(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】バブル水製造装置およびバブル水製造方法
(51)【国際特許分類】
B01F 23/2375 20220101AFI20231002BHJP
B01F 23/2326 20220101ALI20231002BHJP
B01F 25/31 20220101ALI20231002BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20231002BHJP
B01F 35/222 20220101ALI20231002BHJP
【FI】
B01F23/2375
B01F23/2326
B01F25/31
B01F35/71
B01F35/222
(21)【出願番号】P 2022066952
(22)【出願日】2022-04-14
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 義二
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 八州
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-272232(JP,A)
【文献】特開2019-130516(JP,A)
【文献】特開平07-194952(JP,A)
【文献】特開平09-324800(JP,A)
【文献】特開2014-176440(JP,A)
【文献】登録実用新案第3034369(JP,U)
【文献】国際公開第2021/090833(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109012445(CN,A)
【文献】中国実用新案第214004164(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
A47K 3/00- 3/40
B01F 35/71
C01B 13/10-13/11
C02F 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留
し、溶存気体生成部として、貯留する前記液体に溶存させるための溶存気体を吸い込む気体吸込部を備えた水槽と、
前記水槽内に設けられ、気体取込口より取り込まれる前記水槽内の気体を、前記水槽内より吸い出される前記液体に混合させる気液混合部と、
前記気液混合部に接続され、外筒と
、先端側にガスケットおよびパッキン部材からなる多重構造を備えた押し子と、を有する注射器型のバブル発生器と、
前記バブル発生器の前記押し子を
往復駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御して前記押し子を連続的に駆動させる制御部と、
を備え、
前記外筒内から引き抜かれる前記押し子の往時方向への駆動により、前記水槽内より吸い出され、前記気液混合部にて気体が混合された溶液を、減圧状態とされた前記外筒の減圧吸水室内に取り込むとともに、前記減圧吸水室への取り込みに伴ってバブルが生成された前記液体を、前記外筒内に押し込まれる前記押し子の復時方向への駆動により前記減圧吸水室内より押し出し、前記気液混合部にて気体を混合させた後、再び前記水槽へと移動させることを繰り返すことによって、ウルトラファインバブルを含むバブル水を製造することを特徴とするバブル水製造装置。
【請求項2】
前記気液混合部の前記気体取込口には、前記水槽内より取り込まれる前記気体の流速を調整するための流速調整部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバブル水製造装置。
【請求項3】
前記流速調整部材は、前記水槽内より吸い出される前記液体が流れる導水路に突出可能に設けられ、前記導水路内への突出の程度を変えることによって、前記導水路内での前記液体の流れを変化させることができることを特徴とする請求項2に記載のバブル水製造装置。
【請求項4】
前記バブル発生器の前記外筒の筒先部分には、
ベンチュリー効果により、前記水槽からの前記液体を加速および加圧するための
液加速加圧部が設けられており、当該液加速加圧部の前記液体の導入径を異ならせることによって、前記導入径に応じて前記外筒内に取り込まれる前記液体の流速を変更できることを特徴とする請求項1に記載のバブル水製造装置。
