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特許7357954眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法
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  • 特許-眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20231002BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20231002BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20231002BHJP
   A61B 3/028 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/02
G02C7/04
A61B3/028
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022002857
(22)【出願日】2022-01-12
(65)【公開番号】P2023102400
(43)【公開日】2023-07-25
【審査請求日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 令和3年7月7日 掲載アドレス https://and-more.link/visioncheck/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 令和3年10月17日 掲載アドレス https://holistic-mizuho.com/archives/654
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 令和3年3月15日 掲載アドレス https://innochi.co.jp/
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518405234
【氏名又は名称】株式会社Innochi
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】灰谷 孝
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-536282(JP,A)
【文献】国際公開第2020/225622(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
G02C 7/02
G02C 7/04
A61B 3/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の荷重バランスを測定するステップと、
上記荷重バランスの測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップとを有し、
上記荷重バランスを測定するステップは、左右の仮球面レンズを装着した上記被測定者の左右の荷重バランスを測定するステップであり、
上記レンズを決定するステップは、上記左右の荷重バランスの測定結果に基づいて左右の眼鏡用球面レンズ又はコンタクトレンズ用球面レンズの度数を、左右個別に決定するステップである、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法。
【請求項2】
被測定者の荷重バランスを測定するステップと、
上記荷重バランスの測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップとを有し、
上記荷重バランスを測定するステップは、左右の仮円柱レンズを装着した被測定者の体の捻じれを測定するステップであり、
上記レンズを決定するステップは、上記体の捻じれの測定結果に基づいて、左右の眼鏡用円柱レンズ又はコンタクトレンズ用円柱レンズの度数及び軸度を、左右個別に決定するステップであ
鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法。
【請求項3】
被測定者の荷重バランスを測定するステップと、
上記荷重バランスの測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップとを有し、
上記荷重バランスを測定するステップは、左右の仮プリズムレンズを装着した上記被測定者の荷重の前後バランスを測定するステップであり、
上記レンズを決定するステップは、上記荷重の前後バランスの測定結果に基づいて左右の眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向、左右個別に決定するステップである
