(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20231002BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20231002BHJP
G06F 30/18 20200101ALI20231002BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20231002BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20231002BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/27
G06F30/18
G06F30/12
H02B3/00 A
H02B1/40 Z
(21)【出願番号】P 2019207589
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田島 一郎
(72)【発明者】
【氏名】高村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】門矢 誠
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-215731(JP,A)
【文献】特開2019-101514(JP,A)
【文献】特開2018-137957(JP,A)
【文献】特開平09-081596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
H02B 3/00
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力情報である2次元図面において、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データから機器の種類を特定する機器特定手段と、
機器特定手段により特定された機器の直交座標系上の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
機器特定手段により特定された機器と位置情報から機器の役割を特定する役割特定手段と、
特定された機器の位置情報と機器の組み合わせによる機器の役割を教師データとして学習する役割特定学習手段と
を備えた高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム。
【請求項2】
入力情報である2次元図面において、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データから機器の種類を特定する機器特定手段と、
機器特定手段により特定された機器の直交座標系上の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
機器特定手段により特定された機器と位置情報から機器の役割を特定する役割特定手段と、
を備え、
役割特定手段は、
機器の組み合わせを記録した記憶部と接続され、
特定された機器間の相対的な位置情報と記憶部に記録された機器の組み合わせ情報とを参照することで機器の役割を特定し、
X軸若しくはY軸において略同値となる機器同士を割り出し、役割特定の判断要因の一つとする
高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム。
【請求項3】
入力情報である2次元図面において、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データから機器の種類を特定する機器特定手段と、
機器特定手段により特定された機器の直交座標系上の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
機器特定手段により特定された機器と位置情報から機器の役割を特定する役割特定手段と、
を備え、
機器特定手段は、
機器を示す複数パターンのシンボルと文字の少なくとも一方のデータが機器の種類情報と紐づけられた状態で記録された記憶部と接続され、
画像データをもとに入力されたデータから記憶部を参照することで機器の種類を特定し、
シンボルにより特定された機器の種類と、文字により特定された機器の種類が異なる場合、文字により特定された機器の種類を優先して採用す
る高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム。
【請求項4】
役割特定手段は、
第一のy値においてX軸方向にずれるように配置される複数の第一の機器と、第一のy値とは異なる第二のy値において全ての第一の機器とX軸方向にずれるように位置し、少なくとも一つの第一の機器に対して組み合わせ情報から組みあわせ可能であると判定される複数の第二の機器と、を含むグループに対して、
グループ内の全ての第二の機器が各々に隣接する第一の機器に1対1で組み合わされる組み合わせが見つかるまで、組み合わせの判定を繰り返す請求項
