(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】かつらの自動植毛方法、かつら自動植毛機及び機械植えかつら用材
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20231002BHJP
D05C 15/02 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
A41G3/00 H
A41G3/00 N
D05C15/02
(21)【出願番号】P 2019013286
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】597092152
【氏名又は名称】保知 宏
(73)【特許権者】
【識別番号】519033915
【氏名又は名称】鶯ベンチャーコンサルティング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078949
【氏名又は名称】浅野 勝美
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 光浩
(72)【発明者】
【氏名】保知 宏
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-219667(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1235051(KR,B1)
【文献】特開2014-077208(JP,A)
【文献】特開2005-264376(JP,A)
【文献】特開平10-053911(JP,A)
【文献】米国特許第03903903(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00- 5/02
D05C15/00-15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
張設される
緯と経とからなるネット地の植毛面に対して直交
する方向に
往復動するニードルが上記ネット地の目に挿入され
るステップと、
次いで
上記ネット地の懸架される回動軸が回動されて上記植毛面
の位置が
変動され
るステップと、
次いで上記ニードルが
上記植毛面の位置が変動される際、緯を1箇掬って上記ネット地の目に挿入された状態で上記植毛面に沿って
移動する前進動作
のステップと、
次いで上記ニードルがニードルの進行方向に対し直交
する方向に供給されているヘア材を係止
するステップと、
次いで上記ニードルがヘア材を係止した状態で上記目を通って
移動する後退動作
のステップと、
次いで上記ニードルが上方動作をして上記目を通ったヘア材を持ち上げ、これにより該ヘア材にループが形成され
るステップと、
次いで上記ニードルが上記ループに挿入された状態でさらに前進動作して上記ヘア材の他の部分を係止した後、後退動作することにより上記ヘア材の他の部分が上記ループに挿入され
るステップと、
次いで上記ニードルが上記ヘア材の他の部分を上記ループに挿入した状態で後退動作し続け、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜
くステップと、
上記ヘア材の他の部分が上記ループに挿入され、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜く動作によりヘア材を上記ネット地の緯に結び付け
るステップと、
同一のニードルにて上記
各ステップを順次繰り返すことにより、扁平面状のネット地にヘア材を植毛することを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項2】
請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が当初垂直状態であり、水平方向に移動するニードルが上記目に挿入されて1箇の緯を掬い上げた後、上記植毛面が回動されて水平方向になることを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項3】
請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が当初水平状態であり、垂直方向に移動するニードルが上記目に挿入されて1箇の緯を掬い上げた後、上記ニードルが90°回動することを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項4】
請求項2記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し直角に位置することを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項5】
請求項2記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し鈍角に位置することを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項6】
請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記ニードルがネット地の目に挿入された後、若干後退動作をすることを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項7】
