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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】被覆粒子
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20231002BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20231002BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20231002BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H01B5/00 M
H01B5/00 C
C08L101/02
C08K5/03
C08K5/101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019074908
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020173960
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成橋 智真
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-034045(JP,A)
【文献】特開2014-017213(JP,A)
【文献】特開2011-187332(JP,A)
【文献】特表2009-507336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
C08L 101/02
C08K 5/03
C08K 5/101
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の表面に金属皮膜が形成された金属被覆粒子と、該金属被覆粒子を被覆する絶縁層とを備え、
前記絶縁層が、同一の又は異なる架橋性モノマー成分をそれぞれ含む二種以上のポリマーを含み、
前記絶縁層は、前記架橋性モノマー成分の含有割合が20質量%超である第1ポリマーを含み且つ前記架橋性モノマー成分の含有割合が1質量%未満である第2ポリマーを含まない複数の第1絶縁性粒子と、該第2ポリマーを含み且つ該第1ポリマーを含まない複数の第2絶縁性粒子とを有する、被覆粒子。
【請求項2】
前記絶縁層に含まれる第1ポリマーと第2ポリマーとの質量比率が、第1ポリマー:第2ポリマー=50:50~99:1である、請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項3】
第1絶縁性粒子の平均粒子径が、第2絶縁性粒子の平均粒子径よりも大きい、請求項1又は2に記載の被覆粒子。
【請求項4】
芯材の表面に金属皮膜が形成された金属被覆粒子と、該金属被覆粒子を被覆する絶縁層とを備え、
前記絶縁層が、同一の又は異なる架橋性モノマー成分をそれぞれ含む二種以上のポリマーを含む皮膜であり、
前記各ポリマーは、前記架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なる、被覆粒子。
【請求項5】
前記皮膜の厚さの最大値が80nm以上3000nm以下であり、最小値が10nm以上120nm以下である、請求項4に記載の被覆粒子。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記架橋性モノマー成分の含有割合が20質量%超である第1ポリマーと、前記架橋性モノマー成分の含有割合が1質量%未満である第2ポリマーとを含む、請求項4又は5に記載の被覆粒子。
【請求項7】
前記絶縁層は、前記架橋性モノマー成分の含有割合が20質量%超50質量%未満である第1ポリマーを含む、請求項6に記載の被覆粒子。
【請求項8】
前記絶縁層は、前記架橋性モノマー成分の含有割合が0.1質量%以上1質量%未満である第2ポリマーを含む、請求項6又は7に記載の被覆粒子。
【請求項9】
芯材の表面に金属皮膜が形成された金属被覆粒子と、該金属被覆粒子を被覆する絶縁層とを備え、
前記絶縁層が、同一の又は異なる架橋性モノマー成分をそれぞれ含む二種以上のポリマーを含み、
前記各ポリマーは、前記架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なり、
前記絶縁層は、皮膜と、該皮膜に接触して配される複数の絶縁性粒子とを有する、被覆粒子。
【請求項10】
前記絶縁層は、前記架橋性モノマー成分の含有割合が20質量%超である第1ポリマーを含み且つ前記架橋性モノマー成分の含有割合が1質量%未満である第2ポリマーを含まない複数の前記絶縁性粒子と、該第2ポリマーを含み且つ該第1ポリマーを含まない前記皮膜とを有する、請求項9に記載の被覆粒子。
【請求項11】
前記絶縁層が、電荷を有する官能基を含む化合物を含有する、請求項1ないし10の何れか一項に記載の被覆粒子。
【請求項12】
前記官能基が、アンモニウム基又はホスホニウム基である、請求項11に記載の被覆粒子。
【請求項13】
前記架橋性モノマー成分のモノマーが、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種である、請求項1ないし12の何れか一項に記載の被覆粒子。
【請求項14】
前記ポリマーは、非架橋性モノマー成分を更に含み、
前記非架橋性モノマー成分のモノマーが、スチレン、o-,m-又はp-メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸フェニルから選ばれる少なくとも一種である、請求項1ないし13の何れか一項に記載の被覆粒子。
【請求項15】
前記金属が、ニッケル、金、ニッケル合金及び金合金から選ばれる少なくとも一種である、請求項1ないし14の何れか一項に記載の被覆粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子の表面にニッケルや金などの金属皮膜を形成させた導電性粒子は、導電性接着剤、異方性導電膜、異方性導電接着剤等の導電性材料として使用されている。
近年、電子機器類の一層の小型化に伴い、電子回路の回路幅やピッチはますます小さくなっている。それに伴い、上述の導電性材料に用いられる導電性粒子として、その粒径が小さなものが求められている。このような小さな粒径の導電性粒子を使用した場合、その接続性を高めるためには導電性材料中の導電性粒子の配合量を増加させなければならない。しかし、導電性粒子の配合量を増加させると、意図しない方向への導通、すなわち対向電極間とは異なる方向への導通によって短絡が生じてしまい、意図しない方向における絶縁性が得難いことが問題となっている。
【0003】
前記問題を解決するために、導電性粒子の表面を、絶縁性の物質で被覆して、導電性粒子の金属皮膜どうしの接触を防止した絶縁層被覆導電性粒子が提案されている。このような構成の被覆粒子は、通常、該被覆粒子を電極間で熱圧着することで絶縁性粒子が溶融、変形又は剥離して金属被覆粒子の金属表面が露出し、これにより電極間での導通が可能となるが、該絶縁性粒子の構成成分を検討することにより、導通信頼性などの特性を改良する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、接続信頼性を高めるために、絶縁性粒子を構成する架橋性の単量体の配合量を1~20重量%、かつ、軟化温度を60~220℃とした絶縁性粒子を被覆した被覆粒子が記載されている。
また特許文献2には、優れた耐溶剤性と導通信頼性を付与するために、導電性粒子の表面を、官能基及びこの官能基と反応し得る他の官能基を有する多官能性化合物を有する絶縁性樹脂層で被覆した被覆粒子が記載されている。
【0005】
特許文献3には、バインダー樹脂中での凝集を抑制するために、(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとを含む単量体組成物を重合させた架橋樹脂粒子を導電性粒子の表面に被覆した被覆粒子が記載されている。
また特許文献4には、架橋度が5重量%以上の絶縁性粒子を用い、かつ、この絶縁性粒子の粒子径を調整することにより大小の絶縁性粒子を被覆した被覆粒子が記載されている。この被覆粒子は、導通信頼性及び絶縁信頼性の双方を高めることできることが同文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2003/025955号パンフレット
【文献】特開2006-236759号公報
【文献】特開2012-62435号公報
【文献】国際公開2014/007237号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、各特許文献に記載の粒子のように、架橋性モノマーを絶縁性粒子の構成成分とした場合、架橋性モノマー成分の含有量の増加に起因して絶縁性粒子が硬くなりやすく、その結果、絶縁性粒子と金属被覆粒子との密着性に問題が生じ、所望の絶縁性が発現できない可能性があった。また、絶縁性粒子が過度に硬い場合、導電性粒子の製造時に絶縁性粒子が金属被覆粒子の表面を十分に被覆することができなかったり、電子回路の製造時に絶縁性粒子が金属被覆粒子の表面から意図せず脱落したりする可能性があった。その結果、電子回路の導通信頼性に問題が生じることがあった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、前記の従来技術の有する課題を解決できる被覆粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なるものとした二種以上のポリマーを含む絶縁層を用いた場合に、架橋性モノマーを絶縁性粒子の構成成分としたときであっても、導通信頼性を保ちつつ金属被覆粒子との密着性が高まることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、芯材の表面に金属皮膜が形成された金属被覆粒子と、該金属被覆粒子を被覆する絶縁層とを備え、
