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特許7357983モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物、それを得るための方法、及び美容用品組成物若しくはニュートリコスメティクス組成物におけるその使用
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  • 特許-モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物、それを得るための方法、及び美容用品組成物若しくはニュートリコスメティクス組成物におけるその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物、それを得るための方法、及び美容用品組成物若しくはニュートリコスメティクス組成物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20231002BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q19/02
A61Q19/08
A61Q1/00
A61Q19/10
A61K36/185
A61P17/00
A61P17/18
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022571222
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2021063707
(87)【国際公開番号】W WO2021234166
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】2005433
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2102631
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522452190
【氏名又は名称】アジャンス フランセーズ プール ル デヴロプマン ダル ウラ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ドディネ エリザベート
(72)【発明者】
【氏名】ブールジェトー ヴァンサン
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530769(JP,A)
【文献】特表2019-502731(JP,A)
【文献】特表2002-507575(JP,A)
【文献】特表2009-511466(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108192718(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109486889(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
A23L 5/40- 5/49
A23L 31/00-33/29
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド加水分解物を含む、モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物であって、
前記ペプチド加水分解物は、
アミノ酸誘導体、アミノ酸、ペプチド及びグリコペプチドを含み、
分子量が100Daから6000Daの間であり
前記抽出物は、熟したモリンガ・ペレグリナの果実殻付き種子の化学タンパク質分解によって得られたものであり前記化学タンパク質分解は、16℃から25℃の温度で約2時間、13より高いpHで行われる、抽出物。
【請求項2】
前記抽出物は、0.3%から3%の揮発性化合物をさらに含み、この化合物の50%、すなわち前記抽出物の0.15%から1.5%が、軽ニトリル化合物、主にイソブチロニトリル及びメチルブタンニトリルから構成され、この化合物の5%から10%、すなわち前記抽出物の0.015%から0.3%が、イソチオシアネート誘導体、主にイソプロピルイソチオシアネート及びイソブチルイソチオシアネートから構成され、この化合物の1%から5%、すなわち0.003%から0.15%が、精油、主にユーカリプトール、メントール及びベンズアルデヒドから構成される、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
アミノ酸誘導体、アミノ酸、ペプチド及びグリコペプチドを含むペプチド加水分解物であって分子量が100Daから6000Daの間であるペプチド加水分解物を含む、モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を得るための方法であって、
熟したモリンガ・ペレグリナの果実の殻付き種子の化学タンパク質分解を行う工程を含み、
前記化学タンパク質分解は、16℃から25℃の温度で約2時間、13より高いpHで行われる、方法。
【請求項4】
a)モリンガ・ペレグリナの果実が熟したときに採取された殻付き種子を収集し、乾燥させて、内部水分含量を8%未満とする工程と、
b)乾燥させた前記種子をプレスして、油を前記種子の残りの部分から分離させて、6重量%未満の残油を含む固形物を得る工程と、
c)前記工程b)で得られた前記固形物を粉砕する工程と、
d)前記工程c)で得られた粉砕された前記固形物を、水相中に分散させる工程と、
e)前記工程d)で得られた水分散液を用いて前記化学タンパク質分解を行う工程と
f)得られたペプチド加水分解物を安定させるために、前記化学タンパク質分解を中和させる工程と、
g)前記ペプチド加水分解物を固液分離によって回収する工程と、
h)前記ペプチド加水分解物を限外ろ過によって精製する工程とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
i)前記工程h)で得られた前記ペプチド加水分解物を凍結乾燥させる工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程g)の前記固液分離は、遠心分離、脱水又はろ過などの各種処理によって行われる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程h)の前記限外ろ過は、100Daから6000Daの間カットオフ閾値で行われる、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程h)の前記限外ろ過は、1500Daから5000Daの間のカットオフ閾値で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程h)の前記限外ろ過は、3000Daから4500Daの間のカットオフ閾値で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
活性剤として有効量の請求項1又は2に記載のモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物と、生理学的に許容される添加剤と、を含有する、美容用品組成物又はニュートリコスメティクス組成物。
【請求項11】
前記組成物は、皮膚への局所適用のために製剤化された美容用品組成物であり、
前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物は、前記美容用品組成物の総重量に対して0.002重量%から20重量%濃度で前記美容用品組成物中に存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物は、前記美容用品組成物の総重量に対して0.01重量%から10重量%の濃度で前記美容用品組成物中に存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
口摂取用に製剤化されたニュートリコスメティクス組成物であって
リンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物が、前記ニュートリコスメティクス組成物の総重量に対して0.01重量%から100重量%の濃度で前記ニュートリコスメティクス組成物中に存在する、ニュートリコスメティクス組成物。
【請求項14】
請求項1013のいずれか1項に記載の組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用であって、当該使用は、皮膚、粘膜又は外皮の外観の改善、皮膚又は粘膜の乾燥の予防及び/又は対処、皮膚の老化及び/又は光老化のサインの予防及び/又は対処、美白の促進、並びに痩身の促進のための、使用。
【請求項15】
美容用品組成物又はニュートリコスメティクス組成物を得るための方法であって、
請求項3~9のいずれか1項に記載の方法を実行して、前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を得る工程と、
活性剤として、有効量の前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を提供する工程と、
生理学的に許容される添加剤を提供する工程と、を含む、方法。
【請求項16】
得られた前記組成物は、皮膚への局所適用のために製剤化された美容用品組成物であり、
前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物は、前記美容用品組成物の総重量に対して0.002重量%から20重量%の濃度で前記美容用品組成物中に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物は、前記美容用品組成物の総重量に対して0.01重量%から10重量%の濃度で前記美容用品組成物中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
経口摂取用に製剤化されたニュートリコスメティクス組成物を得るための方法であって、
請求項3~9のいずれか1項に記載の方法を実行して、前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を得る工程と、
前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を、前記ニュートリコスメティクス組成物の総重量に対して0.01重量%から100重量%の濃度で提供する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容用品及びニュートリコスメティクス分野に関し、より詳細には、スキンケア組成物からなる製剤に含まれる活性成分の分野に関する。本発明は、ペプチド加水分解物を主に含むモリンガ・ペレグリナ(Moringa peregrina)種子固形物の抽出物に関する。本発明はまた、モリンガ・ペレグリナ種子固形物の特定の抽出物を得るための方法、このような抽出物を含む美容用品又はニュートリコスメティクス組成物、そして最後に、皮膚、頭皮及び外皮をケアするためのこのような組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ワサビノキ科(Moringaceae)は、Saharo-Sindian地域の植物相の要素である単属の科(属が1つのみ、Moringa adans)であり、著者らによると、12種から14種で構成され、東アフリカからアジアに分布している。本属は、慣用的には3つのセクションに分けられるが、系統解析により単系統であることは確認されていない。むしろこの解析により、パシコール(「瓶の木」)、「塊茎の木」、及び瓶の木でも塊茎の木でもないもの(「細長い木」)という、特定の形態学的特徴を中心とするクレードが明らかとなった。モリンガ・ペレグリナ(Forssk.)Fiori種は第3群に属する。属又は科に関するスパースな遺伝学的研究により、特にインドモリンガ、モリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera Lam.)に関して、属中の他の種に対する種の実体が確かめられる(特に次の論文参照。OLSON, M.E. 2002, Combining Data from DNA Sequences and Morphology for a Phylogeny of Moringaceae (Brassicales), Systematic Botany 27(1): 55-73; HASSANEIN, A.M.A. AND AL-SOQEE, A.A., 2018, Morphological and genetic diversity of Moringa oleifera and Moringa peregrina genotypes, Horticulture, Environment and Biotechnology 59(2): 251-261)。サウジアラビアの様々な場所でサンプリングしたモリンガ・ペレグリナに関する最近の論文では、ITSマーカーを用いることにより同種の遺伝的安定性が認められたが(ALAKLABI, A., 2015, Genetic diversity of Moringa peregrina species in Saudi Arabia with ITS sequences, Saudi Journal of Biological Sciences 22: 186-190)、但し、集団内の遺伝的変異は高いレベルであると結論づけられた。
【0003】
モリンガ・ペレグリナ種はイエメン、オマーン、サウジアラビア、東アフリカ、スーダン、エチオピア、エリトリア、ソマリア、ジブチの岩の多い環境で見られる。イランにおけるその存在は南東部地方に限られているように見えるが、これには確認が必要である(PROTA14 = MUNYANZIZA E. AND YONGABI K.A., Vegetable oils/Oleaginous plants, Moringa peregrina (Forssk.) Fiori, http://database.prota.org/protahtml/moringa peregrina_fr.htm、2019年10月23日にアクセス)。中東及びエジプトでは、現在、この種は、主にスーダン地域のセクターにおいて、希少な分散した遺存種ステーション(高地でのわずかな個体群を除く)によってのみ代表される。モリンガ・ペレグリナは今日、スーダンとイエメンでも珍しく、危機に直面していえると考えられている。モリンガ・ペレグリナは、そのグレードの他の種と比較して最も乾燥し荒れた生息地を占めている。モリンガ・ペレグリナは、熱帯及び亜熱帯地域で大規模に商業的に植栽されているモリンガ・オレイフェラよりも明らかに耐乾性が高い。最近の研究では、種子の大きさと太さが発芽時間並びに若い個体の成長速度及び速度に好影響を与えることが示されており(GOMAA N.H. AND PICO F.X., 2011, Seed germination, seedling traits, and seed bank of the tree Moringa peregrina (Moringaceae) in a hyper-arid environment, American Journal of Botany 98(6): 1024-1030)、このことは数よりも種子品質に関する資源の割り当てにおいて調整がされることを示しており、これにより、モリンガ・ペレグリナは極端な(超乾燥)非生物環境において効率的に繁殖することが可能となる。モリンガ・ペレグリナ種子は、モリンガ・オレイフェラよりも細胞層に関して厚い中層を有する。
