(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】光線療法デバイス
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2022526734
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 US2020062319
(87)【国際公開番号】W WO2021108627
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-05
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596093754
【氏名又は名称】ルミテックス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Lumitex,Inc.
【住所又は居所原語表記】8443 Dow Circle, Strongsville, Ohio 44136 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケアンズ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グレツラー, アラン
(72)【発明者】
【氏名】グジク, キャロリン
(72)【発明者】
【氏名】オア, ティム
(72)【発明者】
【氏名】ソータガムワ, ディヌーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ゾネベルド, アントン
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0140172(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103656868(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0087311(US,A1)
【文献】特表2012-525235(JP,A)
【文献】特開2009-219816(JP,A)
【文献】特表2009-525069(JP,A)
【文献】特開平03-218773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面生体組織よりも下の表面下標的生体組織を照射するための光源療法システムであって、
光を出射する光源と、
複数のウェーブガイドであって、
前記複数のウェーブガイドのそれぞれの受光面で前記光源からの前記光を受け、
前記複数のウェーブガイドのそれぞれの光出射面から光を出射するように構成された、
前記複数のウェーブガイドと、を含み、
前記複数のウェーブガイドのそれぞれは、前記ウェーブガイドから光を取り出すように構成された光取出構造を含み、前記光出射面から出射された前記光の少なくとも50%が、前記光出射面に対する標的角度の10度以内であるようにし、
前記複数のウェーブガイドのそれぞれは、50以下のショアA硬度を有する生体適合性素材から形成されている、
光線療法システム。
【請求項2】
さらに、ハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記表面生体組織に隣接して前記複数のウェーブガイドの位置を維持し、前記表面生体組織に対して前記複数のウェーブガイドのそれぞれの前記光出射面を押圧し、前記複数のウェーブガイドのそれぞれの前記光出射面が前記表面生体組織の曲率に沿うようにする、
請求項1に記載の
光線療法システム。
【請求項3】
前記光源からの光を受け、前記ウェーブガイドの前記受光面に前記光を届ける光ガイドをさらに備え、
前記光ガイドは、前記光源からの前記光を受ける単一基部を含み、
前記単一基部は、複数の分岐部に分岐し、前記複数の分岐部のそれぞれは、前記複数のウェーブガイドの対応するウェーブガイド内で終端し、
前記複数の分岐部のそれぞれは、前記光源からの前記光を前記対応するウェーブガイドに届ける、
請求項1または2に記載の
光線療法システム。
【請求項4】
さらに、前記光源からの前記光を受け、前記受けた光の軌道を変えて前記光源から出射されて前記光ガイドにより受けられる前記光の量を改善するように構成されたレンズアダプタを備える、
または、
