(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20231002BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20231002BHJP
F16K 15/16 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
F16K31/06 305L
F16K31/06 305M
F16K31/06 385A
F16K1/00 A
F16K15/16 D
(21)【出願番号】P 2018135282
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴彦
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1860314(EP,A2)
【文献】特開2001-200949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K31/06,15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のコイルを含み、前記コイルの内周側に流路が形成されるソレノイドユニットと、
磁性体で構成される弁体部と、
前記ソレノイドユニットの端面のうち前記流路の流れ方向における下流側の端面に形成された弁座に向けて前記弁体部を付勢する板バネ部と、
前記ソレノイドユニット、前記弁体部及び前記板バネ部を収容するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記板バネ部を固定する板バネ固定部を含み、
前記板バネ部の一端側に前記弁体部が設けられ、前記板バネ部の他端側が前記板バネ固定部に固定され、前記弁体部と前記板バネ部とがリード弁を構成するとともに、
前記弁体部は
、前記コイルにより生じる電磁気力による吸着、および、前記板バネ部による付勢によって、前記弁座から離れて前記流路を開放する開弁状態から、前記弁座に着座して前記流路を閉塞する閉弁状態へと移行するように構成された、
電磁弁。
【請求項2】
前記板バネ固定部は、前記コイルの径方向において前記コイルの外側に設けられた、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記板バネ固定部は、前記コイルの径方向における外側に向かうにつれて前記ソレノイドユニットの前記弁座との前記コイルの軸方向における距離が大きくなるように傾斜する傾斜面を含み、
前記板バネ部は前記傾斜面に沿うように変形した状態で前記板バネ固定部に固定された、請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記弁体部と前記板バネ部とは、互いに異なる材料により構成された、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記弁体部の透磁率は、前記板バネ部の透磁率よりも大きい、請求項4に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記弁体部の厚さは、前記板バネ部の厚さより大きい、請求項4又は5に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記板バネ部は、環状部を含み、
前記環状部の内径は、前記弁座の外径より大きく
前記環状部は、前記弁体部を前記コイルと反対側に保持し、
前記弁座は、前記環状部の内周側で前記弁体部と当接可能に設けられた、請求項4乃至6の何れか1項に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記流路は、エンジンの冷却液が流れる流路であり、
前記ソレノイドユニットは、前記コイルの内周側に設けられた筒状のインナーヨークを含み、
前記弁座は、前記インナーヨークにおける前記流れ方向の下流側の端面に形成されており、
前記弁座の面積をS、前記流れ方向における前記
インナーヨークの中央位置での前記インナーヨークの断面積をQとすると、前記インナーヨークは、S<Qを満たすよう構成された、請求項1乃至7の何れか1項に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記ケーシングは、前記弁体部を挟んで前記コイルと反対側の位置に前記弁体部の移動量を規制する少なくとも一つの規制部を含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載の電磁弁。
【請求項10】
前記少なくとも一つの規制部は、前記コイルの周方向に間隔を空けて設けられた複数の規制部を含み、
前記規制部の各々は、前記弁体部に向けて突出するように設けられており、
前記規制部の各々における頂面は、前記板バネ部の基端との前記コイルの径方向の距離d2が大きくなるにつれて前記基端との前記コイルの軸方向の距離d3が大きくなるように傾斜しており、
前記規制部の各々における前記頂面は、同一平面内に設けられている、請求項9に記載の電磁弁。
