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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】電気かみそり
(51)【国際特許分類】
   B26B 19/28 20060101AFI20231002BHJP
   B26B 19/38 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B26B19/28 Z
B26B19/38 P
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022126147
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2018231580の分割
【原出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2022145798
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丹波地 明
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 敬介
(72)【発明者】
【氏名】東尾 正人
(72)【発明者】
【氏名】小原 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 幸太郎
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007950(JP,A)
【文献】特開平05-200170(JP,A)
【文献】特開2018-182626(JP,A)
【文献】特開平07-096085(JP,A)
【文献】特開平07-313749(JP,A)
【文献】特開2018-138135(JP,A)
【文献】特表2018-516475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0000124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B19/00-19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップを兼ねる本体ケース(1)と、電源投入用の電源スイッチ(10)と、可動刃(4)を含む切断刃(3)と、可動刃(4)を駆動させるモーター(6)と、外力に起因する本体ケース(1)の振動を感知する感振センサ(17)とを備え、
感振センサ(17)が出力する検知信号に従ってモーター(6)が変速されるように構成されており、
電源スイッチ(10)をオン操作しただけではモーター(6)は起動せず、その後に本体ケース(1)を加振操作して初めてモーター(6)を起動することを特徴とする電気かみそり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの操作で切断刃の駆動速度を変更可能な電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気かみそりは例えば特許文献1に開示されている。同文献に記載の電気かみそりは、グリップを兼ねる縦長の本体ケースと、本体ケースの上部で支持されるかみそりヘッドとを備える。かみそりヘッドの上部には、固定刃(外刃)と可動刃(内刃)からなる切断刃が設けられており、可動刃は本体ケースに収容されたモーターで駆動される。モーターの駆動用の電源スイッチは、本体ケースの前面の略中央に配置されており、その直ぐ下方には、モーターの回転数設定手段としてのダイヤル型のボリュームが、回転数の表示部と並んで配置されている。電気かみそりの制御部は、ユーザーにより電源スイッチがオン操作されると、ボリュームで設定されている回転数でモーターを駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-203180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気かみそりでひげを剃るときに最適な切断刃の駆動速度(モーターの回転数)は、例えば鼻下や顎など、顔の部位ごとに異なることがある。そのため、ユーザーによっては、電気かみそりを別の部位へ移動させる毎に、切断刃の駆動速度の変更を所望することがある。特許文献1の電気かみそりでは、本体ケースの前面に回転数設定手段としてのボリュームが配置されており、ユーザーは該ボリュームを指先で摘んで操作することにより、切断刃を所望の駆動速度に調整することができる。しかし、ユーザーによっては、駆動速度の調整の度にボリュームを摘んで操作するのは煩わしいと感じることがある。また、ひげ剃りを行う間に指が誤ってボリュームに触れてしまい、ユーザーの意に反して切断刃の駆動速度が変化するおそれもある。