前記絶縁層が、同一の又は異なる架橋性モノマー成分をそれぞれ含む二種以上のポリマーを含み、
前記各ポリマーは、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なる、被覆粒子を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導通信頼性及び絶縁性に優れる被覆粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、被覆粒子の一実施形態を示す断面の模式図である。
図2図2(a)は、図1に示す被覆粒子の表面近傍の拡大模式図であり、図2(b)ないし(d)は、被覆粒子の別の実施形態における該粒子の表面近傍の拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の被覆粒子を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1に示すように、被覆粒子1は、芯材2の表面に金属皮膜3が形成された金属被覆粒子5と、金属被覆粒子5を被覆する絶縁層6とを備える。
【0014】
本発明に用いられる芯材の構成成分として、無機物及び有機物を特に制限なく用いることができる。芯材の形状は特に制限はないが、好ましくは粒子状である。粒子状の芯材の形状は、例えば、球状、繊維状、中空状、板状、針状、不定形状等が挙げられる。これらのうち、粒子の充填性及び芯材への金属皮膜の形成を効率よく行う観点から、好ましくは球状である。芯材は、その表面に複数の突起を有するものであってもよい。以下の説明では、芯材として、粒子状の芯材(芯材粒子)を用いた実施形態として説明する。
【0015】
芯材に用いられる無機物としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、パラジウム等の金属又はこれらの合金、ハンダ等の金属化合物、ガラス、セラミック、シリカ、金属又は非金属の酸化物の無水物又は含水物、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物及び炭素等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
芯材に用いられる有機物としては、例えば、天然繊維、天然樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブテン、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルニトリル、ポリアセタール、アイオノマー、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
これらのうち、芯材としては、有機物を用いることが好ましく、樹脂を用いることがより好ましく、熱可塑性樹脂を用いることが更に好ましい。このような材質からなる芯材を用いることによって、粒子どうしの分散安定性を高めることができ、また、電子回路の電気的接続の際に、適度な弾性を発現させて導通性を高めることができる。
【0018】
金属被覆粒子は、芯材の表面に金属皮膜が形成されたものである。金属皮膜は導電性を有しており、金属皮膜の形成によって、金属被覆粒子は導電性を有する粒子となっている。金属皮膜は、芯材粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆していてもよく、或いは、導電性が確保できる限りにおいて、芯材粒子の表面の一部のみを被覆していてもよい。前者の場合、金属被覆粒子は、芯材粒子の表面全域が金属によって完全に被覆されて、芯材粒子の表面が露出していない状態になっている。後者の場合、金属被覆粒子は、その表面が下地である芯材の構成成分からなる部位と、金属からなる部位とから構成される。金属皮膜が芯材粒子の表面の一部のみを被覆している場合、被覆部位が連続した皮膜であってもよく、海島状に不連続な皮膜であってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。また、金属皮膜は、単層構造であってもよく、複数層からなる積層構造であってもよく、又はこれらの構造の組み合わせであってもよい。金属皮膜の厚さは、好ましくは0.001μm以上2μm以下、更に好ましくは0.01μm以上1.5μm以下である。金属被覆粒子が後述する突起を有する場合、突起の高さは、ここでいう金属皮膜の厚さに含まないものとする。金属皮膜の厚さは、例えば測定対象の被覆粒子を2つに切断し、その切り口の断面をSEM観察して測定することができる。
【0019】
金属皮膜の形成に用いられる金属としては、例えば金、白金、銀、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、コバルト、インジウム、チタン、ゲルマニウム、アルミニウム、クロム、パラジウム、タングステン、モリブデン等の金属又はこれらの合金、ITO、ハンダ等の金属化合物等が挙げられる。これらの金属は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
これらのうち、導電時の電気抵抗を低くしつつ、後述する絶縁層との密着性を高める観点から、金属皮膜は、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム及びハンダから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、ニッケル、金、ニッケル合金及び金合金から選ばれる少なくとも一種を含むことが更に好ましい。同様の観点から、金属皮膜が、複数層からなる積層構造である場合には、該金属皮膜の最外層が、ニッケル、金、ニッケル合金及び金合金から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0021】
金属被覆粒子の形状は、芯材粒子の形状にもよるが、特に制限はない。金属被覆粒子の形状としては、例えば、球状、繊維状、中空状、板状、針状、不定形状等が挙げられる。これらのうち、充填性及び接続性を優れたものとする観点から、金属被覆粒子の形状は、球状であるか、又は表面に突起を有する形状であることが好ましい。金属被覆粒子が表面に突起を有する形状である場合、表面に複数の突起を有することが好ましく、球状の表面に複数の突起を有することが更に好ましい。金属被覆粒子が複数の突起を有する形状である場合、芯材粒子が複数の突起を有するものであってもよいし、芯材粒子が突起を有さず、金属皮膜が複数の突起を有するものであってもよい。
【0022】
金属被覆粒子がその表面に突起を有する場合、突起の高さは、好ましくは20nm以上500nm以下、更に好ましくは50nm以上400nm以下である。突起の数は、金属被覆粒子の粒径にもよるが、金属被覆粒子一つ当たり、好ましくは1個以上20000個以下、更に好ましくは5個以上5000個以下であることが、金属被覆粒子の導電性を一層向上させる点で有利である。また、突起の基部の長さは、好ましくは5nm以上500nm以下、更に好ましくは10nm以上400nm以下である。突起の基部の長さは、粒子の断面視における電子顕微鏡像を用いて測定したときに、突起が形成されている部位における金属被覆粒子の表面に沿う長さをいい、突起の高さは、突起の基部から突起頂点までの最短距離をいう。突起の基部の長さ及び突起の高さは、電子顕微鏡により観察された20個の異なる粒子について測定した算術平均値とする。
【0023】
絶縁層は、金属被覆粒子の表面を被覆している。つまり、本発明の被覆粒子は、芯材の表面に金属皮膜が形成されており、該金属皮膜の表面に絶縁層が形成されているものである。
【0024】
絶縁層は、絶縁性を有する二種以上のポリマーから構成されている。これらのポリマーは、同一の又は異なる架橋性モノマー成分をそれぞれ含んでおり、該ポリマーにおける架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なっている。「架橋性モノマー成分」とは、ポリマー中の後述する架橋性モノマーに由来する構造を指し、架橋性モノマーを含むモノマーを重合に供することによって、該モノマー成分を構成単位として含むポリマーが形成される。
【0025】
被覆粒子における絶縁層は、金属被覆粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆していてもよく、或いは金属被覆粒子の表面の一部のみを被覆していてもよい。前者の場合、金属被覆粒子は、金属皮膜の表面全域が絶縁層によって完全に被覆されて、金属被覆粒子の表面が露出していない状態になっている。後者の場合、金属被覆粒子は、その表面が下地である金属皮膜及び芯材の少なくとも一種からなる部位と、絶縁層からなる部位とから構成される。絶縁層が金属被覆粒子の表面の一部のみを被覆している場合、被覆部位が連続していてもよく、海島状に不連続に被覆していてもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0026】
