(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】高電圧を印加可能な内部電極を有するバッキングロールを用いた静電補助塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/30 20060101AFI20231002BHJP
B05D 1/04 20060101ALI20231002BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231002BHJP
B05C 13/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B05D1/30
B05D1/04 Z
B05D3/00 D
B05C13/00
(21)【出願番号】P 2023079864
(22)【出願日】2023-05-15
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596164685
【氏名又は名称】硬化クローム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平良 進
(72)【発明者】
【氏名】福島 登
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116600(WO,A1)
【文献】特開2020-158605(JP,A)
【文献】特表2003-530215(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0138572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05C1/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の表面を有する連続して移動する可撓性プラスチック系ウェブの第1の表面に接地されたアプリケーターから液体組成物からなる塗布液を流出させて塗布する方法であって、
前記ウェブをコーティング用のバッキングロールへ経路に沿って搬送し、直流電圧を印加した回転する前記バッキングロールの表面の一部に前記バッキングロールの静電界で前記ウェブの第2の表面を密着させて支持しながらコーティングポイントを通過させる工程と、
前記ウェブの第1の表面に前記バッキングロールに印加した直流電圧と同極性の電荷が配位して生じる静電力で、前記コーティングポイントにおいて前記塗布液を引き寄せて前記ウェブの第1の表面に塗布する工程とを含み、
前記バッキングロールが、前記ウェブが密着する最外層と、前記最外層に対して内側に隣接する導電性の単極式の内部電極層と、前記内部電極層に対して内側に隣接する絶縁層とを備えており、前記バッキングロールが、前記内部電極層に所定の電圧を印加することができるよう構成され、前記最外層が、体積固有抵抗値が25~100℃において10
7~10
13Ωcmのセラミックス系材料層であり、前記バッキングロールの表面が、前記内部電極層に前記所定の電圧が印加された状態において、前記最外層を前記内部電極
層に印加した電圧と同符号の電荷で帯電し、前記電荷の静電力によって前記最外層に接触した前記ウェブの第2の表面を前記最外層に密着させて回転移送し、前記塗布液を回転移送中の前記ウェブの第1の表面に引き寄せて接触させて、前記ウェブの第1の表面に沈積させることを特徴とする、塗布方法。
【請求項2】
前記内部電極層に印加する前記直流電圧とは逆極性の電荷を、前記塗布液が回転移送中の前記ウェブに接触する前に、前記ウェブの第2の表面とは反対側の第1の表面に印加する、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記内部電極層に印加する直流電圧が0.3~6.0KVである、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記バッキングロールの直径が100mm以上である、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記絶縁層、前記内部電極層、および、前記最外層のうちの少なくとも1つは溶射法により形成されている素材、あるいは無機質系または有機質系のいずれか1つのバインダーを使用した素材であり、前記バッキングロールの前記絶縁層、前記内部電極層、および、前記最外層のうちの少なくとも1つは封孔処理が施されている、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項6】
前記最外層が、セラミック系材料からなり、前記セラミック系材料が、酸化チタン、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化マンガン、酸化ニッケルおよび酸化鉄から選ばれた化合物を含有するアルミナ系もしくは酸化ジルコニウム系もしくは酸化マグネシウム系セラミックス、または酸化チタンを5~17重量%含有する酸化アルミニウム系セラミックスである、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項7】
前記最外層が、セラミック系材料からなり、前記セラミック系材料が、窒化アルミニウム系、炭化ケイ素系、および窒化ケイ素系から選ばれた少なくとも一つと、有機質系もしくは無機質系バインダーとを含む、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項8】
前記最外層の厚さが50~500μmである、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項9】
前記バッキングロールの前記最外層の中心線平均表面粗さRaが、0.01μm~5μmである、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項10】
前記内部電極層が、タングステンまたはモリブデンを含む導電性材料からなる、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項11】
前記内部電極層の厚さが5~50μmである、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項12】
前記絶縁層が、酸化アルミニウム、酸化チタンを2~4重量%含有した酸化アルミニウム系、酸化マグネシウム系、酸化ベリリウム系、窒化アルミニウム系、もしくは、窒化ケイ素を含むセラミック材料、磁器、および、ホーローから選ばれた少なくとも1つの高絶縁材料を含む、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項13】
前記絶縁層の体積固有抵抗値が10
13Ωcm以上である、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項14】
