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特許7358002バチルス属細菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】バチルス属細菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20231002BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20231002BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/742
A61P17/16
A61P37/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019026040
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2019141036
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018026444
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02583
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02584
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02590
(73)【特許権者】
【識別番号】591175332
【氏名又は名称】イチビキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 利彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 篤寿
(72)【発明者】
【氏名】浅井 紀之
(72)【発明者】
【氏名】安達 貴弘
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141035(JP,A)
【文献】恩田匠,安全かつ高品質味噌醸造のための微生物学的解析とバクテリオンシン産生乳酸菌に関する研究,第11回山梨科学アカデミー奨励賞受賞概要,2008年,p. 1-17
【文献】Vet. Res.,2016年,Vol. 47:71,p. 1-15
【文献】J. Immunol.,2009年,Vol. 182, No. 10,p. 6540-6549
【文献】Euro Cosmetics,2015年,p. 10-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-22の産生を誘導し、
受託番号NITE BP-02584のバチルス属細菌、受託番号NITE BP-02583のバチルス属細菌、または受託番号NITE BP-02590のバチルス属細菌であるバチルス属細菌。
【請求項2】
B細胞からのインターロイキン-22の産生を誘導する請求項1に記載のバチルス属細菌。
【請求項3】
B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有する請求項1または2に記載のバチルス属細菌。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のバチルス属細菌を含有するインターロイキン-22産生誘導剤。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のバチルス属細菌を含有する皮膚バリア機能増強剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バチルス属細菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤に関する。更に詳しくは、インターロイキン-22の産生を誘導するバチルス属細菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、サイトカインの一群であるインターロイキンとして、インターロイキン-10やインターロイキン-12などの複数のものが知られており、インターロイキン-22(IL-22)もその一つとして報告されている。
【0003】
このインターロイキン-22は、インターロイキン-10ファミリーに属するサイトカインであり、皮膚や腸管などのバリア機能を高めるなどの機能が報告されており、免疫系の向上などにおいても重要なサイトカインの一つである。
【0004】
ここで、例えばインターロイキン-12の産生量を高めて免疫機能の向上を図るために、バチルス属細菌の一種である納豆菌(枯草菌)を有効成分として含有させた機能性食品が報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5090754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載の機能性食品は、納豆菌(枯草菌)を利用してインターロイキン-12の産生量を高めるというものであり、インターロイキン-22の産生を高める(誘発する)という効果については今までに報告されていない。
【0007】
このようなことから、インターロイキン-22の産生を誘発することができる細菌を見出すことが求められており、特に、摂取し易い細菌であるという要請もある。
【0008】
本発明は、インターロイキン-22の産生を誘導するバチルス属細菌を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示すバチルス属細菌が提供される。
【0010】
[1] インターロイキン-22の産生を誘導し、
受託番号NITE BP-02584のバチルス属細菌、受託番号NITE BP-02583のバチルス属細菌、または受託番号NITE BP-02590のバチルス属細菌であるバチルス属細菌。
【0011】
[2] B細胞からのインターロイキン-22の産生を誘導する前記[1]に記載のバチルス属細菌。
] B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有する前記[1]または[2]に記載のバチルス属細菌。
【0016】
] 前記[1]~[]のいずれかに記載のバチルス属細菌を含有するインターロイキン-22産生誘導剤。
【0017】
] 前記[1]~[]のいずれかに記載のバチルス属細菌を含有する皮膚バリア機能増強剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバチルス属細菌は、インターロイキン-22の産生を誘発するものであり、インターロイキン-22の産生不足に起因する疾患の予防などに用いられるインターロイキン-22産生誘導剤の有効成分となり得るものである。
【0019】
本発明のインターロイキン-22産生誘導剤は、インターロイキン-22の産生を誘発するものであり、インターロイキン-22の産生不足に起因する疾患の予防などに用いられるインターロイキン-22産生誘導剤の有効成分となり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】B細胞におけるインターロイキン-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。
図2】B細胞におけるインターロイキン-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。
図3】全脾臓細胞におけるインターロイキン-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。
