(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】車両用充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/26 20060101AFI20231002BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231002BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20231002BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20231002BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20231002BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20231002BHJP
【FI】
H02J3/26
H02J7/00 P
H02J7/04
B60L53/14
B60L53/62
B60L53/63
(21)【出願番号】P 2019091832
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船橋 達治
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】野口 智大
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-046518(JP,A)
【文献】特開2014-099992(JP,A)
【文献】特開2012-060752(JP,A)
【文献】特開2011-072064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/26
H02J 7/00
H02J 7/04
B60L 53/14
B60L 53/62
B60L 53/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三本の線で配電する配電方式の配電線路に設けられる主幹ブレーカと、配電する三本の線のうちの何れか二本の線に接続される複数の分岐ブレーカを備え、少なくとも一つの分岐ブレーカに車両用充電装置が接続される車両用充電システムであって、
配電する三本の線のそれぞれの電流値を測定する電流測定手段と、
主幹ブレーカの定格電流値と、各線の電流値から、許容電流値を算出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、許容電流値の範囲内で、
電流測定手段が測定した各線の電流値を比較し、主幹ブレーカの定格電流値と各線のうちの最大電流値から許容電流値を算出し、電流値が最大となる線に接続される車両用充電装置の出力電流を制御する車両用充電システム。
【請求項2】
三本の線で配電する配電方式の配電線路に設けられる主幹ブレーカと、配電する三本の線のうちの何れか二本の線に接続される複数の分岐ブレーカを備え、少なくとも一つの分岐ブレーカに車両用充電装置が接続される車両用充電システムであって、
配電する三本の線のそれぞれの電流値を測定する電流測定手段と、
主幹ブレーカの定格電流値と、各線の電流値から、許容電流値を算出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、許容電流値の範囲内で、電流測定手段が測定した各線の電流値を比較し、主幹ブレーカの定格電流値と各線のうちの最大電流値から許容電流値を算出し、電流値が最小となる線に接続される車両用充電装置の出力電流を制御する車両用充電システム。
【請求項3】
三本の線で配電する配電方式の配電線路に設けられる主幹ブレーカと、配電する三本の線のうちの何れか二本の線に接続される複数の分岐ブレーカを備え、少なくとも一つの分岐ブレーカに車両用充電装置が接続される車両用充電システムであって、
配電する三本の線のそれぞれの電流値を測定する電流測定手段と、
主幹ブレーカの定格電流値と、各線の電流値から、許容電流値を算出する制御手段と、
を備え、
配電方式が三相三線式の配電線路であり、
複数の車両用充電装置が各々、分岐ブレーカに接続され、
制御手段は、各線における電流値の差が閾値以下となるように複数の車両用充電装置の出力電流を制御す