前記絶縁層の厚さが50~500μmである、請求項1に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッキングロールに支持されて連続して走行する可撓性の帯状支持体(以下ウェブ(web)とする)の表面に液体組成物とくに水溶性組成物からなる塗布液の1つまたは複数の層を、カーテンコーティングやビードコーティング法などによって塗布する工程において、塗布液がウェブと接触する接触線部(以下コーティングポイント)に静電気力を作用させることによりウェブの表側面(コーティング面)に随伴する空気層が塗布液とウェブの間に取り込まれるのを防止して、塗布液がウェブへ均一に濡れるのを促進することにより、コーティング厚みの均一性とコーティング速度を高める方法に関する。
【0002】
また本発明は、ウェブの裏側面(バッキングロール側面)をバッキングロール表面に密着させて、ウェブ裏側面とロール表面が随伴する空気層がウェブとロールの間に侵入するのを防止して、ウェブ張力と速度の変動、揺動などの走行トラブルが発生する前までのウェブ速度の限界を引き上げることを可能にする方法に関する。
【0003】
本発明は、写真用フィルム、写真用印画紙、磁気記録テープ、粘着テープ、感圧・感熱記録紙、コート紙等の製造における液体組成物主として水溶性組成物の塗布方法の改良に適用される。
【背景技術】
【0004】
カーテンコーティングやビードコーティングにおいては、高速で移動するウェブの表側面と裏側面はそれぞれ空気層が随伴している。
【0005】
これら表側面と裏側面の随伴空気層の厚さはウェブの移動速度に対応して増加するため、それぞれある限界速度に到達するとコーティングの均一性が低下またはウェブのスリップと揺動が発生して、安定したコーティングが出来なくなり、コーティング速度をそれぞれの限界速度以上に増やすことが出来なくなる。コーティングの均一性を維持して速度を上げるためには、ウェブの表側面と裏側面において、それぞれの随伴空気層の影響を同時に対策できる方法が必要とされている。
【0006】
ウェブの表側面においては、ウェブの移動速度が増加して随伴空気層がある限界を超えて増加すると、コーティングポイントにおいてウェブに移行した塗布液の下に空気層が侵入し、塗布液によって押し出すことができなくなる。空気層が塗布層の下に侵入すると、塗布液がウェブ表側面を濡らして広がることが妨げられ、あるいは空気層が塗布液に取り込まれて泡となりコーティング層の均一性が低下することから、コーティング速度を上げることができなくなる。
【0007】
従来、カーテンコーティングやビードコーティングにおいては、コーティングポイントに静電場を補助すると、塗布液中のイオンや双極性分子への静電気力によって塗布液をウェブ表面に引き付けて密着させることが可能になり、コーティング速度の上限を高めることが良く知られている。コーティングポイントに静電場を補助する方法として、1)空間に配置したコロナ放電電極からウェブに静電荷を与えた後に、接地したコーティング用バッキングロールに支持した状態でコーティングポイントを通過させる方法、2)アースから絶縁した導電性のコーティング用バッキングロール(以後バッキングロール)に直流電圧を印加して、コーティングポイントにおいてウェブの表面を塗布液の間に電界を形成する方法、3)またはこれら2つを組み合わせる方法が開示されている。
【0008】
たとえば、特許文献1~4には、ポリエステルなどの誘電体ウェブに電荷を付与する1)の方法が示されている。その対向する裏側と表側の表面間に束縛された極性電荷を付与された誘電体材質のウェブは、接地された導電性のバッキングロール表面に支持してコーティングポイントに搬送すると、ウェブの表側面に残留した極性電荷が塗布液を引き寄せて、塗布液の下の空気層をより強力に排除するように作用し、結果としてコーティング速度を増加させる。また、特許文献5~7には、アースから絶縁された導電性のバッキングロールに直流電圧を印加してその表面を帯電させ、ウェブをその表面で支持してコーティングポイントに移送して、ウェブと塗布液の間に電界を作用させて、塗布液をウェブに密着させる2)の方法が開示されている。さらに、特許文献7には2)と3)を組み合わせる方法も開示されている。
【0009】
ウェブへ静電荷を付与する効果、または導電性バッキングロールの表面に静電気を補助する効果とは、ウェブに随伴する空気層がウェブ表側面と塗布液の間に巻き込まれて塗布液が濡れなくなる現象を抑制し、コーティングの透明度や厚みが不均一化するまでの限界速度を引き上げることである。従来の1)~3)の静電補助コーティングにおいては、塗布液のウェブ表側面への密着力が高くなるほど随伴空気層をより強力に排除することからどれもウェブの表側面の静電気の帯電電位またはバッキングロール表面の電圧が高いほどコーティング速度を増加させることが知られている。しかし、導電性のバッキングロールに電圧を印加する静電補助コーティングにおいては、印加電圧が1500Vを超えると、バッキングロールから周辺機器への火花放電と、ウェブを貫通する短絡電流が発生し易くなることが知られている。また、ウェブに静電荷を付与する方法においても、ウェブ表側面の帯電電位が高くなると、ウェブのピンホールまたは絶縁抵抗が低下している場所において、塗布液と導電性バッキングロール表面間でウェブを貫通する短絡電流が発生することがある。このため、特許文献1で開示されている帯電電荷によるウェブの表面電位は1200V以下である。その他、例えば特許文献4では界面活性剤を添加した塗布液の分極効果の併用、特許文献2では導電性ブラシでウェブを帯電させる方法の併用によって、ウェブの表面電位を700~800Vより低く設定した静電補助コーティング技術を開示してはいるが、標準的に推奨されている表面電位はさらに低く400~500Vである。このように、従来の導電性のバッキングロールを使用する静電補助コーティングは、十分な電位をコーティングポイントに作用させることができておらず、随伴空気の増加による塗布障害が発生する前の限界速度を引き上げる効果は不十分である。
【0010】
さらに、ウェブの裏側面とバッキングロールの表面はそれぞれが空気層を随伴する。したがって、両方を合わせた随伴空気によってウェブは浮上し、浮上量はウェブ速度が上昇すると増加する。ウェブ浮上量がある限界を超えると、ウェブの搬送が不安定になる問題があり、ウェブの裏側面においても随伴空気層の増大がコーティング速度を増やすことが出来ない原因となっている。
【0011】
ウェブの浮上量h(μm)は、空気温度が25℃のとき、バッキングロール半径R(m)、ローラー速度UR(m/s)、ウェブ速度UW(m/s)、ウェブ張力T(N/m)から、次の(1)式で与えられる。
【0012】
【0013】
(橋本 巨 著「ウェブハンドリングの基礎理論と応用」,p73,加工技術研究会発行)
【0014】
(1)式によると、ウェブの裏側面とロール表面に巻き込まれる随伴空気層の厚みはウェブの張力Tが増加すると減り、ロール半径R、ウェブ速度UWまたはバッキングロール速度URが大きくなるほど増える(通常はUW≒UR)。
【0015】
導電性バッキングロールに電圧を印加する静電補助コーティングにおいては、ウェブの搬送速度が増えて、ウェブとバッキングロールの間の随伴空気層によってウェブが浮上すると、バッキングロール表面からウェブ表側面までの距離が長くなり、また導電性バッキングロールとウェブ裏側面の間にある空気層によって静電容量が低下する。このため、ウェブに蓄えられる極性電荷の量が減り、ウェブと塗布液の間の静電力が低下する。
