(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用電極板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231002BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H01L21/302 101L
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
(21)【出願番号】P 2019000604
(22)【出願日】2019-01-07
【審査請求日】2021-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】東 浩司
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】恩田 春香
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-245214(JP,A)
【文献】特開平11-104950(JP,A)
【文献】特開平9-289195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/3065
H01L21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板本体に、該電極板本体の厚さ方向に沿うストレート孔と、前記電極板本体の少なくとも一方の面に前記ストレート孔の端部に同軸で接続する面取り部と、を有するプラズマ処理装置用電極板の製造方法であって、
前記電極板本体の少なくとも一方の面に、該電極板本体の厚さ方向に向かって表面が徐々に縮径するテーパ形状の凹部を形成する凹部形成工程と、該凹部形成工程の後に前記凹部の最大開口径よりも小さい外径のドリルで前記凹部と同軸で前記電極板本体を厚さ方向に貫通する前記ストレート孔を形成するストレート孔形成工程と、を備え、
前記ストレート孔形成工程では、前記ドリルが前記凹部のテーパ形状の前記表面により前記凹部の中心に案内されて芯合わせがされて前記ストレート孔を形成し、且つ前記凹部の外周部を前記ストレート孔の端部に残して前記面取り部を形成し、前記ストレート孔を形成した後の前記面取り部の前記表面と前記ストレート孔の内周面の各算術平均粗さRaが0.8μm以下であることを特徴とするプラズマ処理装置用電極板の製造方法。
【請求項2】
電極板本体に、該電極板本体を厚さ方向に貫通する複数の通気孔を有し、該通気孔は、電極板本体の厚さ方向に沿うストレート孔と、前記電極板本体の少なくとも一方の面に前記ストレート孔の端部に同軸で接続
し徐々に縮径する面取り部と、を有し、
前記面取り部の最大開口径をDmm、前記ストレート孔の内径をdmmとしたとき、dが0.3mm以上0.8mm以下であり、D/dが3未満であり、さらに前記面取り部の表面と前記ストレート孔の内周面の各算術平均粗さRaが0.8μm以下であることを特徴とするプラズマ処理装置用電極板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置用電極板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスに使用されるプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等のプラズマ処理装置は、チャンバー内に、高周波電源に接続される上部電極と下部電極とが例えば上下方向に対向配置されている。下部電極は、その上に被処理基板を配置した状態とし、上部電極は、通気孔を有し、この通気孔からガスを被処理基板に向かって流通させながら高周波電圧を印加する。これにより、プラズマ処理装置は、プラズマを発生させ、被処理基板にエッチング等の処理を行う構成とされている。
【0003】
電極板に形成される通気孔は、被処理基板に対向する面に面取りを施すことにより、次のような効果のあることが知られている。即ち、面取り部を形成することにより、放電が通気孔の周縁に集中するのを防ぎ、電極の局所的な消耗を無くし、異物の脱落を抑制できる。また、ガスを拡散させることができ、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。更に、プラズマの一部がガスの流れに逆らって逆流し、冷却板の一部が損傷して汚染の生じることを抑制できる(例えば特許文献1~3参照)。
【0004】
電極板における通常の通気孔の加工方法は、ドリル、レーザ、ウォータージェットなどで、例えば直径0.5mmの孔加工を施した後、ラップ・ポリッシュ方法やバフ・ポリウレタンなどで表面を研磨しながら面取り加工する。或いは、ドリル、レーザ、ウォータージェットなどで孔加工を施した後、必要な面取りを、ドリル、レーザ、ウォータージェットなどで施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-289199号公報