図4】全脾臓細胞におけるインターロイキン-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。
図5】B細胞の活性化能について示すグラフである。
図6】B細胞の活性化能について示すグラフである。
図7】IL-22の産生誘導能についてフローサイトメトリーによる測定を行った際の結果を示す図である。
図8】実施例5における経表皮水分損失量(TEWL)の測定結果を示すグラフである。
図9】実施例6における経表皮水分損失量(TEWL)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0022】
[1]バチルス属細菌:
本発明のバチルス属細菌は、インターロイキン-22(IL-22)の産生を誘導するものである。ここで、例えばバチルス属細菌の一種である枯草菌は、日本の食生活に古くから関わりのある微生物であり、例えば、日本の伝統的発酵食品である納豆の製造(発酵)には、枯草菌の一種である納豆菌が関わっている。また、味噌や醤油の諸味にも枯草菌が含まれていることが多く、従来、これら発酵食品を食することで枯草菌も摂取されてきた。このように例えば枯草菌は、摂取する際の安全性が高く(即ち、食品適性が高く)、また、培養が簡単であるため製造し易いという利点もある。なお、バチルス(Bacillus)属は、好気性の有胞子性菌であり、代表種は枯草菌(Bacillus subtilis)である。納豆菌は枯草菌の一種として分類される。
【0023】
「インターロイキン-22」は、角化細胞を増殖し、皮膚のターンオーバーを促進させることができることから、美肌素材、抗菌素材などの用途に好適に用いることが期待できる。更に、インターロイキン-22は、組織修復、細胞生存・増殖、粘膜バリア防御に関わるものであり、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や、脂肪肝疾患、ディフィシル菌(Clostridium difficile)などによる感染症の予防・治療などの用途が期待できる。
【0024】
更に、本発明のバチルス属細菌は、B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有するものであることが好ましい。
【0025】
ここで、B細胞は、液性免疫に中心的な役割を果たし、病原体など異物(抗原)に対して抗体を産生できる唯一の細胞であるが、枯草菌などのバチルス属細菌による作用に関しては知られていない。また、B細胞は、T細胞に抗原を提示する細胞で、活性化T細胞の維持に必要不可欠な細胞であることが知られている。そのため、B細胞の働きを強めることは、T細胞の働きをも補強することとなり、免疫賦活効果を免疫系の細胞全体で強めることにもなる。本発明において「B細胞の活性化能」とは、抗体産生の能力と抗原提示の能力の両方が活性化することをいう。
【0026】
そして、抗体を産生して異物を攻撃できるB細胞の働きを人為的に強化するなど直接コントロールできることができれば、抗体による働きが影響するアレルギー疾患や感染症、自己免疫疾患などの免疫系疾患の予防や緩和、治療につながっていくことが期待できる。
【0027】
本明細書において「B細胞の生存能を向上させる能力を有する」とは、B細胞が持つ「生存する能力」を高める性質を有することを意味する。より具体的には、実験用マウス脾臓細胞を用い、バチルス属細菌を添加していない試料中における、総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合を基準(基準値100)としたとき、バチルス属細菌を添加した試料中における、総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合の値(測定値)が、100超となることをいう。「総細胞の数」はフローサイトメトリーにより定量して求められ、「生存するB細胞(生細胞)の数」は、抗B220抗体に反応する細胞をB細胞とし、Propidium Iodide(PI)核染色液で染色されず、抗B220抗体に反応する細胞を定量することにより求められる。
【0028】
なお、「B細胞の生存能を有する」とは、上記の通りであるが、具体的には、実施例2に示す方法によって得られる値(測定値)が、100超となることをいう。
【0029】
本明細書において「B細胞の活性化能を有する」とは、B細胞を活性化させる能力(性質)を有することを意味する。より具体的には、実験用マウス脾臓細胞を用い、バチルス属細菌を添加していない試料中における、活性化しているB細胞の数と活性化していないB細胞の数との比を基準(基準値100)としたとき、バチルス属細菌を添加した試料中における、活性化しているB細胞の数と活性化していないB細胞の数との比の値(測定値)が、100超となることをいう。なお、「活性化しているB細胞の数」は、抗B220抗体と抗CD86抗体の両方に反応した細胞の数をフローサイトメトリーにより測定して求められる。「活性化していないB細胞の数」は、抗CD86抗体とは反応せずに、抗B220抗体と反応した細胞の数をフローサイトメトリーにより測定して求められる。
【0030】
なお、「B細胞の活性化能を有する」とは、上記の通りであるが、具体的には、実施例1に示す方法によって得られる測定値が、100超となることをいう。
【0031】
本発明のバチルス属細菌は、食品を由来とするものであることがよく、具体的には、味噌由来のもの、納豆由来のものであることがよい。このように古くから食経験のある食品(特に発酵食品)由来の微生物であることにより、摂取する際における安全性が更に優れることになる。
【0032】
ここで、味噌由来のバチルス属細菌とは、味噌の醸造工程で単離される枯草菌などのバチルス属細菌ということもできる。「味噌の醸造工程で単離される」バチルス属細菌とは、味噌醸造工程における「蔵」、「室(ムロ)」、「桶」などに定着しているバチルス属細菌のことをいう。更には、味噌の仕込みから熟成工程において生育(生存)可能なバチルス属細菌をいう。なお、本発明において、味噌由来のバチルス属細菌は、味噌の醸造工程で直接単離したものに限らず、味噌から単離し、その後に培養(継代培養)されたものも含む。また、納豆由来のバチルス属細菌(枯草菌)とは、納豆の製造工程で単離されるバチルス属細菌ということができ、市販(製品)の納豆から単離される枯草菌(バチルス属細菌)のことも含む。
【0033】
本発明のバチルス属細菌は、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)及びバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)からなる群より選択される少なくとも1つに属するものであることがよい。バチルス・サブチルス(枯草菌)やバチルス・コアギュランス(コアギュランス菌、有胞子性乳酸菌の一種でもある)は、日本の食生活に古くから関わりのある微生物であり、摂取する際の安全性が高い(即ち、食品適性が高い)ためである。また、これらは培養が簡単であるため製造し易いという利点がある。
【0034】
[1-1]好ましいバチルス属細菌:
本発明のバチルス属細菌は、受託番号NITE BP-02583のバチルス属細菌(菌株)(菌株名「sc-09」)(以下、この菌株を「コアギュランス菌sc-09」と記す場合がある)、受託番号NITE BP-02584のバチルス属細菌(菌株)(菌株名「bs-30」)(以下、この菌株を「枯草菌bs-30」と記す場合がある)、または、受託番号NITE BP-02590のバチルス属細菌(菌株)(菌株名「bs-34」)(以下、この菌株を「枯草菌bs-34」と記す場合がある)であることが好ましい。