詳細には、絶縁層6は、その形成態様として、例えば、(i)図1並びに図2(a)及び(b)に示すように、ポリマーを含む絶縁性粒子6aと、該ポリマーと異なるポリマーを含む絶縁性粒子6bとが金属皮膜の表面に層状に複数配置された形態、(ii)図2(c)に示すように、ポリマーを含む複数の絶縁性粒子6aと、該ポリマーと異なるポリマーを含む皮膜6c(以下、ポリマー皮膜6cともいう。)とが配された形態、又は(iii)図2(d)に示すように、二種以上のポリマーを含む皮膜6dである形態等が挙げられる。絶縁層に絶縁性粒子を含む場合、その形状としては、例えば球状、繊維状、中空状、板状、針状又は不定形状であり得る。また、絶縁性粒子はその表面に多数の突起を有するものであってもよい。金属被覆粒子への付着性及び絶縁性粒子の製造の容易性の観点から、絶縁性粒子は球状のものであることが好ましい。絶縁層が皮膜を有する場合、皮膜の厚みは均一であってもよく、不均一であってもよい。また、絶縁層における皮膜は、連続していてもよく、海島状に不連続であってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
絶縁層に含まれる架橋性モノマー成分は、ポリマーを形成する構造であって、後述する架橋性モノマーから誘導される成分である。絶縁層に含まれる架橋性ポリマー成分とは、構造中に二個以上の重合性エチレン性不飽和結合を有する化合物を用い、該化合物を含むモノマーの組成物を重合して得られる成分であって、該化合物に由来する構造を有することを指す。
【0028】
本発明における架橋性ポリマー成分としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等の二個以上の重合性エチレン性不飽和結合を有する化合物を架橋性モノマーとして含み、該化合物から誘導されるものを挙げることができる。これらは単独で又は二種以上含まれていてもよい。絶縁性粒子を構成するポリマーが複数種の架橋性ポリマー成分を含む場合、ポリマーにおける架橋性ポリマー成分の構成単位の存在態様は、コポリマーとして、ランダムであってもよく、交互であってもよく、ブロックであってもよい。
【0029】
これらのうち、ポリマー中における架橋性モノマー成分のモノマーが、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。つまり、架橋性モノマー成分は、上述した架橋性モノマーの少なくとも一種に由来するものであることが好ましい。このような架橋性モノマー成分を絶縁層に含有させることによって、被覆粒子における金属被覆粒子と絶縁層との密着性を高めて被覆粒子間の絶縁性を更に高めるとともに、被覆粒子を導電性材料として用いたときの導通信頼性を一層高めることができる。
【0030】
上述のとおり、絶縁層に含まれる二種以上のポリマーは、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なっている。詳細には、一方のポリマー(以下、これを「第1ポリマー」ともいう。)における架橋性モノマー成分の含有割合は、20質量%超50質量%未満であることが好ましく、22質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、24質量%以上36質量%以下であることが更に好ましい。また、他方のポリマー(以下、これを「第2ポリマー」ともいう。)における架橋性モノマー成分の含有割合は、第1ポリマーの架橋性モノマー成分の含有割合よりも低いことを条件として、0.1質量%以上1質量%未満であることが好ましく、0.500質量%以上0.990質量%以下であることがより好ましく、0.750質量%以上0.950質量%以下であることが更に好ましい。このような架橋性モノマー成分の含有割合となっていることによって、被覆粒子間の絶縁性と、被覆粒子を導電性材料として用いたときの導通信頼性とを両立して優れたものとすることができる。
【0031】
第1ポリマー及び第2ポリマーは、上述の架橋性モノマー成分の含有割合をそれぞれ満たすことを条件として、二種以上の架橋性モノマー成分を含んでいてもよい。この場合、ポリマー中の架橋性モノマー成分の含有割合は、架橋性モノマー成分の合計値に基づくものとする。これに加えて、第1ポリマー及び第2ポリマーは、後述する非架橋性モノマー成分を含んでいてもよい。
【0032】
絶縁層に含まれる第1ポリマーと第2ポリマーとの質量比率は、第1ポリマー:第2ポリマー=50:50~99:1であることが好ましく、60:40~98:2であることが更に好ましい。このような質量比率で絶縁層に第1ポリマー及び第2ポリマーが存在することによって、被覆粒子間の絶縁性と、被覆粒子を導電性材料として用いたときの導通信頼性とを両立して優れたものとすることができる。第1ポリマー及び第2ポリマーの質量比率は、例えば後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0033】
以上の構成を有する被覆粒子によれば、架橋性モノマー成分の含有割合が異なる二種以上のポリマーを絶縁層に含有することによって、被覆粒子どうしの分散性を高めることができる。また、被覆粒子を電子回路の電気接続に用いる異方性導電接着剤等の導電性材料に用いたときに、該導電性材料中の被覆粒子の配合量を増加させた場合でも、意図しない方向への導通を防いで短絡の発生を防いで、優れた絶縁性を発現することができる。更に、各ポリマーに含まれる架橋性モノマー成分の含有割合が異なっているので、架橋性モノマー成分を含むポリマーを一種のみ用いた場合と比較して、絶縁層は過度に硬くならず、適度な柔軟性を有しつつ、金属被覆粒子と絶縁層との密着性が高いものとなる。その結果、被覆粒子を含む導電性材料と電極とを熱圧着したときに、絶縁層が溶融、変形、剥離又は金属被覆粒子表面を移動し、熱圧着された部分における金属被覆粒子の金属皮膜表面が露出し、目的とする導通方向への導通を十分に確保でき、導通信頼性を高めることができる。また、被覆粒子における熱圧着方向以外の方向を向く表面部分は、絶縁性粒子による導電性粒子表面の被覆状態が概ね維持されているので、絶縁性が維持される。本発明の好適な態様によれば、被覆粒子間の絶縁性を更に高めるとともに、目的とする導通方向への導通信頼性を更に高めることができる。
【0034】
次に、被覆粒子における絶縁層の形成態様について詳細に説明する。上述のとおり、絶縁層は、(i)ポリマーを含む絶縁性粒子と、該ポリマーと異なるポリマーを含む絶縁性粒子とが金属皮膜の表面に層状に複数配置された形態であり得る。すなわち、本形態における被覆粒子は、異なるポリマーからなる二種以上の絶縁性粒子が金属被覆粒子の表面に複数存在することによって、絶縁層が形成されているものである。絶縁層がこのような構成であっても、本発明の効果は十分に奏される。
【0035】
異なるポリマーからなる二種以上の絶縁性粒子によって絶縁層を形成したときのポリマーの組み合わせとしては、例えば、(i-a)一方の絶縁性粒子が第1ポリマーのみから構成され、他方の絶縁性粒子が第2ポリマーのみから構成された組み合わせ、(i-b)一方の絶縁性粒子が第1ポリマーのみから構成され、他方の絶縁性粒子が第1及び第2ポリマーから構成された組み合わせ、(i-c)一方の絶縁性粒子が第1ポリマー及び第2ポリマーから構成され、他方の絶縁性粒子が第2ポリマーのみから構成された組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
これらのうち、絶縁層は、前記(i-a)の態様であることが好ましい。つまり、本形態における絶縁層は、第1ポリマーを含み且つ第2ポリマーを含まない第1絶縁性粒子と、第2ポリマーを含み且つ第1ポリマーを含まない第2絶縁性粒子とを有することが好ましい。このような構成とすることによって、金属被覆粒子と絶縁層との密着性を高くすることができ、被覆粒子を含む導電性材料と電極との圧着の際に、目的とする導通方向以外の方向への絶縁性を維持しつつ、目的とする導通方向への導通信頼性をより効果的に発現させることができる。また、第1絶縁性粒子及び第2絶縁性粒子の少なくとも一種には、架橋性モノマー成分を含まず、且つ後述する非架橋性モノマー成分のみからなる第3ポリマーが含まれていてもよい。また、第3ポリマーのみからなる他の絶縁性粒子が絶縁層に更に含まれていてもよい。
【0037】
図1に示すように、絶縁層を二種以上の絶縁性粒子で形成する場合、各絶縁性粒子は、金属被覆粒子の粒子径よりも小さいものである。また、各絶縁性粒子の粒子径は、図2(a)に示すように互いに異なっていてもよく、図2(b)に示すように互いに同じであってもよい。特に、第1ポリマーを含み且つ第2ポリマーを含まない第1絶縁性粒子の平均粒子径D1は、金属被覆粒子の平均粒子径D3よりも小さいことを前提として、第2ポリマーを含み且つ第1ポリマーを含まない第2絶縁性粒子の平均粒子径D2よりも大きいことが好ましい。絶縁性粒子の平均粒子径が互いに異なっていることによって、得られる被覆粒子を導電性材料として用いたときに、対向電極間とは異なる方向での短絡を発生させることなく、対向電極間での導通を効果的に発現できる。
【0038】
所望の方向への絶縁性と導通信頼性とを両立して優れたものとする観点から、第1ポリマーを含み且つ第2ポリマーを含まない第1絶縁性粒子の平均粒子径D1は、好ましくは80nm以上3000nm以下、更に好ましくは100nm以上2000nm以下である。同様の観点から、第2ポリマーを含み且つ第1ポリマーを含まない第2絶縁性粒子の平均粒子径D2は、好ましくは10nm以上120nm以下、更に好ましくは15nm以上80nm以下である。また同様の観点から、金属被覆粒子の平均粒子径D3は、好ましくは0.1μm以上50μm以下、更に好ましくは0.5μm以上30μm以下である。第3ポリマーを含む絶縁性粒子を含む場合、上述の第2絶縁性粒子の平均粒子径に関する説明が適宜適用される。
【0039】