眼鏡用レンズの決定方法。
【請求項4】
上記被測定者の視覚機能を測定するステップをさらに含み、
上記レンズを決定するステップは、
上記視覚機能の測定結果及び上記荷重バランスの測定結果に基づいて、左右の眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを左右個別に決定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法。
【請求項5】
被測定者の姿勢を測定するステップと、
上記姿勢の測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップとを有し、
上記姿勢を測定するステップは、左右の仮球面レンズを装着した上記被測定者の姿勢の左右の傾きを測定するステップであり、
上記レンズを決定するステップは、上記姿勢の左右の傾きの測定結果に基づいて左右の眼鏡用球面レンズ又はコンタクトレンズ用球面レンズの度数を、左右個別に決定するステップである眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法。
【請求項6】
測定者の姿勢を測定するステップと、
上記姿勢の測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップとを有し、
上記姿勢を測定するステップは、左右の仮円柱レンズを装着した上記被測定者の体の捻じれを測定するステップであり、
上記レンズを決定するステップは、上記体の捻じれの測定結果に基づいて左右の眼鏡用円柱レンズ又はコンタクト用円柱レンズの度数及び軸度を、左右個別に決定するステップである
鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法。
【請求項7】
被測定者の姿勢を測定するステップと、
上記姿勢の測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップとを有し、
上記姿勢を測定するステップは、左右の仮プリズムレンズを装着した上記被測定者の姿勢の前後の傾きを測定するステップであり、
上記レンズを決定するステップは、上記姿勢の前後の傾きの測定結果に基づいて眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向を、左右個別に決定するステップである、
鏡用レンズの決定方法。
【請求項8】
上記被測定者の視覚機能を測定するステップをさらに含み、
上記レンズを決定するステップは、
上記視覚機能の測定結果及び上記姿勢の測定結果に基づいて、左右の眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを左右個別に決定する
請求項5~7のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被測定者にあった、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法と、眼鏡又はコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡を作ったり、コンタクトレンズを購入したりする際には、様々な観点から視覚機能測定を行ない、適切なレンズを決定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-100107号公報
【文献】特開2014-059533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
どんなに正確に視覚機能を測定し、その結果に応じてレンズの度数などを決定したとしても、目や体に生じる違和感を解消できないことがあった。
【0005】
この発明の目的は、視力の矯正だけでなく、体幹バランスも適正に保つことができる眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法と、眼鏡又はコンタクトレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1~第4の発明の眼鏡用レンズの決定方法は、被測定者の荷重バランスを測定するステップと、上記荷重バランスの測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップと、を有する。
【0007】
そして、の発明は、上記荷重バランスを測定するステップが、左右の仮球面レンズを装着した上記被測定者の左右の荷重バランスを測定するステップであり、上記レンズを決定するステップが、上記左右の荷重バランスの測定結果に基づいて左右の眼鏡用球面レンズ又はコンタクトレンズ用球面レンズの度数を、左右個別に決定するステップである。
【0008】