【0016】
また、ウェブ裏側面の随伴空気層の厚さがロールの表面粗さとウェブ裏側面の表面粗さの合計を超えると、ウェブとバッキングロール表面との接触が減り、ウェブを牽引する力が減少する。ウェブの牽引力が減少するとウェブの張力と速度が変動するようになり、ウェブが蛇行し、ウェブ裏面にスクラッチが発生するなどの問題が起こる。したがって、コーティング速度を上げるためには、ウェブの裏側面とバッキングロールとの間に挟み込まれる随伴空気層によるウェブの浮上対策も必ず必要である。
【0017】
(1)式から計算したウェブの搬送速度と浮上量の関係を
図7と
図8に示してある。
図7に示すように、ウェブ張力Tを増やすことにより、ウェブの浮上を抑えることは可能である。しかし、ウェブ張力を増やすとウェブ搬送システムへの負荷が高くなり、バッキングロールとウェブの搬送径路にあるガイドロールの撓み量が増加する。また、ウェブが薄い場合はシワが発生し易いため、ウェブの張力を増加する方法には限界がある。
【0018】
また
図8に示すように、バッキングロールの直径を小さくするとウェブ浮上量は減る。しかし、バッキングロールの直径を小さくするとロールの剛性が減り、撓み量が大きくなる。さらに、ロール径が小さくなるとその割合でロールの回転数が増えるためウェブが高速になるほど、またウェブが広幅になるほどロールが振動し、塗膜に振動模様が発生する。巾1500mm以上の広幅ウェブに対するローラーカーテンコーティングやビードコーティングにおいては、ロールの撓み強度の確保と塗布ヘッド(アプリケータ)を設置するために必要な面積を考慮するとバッキングロールの直径は100mm以上が好ましい。ウェブの張力は、ウェブの強度と厚みに依存するが、ウェブの伸びや変形を考慮すると通常は75~300N/m前後である。
図7によると、直径100mmのバッキングロールを使用した場合、ウェブ張力を150N/mに設定しても、移動速度100m/分においてすでにウェブの浮上量は6μmであり、表面が滑らかであるロールにおいては牽引力が低下して、張力と速度の変動が起こる。
図7と8に示したウェブ浮上量から判断すると、バッキングロールの直径を100mm以上にした場合、ウェブの搬送速度を100m/分以上に増加させるためには、ウェブの裏面側において随伴される空気層によって、ウェブが浮上するのを防止する必要がある。
【0019】
直径100mm以上の導電性バッキングロールに直流電圧を印加する静電補助カーテンコーティングにおいて、ウェブの裏面側の随伴空気層によってウェブが浮上することへの対策が、特許文献7に開示されている。特許文献7ではその実施例において、直径200mmの、バッキングロール表面に、円周方向溝(溝深さ0.15mm、幅0.43mm、ピッチ1mm)をロール表面積の10~30%の割合で形成し、随伴空気層をマイクログルーブに排出してウェブの浮上を抑制して搬送速度を上げることを可能にしている。しかし、導電性バッキングロールへの印加電圧は800V以下であり、さらに溝部では静電補助作用が低下するためコーティングムラが発生しやすくなる。そのため、マイクログルーブと静電補助を併用した場合のコーティング速度の増加量は最大でも144m/分であり、それほど大きくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特許第2835659号公報
【文献】特公平01-035702号公報
【文献】特開平08-252517号公報
【文献】特許第2509316号公報
【文献】特公平06-009671号公報
【文献】特公昭46-027423号公報
【文献】米国特許第6177141号明細書
【非特許文献】
【0021】
【文献】橋本巨著,「ウェブハンドリングの基礎理論と応用」,加工技術研究会発行,p.73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
カーテンコーティングやビードコーティングおいては、高速で移動するウェブの表側面(コーティング面)と裏側面(バッキングロール側)は、その両面において空気層を随伴しており、その厚みは両面ともウェブの移動速度の上昇によって増加する。しかし、随伴空気層が原因で発生する問題は表側面と裏側面では異なっている。表側面では塗布液がウェブに濡れなくなる現象であるが、裏側面ではウェブの裏側面とバッキングロールの間に侵入する随伴空気層によってウェブが浮上し、ウェブの走行が不安定になる現象である。ウェブ表側面と裏側面の随伴空気流によるこれら異なる問題に対して、同時に対応できる高速コーティング技術が求められている。
【0023】
ロール表面に印加する電圧を1.5kV以上好ましくは3.5kV程度まで高くできるバッキングロールを使用することにより、誘電性のウェブはより強く分極し、塗布液とウェブの接触線部(コーティングポイント)におけるウェブ表面と塗布液の間の電界を従来の方法よりも各段に強くできることから、印加電圧の調整だけでコーティング速度を必要に応じて増やすことができる。
【0024】
同時にバッキングロールの高電圧によって強く分極したウェブの裏側面は、バッキングロール表面の正電荷による電界によってバッキングロールに強く引き付けられて随伴空気層を押し出してバックロールの表面に密着し、ウェブの走行トラブルが発生するまでの限界速度を引き上げることが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するため、本発明は以下の方法を採用する。
【0026】
本発明は、ロールに支持されて連続走行するウェブに液体組成物(特に水溶性組成物)を塗布する工程において、最大6kVまでの直流高電圧を印加しても周辺機器への火花放電が発生せず、ウェブにも短絡電流を発生させず、ロール表面に人体が触れても感電が起こらない安全性の高いバッキングロールを使用した静電補助コーティング方法を提供する。このバッキングロールは最下層に高絶縁性のセラミックスを、内部電極層に導電性金属を、最外層に高抵抗のセラミックス系材料層を使用して、最外層/内部電極層/最下層からなる隙間のない三層構造をロール表面に形成してある。内部電極層は、最外層と最下層によってバッキングロールの芯金と周辺機器から電気的に完全に遮蔽されている。最外層と最下層の絶縁耐圧は6kV以上であることから、内部電極層に最大6kVの直流高電圧を印加しても、周辺機器への火花放電とウェブにおける短絡電流の発生は完全に防止される。
【0027】
すなわち、本発明の方法は、
(1)対向する第1および第2の表面を有する連続して移動する可撓性プラスチック系ウェブの第1の表面に接地されたアプリケーターから液体組成物からなる塗布液を流出させて塗布する方法であって、
前記ウェブをコーティング用のバッキングロールへ経路に沿って搬送し、直流電圧を印加した回転する前記バッキングロールの表面の一部に前記バッキングロールの静電界で前記ウェブの第2の表面を密着させて支持しながらコーティングポイントを通過させる工程と、
前記ウェブの第1の表面に前記バッキングロールに印加した直流電圧と同極性の電荷が配位して生じる静電力で、前記コーティングポイントにおいて前記塗布液を引き寄せて前記ウェブの第1の表面に塗布する工程とを含み、