【0004】
モリンガ・ペレグリナ油がウラーの地域のイスラムの始まりにおいて活発に取り引きされたことを示すのに役立ついくつかの過去の報告が存在する(NASEEF, A.A.S.,1995, Al-‘Ula, A study of Cultural and Social Heritage)。地元でモリンガ・ペレグリナから生産される油は、現在では主に個人消費又は地元市場向けである。サウジアラビアでは、葉が、糖尿病、腸疾患、眼疾患及び貧血の治療のための内服用煎剤として伝統的に使用されており(ABDEL-KADER, M.S., HAZAZI A.M. A., ELMAKKI O.A. AND ALQASOUMI S.I., 2018, A survey on the traditional plants used in Al Kobah village, Saudi Pharmaceutical Journal 26(6): 817-821)、利尿薬、発赤剤及び収れん薬として使用されている(サウジアラビアのリヤドにあるサウジアラビア国立科学技術センターに提出された報告書である、AQEEL A.A.M., TARIQ M., MOSSA J.S., AL-YAHYA M.A. AND AL-SAID M.S., 1984, “Plants used in Arabian Folk medicine”)。オマーンでは、夏の終わりに女性によって抽出された油は、片頭痛、発熱、熱傷、裂傷、骨折、便秘及び胃の痛みに対処するため、また、筋肉痛、毛髪の乾燥及び労働による痛みに対処するために使用される(GHAZANFAR S.A., 1994, Handbook of Arabian Medicinal Plants, 1st ed., CRC Press, Boca Raton, Ann Arbor, U.S.; GHAZANFAR S.A., 1998, Plants of Economic Importance, cap. 15, in GHAZANFAR, S.A. AND FISHER, M. (ed.) Vegetation of the Arabian Peninsula. Geobotany 25, pages 241-264, Kluwer Academic Publishers, table 11.1, page 247 and 11.7 page 251)。また、これは、香料組成物(GHAZANFAR S.A., 1998, page 259)において使用され、またオマーンとイエメンではフェースローションとしても使用された(GHAZANFAR S.A. AND RECHINGER B., 1996, Two multi-purpose seed oils from Oman. Plants for Food and Medicine。この論文は1996年7月1日から7日にロンドンで開催されたEconomic Botany and International Society for Ethnopharmacologyの合同会議で発表された)。
【0005】
モリンガ・オレイフェラ種子に由来する抽出物は美容用品分野で知られている。例えば、FR296879には、乾燥抽出物100g当たり、油(トリグリセリド、脂肪酸及び極性脂質を含む)を5%から50%及びポリフェノールを0.01%から5%含有するモリンガ・オレイフェラのホールシード(graines entieres、形を崩していない種子)の抽出物(テグメントを含む)、並びに皮膚の老化に対処するための美容用品組成物におけるその使用が開示されている。上記文献では、モリンガ・オレイフェラのホールシードに対して低極性溶媒を用いる抽出が行われる。
【0006】
また、FR2776519から、濁水をきれいにする効果で知られているモリンガ・オレイフェラ種子からのタンパク質抽出物が、皮膚及び粘膜に対する軟化、生理学的コンディショニング、保湿、再構築及び修復効果、並びに抗汚染効果を有することも知られている。上記文献では、活性成分は、4N水酸化ナトリウムを用いてpH7.5で1時間モリンガ・オレイフェラの固形物(tourteau)を水抽出することによって得られる、6500Daから8800Daの分子量を有するタンパク質である。
【0007】
また、FR2825267から、モリンガのホールシード若しくは粉砕された種子、殻付きの種子若しくは殻が剥かれた種子、又は製粉を行った種子の抽出物、あるいは、脱脂又は非脱脂タンパク質の抽出物が、脱臭及び不快な臭いの抑制、清潔さ、私的な衛生、口腔衛生、デンタルケア、並びに皮膚に対する軟化、保湿、鎮静及び抗疲労化粧品特性の分野で役立つことが知られている。上記文献では、種子が脱油されていない場合、全タンパク質抽出物が向上した活性を有することが示されている。
【0008】
FR3076460は、敏感な、感作された、高反応性の、脆弱な及び/又は脆化された皮膚及び/若しくは粘膜を治療するための、並びに/又は、紅斑、特に乳児のおむつかぶれの治療及び/若しくは予防における非発芽及び脱油モリンガ・オレイフェラ種子のタンパク質抽出物の使用に関する。上記文献の抽出方法は、分子量が約8800Daのタンパク質の主要な画分の生産を可能とする。
【0009】
また、KR2013/0088224には、特に超臨界流体を使用する抽出によって得られる発芽したモリンガ・オレイフェラのホールシードの抽出物の美容用品における使用が開示されている。この方法は、ホワイトニング美容用品用途のための活性剤として記載されている無極性アミノ酸及びカロチノイドを分離することを可能にする。
【0010】
上に示した文献はすべてモリンガ・オレイフェラ種の使用に関するものであり、モリンガ・ペレグリナ種から得られる抽出物の美容用品分野における使用については記載されていない。
【0011】
より具体的には、モリンガ・ペレグリナ種に関しては、モリンガ・ペレグリナの葉又はホールシードから得た特定のフェノール性及びフラボノイド化合物が抗酸化活性を有することが知られている(AL-DABBAS M., 2017, Antioxidant activity of different extracts from the aerial part of Moringa peregrina (Forssk.) Fiori, from Jordan, Pakistan Journal of Pharmaceutical Sciences, 30(6): 2151-2157)。これらの化合物は、葉又はホールシードからメタノール、酢酸エチル又はヘキサンなどの溶媒で抽出される。最大量の活性化合物を有するのは葉であるとみられる。また、ABU TARBOUSHらによるXP055753092(2005年)には、10時間にわたる酵素加水分解によって生成されたモリンガ・ペレグリナの殻付き種子からの加水分解物の抽出が開示されている。この抽出の目的は、油と水を吸収する能力が高い生産物を得ることである。最後に、NASHEFらによるXP0010830(1977年)には、概して、タンパク質の物理的及び化学的特性並びにそれらの栄養価の改変をもたらす可能性がある、主に純粋なタンパク質に対するアルカリ加水分解の結果を開示している。0.1Mの水酸化ナトリウで使用される加水分解条件は、50℃の温度で24時間である。この文献は、これらの条件下で塩基で処理されたタンパク質を与えられたラットにおける腎病変について言及している。
【0012】
したがって、モリンガ属において使用される種に応じて、植物の部位(葉又は種子)、種子の部位(ホールシード、あるいはそうでなければ殻が剥かれた又は殻付き)及び行われる抽出方法(特に溶媒の選択)によって、抽出される分子が異なることが分かる。抽出物の組成により、生理活性、そして結果的に美容用品効力が調整される。
【0013】
上記を鑑みて、本発明が解決しようとする課題の1つは、美容用品に使用可能で且つ使用が容易である、モリンガ属の及びワサビノキ科のモリンガ・ペレグリナ種の抽出物をベースとする新規の製品を開発することである。
【0014】
したがって、出願人は、モリンガ・ペレグリナ種の種子の固形物から得られる新規の抽出物を明らかにし、これは、特に、皮膚、粘膜及び外皮の外観を改善し、特に、皮膚及び/又は粘膜の乾燥の予防及び/又は対処、皮膚の老化及び/又は光老化のサインの予防及び/又は対処、皮膚の美白の促進及び老化斑の予防、並びに痩身の促進、並びに皮膚の赤らみの予防又は軽減をするものである。本発明による抽出物は、モリンガ・ペレグリナ種子固形物のペプチド加水分解物を主に備える。特にモリンガ・ペレグリナの殻付き種子の固形物から得られる抽出物は従来技術の抽出物と比較して、第1に、使用される特定の出発種、第2に、その特定の分子プロファイルという2つの点で、美容用品分野において新規である。
【0015】
2018年4月10日のフランス共和国政府とサウジアラビア王国との間の政府間合意により、出願人アジャンス フランセーズ プール ル デヴロプマン ダル ウラ(AFALULA)と、Commission Royale pour AlUlA(RCU)は、特に、先住植物に由来する天然産物の地元生産のため、並びに生物多様性及びサウジアラビア王国のウラー地域の権利を保護するために、持続可能な農業及び地元経済を開発する共同プロジェクトを有する。サウジアラビア王国は2020年10月8日以降、名古屋議定書のメンバーである。本特許の起案時において、名古屋議定書が関連する地方法の側面に統合される施行規則が検討中である。したがってこの段階では、サウジアラビア王国は本特許出願及び名古屋議定書に関して特定の要件を定めていない。したがって、本特許出願の出願日において、遺伝資源へのアクセスに関するコンプライアンス要件の証明はない。
【発明の概要】
【0016】
本発明の第1の主題は、ペプチド加水分解物を主に含む、モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物であって、ペプチド加水分解物は、アミノ酸誘導体、アミノ酸、ペプチド及びグリコペプチドを含み、分子量が100Daから6000Daの間、優先的には1500Daから5000Daの間、より優先的には3000Daから4500Daの間であり、前記抽出物は、モリンガ・ペレグリナの果実が熟したときに、殻付き種子から、16℃から25℃の温度で約2時間、13より高いpHで化学タンパク質分解を行うことにより得られたものである。
【0017】
その特定の特徴により、本発明による抽出物はモリンガ属及びワサビノキ科においてユニークである。モリンガ・ペレグリナ種は、属の他の種、特にモリンガ・オレイフェラの種とは異なる特定のペプチド加水分解物を有することが以下において実証され、これは出願人により明らかにすることができたものである。
【0018】
本発明の第2の主題は、本発明によるモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を得るための方法であり、この方法は、
a)モリンガ・ペレグリナの果実が熟したときに採取された殻付き種子を収集し、乾燥させて、内部水分含量を8%未満とする工程と、
b)乾燥させた種子をプレスして、油を種子の残りの部分から分離させて、6重量%未満の残油を含む固形物を得る工程と、
c)工程b)で得られた固形物を粉砕する工程と、
d)工程c)で得られた粉砕された前記固形物を、水相中に分散させる工程と、
e)工程d)で得られた水分散液の化学タンパク質分解を、13より高いpHで、16℃から25℃の温度で約2時間行う工程と、
f)得られたペプチド加水分解物を安定させるために、前記化学タンパク質分解を中和させる工程と、
g)ペプチド加水分解物を固液分離によって回収する工程と、
h)ペプチド加水分解物を限外ろ過によって精製する工程と、その後、オプションで、
i)工程h)で得られたペプチド加水分解物を凍結乾燥させる工程と、を含む。
【0019】
本発明の第3の主題は、活性剤として有効量の本発明によるモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物と、生理学的に許容される添加剤と、を含有する美容用品組成物又はニュートリコスメティクス組成物である。
【0020】
最後に、本発明の第4の主題は、皮膚、粘膜又は外皮の外観の改善、皮膚及び粘膜の乾燥の予防及び/又は対処、皮膚の老化及び/又は光老化のサインの予防及び/又は対処、皮膚の美白促進、並びに痩身の促進のための、本発明の組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用である。
【0021】
添付の図面を参照して、説明のみを目的として非限定的に示される本発明のいくつかの特定の実施形態についての以下の記載から、本発明はより良く理解され、そのさらなる目的、詳細、特徴及び利点がより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】皮膚の表面に対する種々の製品の保湿効果の比較結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、別段の定めがない限り、ある範囲が与えられた場合にはその範囲の上限及び下限が含まれるものとする。
【0024】
本発明において、以下の略語は以下に示す意味を有する。
・MTT:3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT試験は生細胞をカウントするための迅速な方法である)
・SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
・PBS:リン酸緩衝生理食塩水
・ELISA:酵素免疫測定法
・PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
・ANOVA:分散分析
・MSH:メラノサイト刺激ホルモン
【0025】
本発明においては、以下の定義が適用される。
・「主にペプチド加水分解物」:乾燥物の重量に対し、ペプチド、オリゴペプチド、グリコペプチド及びアミノ酸又はそれらの揮発性ニトリル誘導体の乾燥物の量が10%超え、優先的には20%超え、より優先的には30%超え、さらに最大約40%(質量/質量)、より優先的には50%である。
・「有効量」:所望の結果を得るため、すなわち、特に皮膚の外観を改善するために必要な活性分子の量。
・「タンパク質分解」:化学的又は酵素的加水分解による、タンパク質のペプチド、オリゴペプチド及びその塩基性フラグメント(アミノ酸)への分解。
・「局所適用」:本発明による活性成分又はこれを含有する組成物を、皮膚、粘膜又は外皮の表面上に適用する又は広げること。
・「生理学的に許容される」:毒性、不適合性、不安定性又はアレルギー反応のリスクなしに、ヒトの皮膚と接触させる局所的使用、又は他の投与経路を介する使用、例えば経口又は皮膚への注入に適している。
・「固形物(tourteau)」:プレス後の種子の脱油部分。これは、種子から油を抽出した際の固体残留物である。これは、油を生産する工程である粉砕作業の副産物である。これは通常は種子の質量の50%から75%である。
・「殻付き種子」:採取した種子の殻(果皮)及び上皮が実の周囲に維持されていることを意味する。
・「果実が熟したとき」:果実が熟していることを意味し、優先的には、鞘が裂開の開始時にあって暗いベージュ色から茶色に変わり、鞘の下側4分の1が180°ねじれることで弁が開こうとするときを意味する。
・「約」:所与の情報に対するプラス又はマイナス10%から20%のマージン。