前記光源は、前記複数のウェーブガイドから機械的に隔離されて前記光ガイドを介して前記複数のウェーブガイドに光学的に結合された外部光ボックスである、
または、
前記光源は、前記ウェーブガイドに物理的に取り付けられた複数の発光素子を含む、
請求項3に記載の光線療法システム。
【請求項5】
前記複数のウェーブガイドは、少なくとも7つのウェーブガイドを含む、
または、
前記光取出構造は、前記光出射面の反対に位置する前記複数のウェーブガイドのそれぞれの反射面、前記光出射面上のレンズ構造、または、前記光出射面のテクスチャ、の少なくとも1つの形状を含む、
または、
前記表面下標的生体組織は、脳組織、心臓組織、前立腺組織、または、肺組織の少なくとも1つを含む、
または、
前記光は、波長範囲を有し、前記波長範囲は、940nmおよび750nmの少なくとも1つを含む、
請求項1~4のいずれかに記載の光線療法システム。
【請求項6】
さらに、前記表面生体組織および前記光出射面の両方の間に隣接して配置されるように構成された屈折率整合ジェルを含む、
または、
センサおよびコントローラを含み、前記コントローラは、前記センサからの信号を受け、前記受けた信号に基づいて前記光源により出射される前記光を変更するように構成されている、
請求項1~5のいずれかに記載の光線療法システム。
【請求項7】
前記センサは、検出温度に基づく前記信号を出力するように構成され、
前記コントローラは、前記検出温度が温度閾値を超えることを前記信号が示すとき、前記光源により出射される前記光の光束量を低減する、
請求項6に記載の光線療法システム。
【請求項8】
前記センサは、検出光学パワーに基づく前記信号を出力するように構成され、
前記コントローラは、前記検出光学パワーに基づいて前記光源を制御して、前記表面下標的生体組織が所定の光学投与量を受けるようにする、
請求項7に記載の光線療法システム。
【請求項9】
光源からの光を、表面生体組織よりも下の表面下標的生体組織に照射するためのウェーブガイドであって、
前記光源からの前記光を受けるように構成された受光面と、
前記受けた光を出射する光出射面と、
前記ウェーブガイドから光を取り出し、前記光出射面から出射された前記光の少なくとも50%が前記光出射面に対する標的角度において10度以内であるようにする光取出構造と、を含み、
前記ウェーブガイドは、50以下のショアA硬度を有する生体適合性素材から形成されている、
ウェーブガイド。
【請求項10】
前記ウェーブガイドの前記光出射面は、前記表面生体組織に対して押圧されたときに前記表面生体組織の曲率に沿う、
または、
前記光取出構造は、前記光出射面の反対に位置する前記複数のウェーブガイドのそれぞれの反射面、前記光出射面上のレンズ構造、または、前記光出射面のテクスチャ、の少なくとも1つの形状を含む、
請求項9に記載のウェーブガイド。
【請求項11】
表面生体組織よりも下の表面下標的生体組織を照射することによる光線療法を提供する
光源療法装置の作動方法であって、
複数のウェーブガイドを保持するハウジングが、それぞれが50以下のショアA硬度を有する生体適合性素材から形成された複数のウェーブガイドのそれぞれの光出射面を、前記表面生体組織に
向かわせることにより、前記表面生体組織の曲率に沿わせることと、
光源からの光を前記複数のウェーブガイドのそれぞれの受光面
が受けることと、
前記複数のウェーブガイドのそれぞれの光取出構造
が、前記複数のウェーブガイドのそれぞれから前記光を取り出すことにより前記複数のウェーブガイドのそれぞれの光出射面から前記光を出射して、前記光出射面から出射された光の少なくとも50%が前記光出射面に対する標的角度の10度以内であるようにすることと、
を含む方法。
【請求項12】
前
記ハウジング
は、前記表面生体組織に隣接する前記複数のウェーブガイドの位置を維持することをさらに含む、
または、
前記複数のウェーブガイドのそれぞれの前記受光面
が前記光を受けることは、
前記光源からの前記光を、光ガイド
が受けることと、
前記光ガイド
が前記ウェーブガイドの前記受光面に前記光を届けることと、を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光は、前記光源から前記光ガイドの単一基部で受けられ、