【請求項5】
前記水槽には、特殊ガスの供給が行われるガス供給部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバブル水製造装置。
【請求項6】
前記特殊ガスが、オゾン、酸素、窒素、または、医療用ガスのいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のバブル水製造装置。
【請求項7】
前記バブル発生器の前記外筒が、ステンレス、または、フッ素樹脂加工が施された金属、樹脂、ガラスのいずれかによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバブル水製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のバブル水製造装置を用いてウルトラファインバブルを含むバブル水を製造する方法であって、
制御部によって駆動部を制御して、外筒と
、先端側にガスケットおよびパッキン部材からなる多重構造を備えた押し子と、を有する注射器型のバブル発生器の前記押し子を連続的に往復駆動させ
、
前記外筒内から引き抜かれる前記押し子の往時方向への駆動により、水槽内より吸い出され、気液混合部にて気体が混合された溶液を、減圧状態とされた前記外筒の減圧吸水室内に取り込むとともに、前記減圧吸水室への取り込みに伴ってバブルが生成された前記液体を、前記外筒内に押し込まれる前記押し子の復時方向への駆動により前記減圧吸水室内より押し出し、前記気液混合部にて気体を混合させた後、再び前記水槽へと移動させることを繰り返すことによって、ウルトラファインバブルを含むバブル水を製造することを特徴とするバブル水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン方式によりウルトラファインバブル(UFB)水を製造するバブル水製造装置およびバブル水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気泡の粒径が極めて小さな微細気泡を含有するバブル水を発生する装置として、例えば、輸液パックを用いた微細気泡発生方法および微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この提案は、輸液パックの使用段階において、施術者が注射器を用いて容易に輸液中に微細気泡を発生させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、注射器を用いて容易に微細気泡を発生させることができるものの、輸液パックの使用時に輸液中に微細気泡を発生させるものであったため、その用途が非常に限定的であり、多量のバブル水の製造には適していないものであった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ピストン方式によりウルトラファインバブルを含有した多量のバブル水を簡単、かつ、安全に製造できるバブル水製造装置およびバブル水製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の一態様は、液体を貯留し、溶存気体生成部として、貯留する前記液体に溶存させるための溶存気体を吸い込む気体吸込部を備えた水槽と、前記水槽内に設けられ、気体取込口より取り込まれる前記水槽内の気体を、前記水槽内より吸い出される前記液体に混合させる気液混合部と、前記気液混合部に接続され、外筒と、先端側にガスケットおよびパッキン部材からなる多重構造を備えた押し子と、を有する注射器型のバブル発生器と、前記バブル発生器の前記押し子を往復駆動させる駆動部と、前記駆動部を制御して前記押し子を連続的に駆動させる制御部と、を備え、前記外筒内から引き抜かれる前記押し子の往時方向への駆動により、前記水槽内より吸い出され、前記気液混合部にて気体が混合された溶液を、減圧状態とされた前記外筒の減圧吸水室内に取り込むとともに、前記減圧吸水室への取り込みに伴ってバブルが生成された前記液体を、前記外筒内に押し込まれる前記押し子の復時方向への駆動により前記減圧吸水室内より押し出し、前記気液混合部にて気体を混合させた後、再び前記水槽へと移動させることを繰り返すことによって、ウルトラファインバブルを含むバブル水を製造することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