【請求項11】
前記板バネ部は、環状部と、前記環状部から延在するアーム部とを含み、
前記ケーシングは、前記アーム部を収容するアーム収容部と、前記コイルの端子を収容する筒状の端子収容部と、を含み、
前記コイルの径方向における前記アーム収容部の外側端をP1、前記端子収容部の先端における前記端子収容部の断面中心をP2とすると、
前記コイルの軸方向視において、前記コイルの軸中心Oと前記外側端P1とを結ぶ線分L1と、前記軸中心Oと前記断面中心P2とを結ぶ線分L2とのなす角度θは、90度以下である、請求項1乃至10の何れか1項に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁弁として、特許文献1には、コイルの内周側を流体が流通するよう構成された電磁弁が開示されている。この電磁弁では、コイルにおける流体の流れ方向下流側の端面に弁座が形成されている。また、弁座の周方向一部に当接する支軸を中心に弁体が回動するよう構成されており、弁体は、ばねにより弁座に向けて付勢されている。
【0003】
かかる構成では、弁体を開弁方向に変位させると、弁体からコイルまでの離隔距離が短くなる位置と長くなる位置とが生ずることになる。このように、離隔距離が長くなる位置が存在するため、弁体を開いたときの流路面積を可及的に大きくすることが可能となる。また、弁体を開いた状態においてコイルに通電すると、それに伴いコイルから発生する電磁力が弁体において離隔距離が短くなる位置に到達しやすくなるので、電磁力で弁体を吸引する作用が強くなる。
【0004】
したがって、弁体を弁座の法線方向に直線的に変位させる構成と比較して、コイルが発生する電磁力により弁体を強く吸引することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電磁弁では、弁体を回動可能に支持する支軸とばねが必要であり、開閉に寄与する構造部品の部品点数が多く、コストが高くなりやすいという課題がある。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、開閉に寄与する構造部品の部品点数が少ない電磁弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る電磁弁は、
筒状のコイルを含み、コイルの内周側に流路が形成されるソレノイドユニットと、
弁体部と、
ソレノイドユニットの端面のうち流路の流れ方向における下流側の端面に形成された弁座に向けて弁体部を付勢する板バネ部と、
ソレノイドユニット、弁体部及び板バネ部を収容するケーシングと、
を備える。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の電磁弁において、
ケーシングは、板バネ部を固定する板バネ固定部を含み、
板バネ固定部は、コイルの径方向においてコイルの外側に設けられてもよい。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の電磁弁において、
板バネ固定部は、コイルの径方向における外側に向かうにつれてソレノイドユニットの弁座とのコイルの軸方向における距離が大きくなるように傾斜する傾斜面を含み、
板バネ部は傾斜面に沿うように変形した状態で板バネ固定部に固定されてもよい。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載の電磁弁において、
弁体部と板バネ部とは、互いに異なる材料により構成されてもよい。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の電磁弁において、
弁体部の透磁率は、板バネ部の透磁率よりも大きくてもよい。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載の電磁弁において、
弁体部の厚さは、板バネ部の厚さより大きくてもよい。
【0014】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れかに記載の電磁弁において、
板バネ部は、環状部を含み、
環状部の内径は、弁座の外径より大きく
環状部は、弁体部をコイルと反対側に保持し、
弁座は、環状部の内周側で弁体部と当接可能に設けられてもよい。
【0015】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載の電磁弁において、
前記流路は、エンジンの冷却液が流れる流路であり、
ソレノイドユニットは、コイルの内周側に設けられた筒状のインナーヨークを含み、
弁座は、インナーヨークにおける流れ方向の下流側の端面に形成されており、
弁座の面積をS、流れ方向におけるコイルの中央位置でのインナーヨークの断面積をQとすると、インナーヨークは、S<Qを満たすよう構成されてもよい。
【0016】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかに記載の電磁弁において、
ケーシングは、弁体部を挟んでコイルと反対側の位置に弁体部の移動量を規制する少なくとも一つの規制部を含んでもよい。