前記複数のウェーブガイドのそれぞれの前記受光面に前記光を届けることの前に、前記単一基部を介して送られた前記光が、複数の分岐部であってそれぞれが前記複数のウェーブガイドの対応するウェーブガイド内で終端する複数の分岐部に分けられる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面下標的生体組織は、脳組織、心臓組織、前立腺組織、または、肺組織の少なくとも1つを含む、
または
、
コントローラがセンサからの信号を受けることと、
前記コントローラ
が、前記受けた信号に基づいて前記光源により出射された前記光を変更することと、をさらに含む、
請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記センサにより出力された前記信号は、検出温度に基づき、
前記検出温度が温度閾値を超えることを前記信号が示すとき、前記コントローラは前記光源により出射される前記光の光束量を低減する、
または、
前記センサにより出力された前記信号は、検出光学パワーに基づき、
前記コントローラは、前記検出光学パワーに基づいて前記光源を制御して、前記表面下標的生体組織が所定の投与量を受けるようにする、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略、発光装置に関し、特に、虚血性病状を治療するための発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2019年11月27日に出願された米国出願番号62/940,940の優先権の利益を享受する。この米国出願は、本出願の一部として援用される。
【0003】
全世界的に、急性虚血性脳卒中は、罹患率および死亡率の一般的原因である。急性虚血性脳卒中は、よく虚血再灌流(例えば、再血行再建術治療により)で治療されるが、これは細胞障害性酸素由来フリーラジカル(活性酸素種ともいう)の形成により引き起こされる損傷により、さらなる損傷を引き起こす。
【0004】
損傷を受けた虚血性領域では、フリーラジカルがさらなる細胞死を引き起こす(例えば、タンパク質機能不全、DNA損傷、および、脂質過酸化反応を通じて)。さらに、フリーラジカル損傷は、出血性変化および脳浮腫をも引き起こし得る。
【発明の概要】
【0005】
活性酸素種(フリーラジカルともいう)の大多数は、細胞ストレスの状況下においてミトコンドリア内で生成される。例えば、活性酸素種が、高いミトコンドリア膜電位で生成されることを示す研究がある。特に、細胞ストレスの状況は、シトクロムCオキシダーゼの翻訳後修飾の変化を通じて、シトクロムCオキシダーゼの活性の増大を招き、これが病理学的に高いミトコンドリア膜電位を引き起こす。これが転じて、過剰な活性酸素種の生成および細胞死を引き起こす。
【0006】
光(例えば、赤外光)を用いることで、シトクロムCオキシダーゼ活性を低下させることが可能である。結果的に、光線療法を用いたシトクロムCオキシダーゼ活性の低下により、ミトコンドリア膜電位(およびこれに関連したフリーラジカルの生成)を低下させることが可能である。
【0007】
本開示は、皮膚表面(例えば、頭皮)を照射して表面下標的生体組織(例えば、虚血性事象後の脳)内のフリーラジカル生成を低減することにより、虚血性脳卒中を治療する方法を提供する。本方法は、光源から光を受けるウェーブガイド(wave guide)を利用する。ウェーブガイドは、患者の皮膚表面に隣接して配置され、皮膚表面を通過して表面下標的生体組織を照射する光を出射する。垂直から±25度の範囲外の角度の皮膚表面への入射光は、患者の上部皮膚層を通過して表面下標的生体組織に到達することが困難である可能性があることから、ウェーブガイドは、標的角度(例えば、ほぼ垂直)で光を出射するように構成された光取出構造を含む。すなわち、光取出構造は、ウェーブガイドにより出射された光の軌道を変えて、光ガイドにより出射された光の大部分が光ガイドの中心線から±25度の角度を持つようにする。
【0008】
ある実施形態では、本開示は、深い生体組織(例えば、脳、心臓など)への非侵襲的光線療法治療を提供し、光生体調節メカニズムを利用して虚血性事象(例えば、脳卒中、心不全)からの回復を助けて、活性酸素種またはフリーラジカルであふれた領域の生体組織の自然治癒メカニズムを制限する(この自然治癒メカニズムは、十分に抑制されず、不必要に高い酸素レベルのため脳組織に有害である)。
【0009】