【文献】特開2000-58510号公報
【文献】特開2013-183025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの面取り加工では、片側0.1mm以下の小さな面取りは可能となるが、0.1mmを超える面取りは困難である。また、縦断面で面取り部が曲面に仕上げられるR面取りは可能であるが、面取り部が直線状の傾斜面となるC面取り加工や、面取りの大きさ制御が、困難となる。
また、C面取り加工には、例えば工具の軸心を中心とする回転円錐面上に切れ刃を形成した、いわゆる面取りカッターを用いることが多いが、従来の面取り加工では、最初にドリルによりストレート孔を貫通形成し、次いで、ストレート孔の周縁を、面取りカッターにより面取り加工する。この際、面取りカッターは、ストレート孔の中心に対して自身の中心位置を合わせることが難しく、振れによる位置ずれが発生しやすい。その結果、面取り部の表面粗さが悪化する傾向にある。面取り部の表面粗さが悪化した電極板は、プラズマ処理装置で使用する際、パーティクルが発生する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、平滑な面取り部により、パーティクルの発生を抑制できるプラズマ処理装置用電極板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラズマ処理装置用電極板の製造方法は、電極板本体に、該電極板本体の厚さ方向に沿うストレート孔と、前記電極板本体の少なくとも一方の面に前記ストレート孔の端部に同軸で接続する面取り部と、を有するプラズマ処理装置用電極板の製造方法であって、前記電極板本体の少なくとも一方の面に、該電極板本体の厚さ方向に向かって表面が徐々に縮径するテーパ形状の凹部を形成する凹部形成工程と、該凹部形成工程の後に前記凹部の最大開口径よりも小さい外径のドリルで前記凹部と同軸で前記電極板本体を厚さ方向に貫通するストレート孔を形成するストレート孔形成工程と、を備え、前記ストレート孔形成工程では、前記ドリルが前記凹部のテーパ形状の前記表面により前記凹部の中心に案内されて芯合わせがされて前記ストレート孔を形成し、且つ前記凹部の外周部を前記ストレート孔の端部に残して前記面取り部を形成し、前記ストレート孔を形成した後の前記面取り部の前記表面と前記ストレート孔の内周面の各算術平均粗さRaが0.8μm以下である。
【0009】
このプラズマ処理装置用電極板の製造方法によれば、電極板本体の表面にまずテーパ形状の凹部を形成する。この凹部における内周面の一部分が、従来の面取り加工により形成していた面取り部となる。凹部の加工には、円錐状のドリルや、面取りカッター、皿揉み用のドリルなどを用いることができる。ドリルの他、レーザ、ウォータージェットなどで加工されてもよい。平坦な表面への加工であるので、平滑な表面に仕上げることができる。
次いで、凹部の底部にストレート孔を形成する。この孔あけ加工は通常のドリルを用いることができる。この場合、先に形成した凹部がいわゆる揉み付け穴となる。したがって、電極板本体に対するドリルの食いつきが向上し、位置ずれが発生しにくくなる。そのため、ドリルが振れて、先に形成した凹部の内面を傷つけることが少ない。その結果、凹部にドリルが案内されて、凹部の軸心に沿って正確にストレート孔を形成することができるとともに、先に形成しておいた凹部の外周部による面取り部が後のドリルによる孔あけ加工で傷つけられることがなく、平滑な面取り部とすることができる。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置用電極板は、電極板本体に、該電極板本体を厚さ方向に貫通する複数の通気孔を有し、該通気孔は、電極板本体の厚さ方向に沿うストレート孔と、前記電極板本体の少なくとも一方の面に前記ストレート孔の端部に同軸で接続し徐々に縮径する面取り部と、を有し、前記面取り部の最大開口径をDmm、前記ストレート孔の内径をdmmとしたとき、dが0.3mm以上0.8mm以下であり、D/dが3未満であり、さらに前記面取り部の表面と前記ストレート孔の内周面の各算術平均粗さRaが0.8μm以下である。
【0011】
このプラズマ処理装置用電極板は、面取り部を有する面をプラズマ面に向けて使用される。この面取り部の表面における算術平均粗さRaが0.8μm以下に設定されているので、パーティクルの発生を抑制することができる。面取り部の表面における算術平均粗さRaが0.8μmを超えていると、パーティクルの発生が多くなり、プラズマ処理品質が低下する。
【0013】
このプラズマ処理装置用電極板によれば、通気孔の内径に対して比較的小さな面取り部であるのが好ましく、D/dが3以上であると、通気孔を経由したガスの流れが不均一になり易い。ただし、D/dが小さすぎると、面取り部が小さくなりすぎることからプラズマが集中して異物が生じ易いので、実用上は1.5以上2.5以下とするのが好ましい。