る車両用充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線路に設けられるブレーカに接続される車両用充電装置を備えた車両用充電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤などにおいては、通常、各分岐ブレーカに接続される負荷機器で消費される電流値を超えるように主幹ブレーカの定格電流が選定される。しかし、分岐ブレーカの接続する相(単相三線式の場合には、L1相-N相、L2相-N相、L1相-L2相、三相三線式の場合には、R相-S相、S相-T相、R相-T相)に偏りが生じた場合、つまり一部の相の電流値が高くなる場合には。主幹ブレーカ内の一部の相で許容電流値を越える可能性が高まり、トリップが生じやすくなるという問題が生じ得る。このように、単相三線式、三相三線式等の配電方式において、各相の電流値のバランスを考慮する必要がある。特許文献1に記載されているように、相バランスの調整を行うために、分電盤内の配線機器の接続する相を切り替えることのできる構造は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、一般的に、分電盤内における作業は、有資格者しか行えないため、容易に配線機器の接続されている相を切り替えることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、他の負荷機器との関係で車両用充電装置から供給可能な電流値を把握したうえで、車両へ送る電流値の制御ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、三本の線で配電する配電方式の配電線路に設けられる主幹ブレーカと、配電する三本の線のうちの何れか二本の線に接続される複数の分岐ブレーカを備え、少なくとも一つの分岐ブレーカに車両用充電装置が接続される車両用充電システムであって、配電する三本の線のそれぞれの電流値を測定する電流測定手段と、主幹ブレーカの定格電流値と、各線の電流値から、許容電流値を算出する制御手段と、を備え、前記制御手段は、許容電流値の範囲内で、車両用充電装置の車両への出力電流値を制御する車両用充電システムとする。
【0007】
また、制御手段は、電流測定手段が測定した各線の電流値を比較し、主幹ブレーカの定格電流値と各線のうちの最大電流値から許容電流値を算出し、電流値が最大となる線に接続される車両用充電装置の出力電流を制御することが好ましい。
【0008】
また、配電方式が三相三線式の配電線路であり、複数の車両用充電装置が各々、分岐ブレーカに接続され、制御手段は、各線における電流値の差が閾値以下となるように複数の車両用充電装置の出力電流を制御する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、他の負荷機器との関係で車両用充電装置から供給可能な電流値を把握したうえで、車両へ送る電流値の制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】単相三線式の配電線路を用いた場合の車両用充電システムの例を示す図である。
【
図2】三相三線式の配電線路を用いた場合の車両用充電システムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の車両用充電システム1は、三本の線で配電する配電方式の配電線路に設けられる主幹ブレーカ81と、配電する三本の線のうちの何れか二本の線に接続される複数の分岐ブレーカ83を備え、少なくとも一つの分岐ブレーカ83に車両用充電装置11が接続される。また、この車両用充電システム1は、配電する三本の線のそれぞれの電流値を測定する電流測定手段70と、主幹ブレーカ81の定格電流値と、各線の電流値から、許容電流値を算出する制御手段60と、を備えている。この制御手段60は、許容電流値の範囲内で、車両用充電装置11の車両91への出力電流値を制御する。このため、他の負荷機器85との関係で車両用充電装置91から供給可能な電流値を把握したうえで、車両91へ送る電流値の制御ができる。なお、本発明における配電線路の配電方式は、単相三線式や三相三線式である。
【0012】
ここで、
図1に示す例を参考にして、配電線路の配電方式を単相三線式とした場合の例について説明する。なお、実施形態の車両用充電システム1では、分電盤に、主幹ブレーカ81や複数の分岐ブレーカ83が配置されているが、
図1に示す例では、分電盤を省略している。
図1に示すことから理解されるように、単相三線式の場合、三本の線はそれぞれL1相、L2相、N相を構成する。L1相-N相、L2相-N相には、電圧100Vに対応した家電製品などの負荷機器85が接続され、L1相-L2相には、電圧200Vに対応した動力機器などの負荷機器85や、車両用充電装置11が接続される。
【0013】