請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記ニードルが上方動作をする際、1回転することを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一記載のかつら自動植毛方法において、上記ニードルがネット地に対し水平方向に複数個設けられることを特徴とするかつらの自動植毛方法。
【請求項9】
水平方向の軸に緯と経とからなるネット地が張設され
該軸が正逆方向に回動する回動軸と、
上記回動軸の周面に形成される扁平の植毛面形成部と、
上記植毛面形成部に対し直交
する方向に往復動するニードルとを備え、
上記回動軸は、
水平方向への回動時に上記植毛面形成部の位置が垂直方向に若干変動され、上記ニードルが上記ネット地の目に挿入された状態で回動されることにより植毛面形成部を水平方向の面としたとき該ニードルに単一の緯が掬い上げられる構成からなり、
上記ニードルは、
上記植毛面形成部が垂直方向の面のとき
上記ネット地に向かって移動する前進動作
をして上記ネット地の目に挿入され、
植毛面形成部が水平方向なったときさらに前進動作しヘア材を係止し、該ヘア材を係止した状態で上記目を通って
上記ネット地とは反対方向に移動する後退動作
をし、
次いで上方動作によりヘア材にループを形成させ、
該ループに挿入された状態でさらに前進動作してヘア材の他の部分を係止した後、後退動作して上記ヘア材の他の部分を上記ループに挿入させ、
該ヘア材の他の部分が上記ループに挿入された状態で後退動作し続け、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜くことによりヘア材を上記ネット地の緯に結び付け、
上記回動軸
の垂直方向への変動動作及び
同一のニードル
による上記前進動作、上記後退動作を順次繰返すことにより扁平面状の
上記ネット地にヘア材を植毛することを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項10】
請求項
9記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が当初の垂直状態の位置から、水平方向に移動するニードルが
上記ネット地の目に挿入された後、回動されて水平方向の位置になることを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項11】
請求項
9記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が当初水平方向に位置された状態にて、垂直方向に移動するニードルが
上記ネット地の目に挿入され、その後上記ニードルが90°回動することを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項12】
請求項
9記載のかつら自動植毛機において、上記回動軸が中空のシリンダからなることを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項13】
請求項
12記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が上記回動軸の弦に沿って形成されることを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項14】
請求項
10記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が水平方向に移動するニードルに対し直角に位置することを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項15】
請求項
10記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が水平方向に移動するニードルに対し鈍角に位置することを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項16】
請求項
9記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルが回転可能であることを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項17】
請求項
9記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルがネット地の目に挿入された後、若干後退動作をすることを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項18】
請求項
9乃至請求項
17のいずれか一記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルが複数設けられることを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項19】
請求項18の記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルの移動方向に対し直交
する方向に移動するフックが設けられ、該フックにより上記ヘア材が供給されることを特徴とするかつら自動植毛機。
【請求項20】
緯と経とからなるネット地からなる扁平に形成されたベースと、該ベースに対し直交
する方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、
該ヘア材が
上記ベースの目に挿入された上記ニードルにより係止され、
上記ニードルがヘア材を係止した状態で後退動作をした後、形成されたループにループ端部以外の他の部分が
同一のニードルに
より再係止され、
上記他の部分が上記ループに
同一のニードルにより挿入され、