2に記載の高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム。
【請求項5】
役割特定手段は、
第一のx値においてY軸方向にずれるように配置される複数の第一の機器と、第一のx値とは異なる第二のx値において全ての第一の機器とY軸方向にずれるように位置し、少なくとも一つの第一の機器に対して組み合わせ情報から組みあわせ可能であると判定される複数の第二の機器と、を含むグループに対して、
グループ内の全ての第二の機器が各々に隣接する第一の機器に1対1で組み合わされる組み合わせが見つかるまで、組み合わせの判定を繰り返す請求項
2に記載の高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム。
【請求項6】
機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データとそれを表す機器の種類を教師データとして学習する機器特定学習手段を備える請求
項3に記載の高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム。
【請求項7】
特定された機器の種類と位置と役割の情報から結線図を自動作成する結線図作成手段を備えた請求項1から
6の何れかに記載の高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
依頼元が作成した2次元図面から商品を製造する過程で、商品を製造するために依頼先の製造システムに対応した図面データを作成する必要がある。特許文献1に記載されているように、通常この図面データを作成する作業は、人が依頼元の2次元図面を見て機器の名称や配置、役割などを特定し、依頼先のシステムに対応した図面データを作図していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところが、図面の書き直し作業を全て人手により行うと、人件費が多くかかってしまう。また、依頼元の図面から依頼先システムに対応するように変換する作業に時間がかかってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、図面の書き直しの作業の手間を省き、作図の製作時間と、人件費を削減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、入力情報である2次元図面において、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データから機器の種類を特定する機器特定手段と、機器特定手段により特定された機器の直交座標系上の位置情報を取得する位置情報取得手段と、機器特定手段により特定された機器と位置情報から機器の役割を特定する役割特定手段と、を備えた高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる作図システムとする。
【0007】
また、機器特定手段は、機器を示す複数パターンのシンボルと文字の少なくとも一方のデータが機器の種類情報と紐づけられた状態で記録された記憶部と接続され、画像データをもとに入力されたデータから記憶部を参照することで機器の種類を特定する構成とすることが好ましい。
【0008】
また、機器特定手段は、シンボルにより特定された機器の種類と、文字により特定された機器の種類が異なる場合、文字により特定された機器の種類を優先して採用する構成とすることが好ましい。
【0009】
また、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データとそれを表す機器の種類を教師データとして学習する機器特定学習手段を備える構成とすることが好ましい。
【0010】
また、役割特定手段は、機器の組み合わせを記録した記憶部と接続され、特定された機器間の相対的な位置情報と記憶部に記録された機器の組み合わせ情報とを参照することで機器の役割を特定する構成とすることが好ましい。
【0011】
また、X軸若しくはY軸において略同値となる機器同士を割り出し、役割特定の判断要因の一つとする構成とすることが好ましい。
【0012】
また、特定された機器の位置情報と機器の組み合わせによる機器の役割を教師データとして学習する役割特定学習手段を備える構成とすることが好ましい。
【0013】
また、特定された機器の種類と位置と役割の情報から結線図を自動作成する結線図作成手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0014】
また、役割特定手段は、第一のy値においてX軸方向にずれるように配置される複数の第一の機器と、第一のy値とは異なる第二のy値において全ての第一の機器とX軸方向にずれるように位置し、少なくとも一つの第一の機器に対して組み合わせ情報から組みあわせ可能であると判定される複数の第二の機器と、を含むグループに対して、グループ内の全ての第二の機器が各々に隣接する第一の機器に1対1で組み合わされる組み合わせが見つかるまで、組み合わせの判定を繰り返す構成とすることが好ましい。