上述した平均粒子径D1ないしD3は、走査型電子顕微鏡を用いて、測定対象の粒子を200個測定したときの粒子径の平均値である。走査型電子顕微鏡画像において測定対象の粒子が球状である場合、粒子径は、粒子の二次元投影像を横断する線分のうち最も大きい長さ(最大長さ)をいう。本形態における絶縁層の厚みは、異なるポリマーから形成された絶縁性粒子のうち、最も平均粒子径が大きい絶縁性粒子の平均粒子径を絶縁層の厚みとみなすことができる。
【0040】
上述した(i)の態様に代えて、被覆粒子1における絶縁層6は、図2(c)に示すように、(ii)ポリマーを含む複数の絶縁性粒子と、該ポリマーと異なるポリマーを含む皮膜とが配された形態であり得る。すなわち、本形態における被覆粒子1は、粒子状のポリマーである絶縁性粒子6aとポリマー皮膜6cとによって絶縁層6が形成されているものである。図2(c)に示すように、絶縁層6における絶縁性粒子6aとポリマー皮膜6cとの境界は明瞭である。絶縁層がこのような構成であっても、本発明の効果は十分に奏される。
【0041】
前記(ii)の絶縁層の形態としては、例えば、(ii-A)金属被覆粒子の表面がポリマー皮膜によって被覆され、ポリマー皮膜の表面に絶縁性粒子が複数配されている形態や、(ii-B)金属被覆粒子の表面に絶縁性粒子が複数配されて粒子層を形成し、該粒子層の表面にポリマー皮膜が配されている形態等が挙げられる。前記(ii-A)の場合、被覆粒子の最表面に配置されている絶縁性粒子は、ポリマー皮膜の表面上にのみ存在していてもよく、或いは、絶縁性粒子の一部又は全部がポリマー皮膜中に埋没していてもよく、これらの組み合わせであってもよい。被覆粒子の製造効率を向上させる観点から、前記(ii)の形態では、絶縁性粒子とポリマー皮膜とが接触して配されていることが好ましい。
【0042】
絶縁性粒子6aとポリマー皮膜6cとによって絶縁層を形成したときのポリマーの組み合わせとしては、例えば、(ii-a)絶縁性粒子が第1ポリマーのみから構成され、皮膜が第2ポリマーのみから構成された組み合わせ、(ii-b)絶縁性粒子が第1ポリマーのみから構成され、皮膜が第1ポリマー及び第2ポリマーから構成された組み合わせ、(ii-c)絶縁性粒子が第1ポリマー及び第2ポリマーから構成され、皮膜が第1ポリマーのみから構成された組み合わせ、(ii-d)絶縁性粒子が第1ポリマー及び第2ポリマーから構成され、皮膜が第2ポリマーのみから構成された組み合わせ、(ii-e)絶縁性粒子が第2ポリマーのみから構成され、皮膜が第1ポリマーのみから構成された組み合わせ、(ii-f)絶縁性粒子が第2ポリマーのみから構成され、皮膜が第1ポリマー及び第2ポリマーから構成された組み合わせ等が挙げられる。
【0043】
所望の方向への絶縁性と導通信頼性とを両立して優れたものとする観点から、本形態における絶縁層は、前記(ii-a)の形態であることが好ましい。つまり、絶縁層は、第1ポリマーを含み且つ第2ポリマーを含まない複数の絶縁性粒子と、第2ポリマーを含み且つ第1ポリマーを含まない連続皮膜とを有していることが好ましい。本形態における絶縁性粒子は、前記(i)の形態における第1絶縁性粒子に関する説明が適宜適用される。また、絶縁性粒子及び連続皮膜の少なくとも一方には、架橋性モノマー成分を含まず、且つ後述する非架橋性モノマー成分のみからなる第3ポリマーが含まれていてもよい。また、第3ポリマーのみからなる絶縁性粒子又は皮膜が絶縁層に更に含まれていてもよい。本形態における連続皮膜は、その厚みが均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0044】
同様の観点から、本形態における第2ポリマーを含み且つ第1ポリマーを含まない連続皮膜の厚みは、絶縁性粒子の平均粒子径D1よりも薄いことが好ましく、詳細には、より好ましくは10nm以上120nm以下、更に好ましくは15nm以上80nm以下である。連続皮膜の厚みが不均一である場合、連続皮膜の厚みは、その最大の厚みと最小の厚みとの双方が上述の範囲であればよい。本形態における絶縁層の厚みは、例えば、皮膜が形成された被覆粒子を2つに切断し、その切り口の断面をSEM観察する方法で測定することができる。
【0045】
上述した(i)及び(ii)の態様に代えて、図2(d)に示すように、被覆粒子1における絶縁層6は、(iii)二種以上のポリマーを含む連続皮膜6dであり得る。すなわち、本形態における絶縁層6は、第1ポリマーP1及び第2ポリマーP2を含む連続皮膜6dである。図2(d)に示す皮膜6dは、説明の便宜上、第1ポリマーP1及び第2ポリマーP2の境界が明瞭に表されているが、本形態の連続皮膜に含まれる各ポリマーは、その存在するポリマー間の境界が好ましくは不明瞭になっているものである。本形態において、各ポリマーは均一に相溶して存在していてもよく、皮膜中で各ポリマーの存在割合が異なる部位を有するように不均一に存在していてもよい。本形態における連続皮膜は、その厚みが均一であってもよく、不均一であってもよい。絶縁層がこのような構成であっても、本発明の効果は十分に奏される。
【0046】
所望の方向への絶縁性と導通信頼性とを両立して優れたものとする観点から、本形態における連続皮膜の厚みは、その最大値が、好ましくは80nm以上3000nm以下、更に好ましくは100nm以上2000nm以下であり、その最小値が、好ましくは10nm以上120nm以下、更に好ましくは15nm以上80nm以下である。本形態における絶縁層の厚みは、上述の(ii)の形態と同様の方法で測定することができる。また、本形態における絶縁層は、架橋性モノマー成分を含まず、且つ後述する非架橋性モノマー成分のみからなる第3ポリマーが更に含まれていてもよい。
【0047】
以下に、上述の各実施形態に共通して適用可能な事項について説明する。
【0048】
絶縁層の適度な柔軟性を発現させて、絶縁層と金属被覆粒子の密着性を高めて、絶縁性の確保と、熱圧着時の導通性とを両立させる観点から、絶縁層に含まれるポリマーは、架橋性モノマー成分が所定の含有割合であることに加えて、非架橋性モノマー成分を更に含むことが好ましい。非架橋性モノマー成分とは、ポリマー中の構造における、後述する非架橋性モノマーから誘導される成分である。絶縁層に含まれる非架橋性モノマー成分は、構造中に重合性エチレン性不飽和結合を一個のみ有する化合物を用い、該化合物を含むモノマー組成物を重合して得られる成分であって、該化合物に由来する構造を有することを指す。
【0049】
ポリマーを構成する非架橋性モノマー成分としては、スチレン類、オレフィン類、エステル類、α,β不飽和カルボン酸類、アミド類、ニトリル類などの化合物を非架橋性ポリマーとして用い、該化合物から誘導されるものが挙げられる。スチレン類としては、スチレン、o-,m-又はp-メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン等の核置換スチレンやα-メチルスチレン、α-クロロスチレン、β-クロロスチレンなどのスチレン誘導体等が挙げられる。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルベンゾエート等のビニルエステル、及び、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸のエステル等が挙げられる。α,β不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらα,β不飽和カルボン酸の塩もα,β不飽和カルボン酸類に含まれる。アミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。ニトリル類としては、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは更に置換されていてもよく、置換基としては、ホスホニウム基、アミノ基、第4級アンモニウム基、アミド基、スルホニウム基、スルホン酸基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、シアノ基、アルデヒド基、エステル基、カルボニル基等が挙げられる。これらの非架橋性モノマーは、単独で又は二種以上含まれていてもよい。
【0050】
絶縁層におけるポリマーの重合率を適度なものとして、絶縁層と金属被覆粒子との密着性を高めるとともに、球状の絶縁性粒子を効率よく生産可能にする観点から、非架橋性モノマー成分のモノマーが、スチレン、o-,m-又はp-メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸フェニルから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、荷電官能基を含む非架橋性モノマーで構成されることが更に好ましい。つまり、非架橋性モノマー成分は、上述した非架橋性モノマーの少なくとも一種に由来するものであることが好ましい。
【0051】
また絶縁層は、電荷を有する官能基(以下、「荷電官能基」ともいう。)を含む化合物に由来するものであることが好ましい。つまり、絶縁層は、荷電官能基を有するモノマー成分を含むことが好ましい。荷電官能基を含む化合物は、上述した架橋性モノマーであってもよく、非架橋性モノマーであってもよい。つまり、架橋性モノマー及び非架橋性モノマーの少なくとも一種が荷電官能基を有することが好ましい。
【0052】
絶縁層がこのようなモノマー成分を含むことによって、荷電官能基と金属被覆粒子表面における金属皮膜との相互作用によって、絶縁層と金属被覆粒子との密着性を高めて、絶縁層による被覆の度合いが十分な被覆粒子を製造できるとともに、金属被覆粒子からの絶縁層の意図しない剥離や脱落が効果的に防止される。その結果、目的とする導通方向以外の方向での絶縁性が更に向上する。これに加えて、荷電官能基が同じ電荷を有することによって、絶縁層を適切な厚みに形成することができるので、熱圧着に伴う導通不良が効果的に防止され、導通信頼性が更に向上する。特に、絶縁層に絶縁性粒子を含む場合、絶縁性粒子どうしが電気的に反発して、薄い絶縁層を形成しやすくすることができるので、導通信頼性が一層向上する。