【0035】
これらのバチルス属細菌は、味噌を由来とするため、摂取する際の安全性が高く、B細胞に直接作用してB細胞における生存能及び活性化能を発揮し、免疫系を賦活化することができる(即ち、良好な免疫賦活作用を有する)。更に、これらのバチルス属細菌は、IL-22の産生誘導能が非常に優れている。なお、上記のバチルス属細菌は、T細胞にも作用することができ、更に、樹状細胞などにも作用することが考えられる。
【0036】
ここで、受託番号NITE BP-02583のバチルス属細菌、受託番号NITE BP-02584のバチルス属細菌、及び受託番号NITE BP-02590のバチルス属細菌は、いずれも独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されている。
【0037】
本発明のバチルス属細菌は、上記のように、受託番号NITE BP-02583のバチルス属細菌、受託番号NITE BP-02584のバチルス属細菌、または、受託番号NITE BP-02590のバチルス属細菌が好ましく、IL-22の産生誘導能がより優れているのは、受託番号NITE BP-02583のバチルス属細菌である。
【0038】
そして、「好ましいバチルス属細菌」のうち、受託番号NITE BP-02583のバチルス属細菌(菌株名「sc-09」)は、味噌由来のバチルス・コアギュランス(コアギュランス菌)であって、IL-22産生誘導能が非常に高く優れている。つまり、IL-22の産生を高めたいときに採用することが最も好適である。また、このコアギュランス菌sc-09は、嫌気条件下でも培養が可能であり、高温域(45~60℃)でも増殖可能であるため、一般的な細菌が成育し難い高温域(45~60℃)で培養することで、選択的に培養することができ、更に、簡易な培養施設での製造が可能である。また、胞子形成能があるため、胞子化させることで保管などの種菌(スターター)の取扱いも容易である。
【0039】
「好ましいバチルス属細菌」のうち、受託番号NITE BP-02584のバチルス属細菌(菌株名「bs-30」)、及び受託番号NITE BP-02590のバチルス属細菌(菌株名「bs-34」)は、いずれも味噌由来のバチルス・サブチルス(枯草菌)であって、通気性の良い、室温25℃~45℃程度の環境下で旺盛に増殖できる。また、7w/v%程度の塩分濃度でも生育が可能で、塩分を含む培地で培養することで、一般的な細菌の生育を抑えることができるため、製造が容易である。つまり、簡易な培養設備での製造が可能であるということができる。また、胞子形成能があるため、胞子化させることで保管などの種菌(スターター)の取扱いも容易である。
【0040】
このようなことから、本発明のバチルス属細菌は、高温(45℃以上、更には50℃以上)で生育可能な細菌であることも好ましい。高温での培養ができることにより、上述の通り他の雑菌が混入しにくく(他の雑菌による汚染が生じ難く)なるので、培養が容易になる。
【0041】
[2]バチルス属細菌の調製方法:
本発明のバチルス属細菌は、培養後、殺菌などの処理を行って調製することができる。具体的には、培養終了後、遠心分離などの手段により培地成分を取り除き、洗浄・精製する。そして、加熱殺菌を行い、その後、凍結乾燥・減圧乾燥・熱風乾燥などの手段により乾燥・濃縮する。このようにして、本発明のバチルス属細菌を調製することができる。
【0042】
なお、加熱殺菌は、特に制限はないが、具体的にはオートクレーブ殺菌(121℃、20分)または同程度の殺菌が好ましい。
【0043】
[3]インターロイキン-22(IL-22)産生誘導剤:
本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明のバチルス属細菌を含有するものである。このIL-22産生誘導剤は、IL-22の産生を誘導することができる。なお、バチルス属細菌の中には、枯草菌などのように従来から発酵食品とともに食されているものもあり、安全性が高いものもあるため、枯草菌などを用いる場合、本発明のIL-22産生誘導剤は、安全性を高くすることができる。
【0044】
本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明のバチルス属細菌を有効成分として含有する限りその含有割合は特に制限はない。なお、本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明のバチルス属細菌以外にその他の成分として、難消化性デキストリン、オリゴ糖、デキストリン、二酸化ケイ素などを含有することができる。
【0045】
なお、本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明のバチルス属細菌を培養した際に得られる培養物、菌体(栄養細胞及び胞子のどちらであってもよい)、または、菌体成分を含有するものであってもよい。
【0046】
なお、本発明のIL-22産生誘導剤は、そのもの自体を、飲食品、サプリメント、医薬品などとしてもよいし、飲食品、サプリメント、医薬品などに添加して用いることもできる。飲食品としては、特に制限はなく、例えば、味噌、即席味噌汁、調理味噌(味噌加工品)、金山寺味噌などのなめ味噌、醤油、つゆ、調味ソース、調味たれ、ご飯の素、惣菜、あま酒(糀飲料)等が挙げられる。
【0047】
[4]皮膚バリア機能増強剤:
本発明の皮膚バリア機能増強剤は、本発明のバチルス属細菌を含有するものである。この皮膚バリア機能増強剤は、IL-22の産生を誘導し、経表皮からの水分蒸発を抑えることができる。即ち、皮膚上皮のタイトジャンクション(Tight junction:密着接合)が強固になり、皮膚のバリア機能を増強(即ち向上)させることができる。このように皮膚のバリア機能を向上させると、肌の潤いを保つことができ、乾燥肌や敏感肌を引き起こし難くすることができる。また、病原体の侵入などの外的刺激(病原体の侵入の他には、例えば、紫外線を受けることによる刺激、アレルゲン、化学物質、埃などと接触することによる刺激、乾燥環境下に晒されることによる刺激など)から肌を守ることができる。
【0048】
ここで、皮膚の表皮層は、紫外線、アレルゲン、化学物質、病原体などの上記などの外的な刺激から生体を防御するバリア機能を担っているが、皮膚上皮のタイトジャンクションが緩み、皮層のバリア機能が十分に機能しなくなると、外的な刺激から肌を守ることができなくなる。その結果、肌荒れ、しみ、シワ、ハリの低下、肌のたるみなどの問題の原因となる。このようなことから、皮膚のバリア機能を正常に保ち、このバリア機能が低下している場合には、その機能を向上させることが重要になる。本発明の皮膚バリア機能増強剤は、本発明のバチルス属細菌を含有することによって、このバチルス属細菌がIL-22の産生を誘導し、その結果、皮膚のバリア機能が発揮される(経表皮水分損失を防ぐ効果が発揮される)。
【0049】
なお、経表皮からの水分蒸発量が大きいと(即ち、経表皮水分損失量(TransEpidermal Water Loss(TEWL)が大きいと)、皮膚(特に表皮層)が乾燥状態となる他、皮膚による十分な保護機能が発揮されずに、紫外線、アレルゲン、化学物質、病原体などの外的な刺激が皮膚の内部に悪影響(シミの発生や痒みなど)を与えることになる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
<IL-22の測定試験>
味噌及び納豆からそれぞれバチルス属細菌を収集し、得られた各バチルス属細菌を培養、殺菌処理し、実験用マウス(C57BL/6)の脾臓細胞に添加して培養し、培養後における、IL-22の産生量を測定した。なお、試験に用いた菌株は、表1,表2に記載している。以下、IL-22の測定試験について具体的に説明する。