・「活性分子のプール」、また、「活性成分」:モリンガ・ペレグリナ種子固形物から本発明の方法にしたがって抽出されたペプチド加水分解物。この加水分解物は、本発明に記載の生理活性の原因となる。
・「活性剤」:記載される生理活性を得るのに十分な量の本発明による抽出物。抽出物が液体であるか又は乾燥されたものであるか、濃縮されたものであるか又はその他であるかに応じて、活性剤の量は、組成物の総重量に対して0.002重量%から40重量%の割合で変わり得る。
・「皮膚の老化のサイン」:老化による皮膚及び外皮の外観のあらゆる変化、例えば、しわや細かい線、しなびた皮膚、たるんだ皮膚、薄くなった皮膚、皮膚の弾力性及び/若しくはトーンの欠如、鈍くつやのない皮膚、皮膚の色素沈着斑、毛髪の変色、又は爪のステイン、並びに変化した外観によって組織的に反映されない皮膚のあらゆる内部変化、例えば、紫外線(UV)照射への暴露後の皮膚のあらゆる内部劣化。
【0026】
本発明の第1の主題は、ペプチド加水分解物を主に含むモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物であって、ペプチド加水分解物はアミノ酸誘導体、アミノ酸、ペプチド及びグリコペプチドを含み、分子量が100Daから6000Daの間、優先的には1500Daから5000Daの間、より優先的には3000Daから4500Daの間であり、前記モリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物は、モリンガ・ペレグリナの果実が熟したときに、殻付き種子から、16℃から25℃の温度で約2時間、13より高いpHで化学タンパク質分解を行うことにより得られたものである。
【0027】
以下に記載するプロファイルにあるようなペプチド、オリゴペプチド、グリコペプチド及びアミノ酸を含むペプチド加水分解物は、これまで、モリンガ・ペレグリナ属の種子の抽出物において実証されたことはない。モリンガ・ペレグリナ種は非常に乾燥した気候で育つ。したがって、モリンガ・ペレグリナ種は、乾燥に適応する及び極限環境で繁殖するその能力により独特の特徴を獲得することが可能となり、出願人はこれを、モリンガ・ペレグリナ種子固形物に対して特定の抽出方法を使用することで特定することができた。
【0028】
本発明の文脈において、選択される植物部分はモリンガ・ペレグリナ種子の固形物である。モリンガ・ペレグリナ種子は、その油の抽出に使用されることが知られており、これは、個人消費のために又は種々の伝統的な薬物治療において有用である。種子の脱油後に得られる固形物は、現在、特に動物用飼料に使用されている廃棄物である。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明による抽出物は、殻付きのモリンガ・ペレグリナ種子の固形物から得られる。
【0030】
一実施形態では、本発明による抽出物のペプチド加水分解物はアミノ酸誘導体、アミノ酸、ペプチド及びグリコペプチドを含み、分子量が100Daから6000Daの間、より具体的には1500Daから5000Daの間、さらにより具体的には3000Daから4500Daの間である。
【0031】
別の実施形態では、抽出物はまた、0.3%から3%の揮発性化合物を含み、この化合物の50%、すなわち本発明による抽出物の0.15%から1.5%が、軽ニトリル化合物、主にイソブチロニトリル及びメチルブタンニトリルから構成され、この化合物の5%から10%、すなわち本発明による抽出物の0.015%から0.3%が、イソチオシアネート誘導体、主にイソプロピルイソチオシアネート及びイソブチルイソチオシアネートから構成され、これらの化合物の1%から5%、すなわち本発明による抽出物の0.003%から0.15%が、精油、主にユーカリプトール、メントール及びベンズアルデヒドから構成される。
【0032】
本発明の第2の主題は、本発明によるモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物を得るための方法であって、この方法は、
a)モリンガ・ペレグリナの果実が熟したときに採取された殻付き種子を収集し、乾燥させて、内部水分含量を8%未満とする工程と、
b)乾燥させた種子をプレスして、油を種子の残りの部分から分離させて、6重量%未満の残油を含む固形物を得る工程と、
c)工程b)で得られた固形物を粉砕する工程と、
d)工程c)で得られた粉砕された前記固形物を、水相中に分散させる工程と、
e)工程d)で得られた水分散液の化学タンパク質分解を、13より高いpHで、16℃から25℃の温度で約2時間行う工程と、
f)得られたペプチド加水分解物を安定させるために、前記化学タンパク質分解を中和させる工程と、
g)ペプチド加水分解物を固液分離によって回収する工程と、
h)ペプチド加水分解物を限外ろ過によって精製する工程と、その後、オプションで、
i)工程h)で得られたペプチド加水分解物を凍結乾燥させる工程と、を含む。
【0033】
果実が熟したとき及び優先的には鞘が裂開の開始時にあるときに、殻付き種子が収集される、すなわち、その種子の殻(果皮)は保たれる。
【0034】
種子は内部水分含量が8%未満、優先的には約6%となるよう乾燥され、この乾燥は、優先的には、太陽光から遮蔽された、好ましくは外気中の日陰下で、通気されたラック上で行われる。
【0035】
次いで、乾燥させた種子をすぐに冷間プレスしながら粉砕し、これにより、油を、圧縮された種子の残りの部分、すなわち固形物から、機械的に分離させることが可能となる。
【0036】
次いで、固形物は、ハンマーミル、フレイルミル、ナイフミル、破砕/細断ミル、ボールミル又はすりこぎミルなどの任意のタイプの機械ミルを用いて粉砕され、但し任意のタイプのクライオミルを用いて粉砕され得る。
【0037】
工程d)による水相中における分散及び工程e)によるタンパク質分解は、有利には常に撹拌しながら行われ、したがって液体中における固体の分散及び均等化が可能となり、交換表面全体が向上し結果としてタンパク質分解が向上する。
【0038】
得られる液体ペプチド加水分解物は、密度が1より大きく、優先的には約1.1であり、乾燥物含有量が10%から15%、好ましくは約12.5%であり、窒素含有化合物を1%から6%含み、特に揮発性ニトリル誘導体を0.5%から1.5%の割合で、優先的には約0.8%の割合で含み、そして、ポリフェノールを20mg/リットル(0.0002%)含む。
【0039】
本発明による方法の優先的な実施形態では、工程g)の固液分離は、遠心分離、脱水又はろ過などの各種処理によって行われる。
【0040】
本発明による方法の別の優先的な実施形態では、工程h)の限外ろ過は、100Daから6000Daの間、より具体的には1500Daから5000Daの間、さらにより具体的には3000Daから4500Daの間のカットオフ閾値で行われる。
【0041】
本発明による一実施形態では、種子固形物抽出物を得るための方法は、水性溶媒中で使用される総重量に対して固形物が25重量%以下となる割合で、16℃から25℃の温度で約2時間、撹拌しながら、タンパク質分解を行うことによって、殻付き種子固形物から得ることを含む。
【0042】
得られた液体モリンガ・ペレグリナ抽出物を得るための方法の一実施形態では、ペプチド加水分解物は、蒸留、マイクロろ過、限外ろ過及び/又はナノろ過によって精製され、これにより、抽出物を、同様に抽出された揮発性ニトリル誘導体に対して、目的の化合物として濃縮する。これらの精製工程により、上に記載したような他の抽出された化合物を使って目的の化合物のプールを濃縮することが可能となる。
【0043】
本発明による抽出方法の別の実施形態では、得られた液体抽出物は乾燥されて、モリンガ・ペレグリナ種子固形物の乾燥抽出物が得られ、当該乾燥抽出物には、乾燥物の重量に対し、ペプチド、オリゴペプチド、グリコペプチド及びアミノ酸又はそれらの揮発性ニトリル誘導体の乾燥物が、10%超え、優先的には20%超え、より優先的には30%超え、さらに最大約40%(質量/質量)、より優先的には50%の量で含まれる。
【0044】
本発明の一実施形態では、得られた液体モリンガ・ペレグリナ種子固形物抽出物を、例えば、噴霧化、凍結乾燥又はゼオドレーションにより、優先的に乾燥させて、固体モリンガ・ペレグリナ種子抽出物を得るようにし、水分は蒸発除去されている。乾燥は、マルトデキストリン、シクロデキストリン若しくはイヌリンなどの乾燥サポート添加剤の存在下で、又はフィロケイ酸塩、ケイ酸マグネシウム若しくは炭酸塩及びそれらの塩などのミネラル担体の存在下で行うことができる。
【0045】
本発明はまた、本発明による抽出方法を介して得ることができるモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物に関する。
【0046】
本発明の第3の主題は、活性剤として有効量の本発明によるモリンガ・ペレグリナ種子固形物の抽出物と、生理学的に許容される添加剤と、を含む美容用品組成物又はニュートリコスメティクス組成物である。
【0047】
本発明による組成物は、局所投与又は経口投与に適した種々の製剤の形態に製剤化することができる。
【0048】
第1の変形例によれば、種々の製剤は局所投与に適しており、クリーム、水中油型及び油中水型エマルジョン、ミルク、軟膏、ローション、オイル、バルム、水性若しくは水性-アルコール性若しくはグリコール性溶液、血清、粉末、パッチ、スプレー、又は外部適用のためのその他の任意の製品、例えば医療デバイス若しくは美容テキスタイル製品を含む。
【0049】
第2の変形例によれば、種々の製剤は経口投与に適しており、植物抽出物は、食品組成物中又は食品サプリメント中に含まれ得るペプチド加水分解物を含む。食品サプリメントは、本発明の文脈において、硬質ゲルカプセル又は軟質ゼラチン又は植物カプセルの形態であってもよい。前記食品サプリメントは、植物抽出物を0.01重量%から100重量%含有してもよい。
【0050】
食品用途に関して、栄養又は美容(美容食品又はニュートリコスメティクス)目的のために、組成物は、有利には経口投与に適した製剤の形態で製剤化される。この組成物は添加剤を含まなくてもよく、その全体が、乾燥された形態のペプチド加水分解物を含む植物抽出物から構成されてもよい。
【0051】
優先的な実施形態では、本発明による組成物は、より具体的には局所投与が意図される。したがって、この組成物は、美容用品として許容される媒体、すなわち、皮膚及び外皮に適合する媒体を含有しなければならず、すべての美容用品形態をカバーしなければならない。これらの組成物は、特に、クリーム、水中油型若しくは油中水型エマルジョン又は複数のエマルジョン、血清、溶液、懸濁液、ゲル、ミルク、ローション、スティック、又は粉末の形態であってもよく、皮膚、唇及び/又は外皮への適用に適していてもよい。これらの組成物はこれを製剤化するのに必要な添加剤を含み、添加剤は例えば、溶媒、皮膚軟化剤、増粘剤、希釈剤、界面活性剤、抗酸化剤、生物活性剤、染料、保存剤及び芳香剤などである。これらは、皮膚ケア製品及び/又は皮膚メイクアップ製品として使用されてもよい。
【0052】
本発明による組成物は、具体的にヘアケア組成物から構成されてもよく、特に、シャンプー、ヘアコンディショナー、トリートメントローション、スタイリングクリーム又はゲル、ヘア再構築ローション、マスクなどから構成されてもよい。本発明による美容用品組成物は、特に、後にすすぎが続いても続かなくてもよい適用を含むトリートメントにおいて使用されてもよく、又は代替的にシャンプーの形態で使用されてもよい。本発明による組成物は、有利には、ふけ防止トリートメントに使用されてもよい。また、ブラシ又はくしで、特にまつ毛、眉毛又は髪に適用される染料又はマスカラの形態であってもよい。
【0053】
また、本発明による組成物は、想定される適用分野において一般的に使用される任意の添加剤及びその製剤化に必要とされる補助剤、例えば、溶媒、増粘剤、希釈剤、酸化防止剤、染料、日焼け止め剤、自己日焼け剤、顔料、充填剤、保存剤、芳香剤、臭気吸収剤、美容又は医薬活性剤、精油、ビタミン、必須脂肪酸、界面活性剤、フィルム形成ポリマーなども含む。
【0054】
INCI Dictionary & Handbook(ワシントンD.C.にある米国パーソナルケア製品評議会によって発行された「International Nomenclature of Cosmetic Ingredients」(第13版、2010年))には、スキンケア産業において一般的に使用される多種多様な美容及び医薬成分(これらに限定されない)が記載されており、これらは本発明による組成物における追加の成分として使用されるのに適している。
【0055】
いずれの場合にも、当業者は、これらの補助剤及びその割合の選択を、本発明による組成物の所望の有利な特性に確実に悪影響を及ぼさないようにするよう注意を払うであろう。
【0056】
本発明の1つの有利な実施形態では、本発明による美容用品組成物中の植物抽出物の量は、組成物の総重量に対して0.002重量%から20重量%、特に0.001重量%から10重量%である。
【0057】
本発明の別の有利な実施形態では、本発明によるニュートリコスメティクス中の植物抽出物の含有量は、組成物の総重量に対して0.01重量%から100重量%である。より優先的には、植物抽出物の量は、組成物の総重量に対して0.02重量%から40重量%であり、特に0.2重量%から20重量%である。
【0058】
本発明の第4の主題は、本発明の組成物の美容用品又はニュートリコスメティクスにおける使用であって、当該使用は、皮膚、粘膜及び外皮の外観の改善、皮膚及び粘膜の乾燥の予防及び/又は対処、皮膚の老化及び/又は光老化のサインの予防及び/又は対処、皮膚の美白の促進、並びに痩身の促進のための使用である。
【0059】
本発明についていくつかの特定の実施形態に関連して記載されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の文脈内に入る場合には記載される手段の全ての技術的均等物及びその組み合わせも包含することは明らかである。
【0060】
動詞「含有する」、「備える」又は「含む」の使用は、特許請求の範囲に記載のもの以外の要素又は工程の存在を除外するものではない。
【0061】
<例>
【0062】
[例1]モリンガ・ペレグリナ固形物からの本発明による植物抽出物の調製
【0063】
果実が熟したときに得られたモリンガ・ペレグリナ(Forssk.)Fioriの種子を乾燥させて内部水分含量を8%未満とし、優先的には約6%とし、その後、機械エンドレススクリュープレスでプレスして、一方でバージンペレグリナ油(INCI名:「Moringa peregrina seed oil」)を、他方で固形物を得るために、油を種子の残りの部分から分離させる。次いで、固形物を、1cmから2cmの断片の事前にカットされた筒状片の形に分離させ、これに対して抽出が行われる。方法において使用される原料の組成を以下に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
・プロトコル
a)1モル濃度の強アルカリ剤、例えば、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム若しくは水酸化カルシウムなど、を含む溶液、又は1モル濃度の強アルカリ剤を含むが、優先的に水酸化ナトリウムを含む水性混合物を調製し(この強アルカリ溶液のpHは13よりも大きい)、
b)約1cmの断片に事前にカットされたペレグリナ固形物を、アルカリ溶液中において[1:10](質量/質量)の比率となるよう計量し、
c)工程b)で得られた固形物を粉砕し、
d)工程c)で得られた粉砕された固形物を水相中に分散させ、