【0015】
このプラズマ処理装置用電極板は、ストレート孔の内周面も算術平均粗さRaも0.8μm以下とすることにより、パーティクルの発生をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、面取り部が平滑でパーティクルの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のプラズマ処理装置用電極板の平面図である。
【
図2】
図1のプラズマ処理装置用電極板の要部断面図である。
【
図3】プラズマ処理装置用電極板の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の製造方法を工程順に示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のプラズマ処理装置用電極板及びその製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板10を示す平面図、
図2はその要部の断面図である。
【0019】
本実施形態の電極板10は、単結晶シリコン、柱状晶シリコン、又は多結晶シリコンにより、厚さ3mm以上15mm以下、直径200mm以上550mm以下の円板状に形成された電極板本体11に、数mm~10mmピッチで数百~1000個の通気孔20が例えば縦横に整列した状態で厚さ方向に平行に貫通するように形成されている。また、各通気孔20は、電極板本体11の厚さ方向に沿うストレート孔21と、ストレート孔21の両端部、つまり電極板本体11の両面に、通気孔20の両端部に接続され、該両端部をテーパ形状に広げた形状とする面取り部22とが形成されている。
【0020】
この面取り部22は、ストレート孔21と同軸に形成され、電極板本体11の表面から厚さ方向に進むにしたがって漸次縮径し、ストレート孔21と同一径となって接続する。この実施形態では、面取り部22はいわゆるC面取りであり、ストレート孔21の軸心Cを通る縦断面において、面取り部22の表面はストレート孔21の軸心Cに対して45°の角度で傾斜している。したがって、面取り部22において、ストレート孔21からの半径方向の広がり幅Wと、面取り部22の深さHとが同一寸法に形成される。ただし、面取り部22の傾斜角度は45°に限定されるものではない。
【0021】
ここで、ストレート孔21の内径をdmm、面取り部22の最大開口内径をDmmとしたとき、dが0.3mm以上0.8mm以下であり、D/dが3未満であるとよい。D/dが3以上であると、通気孔20を経由したガスの流れが不均一になり易い。ただし、D/dが小さすぎると、面取り部22が小さくなりすぎることからプラズマが集中して異物が生じ易いので、実用上はD/dを1.5以上2.5以下とするのが好ましい。なお、前述の半径方向の広がり幅W、面取り部の深さHとの関係では、W=H=(D-d)/2である。
【0022】
また、この面取り部22の表面は、算術平均粗さRaが0.4μm以上0.8μm以下に設定されている。ストレート孔21の内周面は、算術平均粗さRaが0.1μm以上0.8μm以下に設定されている。
この面取り部22は、実施形態では、電極板本体11の両面、つまり各通気孔20の両端部に形成されているが、少なくともプラズマ処理装置に取付けられたときに被処理基板と対向する面(プラズマ発生側の面)に設けられることが望ましい。
図2に示す実施形態では、通気孔20の両端部に同一形状、同一寸法の面取り部22が形成されている。
【0023】
次に、このプラズマ処理装置用電極板10の製造方法を説明する。
単結晶シリコン等からなるシリコンインゴットを円板状にスライスして電極板本体11を形成し(スライス工程)、スライス前のシリコンインゴット、又はスライス後の電極板本体11に必要に応じて熱処理を施した後、電極板本体11の表面に電極板本体11の厚さ方向に向かって徐々に縮径するテーパ形状の凹部25を形成し(凹部形成工程)、凹部25の最大開口径よりも小さい外径のドリルで凹部25と同軸で電極板本体11を厚さ方向に貫通するストレート孔21を形成する(ストレート孔形成工程)。
これら凹部形成工程及び通気孔形成工程について詳述する。
【0024】
(凹部形成工程)
凹部形成工程では、ドリル、レーザ、ウォータージェットなどが用いられるが、例えば
図4(a)に示すように、軸心C1を中心とする回転円錐面上に切れ刃を形成した面取り専用の工具(面取りカッター)30を用いることが可能である。この凹部25は、通気孔20が配置される位置にそれぞれ形成される。電極板本体11の両面に面取り部22を形成する場合は、
図4(b)に示すように、電極板本体11の両面に、表裏の凹部25が同一軸心C上に配置されるように形成する。