【0052】
(1)バチルス属細菌の分離及び同定:
味噌及び味噌の醸造工程よりバチルス属細菌の収集を行い、また、市販の納豆からもバチルス属細菌を分離した。分離培地は、標準寒天培地(日水製薬社製)を用い、30℃及び45℃で、1~2日間静置培養し、得られたコロニーから純粋分離して菌を収集した。また、コアギュランス菌(Bacillus coagulans)を選択的に得るために、炭酸カルシウムを添加したラクトバシラスMRS寒天培地(和光純薬社製)を用い、50℃で1~3日間嫌気培養して、周囲の炭酸カルシウムが溶解しているコロニーを収集した。
【0053】
分離したバチルス属細菌は、グラム染色を行い、顕微鏡で観察をして、グラム染色陽性の桿菌であることと、胞子形成をするかの確認を行った。
【0054】
また、分離した菌体からDNAを抽出し、16S rDNAをプライマー10F(5’-GTTTGATCCTGGCTCA-3’)及びプライマー1500R(5’-TACCTTGTTACGACTT-3’)を用いて、PCRで増幅した後、得られたPCR産物の配列分析によって菌種の同定を行った。なお、解析方法の詳細は、第十七改正日本薬局方 参照情報「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」に準じた。
【0055】
収集したバチルス属細菌は72株であり、そのうち、枯草菌(納豆菌を含む)が40株、コアギュランス菌が20株含まれていた。
【0056】
(2)菌体懸濁液(バチルス属細菌懸濁液)の調製:
分離・同定したバチルス属細菌は、ニュートリエントブロス培地(和光純薬社製)を用いて、30℃で1~3日間振とう培養した。但し、コアギュランス菌には、ラクトバチリMRSブロス(和光純薬社製)を用い、50℃で1~3日静置培養した。
【0057】
培養後、121℃で20分間オートクレーブ滅菌処理をして菌株毎の培養液を得た。
【0058】
次に、得られた各培養液を、5000rpmで10分間遠心分離を行った。その後、それぞれ集菌して、蒸留水で3回洗浄した後、蒸留水で懸濁し、凍結乾燥して菌体を得た。その後、得られた菌体のそれぞれについて、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で1mg/mLになるように懸濁して、各菌株の菌体懸濁液を調製した。
【0059】
(3)細胞浮遊液の調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を50mLコニカルチューブ(FALCON社製)に集め、5mLの赤血球溶解バッファー(0.155M NHCl,0.01M Tris-HCl,pH7.5)を加えて細胞を懸濁させた。その後、これにpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)5mLを加えて1200rpmで5分間遠心分離した。その後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄して、細胞浮遊液を調製した。
【0060】
(4)細胞培養:
2×10cells/mLになるように細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後の細胞浮遊液を、24wellマイクロプレート(FALCON社製)に1mLずつ播種して、2×10cells/1mL/wellとした。なお、基本培地は、所定のL-グルタミン酸(0.3g/L)加RPMI 1640(ナカライテスク社製)に、55℃で30分間加熱して非働化した牛胎児血清(SAFC Biosciences社製)を培地中で9(w/v)%になるように添加したものを用いた。上記「所定のL-グルタミン酸(0.3g/L)加RPMI 1640」は、ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液(培地中に100U/mL-100μg/mL、ナカライテスク社製)及び2-メルカプトエタノール(培地中に50μM、ナカライテスク社製)を加えたL-グルタミン酸(0.3g/L)加RPMI 1640である。
【0061】
その後、これに各菌体懸濁液(1mg/mL)を10μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で2日間培養した。なお、コントロールも用意した。このコントロールは、調整後の細胞浮遊液に菌体懸濁液を添加せずに、菌体を添加した場合と同一条件(37℃、5%COの条件)で2日間培養したものとした。
【0062】
(5)IL-22の測定:
2日間(48時間)の培養中の42時間の培養後から、培養液にBD GolgiStopTM(BD社製)を0.67μLずつ加えて混合した。その後、更に、37℃、5%COの条件下で6時間培養した。
【0063】
その後、24wellマイクロプレート(FALCON社製)で培養した細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をBD Cytofix/CytopermTM Fixation/Permeabilization Kit(BD社製)を用いて固定と透過を行った。この操作はFixation/Permeabilization Kitの添付の説明書に従った。
【0064】
B細胞の染色には、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用し、更に、IL-22の染色には、PE標識抗IL-22抗体(affymetrix eBioscience社製)を用いた。また、B細胞の活性化状態を測定するために、APC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)を用いた。
【0065】
染色反応は、冷蔵(5℃)で60分間静置して行った。その後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、0.5mLのPBSに懸濁して測定用試料を得た。
【0066】
なお、測定は、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いた。
【0067】
そして、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo(FlowJo,LLC社製)を用いた。
【0068】
<結果>(1)脾臓B細胞におけるIL-22産生細胞量の測定:
B220陽性細胞をB細胞として、脾臓B細胞中のIL-22陽性細胞の割合(IL-22,B220/B220)を各測定用試料で求めた。
【0069】
コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)におけるB細胞中のIL-22陽性細胞の割合を基準(100)とし、各測定用試料の相対値を算出して、B細胞のIL-22産生細胞量の値とした(表1,表2中、「IL-22産生誘導能(脾臓B細胞)」と記す)。
【0070】
なお、各測定用試料を1回測定した上で、測定値が高かった測定用試料については、更に測定を2~6回繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表1、表2に示す。
【0071】
(2)全脾臓細胞におけるIL-22産生細胞量の測定:
全脾臓細胞中のIL-22陽性細胞の割合(「IL-22陽性細胞/全脾臓細胞」)を各測定用試料で求めた。
【0072】
コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における脾臓細胞中のIL-22陽性細胞の割合を基準(100)とし、各測定用試料の相対値を算出して、全脾臓細胞のIL-22産生細胞量の値とした(表1,表2中、「IL-22産生誘導能(全脾臓細胞)」と記す)。