e)工程d)で得られた水分散液の化学タンパク質分解を、温度20℃で約2時間行い、
f)得られたペプチド加水分解物を安定させるために、溶液を4.5から5.5のpH範囲に和らげるように弱酸を用いてタンパク質分解を中和させ、
g)ペプチド加水分解物を固液分離によって回収し、
h)ペプチド加水分解物を限外ろ過によって精製する。
【0066】
約12.48%の乾燥物を含む半透明の黄色のろ液が得られる。得られた液体抽出物を、本明細書では以下、「本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物」又は「ペレグリナ・ペプチド加水分解物」という。この液体抽出物は、後に、効率試験に使用される。
【0067】
本発明によるこのペレグリナ・ペプチド加水分解物は、密度が1より大きく、優先的には約1.1であり、乾燥物含有量が10%から15%、優先的には約12.5%であり、窒素含有化合物、主にペプチド及びグリコペプチドを1%から6%含み、また、揮発性ニトリル誘導体を0.5%から1.5%の割合で、優先的に約0.8%の割合で含み、そして、ポリフェノールを20mg/リットル(0.0002%)含む。本発明によるペレグリナ加水分解物の揮発性化合物の組成を以下に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
ペレグリナ・ペプチド加水分解物は、イソプロピルイソチオシアネート及びイソブチルイソチオシアネートを比較的高レベルで含み、種に関する従来の出版物を裏付ける(Kjaer et al. 1979, Isothiocyanates in Myrosinase-treated seed extracts of Moringa peregrina, Phytochemistry, 18, pages 1485-1487; AFSHARYPUOR et al., 2010, Volatile Constituents of the Seed Kernel and Leaf of Moringa peregrina (Forssk.) Fiori, Agricolt. Cultivated in Chabahar (Iran), Iranian Journal of Pharmaceutical Sciences 6(2): 141-144; Dehshahri S. et al., 2012, Determination of volatile glucosinate degradation products in seed coat, stem and in vitro cultures of Moringa peregrina (Forssk.) Fiori, ScienceOpen, Research in Pharmaceutical Sciences 7(1): 51-56). Isothiocyanates are compounds produced by various plants belonging to the order Brassicales, notably in the families Brassicaceae, Capparaceae, Caricaceae and Moringaceae as a defense system against attack by pathogens. In the genus Moringa, they have notably been identified in M. oleifera and M. stenopetala (Baker F.) Cufold. (ABD RANI N.Z., KHARAINA, H. and KUMOLOSASI, E., 2018, Moringa genus: A Review of Phytochemistry and Pharmacology, Frontiers in Pharmacology, volume 9, art. 108)。イソチオシアネートは、植物組織が損傷を受けたときの酵素ミロシナーゼによるグルコシノレートの加水分解に由来する。イソチオシアネート類には、様々な生物学的効果、例えば、抗真菌活性(Troncoso-Rojas, R. and Tiznado-Hernandez, M.E., 2007, Natural compounds to control fungal diseases in fruits & vegetables, in Troncoso-Rojas, R., Tiznado-Hernandez, M.E., Gonzalez-Leon, A. (eds) Recent advances in alternative postharvest technologies to control fungal diseases in fruits & vegetables. Editorial. Transworld Research Network, Kerala, India, pages 127-156; Troncoso-Rojas, R. et al., 2005, Analysis of the isothiocyanates present in cabbage leaves extract and their potential application to control Alternaria rot in bell peppers, Food Research International 38:701-708)や、抗菌、抗がん及び抗炎症効果(Park, E.J. et al., 2011, Inhibition of lipopolysaccharide induced cyclooxygenase-2 expression and inducible nitric oxide synthase by 4-[(2’-O-acetyl-α-L-rhamnosyloxy)benzyl]isothiocyanate from M. oleifera, Nutrition and Cancer 63(6): 971-982; Rajan, T.S. et al., 2016, Anticancer activity of glucomoringin isothiocyanate in human malignant astrocytoma cells, Fitoterapa 110: 1-7; Padla E.P. et al., 2012, Antimicrobial isothiocyanates from the seeds of Moringa oleifera Lam, Zeitschrift fur Naturforschung C, 67, 557-564; Waterman, C. et al., 2014, Stable, water extractable isothiocyanates from Moringa oleifera leaves attenuate inflammation in vitro. Phytochemistry 103: 114-122)などがあることが報告されている。フルフラールは、このタイプの種子に見られる非常に標準的な濃度で存在し、多くのドライフルーツに見られる二硫化炭素、イソブチロニトリル、イソ酪酸メチル、メチルブタンニトリル及びヘキサンニトリルはアミノ酸に由来する揮発性化合物である。それらはタンパク質分解マーカーである。これらの分解化合物は、加水分解されたペレグリナ固形物の抽出物中における揮発性化合物の約50%を表す。この結果は、抽出物が主にタンパク質又はペプチドから構成されていることを示している。モリンガ・ペレグリナの加水分解された抽出物中において、ごく微量の脂肪又は遊離糖の名残と精油とが検出され、後者は、揮発性化合物の4%を表し、約1%のメントールの存在と、1%のユーカリプトールの存在と、約2%のベンズアルデヒドの存在と、を有する。乾燥物において、クエン酸緩衝剤(これはサッカリド化合物である)は残りの部分の約50%を表し、これには、タンパク質、オリゴペプチド及びアミノ酸のタンパク質分解による分解から生じるグリコシル化(サッカリド)化合物が含まれる。最後に、ペレグリナ種子に由来する約20mg/リットルのポリフェノール(0.0002%)の存在に留意すべきである。安息香酸は、抽出物に添加される安定剤であるため、特性評価において考慮されるべきではない。この液体ろ液は本発明による抽出物を構成し、以下の試験において純粋な形態で使用される。
【0070】
上で記載した抽出物の乾燥物は、液体抽出物中に存在する蒸発前後の塊に基づく重量法を介して得られる。この乾燥塊は、主に、分子量100Daから6000Daのタンパク質及び糖タンパク質から構成され、これらは部分的に分解され水溶性であり、モリンガ・ペレグリナ固形物の加水分解に由来する、オリゴペプチド若しくはグリコオリゴペプチド、又は本発明によるペプチド加水分解物と呼ばれる。乾燥抽出物はまた、クエン酸ナトリウム緩衝剤を含み、これは、これらのオリゴペプチド及びグリコオリゴペプチドを静的加水分解状態に安定化する。最後に、この抽出物は、安息香酸ナトリウムなどの水溶性保存剤で微生物学的に安定化される。
【0071】
[例2]抗酸化剤としての本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の効果
【0072】
この研究の目的は、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)ラジカルと、さらに参照抗酸化剤としてアスコルビン酸とを用いる無細胞in vitro比色分析モデルにおいて、ペレグリナ・ペプチド加水分解物による抗酸化活性の調節を評価することである。用いられる方法は阻害法として知られている。これは、参照抗酸化剤としてアスコルビン酸を用いる、540nmで吸収する紫色の酸化ラジカルDPPHの消去に基づく。この反応は陽性対照の役割を果たし、無色、あるいは淡黄色でもあるDPPH化合物の形成をもたらす。本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物及び参照製品「アスコルビン酸」を、40℃で30分間、DPPH溶液と接触させる。次いで、抗酸化活性を、540nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、アスコルビン酸(T+)の存在下で得られる最大抗酸化活性を参照用に用いて、試験活性剤による抗酸化活性の活性化のパーセンテージとして表される。
【0073】
・プロトコル
DPPH溶液を、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物(T+)の非存在下(対照)又は存在下で、そして試験サンプルの濃度を減少させて、40℃で30分間インキュベートする。インキュベーション期間の終わりにおいて、参照製品の存在下と、ペレグリナ・ペプチド加水分解物の存在下若しくは非存在下とでの抗酸化活性が、40℃で30分後に染色することによって明らかにされた。したがってそれは、540nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価された。試験された各濃度について、試験製品による抗酸化活性の調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0074】
[数式1]
抗酸化活性のパーセンテージ調節=100×[(OD540対照-OD540試験製品)/OD540参照製品]
【0075】
結果が陰性の場合、試験製品は酸化するとみなされ、結果が陽性の場合、パーセンテージはフリーラジカル捕捉活性の活性化として表される。本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物を用いるDPPH阻害について得られた結果を以下に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
・結論
本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、フリーラジカルからの保護が可能であり、1%以上の濃度で有意な抗酸化特性を有する。
【0078】
[例3]メタロプロテアーゼ阻害剤としての本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0079】
この研究の目的は、I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼと基質複合体と発色団であるニンヒドリンとを使用するin vitro無細胞モデルにおいて、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物による抗メタロプロテアーゼ活性の調節を評価することである。I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼの緩衝溶液は特定の基質複合体と反応し、これを変換して、80℃で15分間のインキュベーションにより発色団を活性化できる化合物を形成する。したがって、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性は、565nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。サンプルを、酵素基質複合体と一緒にコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ溶液と37℃で5分間接触させる。酵素で変換された基質は、80℃で15分間インキュベートすることによって発色団を活性化することができる。次いで、サンプルの存在下/非存在下でのコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性を565nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、活性剤の非存在下、すなわち酵素基質の存在下でのみ、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ活性の阻害又は活性化のパーセンテージとして表される。
【0080】
・プロトコル
試験される本発明によるペレグリナ抽出物の非存在下又は存在下で、I型コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素の溶液をその基質中で5分間インキュベートする。次いで、溶液を色原体ニンヒドリンと接触させ、続いて、80℃で15分間インキュベートする。インキュベーション期間の終わりにおいて、試験又は参照製品を含む及び含まないコラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素の活性が、565nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価された。試験された各濃度について、コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ酵素活性の試験製品による調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0081】
[数式2]
コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD試験又は参照製品-ODコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼのみ)/ODコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼのみ]
