(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】化粧料包装体
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
A45D34/04 515C
(21)【出願番号】P 2018105438
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】尾形 聡
(72)【発明者】
【氏名】松下 朱音
(72)【発明者】
【氏名】小林 大悟
(72)【発明者】
【氏名】岸菜 孝広
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0257470(US,A1)
【文献】特表2011-525846(JP,A)
【文献】特開2016-137924(JP,A)
【文献】特開平11-146902(JP,A)
【文献】特開2015-180425(JP,A)
【文献】特表2017-509361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0113318(US,A1)
【文献】実開昭58-156664(JP,U)
【文献】特開2006-263233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B65D 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートが重ね合わされ、密封された複数の収容部が形成された化粧料包装体であって、
前記複数の収容部は、少なくとも、化粧料を収容する化粧料収容部と、該化粧料を塗布するための塗布体を、該化粧料と非接触な状態で収容する塗布体収容部とを含み、
前記塗布体は、塗布部と、一端が該塗布部と連接する棒状の軸部と、を有しており、
前記化粧料収容部と前記塗布体収容部との境界部分の、当該化粧料包装体の幅方向全域に、剥離可能なシールで接着する接着領域であるイージーピールが設けられ、
前記塗布体収容部には、前記塗布体の取り出し方向に対して交差する方向に延伸して両端から内側に突出し、前記塗布体の取り出し方向に複数並んでいる複数の絞り部が設けられ、
前記複数の絞り部は、前記複数のシートを剥離不能なシールで接着する接着領域によって構成されており、
前記塗布体において、前記塗布部は前記軸部に対して傾斜し且つ湾曲しており、
前記複数の絞り部は、
未使用時は、前記塗布体の前記軸部と対向していることで、前記塗布体の姿勢を維持し、
前記塗布体の取り出しの際に、前記塗布体の前記塗布部に接触して、前記塗布部に付着する前記化粧料の量を調整する、
化粧料包装体。
【請求項2】
複数のシートが重ね合わされ、密封された複数の収容部が形成された化粧料包装体であって、
前記複数の収容部は、少なくとも、化粧料を収容する化粧料収容部と、該化粧料を塗布するための塗布体を、該化粧料と非接触な状態で収容する塗布体収容部とを含み、
前記塗布体は、塗布部と、一端が該塗布部と連接する棒状の軸部と、を有しており、
前記化粧料収容部と前記塗布体収容部との境界部分の、当該化粧料包装体の幅方向全域に、剥離可能なシールで接着する接着領域であるイージーピールが設けられており、
前記塗布体収容部には、前記塗布体の取り出し方向に対して交差する方向に延伸して両端から内側に突出し、前記塗布体の取り出し方向に複数並んでいる複数の絞り部が設けられており、
前記複数の絞り部のうち一方の絞り部は、前記複数のシートを剥離不能なシールで接着する接着領域によって構成され、
前記複数の絞り部のうち他方の絞り部は、前記複数のシートを剥離可能なシールで接着する接着領域によって構成されており、
前記塗布体において、前記塗布部は前記軸部に対して傾斜し且つ湾曲しており、
前記複数の絞り部は、未使用時は、前記塗布体の前記軸部と対向していることで、前記塗布体の姿勢を維持し、
前記複数の絞り部の前記
剥離不能なシールで接着する接着領域は、前記塗布体の取り出しの際に、前記塗布体の前記塗布部に接触して、前記塗布部に付着する前記化粧料の量を調整する、
化粧料包装体。
【請求項3】
複数のシートが重ね合わされ、密封された複数の収容部が形成された化粧料包装体であって、
前記複数の収容部は、少なくとも、化粧料を収容する化粧料収容部と、該化粧料を塗布するための塗布体を、該化粧料と非接触な状態で収容する塗布体収容部とを含み、
前記塗布体は、塗布部と、一端が該塗布部と連接する棒状の軸部と、を有しており、
前記化粧料収容部と前記塗布体収容部との境界部分の、当該化粧料包装体の幅方向全域に、仕切り用接着領域が設けられ、