【0017】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の電磁弁において、
少なくとも一つの規制部は、コイルの周方向に間隔を空けて設けられた複数の規制部を含み、
規制部の各々は、弁体部に向けて突出するように設けられており、
規制部の各々における頂面は、板バネ部の基端とのコイルの径方向の距離d2が大きくなるにつれて基端とのコイルの軸方向の距離d3が大きくなるように傾斜しており、
規制部の各々における頂面は、同一平面内に設けられてもよい。
【0018】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかに記載の電磁弁において、
板バネ部は、環状部と、環状部から延在するアーム部とを含み、
ケーシングは、アーム部を収容するアーム収容部と、コイルの端子を収容する筒状の端子収容部と、を含み、
コイルの径方向におけるアーム収容部の外側端をP1、端子収容部の先端における断面中心をP2とすると、
コイルの軸方向視において、コイルの軸中心Oと外周端P1とを結ぶ線分L1と、軸中心Oと断面中心P2とを結ぶ線分L2とのなす角度θは、90度以下であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、開閉に寄与する構造部品の部品点数が少ない電磁弁が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係る電磁弁2の概略構成を模式的に示す断面図であり、電磁弁2の閉弁状態を示している。
【
図2】一実施形態に係る電磁弁2の概略構成を模式的に示す断面図であり、電磁弁2の開弁状態を示している。
【
図3】一実施形態に係る電磁弁2の概略構成を模式的に示す断面図であり、コイル10の端面14に板バネ固定部18を設ける場合を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る電磁弁2の外観形状を示す斜視図である。
【
図6】コイル10の軸方向視における、コイル10の軸中心Oと外周端P1とを結ぶ線分L1と、軸中心Oと断面中心P2とを結ぶ線分L2とのなす角度θを示す図である。
【
図8】
図4に示した電磁弁2の断面図であり、電磁弁2の閉弁状態を示している。
【
図9】
図4に示した電磁弁2の断面図であり、電磁弁2の開弁状態を示している。
【
図11】
図8に示した電磁弁2における板バネ固定部18の拡大断面図である。
【
図12】
図8に示した電磁弁2における弁座16と弁体部20との当接部近傍の拡大断面図である。
【
図13】シート面積Sと、コイル10に電流を印加した際にリード弁6が吸引される吸引力Fとの関係を、高温時と常温時について示した図である。
【
図14】Bg
2S、S、及びBgの各々について、インナーヨーク32の外径との関係を示した図である。
【
図15】コイル10の軸方向に沿って視たカバー26を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材料、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
図1は、一実施形態に係る電磁弁2の概略構成を模式的に示す断面図であり、電磁弁2の閉弁状態を示している。
図2は、
図1に示した電磁弁2の開弁状態を示している。なお、電磁弁2の用途は特に限定されないが、例えばエンジンの冷却液が流れる流路を開閉するために用いてもよい。
【0023】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2に示すように、電磁弁2は、ソレノイドユニット4、弁体部20、板バネ部22及びケーシング8を備える。
【0024】
ソレノイドユニット4は、筒状のコイル10を含み、コイル10の内周側に流路12が形成される。ソレノイドユニット4の端面14,15のうち流路12の流れ方向Jにおける下流側の端面14には、弁座16が形成される。以下では、「流れ方向Jにおける下流側」単に「下流側」と記載し、「流れ方向Jにおける上流側」を単に「上流側」と記載することとする。
【0025】
板バネ部22は、弁座16に向けて弁体部20を付勢するように構成されている。すなわち、弁体部20と板バネ部22とがリード弁6を構成する。弁体部20は磁性体で構成されており、コイル10に電流が印加されたときに生じる電磁気力によって弁体部20が弁座16に吸着する。電磁弁2は、弁体部20が弁座16に圧接されて流路12を閉塞すると閉弁状態となり、弁体部20が弁座16から離れて流路12を開放すると開弁状態となる。
【0026】
ケーシング8は、ソレノイドユニット4、弁体部20及び板バネ部22を収容する。
【0027】
かかる構成によれば、板バネ部22の弾性変形によって電磁弁2を開閉可能であるため、特許文献1に係る上述の従来構成と比較して、弁体を回動可能に支持する支軸が不要になるため、電磁弁2の開閉動作に寄与する構造部品の部品点数を少なくすることができ、電磁弁2の低コスト化を実現できる。
【0028】