【0073】
上記「(1)B細胞におけるIL-22産生細胞量の測定」と同様に、各測定用試料を1回測定した上で、測定値が高かった測定用試料については、更に上記(1)の場合と同様に測定を繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表1、表2に示す。
【0074】
(3)B細胞の活性化能の測定:
B細胞中のCD86陽性細胞の割合(CD86,B220/CD86,B220)を求めた。そして、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)におけるB細胞中のCD86陽性細胞の割合を基準(100)とし、B細胞の活性化能の値を算出した(表1,表2中、「B細胞の活性化能」と示す)。
【0075】
なお、上記「(1)B細胞におけるIL-22産生細胞量の測定」及び「(2)全脾臓細胞におけるIL-22産生細胞量の測定」を繰り返して行った測定用試料については、B細胞の活性化能の測定も同様に繰り返し、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表1、表2に示す。
【0076】
(4)生育温度の確認:
また、分離した各菌株の生育温度の確認を行った。具体的には、ニュートリエントブロス培地(和光純薬社製)を試験管(直径18mm×180mm)に10mLずつ入れ、培養栓(シリコセン、信越ポリマー社製)をして、オートクレーブ(121℃、20分間)で滅菌処理した培地を用意した。コロニーを一白金耳ずつ3本の培地に摂取し、それぞれ30℃、45℃、55℃で静置培養した。コントロールとして、菌を摂取しないものを用意した。培養2日後に目視確認(培地の濁り及び、沈殿の有無の確認)を行い、十分に増殖したかの判定を行った。判定基準は、増殖した場合を「○」とし、増殖しなかった場合を「×」とした。
【0077】
生育温度の確認の結果を表1,表2に示す(表1,表2中、「培養温度」の欄に示す)。いずれの菌株も、30℃の培養で増殖した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
(5)IL-22の産生誘導菌のスクリーニング結果:
各菌種のスクリーニング結果は、以下のようになった(表1,表2、図1図6参照)。
【0081】
全ての菌株(72菌株)でIL-22の産生が上昇(1.1倍以上)した。これらの中でも、味噌由来のバチルス属細菌(例えば、表1中、菌株名「bs-30」、「bs-34」、「sc-09」で示す)は、B細胞のうちのIL-22産生細胞の量がコントロールに比べて7~10倍であり、また、脾臓細胞全体における結果でも、コントロールに比べてIL-22産生細胞の量が約6倍となった。IL-22の産生細胞の量が特に高くなる菌株について表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
<まとめ>
IL-22は、バチルス属細菌の菌体(殺菌菌体)による刺激で誘導され、その誘導の程度は菌株により差があることが分かった。バチルス属細菌は、IL-22産生誘導能を有すると考えられた。
【0084】
CD4T細胞やNK細胞などがIL-22を産生することは知られているが、IL-22がB細胞中で産生されることは、これまでに報告がない。なお、上記結果からすると、本発明のバチルス属細菌を用いた場合、これらの菌体の刺激により、脾臓細胞中で特にB細胞からのIL-22産生が増加していた。
【0085】
なお、図7は、実施例1におけるフローサイトメトリーにおける測定の一例であり、縦軸がB220の発現を示し、横軸がインターロイキン-22の発現を示し、左側から順にコントロール(control)、「bs-34」の菌株(枯草菌bs-34)を添加した場合(「+ bs-34」と記す)、「sc-09」の菌株(コアギュランス菌sc-09)を添加した場合(「+ sc-09」と記す)について示している。
【0086】
また、IL-22の産生誘導能が高いバチルス属細菌(菌株)は、B細胞の活性化能も高い傾向にあった。一方で、B細胞の活性化能が高い菌が必ずしもIL-22について高い産生誘導能を有するとは限られなかった。
【0087】
このことから、菌体の刺激によってB細胞を活性化させることができるバチルス属細菌の一部は、IL-22の産生誘導能も有することが分かった。なお、B細胞が活性化された状態であると、免疫を賦活化する効果も期待できることになる。
【0088】
なお、本実施例では、B220陽性細胞に着目してB細胞について解析したが、IL-22の産生誘導能が高いバチルス属細菌について、B220陽性細胞に代えてCD19陽性細胞(violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用)で解析した場合にも同様の結果が得られた。このことからも、所定の菌株によってB細胞からのIL-22産生誘導能が向上し、更に、B細胞の活性化能が向上されることが確認できた。
【0089】
(実施例2)
<細胞の生存能及び細胞の活性化能の測定試験>
実施例1でIL-22の産生誘導能の高かった枯草菌bs-30、枯草菌bs-34、及びコアギュランス菌sc-09について、殺菌処理後の菌体を、実験用マウス(C57BL/6)の「脾臓細胞と共培養」して、脾臓細胞全体の生存能、脾臓B細胞と脾臓T細胞の生存能、及び脾臓B細胞と脾臓T細胞の活性化能を調査した。以下、試験内容について具体的に説明する。
【0090】
(1)菌体懸濁液の調製:
実施例1で調製したバチルス属細菌懸濁液と同様のものを使用した。
【0091】
(2)細胞浮遊液の調製:
実施例1と同様に調製した。
【0092】
(3)細胞培養:
2×10cells/mLになるように細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後の細胞浮遊液を、48wellマイクロプレート(FALCON社製)に0.5mLずつ播種して、1×10cells/0.5mL/wellとした。
【0093】
その後、これに各菌体懸濁液(1mg/mL)を5μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で2日間培養した。なお、コントロールは、調整後の細胞浮遊液に菌体懸濁液を添加せずに、菌体を添加した場合と同一条件(37℃、5%COの条件)で2日間培養したものとした。
【0094】
(4)細胞の生存能及び細胞の活性化能の測定:
48wellマイクロプレートで培養していた細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.2mLに懸濁し、以下の4つの抗体を1μLずつ加え、冷蔵(5℃)で60分間静置した。
【0095】
添加した4つの抗体は、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)、APC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)、Brilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)、及びPE標識抗CD69抗体(BioLegend社製)であった。
【0096】
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLに懸濁した。その後、Propidium Iodide(PI)核染色液(コスモバイオ社製)を0.5μL加えて測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いて測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。