本明細書では、多くの特徴が本発明の実施形態に関して記述されているが、特定の実施形態に関して記述された特徴は、他の実施形態にも採用され得る。以下の記述および添付図面は、本発明のいくつかの例示的実施形態を説明している。これらの実施形態は、本発明の原理が採用され得る種々の方法のいくつかを示しているに過ぎない。本発明の種々の観点による他の目的、利点および新規な特徴は、図面とともに勘案されて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は、必ずしも縮尺は正しくなく、本発明の種々の観点を示し、類似の参照番号は種々の図面内の同一または類似の部品を示すように使用されている。
【
図1】
図1は、光線療法装置の第1実施形態のブロック図である。
【
図2】
図2は、光線療法装置の第2実施形態のブロック図である。
【
図3】
図3は、ウェーブガイドを出た光の例示的分布を示す極座標配光プロットである。
【
図4】
図4は、光線療法装置の例示的ウェーブガイドの上面斜視図である。
【
図5】
図5は、ハウジングを含む光線療法装置の斜視図である。
【
図6】
図6は、患者の頭蓋骨上に配置された光線療法装置の上面斜視図である。
【
図8】
図8は、曲面に沿って曲がった
図3のウェーブガイドの側面図である。
【
図9】
図9は、
図8のウェーブガイドの底面透視斜視図である。
【
図10】
図10は、例示的ウェーブガイドの寸法を含む側面図である。
【
図11】
図11は、別の例示的ウェーブガイドの寸法を含む上面斜視図である。
【
図12】
図12は、ウェーブガイドおよびウェーブガイドにより照射される生体組織の塊の底面斜視図である。
【
図14】
図14は、表面生体組織よりも下の表面下標的生体組織を照射することにより光線療法を提供する方法の実施形態である。
【0011】
以下、本発明が図面を参照して詳細に記述される。図面では、参照番号付きの各要素は、参照番号に付された文字とは無関係に同じ参照番号の他の要素と類似である。明細書では、特定の文字が付された参照番号は、その参照番号および文字を持つ特定の要素を示し、特定の文字が付されていない参照番号は、図面内で参照番号に付された文字とは無関係に同じ参照番号を持つ全ての要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、光源からの光を受け、ウェーブガイドにより出射された光の軌道を制御し、面に対して出射光の角度が所定の角度範囲内に収まるようにするための、ウェーブガイドを含む光線療法装置を提供する。
【0013】
図1および
図2に示された実施形態では、光線療法装置10は、光源12および少なくとも1つのウェーブガイド14を含む。複数のウェーブガイド14は、複数のウェーブガイド14のそれぞれの受光面16で光源12からの電磁放射(光とも称される)15を受ける。複数のウェーブガイド14のそれぞれは、表面下標的生体組織19に向けて光出射面18から光15を出射する。光15は、光取出構造22を利用してウェーブガイド14から取り出される。光取出構造22は、光出射面18から出射される光15の少なくとも50%が光出射面18に対する標的角度において10度以内であるように光を取り出すように構成されている。複数のウェーブガイド14のそれぞれは、50以下のショアA硬度を有する生体適合性素材から形成されている。
【0014】
光源12からの光15は、全方向的に出射され得る。
図3および
図4に描かれた実施形態に示されるように、ウェーブガイド(光指向構造とも称される)14は、受けた光15を再指向して、光出射面18および表面生体組織32に対する再指向された光の角度が所定範囲内に収まるようにする。例えば、光は、出射光の少なくとも70%が表面生体組織32に垂直な方向から±25度の角度で表面32に作用するように、ウェーブガイド14により出射され得る。
図3に示される実施形態では、光出射面18により出射される光15は、皮膚表面に対して約40度の標的角度を中心とし、出射光15の大部分が標的角度の10度の範囲内に含まれている。標的角度は、あらゆる適切な角度であり得る。例えば、標的角度は、皮膚表面32に対してほぼ垂直であり得る(すなわち、0度)。別の例のように、標的角度は、皮膚表面32に対して0度から40度の間のあらゆる角度であり得る。
【0015】