【0082】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素活性化として表される。本発明によるペレグリナ抽出物によるメタロプロテアーゼ阻害の結果を以下に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
・結論
本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物はメタロプロテアーゼ(コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ)の強い阻害を引き起こす。これは、0.5%以上の濃度にてこれらのメタロプロテアーゼをすべて阻害することができ、皮膚の細胞外マトリックスを大効率で保護するための良好な潜在能力を有し、そして、この阻害を介してアンチエイジング効果を示す。
【0085】
Pierre Fabre特許FR2946879によって得られた抽出物を用いた比較試験が以下に報告され、その結果は、単にコラゲナーゼを含む同じ試験によれば以下のとおりである。
【0086】
【表5】
【0087】
・結論
Pierre Fabre特許による抽出物は、コラゲナーゼ活性に対して42%のピーク阻害(全ての濃度を一緒にしたとき)という、僅かな、逆投与量依存阻害活性を示し、これは、本発明によるペプチド加水分解物についての100%のピーク阻害とは対照的である。
【0088】
このパラメータのアンチエイジング活性は、Pierre Fabre特許による抽出物で観察された効果と比較して異なっており新しいとみられる。
【0089】
[例4]ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)及びサーチュインI酵素の阻害に対する本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の効果
【0090】
この研究の目的は、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の、酵素HDAC及びサーチュインIに対する阻害活性を実証することである。HDAC及びサーチュインIの緩衝溶液は37℃で20分間基質と反応し、これを変換して、37℃での10分間のインキュベーション後に現像剤の存在下で染色される化合物を形成する。したがって、サーチュインの最大脱アセチル化活性は、405nmでの吸光度を測定することによって評価され得る。本発明によるペレグリナ抽出物又は参照製品「トリコスタチンA(STA)阻害剤1μM」を、37℃で20分間、酵素基質と共にサーチュインの溶液と接触させ、酵素で変換された基質を、現像剤を添加することによって染色する。次いで、活性剤の存在下でのHDAC及びサーチュインIの脱アセチル化活性を405nmでの吸光度を測定することによって評価する。この活性の調節は、活性剤の非存在下、すなわち、HDAC及びサーチュインI酵素についての基質の存在下でのみ、HDAC及びサーチュインIの阻害又は最大活性の活性化のパーセンテージとして表される。
【0091】
・プロトコル
参照製品の非存在下(対照)若しくは存在下で、又は濃度を増加させた試験製品の非存在下若しくは存在下で、サーチュイン酵素の溶液をその基質中で20分間インキュベートする。本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物を、2%、1%、0.1%(V/V)の濃度で試験する。インキュベーション期間の終わりにおいて、試験又は参照製品を含む及び含まないサーチュイン酵素の活性が、現像剤溶液を用いて染色する(37℃で10分間)ことによって明らかにされ、405nmでの反応媒体の吸光度を測定することによって評価された。試験された各濃度について、ヒストン脱アセチル化酵素及びサーチュインI酵素の脱アセチル化活性の試験製品による調節が、以下の式にしたがって計算された。
【0092】
[数式3]
サーチュイン酵素活性のパーセンテージ調節=100×[(OD405試験又は参照製品)-(OD405HDAC及びサーチュインIのみ)]/OD405サーチュインのみ
【0093】
結果が陰性の場合、パーセンテージは酵素反応の阻害として表され、結果が陽性の場合、パーセンテージは酵素反応の活性化として表される。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)酵素の阻害に関する結果を以下に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
・結論
本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、2%において有意なHDAC阻害を示し、この阻害は、特に老化プロセスに関連する遺伝的浮動に対する皮膚細胞の自己保護を促進する能力を反映する。このように、抽出物は皮膚表面の共通遺伝的浮動の1つ、すなわち「スキンタッグ」(線維性突起)の出現によって現れる線維症に対して有用であるとみられる。抽出物は、有利には、皮膚表面上の線維症を防ぎ、したがって、皮膚老化を防止することができる。
【0096】
[例5]本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の張り効果
【0097】
この研究の目的は、凍結乾燥されたコラーゲンディスクのin vitro無細胞モデルにおけるペレグリナ・ペプチド加水分解物の張り効果を評価することである。直径8mmの凍結乾燥されたコラーゲンディスクを使用した。種々の処置に応じてみられるこれらのディスクの収縮を画像分析により測定した。コラーゲンディスクの表面積が減少するほど活性剤の張り効果は大きい。この研究で使用された参照製品は、100mg/mLのウシ血清アルブミンである。
【0098】
・プロトコル
直径8mmのコラーゲンディスクを、40μLの超純水(対照)、参照製品、又は、0.05%、0.1%及び0.5%(V/V)で濃度を増加させた本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物に浸した。ペレグリナ・ペプチド加水分解物を超純水に直接溶解した。各ディスクのデジタル画像を、浸す前及び浸した後30分経過後にスキャナで撮影した。画像について、コラーゲンディスクの表面積を画像分析ソフトウェアを用いて測定した。張筋効果の結果を以下に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
・結論
本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、低濃度(1%未満)で非常に顕著な張り効果を示す。これらの結果は、「リフティング」効果、ひいては短期的なアンチエイジング効果を示す。
【0101】
例2から例5は、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物が、短期的又は長期的に良好なアンチエイジング活性剤のプロファイルを有することを実証する。
【0102】
[例6]エンドセリン-1の作用の阻害に対する本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の効果
【0103】
近年、エンドセリンが表皮メラノサイト(メラニン細胞)の細胞内カルシウム濃度の上昇を促進し、細胞内シグナル伝達系を介して細胞増殖を促進することが報告されている。この作用により、メラニン合成の律速酵素であるチロシナーゼの活性が向上する(Kadono, S. et al., 2001, The Role of the Epidermal Endothelin Cascade in the Hyperpigmentation Mechanism of Lentigo Senilis, Journal of Investigative Dermatology, 116(4): 571-577)。また、エンドセリンは表皮角化細胞が生成するメラノサイト活性化因子であり、紫外線誘発色素沈着や老人性肝斑の重要な因子であることも報告されている(Kawahara N. et al., 2005, About the Component of Snow Tea, Collection of Pharmaceutical, Society of Japan annual convention Subject matter, abstract 30-0823, page 159)、(Pang, Y., Geng, J., Qin, Y. et al. Endothelin-1 increases melanin synthesis in an established sheep skin melanocyte culture. In Vitro Cellular & Developmental Biology - Animal 52, 749-756 (2016) or Hachiya, Akira et al. Biochemical Characterization of Endothelin-converting Enzyme-1α in Cultured Skin-derived Cells and Its Postulated Role in the Stimulation of Melanogenesis in Human Epidermis. Journal of Biological Chemistry, volume 277, issue 7, 5395-540)。エンドセリンのこれらの生物学的作用は、エンドセリンの作用を阻害することができる活性剤がメラニン生成又は色素沈着を減少させる又は予防するのに有用であり得ることを示唆している。
【0104】
エンドセリンは人体において知られている最も強力な血管収縮剤である。さらに、エンドセリン枯渇は、血管拡張効果を生じることも知られている(Hirata, Y. et al., 1988, Cellular mechanism of action by a novel vasoconstrictor endothelin in cultured rat vascular smooth muscle cells, Biochemical and Biophysical Research Communications, 154: 3, pages 868-875;Shalinkumar P. et al., 2018, H2S Mediates the Vasodilator Effect of Endothelin-1 in the Cerebral Circulation. American Journal of Physiology. Heart Circulatory Physiology, 315, pages 1759-1764)。
【0105】
目的は、ヒト微小血管内皮細胞中の1型エンドセリンを、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物に24時間暴露させた後に測定することである。
【0106】
・プロトコル
ヒト微小血管内皮細胞はPELOBiotech社から提供され、サプライヤーの生成手順にしたがって96ウェルプレート中で培養される。抽出物は、80%コンフルエンス状態で24時間、種々の濃度で内皮細胞に作用させたままにし、次いで、細胞上清中のエンドセリン-1が、PicoKine ELISAキット(EDN1)を使用して定量化される。エンドセリン-1測定で使用する非毒性投与量を決めるために事前に生存率試験が行われる。陰性対照は培地中の細胞を処理せず用いて行われる。生存率試験における陽性対照は0.5%SDSである。全条件が培地中で準備され、続いて細胞が36.5℃、5%COで24時間インキュベートされる。
【0107】
a)内皮細胞への試験溶液の適用
試験製品を、96ウェルプレート内でサブコンフルエント状態の内皮細胞に接触させる。各濃度について、試験は3つのウェルで行う。プレートを36.5℃、5%COで24時間±1時間インキュベートする。
b)生存率試験
細胞生存性を、製品とともにインキュベートさせた後の細胞についてMTT法を用いて評価する。24時間のインキュベーション後、上清を回収し、測定用に-20℃で保存する。次いで、ウェルを200μLのPBSで1回洗浄する。0.5mg/mLのMTT溶液を各50μLウェルに加え、36.5℃、5%COで3時間インキュベートする。100μLのイソプロパノールを各ウェルに加える。均等化後、550nmでの吸光度読み取り値を取得する。各条件について、陰性対照の平均光学濃度値に対する細胞の平均光学濃度値の比によって、生存率が決定される。
c)エンドセリン-1測定
測定は、ELISAキットを用いて行う。
エンドセリンの作用の阻害についての結果を以下に示す。
【0108】
【表8】
【0109】
・結論
処理の終わりにおいて行われる生存率試験は、試験された濃度について、いかなる毒性効果も示さなかった。エンドセリン-1測定は細胞上清中において非毒性濃度で行う。各条件についてのエンドセリン-1の量はELISAキットを使用して測定される。陰性対照細胞については、値は134.94pg/mLのオーダーである。様々な濃度の抽出物で処理された細胞について、値は、87.85pg/mL(本発明による抽出物は2%)から118.15pg/mL(本発明による抽出物は0.1%)であり、これは、本発明による抽出物が0.1%以上のとき1型エンドセリン生成が約12.44%阻害されるという非常に有意な阻害を示し、本発明による抽出物が2%のときには最大34.90%阻害されることを示す。
エンドセリン及びその特異的用量依存的阻害に関する結果は、本発明によるペプチド加水分解物が強力な美白剤であることを実証する。
【0110】
[例7]遊離脂肪酸の放出に対する本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の効果
【0111】
脂肪細胞における脂肪分解、又は他の器官で使用するために脂肪酸及びグリセロールを放出するトリアシルグリセロール(TAG)の加水分解は、白色脂肪組織に特有の機能である。脂肪細胞の脂肪分解は、脂質代謝に不可欠な動的細胞小器官として近年注目されている細胞質の脂肪滴の表面で起こる。AdPLAが主要な脂肪ホスホリパーゼA(2)として最近特定されたことで、PGE(2)による脂肪分解の支配的なオートクリン/パラクリン制御が発見された。上記のメカニズムは、脂肪分解とその制御における重要な要素である。最近の発見は、脂肪分解を遺伝的障害又は突然変異に関連付け、脂肪細胞における脂肪分解の活性化を潜在的な治療ターゲットとして想定している(Ahmadjan M. et al., 2010, Lipolysis in Adipocytes, The International Journal of Biochemistry and Cell Biology, 42(5): 555-559)。
【0112】
この研究の目的は、ヒト細胞培養物(脂肪細胞)におけるグリセロール放出を増加させる本発明によるペプチド加水分解物の能力を評価することである。グリセロール含有量は脂肪分解と相関している。グリセロール含有量の増加は脂肪分解効果を意味する。美容的痩身効果は脂肪分解効果に関連している。
【0113】
・プロトコル
ヒト脂肪細胞は社内の手順にしたがって24ウェルプレート及び12ウェルプレートで培養される。このために、サンプルはコンフルエント状態の脂肪細胞上で所定の濃度で24時間作用するために放置される。24時間後のMTTによる予備生存率試験により、細胞毒性を評価し、「脂肪分解効果」試験の濃度を選択することができる。この「脂肪分解効果」は、サンプルへの曝露の24時間後の上清中のグリセロールを測定することによって評価される。