【0053】
絶縁層が荷電官能基を有するモノマー成分を含む場合、荷電官能基は、絶縁層の界面に存在することが好ましく、絶縁層における金属被覆粒子の表面と接する面側に存在することが更に好ましい。また、荷電官能基は、絶縁層を構成するポリマー中に含有されていることが好ましく、該ポリマーを構成するモノマー成分に化学結合していることがより好ましく、該ポリマーを構成するモノマー成分の側鎖に結合していることが更に好ましい。荷電官能基が絶縁層の界面に存在するか否かは、荷電官能基を有する化合物を含む絶縁層を金属被覆粒子の表面に形成したときに、走査型電子顕微鏡観察によって絶縁層が金属被覆粒子の表面に付着しているか否かによって判断することができる。荷電官能基が絶縁層の界面に存在する場合、絶縁層は金属被覆粒子の表面に付着している。
【0054】
荷電官能基は、正又は負の電荷を有している官能基である。絶縁層に、荷電官能基を複数含む化合物を含むか、又は荷電官能基を含む化合物を複数用いる場合、これらの官能基は、互いに同一の電荷を有することが好ましい。
【0055】
正の電荷を有する官能基としては、例えば、ホスホニウム基、アンモニウム基、スルホニウム基等のオニウム系官能基や、アミノ基等が挙げられる。また負の電荷を有する官能基としては、例えばカルボキシ基、水酸基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。これらのうち、金属被覆粒子と絶縁層との密着性を高めて、所望の絶縁性と導通信頼性とを兼ね備えた被覆粒子とする観点から、荷電官能基は、正の電荷を有する官能基であることが好ましく、オニウム系官能基であることがより好ましく、アンモニウム基又はホスホニウム基であることが更に好ましく、ホスホニウム基であることが一層好ましい。
【0056】
オニウム系官能基は、下記一般式(1)で表されるものが好ましく挙げられる。
【化1】
(式中、Xはリン原子、窒素原子、又は硫黄原子であり、Rは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、又はアリール基である。nは、Xが窒素原子、リン原子の場合は1であり、Xが硫黄原子の場合は0である。*は結合手である。)
【0057】
例えば正の荷電を有する官能基に対する対イオンとしては、ハロゲン化物イオンが挙げられる。ハロゲン化物イオンの例としては、Cl、F、Br、Iが挙げられる。
【0058】
Rで表される直鎖状のアルキル基としては、例えば炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられる。
【0059】
Rで表される分岐鎖状のアルキル基としては、例えば炭素数3以上8以下の分岐鎖状アルキル基が挙げられ、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0060】
Rで表される環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基といったシクロアルキル基等が挙げられる。
【0061】
Rで表されるアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基等が挙げられる。
【0062】
Rは、炭素数1以上12以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1以上8以下のアルキル基であることが更に好ましい。また、Rが直鎖状アルキル基であることも更に好ましい。オニウム系官能基がこのような構成となっていることによって、絶縁層と金属被覆粒子との密着性を高めて絶縁性を確保するとともに、熱圧着時における導通信頼性を一層高めることができる。
【0063】
モノマーの入手及びポリマーの合成を容易にし、絶縁層の製造効率を高める観点から、絶縁層を構成するポリマーは、下記一般式(2)又は一般式(3)で表される構成単位を有することが好ましい。式(2)及び式(3)中のRの例としては、上述した一般式(1)中のRの官能基の説明が適宜適用される。荷電官能基は、式(2)のベンゼン環のCH基に対しパラ位、オルト位、メタ位の何れに結合していてもよく、パラ位に結合することが好ましい。式(2)及び式(3)中、一価のAnとしてはハロゲン化物イオンが好適に挙げられる。ハロゲン化物イオンの例としては、Cl、F、Br、Iが挙げられる。
【0064】
また、一般式(2)において、mは0以上2以下の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、1が特に好ましい。一般式(3)においてmは1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、2が最も好ましい。
【0065】
【化2】
(式中、X、R及びnは前記一般式(1)と同義である。mは0以上5以下の整数である。Anは一価のアニオンを示す。)
【0066】
【化3】
(式中、X、R及びnは前記一般式(1)と同義である。Anは一価のアニオンを示す。mは1以上5以下の整数である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
【0067】
荷電官能基を含む化合物としては、例えばオニウム系の官能基を有し且つエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。モノマーの入手及びポリマーの合成を容易にし、絶縁層の製造効率を高める観点から、荷電官能基を含む化合物は非架橋性モノマーであることが好ましい。
【0068】
オニウム系の官能基を有し且つエチレン性不飽和結合を有する非架橋性モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N,N-トリメチル-N-2-メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド等のアンモニウム基含有モノマー;メタクリル酸フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩等のスルホニウム基を有するモノマー;4-(ビニルベンジル)トリエチルホスホニウムクロライド、4-(ビニルベンジル)トリメチルホスホニウムクロライド、4-(ビニルベンジル)トリブチルホスホニウムクロライド、4-(ビニルベンジル)トリオクチルホスホニウムクロライド、4-(ビニルベンジル)トリフェニルホスホニウムクロライド、2-(メタクロイルオキシエチル)トリメチルホスホニウムクロライド、2-(メタクロイルオキシエチル)トリエチルホスホニウムクロライド、2-(メタクロイルオキシエチル)トリブチルホスホニウムクロライド、2-(メタクロイルオキシエチル)トリオクチルホスホニウムクロライド、2-(メタクロイルオキシエチル)トリフェニルホスホニウムクロライド等のホスホニウム基を有するモノマーなどが挙げられる。これらの非架橋性モノマーは、単独で又は二種以上含まれていてもよい。
【0069】
絶縁層を構成するポリマーにおいて、全構成単位中、荷電官能基が結合したモノマー成分の割合は、0.01モル%以上5.0モル%以下であることが好ましく、0.02モル%以上2.0モル%以下であることがより好ましい。ここで、ポリマー中のモノマー成分の数は、一つのエチレン性不飽和結合に由来する構造を一つのモノマーの構成単位としてカウントする。荷電官能基が架橋性モノマー及び非架橋性モノマーの双方に含まれる場合、モノマー成分の割合はその総量とする。
【0070】
絶縁層を構成するポリマーは、二種以上のモノマー成分を構成単位として含むコポリマーであり、該成分のうち少なくとも一種が構造中にエステル結合を有することも好ましい。これにより、ポリマーのガラス転移温度を好適に低いものとしやすく、特に、絶縁層を絶縁性粒子で形成したときに、該絶縁性粒子と導電性粒子との接触面積を高めて密着性を高めることができるとともに、被覆粒子間での絶縁性をより高いものとすることができる。上述のコポリマーとしては、例えば一種以上の架橋性モノマー成分と、一種以上の非架橋性モノマーとすることができる。
【0071】
構造中にエステル結合を有するモノマー成分としては、一個のエチレン性不飽和結合と、エステル結合とを構造中に併せ持つ非架橋性モノマーに由来するものが挙げられる。そのようなモノマーとしては、例えば、プロピオン酸ビニル、ビニルベンゾエート等のビニルエステルや(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸のエステル等が挙げられる。とりわけ構造中にエチレン性不飽和結合及びエステル結合を併せ持つ重合性化合物としては、その構造中に、-COOR又は-OCOR(R及びRはアルキル基)で表される基を有するものが好ましく、とりわけ、これらの基がHC=CH*、又はHC=C(CH)*(*は、上記の-COOR又は-OCORで表される基における結合手の結合先である)に結合した化合物が好ましい。R及びRとしては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数が1以上12以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましい。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