の発明は、上記荷重バランスを測定するステップが、左右の仮円柱レンズを装着した被測定者の体の捻じれを測定するステップであり、上記レンズを決定するステップが、上記体の捻じれの測定結果に基づいて、左右の眼鏡用円柱レンズ又はコンタクトレンズ用円柱レンズの度数及び軸度を、左右個別に決定するステップである。
【0009】
の発明は、上記荷重バランスを測定するステップが、左右の仮プリズムレンズを装着した上記被測定者の荷重の前後バランスを測定するステップであり、上記レンズを決定するステップが、上記荷重の前後バランスの測定結果に基づいて左右の眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向を、左右個別に決定するステップである。
【0010】
の発明は、被測定者の視覚機能を測定するステップをさらに含み、上記レンズを決定するステップは、上記視覚機能の測定結果及び上記荷重バランスの測定結果に基づいて、左右の眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを左右個別に決定する。
【0011】
5~8の発明の眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズの決定方法は、被測定者の姿勢を測定するステップと、上記姿勢の測定結果に基づいて、眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定するステップとを有する。
【0012】
の発明は、上記姿勢を測定するステップが、左右の仮球面レンズを装着した上記被測定者の姿勢の左右の傾きを測定するステップであり、上記レンズを決定するステップが、上記姿勢の左右の傾きの測定結果に基づいて左右の眼鏡用球面レンズ又はコンタクトレンズ用球面レンズの度数を、左右個別に決定するステップである
【0013】
の発明は、上記姿勢を測定するステップが、左右の仮円柱レンズを装着した上記被測定者の体の捻じれを測定するステップであり、
上記レンズを決定するステップが、上記体の捻じれの測定結果に基づいて左右の眼鏡用円柱レンズ又はコンタクト用円柱レンズの度数及び軸度を、左右個別に決定するステップである
【0014】
の発明は、上記姿勢を測定するステップが、左右の仮プリズムレンズを装着した上記被測定者の姿勢の前後の傾きを測定するステップであり、上記レンズを決定するステップが、上記姿勢の前後の傾きの測定結果に基づいて眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向を、左右個別に決定するステップである
【0015】
の発明は、被測定者の視覚機能を測定するステップをさらに含み、上記レンズを決定するステップが、上記視覚機能の測定結果及び上記姿勢の測定結果に基づいて、左右の眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを左右個別に決定する。
【発明の効果】
【0018】
第1~の発明によれば、視力だけでなく、体幹のバランスを適正に保つことができる眼鏡用レンズ又はコンタクト用レンズを決定することができる。
【0019】
1,5の発明によれば、被測定者の荷重の左右バランスを適正に保つことができる眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定できる。
【0020】
2,6の発明によれば、被測定者の体の捻じれを解消できる眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定できる。
【0021】
3,7の発明によれば、被測定者の荷重の前後バランスを適正に保つことができる眼鏡用レンズを決定することができる。
【0022】
4,8の発明によれば、体幹のバランスとともに視力も整えることができる眼鏡用レンズ又はコンタクトレンズ用レンズを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、この発明の第1実施形態において、眼鏡用球面レンズの度数を決定するまでの手順を示したフローチャートである。
図2図2は、図1のフローチャートに続き、第1実施形態において眼鏡用円柱レンズの度数及び軸、プリズムレンズの度数及び方向を決定する手順を示したフローチャートである。
図3図3は、被測定者の荷重分布を可視化した図である。
図4図4は、第2実施形態のフローチャートである。
図5図5は、第3実施形態のフローチャートである。
図6図6は、第4実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下にこの発明の第1実施形態を説明する。
なお、図1~2は、第1実施形態において眼鏡用レンズを決定する手順を示したフローチャートである。図3は、被測定者の荷重バランスを可視化した図である。
【0026】