の態様は、一態様に記載のバブル水製造装置を用いてウルトラファインバブルを含むバブル水を製造する方法であって、制御部によって駆動部を制御して、外筒と、先端側にガスケットおよびパッキン部材からなる多重構造を備えた押し子と、を有する注射器型のバブル発生器の前記押し子を連続的に往復駆動させ、前記外筒内から引き抜かれる前記押し子の往時方向への駆動により、水槽内より吸い出され、気液混合部にて気体が混合された溶液を、減圧状態とされた前記外筒の減圧吸水室内に取り込むとともに、前記減圧吸水室への取り込みに伴ってバブルが生成された前記液体を、前記外筒内に押し込まれる前記押し子の復時方向への駆動により前記減圧吸水室内より押し出し、前記気液混合部にて気体を混合させた後、再び前記水槽へと移動させることを繰り返すことによって、ウルトラファインバブルを含むバブル水を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピストン方式によりウルトラファインバブルを含有した多量のバブル水を簡単、かつ、安全に製造できるバブル水製造装置およびバブル水製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバブル水製造装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】バブル水製造装置のUFB発生部の概略構成を示す断面図である。
【
図3】バブル水製造装置の気液混合ユニット部の概略構成を示す断面図である。
【
図4】
図1に示したバブル水製造装置の動作(バブル水製造方法)について説明するためのフローチャートである。
【
図5】バブル水製造装置によって製造されたUFB水の測定データを例示するものである。
【
図6】(a)は、バブル水製造装置によって製造されたUFB水の測定画像であり、(b)は、対比のために示す、従来装置によって製造されたUFB水の測定画像である。
【
図7】バブル水製造装置の液加速加圧部の導入径の違いによるバブル生成能力の差異について対比して示す図である。
【
図8】バブル水製造装置のプランジャの駆動時の速度の違いによるバブル生成能力の差異について対比して示す図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るバブル水製造装置の構成例を示す概略図である。
【
図10】
図9に示したバブル水製造装置の動作(バブル水製造方法)について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<一実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係るバブル水製造装置が適用されるピストン式UFB水製造装置1の構成例を示すものである。
【0012】
図1に示すように、このピストン式UFB水製造装置1は、UFB水(液体/溶液)27を貯留するUFB水貯蔵槽(水槽/タンク)20と、UFB水貯蔵槽20に導水路(配管)21a,21bを介して接続された注射器型のUFB発生部30と、UFB発生部30のプランジャ(押し子/ピストン)34を駆動させる駆動部10と、駆動部10を制御するコントロール部(制御部)15と、を備えている。
【0013】
UFB発生部30は、例えば減圧式のバブル発生器であって、ステンレス(SUS)、または、フッ素樹脂加工が施された金属、樹脂、ガラスなどによって形成されたシリンジ(外筒)33と、シリンジ33内を往復運動するプランジャ34と、を有している。UFB発生部30の詳細については、後述する。
【0014】
駆動部10は、例えば電気モータまたはエア駆動機構などを備えるとともに、UFB発生部30を支持・固定するホルダ部11と、UFB発生部30のプランジャ34の基端側を保持する保持部14と、プランジャ34がシリンジ33の筒方向(図示矢印x方向)に往復運動するように保持部14をスライドさせるスライド部12と、を備えている。
【0015】
UFB水貯蔵槽20は、溶存気体生成部として、吸込口22aより溶存気体(例えば、空気)26を吸い込む気体吸込部22を備えている。
【0016】
導水路21aの一端はUFB水27内に浸され、他端は気液混合ユニット部23に接続されている。導水路21bの一端は気液混合ユニット部23に接続され、他端はUFB発生部30のシリンジ33の筒先部分に接続されている。気液混合ユニット部23の詳細については、後述する。