【0005】
本発明は、切断刃の駆動速度すなわちモーターの回転数を簡便に調整することができる電気かみそりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、電源投入用の電源スイッチ10と、可動刃4を含む切断刃3と、可動刃4を駆動させるモーター6と、外力に起因する本体ケース1の振動を感知する感振センサ17とを備えている。感振センサ17が出力する検知信号に従ってモーター6が変速されるように構成されている。電源スイッチ10をオン操作しただけではモーター6は起動せず、その後に本体ケース1を加振操作して初めてモーター6を起動することを特徴とする。
【0007】
電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、電源投入用の電源スイッチ10と、可動刃4を含む切断刃3と、可動刃4を駆動させるモーター6と、外力に起因する本体ケース1の振動を感知する感振センサ17とを備える。そして、感振センサ17が出力する検知信号に従ってモーター6が変速されるように構成されている。
【0008】
ひげ剃りの際に電気かみそりが肌面に沿って移動操作される方向を剃毛方向と規定したとき、当該剃毛方向とは異なる方向に感振センサ17の検知方向が設定されており、感振センサ17が検知方向の振動を感知したときに当該感振センサ17より検知信号が出力され、当該検知信号に従ってモーター6が変速されるように構成することができる。
【0009】
感振センサ17により、検知方向に係る一方の方向の振動が感知されるとモーター6が加速され、感振センサ17により、検知方向に係る他方の方向の振動が感知されると、モーター6が減速させるように構成することができる。
【0010】
電気かみそりの電源がオフ状態である状態において、本体ケース1に所定の振動が加えられて、当該振動が感振センサ17により感知されると、電源スイッチ10のオン操作が無効となるロック状態に移行するように構成することができる。
【0011】
ロック状態において、電源スイッチ10を所定の方法で操作するアンロック操作が行われると、ロック状態が解除されるように構成することができる。
【0012】
感振センサ17を本体ケース1の上下中心よりも上方に配置することができる。
【0013】
電源スイッチ10を、本体ケース1の表面に設けられて人体の接触を検知するタッチセンサ10Aで構成することができる。
【0014】
感振センサ17で感知された検知方向に係る一方の方向の振動が大きいほど、モーター6が大きく加速されるように構成することができる。
【0015】
感振センサ17で感知された検知方向に係る他方の方向の振動が大きいほど、モーター6が大きく減速されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電気かみそりでは、外力に起因する本体ケース1の振動を感知する感振センサ17を設けて、当該感振センサ17が出力する検知信号に従ってモーター6が変速されるように構成したので、ユーザーは、本体ケース1を意図的に振るだけの簡単な操作を行うだけで、モーター6を変速させて、回転数を調整することができる。
【0017】
電気かみそりでは、外力に起因する本体ケース1の振動を感知する感振センサ17を設けて、当該感振センサ17が出力する検知信号に従ってモーター6が変速されるように構成したので、ユーザーは、本体ケース1を意図的に振るだけの簡単な操作を行うだけで、モーター6を変速させて、回転数を調整することができる。
【0018】
感振センサ17が剃毛方向とは異なる方向の振動を感知したときに当該感振センサ17より検知信号が出力され、当該検知信号に従ってモーター6が変速されるように構成されていると、剃毛方向への電気かみそりの移動操作によりモーター6の変速が行われることはなく、電気かみそりを使ったひげ剃り時に不用意にモーター6の回転数が調整されることを防ぐことができる。
【0019】