【0114】
陰性対照は、培地中の細胞を処理せず用いて行われる。生存率試験についての陽性対照は0.5%SDSである。「脂肪分解効果」試験についての陽性対照は0.05%カフェインである。すべての条件を培地中で準備し、その後、細胞を36.5℃、5%COで24時間±1時間インキュベートする。
【0115】
- 脂肪細胞への試験溶液の適用:
試験製品を、24ウェルプレート(細胞毒性試験)及び12ウェルプレート(試験「脂肪分解効果」)においてコンフルエント状態の脂肪細胞と接触させる。
各濃度について、試験は3つのウェルで行われる。
プレートを36.5℃、5%COで24時間±1時間インキュベートする。
- 生存率試験:
細胞生存性は、製品とともに24時間インキュベートした後の細胞に対してMTT法で評価される。
24時間インキュベートした後、目的のウェルを200μLのPBSで1回すすぐ。
300μLの0.5mg/mL MTT溶液を各ウェルに加え、36.5℃、5%COで3時間インキュベートする。
800μLのイソプロパノールを各ウェルに加える。
均等化後、550nmでの吸光度を読み取る。
各条件について、陰性対照の平均光学濃度値に対する細胞の平均光学濃度値の比により生存率が決定される。
陰性対照値に対して70%である生存率カットオフ値を使用して、試験物質を細胞毒性又は非細胞毒性として分類する。
- 「脂肪分解効果」試験:
脂肪分解効果は、製品とともに24時間±1時間インキュベーションした後の培地中のグリセロールを測定することによって評価される。
培地は、サプライヤーのプロトコルにしたがって「遊離グリセロール試薬」と混合される。
グリセロール溶液は、0μMから6250μMの濃度で標準範囲を作るために使用される。
OD(光学濃度)の読み取り値は550nmで取得される。遊離脂肪酸放出の結果を以下に示す。
【0116】
【表9】
【0117】
・結論
本発明によるペプチド加水分解物は、ヒト脂肪細胞からのグリセロールの放出を促進し、それによって痩身効果を引き起こすことが実証された。
【0118】
[例8]タンパク質ZAGの刺激に対する本発明によるペレグリナ抽出物の効果
【0119】
亜鉛α-2-糖タンパク質(ZAG)は、電気泳動移動度とZn塩で沈殿する能力にちなんで名付けられた血漿糖タンパク質である。ZAGは免疫グロブリン遺伝子のスーパーファミリーのメンバーであり、クラスI及びIIのMHC分子とかなり一致する三次元構造を有する。ZAGは、乳房、前立腺及び肝臓の正常な分泌上皮細胞、唾液腺、気管支腺、胃腸腺及び汗腺の中、並びに表皮を含む正常な層状上皮で、免疫組織化学的に検出されている。ZAG mRNAは、さまざまな細胞型に均一に分布したままである[Za7]。ZAGは分泌上皮によるその産生のために体分泌物の大部分に存在し、唾液中のタンパク質の2.5%及び精液中のタンパク質の30%をそれぞれ構成する。
【0120】
ZAGの標準機能は不明である。しかしながら、ZAGは悪液質に苦しむ人間のがん患者の尿から分離されており、脂質動員因子(LMF)として機能する可能性がある。ヒト又はマウスの血清から抽出された精製ZAG、又はがん患者のヒト尿から抽出された精製ZAGは、脂肪分解を引き起こし、グリセロールの放出をもたらす。また、ヒト及びマウス脂肪細胞における脂質の使用を増加させる(Hirai K. et al., 1998, Biological Evaluation of a Lipid-Mobilizing Factor Isolated from the Urine of Cancer Patients, Cancer Research, 58(11): 2359-2365)。ZAGは、脂肪細胞膜上のグアノシン三リン酸(GTP)依存性アデニル酸シクラーゼ活性を活性化し、環状アデノシン-リン酸(cAMP)の細胞レベルを高める。このことは複数の細胞経路の活性化につながる可能性がある。
【0121】
ZAGの生物学的特性に関する知識を高めるために、B16F10マウス黒色腫細胞株において安定組み換えヒト(rh)ZAGトランスフェクタントを作成した。メラニン生成に対するZAGトランスフェクションの効果は、in vitro及びin vivoで決定された。最後に、チロシナーゼの発現及び活性に対するZAGの効果を決定した。全体として、これらの研究は、ZAGが正常及び悪性のメラニン細胞におけるメラニン生成を阻害することを示している。このメカニズムには、チロシナーゼタンパク質に対する転写後効果が含まれ、追加の間接効果の可能性もある。これらの研究により、これまで知られていなかったZAGの生物学的機能の特定が可能になり、メラニン生成を調節する方法が可能になり、したがってメラニン生成の増加による皮膚や髪の色素沈着を予防及び/又は軽減することが可能になる(Hale L., Method of Modulating Melanin Production, United States Patent No. US7,803,750 B2, 2010)及び(Ghada F.M. et al., 2015, Highlights in Pathogenesis of Vitiligo, World Journal of Clinical Cases 3(3): 221-230)。
【0122】
この研究の目的は、ヒト細胞培地(ケラチノサイト)におけるZAGの放出を増加させることについての、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の能力を評価することである。ZAG含有量は、美白効果、痩身効果、抗線維化効果及び鎮静効果と相関するべきである。
【0123】
・プロトコル
正常なヒトケラチノサイトを包皮から分離し、社内手順にしたがって24ウェルプレート及び96ウェルプレートで培養する。
【0124】
サンプルを、定義された濃度で、80%コンフルエント状態のケラチノサイトに48時間作用させ、その後、細胞上清中のZAGがELISAキットを使用して定量化される。
【0125】
生存率試験は、ZAG測定で使用される非毒性投与量を決めるために事前に行われる。
【0126】
陰性対照は、培地中の細胞を処理せず用いて行われる。
【0127】
生存率試験の陽性対照は0.5%SDSである。
【0128】
すべての条件を培地中で準備し、その後、細胞を36.5℃、5%COで、生存率試験のために24時間、ZAG測定のために48時間、インキュベートする。
【0129】
- ケラチノサイトへの試験溶液の適用:
試験製品は、24ウェルプレート及び96ウェルプレート中のサブコンフルエント状態のケラチノサイトと接触するように配置される。
各濃度について、試験は3つのウェルで行われる。
プレートを36.5℃、5%COで24時間及び48時間インキュベートする。
- 生存率試験:
細胞生存性は、製品とともにインキュベーションした後の細胞に対してMTT法で評価される。
24時間及び48時間インキュベートした後、目的のウェルを200μLのPBSで1回すすぐ。
50μLの0.5mg/mL MTT溶液を各ウェルに加え、36.5℃、5%COで3時間インキュベートする。
100μLのイソプロパノールを各ウェルに加える。
均等化後、550nmで吸光度を読み取る。
各条件について、陰性対照の平均光学濃度値に対する細胞の平均光学濃度値の比によって生存率が決定される。
- ZAGタンパク質測定:
48時間のインキュベーション後、すべての上清を回収し、測定のために-20℃で保存する。
測定はELISAキットを用いて行われる。ZAG測定の結果を以下に示す。
【0130】
【表10】
【0131】
・結論
ペレグリナ・ペプチド加水分解物は、ZAG産生を大幅に増加させ、投与量依存性が良好で、ヒト細胞に対する毒性が低い場合がある。したがって、ペレグリナ・ペプチド加水分解物は、ZAGを大幅に増加させるその能力に基づいて、美白効果、痩身効果、抗線維化効果及び鎮静効果を有する。
【0132】
[例9]メラニン生成抑制に対する本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の効果
【0133】
皮膚の色素沈着は、表皮と毛包の両方で、メラニン細胞内のメラノソームでのメラニンの合成から始まり、続いてメラノソームが周囲のケラチノサイトに移動し、色素を運び必要に応じて分解する複雑なプロセスである。ヒトでは、メラニン細胞集団全体が毛包と表皮の基底層に位置する。メラニン細胞は、皮膚内におけるそれらの位置に関係なく、共通の発生学的起源を有し、これは神経堤であり、ここからメラノブラスト(無色素細胞)の形で形成される。表皮細胞には、茶黒色色素であるユーメラニンと黄赤色色素であるフェオメラニンの2種類のメラニンが存在する。ユーメラノソームとフェオメラノソームはメラニン細胞内に共存している。チロシナーゼは、フェオメラニンとユーメラニンの合成における最初のステップであるL-チロシンのL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)への変換と、この化合物のドーパキノンへの酸化を制御する重要な酵素である。ドーパキノンから、合成経路がユーメラニンとフェオメラニンのために分岐する。メラニンの主な役割は、紫外線の有害な影響から皮膚を保護し、皮膚がんの発症を防ぐことである(Brenner M. et al., 2008, The protective role of melanin against UV damage in human skin, Photochemistry and Photobiology 84(3): 539-549)。
【0134】
目的は、本発明によるペレグリナ抽出物に5日間曝露した後のヒトメラニン細胞に対しメラニン調節試験を行うために、使用されたすべてのデータ及び得られた結果を照合することである。
【0135】
・プロトコル
ヒトメラニン細胞は、96ウェルプレート及び24ウェルプレートで培養される。
本発明によるペレグリナ抽出物を、5日間、2%、1%及び0.1%の濃度でコンフルエント状態のメラニン細胞に作用させる。24時間後のMTTによる生存率の事前試験により、細胞毒性を評価し、メラニン調節試験のための濃度を選択することができる。この調節は、抽出物への曝露の5日後の細胞溶解物中のメラニンを測定することによって評価される。陰性対照は、培地中の細胞を処理せず用いて行われる。生存率試験の陽性対照は0.5%SDSである。メラニン調節試験では、α-MSHの存在下及び非存在下の培地が陰性対照として使用される。
すべての条件を培地中で準備し、その後、36.5℃、5%COで、細胞毒性試験では24時間、メラニン測定では5日間、インキュベートする。
【0136】
a)メラニン細胞への試験溶液の適用:
試験濃度は、96ウェルプレート(細胞毒性試験)及び24ウェルプレート(メラニン測定)内においてコンフルエント状態のメラニン細胞と接触させるように配置される。各濃度について、試験は3つのウェルで行われる。プレートを、36.5℃、5%COで24時間±1時間、及び5日間、インキュベートする。
b)生存率試験:
細胞生存性は、製品とともに24時間インキュベートした後の細胞に対してMTT法で評価される。24時間インキュベートした後、目的のウェルを200μLのPBSで1回すすぐ。50μLの0.5mg/mL MTT溶液を各ウェルに加え、36.5℃、5%COで3時間インキュベートする。150μLのイソプロパノールを各ウェルに加える。均等化後、550nmでの吸光度を読み取る。各条件について、陰性対照の平均光学濃度値に対する細胞の平均光学濃度値の比により、生存率が決定される。
陰性対照値に対して70%である生存率カットオフ値を使用して、試験物質を細胞毒性又は非細胞毒性として分類する。in vitro結果について、生存率が70%超えの結果は「非細胞毒性」と分類し、生存率が70%以下の結果は「細胞毒性」と分類する。
本発明による抽出物の5%濃度は、試験条件下で5%で細胞毒性であることが証明された。したがって、2%、1%及び0.1%の濃度がメラニン調節試験に使用される。細胞内に存在するメラニンの量は細胞溶解後に測定される。メラニン生成の抑制の結果を以下に示す。
【0137】
【表11】
【0138】
・結論
本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、in celluloでメラニン生成を抑制し、色素除去効果及び皮膚美白特性を与える。
【0139】
[例10]DKK1及びDKK3測定の調節に対する本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の効果
【0140】
メラニン形成制御におけるメラニン細胞と線維芽細胞の間の相互作用の関与はよく知られており、集中的に研究されている。これらの相互作用はまだ完全には理解されていないものの、これらは掌蹠領域の「白さ」の原因であり、現在、色素除去製品の開発のために化粧品に使用されている。山口ら(Yamaguchi Y. et al., 2004, Mesenchymal-Epithelial Interactions in the Skin: Increased Expression of Dickkopf by Palmoplantar Fibroblasts Inhibits Melanocyte Growth and Differentiation, Journal of Cell Biology 165(2): 275-285)は、掌蹠領域の線維芽細胞によって産生される可溶性メッセンジャーが、これらの領域のメラニン細胞の分化プログラムを改変し、メラニン生成の減少をもたらすことができることを実証した。このメッセンジャーは、チームによってDikkopf-1(DKK-1)という名前のタンパク質として特定された。
【0141】
これらの結果をもたらすためにDKK-1が使用するシグナル伝達経路は、現在明確に特定されている。Wnt受容体へのその拮抗作用により、DKK-1は実際には、メラニン形成に関与する遺伝子の制御に一般的に関与しているβ-カテニンによって活性化される細胞内シグナル伝達経路を「シャント」することができる。山口らはまた、DKK-1に似ているがWnt受容体に影響を及ぼさない分子であるDKK-3がDKK-1の効果に対して調節的役割を果たす可能性があることを実証した。実際、このWnt受容体の近傍のDKK-3の量が多いほど、DKK-1とこの受容体との間の相互作用は弱くなる。DKK-3を増加させると、メラニン生成に対するDKK-1の阻害効果が低下する。山口らの研究(上記参照)は、非掌蹠起源の正常なヒト皮膚線維芽細胞培養におけるDKK1/DKK3比に影響を与える薬剤の特定により、正常なヒト非掌蹠メラニン細胞を用いてメラニン生成を制御することが可能になることを示唆している。
【0142】
この研究の目的は、単層培養における正常なヒト線維芽細胞で構成されるモデルにおけるDKK-1合成及び放出に対する、「ペレグリナ・ペプチド加水分解物」として知られる化合物の効果を評価することである。
【0143】
・プロトコル
ヒト線維芽細胞は68歳のドナーから得られた。実験を行うために、線維芽細胞を、コンフルエンス状態に達するまで単層培養として増殖させた。100nMのデキサメタゾンをDKK-1合成及び放出の参照誘導物質として使用した。
【0144】
皮膚ディスクを、参照製品又は試験製品の非存在下(対照)又は存在下で48時間インキュベートした。ペレグリナ・ペプチド加水分解物は、0.01%、0.1%及び0.5%(V/V)である。
【0145】
インキュベーションの終わりに、インキュベーション培地を除去し、DKK-1放出測定を行った。