上記他の部分が上記ループに挿入された状態で上記目から上記ヘア材が引き抜かれ
、
上記ヘア材の他の部分が上記ループに挿入され、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜く動作によりヘア材が
上記ネット地の緯に結び付けられてなることを特徴とする機械植えかつら用材。
【請求項21】
請求項20記載の機械植えかつら用材において、上記ネット地に対し水平方向に複数設けられたニードルによりヘア材が上記ネット地に同時に植毛されることを特徴とする機械植えかつら用材。
【請求項22】
請求項
20記載の機械植えかつら用材において、上記ネット地のx軸方向に複数の機械植えかつら用材が植毛されることを特徴とする機械植えかつら用材。
【請求項23】
請求項
20又は請求項
22記載の機械植えかつら用材において、上記ネット地のy軸方向に複数の機械植えかつら用材が植毛されることを特徴とする機械植えかつら用材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はかつらの自動植毛方法、かつら自動植毛機及び機械植えかつら用材に関する。
【背景技術】
【0002】
かつらはユーザの頭部に合わせて手植え植毛(ハンドメイド植毛といわれる)されるのが一般的である。
【0003】
手植え植毛の場合、ユーザ(特定ユーザとなる)の頭部に合致させるため、ベースは三次元形状となる。この場合、次のようなデメリットが生ずる。まず手植えに際しては、職人が利き手を左右に回転させて植毛するため、植毛に多大の手間と時間を要し、また熟練を要する。例えば、2万本のヘア材が植毛されるかつらを製造するためには、手間のかかる植毛作業を1万回繰り返さなければならず、2~3週間位かかっていた。ヘア材が植毛されるネット地の目は1mm2未満の微小面積しかないため、植毛作業が技術と根気の要るものとなっていた。
【0004】
ハンドメイド植毛はこのように熟練した技術が必要な根気のいる作業であり、熟練作業のためコストアップの要因となり、また熟練者不足や未熟者の作業により品質の低下や精度のばら付きが生じている。
【0005】
ハンドメイド植毛では、技術の習得のため3月間位の多大の訓練期間を要し、また技術を習得した者の定職率が悪くこれもコストアップの要因となっている。
【0006】
最近では国内製造が困難なため、低コストの海外へ製造が流失しており、これが品質の均一性、安定性にマイナスともなっている。
【0007】
品質面からみれば、根気の要る集中作業のため、職人の裁量や体調等より品質面が安定せず、また生産量も安定しないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、上記背景に鑑み、かつら製造の完全機械化をするものであり、かつら製品の均質性、安定性、迅速製造性を図ることを目的とする。またこれにより、かつら製品のコスト低減をも図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のため、本願発明によるかつらの自動植毛方法は、張設される緯と経とからなるネット地の植毛面に対して直交する方向に往復動するニードルが上記ネット地の目に挿入されるステップと、次いで上記ネット地の懸架される回動軸が回動されて上記植毛面の位置が変動されるステップと、次いで上記ニードルが上記植毛面の位置が変動される際、緯を1箇掬って上記ネット地の目に挿入された状態で上記植毛面に沿って移動する前進動作のステップと、次いで上記ニードルがニードルの進行方向に対し直交する方向に供給されているヘア材を係止するステップと、次いで上記ニードルがヘア材を係止した状態で上記目を通って移動する後退動作のステップと、次いで上記ニードルが上方動作をして上記目を通ったヘア材を持ち上げ、これにより該ヘア材にループが形成されるステップと、次いで上記ニードルが上記ループに挿入された状態でさらに前進動作して上記ヘア材の他の部分を係止した後、後退動作することにより上記ヘア材の他の部分が上記ループに挿入されるステップと、次いで上記ニードルが上記ヘア材の他の部分を上記ループに挿入した状態で後退動作し続け、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜くステップと、上記ヘア材の他の部分が上記ループに挿入され、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜く動作によりヘア材を上記ネット地の緯に結び付けるステップと、同一のニードルにて上記各ステップを順次繰り返すことにより、扁平面状のネット地にヘア材を植毛することを特徴とする。
また請求項2による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が当初垂直状態であり、水平方向に移動するニードルが上記目に挿入されて1箇の緯を掬い上げた後、上記植毛面が回動されて水平方向になることを特徴とする。
また請求項3による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が当初水平状態であり、垂直方向に移動するニードルが上記目に挿入されて1箇の緯を掬い上げた後、上記ニードルが90°回動することを特徴とする。
また請求項4による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項2記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し直角に位置することを特徴とする。