眼鏡用レンズを決定するためには、図1に示すように、まず、被測定者の視覚機能測定を行なう(ステップS1)。この視覚機能測定とは、一般の眼科医、眼鏡店などで行なわれるもので、例えば特許文献1,2に示すような装置を用いて行われる。そして、被測定者の左右の目の、視力のほか、乱視や斜視の度合いについて測定する。
ステップS2では、上記測定によって得られた視力測定結果に基づいて眼鏡用球面レンズの度数を決め、その球面レンズを仮球面レンズとする。球面レンズは、被測定者の目の焦点距離を修正するもので、その度数を決定する際には、測定装置による測定値だけでなく、実際に度数の異なるレンズを検査用フレームに着脱したときの被測定者の見え方や感覚を参考にすることができる。
【0027】
仮球面レンズを決めたら、ステップS3では、乱視を矯正するための眼鏡用円柱レンズの度数及び軸度を決めて仮円柱レンズとする。仮円柱レンズの度数と軸度を決定する際には、上記仮球面レンズと仮円柱レンズとを合わせて装着した状態で、被測定者に見え方や感覚を尋ね、それを参考に度数を微調整してもよい。
【0028】
ステップS4では、視線の方向を修正して斜視や斜位を矯正するための眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向を決めて仮プリズムレンズとする。
なお、この第1実施形態では、プリズムレンズとして、視線の鉛直方向の向きを矯正する鉛直方向矯正用のプリズムレンズと、水平方向矯正用のプリズムレンズとを個別に装着して度数を調整するようにしている。ここで、鉛直方向矯正用のプリズムレンズは、アップレンズ、ダウンレンズと称されることもあり、水平方向矯正用のプリズムレンズは、インレンズ、アウトレンズと称されることもある。
【0029】
ステップS5では、上記ステップで決定した左右の仮レンズをすべて装着する。そして、必要なら、被測定者の感覚や好みに応じて、各仮レンズを微調整する。
以上ステップS1~S5は、眼鏡を作成する際に、一般的な眼科や眼鏡店で行なわれていることである。
【0030】
ステップS6で、被測定者の荷重の左右バランスを測定する。荷重の左右バランスとは、左右の足に係る荷重のバランスのことで、両荷重の大きさが等しいとき左右バランスが良いと判断する。このような荷重バランスの測定装置としては、重心動揺計や、足圧計、体重計などを用いることができる。ここでは、足圧計を用いる場合を説明する。
【0031】
例えば、図3は、被測定者の足裏の荷重分布を可視化したもので、左右の足型L,R内に、荷重の大きさが色で表示される足圧計の出力画像である。このような画像から荷重のバランスを判断することができる。具体的には、左右の足の荷重が、両脚の中心を通る左右中心線Yの左右で等しいか否かを判断することになる。
【0032】
ステップS7で左右の荷重が等しいとき、ステップS10に進み、最終的な眼鏡用球面レンズの度数を決定する。ここで決定される眼鏡用球面レンズの度数は、このステップS10の時点で被測定者が装着している仮球面レンズの度数である。
一方、左右の荷重が等しくなかったときには、ステップS7からステップS8に進み、左右の目のうち視力が良い一方の目を特定する。上記視力とは、上記ステップS2で決定した仮球面レンズを装着した状態での視力である。
【0033】
ステップS9では、一方のレンズ、すなわち視力が良い方の仮球面レンズの度数を1度下げるか、他方のレンズ、すなわち視力が悪い方の仮球面レンズの度数を1度上げる。このように、仮球面レンズの度数を変更したら、ステップS6に戻って荷重の左右バランスを測定する。
そして、ステップS7に進み、荷重の左右バランスが整うまでステップS6~S9を繰り返し、左右の荷重が等しくなったらステップS10に進み最終的な左右の眼鏡用球面レンズの度数を決定する。
【0034】
なお、この第1実施形態では、上記ステップS8,S9で、視力の良い方の仮球面レンズの度数を下げるか、悪い方の仮球面レンズの度数を上げる、ようにしているが、仮球面レンズの度数の調整手順はこれに限らない。ステップS8,S9では、左右の荷重が等しくなるようにいずれかの仮球面レンズの度数を調整すればよい。ただし、視力に差がある場合に、上記のようにその差が小さくなるように仮球面レンズ度数を微調整することで、荷重の左右バランスが整う場合が多いことを経験済みである。
【0035】
眼鏡用球面レンズの度数を決定したら図2のステップS11に進む。
ステップS11では、足圧計で被測定者の体の捻じれを測定する。体の捻じれは、両脚の荷重分布から判断できる。体が捻じれている場合には、左右で前後の荷重の大小が反対になる。例えば、右側に体が捻じれている場合、図3の左前エリア1の荷重が左後ろエリア2よりも大きく、右前エリア3の荷重が右後ろエリア4の荷重より小さくなる。
【0036】
ステップS12で、捻じれがないと判断した場合には、ステップS14に進み、その時点で装着している左右の仮円柱レンズの度数及び軸度をそのまま、最終的な眼鏡用円柱レンズの度数及び軸度として決定する。