感振センサ17により検知方向に係る一方の方向の振動が感知されるとモーター6が加速され、検知方向に係る他方の方向の振動が感知されるとモーター6が減速されるように構成されていると、ユーザーは本体ケース1を一方或いは他方のいずれかの検知方向に本体ケース1を振るだけの簡単な操作で、モーター6を加速あるいは減速させて所望の回転数に調整することができる。一方の方向と他方の方向とが正反対の方向に設定されていると、加速操作と減速操作とを誤認混同して誤操作することをより確実に防止できる。
【0020】
ロック状態に移行可能な電気かみそりによれば、携帯時などに電源スイッチ10が不用意に操作されてオン状態に切り換わることを確実に防止できる。そのうえで、電気かみそりの電源がオフ状態である状態において、本体ケース1に所定の振動が加えられて、当該振動が感振センサ17により感知されることでロック状態に移行するように構成されていると、ロック状態に移行させるための専用のスイッチが不要になるので、ロック機能の追加に伴う部品点数の増加を招くことがなく、コストの削減に寄与できる。
【0021】
ロック状態を解除するためのアンロック操作が電源スイッチ10の操作であると、ユーザーは電源スイッチ10から指を移動させること無く、ロック解除から電源投入までの一連の操作をスムーズに行える。また、アンロック操作のための専用のスイッチが不要になるので、部品点数の増加を招くことがなく、コストの削減に寄与できる。
【0022】
感振センサ17が本体ケース1の上下中心よりも上方に配置されていると、ユーザーが本体ケース1の下半部を握ってひげ剃りを行う場合に、ユーザーの手から感振センサ17までの上下方向距離をより長くすることができる。このようにユーザーの手から感振センサ17までの上下方向距離を長くすることができると、ユーザーの手を中心に電気かみそりが揺動操作されたときの感振センサ17の振れ幅を大きくすることができるので、揺動操作時に感振センサ17を確実に作動させることが可能となり、モーター6の回転数の調整操作をより確実に行うことができる。
【0023】
本体ケース1の表面のタッチセンサ10Aで電源スイッチ10が構成されていると、ユーザーが本体ケース1を握るだけで、タッチセンサ10Aがユーザーの手を検知して電源がオン状態に切り換わるので、ユーザーは電源スイッチ10を意識的に操作する必要が無く、電気かみそりを素早く起動させることができる。また、電源スイッチ10をタッチセンサ10Aで構成すると、本体ケース1の表面から見かけ上のスイッチが省略されたシンプルなデザインとなり、本体ケース1の美観が向上する。
【0024】
感振センサ17で感知される検知方向に係る一方の方向の振動が大きいほど、モーター6が大きく加速されるように構成されていると、ユーザーは、モーター6を大きく加速させたい場合は本体ケース1を強く振り、モーター6を少しだけ加速させたい場合はこれを弱く振るといった具合に、振動の強さを加減することにより、モーター6の回転数を容易に調整することができる。
【0025】
感振センサ17で感知される検知方向に係る他方の方向の振動が大きいほど、モーター6が大きく減速されるように構成されていると、ユーザーは、モーター6を大きく減速させたい場合は本体ケース1を強く振り、モーター6を少しだけ減速させたい場合はこれを弱く振るといった具合に、振動の強さを加減することにより、モーター6の回転数を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1に係る電気かみそりの正面図である。
図2】電気かみそりの側面図である。
図3】電気かみそりの制御系のブロック図である。
図4】モーターの目標回転数の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
図5】ロック状態について説明するためのタイミングチャートである。
図6】実施例2に係る電気かみそりの動作について説明するためのタイミングチャートである。
図7】実施例3に係る電気かみそりの動作について説明するためのタイミングチャートである。
図8】実施例4に係る電気かみそりの正面図である。
図9】実施例5に係る電気かみそりの感振センサの内部構造図である。
図10】実施例6に係る電気かみそりの感振センサの内部構造図である。
図11】実施例7に係る電気かみそりの動作について説明するためのタイミングチャートである。
図12】実施例8に係る電気かみそりの感振センサの内部構造図である。