絶縁性粒子を構成するポリマーにおいて、全構成単位中、構造中にエステル結合を有する構成単位の割合は、絶縁性粒子のガラス転移温度を好適な範囲とする観点や、重合反応進行時に生成した絶縁性粒子が、熱によって溶融し反応容器の壁面に付着することなく取り出せる観点から0.1モル%以上30モル%以下であることが好ましく、1モル%以上25モル%以下であることがより好ましい。ここでいう構造中にエステル結合を有する構成単位の好ましい例は、例えば以下の一般式(4)で表される。
【0073】
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは-COOR又は-OCORで表される基である。)
【0074】
絶縁層のガラス転移温度は、芯材のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。このような構成とすることで、絶縁層と金属被覆粒子との密着性を高め、絶縁層を絶縁性粒子を含むものとしたときに、絶縁性粒子どうしの付着性を更に高めることができる。
【0075】
芯材として粒子状の有機物を用いる場合、ガラス転移温度を有しないか、或いは、そのガラス転移温度は100℃超であることが、異方導電接続工程において芯材粒子の形状が維持されやすいことや金属皮膜を形成する工程において芯材粒子の形状を維持しやすい点から好ましい。また芯材粒子がガラス転移温度を有する場合、ガラス転移温度は、200℃以下であることが、異方導電接続において導電性粒子が軟化しやすく接触面積が大きくなることで導通が取りやすくなる点から好ましい。この観点から、芯材粒子がガラス転移温度を有する場合、ガラス転移温度は、100℃超180℃以下であることがより好ましく、100℃超160℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0076】
芯材粒子として有機物を用いる場合において、その有機物が高度に架橋した樹脂であるときは、ガラス転移温度は下記実施例に記載の方法にて200℃まで測定を試みても、ほとんど観測されない。本明細書中ではこのような粒子を、ガラス転移点を有しない粒子ともいう。前記のこのようなガラス転移温度を有しない芯材粒子材料の具体例としては、前記で例示した有機物を構成する単量体に架橋性の単量体を併用して共重合させて得ることができる。
【0077】
同様の観点から、芯材がガラス転移温度を有する場合、絶縁層のガラス転移温度と芯材のガラス転移温度との差は、160℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。また、絶縁層のガラス転移温度と芯材のガラス転移温度との差は、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
【0078】
ガラス転移温度の測定方法は、例えば以下の方法が挙げられる。
示差走査熱量計「STAR SYSTEM」(METTLER TOLEDO社製)を用いて、試料0.04~0.06gを、200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで25℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度5℃/minで昇温し、熱量を測定した。ピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の高温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0079】
絶縁層に絶縁性粒子を含む場合、絶縁性粒子の粒度分布は幅がある。一般に、粉体の粒度分布の幅は、下記計算式(A)で示される変動係数(Coefficient of Variation、以下「C.V.」とも記載する)により表わされる。
C.V.(%)=(標準偏差/平均粒子径)×100・・・(A)
【0080】
このC.V.が大きいということは粒度分布に幅があることを示し、一方、C.V.が小さいということは粒度分布がシャープであることを示す。本実施形態の被覆粒子は、C.V.が好ましくは0.1%以上20%以下、より好ましくは0.5%以上19%以下の絶縁性粒子を用いることが望ましい。C.V.がこの範囲であることにより、絶縁性粒子を含む絶縁層の厚みを均一にできる利点がある。
【0081】
以下に、被覆粒子の好適な製造方法について説明する。本製造方法は、架橋性モノマーの含有割合が異なるモノマー組成物をそれぞれ重合させて、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なる二種以上のポリマーを形成し、これらのポリマーと金属被覆粒子とを混合して、金属被覆粒子表面に二種以上のポリマーを含む絶縁層を形成させる工程を有する。
【0082】
まず、芯材の表面に金属皮膜を形成して、金属被覆粒子とする。芯材の表面に金属皮膜を形成する方法としては、例えば、芯材粒子に対して、蒸着法、スパッタ法、メカノケミカル法、ハイブリダイゼーション法等を利用する乾式法、電解めっき法、無電解めっき法等を利用する湿式法が挙げられ、これらの方法は単独で又は複数組み合わせて行うことができる。これに代えて、金属被覆粒子は、市販のものを用いてもよい。
【0083】
また、上述の工程の前若しくは後、又は上述の工程と同時に、架橋性モノマーの含有割合が異なるモノマー組成物をそれぞれ重合させて、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なる二種以上のポリマーを形成する。架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なるポリマーをそれぞれ製造する場合には、例えば、架橋性モノマー成分の含有割合が20質量%超又は1質量%未満となるように、架橋性モノマーの含有割合を調整したモノマー組成物をそれぞれ作製し、該組成物をそれぞれ重合に供すればよい。
【0084】
また、絶縁層の所望の物性に応じて、モノマー組成物には、架橋性モノマー及び荷電官能基を有する架橋性モノマーの少なくとも一種に加えて、非架橋性モノマーや、荷電官能基を有する非架橋性モノマーを含むことも好ましい。このようなモノマー組成物とすることによって、形成される絶縁層の表面に、好ましくは絶縁性粒子の表面に荷電官能基を有するものを製造することができる。
【0085】
重合方法としては、例えば乳化重合、ソープフリー乳化重合、分散重合、懸濁重合等が挙げられる。これらのうち、単分散の粒子状のポリマーを界面活性剤を使用せずに効率良く得る観点から、ソープフリー乳化重合によって重合することが好ましい。ソープフリー乳化重合の場合、重合開始剤としては、水溶性開始剤が用いられる。重合は窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なるポリマーをそれぞれ形成するためには、重合に供される架橋性モノマーの含有割合を適宜調整することによって行うことができる。このような反応を行うことによって、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なる二種以上のポリマーが形成される。本工程によって得られる各ポリマーの形状は、好ましくは粒子状である。必要に応じて、本工程によって得られた各ポリマーは、篩分け、洗浄等の後工程を行ってもよい。以下の説明では、得られたポリマーの形状がともに粒子である場合として説明する。
【0086】
次に、上述の工程で得られた二種以上のポリマーと金属被覆粒子とを混合して、金属被覆粒子の表面に二種以上のポリマーを含む絶縁層を形成させる。上述のポリマーとして二種の絶縁性粒子を用いた場合、例えば、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なっている二種以上の絶縁性粒子と、金属被覆粒子とを混合して、金属被覆粒子の表面に二種以上の絶縁性粒子を含む絶縁層を形成させる。
【0087】
架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なっているポリマーとして、上述した第1ポリマー及び第2ポリマーを用いた場合、第1ポリマー及び第2ポリマーの質量比率は、仕込み量における質量比率として、第1ポリマー:第2ポリマー=30:70~99.5:0.5が好ましく、50:50~99:1が更に好ましい。この範囲であると、上述した第1ポリマー及び第2ポリマーの好適な質量比率を有する絶縁層を効率よく形成することができる。
【0088】
絶縁性粒子と金属被覆粒子との混合は、分散媒中にこれらの粒子を加えて分散液とすることが好ましい。分散媒としては、水、有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられ、水、エタノール、又はエタノールと水との混合液が好ましく用いられる。絶縁性粒子と金属被覆粒子との混合方法は特に制限はなく、例えば、絶縁性粒子及び金属被覆粒子のうち一方を分散媒に分散させて中間分散液とし、該中間分散液に他方の粒子を添加して、目的とする分散液を得てもよく、分散媒に双方の粒子を同時に混合して目的とする分散液を得てもよい。
【0089】
分散液は無機塩、有機塩又は有機酸を含有することが、絶縁層の被覆率が一定以上の被覆粒子を得やすい点から好ましい。無機塩、有機塩又は有機酸としては、陰イオンを解離するものが好適に用いられる。陰イオンとしては、Cl、F、Br、I、SO 2-、CO 2-、NO 、COO、RCOO(Rは有機基)等が好適である。無機塩としては、例えばNaCl、KCl、LiCl、MgCl、BaCl、NaF、KF、LiF、MgF、BaF、NaBr、KBr、LiBr、MgBr、BaBr、NaI、KI、LiI、MgI、BaI、NaSO、KSO、LiSO、MgSO、NaCO、NaHCO、KCO、KHCO、LiCO、LiHCO、MgCO、NaNO、KNO、LiNO、MgNO、BaNO等を用いることができる。また有機塩としては、シュウ酸Na、酢酸Na、クエン酸Na、酒石酸Na等を用いることができる。有機酸としてはグリシン等のアミノ酸や、コハク酸、シュウ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸等を用いることができる。