L1相-L2相に接続される負荷機器85は、相バランスにはあまり影響しないが、L1相-N相、L2相-N相に接続される負荷機器85の偏在などの影響で、L1相がL2相よりも電流値が大きいといったような相バランスの崩れが生じる場合がある。本発明では、各相のバランスの崩れが生じているかを確認するために、電流測定手段70で各線(各相)の電流値を計測する。なお、
図1に示す例では、各線(各相)ごとに電流測定器72を取り付けているが、これらの電流測定器72のまとまりが電流測定手段70である。
【0014】
この電流測定手段70での計測結果をもとに、車両用充電装置11の出力電流を制御する。200Vで利用される車両用充電装置11はL1相とL2相に接続されるため、L1相の電流値とL2相の電流値のうち、より大きな電流値(例えばL1相の電流値)を主幹ブレーカ81の定格電流から差分した許容電流値までの範囲で車両用充電装置11の出力電流を制御するようにすれば良い。
【0015】
例えば、主幹ブレーカ81の定格電流が60Aであるのに対して、電流測定手段70で、L1相:45A、L2相:40Aと、計測された場合、許容電流値は60A-45A=15Aとなる。効率よく制御しようとすれば、車両用充電装置11の出力電流を許容電流値に近似する値に制御すればよい。そうすることで、他の負荷機器85に影響を与えず、車両用充電装置11に効率よく充電することができる。また、主幹ブレーカ81がトリップしない電流値(許容電流値)まで車両用充電装置11の出力電流値を上げることができるため、車両91の充電速度を高めることができる。
【0016】
なお、制御手段60は、電流測定手段70が測定した各線の電流値を比較し、「主幹ブレーカ81の定格電流値」と「各線のうちの最大電流値」から許容電流値を算出し、電流値が最大となる線に接続される車両用充電装置11の出力電流を制御するものであることが好ましい。
【0017】
また、既設の分電盤に新しく車両用充電装置91を施工する場合には、分電盤における相バランスの崩れの有無を各相の電流値を測定することによって把握し、新しく施工する車両用充電装置91の出力電流値の最大値は、各相の電流値の測定結果に基づいて設定や制御をすることが好ましい。このような方法を採用すれば、既設の分電盤に新しく車両用充電装置91を施工する場合でも、車両用充電装置91を効率よく機能させることができる。
【0018】
次に、
図2に示す例を参考にして、配電線路の配電方式を三相三線式とした場合の例について説明する。なお、
図2に示す例においても、分電盤を省略している。三相三線式の場合、三本の線はそれぞれR相、S相、T相を構成する。R相-S相、S相-T相、R相-T相には、電圧200Vに対応した動力機器などの負荷機器85や、車両用充電装置11が接続される。
【0019】
三相三線式の場合、R相、S相、T相のいずれか2つを選択し、負荷機器85が接続されるため、負荷機器85を接続する相の偏りなどの影響で、R相、S相、T相の間で電流値の相バランスの崩れが生じることも多い。
【0020】
このため、例えば、既設の分電盤に新しく車両用充電装置11を施工する時には、分電盤における相バランスの崩れの有無を各相の電流値を測定することによって把握し、確認し、新しく施工する車両用充電装置91の出力電流値の最大値を、各相の電流値の測定結果に基づいて設定、制御するようにすることが好ましい。なお、このとき、既設の分電盤に車両用充電装置11が施工されている場合には、新しく施工する車両用充電装置91の出力電流値を制御するのではなく、既設の車両用充電装置91の出力電流値を制御するようにしてもよい。
【0021】
分電盤に複数の車両用充電装置11が接続されている場合には、各相のうち、電流測定手段70で測定された電流値が最大となる相に接続される車両用充電装置11の出力電流値を減少する制御もしくは、電流測定手段70で測定された電流値が最小となる相に接続される車両用充電装置11の出力電流値を増加する制御をすることが好ましい。
【0022】
例えば、R相-S相間に充電中の車両用充電装置11(A)(電流値:15A)、S相-T相間に充電中の車両用充電装置11(B)(電流値:15A)、R相-T相間に充電中の車両用充電装置11(C)(電流値:15A)が接続され、主幹ブレーカ81の定格電流:60A、各相の測定値はR相:45A、S相:50A、T相:55Aであるとした場合、T相の電流値を減少するために、車両用充電装置11(B)に対して出力電流値を減少する制御(電流値:15A⇒10A)をすることで、R相:45A、S相:45A、T相:50Aしてもよい。
【0023】