図13】実施例9に係る電気かみそりの感振センサの内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例1) 図1から図5に、ロータリー式の電気かみそりに適用した実施例1を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。両図において電気かみそりは、グリップを兼ねる縦長の本体ケース1と、本体ケース1の上部で支持されるかみそりヘッド2とを備える。かみそりヘッド2は、本体ケース1に対して上下動可能であり、さらに前後方向と左右方向に傾動可能である。かみそりヘッド2の上部には切断刃3が配置されており、該切断刃3は、水平軸まわりに回転する内刃(可動刃)4と、内刃4に外接する網目状の外刃5とで構成される。内刃4は、本体ケース1の上部に収容された減速機付きのモーター6で駆動される。本体ケース1の下部には、モーター6の駆動源である二次電池7が、縦長の制御基板8とともに収容されている。
【0028】
本体ケース1の下半部(上下中心よりも下方)には、電源投入用の電源スイッチ10と表示部13とが上から下へ記載順に配置されている。電源スイッチ10は、本体ケース1の前壁に設けられた電源操作部11と、制御基板8の前面に実装されて電源操作部11の内面側に位置するスイッチ素子12とで構成される。ユーザーは、電源操作部11を介してスイッチ素子12を押圧操作して、モーター6を駆動状態と停止状態の間で切り換えることができる。表示部13は、制御基板8の前面に実装された上下に並ぶ5個のLED(光源)14と、本体ケース1の前壁に設けられて各LED14に正対する縦長の透光窓15とで構成されており、ユーザーは透光窓15を介して各LED14の発光を視認することができる。表示部13は、点灯するLED14の選択や個数によって、モーター6の回転数や二次電池7の残量などを表示する。
【0029】
本体ケース1の上部におけるモーター6の前方には、市販の加速度センサからなる感振センサ17が内蔵されており、不図示のリード線で制御基板8に接続されている。感振センサ17は、本体ケース1に作用した外力に起因する比較的大きな振動、すなわち、ユーザーが本体ケース1を意図的に振ることで生じた振動を感知すると、モーター6を変速させる変速信号である検知信号を出力する。モーター6の駆動などに起因する比較的小さな振動は、感振センサ17では感知されないか、あるいは感知されたとしても、それに基づいて感振センサ17が変速信号を出力することは無い。
【0030】
前後方向がひげ剃りの際に電気かみそりが肌面に沿って移動操作される方向すなわち剃毛方向とされており、この前後方向と異なる方向である上下方向と左右方向とが、感振センサ17の検知方向に設定されている。感振センサ17が出力する検知信号には、モーター6を加速させる加速信号と、モーター6を減速させる減速信号の2種類があり、感振センサ17が感知する振動の方向に応じていずれかの信号が出力される。この電気かみそりでは、上方向と左方向が加速方向に設定されており、感振センサ17が同方向の振動を感知すると加速信号が出力される。また、加速方向と反対の方向すなわち下方向と右方向が減速方向に設定されており、感振センサ17が同方向の振動を感知すると減速信号が出力される。上述のように、前方向と後方向は、ひげ剃りの際に電気かみそりが肌面に沿って移動操作される方向すなわち剃毛方向と一致するため、これら方向は加速方向と減速方向には設定されておらず、ひげ剃りの際の電気かみそりの移動操作に基づいては感振センサ17が変速信号を出力することはない。従って、ひげ剃りの際に不用意にモーター6が変速されることはない。
【0031】
図3に示すように制御部20は、モーター6を駆動制御するモーター駆動制御手段21と、表示部13の各LED14を制御する表示制御手段24などで構成される。モーター駆動制御手段21は、モーター6の目標回転数Rを設定する速度設定部26と、目標回転数Rに応じてモーター6に印加する電圧を制御する電圧制御部27とを備える。表示制御手段24は、速度設定部26で設定されるモーター6の目標回転数Rを表示部13に表示させる。
【0032】
電気かみそりのオフ状態においてユーザーが電源スイッチ10を押圧操作、すなわちオン操作すると、速度設定部26はモーター6の目標回転数Rを所定の基準回転数R0に設定し、電圧制御部27は基準回転数R0に応じた電圧をモーター6に印加する。これによりモーター6が駆動を開始する。モーター6の駆動状態において、ユーザーが本体ケース1を加速方向または減速方向に振動させると、感振センサ17が該振動を感知して変速信号(加速信号または減速信号)を速度設定部26へ出力し、速度設定部26は該変速信号に従って目標回転数Rを変更し、電圧制御部27は変更後の目標回転数Rに応じた電圧をモーター6に印加する。