この凹部形成工程では、他の穴等が形成されていない電極板本体11の表面の平坦面に凹部25を形成する。このため、狙い通りの位置に、工具30の加工形状に合った凹部25を形成することができる。また、加工中の工具30の振れが生じないので、凹部25の表面を平滑に仕上げることができる。凹部25の表面の算術平均粗さRaは0.4μm以上0.8μm以下に形成される。
【0025】
(ストレート孔形成工程)
ストレート孔形成工程では、ドリル、レーザ、ウォータージェットなどが用いられる。ドリル31を用いる場合、凹部25の最大開口径よりも小さい外径のものが選択される。そして、
図4(b)に示すように、電極板本体11の一方の面から凹部25の軸心Cとドリル31の軸心C2を同軸に配置して、電極板本体11を厚さ方向に貫通することにより、ストレート孔21を形成する。この場合、凹部形成工程で形成した凹部25のすべてにストレート孔21を形成する。
【0026】
このストレート孔形成工程においてドリル31を用いる場合、電極板本体11の表面に形成されている凹部25の表面はテーパ形状に形成されているので、電極板本体11の一方の面からドリル31を当てると、
図4(c)に示すように、ドリル31の先端がテーパ形状の表面により凹部25の中心に案内されて、芯合わせがなされる。言い換えれば、先に形成した凹部25の底部がいわゆる揉み付け穴となる。
【0027】
したがって、電極板本体11に対するドリル31の食いつきが向上し、凹部25の軸心Cに対するドリル31の軸心C2の位置ずれが発生しにくくなる。そのため、ドリル31が振れて、先に形成した凹部25の内面を傷つけることが少ない。その結果、凹部25の軸心C2に沿って正確にストレート孔21を形成することができる。このストレート孔21の内周面の算術平均粗さRaは0.1μm以上0.8μm以下に形成される。
【0028】
そして、電極板本体11にストレート孔21が形成されると、先に形成しておいた凹部25の外周部がストレート孔21の端部に面取り部22として残される(
図2参照)。なお、電極板本体11の反対側の凹部25においても、ドリル31でストレート孔21を形成すると、凹部25の中心部にストレート孔21が貫通することにより、凹部25の外周部がストレート孔21の端部に面取り部22として残される。この電極板本体11の反対側の凹部25により形成される面取り部22も、工具(ドリル31)が接触しないので、平滑な表面に形成される。
このようにして、電極板本体11にストレート孔21を形成することにより、ストレート孔21の両端に面取り部22を有する通気孔20が形成される。
【0029】
その後、通気孔20を形成した電極板本体11をエッチングして、電極板本体11の表面及び通気孔20の内周面(ストレート孔21の内周面、面取り部22の表面)の加工によるダメージ層を除去し、電極板本体11の表裏面を研磨し、全体を洗浄して、電極板10が完成する。
【0030】
従来の製造方法では、ストレート孔を形成した後に、このストレート孔に位置合わせした状態で面取り部を形成しており、このため、面取り部を形成する際に、先に形成したストレート孔との間で振れによる位置ずれが生じ易い。これに対して、本実施形態の製造方法では、電極板本体11に先に凹部25を形成した後、その凹部25と同軸にストレート孔21を形成するので、凹部形成工程においては、平坦面に対する加工であることから位置ずれを生じ難く、ストレート孔形成工程では、先に形成した凹部25のテーパ形状の表面がガイドとなって、凹部25の軸心Cに沿って正確にストレート孔21を形成することができる。したがって、凹部25の軸心Cがストレート孔21の軸心であり、通気孔20の軸心となる。
【0031】
そして、ストレート孔21を形成した後に残る凹部25の外周部により面取り部22が形成され、この面取り部22の表面は加工工具(面取りカッター30やドリル31)の振れ等による傷つきが少ないので、表面粗さの小さい平滑面に形成される。算術平均粗さRaは0.4μm以上0.8μm以下に形成される。より小さい算術平均粗さRaを狙う場合は加工時間の大幅な増加による生産性の著しい低下、加工の出来栄えばらつきの発生、工具価格の上昇といった問題があり、算術平均粗さRa0.4μm未満を狙うのは困難となるため、実際は、算術平均粗さRa0.6μm程度を狙って加工される。
【0032】
このように面取り部22の表面の算術平均粗さRaが小さいので、この電極板10をプラズマ処理装置に取付ける際に、平滑な面取り部22をプラズマ側に向けることにより、パーティクルの発生を抑制することができる。この面取り部22の表面における算術平均粗さRaが0.8μmを超えていると、パーティクルの発生が多くなり、プラズマ処理品質が低下する。また、本実施形態ではストレート孔21の内周面も算術平均粗さRaが0.1μm以上0.8μm以下に形成されているので、ガスの流れが均一で高品質のプラズマ処理を施すことができる。
【0033】