【0017】
コントロール部15は、例えば、減圧速度(往時移動速度)制御、加圧速度(復時移動速度)制御、位置維持時間(インターバル時間)制御、および、回数(往復運動回数)制御のためのプログラムなどを備えている。そして、操作者の設定入力に基づいて、駆動部10をプログラムにしたがって制御(プログラム運転)することにより、発生させるバブルのサイズ(気泡の粒径)や量(気泡の個数)、時間などをコントロールすることが可能とされている。
【0018】
図2は、ピストン式UFB水製造装置1におけるUFB発生部30の概略構成を示す断面図である。
【0019】
図2に示すように、シリンジ33とプランジャ34とからなるUFB発生部30は、例えば、プランジャ34の先端側にシリンジ33の内径との間にすき間がないように設けられたガスケット35と、ガスケット35の表側にネジ37などにより交換可能に取り付けられたパッキン部材36と、を有している。このガスケット35とパッキン部材36との多重構造により、バブル発生時に、シリンジ33内において、UFB水27がガスケット35を超えて漏れ出すのを抑制でき、例えば、オゾンガスなどの導入時においても操作者の安全性の確保が可能となる。
【0020】
パッキン部材36とシリンジ33の先端部分との間には、UFB水貯蔵槽20からのUFB水27をシリンジ33内に取り込む減圧吸水室38が形成されるようになっている。この減圧吸水室38は、プランジャ34のシリンジ33に対する位置に応じて、その容積が変化される。
【0021】
ここで、シリンジ33としては、例えば、筒体部分の内径(直径)が15mm以上で、長さ(筒長)が50mm以上、筒先部分の内径が2mm以上で、筒体部分の内径と筒先部分の内径との差が10mm以上となるように形成するのが望ましい。
【0022】
また、UFB発生部30において、導水路21bがつながるシリンジ33の筒先部分には、例えばベンチュリー効果により、UFB水貯蔵槽20からのUFB水27を加速および加圧する液加速加圧部31が設けられている。この液加速加圧部31は、例えばRC接続ネジ加工技術により、ハーフジョイント部39のシリンジ33との装着端側に交換可能に設けられている。
【0023】
即ち、本実施形態においては、液加速加圧部31の交換によりUFB水27の導入径を異ならせることが可能となっている。これにより、液加速加圧部31のUFB水27の導入径に応じて、UFB水27の流速を変更することが可能とされている。
【0024】
図3は、導水路21a,21bの途中に設けられた気液混合ユニット部23の概略構成を示す断面図である。
【0025】
気液混合ユニット部23は、例えば
図3に示すように、導水路21a,21bがチューブジョイント接手24a,24bを介して接続されるとともに、導水路25aにつながる気体取込口(気体導入路)25b,25cを有する気液接触部材25と、気液接触部材25の気体取込口25bに上下動可能に設けられ、気体取込口25cよりUFB水貯蔵槽20内の気体(空気またはガス)を取り込む気液流速調整部材125と、から構成されている。
【0026】
この気液混合ユニット部23は、気液流速調整部材125に応じて、気体取込口25cより自吸した気体を、導水路25aを流れるUFB水27中に溶解(混合)させるものである。
【0027】
即ち、気液流速調整部材125は、例えば、径の異なる貫通路を有する特殊なイモネジ(ホーローセットなどとも呼称される)を連結させてなり、閉め込まれることによって、気体取込口25cから取り込む気体の流速を調整することが可能となっている。また、閉め込むことによって導水路25a内への突出の程度を変えて、導水路25a内でのUFB水27の流れを変化させることにより、バブルの粒径や個数を調整することができるようになっている。
【0028】
図4は、本実施形態に係るピストン式UFB水製造装置1によるUFB水の製造方法について説明するために示すフローチャートである。
【0029】
図4において、まずは、操作者によってピストン式UFB水製造装置1のUFB水貯蔵槽20内に、UFB水27を製造するための溶液(例えば、純水などの原水)が投入される(ステップS01)。
【0030】
次いで、コントロール部15において、プランジャ34の駆動速度と駆動回数とを設定するための入力が行われる(ステップS02)。