【0033】
モーター6の基準回転数R0は最小回転数に一致しており、目標回転数Rが基準回転数R0のときに感振センサ17から減速信号が出力されても、速度設定部26は目標回転数Rを基準回転数R0に維持する。また、目標回転数Rに関しては、基準回転数R0に加えて所定の最大回転数R1(R0<R1)が予め設定されている。目標回転数Rが最大回転数R1のときに感振センサ17から加速信号が出力されても、速度設定部26は目標回転数Rを最大回転数R1に維持する。
【0034】
図4のタイミングチャートは、モーター6の目標回転数Rの変化の一例を示したものである。最初の時点t1では、電源スイッチ10がオン操作されて、速度設定部26が目標回転数Rを基準回転数R0に設定している。次の時点t2から時点t3にかけては、感振センサ17から複数回にわたって加速信号が出力されており、該出力毎に目標回転数Rが段階的に上昇している。次の時点t4から時点t5にかけては、感振センサ17から複数回にわたって減速信号が出力されており、該出力毎に目標回転数Rが段階的に低下している。最後の時点t6では、電源スイッチ10がオフ操作されて、目標回転数Rがゼロに設定されている。目標回転数Rがゼロになると、電圧制御部27による電圧の印加が中断されて、モーター6が停止する。
【0035】
本実施例に係る電気かみそりは、モーター6の停止状態において所定のロック操作が行われると、電源スイッチ10のオン操作が無効となるロック状態に移行するとともに、ロック状態において所定のアンロック操作が行われると、ロック状態が解除されるように構成されている。ロック操作は本体ケース1に対する加振操作であり、アンロック操作は電源スイッチ10の長押し操作である。
【0036】
図5図4のタイミングチャートの時点t6以降を示しており、次の時点t7および時点t8では、感振センサ17が所定以上の大きさの振動を短いタイムラグで続けて感知(オン)して、2度目の振動を感知した時点t8にロック状態に切り換わっている。つまり制御部20は、時点t7の1度目の加振操作を受けて、ロック操作を受付可能なロック待機状態に切り換わり、その直後の時点t8の2度目の加振操作(ロック操作)を受けて、ロック状態に移行している。次の時点t9では、電源スイッチ10が短く押されているが、ロック状態であるためモーター6は起動していない。
【0037】
次の時点t10ではアンロック操作(電源スイッチ10の長押し操作)が開始されており、次の時点t11では、長押し時間が規定時間に達してロック状態が解除されている。次の時点t12では、電源スイッチ10がオン操作されてモーター6が起動している。このように、電源スイッチ10の長押し操作でロック状態を解除できるようにしていると、ユーザーは電源スイッチ10から指を移動させること無く、ロック解除から電源投入までの一連の操作をスムーズに行える。なお、時点t11のアンロック操作の完了と同時にモーター6が起動するように設定することもできる。
【0038】
(実施例2) 図6に示す実施例2(本発明)は、ユーザーが電源スイッチ10をオン操作しただけではモーター6は起動せず、その後に本体ケース1に対して加振操作して初めてモーター6が起動するようにした点で、先の実施例1と異なる。同図のタイミングチャートに示すように、電源スイッチ10がオン操作されると(時点t21)、モーター6は起動せずに電源がオフ状態からオン状態に切り換わる。電源がオン状態に切り換わったことは、例えば表示部13を点灯させてユーザーに報知することができる。本実施例において電源のオン状態とは、本体ケース1に対する加振操作によりモーター6の起動が可能なスタンバイ状態のことであり、電源のオフ状態とは、本体ケース1に対して加振操作してもモーター6の起動が不可能な休止状態のことである。
【0039】
次の時点t22では、感振センサ17から加速信号が出力されて、モーター6が基準回転数R0を目標回転数Rとして起動している。なお、電源のオン状態で加速信号に代えて減速信号が出力された場合でも、モーター6は同様の回転数で起動する。次の時点t23から時点t24にかけては、感振センサ17から複数回にわたって加速信号および減速信号が出力されており、該出力毎に目標回転数Rが段階的に上昇あるいは低下している。次の時点t25では電源スイッチ10がオフ操作されて、モーター6が停止するとともに電源がオフ状態に切り換わっている。電源がオフ状態に切り換わったことは、例えば表示部13を消灯させてユーザーに報知することができる。最後の時点t26では感振センサ17から加速信号が出力されているが、電源はオフ状態であるためモーター6は起動していない。他は実施例1と同じであるので、その説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0040】