一方、捻じれがある場合には、ステップS12からステップS13に進む。
ステップS13では、左右いずれか一方の仮円柱レンズの度数を1度上げるか1度下げるかして、ステップS11に戻り、再度体の捻じれを測定する。
そして、捻じれがなくなるまで、ステップS11~S13で、仮円柱レンズの度数調整を繰り返す。
【0037】
なお、ステップS13で、いずれか一方の仮円柱レンズの度数を上げた場合には、捻じれがなくなるまで度数を上げ続け、度数が所定値に達しても捻じれが解消しない場合には、ステップS3で決定した仮円柱レンズから度数を下げるステップを繰り返すようにしてもよい。または、捻じれの大きさの変化を見ながら、仮円柱レンズの度数の増減を行なうようにしてもよい。この仮円柱レンズの調整プロセスにおいても、初めに度数を調整するレンズは左右どちらでもかまわない。
さらに、第1実施形態では、各仮円柱レンズの軸度は固定して、仮円柱レンズの度数のみを調整するようにしているが、度数の調整で体の捻じれを解消できない場合には、軸度を調整することも可能である。
【0038】
ステップS14で最終的な左右の眼鏡用円柱レンズの度数及び軸度を決定したら、ステップS15へ進んで、被測定者の荷重の前後バランスを測定する。荷重の前後バランスも、上記と同様に足圧計によって測定する。図3において左右の足型L,Rの前後中心線Xより前側のエリア1,3の荷重と後ろ側のエリア2,4の荷重とが等しいか否か判断する(ステップS16)。前後の荷重が等しければステップS18に進み、その時点で装着している仮プリズムレンズの度数及び方向をそのまま、眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向として決定する。なお、このステップS18で決定する眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向は、調整していない水平方向矯正用の仮プリズムレンズの矯正値と合わせたものである。
【0039】
一方、ステップS16で、前後の荷重が等しくなく、前後のバランスが崩れていると判断した場合には、ステップS17に進み、鉛直方向矯正用の仮プリズムレンズの、方向を固定したまま、一方の仮プリズムレンズの度数を1度下げ、他方の仮プリズムレンズの度数を1度上げ、ステップS15に戻り、荷重の前後バランスを再度測定する。
そして、前後の荷重が等しくなるまで、ステップS15~S17を繰り返す。
【0040】
以上のステップで、荷重の左右、前後バランスが整い、体の捻じれがなくなる、眼鏡用レンズの度数、軸度、方向などの特性値が決定する。
そして、これら決定した各レンズの特性値を統合して、左右の眼鏡用レンズが作成される。
したがって、この第1実施形態の決定方法で決定された眼鏡用レンズを用いて眼鏡を作成すれば、眼鏡装着者は、視覚機能の改善とともに体幹のバランスを適正に維持でき、より快適な生活に導かれるようになる。
【0041】
なお、上記ステップS7やステップS16では、左右又は前後の荷重が完全に等しい場合だけでなく、ほぼ等しい場合でも荷重が等しいと判断し、ステップS12では、わずかな捻じれは、捻じれがないものと判断してもよい。
以上のように、適切な眼鏡用レンズによって体幹のバランスが整えられるのは、視覚機能を補うために使用される眼球周りの筋肉の動きが、身体の他の部分にも様々な影響を与えているためと考えられる。
【0042】
第1実施形態では、眼鏡用レンズとして、球面レンズ、円柱レンズ、プリズムレンズといった3種類のレンズの度数などを決定しているが、必ずしも3種類のレンズについて度数などを決定する必要はなく、例えば球面レンズだけを調整して特に左右バランスを整えるようにしても良いし、円柱レンズだけを調整して体の捻じれを解消したり、プリズムレンズだけを調整することによって前後のバランスを整えたりしても良い。
【0043】
[第2実施形態]
図4を用いて第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、視覚機能の測定を行なわずに、左右の眼鏡用球面レンズを決定する方法で、図4は第2実施形態のフローチャートである。
第2実施形態では、まず、ステップS21で被測定者の荷重の左右バランスを測定し、左右の荷重が等しいか否か判断する(ステップS22)。荷重のバランスの測定には、第1実施形態と同様に足圧計を用いるものとする。
ステップS22で左右の荷重が等しいとき、作業を終了する。被測定者には、左右バランスを整えるための球面レンズは必要ないということである。
【0044】
一方、左右の荷重が等しくなかったときには、ステップS22からステップS23に進み、左右いずれか一方又は双方の目に仮球面レンズを装着する。ここで装着する仮球面レンズは比較的、度数の低いものである。
被測定者が仮球面レンズを装着したら、ステップS24で再度、荷重の左右バランスを測定する。