R相の電流値を増加するために、車両用充電装置11(A)に対して出力電流値を増加させる制御(電流値:15A⇒20A)をすることで、R相:50A、S相:55A、T相:55Aとしてもよい。また、3つの相のバランスを保つために、車両用充電装置11(A)(電流値:15A⇒20A)と車両用充電装置11(B)(電流値:15A⇒10A)を同時に制御することで、R相:50A、S相:50A、T相:50Aとしてもよい。この際、各相の電流値が主幹ブレーカ81の定格電流値を超えないように制御することが好ましい。
【0024】
複数の車両用充電装置11が接続されている場合には、車両用充電装置11間で優先順位を定めるものとしても良い。優先順位を定める条件は、使用者が入力する内容であってもよいし、車両91のバッテリ残量であってもよい。なお、特に限定されるものではないが、各相の電流値と、車両91の優先順位の両方を踏まえて車両用充電装置11の制御方法を判定させることが好ましい。
【0025】
例えば、R相-S相間に充電中の車両用充電装置11(A)(電流値:15A)、S相-T相間に充電中の車両用充電装置11(B)(電流値:15A)、R相-T相間に充電中の車両用充電装置11(C)(電流値:15A)が接続され、主幹ブレーカ81の定格電流:60A、各相の測定値はR相:45A、S相:50A、T相:55Aであるとした場合、車両用充電装置11(A)に接続された車両91を最も早く満充電状態としたいときには、車両用充電装置11(A)の電流値を15A⇒25Aと制御するとともに、車両用充電装置11(B)の電流値を15A⇒10Aと制御することで、R相:55A、S相:55A、T相:50Aとすれば、車両用充電装置11(A)に接続される車両91への出力する電流が大きくなり、より早くバッテリを満充電状態とすることができる。
【0026】
なお、配電方式が三相三線式の配電線路であり、複数の車両用充電装置11が各々、分岐ブレーカ83に接続される場合、制御手段60は、各線における電流値の差が閾値以下となるように複数の車両用充電装置11の出力電流を制御するものとすることも好ましい。
【0027】
複数台の車両用充電装置11を備えた駐車場などの場合には、各相の電流値と、待機中の車両用充電装置11の標準状態で充電した場合の電流値(出力電流値を制御されない場合の電流値)とを比較することで、より多くの電流を車両91に出力することができる車両用充電装置11を判定し、表示するようにすることが好ましい。
【0028】
この点について、R相-S相間に待機中の車両用充電装置11(A)(標準状態で充電した場合の電流値:15A)、S相-T相間に充電中の車両用充電装置11(B)(標準状態で充電した場合の電流値:15A)、R相-T相間に待機中の車両用充電装置11(C)(標準状態で充電した場合の電流値:15A)が接続され、主幹ブレーカ81の定格電流:60A、各相の測定値はR相:40A、S相:40A、T相:50Aである場合を例に挙げて説明する。
【0029】
これらの車両用充電装置11を用いて新しく車両91を充電する場合、車両用充電装置11(C)に接続すると、T相が主幹ブレーカ81の定格電流値を超過してしまう。このため、出力電流値が制御されてしまうが、車両用充電装置11(A)に接続すると、すべての相が主幹ブレーカ81の定格電流値以下となり、出力電流値を制御することなく、車両91へ給電することができる。このように、新たに使用される車両用充電装置11を何れにするかによって、出力電流値に影響が出得るため、各相の電流値の情報を基に、新たに使用されるのに最適な車両用充電装置11を判定、表示することが好ましい。なお、新たに使用されるのには適さない車両用充電装置11を判定、表示することも好ましい。
【0030】
また、各相間に複数の車両用充電装置11が接続される場合、例えばR相-S相間に車両用充電装置11(A)と車両用充電装置11(D)(図示せず)、S相-T相間に車両用充電装置11(B)と車両用充電装置11(E)(図示せず)、R相-T相間に車両用充電装置11(C)と車両用充電装置11(F)(図示せず)が接続される場合には、R相の電流値を減少するために、R相に接続される車両用充電装置11(A)、車両用充電装置11(C)、車両用充電装置11(D)、車両用充電装置11(F)のすべての出力電流値を減少させてもよいし、その一部の車両用充電装置11の出力電流値を減少させてもよい。また、優先順位等を加味し、出力電流値を減少させる車両用充電装置11を選定してもよい。
【0031】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用充電システム
11 車両用充電装置
60 制御手段
70 電流計測手段
81 主幹ブレーカ
83 分岐ブレーカ
85 負荷機器
91 車両