また請求項5による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項2記載のかつらの自動植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し鈍角に位置することを特徴とする。
また請求項6による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記ニードルがネット地の目に挿入された後、若干後退動作をすることを特徴とする。
また請求項7による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項1記載のかつらの自動植毛方法において、上記ニードルが上方動作をする際、1回転することを特徴とする。
また請求項8による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項1乃至請求項7のいずれか一記載のかつら自動植毛方法において、上記ニードルがネット地に対し水平方向に複数個設けられることを特徴とする。
また本願発明によるかつら自動植毛機は、水平方向の軸に緯と経とからなるネット地が張設され該軸が正逆方向に回動する回動軸と、上記回動軸の周面に形成される扁平の植毛面形成部と、上記植毛面形成部に対し直交する方向に往復動するニードルとを備え、上記回動軸は、水平方向への回動時に上記植毛面形成部の位置が垂直方向に若干変動され、上記ニードルが上記ネット地の目に挿入された状態で回動されることにより植毛面形成部を水平方向の面としたとき該ニードルに単一の緯が掬い上げられる構成からなり、上記ニードルは、上記植毛面形成部が垂直方向の面のとき上記ネット地に向かって移動する前進動作をして上記ネット地の目に挿入され、植毛面形成部が水平方向なったときさらに前進動作しヘア材を係止し、該ヘア材を係止した状態で上記目を通って上記ネット地とは反対方向に移動する後退動作をし、次いで上方動作によりヘア材にループを形成させ、該ループに挿入された状態でさらに前進動作してヘア材の他の部分を係止した後、後退動作して上記ヘア材の他の部分を上記ループに挿入させ、該ヘア材の他の部分が上記ループに挿入された状態で後退動作し続け、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜くことによりヘア材を上記ネット地の緯に結び付け、上記回動軸の垂直方向への変動動作及び同一のニードルによる上記前進動作、上記後退動作を順次繰返すことにより扁平面状の上記ネット地にヘア材を植毛することを特徴とする。
また請求項10による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項9記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が当初の垂直状態の位置から、水平方向に移動するニードルが上記ネット地の目に挿入された後、回動されて水平方向の位置になることを特徴とする。
また請求項11による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項9記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が当初水平方向に位置された状態にて、垂直方向に移動するニードルが上記ネット地の目に挿入され、その後上記ニードルが90°回動することを特徴とする。
また請求項12による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項9記載のかつら自動植毛機において、上記回動軸が中空のシリンダからなることを特徴とする。
また請求項13による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項12記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が上記回動軸の弦に沿って形成されることを特徴とする。
また請求項14による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項10記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が水平方向に移動するニードルに対し直角に位置することを特徴とする。
また請求項15による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項10記載のかつら自動植毛機において、上記植毛面形成部が水平方向に移動するニードルに対し鈍角に位置することを特徴とする。
また請求項16による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項9記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルが回転可能であることを特徴とする。
また請求項17による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項9記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルがネット地の目に挿入された後、若干後退動作をすることを特徴とする。
また請求項18による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項9乃至請求項17のいずれか一記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルが複数設けられることを特徴とする。
また請求項19による本願発明によるかつら自動植毛機は、請求項18の記載のかつら自動植毛機において、上記ニードルの移動方向に対し直交する方向に移動するフックが設けられ、該フックにより上記ヘア材が供給されることを特徴とする。