また、特許文献1に係る従来構成では、弁体を回動可能に支持する支軸を受ける軸受を設ける必要があるため、支軸及び軸受の寸法精度のばらつきにより支軸と軸受との固着等が生じる恐れがあり、電磁弁の開閉動作を確実に行うことが困難になる可能性がある。
【0029】
これに対し、電磁弁2では、板バネ部22の弾性変形を利用して電磁弁2の開閉動作を行うため、特許文献1における支軸と軸受との固着の問題が生じず、開閉動作の確実性を高めることができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2に示すように、弁体部20と板バネ部22とは、互いに異なる材料により構成される。
【0031】
かかる構成によれば、板バネ部22のばね定数を板バネ部22の厚さ、長さ、幅及び材料等によって調整しつつ、コイル10に電流が印加されたときに弁体部20に生じるコイル10への吸引力を、弁体部20の厚さ、直径及び材料等によって調整することができる。したがって、電磁弁2の開弁状態と閉弁状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0032】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2に示す構成において、弁体部20の透磁率は、板バネ部22の透磁率よりも大きい。
【0033】
かかる構成によれば、適切なばね定数を実現するための板バネ部22の材料に係る設計自由度を確保しつつ、コイル10に電流が印加されたときにリード弁6の弁体部20にコイル10への強い吸引力を生じさせることができる。これにより、電磁弁2の開弁状態と閉弁状態とを適切に切り替えることが容易となる。なお、弁体部20及び板バネ部22の材料は特に限定されないが、例えば、弁体部20が鉄により形成され、板バネ部22がステンレス鋼により形成されてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば
図2に示すように、ケーシング8は、板バネ部22を固定する板バネ固定部18を含み、板バネ固定部18は、コイル10の径方向においてコイル10の外側に設けられる。図示する形態では、板バネ部22の一端側に弁体部20が設けられており、板バネ部22の他端側が板バネ固定部18に固定されている。以下では、「コイルの径方向」を単に「径方向」と記載することとする。
【0035】
かかる構成によれば、コイル10の端面14に板バネ固定部18を設ける場合(
図3参照)と比較して、板バネ部22の長さを確保してばね定数を小さくし、開弁状態と閉弁状態を適切に切り替えることができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、例えば
図2に示すように、弁体部20の厚さt1は、板バネ部22の厚さt2より大きい。
【0037】
かかる構成によれば、板バネ部22の厚さt2を相対的に薄くすることで板バネ部22の適切なばね定数を実現しつつ、弁体部20の厚さt1を相対的に厚くすることでコイル10に電流が印加されたときにリード弁6の弁体部20にコイル10への強い吸引力を生じさせることができる。これにより、電磁弁2の開弁状態と閉弁状態を適切に切り替えることが容易となる。
【0038】
また、一般的なリード弁は空気の流れの制御に用いられるが、上記リード弁6は、上述したように弁体部20にコイル10への強い吸引力を生じさせることができるため、エンジンの冷却液等の液体の流れの制御に好適に使用することができる。
【0039】
次に、上述した電磁弁2の具体的な構成例を示す。
図4は、一実施形態に係る電磁弁2の外観形状を示す斜視図である。
図5は、
図4に示した電磁弁2の分解図である。
図6は、コイル10の軸方向視における、コイル10の軸中心Oと外周端P1とを結ぶ線分L1と、軸中心Oと断面中心P2とを結ぶ線分L2とのなす角度θを示す図である。
図7は、
図5に示したリード弁6の分解図である。
図8は、
図4に示した電磁弁2の断面図であり、電磁弁2の閉弁状態を示している。
図9は、
図4に示した電磁弁2の断面図であり、電磁弁2の開弁状態を示している。
図10は、
図8及び
図9に示したソレノイドユニット4の分解図である。なお、以下で説明する電磁弁2の具体的な構成例について、
図1及び
図2を用いて説明した各構成と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、ケーシング8は、筒状のハウジング24と、ハウジング24に装着されるカバー26とを含む。
【0041】
例えば
図5及び
図7の少なくとも一方に示すように、リード弁6の板バネ部22は、環状部52と、環状部52から一方向に延在するアーム部54とを含む。アーム部54には、コイル10の軸方向に貫通する貫通孔55が形成されている。環状部52は、その周方向に間隔を空けて設けられた複数の爪部56を含み、複数の爪部56により円盤状の弁体部20を保持している。環状部52は、その周方向に120°間隔を空けて設けられた3つの爪部56を含み、爪部56の各々は、環状部52の外縁84から環状部52の厚さ方向に沿って延在する軸方向延在部86と、軸方向延在部86の先端側から径方向における内側へ延在する径方向延在部88とを含む。環状部52は、爪部56の各々をかしめることにより弁体部20を保持している。以下では、「コイル10の軸方向」を単に「軸方向」と記載することとする。