ある実施形態では、圧力がウェーブガイド14に加えられて、光出射面18が皮膚表面32に隣接することを確保する。これは、屈折界面を低減することにより(すなわち、ウェーブガイド14と空気の界面および空気と皮膚表面32の界面の両方の代わりに、ウェーブガイド14と皮膚表面32の界面)、標的生体組織19に到達する光を向上し得る。加えて、光出射面18が皮膚表面32に隣接することは、光出射面18から好ましい角度範囲内で出射された光が、同じ好ましい角度範囲内で皮膚表面32に作用することを確保するのに役立つ。光出射面18と皮膚表面32の間のギャップは、出射光15が皮膚表面32に作用する角度を変更し得る。ウェーブガイド14の柔軟性は、皮膚表面32および/または標的生体組織19の特性に依存し得る。例えば、ウェーブガイド14の柔軟性は、ウェーブガイド14が皮膚表面19の輪郭に沿うのに十分であり得る(例えば、頭蓋骨への曲率Rの半径は50mmであり得る)。
【0016】
ウェーブガイド14は、光を受け、光を表面下標的生体組織19に向けて指向するための、あらゆる適切な物体であり得る。ある例では、ウェーブガイド14は、シリコーン、ウレタン、ポリエチレン、または、その他の素材であり、ショアA硬度50またはそれよりも柔らかい硬度を有する。ウェーブガイド14は、柔軟にモールドされたもの、リジッドなもの、表面生体組織の輪郭に合うように機械加工されたもの、3Dプリントされたもの、屈折性のもの、回折性のもの、レンズ、光ガイド、ファイバ(例えば、円形または平坦な)、織られたファイバ、Uniglo等である。光出射面18を含むウェーブガイド14の一部は、50以下のショアA硬度を有し、より硬い構造により引き起こされ得る生体組織損傷を軽減し得る。
【0017】
別の実施形態では、ウェーブガイド14は、少なくとも半リジッド(50よりも大きなショアA硬度を有する)であり、光出射面18は、表面生体組織19の曲率に沿った曲率を有し得る。さらに別の実施形態では、ウェーブガイド14は、リジッド部(50よりも大きなショアA硬度を有する)、および、柔軟部(50以下のショアA硬度を有する)を含む。リジッド部は、表面生体組織19の曲率に沿った曲率を有する。柔軟部は、リジッド部に隣接して配置され、リジッド部と表面生体組織19の間に位置されるように構成されている。
【0018】
図4に示された実施形態では、光取出構造22は、光出射面18の反対に配置された複数のウェーブガイド14のそれぞれの反射面50、光出射面18上のレンズ構造、または、光出射面18のテクスチャの少なくとも1つの形状を含む。上述の通り、好ましい角度は、標的角度から±10度であり得、50%を超える出射光15がこの角度範囲内に収まり得る。別の実施形態では、少なくとも70%または少なくとも80%の出射光15がこの角度範囲内に収まる。さらに別の実施形態では、少なくとも50%、少なくとも70%、または、少なくとも80%の出射光15が標的角度の±5度の範囲内に収まる。
【0019】
図5~
図7に示されるように、光線療法システム10は、あらゆる適切な数のウェーブガイド14を含み得る。例えば、光線療法システム10は、7つのウェーブガイドを含み得る。ウェーブガイド14の数は、標的生体組織32および患者の特性に依存し得る。例えば、表面下標的生体組織19は、脳組織、心臓組織、前立腺組織、または、肺組織の少なくとも1つを含む。成人の肺組織を照射するため、20のウェーブガイド14が利用され得る。しかしながら、乳児の脳細胞を照射することは、7つのウェーブガイド14を利用し得る。
【0020】
図5に示された実施形態では、光線療法システム10は、ハウジング30を含む。ハウジング30は、表面生体組織32に隣接したウェーブガイド14の位置を維持し、ウェーブガイド14の光出射面18を表面生体組織32に対して押圧して光出射面18が表面生体組織32の曲率に沿うようにする。
【0021】
ハウジング30は、ウェーブガイド14を表面生体組織32に対して押圧するための、あらゆる適切な構造であり得る。例えば、ハウジング30は、弾性バンドであり得、および/または、ウェーブガイド14に付与される圧力を増加または低減するために調節可能であり得る。
図5に示された実施形態では、ハウジング30は、ウェーブガイド14を患者の頭部に対して保持するように形作られている。別の実施形態では、ハウジング30は、ウェーブガイド14を患者の胸部に対して保持するために利用され、患者の心臓および/または肺を照射し得る。
【0022】