前記バッキングロールが、前記ウェブが密着する最外層と、前記最外層に対して内側に隣接する導電性の単極式の内部電極層と、前記内部電極層に対して内側に隣接する絶縁層とを備えており、前記バッキングロールが、前記内部電極層に所定の電圧を印加することができるよう構成され、前記最外層が、体積固有抵抗値が25~100℃において107~1013Ωcmのセラミックス系材料層であり、前記バッキングロールの表面が、前記内部電極層に前記所定の電圧が印加された状態において、前記最外層を前記内部電極に印加した電圧と同符号の電荷で帯電し、前記電荷の静電力によって前記最外層に接触した前記ウェブの第2の表面を前記最外層に密着させて回転移送し、前記塗布液を回転移送中の前記ウェブの第1の表面に引き寄せて接触させて、前記ウェブの第1の表面に沈積させることを特徴とする、塗布方法である。
【0028】
そして、前記塗布方法において、
(2)前記内部電極層に印加する前記直流電圧とは逆極性の電荷を、前記塗布液が回転移送中の前記ウェブに接触する前に、前記ウェブの第2の表面とは反対側の第1の表面に印加する、
(3)前記内部電極層に印加する直流電圧が0.3~6.0KVである、
(4)前記バッキングロールの直径が100mm以上である、
(5)前記絶縁層、前記内部電極層、および、前記最外層のうちの少なくとも1つは溶射法により形成されている素材、あるいは無機質系または有機質系のいずれか1つのバインダーを使用した素材であり、前記バッキングロールの前記絶縁層、前記内部電極層、および、前記最外層のうちの少なくとも1つは封孔処理が施されている、
(6)前記最外層が、セラミック系材料からなり、前記セラミック系材料が、酸化チタン、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化マンガン、酸化ニッケルおよび酸化鉄から選ばれた化合物を含有するアルミナ系もしくは酸化ジルコニウム系もしくは酸化マグネシウム系セラミックス、または酸化チタンを5~17重量%含有する酸化アルミニウム系セラミックスである、
(7)前記セラミック系材料が、窒化アルミニウム系、炭化ケイ素系、および窒化ケイ素系から選ばれた少なくとも一つと、有機質系もしくは無機質系バインダーとを含む、
(8)前記最外層の厚さが50~500μmである、
(9)前記最外層の中心線平均表面粗さRaが、0.01~5μmである、
(10)前記内部電極層が、タングステンまたはモリブデンを含む導電性材料からなる、
(11)前記内部電極層の厚さが5~50μmである、
(12)前記絶縁層が、酸化アルミニウム、酸化チタンを2~4重量%含有した酸化アルミニウム系、酸化マグネシウム系、酸化ベリリウム系、窒化アルミニウム系、もしくは、窒化ケイ素を含むセラミック材料、磁器、および、ホーローから選ばれた少なくとも1つの高絶縁材料を含む、
(13)前記絶縁層の体積固有抵抗値が1013Ωcm以上である、
(14)前記絶縁層の厚さが50~500μmである、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、ロールに支持されて連続走行するウェブに液体組成物(特に水溶性組成物)を塗布する工程において、最大6kVまでの直流高電圧を印加しても周辺機器への火花放電が発生せず、ウェブに短絡電流を発生させず、ロール表面に人体が触れても感電が起こらない安全性の高いバッキングロールを使用した静電補助コーティング方法である。このバッキングロールは最下層に高絶縁性のセラミックスを、内部電極層に導電性金属を、最外層に高抵抗のセラミックス系材料層を使用して、最外層/内部電極層/絶縁層からなる隙間のない三層構造をロール表面に形成してある。内部電極層は最外層と最下層によって、バッキングロールの芯金と周辺機器から電気的に完全に遮蔽されている。最外層と最下層の絶縁耐圧は6kV以上であることから、内部電極層に最大6kVの直流高電圧を電極層に印加しても、周辺機器への火花放電は完全に防止される。
【0030】
最外層である高抵抗半導体セラミックスの体積固有抵抗値は107~1013Ωcmであるため、内部電極に直流電圧を印加すると、内部電極から電荷が最表面に移動して最外層の表面は内部電極と同極性に帯電する。同時にバッキングロールの最外面に接触したウェブは、内部電極の電界によって誘電分極して、内部の電気双極子(electric dipole)が裏側面方向を内部電極の電位と逆極性の電荷に、表側面方向を同極性の電荷となるように配位する。そして、ウェブ表面側に配位した内部電極と同極性の静電荷によって、塗布液はウェブ表面に引き付けられてウェブに密着し、ウェブ表側面に随伴された空気層を排除して、塗布液がウェブに濡れるのを促進する。同時にウェブの裏側に配位した内部電極とは逆極性の電荷は、バッキングロールの最外層である高抵抗半導体セラミックスの表面に帯電した、内部電極と同極性の自由電荷に引き寄せられるため、ウェブはバッキングロール表面に密着する。このように、本発明においては、ウェブの裏表両側面において随伴空気層の影響が排除されるため、ウェブへのコーティング速度を大きく引き上げることが可能になる。
【0031】
本発明によって、下記の効果を得ることができる。
1.最大6kVまでの直流高電圧をバッキングロールの外面に設置した内部電極に印加して、周辺機材への火花放電を発生させることなく、ウェブに短絡電流による損傷を与えることなく、静電補助による液体組成物(特に水溶性組成物)のコーティングが可能になる。
2.バッキングロールの内部電極に直流高電圧を印加した状態で、同時に外部補助電極をウェブの表側面の上部空間に設置して、内部電極と逆極性の1.5~6kVの直流電圧を印加して、ウェブの表側面に内部電極と逆極性の電荷を付与する静電補助コーティングが可能である。
3.バッキングロールの直径が100mm以上であっても、最外面にある高抵抗半導体セラミックスの表面に帯電した静電荷による静電力でウェブをバッキングロールに完全密着させることが可能になり、ウェブ表面の静電補助コーティングを効果的に実施でき、またウェブの浮上による揺動やスリップを防止して、ウェブの搬送速度を400m/分以上にまで引き上げることが可能になる。
4.バッキングロールの直径をロールの長さに応じて大きくできることからロールの剛性を引き上げることが可能になり、ウェブをより広幅化することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】内部電極に高電圧を印加したバッキングロールのみを使用した静電補助コーティングを実施する本発明の方法の一例を示した断面図である。
【
図2】
図1のA部における電荷の分布状態を模式的に示した図である。
【
図3】本発明の方法を斜め方向から見た外観図である。
【
図4】内部電極に高電圧を印加したバッキングロールとウェブに静電荷を付与する方法を併用した静電補助コーティングを実施する本発明の変形例の方法の断面図である。
【
図5】
図4のB部における電荷の分布状態を模式的に示した図である。
【
図6】本発明の変形例の方法を斜め方向から見た外観図である。
【
図7】直径φ200mmのバッキングロールにおいて、張力とウェブ速度に対するウェブ浮上量の変化を示すグラフである。
【
図8】ウェブ張力150N/mにおいて、バッキングロール直径とウェブ速度に対するウェブ浮上量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1から