【0097】
(細胞生存能)
測定用試料のうち、PI検出された細胞(PI核染色液で染色された細胞)を死細胞とみなし、カウントされた細胞数(総細胞数)からの差を生細胞の数とした。そして、総細胞中の生細胞の割合(生細胞の数/総細胞の数×100)を算出した。同様に、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出して細胞の生存能(細胞生存能)の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表4に示す。本実施例において「平均値(X)」は、6回の試験(n=6)による平均値である。
【0098】
(B細胞の生存能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)にてB細胞を検出した。生細胞のうちのB細胞の数(PI検出されなかった細胞のうちのB220陽性細胞)と、総細胞の数との商(総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合)を算出した。同様に、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の生存能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表4に示す。
【0099】
(T細胞の生存能)
T細胞の細胞表面マーカーであるBrilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)にてT細胞を検出した。生細胞のうちのT細胞の数(PI検出されなかった細胞のうちのCD4陽性細胞)と、総細胞の数との商(総細胞の数に対する生存するT細胞の数の割合)を算出した。同様に、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞の数に対する生存するT細胞の数の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してT細胞の生存能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表4に示す。
【0100】
(B細胞の活性化能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体と、B細胞の活性化マーカーであるAPC標識抗CD86抗体によって、B220及びCD86を発現するB細胞を検出し、カウントした。そして、B細胞(B220陽性細胞)のうち、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商(活性化しているB細胞/活性化していないB細胞の比の値)を算出した。同様に、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の活性化能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表4に示す。
【0101】
(T細胞の活性化能)
T細胞の細胞表面マーカーであるBrilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)と、T細胞の活性化マーカーであるPE標識抗CD69抗体(BioLegend社製)によって、CD4及びCD69を発現する細胞を検出し、その数を数えた。そして、T細胞(CD4陽性細胞)のうち、活性化しているT細胞(CD69,CD4)と活性化していないT細胞(CD69,CD4)の商(活性化しているT細胞/活性化していないT細胞の比の値)を算出した。同様に、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているT細胞(CD69,CD4)と活性化していないT細胞(CD69,CD4)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してT細胞の活性化能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
<結果>
本実施例の結果によって、実施例1で選択したIL-22の産生誘導能が高いバチルス属細菌の菌株は、B細胞の活性化能が高いだけでなく、B細胞の生存能を向上させる能力も高いことが分かった。更に、T細胞の生存能を向上させる能力及びT細胞の活性化能も高いことが分かった。
【0104】
なお、本実施例では、B220陽性細胞に着目してB細胞について解析したが、B220陽性細胞に代えてCD19陽性細胞(violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用)で解析した場合にも同様の結果が得られた。このことからも、上記所定の菌株によってB細胞の生存能を向上させることができ、更にB細胞を活性化させることができることが確認できた。
【0105】
(実施例3)
<B細胞の生存能及びB細胞の活性化能の測定試験>
実施例1でIL-22の産生誘導能が高かった枯草菌bs-30、枯草菌bs-34、及びコアギュランス菌sc-09について、殺菌処理後の菌体を、実験用マウス(C57BL/6)の「脾臓由来のB細胞(B220陽性細胞)と共培養」して、脾臓B細胞の生存能を向上させる能力及び脾臓B細胞の活性化能(B細胞を活性化させる能力)を調査した。以下、測定試験について具体的に説明する。
【0106】
(1)菌体懸濁液の調製:
実施例1で調製したバチルス属細菌懸濁液と同様のものを使用した。
【0107】
(2)B細胞浮遊液の調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を50mLコニカルチューブ(FALCON社製)に集め、5mLの赤血球溶解バッファー(0.155M NHCl,0.01M Tris-HCl,pH7.5)を加えて細胞を懸濁させた。その後、これにpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)5mLを加えて1200rpmで5分間遠心分離した。その後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄して、細胞浮遊液を調製した。
【0108】
基本培地で懸濁後、ビオチン-抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を加えて、冷蔵(5℃)して30分間静置した。
【0109】
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄した後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で懸濁した。その後、磁気ビーズであるStreptavidin Particles Plus・DM(日本BD社製)を加えて、冷蔵(5℃)して30分間静置した。
【0110】
その後、1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で1回洗浄した後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)に再度懸濁して、ラウンドチューブに移した。
【0111】
その後、BD IMag Cell Separation System(日本BD社製)にて細胞分離を行い、磁石に引き寄せられている細胞を「B細胞(B220陽性細胞)」として回収(ポジティブ細胞分画)した。回収した細胞を基本培地に懸濁して、B細胞浮遊液を調製した。なお、得られたB細胞浮遊液は、血球計算板を用いて細胞数を計測した。