前記塗布体収容部には、前記塗布体の取り出し方向に対して交差する方向に延伸して両端から内側に突出している、複数の絞り部が設けられ、
前記複数の絞り部は、前記複数のシートを剥離不能なシールで接着する接着領域によって構成されており、
前記塗布体において、前記塗布部は前記軸部に対して傾斜し且つ湾曲しており、
前記複数の絞り部は、
未使用時は、前記塗布体の前記軸部と対向していることで、前記塗布体の姿勢を維持し、
前記塗布体の取り出しの際に、前記塗布体の前記塗布部に接触して、前記塗布部に付着する前記化粧料の量を調整し、
前記仕切り用接着領域では、
前記幅方向の中央であって前記塗布体収容部の内幅よりも狭い領域は、剥離可能なシールで接着して構成されたイージーピールであり、
前記幅方向の外側は剥離不能なシールで接着して構成され、該シールで接着して構成された前記仕切り接着領域の前記幅方向の外側は、前記塗布体の取り出しの際に、前記塗布体の前記塗布部に接触して、前記塗布部に付着する前記化粧料の量を調整する、
化粧料包装体。
【請求項4】
前記イージーピールは、前記化粧料収容部への外圧、あるいは前記塗布体を前記化粧料収容部側へ移動させて接触させることによって、剥離可能である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項5】
前記複数の絞り部は、前記剥離可能なシールで接着する接着領域であるイージーピールに近いほど、前記絞り部の延伸距離が短く、前記塗布体収容部の絞り間隔が広い、
請求項1に記載の化粧料包装体。
【請求項6】
前記塗布体の前記塗布部は前記軸部よりも幅が広い部分を有する
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項7】
前記塗布体は、前記軸部の他端には、前記軸部より幅広の把持部を有している、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項8】
前記複数のシートの少なくとも1枚は透明である、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項9】
前記塗布体は、まつ毛又は眉毛用マスカラ塗布具であり、
前記化粧料はまつ毛又は眉毛用の、アイブロー化粧料、マスカラ化粧料、又は美容液である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項10】
前記塗布体は、目元用塗布具であり、
前記化粧料はアイシャドー又はアイライナーである、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項11】
前記塗布体は、肌用塗布具であり、
前記化粧料は肌用の、コンシーラー、ファンデーション、又は美容液である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項12】
前記塗布体は、髪用マスカラ塗布具であり、
前記化粧料は髪用の、部分カラーリング液、又はスタイリング剤である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項13】
前記塗布体は、唇用塗布具であり、
前記化粧料は、液体口紅、グロス、又は唇用美容液である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項14】
前記塗布体は、爪用塗布具であり、
前記化粧料は、ネイルエナメル、ジェルネイル、又はネイルケア剤である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【請求項15】
前記塗布体収容部には、前記絞り部よりも前記塗布体の取り出し側に、前記塗布体の取り出し方向に対して交差する方向に延伸して両端から内側に突出する、剥離可能な接着領域である第2のイージーピールが設けられており、
前記第2のイージーピールは、未使用時には、前記塗布体の前記軸部と対向していることで、前記塗布体の姿勢を維持し、前記塗布体の取り出しのために前記複数のシートを剥がす際に、一緒に剥離される
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の化粧料包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラや口紅等の化粧品のサンプルの包装では、塗布体の塗布部が化粧料の中に含浸していることが多い(例えば、引用文献1)。
【0003】