【0146】
試験化合物である「ペレグリナ・ペプチド加水分解物」を、上に記載した種々の濃度に達するようにインキュベーション培地中で直接希釈した。
【0147】
48時間のインキュベーション期間の終わりに、インキュベーション培地に放出されたDKK-1を特異性感度ELISAキットによって定量化した。
【0148】
インキュベーション期間の終わりに、細胞溶解物に含まれるタンパク質を分光比色法(ブラッドフォード法)によって定量化した。
【0149】
結果は、タンパク質1mg当たりのDKK-1(単位:ng)(平均±S.D.)として表される。
【0150】
「対照」と「参照製品」の間の有意水準は、スチューデント検定(*:p<0.05)によって評価された。
【0151】
「対照」と「試験製品」の間の有意水準は、一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とそれに続くホルム・シダック検定(*:p<0.05)によって評価された。
【0152】
我々の実験条件下では、100nmで試験された「デキサメタゾン」として知られる参照製品は、「対照」と比較して、放出されたDKK-1を181.8%(p<0.01)有意に増加させた。DKK-1測定の調節に関する結果を以下に示す。
【0153】
【表12】
【0154】
DKK3に関する研究
【0155】
この研究の目的は、単層培養における正常なヒト線維芽細胞で構成されるモデルにおけるDKK-3の合成及び放出に対する、「ペレグリナ・ペプチド加水分解物」として知られる化合物の効果を評価することである。
【0156】
ヒト線維芽細胞は68歳のドナーから得られた。
【0157】
実験を行うために、線維芽細胞をコンフルエンス状態に達するまで単層として増殖させた。
【0158】
ヒト線維芽細胞は68歳のドナーから得られた。
【0159】
実験を行うために、線維芽細胞をコンフルエンス状態に達するまで単層として増殖させた。
【0160】
48時間のインキュベーション期間の終わりに、インキュベーション培地に放出されたDKK-3を特異性感度ELISAキットによって定量化した。
【0161】
インキュベーション期間の終わりに、細胞溶解物に含まれるタンパク質を分光比色法(ブラッドフォード法)によって定量化した。
【0162】
結果は、タンパク質1mg当たりDKK-3(単位:ng)(平均±S.D.)として表される。
【0163】
「対照」と「参照製品」の間の有意水準は、スチューデント検定(*:p<0.05)によって評価された。
【0164】
「対照」と「試験製品」の間の有意水準は、一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とそれに続くホルム・シダック検定(*:p<0.05)によって評価された。DKK-3測定の調節に関する結果を以下に示す。
【0165】
【表13】
【0166】
・結論
本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、DKK1の産生を大幅に増加させることができ、かつヒト細胞におけるDKK3の産生を減少させる傾向がある。本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、DKK1を大幅に増加させかつDKK3を大幅に減少させ、したがってDKK1/DKK3比を増加させる能力により、掌蹠抑制の原理によって皮膚の色素沈着を減少させる高い能力を有する。この比率の増加は、前メラニン細胞/メラニン細胞分化経路を制限する効果があり、したがって、使用可能なメラニン細胞の数は時間とともに減少し、皮膚の着色能力を低下させる。
【0167】
[例11]DNAの保護に対する本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物の効果
【0168】
テロメアの長さのダイナミクスは、特に長命の種の場合、細胞の複製寿命を制御するために非常に重要である。テロメア短縮及びテロメラーゼ活性は老化及び腫瘍形成の重要な因子である(Shay, J.W., 2005, Senescence and Immortalization: Role of Telomeres and Telomerase, Carcinogenesis 26(5): 867-874)。テロメアは、染色体の末端を、分解、望ましくない融合組み換え及びDNA損傷応答の不適切な活性化から保護する複雑なヌクレオチド配列である。それらはまた、細胞分裂及び染色体の安定性において重要な役割を果たす。テロメアの安定性は職業的及び環境的曝露によって影響を受ける可能性があるという証拠が増え続けており、何故なら、これらの要因のいくつかが炎症、酸化ストレス、DNA損傷、染色体異常及びエピジェネティックな変化の増加に関連しているからである。非常に短いテロメアと長いテロメアは、神経変性疾患、心血管疾患(CVD)及びがんのリスクと関連している。
【0169】
テロメラーゼは、テロメアの末端へのテロメア反復の付加を触媒するリボ核タンパク質である。テロメアは染色体の末端を覆い、染色体を安定させる役割を持つ反復配列の長いセクションである。ヒトでは、テロメアは一般に7kbから10kbの長さで、配列-TTAGGG-が数回繰り返されたものからなる。
【0170】
テロメラーゼは大部分の成体細胞では発現せず、テロメアの長さは連続する複製サイクルとともに減少する。一定数の複製サイクルの後、テロメアの漸進的な短縮により、細胞はテロメア危機段階に入り、細胞老化につながる。特定の疾患は、早期の細胞老化をもたらす急速なテロメア損失に関連している。ヒト細胞におけるヒトテロメラーゼタンパク質をコードする遺伝子の発現(Blasco M., 2007, Telomere Length, Stem Cells and Aging, Nature Chemical Biology 3, pages 640-649)は、おそらく細胞の自然な老化経路を回避することによって、不滅の表現型を付与することが実証されている。さらに、短いテロメアを有する老化細胞におけるテロメラーゼ遺伝子の発現は、テロメア長の増加をもたらし、一般的に若い細胞に関連する表現型を回復することが実証されている。
【0171】
この研究の目的は、単層培養における正常なヒト線維芽細胞からなるモデルにおけるテロメア短縮に対する、「ペレグリナ・ペプチド加水分解物」として知られる化合物の効果を評価することである。テロメアが体内時計に対応していることはよく知られている。テロメアの長さは細胞分裂に伴って徐々に減少し、最終的には細胞が複製できなくなる。テロメアの長さの測定は、定量的PCRを用いて、そして2回継代及び5回継代の細胞間のテロメアの長さの比較によって行われた。
【0172】
・プロトコル
ヒト線維芽細胞は44歳のドナーから得られた。実験を行うために、2回継代及び5回継代の細胞を使用した。繊維芽細胞は、0.01%、0.1%及び0.5%(v/v)の増加する試験濃度のペレグリナ・ペプチド加水分解物の非存在下(対照)又は存在下で、連続3回継代培養した。
【0173】
- 試験化合物の準備:
試験化合物「ペレグリナ・ペプチド加水分解物」をインキュベーション培地で直接希釈して、上に記載した各種濃度に到達させた。
【0174】
インキュベーションの終わりに、細胞をトリプシン処理した。専用のDNA抽出キットを用いて細胞からDNAを抽出した。DNAはNanoDropによって定量化された。
【0175】
テロメアの長さは、定量PCR(q-PCR)によって測定された。各サンプルについて、参照遺伝子としてSCR(single copy reference)遺伝子を使用する相対定量により、テロメア長の変化を測定した。各サンプルについて、テロメア配列を認識して増幅するテロメアプライマーのセットを使用してq-PCRを行い、ヒト17番染色体上の100bp領域を認識して増幅し、データの正規化のための参照の役割をするSCRプライマーのセットを使用して2つ目のq-PCRを行う。
【0176】
結果は、2回継代の細胞に対するテロメアの長さに対応する相対単位で表される(平均±S.D.)。2回継代と5回継代での「対照」の間の有意水準は、スチューデントt検定によって評価された(*p<0.05)。「対照」と「試験化合物」の間の有意水準は、一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とそれに続くホルム・シダック検定(*:p<0.05)によって、各製品について個別に評価された。
【0177】
・結果
我々の実験条件下では、0.05%、0.1%及び0.5%(v/v)で試験されたペレグリナ・ペプチド加水分解物は、正常なヒト線維芽細胞のテロメア短縮を大幅に減少させた。
【0178】
- テロメア短縮:
0.05%(v/v)では+8.9%(p<0.05)、及び、0.1%(v/v)では+15.1%(p<0.01)、及び、0.5%(v/v)では+16.6%(p<0.01)における、(対照との比較における)阻害。
【0179】
【表14】
【0180】
・結論
ヒト細胞の正常な増殖又は分裂という文脈において、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、テロメア長を大幅に増加させる能力を示す。テロメアは、DNA物質の保護に関与するキャップである。テロメアのサイズを大きくすると、時間の経過とともにDNA物質の完全性が維持される。テロメアの長さの増加は、DNA物質を維持する能力と相関している。ペレグリナ・ペプチド加水分解物はこの長さを伸ばすことができるため、ヒトの遺伝物質(DNA)の維持に関与している。
【0181】
[例12]皮膚表面の保湿に関する各種製品の比較試験
【0182】
コルネオメトリー研究では、皮膚表面に対する製品の保湿効果を測定することができる。使用される機械は、特にインピーダンス測定によって皮膚の水分を測定するプローブを備えるコルネオメーターである。6人(男性2人、女性4人)で構成されるパネルが、前腕の内面に対し、比重測定と温度について同様の条件下で試験された。左前腕の内面にはゾーン1とゾーン2があり、右前腕の内面にはゾーン3とゾーン4がある。
【0183】
ゾーン1は、参照保湿ジェルの適用ゾーンに対応し、ゾーン2は、参照ジェルと2%の本発明によるペプチド加水分解物との適用ゾーンに対応し、ゾーン3は、参照ジェルとモリンガ・オレイフェラを含む2%のペプチド加水分解物との適用ゾーンに対応し、ゾーン4は、BASF Beauty Care Solutionsからの特許FR3076460による参照ジェルと2%のPurisoft(登録商標)との適用ゾーンに対応する。
【0184】
各ゾーンに適用される製品の量は同じであり、測定時間は各ゾーンで同じである。皮膚の水分ゼロ状態を決定するために、各ゾーンに製品を適用する前に最初の値を取得する。次に、各ゾーンと各製品について、製品をゾーンに適用してから5分後に最初の測定を常に同じオペレータが行う。終わりに、最後の測定を、上に記載した2回目の測定の30分後に再び同じオペレータが行う。
【0185】
適用前と適用後に観察された差の組み合わせは、ANOVA(分散分析)で研究された通常の法則にはしたがわない。したがって、測定前と測定後の差によって得られる値が研究されるパラメータである。得られた結果は、得られた値の量的傾向ではなく質的傾向を構成する。
【0186】
【表15】
【0187】
・結論
ゾーン2は本発明による抽出物を含有する製品の適用前後で陽性皮膚保湿値を示し、一方、2つの抽出モードによるモリンガ・オレイフェラ抽出物を含有するゾーン3及びゾーン4は陰性値を示し、すなわち、製品の適用後において適用前よりも皮膚はあまり保湿されていない。本発明によるペプチド加水分解物は局所適用製品における保湿の利点を維持することを可能にし、これにより、本発明によるペレグリナ・ペプチド加水分解物は、試験した他の抽出物から区別される。図1は、得られた結果を示している。
【0188】
[例13]メイクアップ製品組成
【0189】
【表16】
【0190】
[例14]洗浄製品組成
【0191】
【表17】
【0192】
[例15]ケア製品組成
【0193】
【表18】
【0194】
[例16]1gのリラックス又は痩身タブレット:本発明による乾燥抽出物(イヌリン支持体上のペプチド加水分解物を60%含む)2%と、200IUのビタミンDを含む炭酸カルシウム47%と、グルコン酸マグネシウム25%と、イヌリン23%と、ステアリン酸マグネシウム3%
【0195】
[例17]200mgのカフェインと、200mgの本発明による乾燥抽出物(イヌリン支持体上のペプチド加水分解物を60%含む)と、200mgのキトサンと、150mgの炭酸カルシウムとを含有する、750mgのゲルカプセル中の痩身パウダー
【0196】
[例18]200mgのカフェインと、200mgの本発明による乾燥抽出物(イヌリン支持体上のペプチド加水分解物を60%含む)と、200mgのキトサンと、150mgのこんにゃく(グルコマンナン)とを含有する、750mgのゲルカプセル中の食欲抑制剤及び痩身パウダー
【0197】
[例19]例1による抽出物を2%含有する舌下弛緩スプレー。1%ロディオラ・マザーチンクチャー、1%レモンバーム・マザーチンクチャー、1%バレリアン・マザーチンクチャー、1%サンザシ・マザーチンクチャー、2%つくし抽出物、0.15%サリチル酸、7%ソルビトール、及び適量の水。
【0198】
[例20]例1による加水分解抽出物を2%含有するしわ防止クリーム
【0199】
【表19】
【0200】
[例21]本発明による加水分解物の毒性試験
【0201】
- 例1によるペプチド加水分解物の準備:
果実が熟したときに採取されたモリンガ・ペレグリナ(Forssk.)Fioriの殻付き種子を乾燥させて内部水分含量を8%未満、優先的には約6%とし、その後、機械的エンドレススクリュープレスでプレスし、これにより、一方でバージン油を、他方で固形物を得るために、油を種子の残りの部分から分離させる。次いで、固形物を、1cmから2cmの断片の事前にカットされた筒状片の形に分離させる。例1に記載のプロトコルにしたがい、液体抽出物が得られ、これが以下の試験において純粋な形態で使用される。
【0202】
1.ネズミチフス菌(TA100)株に対する変異原活性の決定-細菌に関する復帰突然変異試験
【0203】
試験は3つの主なフェーズで行った。
予備実験は、試験する要素の細胞毒性を評価し、次の実験のための投与量範囲を選択するために行う。
第1の遺伝毒性実験(試験1)は、代謝活性化の存在下及び非存在下で、試験系及び試験要素(又は対照物)を予備実験で定められた投与量範囲で最小限のアガー上に直接組み込む。
第2の実験(試験2)は、代謝活性化の存在下及び非存在下で、第1の実験の結果の分析後に試験責任者によって定められた投与量レベルを用いて、試験系及び試験要素(又は対照物)をプレインキュベーションする。この第2の実験は、特に、あいまいな結果又は陰性結果が得られた場合に、第1の実験の結果を確認する又は完成させるために行われた。
例1による抽出物の希釈物は細胞毒性試験を行うために水中で準備された。
【0204】
前記試験は、ネズミチフス菌のTA100株について、S9混合物の存在下及び非存在下で、5000、1600、500、160及び50μg/プレートの濃度で行われた。
【0205】
S9混合物の調製に使用される試薬は、以下の仕様にしたがって調製された。
【0206】
【表20】
【0207】
