる。コールドスタンピング加工品の製造方法は、上述したように塗布層形成工程と、第1照射工程と、積層体形成工程と、第2照射工程とを備えている。この方法によれば、転写精度をより高めたコールドスタンピング加工品を得ることが可能となる。
【0094】
(12)コールドスタンピング加工品の製造方法において、第1照射工程及び前記第2照射工程で用いる活性エネルギー線は、いずれも280nm以上、420nm以下の範囲内の波長を有することが好ましい。この場合、第1照射工程及び前記第2照射工程において、例えば、同一の光源を用いて活性エネルギー線の照射を行うことができる。このため、コールドスタンピング加工品の製造設備のコストを削減することが可能となる。
【実施例】
【0095】
次に、実施例及び比較例を説明する。
(実施例1~23)
実施例1~23では、表1~3に示す組成となるように各原料を容器に入れ、40~50℃の湯浴中で固形物がなくなるまで撹拌した後、ガラス繊維ろ紙(アドバンテック東洋社製、商品名:GS-25)を用いてろ過することにより活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0096】
表1~3中、組成を示す数値の単位は、質量%である。また、表1~3中の略号は以下のとおりである。
“重合性化合物A1”は、(A1)第1重合性化合物であり、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、商品名:VEEA)である。
【0097】
“重合性化合物A2”は、(A2)第2重合性化合物であり、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(サートマー社製、商品名:SR9087)である。
“重合性化合物A3”は、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA-HD-N)である。
【0098】
“重合性化合物A4”は、イソオクチルアクリレート(サートマー社製、商品名:SR440)である。
“光重合開始剤B11”は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物であり、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins社製、商品名:OMNIRAD 819)である。
【0099】
“光重合開始剤B12”は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物であり、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(IGM Resins社製、商品名:OMNIRAD TPO)である。
【0100】
“光重合開始剤B13”は、(B1)アシルホスフィンオキシド系化合物であり、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニル)ホスフィンオキシド(ランブソン社製、商品名:Speedcure TPO-L)である。
【0101】
“光重合開始剤B21”は、(B2)硫黄系化合物のスルホン系化合物であり、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン(IGM Resins社製、商品名:ESACURE1001M)である。
【0102】
“光重合開始剤B22”は、(B2)硫黄系化合物のチオベンゾイル系化合物であり、4-ベンゾイル4´-メチルジフェニルスルフィド(IGM Resins社製、商品名:OMNIRAD BMS)である。
【0103】
“光重合開始剤B23”は、(B2)硫黄系化合物のチオベンゾイル系化合物であり、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(RAHN社製、商品名:GENOCURE PMP)である。
【0104】
“光重合開始剤B3”は、(B3)チオキサントン系化合物であり、2-イソプロピルチオキサントン(DKSHジャパン社製、商品名:Lunacure 2-ITX)である。
【0105】
“光重合開始剤B4”は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(DKSHジャパン社製、商品名:Lunacure200)である。
“アミン系化合物C1”は、(C)アミン系化合物であり、アミノアクリレートオリゴマー(ダイセル・オルネクス社製、商品名:EBECRYL80)である。
【0106】
“アミン系化合物C2”は、(C)アミン系化合物であり、芳香族アミン系化合物(RAHN社製、商品名:GENOPOL AB-2)である。
“ポリマー”は、ケトン樹脂(EVONIK Industries AG社製、商品名:TEGO VARIPLUS SK)である。
【0107】
“表面張力調整剤”は、ポリエーテル変性シロキサンコポリマー(EVONIK Industries AG社製、商品名:TEGO GLIDE 440)である。
“重合禁止剤”は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(BASF社製、商品名:Irganox 1010)である。
【0108】
(比較例1,2)
比較例1,2では、表3に示すように組成を変更した以外は、実施例1~23と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。表3中、組成を示す数値の単位は、質量%である。
【0109】
(転写性の評価)
バーコーターを用いて、実施例1の活性エネルギー線硬化型組成物を基材上の一部に塗布した。これにより、
図1(a)に示すように、基材11の一部に塗布層21が積層されてなる塗布層付き基材31を得た。塗布層21と、基材11が露出した露出部11aとの境界は直線状である。基材11としては、コート紙(王子マテリア社製、商品名:OKスーパーポスト)を用いた。
【0110】
次に、塗布層付き基材31の塗布層21に385nmの波長のLEDランプを用いての紫外線を照射した。これにより、
図1(b)に示すように、基材11に低流動性膜22が積層されてなる低流動性膜付き基材32を得た。低流動性膜22の平均厚さは、15μmであった。
【0111】
続いて、
図2(a)に示すように、コールドスタンピング加工用の転写用基材41を低流動性膜付き基材32上に配置することにより、第1積層体33を得た。転写用基材41は、基材シート41aと、基材シート41aに積層された転写層41bを有している。転写用基材41としては、転写層41bとして金属蒸着層を有する金属蒸着フィルム(村田金箔社製、商品名:GNC-F、3号金)を用いた。転写用基材41は、低流動性膜22と露出部11aとの境界を跨ぐように配置される。
【0112】
次に、385nmの波長のLEDランプを用いて紫外線を第1積層体33の転写用基材41に向けて照射した。これにより、低流動性膜22には、転写用基材41を透過した紫外線が照射される。低流動性膜22が紫外線の照射により硬化されることにより、
図2(b)に示すように、硬化膜23を有する第2積層体34を得た。
【0113】
続いて、第2積層体34から基材シート41aを剥がすことにより、
図3(a)に示すように、転写層41bが硬化膜23上に転写された評価用試料35を得た。
上記の評価用試料35において、転写層41bと露出部11aとの境界部分をマイクロスコープ(佐藤商事社製、商品名:Dino-Lite Pro)を用いて60倍の拡大倍率で撮像することで、
図3(b)に示すように評価用の画像36を得た。この画像について、画像解析ソフトで解析し、硬化膜23と基材11の露出部11aとの境界となる基準線BLを決定した。
【0114】
次に、画像解析ソフトを用いて、基準線の長さL1[mm]と、基準線よりも露出部側において金属蒸着層がはみ出して転写された過剰転写部36aの面積A1[mm2]とを算出した。また、画像解析ソフトを用いて、基準線よりも第2硬化膜側において金属蒸着層が転写されていない欠損部36bの面積A2[mm2]を算出した。続いて、下記式に従って転写精度[mm]を算出した。
【0115】
転写精度[mm]=(A1-A2)/L1
上記転写精度に基づいて、以下の評価基準で転写性を評価した。
転写精度が±0.050mmの範囲内の場合:転写性が非常に優れる(◎)。
【0116】
転写精度が+0.051mm以上、+0.100mm以下の範囲内、又は-0.100mm以上、-0.051mm以下の範囲内の場合:転写性が優れる(〇)。
転写精度が+0.101mm以上、又は-0.101mm以下の範囲内の場合:転写性に劣る(×)。
【0117】
実施例2~23及び比較例1,2の活性エネルギー線硬化型組成物についても、実施例1の活性エネルギー線硬化型組成物と同様に、転写性の評価を行った。転写性の評価結果を表1~表3に示す。
【0118】
【0119】
【0120】
【表3】
実施例1~23の活性エネルギー線硬化型組成物は、比較例1,2の活性エネルギー線硬化型組成物よりも、転写性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0121】
11…基材
21…塗布層
22…低流動性膜
23…硬化膜
41…転写用基材
41b…転写層