図3に、本発明の方法を示す。
図2は、
図1に示したA部における電荷の分布状態を模式的に示している。
【0034】
(1)コーティング能力を引き上げるためには、ウェブの搬送速度を上げる方法以外に、バッキングロールを長くしてウェブを広幅化することが重要である。ところが、ウェブ張力が一定の場合、バッキングロールを長くするとロールの撓み量が急激に増えるため、バッキングロールの撓みを防ぐために、同時にバッキングロール径も大きくしてロールの剛性を大きくする必要がある(ロールの撓み量はロール長さの3乗に比例し、断面二次モーメント(ほぼロール直径に比例)の4乗に逆比例する)。ところが、前記式(1)に示したように、ロール直径を増やすとウェブの裏面側の随伴空気層も比例して増える。随伴空気層の増加はウェブの搬送速度の上限を引き下げるためバッキングロールの直径を増やすことができなくなり、ロールを長くすることができない。一方、本発明は、ウェブの裏側の随伴空気層の影響を排除することができるので、バッキングロールの直径とロール長さを必要に応じて大きくしてウェブを広幅化することが可能になる。
図8から判断して、ウェブ搬送用ロールの直径が100mm以上になると随伴空気層の影響が顕著になってくることから、本発明は直径100mm以上のバッキングロールに適用するときより効果的である。
【0035】
本発明のバッキングロール1の内部電極層3は、最外層4に対して内側に隙間なく隣接していて最外層4に接触している導電体層である。内部電極層3は単極式であり、直流電圧を印加できるように直流高圧電源5との接続配線がなされているが、内部電極層3は内側に隣接する絶縁層2によってアースおよびバッキングロール1の芯金16からは完全に絶縁されている。
【0036】
一般に、内部電極層3としては、電圧の印加方式によって単極式と双極式の二種類が存在する。単極式とは、正(+)あるいは負(-)のいずれかの単一の内部電極のみを有し、アースに対して、この単一電極間にのみに電圧を印加する方式である。双極式とは、極性のことなる内部電極を2つ以上有する方式であるが、被吸着体であるウェブがアース接続されているときは、アース側へ電荷(電流)が漏洩して静電吸着力が不安定になる。本発明では内部電極層3に、単極式を使用する。内部電極層3は、バッキングロール1の軸方向においてはウェブ7の幅よりも広い範囲にわたって、さらに、バッキングロール1の回転方向にはバッキングロール1の全周にわたって、連続的に一様に設けられる。内部電極3が、櫛刃状や帯状、スパライル形状の場合コーティング層に形状ムラが発生する。なお、ウェブ7の支持範囲外であるバッキングロール1の円筒面の両端部分では、内部電極層3は形成されなくてもよい。
【0037】
最外層4は高抵抗のセラミックス材料であり、体積固有抵抗値は、25~100℃において107~1013Ωcmであり、より好ましくは108~1012Ωcmである。「静電気を扱う分野」では、体積固有抵抗値が1013Ωcm以上の物質は静電気が移動しにくいことから絶縁体に分類される。体積固有抵抗値が106Ωcmより低い材料は、静電気上の導体と呼ばれ、静電気が移動しやすく電圧を印加すると等電位となる。体積固有抵抗値が107~1013の材料は導体と絶縁体の中間領域に分類されおり、「静電気上の半導体」に分類される。電圧を印加すると、微少電流が流れ、導体と同じように表面に自由電荷が移動して帯電することが知られている。そして、この自由電荷の帯電量は印加電圧に依存する。導電性金属表面と違い、このような高抵抗の半導体セラミックス材料の表面においては、3.5~6kVの高電圧を印加しても局所的には0.001~10μA/cm2程度の微少電流しか流れない。このため、表面の自由電荷による放電は微少コロナとなりアーク放電に発展することはなく、周囲の機器へ向かって火花放電が発生することはない。
【0038】
本発明においては、
図2に示すように、内部電極層3に直流電圧を印加すると、内部電極3と同極性の自由電荷17が最外層4の表面に移動して帯電する。そして、最外層4の表面にウェブ7の第2の面13(裏側面)が接触すると、内部電極の電界による誘電分極によってウェブ7の内部の双極子18は自由電荷17とは逆の極を最外層4の表面方向に向けて配位する。そして最外層4の表面の電荷17と、ウェブ7の第2の面13に配位した双極子の逆電荷間との静電気力によって、ウェブ7は最外層4の表面に密着する。このとき、コーティング面であるウェブの第1の面12(表側面)は内部電極3の静電界によって内部電極と同極性に分極帯電している。この「極性電荷」によって、塗布液を回転移送中のウェブ7の第1の面12の方へ引きつけて、塗布液9とウェブ7の第1の面12の間に随伴空気層を侵入させることなく、ウェブ7の第1の面12に均一なコーティング層11を形成することが可能になる。内部電極3への印加電圧が高いほど、ウェブ7が誘電分極して蓄積される第1の面12の極性電荷量は増加し、その電界は強くなるのでコーティング速度を大きく増やすことが可能になる。
【0039】
(2)
図4と5は、本発明の変形例の方法の1例を示した側面図である。
図5は、
図4のB部における電荷の分布状態を模式的に示している。
【0040】
本発明の変形例の方法は、本発明の方法と同じ装置構成において、コーティングポイントより上流の位置に空間補助電極14を追加設置して、内部電極4と逆極性の高電圧を印加してコロナ放電を発生させて、ウェブ7の第1の表面12に内部電極層3とは逆極性の自由電荷19を帯電させる方法である。
【0041】
バッキングロール1の最外層4の耐電圧は最大6kVであり、体積固有抵抗値は107~1013Ωcmであることから、電荷19を付与したウェブにピンホールまたは絶縁抵抗の弱い場所があっても、それら欠陥箇所における塗布液からバッキングロール1に向かう短絡電流の発生を防止する。したがって、コーティングポイントより上流側の空間に設置してある外部補助電極14のコロナ放電電位を必要に応じて引き上げて、ウェブ7の第1の面12への自由電荷19の帯電量を増やすことが可能であり、静電補助によるコーティング速度をさらに大きく増やすことが可能になる。外部補助電極への印加電圧はDC(-)3.5~6kVで十分に効果があり、周辺機器に対して適正な距離を維持して設置してあれば、火花放電は発生しない。
【0042】
さらに、最外層4の表面の電荷17とウェブの第1の面に帯電した電荷19間の静電力によって、ウェブ7は、さらに強力に、最外層4の表面に密着し、ウェブ7の裏側への随伴空気流の侵入を完全に防止できるようになる。したがって、コーティング速度の増加に合わせて、ウェブの搬送速度も必要に応じて大きく引き上げることが可能になる。
【0043】
(3)本発明の被吸着体であるウェブ7は可撓性であるため、ウェブ7とバッキングロール1とのすべての接触面において密着の抜けた部分がなく、均一で強い密着力が必要である。ウェブ7の静電密着に必要な静電力を得るため、内部電極層3に印加する電圧は通常はDC(+)0.3~3.5kVで十分である。印加電圧が高いほど静電補助効果は強くなり、印加電圧が0.3kV以下では静電力は不足する。最外層4の耐電圧は最大6kV以上であるため、DC+3.5kVを印加しても火花放電が起こることは無い。