【0015】
また、役割特定手段は、第一のx値においてY軸方向にずれるように配置される複数の第一の機器と、第一のx値とは異なる第二のx値において全ての第一の機器とY軸方向にずれるように位置し、少なくとも一つの第一の機器に対して組み合わせ情報から組みあわせ可能であると判定される複数の第二の機器と、を含むグループに対して、グループ内の全ての第二の機器が各々に隣接する第一の機器に1対1で組み合わされる組み合わせが見つかるまで、組み合わせの判定を繰り返す構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、図面の書き直しの作業の手間を省き、作図の製作時間と、人件費を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の作図システムの適用例を表す図である。
【
図2】作図システムを用いた利用例を表すフローである。
【
図3】依頼元と実施形態のシステムで作図の仕方が異なる例を示した図である。
【
図4】依頼元のシンボルの想定パターン例と実施形態のシステムで用いるシンボルの例を示す図である。
【
図5】依頼元の図から取り込める文字情報から実施形態のシステムに合わせたシンボルと文字を導き出した例を示す図である。
【
図7】
図2に示すフロー例において、合致するデータが無い場合にエラー判定をするようにしたことを表すフローである。
【
図8】
図7に示すフロー例において、エラー判定をした後にAIによる機器判定をするようにしたことを表すフローである。
【
図9】
図8に示すフロー例において、AIによる機器判定で挙げられた複数の選択肢から人が選択できるようにしたことを表すフローである。
【
図10】依頼元の図に示されたシンボルと文字情報が作図システム内の情報と整合しない例を表す図である。
【
図11】依頼元の図に示されたシンボルと紐づけられた作図システムで用いられるシンボルが意味する情報と依頼元に記載された文字情報を比較し、依頼元の文字情報にあわせてシンボルを書き直す例を示した図である。
【
図12】
図10に示す依頼元から提供された図に対して、
図11に示す流れでシンボルの書き直し、出力した図の例を示す図である。
【
図13】位置情報によりLBSとTRの関係を特定する例を示す図である。
【
図14】位置情報によりLBSの役割を特定する例を示す図である。
【
図15】対となる機器の接続先を判定する例を示す図である。
【
図16】特定した機器を補正する例を示す図である。
【
図17】分電盤若しくは配電盤の例を表す依頼元から提供された図である。
【
図18】
図17に示す図を実施形態の作図システムを用いて書き直した図である。
【
図19】制御盤の例を表す依頼元から提供された図である。
【
図20】
図19に示す図を実施形態の作図システムを用いて書き直した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の作図システム1は、高圧受電設備、分電盤、配電盤若しくは制御盤の作図に用いられる。また、この作図システム1は、入力情報である2次元図面において、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データから機器の種類を特定する機器特定手段13と、機器特定手段13により特定された機器の直交座標系上の位置情報を取得する位置情報取得手段14と、機器特定手段13により特定された機器と位置情報から機器の役割を特定する役割特定手段15と、を備えている。このため、図面の書き直しの作業の手間を省き、作図の製作時間と、人件費を削減することが可能となる。
【0019】
なお、機器特定手段13は、機器を示す複数パターンのシンボルと文字の少なくとも一方のデータが機器の種類情報と紐づけられた状態で記録された記憶部18と接続され、画像データをもとに入力されたデータから記憶部18を参照することで機器の種類を特定するようにするのが好ましい。
【0020】
ここで、実施形態における作図システム1の全体像を説明する。
図1に示すことから理解されるように、この作図システム1は、依頼元が作成した図を読み込む画像データ読込手段11と、読み込まれた図の認識を行う画像認識手段12と、画像認識手段12が認識した情報を用いて機器の種類を特定する機器特定手段13と、複数の機器の位置関係を把握できる位置情報取得手段14と、機器の役割を推測する役割特定手段15と、それらの結果を用いて結線図を作成する結線図作成手段16を備えている。また、作図システム1で得られた結果の間違いなどを正すために用いられる補正手段17を備えている。また、画像認識手段12で認識した情報などと比較される情報が記録された記憶部18であるデータベースを備えている。
【0021】