また本願発明による機械植えかつら用材は、緯と経とからなるネット地からなる扁平に形成されたベースと、該ベースに対し直交する方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、該ヘア材が上記ベースの目に挿入された上記ニードルにより係止され、上記ニードルがヘア材を係止した状態で後退動作をした後、形成されたループにループ端部以外の他の部分が同一のニードルにより再係止され、上記他の部分が上記ループに同一のニードルにより挿入され、上記他の部分が上記ループに挿入された状態で上記目から上記ヘア材が引き抜かれ、上記ヘア材の他の部分が上記ループに挿入され、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜く動作によりヘア材が上記ネット地の緯に結び付けられてなることを特徴とする。
また請求項21による本願発明による機械植えかつら用材は、請求項20記載の機械植えかつら用材において、上記ネット地に対し水平方向に複数設けられたニードルによりヘア材が上記ネット地に同時に植毛されることを特徴とする。
また請求項22による本願発明による機械植えかつら用材は、請求項20記載の機械植えかつら用材において、上記ネット地のx軸方向に複数の機械植えかつら用材が植毛されることを特徴とする。
また請求項23による本願発明による機械植えかつら用材は、請求項20又は請求項22記載の機械植えかつら用材において、上記ネット地のy軸方向に複数の機械植えかつら用材が植毛されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によるかつらの自動植毛方法によれば、張設されるネット地の植毛面に対して直交方向に移動するニードルが上記ネット地の目に挿入され、次いで上記ニードルと上記植毛面とが相対的に回動され、次いで上記ニードルが目に挿入された状態で上記植毛面に沿って前進動作され、次いで上記ニードルがニードルの進行方向に対し直交方向に供給されているヘア材を係止し、次いで上記ニードルがヘア材を係止した状態で上記目を通って後退動作し、次いで上記ニードルが上方動作をして上記目を通ったヘア材を持ち上げ、これにより該ヘア材にループが形成され、次いで上記ニードルが上記ループに挿入された状態でさらに前進動作して上記ヘア材の他の部分を係止した後、後退動作することにより上記ヘア材の他の部分が上記ループに挿入され、次いで上記ニードルが上記ヘア材の他の部分を上記ループに挿入した状態で後退動作し続け、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜き、上記一連の動作によりヘア材を上記ネット地の緯に結び付け、上記ステップを順次繰り返すことにより、扁平面状のネット地にヘア材を植毛することができるから、かつら製品を均質に、安定的に、迅速に製造することができる。またこれにより、かつら製品のコスト低減をも図ることができる。
【0012】
また、本願発明によるかつら自動植毛機によれば、ネット地が張設され正逆方向に回動する回動軸と、上記回動軸の周面に形成される扁平の植毛面形成部と、上記植毛面形成部に対し直交方向に往復動するニードルとを備え、上記回動軸は、水平方向への回動時に上記植毛面形成部の位置が垂直方向に若干変動され、上記ニードルが上記ネット地の目に挿入された状態で回動されることにより植毛面形成部を水平方向の面としたとき該ニードルに単一の緯が掬い上げられる構成からなり、上記ニードルは、上記植毛面形成部が垂直方向の面のとき前進動作して上記ネット地の目に挿入され、植毛面形成部が水平方向なったときさらに前進動作しヘア材を係止し、該ヘア材を係止した状態で上記目を通って後退動作され、次いで上方動作によりヘア材にループを形成させ、該ループに挿入された状態でさらに前進動作してヘア材の他の部分を係止した後、後退動作して上記ヘア材の他の部分を上記ループに挿入させ、該ヘア材の他の部分が上記ループに挿入された状態で後退動作し続け、ループ状に曲げられたヘア材を上記目から引き抜くことによりヘア材を上記ネット地の緯に結び付け、上記回動軸及び上記ニードルはかかる動作を順次繰返すことにより扁平面状のネット地にヘア材を植毛することにより、かつら製造を完全に機械化することができる。よって、かつら製品の均質性、安定性、迅速製造性を図ることができ、またこれにより、かつら製品のコスト低減をも図ることができる。
【0013】
さらに本願発明による機械植えかつら用材によれば、ネット地からなる扁平に形成されたベースと、該ベースに対し直交方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、該ヘア材が上記ベースの目に挿入された上記ニードルにより係止され、ループ状に形成された後、ループ端部以外の他の部分が上記ニードルにより係止され、上記他の部分が上記ループに挿入され、上記他の部分が上記ループに挿入された状態で上記目から上記ヘア材が引き抜かれることにより、ヘア材がネット地の緯に結び付けられてなることにより、かつら製品の均質性、安定性、迅速製造性を図ることができ、またこれにより、かつら製品のコスト低減をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。
【
図2】(A)は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、(B)は(A)の次工程を示す図である。
【