【0044】
(4)バッキングロール1の絶縁層4、内部電極層3、および、最外層2のうちの少なくとも1つは溶射法により形成されている素材、あるいは無機質系または有機質系のいずれか1つのバインダーを使用した素材であり、少なくとも1つは封孔処理が施されている。
【0045】
本発明で言う溶射とは、コーティング材料を、加熱により溶融もしくは軟化させ、微粒子状にして加速し被覆対象物表面に衝突させて、偏平に潰れた粒子を凝固・堆積させることにより被膜を形成するコーティング技術である。溶射には様々な方式があり、使用する材料や熱源の種類等により分類されているが、本発明の場合は特に大気プラズマ溶射法が適している。
【0046】
さらに、最外層4および最外層2に溶射セラミックス系材料を使用する場合は、絶縁層2、内部電極層3、最外層4のうちの少なくとも一層は封孔処理が施されている事が好ましい。溶射セラミックス被膜は扁平した溶射粒子の集まりであるが、この溶射粒子間には微細な隙間があり、溶射被膜の総体積の3~10Vol%に相当する相互に連結した気孔が形成されている。通常の大気環境では、この気孔には湿度を含んだ空気や液体が浸透して、気孔内壁に水分子が吸着するため、溶射被膜は絶縁抵抗および耐電圧が著しく低い状態にある。溶射セラミックスは、絶縁性の封孔剤を浸透させることによって、連結気孔は消滅し、体積固有抵抗値が安定して、耐電圧が高く、耐蝕性に優れたセラミックス系材料となる。セラミックス系材料をコーティング後に封孔処理することは、実機で使用される直径200mm以上の大型のバッキングロールであっても実施可能であり、実用的な手法である。封孔処理に用いる素材としては、低粘度のシリコンオリゴマー(例えば、粘度8~40mPs,25℃)や、低粘度のエポキシ樹脂(例えば、粘度80~400mPs,25℃)、ポリエステル樹脂、無機被膜を形成するリチウムシリケート水溶液、無機系ゾルを形成する金属アルコキシドなどの液状の封孔処理剤を溶媒による希釈で低粘度化して使用出来る。本発明の場合、低粘度のシリコンオリゴマーおよび低粘度エポキシ樹脂が優れた含浸特性と絶縁性能および耐電圧特性を示すので好ましい。また封孔処理層の厚み範囲としては溶射層全層が封孔されていることが好ましい。この様に封孔剤を溶射被膜の気孔に浸透させて気孔を封止したのち加熱硬化し、封孔剤の体積固有抵抗値や耐電圧特性を安定化することが重要である。溶射被膜内部の気孔の封止を確実に行わないと絶縁層2と最外層4ともその本来の体積固有抵抗値および耐電圧に調整できない。
【0047】
封孔処理後の最外層4の25~100℃での体積固有抵抗値は107~1013Ωcmであり、好ましくは108~1012Ωcmで、さらに好ましくは109~1012Ωcmである。体積固有抵抗値が107Ωcmより小さいと、アースに接続されている塗布液からバッキングロール1の表面に接触するウェブ7を通じた短絡電流または周辺装置への火花放電の発生を防ぐことができなくなる。すなわち、最外層4の体積固有抵抗値が107以下では、バックロールおよびウェブの表面に1.5kV以上の高電圧を印加する静電補助コーティングを実行できなくなるので好ましくない。
【0048】
一方、最外層4の体積固有抵抗値が1013Ωcmを超えると、最外層4は絶縁性の誘電体となり、内部電極層3からは実質自由電荷17が流れなくなる。その結果、最外層4の表面は内部電極と同じ極性の自由電荷17で帯電することができないため好ましくない。最外層4の電気特性が絶縁性の誘電体の場合は、内部電極3の電圧による誘電分極によって、最外層4の表面方向が内部電極3と同じ極性の電荷となるように双極子18が方位する。ここで、最外層4の表面の帯電は双極子に固定された電荷によるものであり、自由電荷で中和して消滅させることはできない。ウェブ7がバッキングロールから離れるとき、剥離帯電によって最外層4の表面に逆電荷が残留する。この逆電荷は、バッキングロールに電圧が印加されている状態においては、最外層4の双極子端の固定電荷にトラップされており、見かけ上の帯電電位は下がるが消滅せずにそのまま残留している。最外層4の表面がこのようになると、ウェブ7は最外層4の表面から弾かれる。すなわち、最外層4は、体積固有抵抗値が1013Ωcmより高いと絶縁性の誘電体となり、その表面にウェブの剥離電荷が中和されず残留したままの状態となるため、ウェブは最外層4の表面に密着できなくなり、ウェブの走行に問題が発生する。
【0049】
(5)最外層4は、セラミック系材料からなり、セラミック系材料が、酸化チタン、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化マンガン、酸化ニッケルおよび酸化鉄から選ばれた化合物を含有するアルミナ系もしくは酸化ジルコニウム系もしくは酸化マグネシウム系セラミックス、または酸化チタンを5~17重量%含有する酸化アルミニウム系セラミックスである。
【0050】
本発明の最外層4の材料として好ましいのは体積固有抵抗値を107~1013Ωcmに調整可能な材料で取扱い性に優れた材料である。内部電極層2との密着性や緻密性、体積固有抵抗値の安定性、取扱い性などからも、溶射法による酸化チタンを5~17重量%、好ましくは7~15重量%含有した酸化アルミニウム系のセラミックス系材料層がもっとも良い。
【0051】
(6)また同様な意味で、本発明では最外層4と絶縁層2は、塗布法による有機系あるいは無機系バインダーを使用した非酸化物系のセラミックス系材料層も好ましい。最外層4と絶縁層2は、体積固有抵抗値および耐電圧が確保できるのであれば、ポリイミドなどの有機質系バインダー、あるいはリン酸アルミ、水ガラス系、シリコン系などの無機質系バインダーと、本発明に相応しい体積固有抵抗値を有する様に配合された窒化アルミニウム系、炭化ケイ素系、および窒化ケイ素系から選ばれた少なくとも一つと、有機質系もしくは無機質系バインダーを含むセラミックス系材料からなるコート材を塗布して形成したコーティング層であってもよい。
【0052】
(7)最外層4の厚さは、50μm以上、更には80~500μmであることが好ましい。この厚さの下限値は、最外層4に内部電極層3まで貫通するピンホールなどがないことを保証するために必要な下限膜厚であり、ウェブ7の安定した密着力に必要な最小の印加電圧に対して耐電圧が確保できる膜厚である。この厚さの上限値は、最大の印加電圧を考慮して設定してある。より強い静電補助効果を得るにはより高い印加電圧が必要で最外層4の厚みを増やして耐電圧を増やす必要がある。しかし、内部電極層へ印加電圧は3.5kVで十分な効果が得られることから、安全率を考慮して最大6kVの耐電圧で十分である。最外層4の厚みがその耐電圧が得られる500μmより増えるのは溶射時間が増えるだけであり好ましくない。
【0053】
(8)本発明のバッキングロール1の最外層4の表面粗さは、中心線平均表面粗さRaが0.01~5μmである。0.01μm未満の平滑面は、現実のセラミックス層の研磨技術では得ることが困難である。最外層4の表面粗さが大きいほど、高速におけるウェブの走行は安定するが、5μmを超えると最外層4の表面粗さがウェブの裏面に転写するため好ましくない。
【0054】