【0031】
この後、所定のプログラムが起動されて、コントロール部15が操作者による設定入力に基づいて駆動部10を制御することにより、スライド部12による保持部14の反復運動が開始される(ステップS03)。保持部14の反復運動は、操作者によって設定入力された駆動速度と駆動回数とに応じて繰り返される。
【0032】
すると、この保持部14の反復運動に伴って、ホルダ部11に固定されたUFB発生部30のプランジャ34が、設定入力された駆動速度と駆動回数とに応じて、シリンジ33内を往復運動させられる(ステップS04)。
【0033】
ここで、UFB水貯蔵槽20内に貯留された溶液は、陰圧時に、気体吸込部22の吸込口22aより吸い込まれた気体がバブリングされて、溶存気体26を含んだものとされる。このUFB水貯蔵槽20内に貯留された溶液は、UFB発生部30において、プランジャ34がシリンジ33内より引き抜かれる方向に移動(往時移動)される際に、UFB水貯蔵槽20内より吸い出される。そして、導水路21aを介して気液混合ユニット部23へと送られ、気体取込口25cより取り込まれる気体と混合される。
【0034】
この後、気体が混合された溶液は、導水路21bを介してUFB発生部30へと送られる。そして、液加速加圧部31を経た後、シリンジ33内の減圧吸水室38に取り込まれる。この減圧吸水室38への取り込み時に、溶液中には、液加速加圧部31の導入径やプランジャ34の駆動速度(減圧速度)に応じた径および数のバブルが発生される。
【0035】
即ち、プランジャ34の往時の移動によりシリンジ33内が減圧され、常圧から減圧への環境の変化により、溶解している気体が気泡となり、さらに、気泡が徐々に粉砕されて微細化される。
【0036】
一方、UFB発生部30にてバブルが発生された溶液は、設定入力された駆動速度(加圧速度)に応じて、プランジャ34がシリンジ33内に押し込まれる方向に移動(復時移動)される際に、減圧吸水室38内より押し出される。そして、導水路21bを介して気液混合ユニット部23へと送られ、再び、気体取込口25cより取り込まれる気体と混合される。
【0037】
その後、バブルを含んだ溶液は、導水路21aを介して、UFB水貯蔵槽20内へと送られて、そこで一時的に貯留される。こうして、設定入力された駆動回数に達するまで、上述の動作が繰り返される。
【0038】
このようにして、UFB水貯蔵槽20内に貯留された溶液が、UFB発生部30とUFB水貯蔵槽20との間の移動を繰り返し、最終的には、UFB水貯蔵槽20内に所望の粒径を有するウルトラファインバブル(例えば、ナノレベルの微細気泡)を、所定濃度(量)ほど含有する多量のUFB水27として貯留される(ステップS05)。
【0039】
こうして製造されたUFB水27は、適時、いろいろな用途において、自由に使用することが可能となる。
【0040】
図5は、本実施形態に係るピストン式UFB水製造装置1によって製造されたUFB水27の、ナノ粒子解析システム(NANOSIGHT)による測定データを例示するものである。
【0041】
図5において、向かって左側のグラフは、実験の結果(例えば、5回分)を示すものであり、向かって右側のグラフは、その平均値を示すものであり、いずれも、縦軸はFTLA濃度(粒子/ml)で、横軸は粒径(nm)である。
【0042】
図6(a)は、本実施形態に係るピストン式UFB水製造装置1によって製造されたUFB水27の測定画像を、従来装置によって製造されたUFB水の測定画像(
図6(b)参照)と対比して示すものである。
【0043】
なお、
図5および
図6(a)は、UFB水27の製造において、例えば、プランジャ34の減圧速度(往時移動速度)を50mm/秒以上、加圧速度(復時移動速度)を30mm/秒以上、往時と復時との間の位置維持時間(インターバル時間)を1秒以上、プランジャ34を駆動する回数(往復運動回数)を50回以上、液加速加圧部31の導入径を2mmφとし、その導入径により決定されるUFB水27の流速を0.5m/秒とした場合の結果である。
【0044】
図5および
図6(a)からも明らかなように、本実施形態に係るピストン式UFB水製造装置1によれば、例えば、100nm当たりに粒径のピークを有するウルトラファインバブルを、1.4×10
10個/mlの割合で含有したUFB水27を製造できる。
【0045】