【0042】
例えば
図5及び
図8に示すように、ハウジング24は、ソレノイドユニット4を収容するソレノイドユニット収容部62と、ソレノイドユニット収容部62に対して下流側に隣接して設けられ、弁体部20を収容する弁体収容部64と、弁体収容部64から径方向における外側に突出して設けられ、アーム部54を収容するアーム収容部66とを含む。カバー26は、弁体収容部64及びアーム収容部66に篏合するよう構成されている。
【0043】
ソレノイドユニット4は、例えば
図8~
図10の少なくとも一図に示すように、筒状のボビン28とボビン28に巻かれたコイル10とを含むコイルユニット30と、ボビン28に挿通されてコイル10の内周側に設けられた筒状のインナーヨーク32と、コイル10の外周側に設けられたアウターヨーク34とを含む。インナーヨーク32及びアウターヨーク34は、コイル10に電流が印加されたときに磁路を形成する。
【0044】
インナーヨーク32は、コイル10の内周側に位置する円筒部36と、円筒部36の上流側端37から径方向における外側に向けて突出する円環状突出部38とを含む。ソレノイドユニット4の弁座16は、インナーヨーク32における下流側の端面14(円筒部36における下流側の端面14)に形成されている。円環状突出部38は、コイルユニット30の上流側の端面40に対向するように設けられる。アウターヨーク34は、コイルユニット30の下流側の端面42に対向するように設けられた円環状部44と、円環状部44の外縁46から上流側に延在するとともにコイル10の外周側に位置する一対の側面部48,50と、を含む。
図10に示すように、コイル10の周方向における側面部48と側面部50との間に形成された開口68からコイル10の端子70が露出する。
【0045】
なお、
図4及び
図5に示すように、ケーシング8のハウジング24は、コイル10の端子70を収容する筒状の端子収容部90を含む。端子収容部90は、ソレノイドユニット収容部62から径方向における外側に向かって突出するように設けられている。ここで、径方向におけるアーム収容部66の外側端をP1、端子収容部90の先端92における端子収容部90の断面中心をP2とすると、
図6に示すように、軸方向視において、コイル10の軸中心Oと外周端P1とを結ぶ線分L1と、軸中心Oと断面中心P2とを結ぶ線分L2とのなす角度θは、90度以下である。
【0046】
かかる構成によれば、
図4及び
図5に示すように、ケーシング8において外周側に突出するアーム収容部66と端子収容部90とが集約的に設けられるため、電磁弁2の大型化を抑制しつつ、上述したリード弁6による種々の効果を得ることができる。
【0047】
図11は、
図8に示した電磁弁2における板バネ固定部18の拡大断面図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図11に示すように、板バネ固定部18は、径方向における外側に向かうにつれてコイル10の下流側の端面58との軸方向における距離d1が大きくなるように傾斜する傾斜面60を含む。リード弁6の板バネ部22は、傾斜面60に沿うように変形した状態で板バネ固定部18に固定される。図示する例示的形態では、板バネ固定部18は、傾斜面60からカバー26に向かって軸方向に突出するとともに板バネ部22の貫通孔55に挿通される円柱状凸部72と、カバー26からハウジング24に向かって軸方向に突出するとともに円柱状凸部72の先端が挿入される筒状凸部74とを含む。板バネ部22のアーム部54は、筒状凸部74の先端と傾斜面60との間に挟まれて固定される。
【0048】
かかる構成によれば、リード弁6の板バネ部22が傾斜面60に沿うように変形した状態で板バネ固定部18に固定されているため、リード弁6の板バネ部22の弾性力によりリード弁6の弁体部20を弁座16に付勢することができる。
【0049】
図12は、
図8に示した電磁弁2における弁座16と弁体部20との当接部近傍の拡大断面図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図12に示すように、板バネ部22の環状部52は、弁体部20をコイル10と反対側に保持し、環状部52の内径r1は、弁座16の外径r2より大きい。
【0050】
かかる構成によれば、板バネ部22の環状部52が、弁体部20をコイル10と反対側に保持しているため、弁体部20を板バネ部22に固定するための固定部(
図5等に示した形態では爪部56)を弁体部20に対してコイル10と反対側に設けることができる。これにより、当該固定部とソレノイドユニット4との干渉(例えば