細菌は、代謝活性化系の存在下及び非存在下で試験抽出物にさらされた。使用する代謝系は補酵素添加ポストミトコンドリア画分(S9)である。このS9画分、すなわち酵素誘導物質で処理されたSprague-Dawleyラット肝ホモジネートのミクロソーム画分は、Maron,D.M.及びAmes,B.N.(1983)にしたがって調製され、Moltox TMによって提供された。これは、-70℃未満の温度で保存される。S9ミクロソーム画分はS9混合物中において10%の濃度で使用された。適用したプロトコルは以下の通りであった。
【0208】
3本の溶血管に、以下を導入した。
- 代謝活性化非存在下での測定:
0.1mLの種々の濃度の試験要素
0.5mLの0.2MのpH7.4の滅菌リン酸緩衝液
2mLのネズミチフス菌用トップアガー
0.1mLの細菌種菌(TA100)
- 代謝活性化存在下での測定:
0.1mLの種々の濃度の試験要素
2mLのネズミチフス菌用トップアガー
0.1mLの細菌種菌(TA100)
0.5mLのS9混合物
【0209】
混合し、事前にペトリ皿に広げたボトムアガーの表面に注ぐ。37±2℃で48時間から72時間インキュベートする。
【0210】
これらの測定は、予備細胞毒性試験、試験1及び試験2の各試験について行った。プレインキュベーション法中に生成された未処理対照、陰性対照及び陽性対照を、トップアガーを注ぐ前に、37℃±2℃にて20分間から30分間インキュベートした。
【0211】
適用したプロトコルは以下の通りであった。
【0212】
- 4つのネズミチフス菌用トップアガー2mL画分に、以下を導入する。
0.1mLの0.2MのpH7.4のリン酸緩衝液
0.1mLの溶媒
0.1mLのS9混合物
0.1mLの最高濃度の試験要素調製物
【0213】
- 2mLのネズミチフス菌用トップアガー画分を、その無菌性をチェックするために使用する。
【0214】
- 混合し、事前にペトリ皿に広げたボトムアガーの表面に注ぐ。
【0215】
- インキュベーションを、37±2℃にて48時間から72時間行う。
【0216】
- 試験は3回行われる。
【0217】
- 細菌の増殖は認めなれないべきである。
【0218】
試験抽出物の少なくとも5つの濃度について、代謝活性化を伴わない試験及び代謝活性化を伴う試験を行った。
【0219】
・結果の表現及び解釈
【0220】
多くの基準により結果が陽性であるか否かを決定することが可能であり、特に、代謝活性化の存在下及び非存在下での、試験アイテムの投与量に相関した復帰突然変異株数の増加、又は1つ若しくは複数の濃度での復帰突然変異株数の再現性を有する増加を決定することが可能である。
- 検証工程の結論として、試験要素が変異原性であると考えられるのは以下の場合であり、すなわち、代謝活性化の存在下及び/又は非存在下で、5つの菌株のうち1つ以上で投与量と効果の間の関係が再現性よく得られた場合である。変異原性は、復帰突然変異株の数がTA98株、TA100株及びTA102株で自然復帰率の2倍以上(R≧2)である場合、並びにTA1535株及びTA1537株で自然復帰率の3倍以上(R≧3)である場合にのみ、所定の濃度について考慮される。
- 試験1及び試験2の結論として、試験要素が非変異原性であると考えられるのは以下の場合であり、すなわち、代謝活性化の存在下及び非存在下で、試験要素の全濃度について、復帰突然変異株の頻度が常に、TA98株、TA100株及びTA102株については自然復帰率の2倍未満(R<2)である場合、TA1535株及びTA1537株については自然復帰率の3倍未満(R<3)である場合であるが、但し、試験された濃度の毒性に変異原性作用の欠如が関係していないことを確認したことを条件とする。
【0221】
予備試験は試験要素の細胞毒性を示さなかった。したがって、この濃度範囲が遺伝毒性試験1に使用された。
【0222】
試験1について得られた結果に基づいて、試験2について同じ希釈範囲を使用することを決定した。復帰突然変異株の分析により以下のことが示される。
- 細胞毒性作用は認められなかった。
- 試験抽出物のいずれの濃度も、代謝活性化の存在下及び非存在下で、TA98株、TA100株及びTA102株について自然復帰率の少なくとも2倍以上、又はTA1535株及びTA1537株について自然復帰率の3倍以上の比率Rを示さなかった。
- 試験系又は試験条件に関係なく投与量応答は観察されなかった。
【0223】
この研究で得られた結果に照らして、例1によるペプチド加水分解物は変異原性又は前変異原性活性を有さないとみなすことができる。
【0224】
2.in vitro 3T3 NRU光毒性試験
【0225】
試験の原理は、培養中の細胞に対する、非細胞毒性照射量のUVAの存在下及び非存在下での、例1によるペプチド加水分解物の細胞毒性の比較に基づく。細胞毒性は、参照要素及びモリンガ・ペレグリナの抽出物を用いる処理から24時間後に、UVAの照射下又は非照射下で、生体染色液ニュートラルレッドを使用して細胞生存性を決定することによって評価される。用いた細胞は、Balb/c 3T3クローン31系統(ATCC-CCL163)のマウス胚線維芽細胞である。陽性対照はクロルプロマジン溶液(CAS番号は69-09-0)である。陰性対照は試験抽出物希釈液及び参照希釈液(緩衝生理食塩水溶液±1%溶媒)である。ペプチド加水分解物を、UVAの存在下又は非存在下で、8つの濃度で、試験される濃度当たり少なくとも4つの培養ウェル中で試験した。線維芽細胞をトリプシン処理し、2つの96ウェル培養プレートには、完全培地中に、細胞数2×10cells/mLを含む細胞懸濁液100μLが播種された(すなわち、ウェル当たりの細胞数2×10)。
【0226】
播種されたプレートは37℃、5%COで24時間インキュベートされた。インキュベーションの終わりにおいて、細胞芝地のセミコンフルエンス状態を確認した。希釈液は細胞上に置く直前に準備された。最高濃度のpHを測定したところ、6.5から7.8であった。培地を除去し、各ウェルを、室温に維持した150μLのPBSで注意深く予備洗浄し、次いで100μLの各抽出物又は参照希釈液で処理した。培養プレートを暗所で1時間±5分間、37℃、5%COでインキュベートした。照射はBio Sun太陽光照射装置(Vilber Lourmat RMX3W)を用いて行った。Bio Sun装置はプログラム可能なマイクロプロセッサによってUV照射を制御するシステムである。システムはUV発光に連続的に追従する。照射エネルギーがプログラムされたエネルギーと等しくなると照射は自動的に停止する。試験装置の分光放射照度は、キャリブレートされた分光放射計で250ナノメートルから700ナノメートルの波長範囲で測定した。
【0227】
2つのプレートのうちの一方のプレートがカバーを付けた状態で室温で照射され、照射中に、他方のプレートはUVAから保護され室温に維持された。照射後、処理媒体を吸引し、細胞をすすいだ。その後、100μLの完全培地が注意深く加えられ、プレートは37℃、5%COで18時間から22時間インキュベートされた。翌日、細胞生存性(増殖、形態、単層完全性)を位相差顕微鏡を使用する観察により評価した。培地を除去し、各ウェルを予備洗浄し、室温に維持した後、100μLの染色液で処理した。プレートは同じ条件下で3時間インキュベーターに戻された。染色液を除去し、細胞を洗浄し、その後洗浄液を除去し、150μLの脱着溶液を各ウェルに加えた。結晶が完全に溶解するまでプレートを振動させた。吸光度値は450nmで測定された。
【0228】
・試験検証
細胞のUVA感受性は、増加する照射線量に細胞を曝露した後の細胞の生存性を評価することによって、約10回継代毎に確認される。細胞を試験に用いた密度で培養する。それらを2.5J/cm及び9J/cmの照射量で翌日に照射し、細胞生存性を1日後にNRU試験によって決定する。細胞は、5J/cmのUVA照射後の生存性が暗所に維持された対照の生存性の80%以上である場合、品質基準を満たし、9J/cmのUVAの最高照射量では、生存性は、暗所に維持された対照の生存性の少なくとも50%に等しくなければならない。
【0229】
・結果
陰性対照は0.4以上の吸光度を有する。陽性対照であるクロルプロマジンは、IC50値が、UVAの存在下で0.1μg/mLから2μg/mL、UVAの非存在下で7μg/mLから90μg/mLである。これらの結果により試験を有効性のあるものとすることができる。UVAの照射下又は非照射下で50%細胞死をもたらすペレグリナ固形物のペプチド加水分解物の濃度は推定できない。死亡率が50%に達することはなかった。UVAの照射下又は非照射下で50%細胞生存率をもたらすペレグリナ固形物のペプチド加水分解物の濃度は推定できない。生存率は常に50%を超える。
【0230】
・結論
適用された実験条件の下において、ペレグリナ固形物のペプチド加水分解物は非光毒性と考えることができる。
【0231】
3.SIRC細胞株に対するニュートラルレッド放出法を用いるin vitro細胞毒性試験による眼刺激性の評価
【0232】
このin vitro試験は、ニュートラルレッド放出法を用いて細胞単層に対して50%細胞死(IC50)をもたらす濃度を決定することによりペレグリナ固形物のペプチド加水分解物の細胞毒性を評価することに基づくものである。使用される細胞は、マイコプラズマを含まないSIRCウサギ角膜線維芽細胞(ATCC-CCL60)である。
【0233】
ペプチド加水分解物を生理食塩水中で25%及び50%に希釈した。線維芽細胞をトリプシン処理し、2つの24ウェル培養プレートには、完全培地中に、細胞数2×10cells/mLを含む細胞懸濁液が1mLずつ播種された。播種されたプレートを37℃、5%COで一晩インキュベートした。インキュベーションの終わりにおいて、細胞芝生のコンフルエンス状態を確認した。染色液は、完全培地中で0.5mg/mLで準備した。培地を除去し、1mLの染色液を各ウェルに入れた。プレートを、37℃、5%COのインキュベーターに、3時間±15分間戻した。この接触時間の後、染色液を除去し、ウェル当たり1mLの完全培地と置き換えた。抽出物又は参照物との接触前に、系を安定化させるために、プレートを室温で少なくとも30分間維持した。各ウェルを2mLのPBSで洗浄し、室温に維持し、次いで、ペプチド加水分解物希釈液又は参照希釈液を各々500μL、細胞芝生と接触させた。接触時間は60秒(陽性対照では30秒)であった。処理は、ウェル毎に、ペペプチド加水分解物又は参照物が置かれた時点でストップウォッチを開始させて行った。プレートは処理中、手動で振動させた。55秒後(又は陽性対照については25秒)に希釈液を吸引した。正確に60秒又は30秒にて、5回の連続洗浄を行った(室温に維持された2mLのPBS×5つ)。各洗浄の後と最終洗浄の後に上清を吸引し、ウェルは発現フェーズを待っている間、培地がないままであった。培養プレートを完全に処理した後に1mLの脱着溶液を各ウェルに置いた。均等な染色が得られるまでプレートを約15分間振動させた。各培養ウェルについて得られた溶液を吸い上げ、96ウェルプレートの2つのウェル内に分け、すなわち150μL/ウェルに分けた。
【0234】
・結果
50%細胞死をもたらすペプチド加水分解物の濃度は50%超えと評価された。ペプチド加水分解物50%での細胞死のパーセンテージは17%であると評価された。
【0235】
・結論
適用された実験条件下において、ペレグリナ固形物のペプチド加水分解物の細胞毒性は無視できる細胞毒性であると考えることができる。
【0236】
4.皮膚科学的管理下における48時間の密封包帯下での、単回適用後のペプチド加水分解物の皮膚適合性の評価
【0237】
この研究の目的は、48時間、腕の前外側に対し行われる上皮試験によってペプチド加水分解物の皮膚適合性の程度を評価することであり、概して、皮膚を良好な状態に保つペプチド加水分解物の能力を評価することである。皮膚が乾燥肌でなく、敏感肌でもなく、処理される部位において皮膚病変がないもない18歳から65歳の健康な女性又は男性ボランティア10名をこの研究に含むこととした。例1によるペレグリナ抽出物5%とプロパンジオール/ソルビトール混合物95%とを含有するローションの形で準備したペプチド加水分解物の皮膚適合性を、包帯を除去した後30分から40分の間に行われる最初の適用から48時間後に評価した。皮膚反応(紅斑及び浮腫)を、以下のスケールにしたがって0から3まででスコア化した。
【0238】
【表21】
【0239】
他の皮膚反応(水疱、果肉、小胞、乾固、落屑、粗さ、石鹸作用など)を、以下のスケールにしたがって評価し、記述的に報告した。
0:反応なし
0.5:非常に軽度
1:軽度
2:中程度
3:顕著
【0240】
研究終了時に、平均刺激スコア(M.I.S.)が以下の式にしたがって計算された。
【0241】
[数式4]
M.I.S.=皮膚反応の和(紅斑+浮腫+水疱+丘疹+小水疱)/分析したボランティアの数
【0242】
得られたM.I.S.により、以下の表に示されるスケールにしたがって試験抽出物を分類することができた。
M.I.S.≦0.20 非刺激性
0.20<M.I.S.≦0.50 わずかに刺激性
0.50<M.I.S.≦2 中程度の刺激性
2<M.I.S.≦3 高度の刺激性
【0243】
・結果
ペレグリナ固形物のペプチド加水分解物の平均刺激スコア(M.I.S.)は0に等しい。
【0244】
・結論
ペレグリナ固形物のペプチド加水分解物は、12名のボランティアに48時間連続適用した後、非刺激性と考えられる。
【0245】
・試験の一般的結論
上で行った試験の結果は疑う余地のないものであり、例1によるペプチド加水分解物について、以下の点を実証するものである。
1)眼及び皮膚刺激性試験は陰性
2)光毒性試験は陰性
3)変異原性試験は陰性
本発明によるペプチド加水分解物の安全性が実証され、ターゲット集団に関する制限なく大規模局所美容用品使用に理想的である。
【0246】
[例22]加水分解固形物抽出物の皮膚の色素除去作用
【0247】
この試験の目的は、本発明による美容用製品の28日間の適用後の色素除去の可能性及び許容性を評価することである。試験製品は、例20に記載のしわ防止クリームである。
【0248】
・分析された集団
含まれた、分析されたボランティアの数:23
顔、首、首筋及び/又は手にほくろがある、平均年齢64歳(44歳から70歳まで)の女性。
【0249】
・研究のために適用された手順
1日2回、28日間、エンドウ豆大の量の製品を顔、首、首筋及び手の清潔な皮膚に塗り、製品が完全に浸透するまでマッサージする。目に入らないようにする。日光を浴びる前には、提供される日焼け止め製品を塗る。
【0250】
・評価基準
色素除去の見込みの評価:D1及びD28での、3つの部位(処理された色素沈着ゾーン、処理された非色素沈着ゾーン、未処理の非色素沈着対照ゾーン)でのメクサメトリック(mexametriques)測定
不快感に関するボランティアからのフィードバック
D1及びD28でのC-Cubeビデオダーモスコープ(Pixience SAS,Toulouse,フランス)を使用したほくろの説明用の写真(最終レポートが得られる段階になったときにWeTransferによってコンタクトシートの形で送信される)
化粧品の許容性:D28にボランティアによって記入されるアンケート
【0251】
・研究結果
【0252】
【表22】
【0253】
*は対応するデータについてのWilcoxon試験、**Sは有意(p≦0.05)、NSは非有意(p>0.05)。
【0254】
メクサメトリック測定の分析により、D1と比較してD28において、2つの処理されたゾーン(色素沈着エリアと非色素沈着エリア)について、メラニン指数の統計的に有意な減少が示された。未処理ゾーンにおいてD28とD1の間で記録された変化は統計的に有意ではないことがわかった。
【0255】
・結論
試験の条件下において、試験製品は28日間の使用後に大きな色素除去効果を示した。
図1