また、一回使い切りの商品として、包装体において、薬剤と綿棒等の塗布体とを異なる収容部に保存し、直前に開封して、塗布体の一部を薬剤に漬けて使用する包装体の構成が開示されている(例えば、引用文献2)。
【0004】
マスカラや口紅の塗布具はその形状が塗り易さ、使い易さに影響し、消費者が製品を選択する上で重要なポイントとなっており、特徴のあるものが各社から検討されている。そのため、サンプルにおいても塗布体の形状を視認できることは大きな価値がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2011-525846号公報
【文献】実開平58-156664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、引用文献1の構成において、化粧料が黒や茶などの濃い色の化粧料の場合、マスカラ塗布具などで塗布部の部分に特徴がある形状であっても、包装体開封前は塗布部が化粧料に含浸しているため、塗布部の形状が外部から視認できなかった。
【0007】
一方、引用文献2の構成を薬剤に適用する場合は、1回の使用の際に含有量すべてを塗布に使用することが想定されているが、化粧料の場合、各人の好みにより、塗布量が変動することがある。そのため、含有量に対して、塗布部に対する化粧料の付着量を微調整することが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、外部から塗布部の形状を視認可能で、かつ塗布部に対する化粧料の付着量を微調整することができる、化粧料包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様では、
複数のシートが重ね合わされ、密封された複数の収容部が形成された化粧料包装体であって、
前記複数の収容部は、少なくとも、化粧料を収容する化粧料収容部と、該化粧料を塗布するための塗布体を、該化粧料と非接触な状態で収容する塗布体収容部とを含み、
前記塗布体は、塗布部と、一端が該塗布部と連接する棒状の軸部と、を有しており、
前記化粧料収容部と前記塗布体収容部との境界部分の、当該化粧料包装体の幅方向全域に、剥離可能なシールで接着する接着領域であるイージーピールが設けられ、
前記塗布体収容部には、前記塗布体の取り出し方向に対して交差する方向に延伸して両端から内側に突出し、前記塗布体の取り出し方向に複数並んでいる複数の絞り部が設けられ、
前記複数の絞り部は、前記複数のシートを剥離不能なシールで接着する接着領域によって構成されており、
前記塗布体において、前記塗布部は前記軸部に対して傾斜し且つ湾曲しており、
前記複数の絞り部は、
未使用時は、前記塗布体の前記軸部と対向していることで、前記塗布体の姿勢を維持し、
前記塗布体の取り出しの際に、前記塗布体の前記塗布部に接触して、前記塗布部に付着する前記化粧料の量を調整する、
化粧料包装体、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、化粧料包装体において、外部から塗布部の形状を視認可能で、塗布部に対する化粧料塗布料の付着量を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】塗布体が封入されていない、本発明の実施形態に係る化粧料包装体を示す図。
【
図2】本発明の化粧料包装体に封入される第1実施形態の塗布体の一例の図。
【
図3】第1実施形態の塗布体が封入された状態の化粧料包装体を示す図。
【
図4】塗布体を化粧料包装体から取り出す動作説明図。
【
図5】塗布体を化粧料包装体から取り出す動作フローチャート。
【
図6】第2実施形態の塗布体が封入された状態の化粧料包装体。
【
図7】第3実施形態の塗布体が封入された状態の化粧料包装体。
【
図8】第4実施形態の塗布体が封入された状態の化粧料包装体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
本発明の下記の実施形態に係る化粧料包装体は、試供品や、旅行用の小分け販売用など、一度の化粧行為で使い切る単回使用に適した化粧のための包装体である。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る、塗布体が封入されていない化粧料包装体10を示す図である。
図2は、本発明の化粧料包装体に封入される第1実施形態の塗布体の一例の図である。
図3は、第1実施形態の塗布体が封入された状態の係る化粧料包装体を示す図である。
【0015】