【0112】
(3)細胞培養:
2×10cells/mLになるようにB細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後のB細胞浮遊液を、24wellマイクロプレート(FALCON社製)に1mLずつ播種して、2×10cells/1mL/wellとした。その後、各菌体懸濁液を10μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で2日間培養した。なお、調整後のB細胞浮遊液に菌体(菌体懸濁液)を添加せずに、菌体を添加した水準と同一条件(37℃、5%COの条件)で2日間培養したものをコントロールとした。
【0113】
(4)B細胞の生存能及びB細胞の活性化能の測定:
培養後、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いて、各試料(細胞培養液)についてB細胞の生存能の測定(生存するB細胞の量の測定)及びB細胞の活性化能の測定(活性化されたB細胞の量の測定)を行った。
【0114】
まず、24wellマイクロプレートで培養していた細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.1mLに懸濁し、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)とAPC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)を0.5μLずつ加え、冷蔵(5℃)で60分間静置した。
【0115】
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLに懸濁した。その後、Propidium Iodide(PI)核染色液(コスモバイオ社製)を0.5μL加えて測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリーを用いて測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。
【0116】
(B細胞の生存能)
測定用試料のうち、PI検出された細胞(PI核染色液で染色された細胞)を死細胞とみなし、カウントされた細胞数(総細胞数)からの差をB細胞の生細胞数とした。そして、総細胞中の生細胞の割合(生細胞の数/総細胞の数×100)を算出した。同様に、コントロール(バチルス属細菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の生存能(細胞生存能)の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表5の「B細胞の生存能」に示す。本実施例において「平均値(X)」は、4回の試験(n=4)による平均値である。
【0117】
(B細胞の活性化能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体と、B細胞の活性化マーカーであるAPC標識抗CD86抗体によって、B220及びCD86を発現するB細胞を検出し、その数を数えた。そして、B細胞(B220陽性細胞)のうち、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商(活性化しているB細胞の数と活性化していないB細胞の数との比)を算出した。同様に、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の活性化能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表5の「B細胞の活性化能」に示す。
【0118】
【表5】
【0119】
<結果>
本実施例の結果によって、実施例1により選択した「IL-22の産生誘導能が高い菌株」は、B細胞に直接作用して、B細胞の生存能を向上させることができ、B細胞を活性化させることが更に確認できた。
【0120】
(実施例4)
<B細胞のIL-22産生誘導能の測定試験>
実施例1でIL-22の産生誘導能の高かった枯草菌bs-30、枯草菌bs-34、及びコアギュランス菌sc-09について、殺菌処理後の菌体を、実験用マウス(C57BL/6)の「脾臓由来のB細胞(B220陽性細胞)と共培養」して、IL-22産生誘導能を調査した。以下、測定試験について具体的に説明する。
【0121】
(1)菌体懸濁液の調製:
実施例1で調製したバチルス属細菌懸濁液と同様のものを使用した。
【0122】
(2)B細胞浮遊液の調製:実施例3と同様に調製した。
【0123】
(3)細胞培養:実施例3と同様に培養した。
【0124】
(4)IL-22の測定:
42時間の培養後、培養液にBD GolgiStopTM(BD社製)を0.67μLずつ加えて混合した。その後、更に、37℃、5%COの条件下で6時間培養した。
【0125】
その後、24wellマイクロプレート(FALCON社製)で培養した細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をBD Cytofix/CytopermTM Fixation/Permeabilization Kit(BD社製)を用いて固定及び透過処理を行った。この操作はFixation/Permeabilization Kitの添付の説明書に従った。
【0126】
B細胞の染色には、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用した。また、IL-22の染色には、PE標識抗IL-22抗体(affymetrix eBioscience社製)を用いた。
【0127】
染色反応は、冷蔵(5℃)で60分間静置して行った。その後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、0.5mLのpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)に懸濁して測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリーを用いて測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。
【0128】
B細胞中のIL-22陽性細胞の割合(IL-22,B220/B220)を各測定用試料で求め、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)におけるB細胞中のIL-22陽性細胞の割合を基準(100)とし、各測定用試料の相対値を算出して、B細胞のIL-22産生細胞量の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表5の「IL-22産生誘導能」に示す。本実施例において「平均値(X)」は、4回の試験(n=4)による平均値である。
【0129】
<結果>
本実施例の結果によって、実施例1により選択した「IL-22の産生誘導能が高い菌株」は、B細胞に直接作用して、IL-22を産生するB細胞を増加させていることが分かった。
【0130】
(実施例5)
<給餌試験(正常マウス)>
IL-22の産生誘導能の高かった「コアギュランス菌sc-09」の殺菌処理後の菌体を実験用マウスに摂取させ、その後、皮膚の状態を測定(経表皮水分損失量(TransEpidermal Water Loss(TEWL))した。また、あわせてIL-22を投与した群(表11中、「IL-22投与群」)と、IL-22の中和抗体を投与した群(表11中、「菌体摂取/抗IL-22抗体投与群」)も用意し、IL-22の接種による皮膚の変化も確認した。
【0131】