(9)内部電極層3の材料は、タングステン、モリブデン、高性能活性炭、銅、銀などの焼成型導電性ペーストも使用できるが、プラズマ溶射法で施工したタングステンまたはモリブデンの溶射皮膜が、熱伝導率が高く、また取扱い上も好ましい。
【0055】
(10)最外層4の体積固有抵抗値は107~1013Ωcmと高いので、内部電極に6kVの高電圧を印加した状態でも、内部電極からウェブ表面に流れる総電流は数mA以下と非常に少ないため、内部電極層3の厚さは5~50μmで十分であり、内部電極3のロール両端部における境界を滑らかにするためできるだけ薄いほうが好ましい。
【0056】
(11)絶縁層2の高絶縁材料としては、99.6%以上の高純度アルミナもしくは酸化チタン2~4wt%含有アルミナなどによるセラミックス溶射膜、酸化マグネシウム系、酸化ベリリウム(BeO)系、窒化アルミニウム(AlN)系、窒化ケイ素(Si3N4)系などから選ばれたセラミックス材料からなる被覆材料が好ましい。また、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリ4フッ化エチレン(テフロン(登録商標))、ポリ3フッ化塩化エチレン、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリスチレンなどから選ばれた高分子樹脂、磁器、ホーローなどのSiO2系ガラス膜などでも良いが、本発明の場合、絶縁性能や熱伝導率、取扱い性、価格、などから、99.6%以上の高純度アルミナもしくは酸化チタン2~4wt%含有アルミナからなるセラミックス溶射皮膜が最も好ましい。
【0057】
(12)本発明のバッキングロール1の芯金16に接している最も内側の層である絶縁層2の体積固有抵抗値は、1013Ωcm以上であることが好ましい。これは内部電極層3から絶縁層2を経由する芯金16への漏れ(リーク)電流を影響のないレベルまで小さくするためである。
【0058】
(13)絶縁層2の厚さは50~500μmであるのが良く、50μm未満だと必要な密着力を得るための最小の電圧0.3kVを内部電極層3に印加するための耐電圧が不足する。内部電極層に最大6kVまでの印加電圧を可能にするために、絶縁層3の耐電圧は6kV以上であることが望まれるが、この耐電圧に必要な厚みは500μmで十分である。
【0059】
(14)本発明に使用されるウェブとしては、紙、プラスチックフィルム、レジンコーテッド紙、合成紙等が包含される。プラスチックフィルムの材質は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6,6-ナイロン、6-ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。またレジンコーテッド紙に用いる樹脂としては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、必ずしもこれに限定されない。ウェブは、前もってコーティングされた1つまたはいくつかの層を有することができる。
【0060】
(15)また、「塗布液」とは、その用途に応じて種々の液組成のものが含まれ、例えば、写真感光材料の感光性乳剤層、下塗り層、保護層、バッキング層、帯電防止層またはハレーション防止層など、インクジェット受容媒体の場合にはインク吸収層を形成するために使用することができる。磁気記録媒体の磁性層、下塗り層、潤滑層、保護層、バック層等、接着層、着色層、防錆層等。それら塗布液は水溶性バインダーまたは有機バインダーを含むことができる。
【0061】
(16)界面活性剤を使用して、塗布液の表面張力およびコーティング適性を改変することができる。界面活性剤にはポリアルキレンオキシドおよびグリシドールとアルキルフェノールの水溶性付加物などの非イオン性界面活性剤、アルキルアリールポリエーテルサルフェートおよびスルホネートなどのアニオン性界面活性剤、アリールアルキルタウリン、N-アルキルおよびN-アシルβ-アミノプロピオネートなどの両性界面活性剤、サポニン、アルキルアンモニウムスルホン酸ベタインなどを使用することができる。
【0062】
(17)塗布液は粘度調整のために増粘剤を使用することができる。
【0063】
(17)本発明が適用可能なコーティングアプリケーターは、ビードコーティングアプリケーター、カーテンコーティングアプリケーター、押出コーティングアプリケーター、およびスライド押出コーティングアプリケーターである。
【0064】
[測定方法]
本発明で用いる物性値の測定方法は、以下のとおりである。
【0065】
1.中心線平均粗さRa
バッキングロールの表面の粗さ測定には、ロール状態のままで測定が可能な場合その表面の平均粗さRaをポータブル式表面粗さ計で実測した。測定器はJISB0651に従い、触針としては、頂角60度の円錐形で、球状先端の曲率半径が2μmのものを用い、測定方法は、JISB0601-2013に従い、カットオフ値0.8mmの条件にて測定して、中心線平均粗さRaを求める。測定機器として(株)小坂研究所Surfcoder SE1700αを用いて測定した。
【0066】
2.体積固有抵抗値
バッキングロール1表面の最外層4の体積固有抵抗値は、電気絶縁用セラミックス材料の試験法JISC2141-1992に準じて測定する。導電性粘着シートから、外径:φ26mmの主電極と、外径:φ48mm、内径:φ38mmのガード電極を切り取り、最外層4の曲面にJISC2141の3端子法に合うようにガード電極と主電極とが同心円になる様に貼り付ける。主電極およびガード電極の表面の接点に、導線の端子を導電性粘着テープで貼り付けた導線を用いる。対電極はバッキングロールの内部電極層3を使用する。測定は、測定開始から1分後の値を採用する。測定器として川口電機製作所製の超絶縁計R-503を使用した。主電極と内部電極層3およびガード電極との間に直流電圧500Vを印加して、そのときに主電極と対電極(内部電極層3)に流れる電流値I(A)から、体積抵抗RV(=V/I)を求め、下記式で体積固有抵抗値ρVを計算する。
【0067】
ρV(Ωcm)=RV×A/d
A=π×D2/4
ここで、
V:印加電圧(V)
RV:体積抵抗(Ω)
ρV:体積固有抵抗値(Ωcm)
A:主電極の面積(cm2)
D:主電極外径(cm)
d:最外層厚み(cm)
なお、厚さdの測定は、磁気式または渦電流式厚み計で行う。測定器として株式会社フィッシャー・インストルメンツ社製磁気式・渦電流式両用膜厚計 FMP20を用いた。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
図1の方法で、ウェブ7をバッキングロール1に連続搬送して、バッキングロールの内部電極3にだけ直流電圧を印加して、本発明の方法による静電補助カーテンコーティングを実施した。
【0069】
ここで用いたバッキングロール1は、以下のようにして製造した。
【0070】