図5に示された光線療法システム10は、虚血性の新生児に緊急治療を適用するため(例えば、臍帯が首に巻き付いている場合)に利用され、または、成人の脳卒中の治療に利用される、頭部装着システムであり得る。別の実施形態では、光線療法システム10は、外科的創傷治癒を補助するため、または、心不全患者のための、バンテージ型のシステムであり得る。光線療法システム10は、虚血性事象の治療に限らず、あらゆる適切な生体組織への光線療法に適用するために利用され得る。例えば、表面下標的生体組織19は、内分泌腺組織(例えば、前立腺の外側に配された)、末梢神経組織、胃腸組織、骨格筋などであり得る。
【0023】
ハウジング30は、ハウジングの構造に統合された径方向に放射したグラスファイバ(例えば、織られた)を含み、表面下標的生体組織(標的領域とも称する)に光を届け得る。すなわち、ウェーブガイド14は、ハウジング30内に織られ得る。
【0024】
図1および
図2に示された実施形態では、光線療法システム10は、光ガイド34を含む。光ガイド34は、光源12からの光を受け、ウェーブガイド14の受光面16に光15を届けるように構成されている。
図2に示された実施形態では、光ガイド34は、光源12から光15を受ける単一基部40を含む。単一基部40は、複数の分岐部42に分岐し、複数の分岐部42のそれぞれは、対応するウェーブガイド14内で終端する。複数の分岐部42のそれぞれは、光源12からの光を対応するウェーブガイド14に届ける。
【0025】
ウェーブガイド14は、光ガイド12、および/または、光ガイド12のコーティングまたはオーバーモールドとは別体の部品からなり得る。例えば、光ガイド12は、
図2に示されるように、複数の分岐を含み得る。ウェーブガイド14は、光ガイド12の異なる分岐を受け入れるためのチャネルを含む別体の部品からなり得る。別の例では、光ガイド12は、織られた部品を含み得る(例えば、光ガイドは、互いに織られた光ファイバを含み得る)。この例では、ウェーブガイド14は、光ガイド12のコーティングとして適用され得、または、ウェーブガイド14は、光ガイド12上にウェーブガイド14をオーバーモールドすることにより光ガイド12に適用され得る。
【0026】
ウェーブガイド14は、内部全反射を通じて、光ガイド12により出射された光15の軌跡を変更し得る。すなわち、出射光は、屈折率差のため光指向構造14の表面で反射し得る。代替的または追加的に、光指向構造14は、また、出射光を反射するように構成された反射層50を含み得る。
【0027】
図1および
図2に示される実施形態では、光線療法システム10は、レンズアダプタ44を含み得る。レンズアダプタ44は、光源12からの光15を受け、受けた光15の軌道を変更して、光ガイド34により受けられた光源12からの光15の量が向上されるようにする(例えば、もしレンズアダプタ44が含まれなかった場合に比べて)。例えば、光源12は、異なる波長の光を出射する複数の発光素子を含み得る。光源12は、光15を光ガイド34またはウェーブガイド14に指向するアダプタレンズ44に統合され得る。例えば、レンズアダプタ44は、鏡筒内に収納された平凸レンズであり得る。レンズは、反射防止コーティングを含み得、乾燥して、または、生体組織侵入補助のために屈折率整合ジェルのフィルムとともに適用可能であり得る。
【0028】
光源12は、あらゆる適切な光源であり得る。例えば、光源12は、ウェーブガイド14から機械的に隔離され、光ガイド34を介してウェーブガイドに光学的に結合された外部光ボックスであり得る。ある例では、光源12は、ウェーブガイド34により物理的に支持されていないが、代わりに、テーブルのような外部構造により支持されている。ある実施形態では、光源12は、レーザ発光素子を含む外部光ボックスである(例えば、光源とウェーブガイドを光学的に結合する光学ケーブルとともに外部に配置されている)。
【0029】
光源12により出射された光15は、あらゆる適切な特性を有し得る。光源12は、あらゆる波長の電磁放射(光とも称される)を含み得る。例えば、光源12は、9040nmまたは750nmの少なくとも1つを含む光を出射し得る。ある実施形態では、光源12は、30W、940nmのマルチモードファイバ結合レーザシステム、および、20W、750nmのマルチモードファイバ結合レーザモジュールである。光源は、順次または同時に異なる波長の光を出射し得る。
【0030】
ある実施形態では、光源12は、105μmコアガラスファイバを含む940nm源、および、400μmコアガラスファイバを有する750nmシステムを含む。各発光素子は、レンズアダプタ44を介して、1-to-7溶融ファイババンドルに結合されている(すなわち、光ガイド34)。全ての接続は、工業標準コネクタSMA-905で成され得る。