この作図システム1は、依頼元で作成された手書きなどの紙の図面をスキャンすることで得られた画像データや、PDF化した画像データを画像データ読込手段11で読み込むことができる。このように、CAD図とは異なり、線や図にあらかじめ機器情報や結線情報などが埋め込まれていないものについても、実施形態の作図システム1では、形や配置が意味するところを読み解くことで、依頼元が意図した内容を推測できるようにしている。なお、画像データ読込手段11が読み込めるデータは依頼元が意図した内容を推測できるものであればデータの形式は上記に限られない。例えばCAD図のデータを読み込むことができるものであってもよい。
【0022】
この作図システム1を利用する際の流れの例を簡単に説明する。
図2に示す例では、依頼元から提供された資料を基に、画像データを読み込む(S001)。読み込んだ画像データに含まれている機器の種類を特定するため、データベースを参照する(S002)。参照した結果から機器の種類を特定する(S003)。
【0023】
また、種類が特定された機器の位置情報を特定する(S004)。ステップ003及びステップ004で特定された機器の種類と位置から機器の役割を特定する(S005)。各々の機器の役割が推定されたところでそれぞれの機器の役割を果たすことができるように線をひく(S006)。このような流れで作図をすることにより、依頼元から提供された資料をもとに、人が、一から図面を作る必要が無くなる。
【0024】
ここで、機器の種類の特定についての例を説明する。依頼元から送られてくる図面には、シンボルと当該シンボルに関連する文字が記載されているが、同じことを表す場合であっても、シンボルや文字の表し方は一通りに定まっていない(
図3参照)。そこで、実施形態の作図システム1では、画像データを読み込み、画像認識手段12により抽出されたシンボルや文字を、データベースに記録された情報と照合し、依頼元から提出された図面に記されている機器の種類を特定する。データベースにはシンボルや文字に対して機器の種類が紐づけられている。
【0025】
実施形態では、この特定を行うため、先ず、依頼元のシンボルと文字と合致するデータベースのシンボルと文字を探す。つまり、類似するデータではなく一致するデータを見つけ出す。この際、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方が読み取れればよい。
【0026】
依頼元から提出された図面のシンボルや文字は書き方が様々である。そこで、実施形態では、様々なシンボルや文字のパターンと当作図システム1側が図面上に表すスタイルのシンボルや文字を紐づけてデータベースに記憶しておき、依頼元から提出された図面に記されているシンボルや文字を当システム側のスタイルのシンボルや文字に変換する(
図4及び
図5参照)。なお、
図3の右端に示されるような文字の表記の仕方では
図6に示すような情報が表されていることになる。
【0027】
依頼元から提出されたシンボルの画像データはそのまま機器特定に使用してもよいし、線情報に変換した上で機器特定に使用してもよい。例えば、依頼元から提出された文字の画像データはOCR(Optical Character Reader)により文字データ化し、データベースに記憶されている文字データと照合して機器を特定すればよい。
【0028】
データベースの記憶情報はあらかじめ記憶させた情報であってもよいし、それに加えて実際の作図作業中の過程で人が判断した結果を記憶してデータを蓄積していくものであってもよい。後者の場合、機器特定のシステムでの判断をより人による判断に近づけることができる。なお、入力情報に対してデータベース参照しても合致しなかった場合、エラー判定を行い、その旨をシステム利用者に通知するようにすれば良い(
図7参照)。
【0029】
ところで、機械的に合致する同じデータを見つけ出せればよいが、依頼元の図面のシンボルや文字は書き方が人により様々であるので、データベースの蓄積データに合致しない場合も想定される。このような事態を解決するために、様々な形態の文字などを教師データとして学習させたAIにより画像データや文字データを判定してもよい。(
図8、
図9参照)。依頼元から提出されたデータがデータベースの蓄積データと完全に合致しなくても、教師データを基にAI判断で機器を特定すると、よりエラーが生じてしまう可能性を減らすことができる。
【0030】
実施形態では、機器を示すシンボルと文字の少なくとも一方の画像データ(条件項目)と、それを表す機器の種類(結果)を教師データとして学習する機器特定学習手段を備えている。なお、ここでいう「条件項目」は、様々なものが想定されるが、例えば、依頼元から提出された若しくは提出されるであろうシンボルと文字の様々なパターンである。また、「結果」は、当システムにおいて作図時にアウトプットされるシンボルや文字である。
【0031】
「条件項目」が、依頼元から提出された若しくは提出されるであろうシンボルである場合、「結果」は、それに対応して当システムでアウトプットされるシンボルである。また、「条件項目」が、依頼元から提出された若しくは提出されるであろう文字である場合、「結果」は、それに対応する当システムにおけるシンボルと文字にすればよい。このように、機器特定学習手段に教師データを与えて学習させることで、依頼元のシンボルや文字が様々なパターンであっても、AI判定により機器を特定することができる。