図5等に示す爪部56とアウターヨーク34との干渉)を回避することができる。また、環状部52の内径r1が弁座16の外径r2より大きいため、弁体部20を環状部52の内周側でソレノイドユニット4の弁座16と当接させることができる。図示する形態では、アウターヨーク34における下流側の端面90よりもインナーヨーク32が下流側に突出しているため、インナーヨーク32に形成された弁座16に環状部52の内周側で弁体部20を当接させることができる。
【0051】
図12に示すように、弁座16の面積(以下、「シート面積」という。)をS、流れ方向Jにおけるインナーヨーク32の中央位置Mでのインナーヨーク32の断面積をQとすると、インナーヨーク32は、S<Qを満たすように構成される。
【0052】
かかる構成により得られる効果について、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13は、シート面積Sと、コイル10に電流を印加した際にリード弁6が吸引される吸引力Fとの関係を、高温時と常温時について示した図である。また、弁座16の磁束密度をBgとすると、
図14は、Bg
2S、S、及びBgの各々について、インナーヨーク32の外径との関係を示した図である。なお、真空中の透磁率をμ
0とすると、吸引力Fは、F=(Bg
2S)/(2μ
0)で表される。
【0053】
図13に示すように、高温時において吸引力Fがピークとなるシート面積Sは、常温時において吸引力Fがピークとなるシート面積Sよりも小さい。また、常温時と比較すると高温時の方が吸引力Fが小さくなる。電磁弁2をエンジンの冷却液の流れの制御に使用する場合、電磁弁2は、基本的に高温環境下で使用される。よって、この場合には、好ましくは、シート面積Sを常温時において吸引力Fがピークとなるシート面積Sよりも小さくするとよい。さらに、より好ましくは、高温時において吸引力Fがピーク近傍となるようなシート面積Sを採用するとよい。これにより、安定して大きな吸引力Fを得ることができる(必要荷重よりも大きな吸引力Fを得ることが容易となる)。
【0054】
また、磁束密度Bgはインナーヨーク32の断面積Qに依存し、断面積Qが大きくなるほど磁束密度Bgも大きくなる。よって、シート面積Sをインナーヨーク32の断面積Qよりも小さくすることで、磁束密度Bgを低下させることなく、高温時により大きな吸引力Fを得ることができる。
【0055】
なお、
図14に示す領域では、インナーヨーク32の外径を小さくするほど、シート面積Sは小さくなり、磁束密度Bgの2乗は大きくなる。ここで、インナーヨーク32の外径を小さくしたときに、シート面積Sの減少分の影響よりも磁束密度Bgの2乗の増加分の影響の方が大きくなるため、吸引力Fも増加する。このため、
図13に示すように、シート面積Sが減少するにつれて吸引力Fが増加する領域が生じる。
【0056】
図15は、軸方向に沿って視たカバー26を示す図である。
図16は、板バネ固定部18の拡大断面図である。
【0057】
図15及び
図16の少なくとも一図に示すように、カバー26は、弁体部20を挟んでコイル10と反対側の位置に弁体部20の移動量を規制する少なくとも一つの規制部76を含む。図示する例示的形態では、カバー26はコイル10の周方向に間隔を空けて設けられた複数の規制部76を含む。規制部76の各々は、カバー26における弁体部20に対向する面78(カバー26の内側の面)から弁体部20に向けて突出するように設けられている。
図16に示すように、各規制部76の頂面80は、板バネ部22の基端82(アーム部54の基端)との径方向の距離d2が大きくなるにつれて該基端82との軸方向の距離d3が大きくなるように傾斜している。各規制部76の頂面80は、同一平面内に設けられている。
【0058】
かかる構成によれば、リード弁6を挟んでコイル10と反対側の位置にリード弁6の変形量を規制する規制部76が設けられているため、開弁状態における電磁弁2の流量を適切に制御することができる。
【0059】
また、リード弁6の基端82との径方向の距離d2が大きくなるにつれて該基端82との軸方向の距離d3が大きくなるように各頂面80が傾斜しており、各頂面80が同一平面U内に設けられているため、同一平面U内に設けられた複数の頂面80で開弁状態の弁体部20を安定的に支持することができる。これにより、開弁状態における電磁弁2の流量を適切に制御することができる。
【0060】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0061】
例えば、上述した幾つかの実施形態では、弁体部と板バネ部とが互いに異なる材料により構成されたリード弁を例示したが、他の実施形態では、弁体部と板バネ部とは同一の材料により一体的に構成されてもよい。
【0062】
また、上述した幾つかの実施形態では、板バネ部の環状部は、弁体部をコイルと反対側に保持するように構成されていたが、他の実施形態では、板バネは弁体部をコイル側に保持してもよい。
【符号の説明】
【0063】
2 電磁弁
4 ソレノイドユニット
6 リード弁
8 ケーシング
10 コイル
12 流路
14,15 端面
16 弁座
18 板バネ固定部
20 弁体部
22 板バネ部
32 インナーヨーク
52 環状部
60 傾斜面
76 規制部
80 頂面
82 基端