【0090】
好ましい無機塩、有機塩及び有機酸の濃度は、導電性粒子表面積において絶縁性粒子が占める被覆面積としてどの程度とするかにより異なるが、導電性粒子混合後の分散液中において、例えば、0.1mmol/L以上100mmol/L以下となる濃度であると、好適な被覆率を有し、また絶縁性粒子が単層である被覆粒子を得やすいために好ましい。この観点から、当該分散液中の無機塩、有機塩及び有機酸の濃度は1.0mmol/L以上80mmol/L以下であることが特に好ましい。
【0091】
絶縁性粒子と金属被覆粒子とを含む分散液において、金属被覆粒子は質量基準で100ppm以上100000ppm以下含有されていることが好ましく、500ppm以上80000ppm以下含有されていることがより好ましい。また、絶縁性粒子は、質量基準で10ppm以上50000ppm以下含有されていることが好ましく、250ppm以上30000以下含有されていることがより好ましい。絶縁性粒子として、上述した第1絶縁性粒子及び第2絶縁性粒子のように二種以上の粒子を用いる場合は、これらの質量の合計が上述した範囲であればよい。
【0092】
品質が一定な被覆粒子を得る観点から、分散液の温度は、絶縁性粒子と金属被覆粒子との混合時において、20℃以上100℃以下であることが好ましく、40℃以上100℃以下であることが更に好ましい。特に、最も低いガラス転移温度を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、分散液の温度は、Tg-30℃以上Tg+30℃以下であることが好ましい。この範囲であると、絶縁性粒子がその形状を維持しながら金属被覆粒子の表面に密着しやすくなる。特に、絶縁性粒子が荷電官能基を有する場合、金属被覆粒子との親和性をより一層高めることができるので、被覆率が十分に高い被覆粒子を製造することができる。
【0093】
分散液における分散時間は、好ましくは0.1時間以上24時間以下とすることによって、絶縁性粒子と金属被覆粒子とを十分に付着させることができる。この間、分散液を撹拌することが好ましい。この後、必要に応じて、分散液の固形分を、洗浄、乾燥することによって、絶縁性粒子が金属被覆粒子の表面に付着した被覆粒子が得られる。このように得られた被覆粒子は、図2(a)又は(b)に示すように、金属被覆粒子の表面に、架橋性モノマー成分の含有割合が互いに異なる二種の絶縁性粒子が複数付着した絶縁層が形成されているものである。
【0094】
絶縁層に連続皮膜を形成する場合には、上述した二種の絶縁性粒子が金属被覆粒子の表面に複数付着した被覆粒子に対して、有機溶媒による処理を行うか、又は加熱処理を行うことによって、二種の絶縁性粒子のうち少なくとも一方を流動性が高い状態にして、金属被覆粒子の表面を膜状に被覆した絶縁層を形成することができる。絶縁層を膜状に形成することによって、絶縁層と金属被覆粒子との密着性をより高くすることができ、絶縁性がより高いものとなる。
【0095】
また、絶縁性粒子が金属被覆粒子表面に付着した被覆粒子は、その分散液に有機溶剤を添加することによっても、絶縁性粒子を流動状態にすることができるため、金属被覆粒子表面を膜状に被覆することができる。絶縁性粒子を溶解させる場合、この有機溶剤としてはテトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン及びN,N-ジメチルホルムアミド等を用いることができる。有機溶剤の添加量としては、絶縁性粒子が脱落することなく均一な膜状を形成しやすい点から、分散液中の被覆粒子1質量部に対して1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。添加温度としては、絶縁性粒子が脱落することなく均一な膜を形成しやすい点から、10℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上80℃以下がより好ましい。また添加してから膜状にさせる時間としては、均一な膜を形成させる点から、0.1時間以上24時間以下であることが好ましい。このようにして、図2(c)に示すように、絶縁性粒子と皮膜とを有する絶縁層を好適に形成することができる。
【0096】
特に、第1ポリマーを含み且つ第2ポリマーを含まない第1絶縁性粒子と、第2ポリマーを含み且つ第1ポリマーを含まない第2絶縁性粒子とを有する被覆粒子を有機溶媒で処理した場合、第2絶縁性粒子は架橋性ポリマー成分の含有割合が第1絶縁性粒子よりも低く、有機溶媒に対する耐性が低いので、第2絶縁性粒子は流動性が高くなって皮膜を形成するが、第1絶縁性粒子は粒子の形態を略維持する状態となる。
【0097】
被覆粒子を加熱する方法としては、絶縁性粒子を導電性粒子表面に付着させた後の分散液を加温する方法や、得られた被覆粒子を水などの溶媒中に再度分散させて、該溶媒中で加温する方法、得られた被覆粒子を不活性ガスなどの気相中で加温する方法等が挙げられる。加熱温度としては、絶縁性粒子が脱落することなく均一な膜を形成しやすい点から、絶縁性粒子を構成する最も低いガラス転移温度を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、Tg+1℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg+5℃以上Tg+50℃以下がより好ましく、Tg+15℃超であることが最も好ましい。加熱時間としては、均一な膜を形成しやすい点から、0.1時間以上24時間以下であることが好ましい。また、被覆粒子を気相中で加温する場合、その圧力条件は大気圧下、減圧下又は加圧下で行うことができる。このようにして、図2(d)に示すように、二種以上のポリマーを含む皮膜を有する絶縁層を好適に形成することができる。
【0098】
金属被覆粒子表面を膜状に被覆した被覆粒子は、連続皮膜をより安定化させるために、アニーリング処理を行ってもよい。アニーリング処理の方法としては、被覆粒子を不活性ガスなどの気相中で加温する方法等が挙げられる。加熱温度としては、絶縁性粒子を構成する最も低いガラス転移温度を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、Tg+1℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg+5℃以上Tg+50℃以下がより好ましい。加熱雰囲気としては特に制限されず、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気又は空気等の酸化性雰囲気において、大気圧下、減圧下又は加圧下の何れの条件で行うこともできる。
【0099】
以上、好ましい製造方法を説明したが、本発明の被覆粒子は他の製造方法によっても製造することができる。例えば、荷電官能基を有しない絶縁性粒子を予め重合反応により製造し、得られた絶縁性粒子を荷電官能基を有する化合物と反応させる等して、絶縁性粒子表面に荷電官能基を導入してもよい。
【0100】
以上のようにして得られた被覆粒子は、架橋性モノマー成分の含有割合を互いに異なるものとした二種以上のポリマーを絶縁層として用いることで、導通信頼性を保ちつつ金属被覆粒子との密着性が高めることができる。このような被覆粒子は、導電性接着剤、異方性導電膜、異方性導電接着剤等の導電性材料として好適に使用される。
【実施例
【0101】
以下、本発明を実施例により説明する。しかしながら本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。例中の特性は下記の方法により測定した。
【0102】
(1)平均粒子径
測定対象の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(絶縁性粒子は倍率100000倍、金属被覆粒子は倍率10000倍、被覆粒子は倍率10000倍)から、任意に200個の粒子を抽出して、それらについて上記の粒子径を測定し、その算術平均値を平均粒子径とした。
【0103】
(2)C.V.(変動係数)
前記平均粒子径の測定から、下記式により求めた。
C.V.(%)=(標準偏差/平均粒子径)×100
【0104】
(3)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量測定装置(METTLER TOLEDO社製、STAR SYSTEM)にて昇降温速度5℃/min、窒素雰囲気下、測定温度25℃から200℃までの熱量変化を上記の手順で測定した。
【0105】
(4)絶縁層の最大厚み
絶縁層の最大厚みは、上述した方法で測定した。
【0106】
(5)絶縁層の第1絶縁性粒子及び第2絶縁性粒子の質量比率
下記式(B)から各絶縁性粒子の総質量をそれぞれ算出し、これらの質量に基づいて質量比率を算出した。なお、皮膜が形成されている実施例3及び4の被覆粒子は、皮膜を形成する前に各粒子が存在している状態で測定した値から質量比率を算出した。
【0107】
測定対象の絶縁性粒子の総質量(質量部)=(体積[cm])×(比重[g/cm])×(付着している絶縁性粒子の個数[個]) ・・・(B)
【0108】
体積[cm]:上述した平均粒子径から絶縁性粒子を球体と見立てて体積を算出した。
比重[g/cm]:比重測定装置(Micromeritics社製、AccuPyc II 1340)を用いて、絶縁性粒子の比重を測定した。