【0032】
なお、判定の結果、機器の種類が1つに特定できない場合、エラー判定をシステム利用者に通知しても良いし、機器の候補を表示し、システム利用者に選択させるようにしても良い(
図9参照)。
【0033】
ところで、シンボルにより判定した機器と、文字により判定した機器とが異なる場合がある。この場合、実施形態では、文字からの判定結果を優先して採用するのが好ましい(
図10から
図12参照)。このようにするのは、シンボルのみでは各種パラメータの数値は特定できないからであり、また、過去の傾向として、シンボルの方が文字と比べて誤っている確率が高いからである。これは、過去に使用した図面を転用した場合におけるシンボルの変更忘れや、シンボルに関する知識不足などに起因すると考えられる。したがって、機器特定手段13は、シンボルにより特定された機器の種類と、文字により特定された機器の種類が異なる場合、文字により特定された機器の種類を優先して採用するように構成するのが好ましい。
【0034】
また、エラー判定をして、シンボルと文字のどちらが正しいかを人が確認させるようにしてもよい。なお、変圧器においては、内部結線指定の場合、シンボルと文字の判定が異なっていたとしても、依頼元は意図してそのシンボルと文字を指定している事例もある。そのようなことが想定される場合などには、一般的な仕様とは異なる旨を利用者へ通知することが好ましい。
【0035】
ここで、作図システム1が行う役割特定について説明する。役割特定とは、特定の機器が他の機器とどのように接続されるのかという他の機器との関係性を特定することである。同じ機器を用いても、役割が異なる場合があるため、この役割特定は、図面の作成上、重要である。例えば、同じLBS(高圧交流負荷開閉器)であっても、主遮断器とその2次側にある開閉器のように役割が異なる場合もあるため、どのLBSがどの役割をするのかを特定することがなされる。
【0036】
役割特定の前提として、機器の種類が特定されている必要があるため、実施形態では、機器特定手段13により機器の種類が特定される。そして、機器の位置情報(機器間の相対的な位置関係)や機器の組み合わせなどから役割特定をする。このため実施形態の役割特定手段15は、機器の組み合わせを記録した記憶部18と接続され、特定された機器間の相対的な位置情報と記憶部18に記録された機器の組み合わせ情報とを参照することで機器の役割を特定するように構成している。AIを用いるならば、特定された機器の位置情報と機器の組み合わせによる機器の役割を教師データとして学習する役割特定学習手段を備えるようにするのが好ましい。なお、位置情報については、X軸若しくはY軸において略同値となる機器同士を割り出し、役割特定の判断要因の一つとするのが好ましい。この場合、例えば機器間で共通のx値もしくはy値の値を探す。
【0037】
ここで、役割の判定例を具体的に示す。例えば、
図13に示す例では、依頼元から提出された図には、LBSとして読み取れるシンボルが4つ存在し、変圧器(TR)として読み取れるシンボルが2つ存在する。この場合、1つのTRと1つのLBSが同x値であれば、そのLBSは同x値のTRの一次開閉器であると判定する。また、1つのTRと2つのLBSが同x値である場合は、y値を参照し、同x値のTRのy値とより近いLBSが、同x値のTRの一次開閉器であると判定する。なお、このような判断はTRをSC(コンデンサ)、高圧のマグネット、カットアウト、CTに置き換えても同様に判断できる。
【0038】
また、
図14に示す例では、LBSとして読み取れるシンボルが4つ存在するが、LBSのy値を取得すると1つのみ異なる位置であり、残る3つは同y値である。また、同y値であるLBSは、それぞれ同x値にコンデンサ(SC)および変圧器(TR)として読み取れるシンボルが対になって存在する。以上の結果より、同y値であるLBSは同x値で対となるSCおよびTRの1次側開閉器と判定することができる。また、唯一y値が異なるLBSは主遮断器として判定することができる。このような判定は、LBSをVCB(真空遮断器)に置き換えても同様におこなうことができる。
【0039】
更に異なる判定例を説明する。
図15に示す例では、TRシンボルが3つ、VM/AMシンボルも3つ存在する。なお、VMは電圧計、AMは電流計を意味する。TRと対となるVM/AMだが、シンボルの位置が複数のTRシンボルと同じレベルの離隔であり、どのTRと対かを判断しづらい。例えば、
図15に示すaの方向で紐付けすると最右のVM/AMと最左のTRが余ってしまう。一方、bの方向で紐付けすると余りが発生しない。したがって、この場合、b方向の紐付けを適用すればよいことがわかる。
【0040】