図7は、液加速加圧部31の導入径の違いによるバブル生成能力(個数/mlとモード径)について対比して示すものである。
【0046】
ここでは、UFB水27の製造に用いる純水の量を500ml、プランジャ34の減圧速度を100mm/秒、加圧速度を50mm/秒、往時と復時との間の位置維持時間を3秒、プランジャ34を駆動する回数を500回(ストローク)とし、液加速加圧部31の導入径(流入径)を1.5mmφ、2mmφ、3mmφとした場合について、それぞれ測定を行った(1ストローク当たり50ml)。
【0047】
なお、測定は、NANOSIGHT(LM10V)によって、60秒×5回の測定結果の平均値を各回の測定結果として求めることにより行った。
【0048】
この図からも明らかなように、液加速加圧部31の導入径を2mmφとした場合のバブルの個数/mlが、最も多くなることが分かった。
【0049】
図8は、プランジャ34の駆動時の速度の違いによるバブル生成能力(個数/mlとモード径)について対比して示すものである。
【0050】
ここでは、UFB水27の製造に用いる純水の量を500ml、往時と復時との間の位置維持時間を3秒、プランジャ34を駆動する回数を500回(ストローク)、液加速加圧部31の導入径(流入径)を2mmφとし、プランジャ34の減圧(吸引)速度を100mm/秒、加圧(排出)速度を50mm/秒とした場合と、プランジャ34の減圧速度を50mm/秒、加圧速度を50mm/秒とした場合とについて、それぞれ測定を行った(1ストローク当たり50ml)。
【0051】
なお、測定は、NANOSIGHT(LM10V)によって、60秒×5回の測定結果の平均値を各回の測定結果として求めることにより行った。
【0052】
この図からも明らかなように、吸引時と排出時とでプランジャ34の速度を変える(例えば、吸引時を排出時の2倍程度)とした場合の方が、モード径は若干大きくなるものの、バブルの個数/mlが多くなることが分かった。
【0053】
上記したように、本実施形態によれば、ピストン方式によりウルトラファインバブルを含有した多量のUFB水を簡単、かつ、安全に製造することができる。
【0054】
即ち、UFB水27を貯留するUFB水貯蔵槽20と、UFB水貯蔵槽20に導水路21a,21bを介して接続され、シリンジ33とプランジャ34とを有する注射器型のUFB発生部30と、UFB発生部30のプランジャ34を駆動させる駆動部10と、駆動部10を制御するコントロール部15と、を備え、コントロール部15によって駆動部10を制御してプランジャ34を連続的に駆動させ、UFB水貯蔵槽20内に貯留されたUFB水27を一旦はUFB発生部30のシリンジ33内に取り込むとともに、シリンジ33内に取り込んだUFB水27を再びUFB水貯蔵槽20へと移動させることを繰り返すことによって、ウルトラファインバブルを含有するUFB水27を製造するようにしている。
【0055】
これにより、注射器型のUFB発生部30という比較的簡単な構造ながらも、ウルトラファインバブルを効率よく発生させることが可能となる。
【0056】
したがって、ピストン式のUFB水製造装置1において、ウルトラファインバブルをより多く含有する多量のUFB水27を、簡単、かつ、安全に製造できるようになる。
【0057】
<他の実施形態>
図9は、本発明の他の実施形態に係るバブル水製造装置が適用されるピストン式UFB水製造装置1の構成例を示すものである。なお、一実施形態に示したピストン式UFB水製造装置1と同一部分には同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0058】
この他の実施形態に係るピストン式UFB水製造装置1は、特殊ガスとして、例えばオゾンガス(O3 )を供給するオゾンガス供給部40により、オゾンUFB水27を製造するものとして説明する。
【0059】
即ち、この他の実施形態に係るピストン式UFB水製造装置1は、UFB水貯蔵槽20に、UFB水貯蔵槽20内の余剰ガスを外部に放出する内部ガス放出口32と、気体吸込部22に接続されて、ガス導入路41a,41bおよびガス供給制御部(オゾン濃度計)42を介して、オゾンガスの供給が行われるオゾンガス供給部(ボンベ)40と、をさらに備えている。
【0060】
以下に、
図10を参照して、この他の実施形態に係るピストン式UFB水製造装置1によるオゾンUFB水27の製造方法について説明する。