付着している絶縁性粒子の個数[個]:被覆粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率10000倍)において、任意に20個の粒子を抽出して、それらに付着している第1絶縁性粒子及び第2絶縁性粒子のそれぞれの個数をカウントした。
【0109】
〔実施例1〕
[工程1.第1絶縁性粒子の製造]
長さ60mmの撹拌羽根を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、純水を100mL投入した。その後、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンモノマー(新日鉄住金株式会社製)15.0mmol、非架橋性モノマーとしてスチレンモノマー(関東化学(株)社製)30.00mmol、及びn-ブチルアクリレート(関東化学(株)社製)5.3mmol、4-(ビニルベンジル)トリエチルホスホニウムクロライド(日本化学工業(株)社製)0.03mmol、並びに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製、V-50)0.50mmolを投入した。窒素を15分間通気し、溶存酸素を追い出した後、60℃に昇温し、6時間保持して重合反応を進行させた。重合後の微粒子の分散液を目開き150μmのSUS篩にかけ、凝集物を除去した。凝集物を除去した分散液を、遠心分離機(日立工機(株)社製、CR-21N)にて20,000rpm、20分間の条件にて遠心分離して微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。得られた固形物に純水を加えて洗浄して、ポリ(スチレン/ジビニルベンゼン/n-ブチルアクリレート/4-(ビニルベンジル)トリエチルホスホニウムクロライド)の球状の第1絶縁性粒子を得た。得られた第1絶縁性粒子の架橋性モノマー成分の含有量は31.4質量%であり、平均粒子径は220nmであり、C.V.が9.7%であった。
【0110】
[工程2.第2絶縁性粒子の製造]
上述した第1絶縁性粒子の製造工程において、ジビニルベンゼン量を0.25mmolとし、4-(ビニルベンジル)トリエチルホスホニウムクロライド量を0.30mmolとした以外は工程1と同じ方法で第2絶縁性粒子を製造した。得られた第2絶縁性粒子の架橋性モノマー成分の含有量は0.8質量%であり、平均粒子径は60nmであり、C.V.が18%であった。
【0111】
[工程3.被覆粒子の製造]
芯材として、架橋性のアクリル樹脂(ガラス転移温度:120℃)からなる球状粒子を用い、該芯材粒子の表面に厚さが0.125μmのニッケルからなる金属皮膜を有する、平均粒子径が3μmであり、表面が平滑な金属被覆粒子(Niめっき粒子;日本化学工業株式会社製)を用意した。前記Niめっき粒子5.0gに純水100mLを投入し、撹拌してNiめっき粒子の分散液を得た。この分散液に、第1絶縁性粒子45mg及び第2絶縁性粒子5mgと、NaSOとを添加して絶縁性粒子含有分散液とし、これを40℃で30分間撹拌した。絶縁性粒子含有分散液中、第1絶縁性粒子及び第2絶縁性粒子の合計量の固形分濃度は、質量基準で10000ppmであり、NaSOの濃度は5mmol/Lであった。上澄み液を除去後、純水による洗浄を3回繰り返した後、50℃で真空乾燥して被覆粒子を得た。得られた被覆粒子は、図1に示すように、金属被覆粒子の表面に二種の絶縁性粒子が配されているものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.4μmであった。得られた被覆粒子における絶縁性粒子の被覆率を下記方法にて求めた。結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例2〕
実施例1において、工程3の被覆粒子の製造工程の条件を平均高さ0.1μmの多数の突起部を有するNiめっき粒子に変更した他は、実施例1と同様に被覆粒子を製造した。得られた被覆粒子は、金属被覆粒子の表面に二種の絶縁性粒子が複数配されているものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.4μmであった。
【0113】
〔実施例3〕
実施例1で得られた被覆粒子1.0gを、純水20mL中に投入して分散液を得た。この分散液にテトラヒドロフラン10mLを加え、室温で6時間撹拌した。撹拌終了後、目開きが2μmのメンブレンフィルターにより固形物を分離し乾燥して、金属被覆粒子の表面に平均粒子径が220nmの絶縁性粒子と、厚さ50nmの連続皮膜によって被覆された絶縁層を有する被覆粒子を得た。得られた被覆粒子は、図2(c)に示すように、金属被覆粒子の表面に複数の絶縁性粒子と連続皮膜とが形成されているものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.4μmであった。
【0114】
〔実施例4〕
実施例1で得られた被覆粒子1.0gを、純水20mL中に添加して分散液とし、該分散液を95℃で6時間撹拌した。撹拌終了後、目開きが2μmのメンブレンフィルターを用いて固形物を分離し乾燥して、最大厚さが210nm、最小厚さが50nmである連続皮膜からなる絶縁層に被覆された被覆粒子を得た。得られた被覆粒子は、図2(d)に示すように、金属被覆粒子の表面に連続皮膜からなる絶縁層が形成されているものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.3μmであった。
【0115】
〔実施例5〕
実施例1において、工程3の被覆粒子の製造工程の条件を平均高さ0.1μmの多数の突起部を有するNiめっき粒子とし、第1絶縁性粒子及び第2絶縁性粒子の添加量をそれぞれ25mgずつに変更した以外は、実施例1と同様に被覆粒子を製造した。得られた被覆粒子は、金属被覆粒子の表面に二種の絶縁性粒子が複数配されているものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.4μmであった。
【0116】
〔比較例1〕
実施例1において、第2絶縁性粒子を用いずに、第1絶縁性粒子のみで被覆粒子を製造した他は、実施例1と同様に被覆粒子を製造した。得られた被覆粒子は、金属被覆粒子の表面に一種の絶縁性粒子が複数配されているものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.4μmであった。
【0117】
(比較例2)
実施例1において、架橋性モノマーであるジビニルベンゼンを用いずに、異なるポリマーをそれぞれ含む二種の絶縁性粒子を用いて、被覆粒子を製造した他は、実施例1と同様に被覆粒子を製造した。得られた被覆粒子は、金属被覆粒子の表面に二種の絶縁性粒子が複数配されているものであり、一方の絶縁性粒子には架橋性モノマー成分を含まないものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.4μmであった。
【0118】
〔比較例3〕
実施例1において、第1絶縁性粒子を用いずに、第2絶縁性粒子のみで被覆粒子を製造した他は、実施例1と同様に被覆粒子を製造した。得られた被覆粒子は、金属被覆粒子の表面に二種の絶縁性粒子が複数配されているものであった。被覆粒子の平均粒子径は3.3μmであった。
【0119】
〔被覆率の評価〕
実施例及び比較例で得られた被覆粒子の被覆率を以下の方法によって算出した。すなわち、被覆粒子のSEM写真画像の反射電子組成(COMPO)像を自動画像解析装置(株式会社ニレコ製、ルーゼックス(登録商標)AP)に取り込み、前記COMPO像における20個の被覆粒子を対象として算出した。被覆率が高いほど、絶縁層が緻密に形成されていることを示す。結果を表1に示す。
【0120】
〔導通性及び絶縁性の評価〕
実施例及び比較例の被覆粒子を用いて、導通性及び絶縁性の評価を以下の方法で行った。
【0121】
[導通性の評価]
エポキシ樹脂100質量部、硬化剤150質量部及びトルエン70質量部を混合した絶縁性接着剤と、実施例及び比較例で得られた被覆粒子15質量部とを混合して、絶縁性ペーストを得た。このペーストをシリコーン処理ポリエステルフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、その後、ペーストを乾燥させて、フィルム上に薄膜を形成した。得られた薄膜形成フィルムを、全面がアルミニウムを蒸着させたガラス基板と、銅パターンが50μmピッチに形成されたポリイミドフィルム基板との間に配して、電気接続を行った。この基板間の導通抵抗を測定することで、被覆粒子の導通性を室温下(25℃・50%RH)で評価した。抵抗値が低いほど被覆粒子の導通性が高いものであると評価できる。被覆粒子の導通性評価は、抵抗値が2Ω未満であるものを記号「○」とし、抵抗値が2Ω以上5Ω未満であるものを記号「△」とし、抵抗値が5Ω以上であるものを記号「×」とした。結果を表1に示す。
【0122】
[絶縁性の評価]
微小圧縮試験機MCTM-500(株式会社島津製作所製)を用いて、20個の被覆粒子を対象として、負荷速度0.5mN/秒の条件で実施例及び比較例の被覆粒子を圧縮し、抵抗値が検出されるまでの圧縮変位を測定することで被覆粒子の絶縁性を評価した。抵抗値が検出されるまでの圧縮変位が大きいほど、被覆粒子の絶縁性が高いものであると評価できる。被覆粒子の絶縁性評価は、抵抗値が検出されるまでの圧縮変位の算術平均値が10%以上であるものを記号「○」とし、圧縮変位の算術平均値が3%超10%未満であるものを記号「△」とし、圧縮変位の算術平均値が3%以下であるものを記号「×」とした。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1に示すように、本発明の被覆粒子は、絶縁層の被覆率が高く、絶縁性に優れるとともに、導通信頼性にも優れていることが判る。
図1
図2