【0031】
ある実施形態では、光源12は、ウェーブガイド14に物理的に取り付けられた複数の発光素子46を含む。例えば、
図8に示されるように、各ウェーブガイド14は、ウェーブガイド14に取り付けられ、または、ウェーブガイド14により物理的に支持された、1以上の発光素子46を含み得る。発光素子14は、ウェーブガイド14にあらゆる適切な方法で取り付けられ得る。例えば、各ウェーブガイド14は、ウェーブガイド14に接着された発光素子46を含み得る。発光素子46は、接着剤を通じてウェーブガイド14内に光を出射し得る。別の実施形態では、光線療法システム10は、光学インターフェイスを伴うウェアラブル構造内に配置されたLED群を含む。
【0032】
発光素子46は、光を出射するためのあらゆる適切な構造であり得る。例えば、発光素子46は、1以上の発光ダイオード(LED)、有機LED(OLED)、マイクロLED、レーザダイオード、ミニLED、量子ドット(QD)変換、蛍光体変換、エキシマランプ、マルチフォトンコンビネーション、または、SLM波面制御を含み得る。
【0033】
図10および
図11に描かれた実施形態では、例示的ウェーブガイドの寸法が提供される。図示されたウェーブガイドは、脳組織を照射することに利用され得る。
【0034】
図12および
図13に示された生体組織の塊は、最低限の治癒的光束値(例えば、50μW)を受ける生体組織の塊58を表す。線60は、生体組織58内での径方向散乱の方向を示す。同様に、線62は、伝搬の最大深さの方向を示す。
【0035】
光線療法装置10は、虚血性事象を治療するための方法に利用され得る。例えば、光ガイド12は、虚血性事象に近い位置での患者の皮膚表面に隣接して配され得る。例のように、光ガイド12は、出射光が脳卒中を経験した患者の頭皮を照射するように配置され得る。このようにして、光線療法装置10により出射された光は、脳付近または脳内でのフリーラジカルの生成を低減して、脳の虚血性領域内のフリーラジカルの数を低減し得る。
【0036】
図14に移り、表面生体組織32よりも下の表面下標的生体組織19を照射することによる光線療法を提供するための方法100の実施形態が示される。処理ブロック102では、各ウェーブガイド14の光出射面18は、各ウェーブガイド14を表面生体組織32に対して押圧することにより表面生体組織32の曲率に沿わされる。処理ブロック104では、光源12からの光15は、各ウェーブガイド14の受光面16で受け入れられる。処理ブロック106では、光15は、光取出構造22を利用して光を取り出すことにより各ウェーブガイド14の光出射面から出射されて、光出射面から出射された光の少なくとも50%が光出射面に対する標的角度の10度以内であるようにする。
【0037】
ある実施形態では、光線療法システム10は、標的塊のサイズを決定するためのセンサまたはユーザ入力を含む。光線療法システム10に含まれたコントローラ66は、標的エリアサイズに基づいて光源12により出力された光学パワーを変更して特定のパワー密度に合わせる。例えば、センサは、標的塊のサイズを測定するのに利用され得、電気的歪みセンサ、FBG光学歪みセンサ、マシンビジョンシステム、または、空気圧モニタであり得る(すなわち、体積測定を実施するためのもの)。
【0038】
コントローラ66は、様々な実装を有し得る。例えば、コントローラ66は、プロセッサ(例えば、CPU)、プログラマブル回路、集積回路、メモリおよびI/O回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロコントローラ、CPLD(Complex Programable Logic Device)、その他のプログラマブル回路など、あらゆる適切なデバイスを含み得る。コントローラ66は、また、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programable Read Only Memory)、フラッシュメモリ、または、その他のあらゆる適切な媒体のような、非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体を含み得る。以下に記述された方法を実施するための命令群は、非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体内に保存され、コントローラ66により実行され得る。コントローラ66は、システムバス、マザーボードまたはその他のあらゆる公知の適切な構造を介してコンピュータ読み取り可能な媒体およびネットワークインターフェイスに通信可能に接続され得る。