【0061】
図10において、例えば、オゾンUFB水27を製造する場合、まずは、操作者によってオゾンガス供給部40のボンベが開栓されるとともに、ガス供給制御部42に対して、供給するガス量の設定が行われる(ステップS11)。
【0062】
その後、操作者によってピストン式UFB水製造装置1のUFB水貯蔵槽20内に、オゾンUFB水27を製造するための溶液(例えば、純水などの原水)が投入される(ステップS01)。
【0063】
次いで、コントロール部15において、プランジャ34の駆動速度と駆動回数とを設定するための入力が行われる(ステップS02)。
【0064】
そして、UFB水貯蔵槽20の内部ガス放出口32が開放されて、UFB水貯蔵槽20内からの余剰ガスの放出が行われる(ステップS12)。
【0065】
この後、所定のプログラムが起動されて、コントロール部15が操作者による設定入力に基づいて駆動部10を制御することにより、スライド部12による保持部14の反復運動が開始される(ステップS03)。保持部14の反復運動は、操作者によって設定入力された駆動速度と駆動回数とに応じて繰り返される。
【0066】
すると、この保持部14の反復運動に伴って、ホルダ部11に固定されたUFB発生部30のプランジャ34が、設定入力された駆動速度と駆動回数とに応じて、シリンジ33内を往復運動させられる(ステップS04)。
【0067】
上述したように、UFB水貯蔵槽20内に貯留された溶液が、UFB発生部30とUFB水貯蔵槽20との間の移動を繰り返し、最終的には、UFB水貯蔵槽20内に所望の粒径を有するオゾンウルトラファインバブル(例えば、ナノレベルの微細気泡)を、所定濃度(量)ほど含有する多量のオゾンUFB水27として貯留される(ステップS05)。
【0068】
こうして、プランジャ34の移動が駆動回数に達すると、操作者によってUFB水貯蔵槽20の内部ガス放出口32が閉塞されて、UFB水貯蔵槽20内からの余剰ガスの放出が阻止される(ステップS13)。
【0069】
また、オゾンガス供給部40のボンベが閉栓されて(ステップS14)、一連のオゾンUFB水27の製造が終了される。
【0070】
こうして製造されたオゾンUFB水27は、適時、いろいろな用途において、自由に使用することが可能となる。
【0071】
上記したように、この他の実施形態によれば、オゾンUFB水27を製造する場合においても、ピストン方式によりウルトラファインバブルを含有した多量のオゾンUFB水を簡単、かつ、安全に製造することができる。
【0072】
なお、特殊ガスとしては、オゾンに限らず、例えば、酸素、窒素、または、各種の医療用ガスなどを用いることも可能である。
【0073】
以上、いくつかの実施形態を例示して本発明の態様について説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1…ピストン式UFB水製造装置
10…駆動部
11…ホルダ部
12…スライド部
14…保持部
15…コントロール部(制御部)
20…UFB水貯蔵槽(水槽)
21a,21b…導水路(配管)
23…気液混合ユニット部
24a,24b…チューブジョイント接手
25…気液接触部材
25a…導水路
25b,25c…気体取込口
27…UFB水(液体)
30…UFB発生部(減圧式のバブル発生器)
31…液加速加圧部
32…内部ガス放出口
33…シリンジ(外筒)
34…プランジャ(押し子)
35…ガスケット
36…パッキン部材
38…減圧吸水室
40…オゾンガス供給部
125…気液流速調整部材
【要約】
【課題】ピストン方式によりウルトラファインバブルを含有した多量のバブル水を簡単、かつ、安全に製造できるようにする。
【解決手段】UFB水27となる液体を貯留するUFB水貯蔵槽20と、このUFB水貯蔵槽20に接続された、シリンジ33とプランジャ34とを有する注射器型のUFB発生部30と、UFB発生部30のプランジャ34を駆動させる駆動部10と、駆動部10を制御するコントロール部15と、を備え、コントロール部15によって駆動部10を制御してプランジャ34を連続的に駆動させ、UFB水貯蔵槽20内に貯留された液体を一旦はUFB発生部30のシリンジ33内に取り込むとともに、シリンジ33内に取り込んだ液体を再びUFB水貯蔵槽20へと移動させることを繰り返すことによって、所望の粒径および量のUFB水27を製造する。
【選択図】
図1