本発明の化粧料包装体10は、複数のシートが重ね合わされ、4辺の縁部と、仕切り部分を接着することで、非接着部分には密封された複数の収容部が形成されている。以下、説明のため、本願の化粧料包装体10を、表面側シート21と裏面側シート22の2枚のシートで構成される例を説明するが、例えば強度を強くするため、表面側、裏面側にそれぞれ複数枚のシートを使用してもよいし、あるいは、片方のみシートの枚数を増やして構成してもよい。
【0016】
シート21,22の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミドもしくはポリスチレンなどの合成樹脂、アルミニウム箔などの金属または紙など、あるいは、これらの積層体により構成することができる。なお、2枚のシートの材質は、それぞれ同種のものでもよく、異種のものでもよい。
【0017】
重ね合わせるシート21,22は、表面側又は裏面側の少なくとも一方が透明、又は半透明であって、内部を視認可能な透過性のある色である、パウチ構造であると好ましい。少なくとも一方のシートが透過性であることで、使用者は、化粧料包装体を開封する前に、内部に収容される塗布体の塗布部の形状や、化粧料の色や質感を視認することができる。
【0018】
例えば、マスカラや口紅の塗布部の形状は、塗り易さ、使い易さに影響し、消費者が製品を選択する上で重要なポイントとなるため、サンプルにおいても塗布体の形状を視認できるので、サンプルの魅力を一層高めることが出来、大きな価値がある。
【0019】
化粧料包装体10のサイズは、例えば、幅10mm~40mm、長さ50mm~150mmである。また、化粧料包装体10のシートの厚みは0.05mm~1mm程度である。化粧料包装体10の厚みは、端部等の薄い部分で0.1mm~2mm程度であり、厚い部分は、収容する塗布体30の厚さに対応した厚さになる。
【0020】
化粧料包装体10における複数の収容部は、化粧料を収容する化粧料収容部11と、塗布体30を収容する塗布体収容部12とを含む。
【0021】
化粧料収容部11の大きさは、例えば、幅9mm~39mm、長さ10mm~50mm程度である、塗布体収容部12の大きさは、例えば、幅9mm~39mm、長さ40mm~100mm程度であるとする。
【0022】
化粧料包装体10の縁部のうち、化粧料収容部11を取り囲む縁部23,24は、剥離しづらい接着領域(強シール)で構成され、塗布体収容部12を取り囲む縁部25,26は、使用時に表面側シート21をめくれるように剥離可能なイージーピール(弱シール)で構成されている。
【0023】
化粧料収容部11で収容する化粧料は、皮膚表面の化粧等に好適に用いるものであって、例えば、粘度1000cps以上の粘性化粧品(30℃B型粘度計)以上の粘性化粧品であると好適である。化粧料収容部11に収容される化粧料の含有量は、例えば、重量0.001g~100g程度である。
【0024】
化粧料収容部11と塗布体収容部12との境界部分に、該化粧料収容部11への外圧によって、あるいは塗布体30を化粧料収容部11側へ移動させて接触させることによって、剥離可能なイージーピール13が設けられている。イージーピール13は、表面側と裏面側のシート21,22を接着する剥離可能な弱シールである仕切り用接着領域である。図示するイージーピール13は、直線形状の線分である例を示しているが、仕切り用のイージーピール13は、前方(
図1の下方)、後方(
図1の上方)、又は側方(
図1の手前側又奥側)に、凸状、凹状、屈曲、湾曲している形状であってもよい。
【0025】
塗布体収容部12には、塗布体30の取り出し方向Aとは異なる方向に延伸して両端から内側に突出する絞り部14,15が設けられている。異なる方向とは、
図3に示す取り出し方向Aと交差していればよく、本例においては取り出し方向Aと直交する方向に絞り部14,15が延伸している例を示している。また、2本の絞り部14,15の接着領域の延伸方向は、同じ方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
【0026】
絞り部14,15は、例えば、表面側と裏面側のシート21,22を接着する接着領域であり、少なくとも1つの絞り部14又は15は、剥離が難しい強シールの接着領域によって構成される。
【0027】
塗布体収容部12には、さらに、開口部イージーピール16が設けていてもよい。この開口部イージーピール16、塗布体30を安定的に塗布料収容部12内に収納しておくための位置決め及び動き規制用の剥離可能な接着領域である。このイージーピール16は、表面側シート21を裏面側シート22から剥がすことで、使用直前に剥離される。