図3】(A)は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図4】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。
【
図5】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。
【
図6】(A)は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図7】(A)は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図8】(A)は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図9】(A)は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図10】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。
【
図11】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。
【
図12】本願発明によるかつら自動植毛機の要部を示す斜視図である。
【
図13】(A)は本願発明による機械植えかつら用材を示す正面図、(B)は
図14(B)のXIII部拡大図である。
【
図14】(A)は
図13(A)のXIV部拡大図、(B)は(A)のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本願発明によるかつら自動植毛機1を
図12に示す実施の形態に基づき説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、
図3乃至
図12において、便宜上、ニードル7の箇数を一部省略(本実施例では6箇のところ3箇として表示)した。
図12に示すかつら自動植毛機1は中空のシリンダからなる回動軸3と、該回動軸3の周面に弦に沿って形成される扁平の植毛面形成部5と、当初垂直に位置する植毛面形成部5に対し直交方向に往復動するニードル7とを備えてなる。該ニードル7は回転可能かつ進退自在のホルダ8に支持されている。上記回動軸3にはベースとなるネット地11が張設される。9は水平方向に移動するニードル7に対し直交方向(垂直方向)に往復動するフックであり、図示しないストッカによりヘア材13を引き降ろす。なお、図示しないコントロールパネルにより、機体全体の設定調整を操作する。
【0016】
上記回動軸3は回動する主軸3aが偏心されていて、水平方向への回動時に上記植毛面形成部5の位置が垂直方向に若干d変動される。上記回動軸3の周面に弦に沿って形成される植毛面形成部5は、水平方向に移動するニードル7に対し当初直角に位置している。上記ニードル7は水平方向に次のように往復動する。即ち、ニードル7は植毛面形成部5が垂直面のとき前進動作して上記ネット地11の目17(
図3(B)に示す)に挿入され、植毛面形成部5が水平面になる際緯12aを1本掬ってさらに前進動作する(
図4)。このとき、即ちニードル7がネット地11の目17に挿入された状態で、上記回動軸3は植毛面形成部5を
図1に示す垂直面から
図3(A)に示す水平面に回動される。この回動により、植毛面形成部5が垂直方向に若干d(
図12に示す)降下されるので、上記ニードル7が植毛面6上の緯12aを1本掬い上げる。
【0017】
ニードル7は、
図5に示すように、ヘア材13を係止した後後退動作され(
図6)、ループ端部15となる部分を係止した状態で上昇動作する(
図7)。これにより、
図8に示すように、ヘア材13にループ14が形成される。ニードル7は、上記ループ14内に挿入された状態でさらに前進動作してヘア材13の他の部分13a(16)を係止し、該他の部分16を係止した状態で後退動作し、該他の部分16を上記ループ14内に挿入する(
図9)。ニードル7は他の部分16が上記ループ14内に挿入された状態で後退動作し続け、
図9から
図10に示すように、他の部分16をネット地11の目17から引き抜く。これにより、ヘア材13がネット地11の緯12aにしっかりと結び目19を形成して固着される(
図11)。ニードル7と回動軸3とは上記した一連の動作を順次繰返す。
【0018】
上記回動軸3には、上記動作をするニードル7が複数(本実施例では6本)設けられている。これにより、ネット地11のx軸方向(
図13に示す)に6個の機械植えかつら用材21が同時に植毛される。
【0019】
次にかつら自動植毛機1の動作を
図1乃至
図11に基づき、詳細に説明する。まず、
図1に示すように、ネット地11が垂直方向に張設されている植毛面6に対し、水平方向に移動するニードル7(
図12に示す)が前進動作され、
図2(A)に示すように、ネット地11の目17に挿入され、その後
図2(B)に示すように、若干後退動作して緯12aを拾う。
【0020】
次いで、回動軸3が回動される。これにより、
図3(A)に示すように植毛面6が水平方向となる。この回動により、植毛面形成部5が垂直方向に若干降下されるので、上記ニードル7が植毛面6上の緯12aを1本掬い上げる。(
図3(B))
【0021】
次いで、フック9(
図4に示す)にて図示しないストッカよりヘア材13が垂直方向に降下される。
【0022】
次いで上記ニードル7が目17に挿入された状態で水平の植毛面6に沿って前進動作され、前方に供給されているヘア材13を係止する(
図4、
図5)。
【0023】
次いで、上記ニードル7がヘア材13を係止した状態で上記目17を通って後退動作する(
図6(A)、(B))
【0024】
次いで、上記ニードル7が1回転し(
図7(B))、上昇動作をして上記目17を通ったヘア材13を持ち上げる(