ここで、このような場合の判定手順の例について説明する。この場合、役割特定手段15が、特定された機器の位置情報と記憶部18に保存されている組み合わせ情報より、第一のy値においてX軸方向にずれるように配置される複数の第一の機器と、第一のy値とは異なる第二のy値において全ての第一の機器とX軸方向にずれるように位置し、少なくとも一つの第一の機器に対して組み合わせ情報から組みあわせ可能であると判定される複数の第二の機器と、を含むグループに対して、グループ内の全ての第二の機器が各々に隣接する第一の機器に1対1で組み合わされる組み合わせが見つかるまで、組み合わせの判定を繰り返す。なお、第二の機器が余すことなく第一の機器に接続することができなければ、当該接続候補は不適切であると判定する。
【0041】
このようにすれば、シンボルがずれている対となる機器間を接続されない機器が出ることなく正しく接続することができる。また、このような判断はTRをLBS、VCBに置き換えても同様に判断できる。また、VM/AMをその他計測器や警報器(漏電火災警報器、漏電警報器、サーマルリレー、ヒューズ、計器用変成器など)に置き換えても同様に判断できる。
【0042】
このような手順は、図面構成によっては、xとyが入れ替えられる場合があるため、この場合は、役割特定手段15が、第一のx値においてY軸方向にずれるように配置される複数の第一の機器と、第一のx値とは異なる第二のx値において全ての第一の機器とY軸方向にずれるように位置し、少なくとも一つの第一の機器に対して組み合わせ情報から組みあわせ可能であると判定される複数の第二の機器と、を含むグループに対して、グループ内の全ての第二の機器が各々に隣接する第一の機器に1対1で組み合わされる組み合わせが見つかるまで、組み合わせの判定を繰り返すようにすれば良い。
【0043】
なお、各段階で選定内容の修正ができるようにすれば良いが、実施形態では機器特定及び役割特定した後でも修正ができるようになっている。
図16に示す例では、「データベースに記録されている機器の組み合わせにおける各数値の推奨値と、読み込まれた値との間に差異がある」と、役割特定が終わった後に判定した場合、数値をデータベース側にあわせるように修正している。このような修正は自動で行っても良いし確認のステップを踏んでから行うようにしても良い。また、修正したことが分かりやすいように出力時の表記方法をその他の箇所と変えるようにしても良い。
【0044】
役割特定手段15により、機器間の関わり合いを特定すれば、その役割の情報とあらかじめ記憶された役割に基づく結線情報に基づいて機器間に線を結べばよい。実施形態では、特定された機器の種類と位置と役割の情報から結線図を自動作成する結線図作成手段16を備えている。
【0045】
結線図を作成後は、特定した機器の種類や数等によって、箱選定手段21を用いて箱を自動的に選定できるようにするのが好ましい。また、見積手段22を用いて見積もりを自動で行ったり、これらの結果を依頼元に出力できるようにしたりするのが好ましい。
【0046】
ここまでは、高圧受電設備の図面を参照して説明してきたが、
図17及び
図18に示すことから理解されるように、分電盤や配電盤用の図面の作成に本作図システム1を利用することができる。
図17に示す依頼元から提供された図では、複数のブレーカのシンボルが同x値上に複数存在し、同x値に無いブレーカのシンボルが一つ存在することから、同x値に無く、同x値上にある複数のブレーカのシンボルよりも大きなy値となるブレーカのシンボルを主幹ブレーカ81と判定する。また、主幹ブレーカ81と判定したシンボルよりy値が小さいブレーカのシンボルを分岐ブレーカ82と判定する。また、主幹ブレーカ81と判定したシンボルよりy値が大きなブレーカのシンボルを主幹一次側ブレーカ83と判定する。その結果、本作図システム1では
図18に示すような図が描かれることになる。
【0047】
また、
図19及び
図20に示すことから理解されるように、制御盤用の図面の作成に本作図システム1を利用することができる。
図19に示す依頼元から提供された図では、複数のブレーカのシンボルが同y値上に複数存在することから、そのうち最もx値が小さいブレーカのシンボルを主幹ブレーカ81と判定する。また、主幹ブレーカ81と判定したシンボルよりx値が大きいブレーカのシンボルを分岐ブレーカ82と判定する。また、分岐ブレーカ82と判定したシンボルと同x値上に存在するシンボルを分岐ブレーカ82に付随する機器85のシンボルであると判定する。その結果、本作図システム1では
図20に示すような図が描かれることになる。
【0048】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、x値やy値は、特定の一つの値とはせず、問題がない範囲で幅を設けることも可能である。
【0049】
例示したフローは、本発明の目的に沿っている限り、順番が入れ替えられていたり、削除や変更がされていたり、他のステップが含まれていたりしても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 作図システム
13 機器特定手段
14 位置情報取得手段
15 役割特定手段
16 結線図作成手段
17 補正手段
18 記憶部