【0028】
また、化粧料包装体の収容部11,12の外側の端部に、流通時の括り用あるいは販売時の吊り下げ用の穴部17を設けてもよい。
【0029】
図2を参照して、本実施形態の塗布体30は、塗布部31と、軸部32と、把持部33とを備えている。塗布部31は化粧料が付着する部位であり、軸部32は、棒状であって一端が塗布部31と連接とし、他端は、把持部33と連接している。把持部33は、使用者が取り出しや戻し動作の際に把持する部位であって、軸部32より幅広の形状であると好適である。
【0030】
図2では、塗布体30は、マスカラ塗布具である例を説明する。マスカラ塗布具を構成する塗布体30は、例えば、樹脂を一体成型することにより形成されている。樹脂材料としては熱可塑性樹脂を用いることが望ましく、例えばエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセテート、ナイロン等を用いることができる。あるいは、マスカラ塗布具を構成する塗布部31を、金属、ナイロン毛等複数の素材を組み合わせて構成してもよい。
【0031】
なお、
図2に示すマスカラ塗布具は、まつ毛用、眉毛用のどちらに適用してもよく、化粧料Mは、例えば、マスカラ液(マスカラ化粧料)に限られず、まつ毛用育毛剤(美容液)、マスカラ下地、まつ毛コーティング剤、まつ毛エクステ用コーティング剤、アイライナー液、およびマスカラとアイライナー兼用化粧料組成物等の複数用途に使用できる化粧料などであってもよい。
【0032】
軸部32の形状については、例えば、円柱状、楕円柱状、角柱状等を挙げることができる。軸部32の大きさについては、塗布を容易とするためには、好ましくは、長さ7mm~70mm、軸部の径(直径)1mm~7mmのものが用いられる。
【0033】
図2に示す例では、塗布部31は軸部32よりも幅が広い部分を有し、又は/及び、塗布部31は軸部32に対して傾斜し、且つ湾曲している。塗布部31の形状については、傾斜状に限られず、例えば、放射状、湾曲状、ヘラ状、その他専用の特殊形状であってもよい。例えば、湾曲する場合、塗布部31の長手方向Lcの長さは、例えば、15mm~40mm、特に16mm~28mmでありうる。さらに、塗布部31は軸部32に対して直線形状であってもよい。
【0034】
把持部33の形状は任意であり、例えば、円形、楕円形、四角形状、多角形状、ハート等である。把持部33を設ける場合、少なくとも軸部32より幅広であると好適であり、例えば、最も広い部分の幅が、例えば、2mm~20mmでありうる。
【0035】
図1及び
図3を参照して、塗布体30は、未使用時において、軸部32が、絞り部14,15に対向するように封入されている。また、塗布体30を、絞り部14,15を有する化粧料収容部の内部に入れた後に、密接して封入させることで移動を規制できる。
【0036】
絞り部14,15が、軸部32と対向していることで、未使用時に、塗布体30が、化粧料包装体10の中で移動することを規制する、即ち、塗布体30の姿勢を維持する。また、絞り部14,15は、両側から接着領域が延伸していることで、
図3中、左右の夫々の絞り部14,15に挟まれた間隔が狭まって絞り領域(絞り間隔)となっていることで、塗布部31に付着する量を規制するシゴキ部材として機能する。
【0037】
本例では、絞り部が2本の例を示しているが、絞り部の数を増やすほど、未使用時の塗布体30の移動規制機能が向上し、塗布部31への化粧料Mの付着を規制する量が多くなる。
【0038】
仕切り用のイージーピール13に近い側の第1段絞り部14は、例えば、接着領域は、幅1mm~5mm、延伸の長さは、3mm~7mm程度であり、中央の絞り間隔I1は5mm~15mmである。また、イージーピールから遠い側の第2段絞り部15は、接着領域は、幅1mm~5mm、延伸の長さは、5mm~10mm程度であり、中央の絞り間隔I2は3mm~10mmである。
【0039】
絞り部14,15は、塗布体30の取り出しの際に塗布部31と接触して塗布体に付着する化粧料の量を調整する。
【0040】
そして、複数の絞り部14,15を設けることで、塗布体30をA方向に取り出すときに、取り出し方向の傾きを規制しながら、塗布部31に付着する化粧料の量を規制することができる。
【0041】
より詳しくは、複数の絞り部14,15を設ける場合、仕切り用のイージーピール13に近い、第1段絞り部14の接着領域の延伸距離が短く、塗布体収容部12の絞り間隔(中空距離)が広くなるように形成されていると好適である。即ち、幅狭の領域である絞り間隔I1、I2の関係は、I1>I2であると好適である。