【0039】
光線療法システム10は、また、光学パワーを検出するためのセンサを含み得る。センサは、皮膚表面32(例えば、頭部)に、および/または、光源12内に、配置され得る。センサは、光源12に供給される電力を安定化(regulate)する閉ループシステムの一部として利用され得、標的生体組織19に届けられる光学パワーが所定の範囲内に収まるようにし得る。例えば、センサは、フォトダイオード、SiPM、カメラ、または、スペクトロメータであり得る。コントローラ66は、検出光学パワーに基づいて光源12を制御し得、標的生体組織19が所定の光学投与量を受けるようにし得る。例えば、所定の光学投与量は、生理学的効果を起こす公知の光量であり得る。
【0040】
光線療法システム10は、また、生体組織表面32で皮膚温度を測定するためのセンサ(例えば、サーモメータ)を含み得る。コントローラ66は、測定皮膚温度を受け、光線療法システム10により出力される光学パワーを変更し得、皮膚温度が閾値未満に留まるようにし得る(例えば、過熱を回避するため)。センサは、サーモメータ、赤外線カメラ/フォトダイオード、スペクトロメータ、など、温度を測定するためのあらゆる適切なセンサであり得る。センサは、LDU内に組み込まれ得、標的生体組織上に実装され得、または、空気温度を測定するために利用され得る。
【0041】
コントローラ66は、また、光源12をパルス幅変調するように構成され得る。コントローラ66は、また、生体組織内への光15の侵入を改善するために、および/または、皮膚の温度を調整するために、光源12のデューティサイクルを制御し得る。コントローラ66は、また、同様に、生体組織侵入を改善するために出射光15の周波数を変調し得る。
【0042】
身体へのインターフェイスとして、インターフェイス素材が表面生体組織32に適用され得る。インターフェイス素材は、熱伝導性であり得、および、皮膚温度を仲介し得る。インターフェイス素材は、光学結合を強化するために屈折率整合であり得る。インターフェイス素材は、生体組織を機械的に緩衝するため、および/または、表面生体組織に接着するために、利用され得る。
【0043】
光線療法システム10は、また、生体組織への照射を制御するためのマスクを含み得る。例えば、マスクは、標的生体組織19に適合する切欠きを有する弾性メッシュであり得る。マスクは、熱伝導性、光反射性、光吸収性、分散散乱物、および/または、遮光性であり得る。
【0044】
光線療法システム10は、また、異なるヒューマンファクターに効果をもたらすために設計された特徴を含み得る。例えば、それを利用した人の体験を改善するようになっている、実際に処置をするデバイスに付属されたものである。例として、雰囲気に影響を与える環境光、音、グラフィックスなどである。
【0045】
明細書および請求の範囲内で開示された全ての範囲および比率の限定は、あらゆる方法で組み合わせられ得る。特段の言及がない限り、「a」「an」および/または「the」への参照は、1または複数を含み得、そして、単数形のアイテムへの参照は、また、複数形のそのアイテムを含み得る。
【0046】
本発明は、ある実施形態または複数の実施形態に関して開示され且つ説明されているが、当業者は、本明細書および添付図面を読み且つ理解することで均等な代替及び変更を想到するであろう。特に上記要素(部品、アセンブリ、装置、組成など)により発揮される種々の機能に関して上記要素を表現するのに利用された用語(「手段」の参照を含む)は、特段の指定が無い限り、たとえそれがその機能を発揮するとして本発明の例示的実施形態または複数の実施形態で開示された構造物とは構造的には均等ではなくても、その説明された要素のその特定の機能を発揮するあらゆる要素に相当することを意図されている(すなわち、機能的均等)。さらに、本発明の特定の特徴が数例の実施形態のうちの1または複数の実施形態のみで上述されているかもしれないが、そのような特徴は、あらゆる任意または特定の応用に望まれ且つ利点を得るように、他の実施形態の1または複数の他の特徴と組み合わせ得る。