(1)バチルス属細菌配合飼料の調製:
通常のマウス用飼料に、殺菌処理しその後凍結乾燥したコアギュランス菌sc-09の菌体を1w/w%の割合で配合した飼料(バチルス属細菌配合飼料)を調製した。なお、通常のマウス用飼料としては、マウス飼育繁殖用飼料CE-2(日本クレア社製)を用いた。
【0132】
(2)給餌飼育:
通常の実験用マウス(C57BL/6)(8週齢・雌)12匹を4群に分け(各群3匹ずつ)、そのうちの2群にバチルス属細菌配合飼料を与え、残りの2群にはバチルス属細菌の菌体を含まない通常のマウス用飼料を与えて、21日間飼育をした。
【0133】
バチルス属細菌の菌体を含まない通常のマウス用飼料を与えた2つの群のうちの一方には、給餌開始14日目と17日目に、それぞれ、IL-22の組換え体タンパク質である「リコンビナントIL-22(TONBO社製 リコンビナントマウスIL-22(Recombinant Mouse IL-22))」を尾静脈注射(それぞれ2μg/匹)した。上記2つの群のうち、「リコンビナントIL-22」を尾静脈注射した群を「IL-22投与群」と言うこととし、「リコンビナントIL-22」を尾静脈注射(投与)しない群を「コントロール群」ということとした。
【0134】
また、バチルス属細菌配合飼料を与えた2つの群のうちの一方には、給餌開始から14日目と17日目に、それぞれ、IL-22中和抗体として「抗IL-22抗体(Thermo Fisher社製 IL-22モノクローナル抗体)」を尾静脈注射(それぞれ20μg/匹)した。上記2群のうち、「抗IL-22抗体」を尾静脈注射した群を「菌体摂取/抗IL-22抗体投与群」と言うこととし、「抗IL-22抗体」を尾静脈注射(投与)しない群を「菌体摂取群」ということとした。
【0135】
(3)経表皮水分損失量(TEWL)の測定:
給餌開始から21日目に、各群のマウスの背部における皮膚の経表皮水分損失量(TEWL)を測定した。本測定に際して、前日(20日目)にマウスの背部を剃毛処理した。TEWLの測定は、CORTEX TECHNOLOGY社製の皮膚測定装置「DermaLab(登録商標)」にて行った。各マウスにおいてTEWLの測定は3回ずつ行い、平均値を求め、更に、各群の平均値と標準偏差を求めた。表6,図8には、経表皮水分損失量(TEWL)の結果を示す。コントロール群とその他の各群の数値について、F検定を行い、分散に有意差があるか否かの確認を行った。その後、Student’s t検定(これは、等分散を仮定した2標本による検定である)を行った。
【0136】
【表6】
【0137】
表6、図8の結果から明らかなように、菌体摂取群(「Bacillus coagulans sc-09」を摂取し、「抗IL-22抗体」を投与しない群)は、コントロール群に比べて、TEWLが低く、Student’s t検定の結果、p<0.01(p=0.0004)となり、有意水準1%で有意差が認められた。
【0138】
なお、表6から分かるように、IL-22投与群(バチルス属細菌配合飼料は与えずに、IL-22を投与した群)は、コントロール群に比べて、TEWLが低く、Student’s t検定の結果、p<0.01(p=0.003)となり、有意水準1%で有意差が認められた。また、「菌体摂取/抗IL-22抗体投与群」は、菌体摂取群に比べて、TEWLが高く(即ち、皮膚からの水分の蒸散量が多く)、コントロール群と比べてもTEWLが高く、Student’s t検定の結果、p<0.01(p=0.003)となり、有意水準1%で有意差が認められた。なお、各群のマウスは、目視上では皮膚の性状に変化は確認されなかった。
【0139】
このように本実施例からすると、菌体摂取群ではTEWLが低くなることが分かり、本発明のバチルス属細菌を摂取することで皮膚のバリア機能が高まることが分かった。
【0140】
なお、IL-22を投与することでもTEWLが低下するものの、一方で、IL-22の中和抗体を投与(尾静脈注射)することでTEWLが上昇することから(表6,図8参照)、IL-22が皮膚のバリア機能を高めていることが確認された。そして、菌体摂取による皮膚のバリア機能の向上は、菌体を摂取したことに起因した刺激に基づくものであり、菌体によるIL-22の産生誘導に拠るものである可能性が考えられる。
【0141】
(実施例6)
<給餌試験(無菌マウス)>
IL-22の産生誘導能の高かった「枯草菌bs-34」の殺菌処理後の菌体を無菌マウスに摂取させ、その後、皮膚の状態を測定(経表皮水分損失量(TransEpidermal Water Loss(TEWL))した。
【0142】
(1)菌体配合飼料の調製:
通常のマウス用飼料に、殺菌処理しその後凍結乾燥した枯草菌bs-34の菌体を1w/w%の割合で配合した飼料(バチルス属細菌配合飼料)を調製した。なお、通常のマウス用飼料としては、マウス飼育繁殖用飼料CE-2(日本クレア社製)を用いた。
【0143】
(2)給餌飼育:
無菌マウス(C57BL/6NJcl[Gf])(8週齢・雌)10匹を、バチルス属細菌配合飼料を与える群(菌体摂取群)と、菌体を含まない通常のマウス用飼料を与える群(コントロール群)とに5匹ずつ分け、無菌環境下で1ヶ月飼育をした。
【0144】
(3)経表皮水分損失量(TEWL)の測定:
給餌開始から1ヶ月後に背部の皮膚におけるTEWLを測定した。なお、測定直前に、小動物用バリカンでマウスの背部の毛を刈ってから測定した。TEWLの測定は、CORTEX TECHNOLOGY社製の皮膚測定装置「DermaLab(登録商標)」にて行った。TEWLの測定は、各マウスにつき3回ずつ行い、平均値と標準偏差を求めた。結果を、表7,図9に示す。コントロール群と菌体摂取群の数値について、F検定を行い、分散に有意差があるか否かの確認を行った。その後、Student’s t検定を行った。
【0145】
【表7】
【0146】
菌体摂取群は、コントロール群(バチルス属細菌配合飼料を摂取しない群)に比べて、TEWLが有意に低く、Student’s t検定の結果、p<0.01(p=0.001)となり、有意水準1%で有意差が認められた。このように本実施例からも、菌体摂取群ではTEWLが低くなることが分かり、本発明のバチルス属細菌を摂取することで皮膚のバリア機能が高まることが分かった。
【0147】
以上のように、本発明のバチルス属細菌は、IL-22の産生誘導能が高いことが分かった。更に、本発明のバチルス属細菌は、B細胞に直接作用することによってB細胞の生存能を向上させる能力を有し、B細胞の活性化能(B細胞を活性化させる能力)を有することが分かった。そして、この結果からすると、本発明のバチルス属細菌は、免疫賦活作用を有することが分かる。また、本発明のバチルス属細菌は、皮膚のバリア機能を増強する(高める)ことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明のバチルス属細菌は、飲食品、サプリメント、医薬品などに添加してIL-22を産生させるIL-22産生誘導剤の有効成分(更には、皮膚バリア機能増強剤の有効成分)として採用したり、そのものを飲食品、サプリメント、医薬品などとしたりすることができる。飲食品としては、例えば、味噌、即席味噌汁、調理味噌(味噌加工品)、金山寺味噌などのなめ味噌、醤油、つゆ、調味ソース、調味たれ、ご飯の素、惣菜、あま酒(糀飲料)等が挙げられる。
【受託番号】
【0149】
受託番号NITE BP-02583、受託番号NITE BP-02584、及び受託番号NITE BP-02590
図1
図2
図3
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図7
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図9