図7(A))。これにより、上記ヘア材13が二股13a、13bに分かれ、ループ14が形成される(
図8(A)、(B))。
【0025】
次いで上記ニードル7は上記ループ14に挿入された状態でさらに前進動作し、90°回転された後、ヘア材13の二股に分れた一方13a即ち他の部分16を係止する(
図8(A)、(B))。
【0026】
次いで上記ニードル7は後退動作する。これにより、
図8から
図9に示すように、上記他の部分16は上記ループ14中に挿入される。
【0027】
次いで上記ニードル7は、上記他の部分16をループ14に挿入した状態で後退動作し続け、ループ状に曲げられたヘア材13を上記目17から引き抜く(
図10)。これにより、ヘア材13がネット地11の緯12aにしっかりと結び目19を形成して固着される(
図11、
図13(C))。
【0028】
上記ニードル7は回動軸3の植毛面形成部5に張設されているネット地11に対し、上記一連の動作を
図11に示すx軸方向に所定回数繰り返す。x軸方向への所定回数の植毛が終了すると、ネット地11が緯12a1本分y軸方向に移動され、次の緯12a‘に対し上記した一連の動作が繰り返される。
【0029】
かくして設定された植毛が終了すると、
図13に示す機械植えかつら用材21が完成する。
【0030】
次に
図13に基づき、本願発明による機械植えかつら用材21を説明する。植毛が完了した機械植えかつら用材21はネット地11の上に複数(図示例の場合は30個)形成される(
図13(A))。これらの機械植えかつら用材21は、ベース10となるネット地11の上に他のネット地20が固着され、各個に切離され、これによりかつら製品となる(
図14(A)、(B))。この他のネット地20が頭皮に装着される被装着面となる。この機械植えかつら用材21は、ネット地11の緯12a上に、確実にヘア材13が固着されている。ネット地11はポリアミド系合成繊維からなる緯12a及びポリアミド系合成繊維からなる経12bが織成されてなる。ベースは扁平の平面状に形成される。ネット地11を構成する緯12a、経12bの繊維の形状、太さは任意である。本実施例では断面形状が円形で、繊維径が緯12aが110μm、経12bが130μmのものを使用する。目17の大きさも任意である。本実施例では、各目17の短辺の長さは0.5mm、長辺の長さは略2倍の0.9mmに形成される。ヘア材13の植毛の仕方は任意である。例えば、連続する目17のすべての緯12aに連続してヘア材13を植毛してもよいし、断続的にヘア材13を植毛してもよい。
【0031】
このように構成された機械植毛かつら用材21は、平面状に形成されたまま、汎用性のある在庫品として保管される。そして需要に応じユーザの頭部形状に合うよう3次元形状にカスタマイズ化され、かつらとして使用される。
【0032】
上記実施の形態によれば、機械による自動植毛であるから、かつら用材21を迅速にかつ安定的に製造することができる。しかも製造されるかつら用材は均質であり、事実上不良品の発生を一掃することができる。本実施例では所定面積のネット地11に対し6個×5列=30箇のかつら用材を約6時間で製造するから、かつら用材の製造時間は1個当たり約12分となる。よって、同面積の植毛を従来10時間要していたとすると、従来に比し約50倍の生産効率となる。この製造時間は、所定面積のネット地11に対するかつら用材の個数設定により増加することは可能なので、さらなる短縮化が可能であり、コストの低減化も可能である。
【0033】
またかつら用材の完全機械化により、職人の人為的原因による不良を一掃することができ、製品の品質が安定化し、均質性も維持される効果がある。
【0034】
本願発明は上記実施の形態に限定されない。例えば、かつらの自動植毛方法について言えば、上記実施の形態とは反対に、植毛面6が当初水平状態とされ、ニードル7が目17に挿入されて1箇の緯12aを掬い上げた後、上記ニードル17の方を90°回動するようにしてもよい。また、植毛面の当初の位置は、直角だけでなく、鈍角にして植毛面をやや上向きにすることができる。さらに、ヘア材13のループ形成において、ニードル7の回転と上昇動作を同時にしてもよい。
【0035】
またかつら自動植毛機についても同様に、上記実施の形態とは反対に、植毛面6が当初水平状態とされ、ニードル7が目17に挿入されて1箇の緯12aを掬い上げた後、上記ニードル7を90°回動するようにしてもよい。また、植毛面の当初の位置は、直角だけでなく、鈍角にして植毛面をやや上向きにすることができる。
【0036】
さらに機械植えかつら用材21について言えば、ネット地11を構成する繊維又は/及びヘア材を任意に変更可能であるから、ユーザの好みに応じた多様なバリエーションとすることができる。
またネット地20は、これを付加せずにかつらとして使用することもできる。
ネット地11の構成は任意である。またネット地11を構成する緯12a又は/及び経12bの構成は任意である。またネット地11の目17のサイズも変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明はかつらに活用することができる。また部分かつらとしてかつらの一部分としても活用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 かつら自動植毛機
3 回動軸
3a 主軸
5 植毛面形成部
6 植毛面
7 ニードル
8 ホルダ
9 フック
10 ベース
11 ネット地
12a 緯
12b 経
13 ヘア材
13a ヘア材
13b ヘア材
14 ループ
15 ループ端部
16 他の部分
17 目
19 結び目
20 他のネット地
21 機械植えかつら用材