(実施例3) 図7に示す実施例3は、感振センサ17が減速信号に代えてリセット信号を出力するようにした点で、先の実施例1と異なる。つまり、感振センサ17が加速方向(上方向と左方向)の振動を感知した場合に加速信号を出力する点は実施例1と同じであるが、加速方向と反対の下方向と右方向の振動を感知した場合には、モーター6の目標回転数Rを基準回転数R0に戻すためのリセット信号が出力される。同図のタイミングチャートに示すように、モーター6の起動と加速(時点t31~t33)に関しては実施例1(図4の時点t1~t3)と同じであるが、次の時点t34では感振センサ17がリセット信号を出力して、目標回転数Rは基準回転数R0まで一気に低下している。次の時点t35~t37にかけては、目標回転数Rが時点t32~t34と同様に制御されている。
【0041】
(実施例4) 図8に示す実施例4は、電源スイッチ10が人体の接触を検知する静電容量式のタッチセンサ10Aからなる点で、先の実施例1と異なる。本体ケース1の上下方向の中途部には、内凹み状の括れ部からなるグリップ部1aが設けられており、グリップ部1aの左右それぞれにタッチセンサ10Aが配置されている。本実施例によれば、ユーザーが本体ケース1のグリップ部1aを握るだけで、タッチセンサ10Aがユーザーの手を検知して電源がオン状態に切り換わるので、ユーザーは電源スイッチ10を意識的に操作する必要が無く、電気かみそりを素早く起動させることができる。実施例1で電源操作部11が占めていたスペースは、例えば表示部13を上方へ拡張するなどの方法で活用することができる。
【0042】
(実施例5) 図9に示す実施例5は、感振センサ17の構造が先の実施例1とは異なる。ここでの感振センサ17は、左右に長い棒磁石30と、棒磁石30を囲むコイル31とを備える。棒磁石30はコイル31に対して左右方向に相対移動可能であり、常態においてはばね等の付勢手段32により左右中央の中立位置へ付勢されている。棒磁石30の静止中はコイル31に電流は流れないが、ユーザーが本体ケース1を左右方向に振ると、棒磁石30が相対移動してコイル31に電流が流れる。本体ケース1が左方向(加速方向)に振られた場合すなわち棒磁石30が右方向に移動した場合と、本体ケース1が右方向(減速方向)に振られた場合すなわち棒磁石30が左方向に移動した場合とでは、コイル31を流れる電流の向きが異なるので、これに基づき本体ケース1の振動の向きが感知されて、その向きに応じた加速信号あるいは減速信号が出力される。本実施例に係る感振センサ17は、本体ケース1の左右方向の振動のみを感知することができる。
【0043】
(実施例6) 図10に示す実施例6も、感振センサ17の構造が先の実施例1とは異なる。ここでの感振センサ17は、2個の検知部35と1個の被検知部36を備える近接センサで構成されており、被検知部36を左右両側から挟むように検知部35が配置されている。被検知部36は検知部35に対して左右方向に相対移動可能であり、常態においてはばね等の付勢手段37により、両検知部35から離間した左右中央の中立位置へ付勢されている。ユーザーが本体ケース1を左方向(加速方向)に振ると、被検知部36が右方向に移動し、これを検知した右側の検知部35が加速信号を出力する。逆に、ユーザーが本体ケース1を右方向(減速方向)に振ると、被検知部36が左方向に移動し、これを検知した左側の検知部35が減速信号を出力する。本実施例に係る感振センサ17も、本体ケース1の左右方向の振動のみを感知することができる。
【0044】
(実施例7) 図11に示す実施例7は、感振センサ17が振動の向きに加えて強さを感知する点で、先の実施例1と異なる。加速度センサからなる感振センサ17は、加速方向(上方向と左方向)と減速方向(下方向と右方向)のそれぞれにおいて、振動の強さを「強」「中」「弱」の3段階で感知し、その強さに応じた加速信号あるいは減速信号を出力する。つまり、同図のタイミングチャートに示すように、感振センサ17で感知される振動が強いほど、変速の度合いが大きい加速信号(時点t41~t43)あるいは減速信号(時点t44~t46)が出力されて、モーター6が大きく加速あるいは減速される。本実施例では、振動の強さが「弱」相当のときのモーター6の変速量を「1」とするとき、「中」相当のときの変速量を「2」、「強」相当のときの変速量を「3」に設定したが、この数値は任意に選択することができる。また、感振センサ17が感知する振動の強さも3段階に限られない。