鉄鋼製で、直径200mmの円筒状芯金16の胴中部の全表面に、サンドブラスト処理後、セラミック層の密着力を向上させるためのボンディング層として厚さ50μmの80wt%Ni/20wt%Cr合金をプラズマ溶射によって積層した。引き続きボンディング層の表面に、高絶縁性材料として酸化アルミニウム(アルミナ)(99.6wt%Al2O3)をプラズマ溶射によって250μm積層した後、この溶射アルミナ層に低粘度エポキシ樹脂による封孔処理をして、体積固有抵抗値が1014Ωcm以上の絶縁層2を形成させた。絶縁層2上に厚さ30μmのタングステン(W)をプラズマ溶射によって積層し、内部電極層3とした。このときバッキングロール1の幅方向の両端から20mm幅にマスキングを行い、この範囲には、内部電極層3は形成されないようにした。両端部のマスクを除去後、この両端部とさらに内部電極層3の上面、すなわちバッキングロール1の円筒面全面に、酸化チタン(TiO2)を10wt%含み、残り90wt%がアルミナ(Al2O3)からなるアルミナ系セラミックス材料をプラズマ溶射によって厚さ400μmを最外層4として積層した。同様に内部電極層3のタングステン層と一緒にアルミナ系セラミックス材料層を低粘度エポキシ樹脂によって封孔処理して、体積固有抵抗値が5.6×1010Ωcmの最外層4を得た。
【0071】
封孔処理後の最外層4に、ダイヤモンド砥石による研磨を施工し、残留厚さを300μm、研磨後の表面粗さRaが0.05μmになる様にした。なお、内部電極層3に電気接続が可能なように、最外層4の溶射施工時に、ロール片側の端部に矩形20mm×30mm範囲のマスキングを行い、最外層4を溶射後に内部電極層3を20mm×10mm幅でロール端部に露出させた。露出された内部電極層3にスリップリング6を接続した。スリップリング6に、直流高電圧電源5を接続して、直流電圧(+)3.5kVを内部電極3に印加した。ここで、内部電極へ電圧を印加した状態で、最外層4の表面に指で触れても人体に感じる電流は流れなかった。
【0072】
ウェブ7は、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムであり、厚さ0.3μmのゼラチン下塗り層を形成してある。ウェブ7は、事前に温度90~100℃の加熱炉中で、裏面と表面をアース接続したロールに交互に接触させて表面電位が±50V以下になるまで電荷を除去した後、25℃に冷却した。
【0073】
塗布液9のカーテン高さ10cm、塗布角度はロール頂点から前方へ30°、ウェブ7の張力150N/m、ウェブ7の搬送速度400m/minにおいて、湿潤コーティング層11の厚さが60μmとなるようにゼラチン組成物の塗布を行った。塗布液は0.1%ドデシル・ベンゼン・スルホン酸ナトリウムを添加した15%ゼラチン水溶液のものを用い、増粘剤によって低剪断粘度を100mPa・sに調整し、塗布液の流速はコーティング幅1cm当り4cc/秒に設定した。
【0074】
ウェブ7の裏面12はバッキングロール1の表面に密着しており、ウェブの走行は安定していた。ウェブ7の表面が随伴する空気層が塗布液の下側に巻き込まれることによる塗布障害が発生することなくコーティングは持続でき、湿潤コーティング層11の厚みの均一性は良く、表面は平滑であった。バックロールから周囲への火花放電は発生せず、塗布液9からロール表面に向かってウェブ7を貫通する短絡電流の発生もなかった。
【0075】
(比較例1)
実施例1と同じ構成と条件において、内部電極3への電圧を0(ゼロ)にしてコーティングした場合、塗布液9のカーテンだけでは、随伴空気層を排除できず、塗布液はウェブ7の表面12に濡れないため、均一な塗布は不可能であった。また、ウェブ7はバッキングロールから浮上したため、バッキングロール1によるウェブ7の牽引力が低下して、ウェブ7の張力と速度は変動し、走行が不安定となったため、コーティングが持続できなかった。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同じコーティング装置において、ウェブ7を直径200mmのバッキングロール1に搬送して、内部電極3への印加電圧を+3.5kVとし、また
図2の様にφ0.5mmのタングステン線電極14をウェブからの距離10mmで追加設置して、-3kVの電圧を印加し、電極14からウェブ7の第1の表面に負の電荷(-)を付着させ、本発明の変形例の方法による静電補助カーテンコーティングを行った。
【0077】
ウェブ7は、厚さ100μmのポリエチレンコート紙であり、厚さ0.6μmのゼラチン下塗り層を形成してある。ウェブ7は、事前に温度90~100℃の加熱炉中で、裏面と表面をアース接続したロールに交互に接触させて表面電位が±50V以下になるまで電荷を除去した後、25℃に冷却してある。
【0078】
カーテン高さ10cm、塗布角度はロール頂点から前方へ30°、ウェブ7の張力150N/m、ウェブの搬送速度400m/minにおいて、湿潤厚さ35μmとなるようにゼラチン組成物の塗布を行った。塗布液9は0.1%ドデシル・ベンゼン・スルホン酸ナトリウムを添加した12%ゼラチン水溶液のものを用い、増粘剤によって低剪断粘度を21mPa・sに調整し、塗布液の流速はコーティング幅1cm当り2.3cc/秒に設定した。ウェブ7の第2の面13はバッキングロール1の表面に密着しており、走行は安定していた。ウェブ7の第1の面12が随伴する空気層の塗布液への巻き込みによる塗布障害を起こすことなくコーティングを安定して持続でき、湿潤コーティング層11の厚みの均質性、表面の平滑性とも良好であった。バックロールから周囲への火花放電、グロー放電は発生せず、塗布液9からロール表面に向かってウェブ7を貫通する短絡電流の発生はなかった。
【0079】
(比較例2)
実施例2と同じ構成条件において、内部電極3への電圧を0(ゼロ)にしてコーティングした場合、塗布液9はウェブの第1の面12の全面に密着した湿潤コーティング層11を形成することはできた。しかし、ウェブの裏面13とバッキングロールの間には随伴空気層が侵入してウェブ7が浮上したため、ウェブ7の張力と速度が不安定になり揺動し、走行が不安定となり、表面が平滑な湿潤コーティング層11を持続して形成することは不可能であった。
【符号の説明】
【0080】
1 バッキングロール
2 絶縁層
3 内部電極(+)
4 最外層
5 直流高圧電源(内部電極用)
6 スリップリング
7 帯状支持体(ウェブ)
8 アプリケーター(塗布ヘッド)
9 塗布液のカーテン
10 塗布液接触線部(コーティングポイント)
11 湿潤コーティング層
12 ウェブ第1の面(表面)
13 ウェブ第2の面(裏面)
14 空間補助電極(-)
15 直流高圧電源(空間補助電極用)
16 ロール芯金
17 自由電荷(+)
18 ウェブ内部の双極子
19 表面電荷(-)
【要約】
【課題】高速で安定なコーティングを可能とし、コーティング厚みの均一性に優れた幅広のウェブに対するコーティング方法を提供する。
【解決手段】可撓性プラスチック系ウェブに塗布液をコーティングする方法は、ウェブをコーティング用のバッキングロールへ搬送し、直流電圧を印加した回転するバッキングロールの表面の一部にバッキングロールの静電界でウェブの第2の表面を密着させて支持しながらコーティングポイントを通過させる工程と、ウェブの第1の表面に印加した直流電圧と同極性の電荷が配位して生じる静電力で、コーティングポイントにおいて塗布液を引き寄せてウェブの第1の表面に塗布する工程とを含み、バッキングロールが、最外層と内部電極層と絶縁層とを順に備え、内部電極層に所定の電圧を印加することができるよう構成され、最外層が、体積固有抵抗値が25~100℃において10
7~10
13Ωcmのセラミックス系材料層である。
【選択図】
図1