【0042】
また、絞り間隔I1の両端である第1段絞り部14の両先端は直線状であり、絞り間隔I2の両端である第2段絞り部15の両先端は丸みを帯びている。
【0043】
このように構成することで、絞り間隔I1に塗布部31が進入する際に、第1段絞り部14の角部を有する端部によって、塗布部31に過剰に付着した化粧料が一定量に削ぎ落とされる。そして、さらに狭い絞り間隔I2に塗布部31が進入する際に、第2段絞り部15の丸みを帯びた端部に塗布部31が接触することで、付着量を徐々に調整し、所望のマスカラ量を塗布部31に付着させる。
【0044】
<取り出し動作>
図4は、塗布体30を化粧料包装体10から取り出す動作説明図である。
図5は、塗布体30を化粧料包装体10から取り出す動作フローチャートである。
【0045】
S101において、使用者が指で化粧料収容部11を押圧することによる化粧料収容部11への外圧により、仕切り用のイージーピール13を破壊する(
図4(a)⇒(b))。この動作により、化粧料収容部11内の化粧料Mが、塗布体収容部12の側へ移動し、化粧料Mを塗布部31に付着させる。
【0046】
なお、
図4では、化粧料収容部11への外圧により、仕切り用のイージーピール13を破壊する例を示したが、表面側シート21の把持部側を第2段絞り部15の手前まで先にめくり、塗布体30を化粧料収容部11側へ仕切り用のイージーピール13を破壊して移動させて、塗布部31へ化粧料Mを付着させてもよい。
【0047】
S102において、塗布体側の端部の表面側シート21をめくることで、塗布体30の把持部側のイージーピール16を破壊する。
【0048】
S103において、塗布体30の取り出しを開始する。
【0049】
S104において、塗布体30の取り出しが進むことで、塗布体30の塗布部31と一対の第1段絞り部14の接着領域の中央側の端部とが接触する。これにより、第1段絞り部14によって、塗布部31に過剰に付着した化粧料の量が規制される(
図4(b)⇒(c))。
【0050】
S105において、塗布体30の取り出しがさらに進むことで、塗布体30の塗布部31と第2段絞り部15とが接触する(
図4(c)⇒(d))。これにより、第1段絞り部14の中央側端部と、第2段絞り部15の中央側の端部と、塗布体30の塗布部31とが同時に接触し始め、塗布体30の取り出し方向Aにおける向きの傾きが調整され、塗布部31に過剰に付着した化粧料の量が規制される。
【0051】
S106において、塗布体30の塗布部31と第1段絞り部14とが接触が解消される(
図4(d)⇒(e))。これにより、塗布体30の取り出し方向Aにおける向きの傾きの規制が解除されるため、使用者は、目視により、塗布部31に対する化粧料Mの付着量を調整するように、把持部33の傾き方向を調整又は把持部33を横方向に移動することで、第2段絞り部15への押し付け量を調整することができる。
【0052】
S107において、塗布体30の塗布部31と第2段絞り部15とが接触が解消される。これにより、第2段絞り部15による化粧料の量の規制が終了する。使用者は塗布部31に対する化粧料の過不足がないか確認し、付着量に過不足があるは、
図4(b)の位置まで戻し、塗布体や取り出し・戻し動作や、
図5(e)での絞り部14,15への押し付けを繰り返して付着量を所望の量に到達させたら、使用者は、まつ毛に化粧料を付着させる。
【0053】
なお、例えば化粧料の付着量が1回の塗布動作で不足してより濃く付着させたい場合、あるいは、仕上がりを考慮して、一度の塗布動作で大量に塗布せず、2度づけ3度づけを前提として付着動作を行う場合は、化粧料収容部11内に化粧料が存在する範囲で、上記の動作を繰り返す。
【0054】
なお、
図4では、取り出し方向に対して、ほぼ真っ直ぐに取り出す例を説明したが、しぼり部の絞り間隔I
1,I
2が、塗布体の塗布部31の最大幅よりも狭く構成されていた場合、真っ直ぐには引き出せないため、取り出しの際に、軸部を適宜傾けながら取り出す。このように絞り間隔I
1,I
2が、塗布体30の塗布部31の最大幅よりも狭く構成されていた場合は、S101で強く外圧を掛けたとしても、塗布体の把持部まで中味が移行するのを防ぐことができる。
【0055】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の塗布体が封入された状態の化粧料包装体を示す。包装体は第1実施形態と同様である。
【0056】
本実施形態における塗布体30Aには、把持部が設けられていない。本実施形態の塗布体30Aを用いる場合は、使用者は、軸部32Aを把持する。