【0045】
(実施例8) 図12に示す実施例8は、感振センサ17の構造が先の実施例7とは異なる。ここでの感振センサ17は、6個の検知部40と1個の被検知部41を備える近接センサで構成される。検知部40は感振センサ17のハウジング42に設けられており、被検知部41はハウジング42の内部を左右摺動可能なスライド体43に設けられている。常態におけるスライド体43と被検知部41は、ばね等の付勢手段44により左右中央の中立位置へ付勢されている。各付勢手段44の一端はハウジング42に固定されており、他端はスライド体43に対して接離可能である。検知部40は、被検知部41の移動ストロークに沿って、中立位置における被検知部41の左右に3個ずつ配置されている。被検知部41は、中立位置から左右方向に移動することにより、いずれかの検知部40で検知される。
【0046】
ユーザーが本体ケース1を左方向(加速方向)に大きく振るほど、被検知部41は右方向へ大きく移動する。振る力が「強」相当のときは、最も右側の検知部40が被検知部41を検知し、振る力が「中」相当のときは、右から2番目の検知部40が被検知部41を検知し、振る力が「弱」相当のときは、右から3番目の検知部40が被検知部41を検知する。逆に、ユーザーが本体ケース1を右方向(減速方向)に大きく振るほど、被検知部41は左方向へ大きく移動する。振る力が「強」相当のときは、最も左側の検知部40が被検知部41を検知し、振る力が「中」相当のときは、左から2番目の検知部40が被検知部41を検知し、振る力が「弱」相当のときは、左から3番目の検知部40が被検知部41を検知する。感振センサ17で感知される振動が強いほど、変速の度合いが大きい加速信号あるいは減速信号が出力される点は、先の実施例7と同様である。本実施例に係る感振センサ17は、本体ケース1の左右方向の振動のみを感知することができる。
【0047】
(実施例9) 図13に示す実施例9も、感振センサ17の構造が先の実施例7とは異なる。ここでの感振センサ17は、重量のある左右に長い押圧棒47と、押圧棒47の左右両側に配置される圧力センサ48とを備える。押圧棒47は保持筒49で周面を抱持されており、保持筒49に対して左右摺動のみ可能である。各圧力センサ48は、押圧棒47の端面に正対する受圧面を備えており、押圧棒47から受ける圧力の大きさを複数段階(例えば3段階)で検知することができる。ユーザーが本体ケース1を左方向(加速方向)に大きく振るほど、右側の圧力センサ48に大きな圧力が作用し、該圧力の大きさに応じた加速信号が出力される。逆に、ユーザーが本体ケース1を右方向(減速方向)に大きく振るほど、左側の圧力センサ48に大きな圧力が作用し、該圧力の大きさに応じた減速信号が出力される。本実施例に係る感振センサ17も、本体ケース1の左右方向の振動のみを感知することができる。
【0048】
上記の実施例1などでは、電気かみそりの上方向と左方向を加速方向に設定し、下方向と右方向を減速方向に設定したが、これ以外に例えば、左方向と右方向を加速方向に設定し、上方向と下方向を減速方向に設定してもよい。モーター6には、上記の各実施例に係る回転式のモーターに加えて、往復式のリニアモーターも含まれる。本発明は、上記の各実施例に係るロータリー式の電気かみそり以外に、往復駆動式の切断刃を備える電気かみそりや、内刃(可動刃)のみからなる切断刃を備える電気かみそり、あるいは、本体ケース1の上部に切断刃3が設けられている電気かみそり(かみそりヘッド2を備えない電気かみそり)などにも適用することができる。さらに、本発明の電気かみそりには、外刃と内刃で主にひげを切断するシェーバーに加えて、櫛状の固定刃と櫛状の可動刃で主に髪を切断する電気式のバリカンも含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 本体ケース
2 かみそりヘッド
3 切断刃
4 可動刃(内刃)
5 外刃
6 モーター
10 電源スイッチ
17 感振センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13