なお、面取り部22は、上記実施形態ではストレート孔21の軸心Cを通る縦断面において直線状となる、C面取り形状としたが、円弧状の曲線により徐々に縮径する、いわゆるR面取り形状であってもよい。
【実施例】
【0034】
シリコン製電極板本体にストレート孔部分の直径が0.5mmの通気孔を形成する場合に、従来の方法(先にストレート孔を形成した後、面取りする方法)と、本実施形態の方法(先に凹部を形成した後、ストレート孔を形成する方法)との両方法にて、面取り部を有する通気孔を形成した。面取り部は一方の面のみに施した。
【0035】
ストレート孔の形成には、タングステン(W)の焼結材のドリルを用いた。加工条件(ドリルの回転数と送り速度)を変えることで、ストレート部の表面の算術平均粗さRaを変動させた。面取り部の形成には、タングステン(W)からなる円錐状の焼結材の表面にダイヤモンド粒子を電着したドリルを用いた。面取り部または凹部の形成については、従来の方法と本実施形態の方法を比較するためにも、加工条件は固定し、ドリル番手についても、凹部を形成した際に算術平均粗さRaが0.8μmを超えない程度になるドリルに固定した。この面取り用ドリルにて、最大開口径Dが0.8mm(W=0.15mm)、1mm(W=0.25mm)、1.2mm(W=0.35mm)、1.5mm(W=0.5mm)の45°傾斜のC面取り部を形成した。つまり、ストレート孔の直径に対して、面取り部の最大開口径が2倍、2.4倍、3倍となるように面取りした。
これらのストレート孔及び面取り部を加工した後、ストレート孔の内周面及び面取り部の表面の算術平均粗さRaを測定し、また、プラズマエッチング装置において所定時間プラズマエッチングしたときのパーティクル発生数を測定した。
【0036】
[算術平均粗さRa]
算術平均粗さRa(μm)は、測定された粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線とで囲まれた領域の面積の総和を求め、これを測定長さで除した値である。この粗さ曲線は、接触式測定装置によって測定した。直径0.5mmのストレート孔の内周面、面取り部の表面の測定については、測定箇所の孔を半分に切断し、その切断面の底部の測定を行った。そして、その測定箇所の長さを3等分し、加工入口部(電極板本体の表面に最も近い部分)、加工中間部、加工出口部(面取り部はストレート孔に最も近い部分)の計3箇所を測定し、その3つの中心平均粗さRaの平均値を比較した。
【0037】
[プラズマエッチング時のパーティクル数]
製作したそれぞれの電極板を面取り部加工面が下部となるようにプラズマエッチング装置に装着し、下部電極上にモニターウェーハを載置し、プラズマエッチング開始から1時間後のモニターウェーハ上のパーティクル数を測定した。このパーティクル数の測定は、パーティクルカウンター(株式会社トプコン製 ウェーハ表面検査装置WM-3000)を使用し、モニターウェーハ上をレーザ光により走査し、付着したパーティクルからの光散乱強度を測定することによりパーティクルの位置及び大きさを検出することにより行った。
【0038】
これらの結果を表1~4に示す。表1は面取り部の最大開口径が0.8mmの場合、表2は面取り部の最大開口径が1.0mmの場合、表3は面取り部の最大開口径が1.2mmの場合、表4は面取り部の最大開口径が1.5mmの場合である。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
これらの表からわかるように、凹部を先に形成した後、ストレート孔を形成する実施例の方法であると、面取り部及びストレート孔ともに、算術平均粗さRaが0.8μm以下の平滑な表面が得られた。そして、この実施例の電極板を用いてプラズマエッチング処理する際のパーティクル発生数も少なく、高品質のプラズマ処理が可能となることがわかる。
また、面取り部の最大開口径が1.5mm(D/dが3)である表4については、パーティクルの結果は、従来例・実施例ともに大きな差は無いものの、ガスの流れが不均一となった。
【0044】
なお、実施例では、ストレート孔を直径0.5mmとしたが、ストレート孔の直径が0.3mm~0.8mmの範囲であれば同様の結果(同じ程度のストレート部Raで、同じ程度のパーティクル数の結果)が得られることが知見できた。
また、実施例では、面取り用加工ドリルとして、凹部形成後の算術平均粗さRaが0.8μmを超えない程度となる番手のドリルにて加工を行ったが、算術平均粗さRaが0.4μm~0.8μmを超えない程度の狙い番手であれば、同様の結果(従来の方法では、面取り部Raが0.8μmを超え、本実施の方法では面取り部Raが0.8μm以下となり、パーティクル数にも差が表れる結果)が得られることが知見できた。
【符号の説明】
【0045】
10 プラズマ処理装置用電極板
11 電極板本体
20 通気孔
21 ストレート孔
22 面取り部
25 凹部