【0057】
本実施形態では、把持部33が設けられないので、その分、塗布体30Aの全長を短くすることができ、化粧料包装体10をよりコンパクトにすることができる。
【0058】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の塗布体が封入された状態の化粧料包装体を示す。包装体の形状は第1実施形態と同様である。
【0059】
図7(a)に示す本実施形態において、塗布体30Bは、目元用塗布具の塗布体、又は肌用塗布具の塗布体である。本実施形態において、化粧料収容部11に収容される化粧料Cは目元用化粧料であるアイシャドーもしくはアイライナー、または肌用化粧料であるコンシーラー、ファンデーションもしくは美容液等である。
【0060】
図7(b)に示すように、塗布体30の塗布部31Bは、表面がフロッキー(細毛)34で覆われる構成であってもよい。塗布部31Bをフロッキー34で覆うことで、使用者が目元用塗布具又は肌用塗布具の塗布体である塗布体30Cを用いて塗布を行う際に、肌への刺激を少なく、肌あたりを良くしたり、化粧料の付着量を調節することができる。
【0061】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の塗布体が封入された状態の化粧料包装体を示す。包装体の形状は第1実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態において、塗布体30Dは、リップ用塗布具(唇用塗布具)である。
図8において化粧料収容部11に収容される化粧料LGは、液体口紅、グロス、又は唇用美容液等である。
【0063】
上述の実施形態では、マスカラ塗布具、肌部分用塗布具、リップ用塗布具について説明したが、本願の化粧料包装体に適用可能な塗布体は、他の化粧料の塗布具であってもよい。
【0064】
例えば、包装体に適用される例として、塗布体は、髪用マスカラ塗布具であり、化粧料は髪用の、部分カラーリング液、又はスタイリング剤であってもよい。髪用の場合は、化粧料包装体のサイズを上記寸法よりも、大きく設定してもよい。
【0065】
あるいは、他の例として、塗布体30は、爪用塗布具であり、化粧料は、ネイルエナメル、ジェルネイル、又はネイルケア剤であってもよい。
【0066】
以上説明したように、本発明の実施形態の係る化粧料包装体において、外部から塗布部の形状を視認可能で、塗布部に対する化粧料の付着量を微調整することができる。
【0067】
なお、上記例では、絞り部14,15は、剥離不能な接着部材で構成する例を説明したが、絞り部14,15のいずれか一方の接着領域をイージーピールで構成してもよい。絞り部の1つをイージーピールで構成することで、例えば、適用する化粧料の粘性が高く塗布体30が取り出しにくいことが想定される場合に、塗布体を引き出す際に絞り部のシールが剥がれることで、低抗が殆ど無く、幅狭のしぼり領域に引っかかることなく引き出せる。
【0068】
絞り部を形成する接着領域の1つを剥離可能にするか、すべてを剥離不能にするかは、収容する化粧料の粘度や、化粧の用途に適した塗布部への付着量に応じて、構成を適宜設定すると好適である。
【0069】
また、上記の例では、絞り部の数が2つの例を説明したが、絞り部の数は、収容する化粧料の粘度や、化粧の用途に適した塗布部への付着量に応じて、1本又は3本以上であってもよい。
【0070】
また、例えば、仕切り用のイージーピール13の外側を強シール部にして、弱シール部の領域幅を、塗布体収容部の内幅よりも狭くし、化粧料が塗布体側に流れ出ず、強シール部がシゴキ機能を有するような構造にしてもよい。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0072】
10 化粧料包装体
11 化粧料収容部
12 塗布体収容部
13 イージーピール(仕切り用)
14 絞り部(第1段絞り部)
15 絞り部(第2段絞り部)
16 イージーピール(位置決め用)
21 表面側シート
22 裏面側シート
23,24 縁部(強シール)
25,26 縁部(弱シール)
30 塗布体(マスカラ塗布具)
30A 塗布体(マスカラ塗布具)
30B 塗布体(目元用塗布具、肌用塗布具)
30C 塗布体(目元用塗布具、肌用塗布具)
30D 塗布体(リップ塗布具、唇用塗布具)
31,31B,31D 塗布部
32,32A 軸部
33 把持部
34 フロッキー
I1 絞り間隔
I2 絞り間隔
M 化粧料(マスカラ液)
C 化粧料(コンシーラ液)
L 化粧料(リップグロス)
Lc 塗布部長さ