左右の荷重が等しい場合には、ステップS25からステップS27に進み、眼鏡用球面レンズの度数を決定する。ここで決定する眼鏡用球面レンズの度数は、その時点で被測定者が装着している仮球面レンズの度数である。
【0045】
一方、左右の荷重が等しくない場合には、ステップS26に進み、いずれか一方の仮球面レンズの度数を1度上げるか1度下げるかし、ステップS24に戻って荷重の左右バランスを測定する。
そして、荷重の左右バランスが整うまで、ステップS24~S26を繰り返す。左右の荷重が等しくなったらステップS27に進み最終的な左右の眼鏡用球面レンズの度数を決定し、この球面レンズを眼鏡用レンズとする。
【0046】
この第2実施形態では、視覚機能の測定はせずに、荷重の左右バランスの測定結果のみで眼鏡用レンズを決定している。このような眼鏡用レンズを用いた眼鏡を装着すれば、体幹の左右バランスを整えることができる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、被測定者の体の捻じれを改善するための、眼鏡用円柱レンズを決定する第3実施形態を説明する。図5は第3実施形態のフローチャートである。
図5のステップS31では、第1実施形態のステップS11と同様に、被測定者の体の捻じれを測定する。
【0048】
ステップS32で、捻じれがないと判断した場合には、被測定者に眼鏡用円柱レンズは必要ないので、作業を終了する。
被測定者の体の捻じれがある時には、ステップS32からステップS33に進み、左右いずれか一方又は双方の目に仮円柱レンズを装着する。この仮円柱レンズの度数は低いものである。また、軸度も仮に決定しておく。
【0049】
被測定者が仮球面レンズを装着したら、ステップS34で再度、被測定者の体の捻じれを測定する。
体の捻じれがない場合には、ステップS35からステップS37に進み、眼鏡用円柱レンズの度数及び軸度を決定する。ここで決定する眼鏡用円柱レンズの度数及び軸度は、その時点で被測定者が装着している仮円柱レンズの度数及び軸度である。
【0050】
一方、捻じれがある場合には、ステップS35からステップS36に進む。
ステップS36では、左右いずれか一方の仮円柱レンズの度数を1度上げるか1度下げるかして、ステップS34に戻り、再度体の捻じれを測定する。
そして、捻じれがなくなるまで、ステップS34~S36で、仮円柱レンズの度数調整を繰り返す。
【0051】
なお、ステップS36で、いずれか一方の仮円柱レンズの度数を上げた場合には、捻じれがなくなるまで度数を上げ続け、度数が所定値に達しても捻じれが解消しない場合には、ステップS33で装着した仮円柱レンズから度数を下げるステップを繰り返すようにしてもよい。または、捻じれの大きさの変化を見ながら、仮円柱レンズの度数の増減を行なうようにしてもよい。この仮円柱レンズの調整プロセスにおいても、初めに度数を調整するレンズは左右どちらでもかまわない。
さらに、第3実施形態でも、各仮円柱レンズの軸度は固定して、仮円柱レンズの度数のみを調整するようにしているが、度数の調整で体の捻じれを解消できない場合には、軸度を調整することも可能である。
【0052】
[第4実施形態]
被測定者の前後のバランスを整えるための眼鏡用プリズムレンズを決定する第4実施形態を説明する。
図6は、第4実施形態のフローチャートである。
【0053】
図6のステップS41では、第1実施形態のステップS15と同様にして被測定者の荷重の前後バランスを測定する。ステップS42で前後の荷重が等しいか否か判断し、等しければ、被測定者に眼鏡用プリズムレンズは必要ないため、作業を終了する。
【0054】
一方、ステップS42で前後の荷重が等しくないと判断した場合には、ステップS43に進み、左右いずれか一方又は双方の目に仮プリズムレンズを装着する。仮プリズムレンズの度数は低いもので方向も仮に決めておく。ここでは、鉛直方向矯正用の仮プリズムレンズを用いるものとする。
【0055】
被測定者が、ステップS43で仮プリズムレンズを装着したら、ステップS44で再度荷重の前後バランスを測定する。
前後の荷重が等しければ、ステップS45からステップS47に進み、最終的に左右の眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向を決定する。ここで決定される眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向は、その時点で被測定者が装着している仮プリズムレンズのものである。
【0056】
一方、ステップS45で、前後の荷重が等しくないと判断した場合には、ステップS46で、鉛直方向矯正用の、一方の仮プリズムレンズの度数を1度下げ、他方の仮プリズムレンズの度数を1度上げる。ステップS44に戻り、前後の荷重が等しくなるまで、ステップS44~S46を繰り返し、前後の荷重が等しくなったらステップS47で左右の眼鏡用プリズムレンズの度数及び方向を決定する。
以上のステップで、被測定者の前後のバランスを整えることができる左右の眼鏡用プリズムレンズが決定する。なお、上記では、鉛直方向矯正用のプリズムレンズの度数のみを調整する例を説明しているが、被測定者の荷重の前後バランスを見ながら必要に応じて方向の調整をしてもよい。
【0057】
[他の形態]
上記第2,3,4実施形態は、それぞれ、荷重の左右バランス、体の捻じれ、荷重の前後バランスを改善可能な眼鏡用レンズを決定する方法であるが、これらを複数組み合わせて、各フローで決定したレンズの特性値を統合し、体幹バランスをさらに良くする眼鏡用レンズを決定することもできる。
【0058】
また、被測定者の視覚機能を測定するステップを追加し、荷重のバランスの測定結果と視覚機能の測定結果とを合わせて最終的に眼鏡用レンズを決定するようにしても良い。視覚機能の測定結果も合わせれば、体幹バランスとともに視覚機能の改善も期待できる。
【0059】
そして、視覚機能を測定するステップは、荷重のバランスを測定するステップより前でも後でもよい。視覚機能の測定を先に行なう場合には、図1に示した第1実施形態のように、視覚機能の測定結果に基づいて眼鏡用の仮レンズを決定し、それを装着した状態から、荷重のバランスを測定するようにする。
また、図4~6のフローの後に視覚機能測定を行なう場合には、図4~6の各フローで最終的に決定した眼鏡用レンズを仮レンズとし、その後に視覚機能の測定結果に基づいて調整を行なって最終的な眼鏡用レンズを決定する。
【0060】
なお、上記第1~第4実施形態では、レンズの度数を調整する際に、1度ずつ増減するようにしているが、度数の増減量は1度に限定されない。
また、上記実施形態で、円柱レンズの度数及び軸度を決定するステップで、度数及び軸度の少なくともいずれかを決定するようにしてもよい。プリズムレンズについても、度数及び方向のうち少なくともいずれかを決定すればよい。
そして、荷重バランスの測定手段も、上記のような荷重分布を測定できる足圧計に限定されない。例えば、前後左右別々に配置した体重計や、重心動揺計などを用いることもできるし、バランスボードに乗った被測定者の状態から、荷重のバランスや体の捻じれを判断することもできる。
【0061】
重心動揺計などで重心位置を特定すれば、その重心位置によって荷重のバランスを判定することができる。例えば、上記左右中心線Y(図3参照)上に重心が位置するとき、左右の荷重が等しく、左右バランスがよいと判断できるし、上記前後中心線X上に重心が位置するとき前後の荷重が等しく、前後バランスがよいと判断できる。さらに、被測定者の立ち姿の外観から、体の捻じれや傾きなどを判定することもできる。
【0062】
上記実施形態では、被測定者が立位で測定を行っているが、座位のバランスを測定し、その測定結果に基づいて、眼鏡用レンズを決定するようにしてもよい。座位で荷重のバランスは、立位の場合と同様に測定する。例えば、被測定者が腰かけた椅子の下に体重計を置いたり、座面に重心動揺計を載置したりすればよい。座位の場合には、左右の座骨に作用する荷重の大きさで左右バランスが測定できる。
【0063】
また、上記荷重のバランスを測定する代わりに、被測定者の姿勢を解析して、その結果に基づいて眼鏡用レンズを決定するようにしても良い。
被測定者の姿勢を、姿勢解析ソフトを搭載した姿勢解析装置で解析し、予め設定した目的の姿勢に近づくように、眼鏡用レンズを決定する。
【0064】
具体的には、上記したステップのうち、荷重のバランスを測定するステップを姿勢の測定ステップに置き換える。そして、姿勢が左右に傾いている場合には、球面レンズを調整し、体が捻じれている場合には、円柱レンズ、前後バランスが悪い場合にはプリズムレンズを調整して最終的に眼鏡用レンズを決定することで、目的の姿勢に近づけるようにする。
上記目的の姿勢は、バランスの良い姿勢だけでなく、被測定者の生活環境に有利な姿勢などでもよい。アスリートの場合、特定のスポーツに適した姿勢を目的の姿勢とすることもできる。
【0065】
以上の実施形態によれば、被測定者の体幹バランスを適正に保つことができる眼鏡用レンズを決定することができる。
また、第1~4実施形態と同じ手順によって、眼鏡用レンズではなくコンタクトレンズ用レンズを決定することもできる。つまり、上記のように決定した眼鏡用レンズと同じ特性を有するレンズをコンタクトレンズとすることで、装着者のバランスを整えて快適な状態に導くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
眼鏡によってより健康な生活を実現できる。
【符号の説明】
【0067】
L 左の足型
R 右の足型
1 左前エリア
2 左後ろエリア
3 右前エリア
4 右後ろエリア
Y 左右中心線
X 前後中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6