(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】熱収縮性筒状ラベルおよびラベル付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20231002BHJP
G09F 3/04 20060101ALI20231002BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
G09F3/04 C
G09F3/02 B
(21)【出願番号】P 2019111933
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-04-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【氏名又は名称】大前 要
(72)【発明者】
【氏名】田頭 秀識
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/007803(WO,A1)
【文献】特開2013-167838(JP,A)
【文献】特開2014-031418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
G09F 3/04
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の胴部に装着される熱収縮性筒状ラベルにおいて、
前記熱収縮性筒状ラベルの表面全面には、
硬化処理を行うことなく撥水性インキにより印刷された撥水性オーバーコート層が設けられ、
前記熱収縮性筒状ラベルの裏面の少なくとも上下端部近傍には、
硬化処理を行うことなく撥水性インキにより印刷された撥水性インナーコート層が設けられ、
前記熱収縮性筒状ラベルの表面の純水に対する接触角が100°以上であり、
前記熱収縮性筒状ラベルの裏面の撥水性インナーコート層が設けられた部分の面の純水に対する接触角が90°以上であり、
前記撥水性オーバーコート層、及び前記撥水性インナーコート層はいずれも、
シリコーンオイルを含み、活性エネルギー線硬化樹脂を含まない熱収縮性筒状ラベル。
【請求項2】
前記撥水性インナーコート層は、前記熱収縮性筒状ラベルの裏面全面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性筒状ラベル。
【請求項3】
前記熱収縮性筒状ラベルの表面の純水に対する滑落角が55°以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性筒状ラベル。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の熱収縮性筒状ラベルが装着されてなるラベル付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に熱収縮性筒状ラベルに関するものであり、より特定的には水回りでの使用に適した熱収縮性筒状ラベルに関する。また、そのような熱収縮性筒状ラベルが装着されたラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、洗顔料、ハンドソープなど、水に濡れやすい環境で使用される容器には、カビが表面で繁殖しないことが求められている。このため、容器にラベルを設ける際には、容器に直接印刷したり、インモールドラベルを使用したりするなど、ラベルと容器との間に水がたまる隙間ができない方法を採用していた。
【0003】
しかしながら、このような方法では、審美性の高いラベルを取り付けにくい、ラベル面積を大きくし難いなどの問題があった。
【0004】
これに対し、熱収縮性のラベルを容器に取り付ける方法は、審美性の高いラベルを取り付け易い、ラベル面積を大きくし易いという長所がある。この一方、ラベルと容器との間に隙間ができるため、ラベルと容器との間に水が浸入してしまい、カビの原因となるという問題がある。
【0005】
ところで、商品に取り付けられたラベルが真正であるかを判別するために、ラベル表面に撥水性及び/又は撥油性の処理剤を付与する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、容器デザインの審美性・美麗性の向上の要望が高まっている。本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであり、カビ発生を抑制し得た審美性に優れた熱収縮性筒状ラベルを提供することにある。本発明の他の目的は、そのような熱収縮性筒状ラベルが装着された容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる熱収縮性筒状ラベルは、容器の胴部に装着されるものであって、その表面全面には、撥水性インキにより印刷された撥水性オーバーコート層が設けられ、その裏面の少なくとも上下端部近傍には、撥水性インキにより印刷された撥水性インナーコート層が設けられている。そして、熱収縮性筒状ラベルの表面の純水に対する接触角が100°以上、裏面の撥水性インナーコート層が設けられた部分の面の純水に対する接触角が90°以上である。撥水性オーバーコート層、及び撥水性インナーコート層はいずれも、シリコーンオイルを含み、活性エネルギー線硬化性樹脂を含まない。撥水性オーバーコート層、撥水性インナーコート層は、硬化処理を行うことなく形成されている。
【0009】
本発明によれば、熱収縮性筒状ラベルの表面全体及び裏面の少なくとも上下端部近傍には、撥水性インキにより印刷された撥水性のコート層が設けられている。
図1に示すように、熱収縮性筒状ラベル10は、容器20の胴部に取り付けられるが、特に熱収縮性筒状ラベル10の上下端部にある容器20との隙間から水がラベルの内側に浸入してカビが生じやすい。上記本発明の構成では、この水の侵入経路であるラベルの上下端部近傍は、表裏面ともに撥水性のコート層(撥水性オーバーコート層、撥水性インナーコート層)が設けられており、当該部分の純水に対する接触角が表面側で100°以上、裏面側で90°以上に規制されている。この大きな接触角によって水がラベルの内側に浸入することが防止され、これによりカビの発生を抑制できる。
【0010】
熱収縮性筒状ラベルの裏面の接触角が小さい場合、毛管現象によってラベルと容器の間に水分が容易に浸入してしまう。他方、熱収縮性筒状ラベルの表面の接触角が小さい場合、ラベルと容器の隙間近傍にとどまる水分量を減らすことができず、この場合もラベルと容器の間に水分が容易に浸入してしまう。熱収縮性筒状ラベルの表裏面の接触角を上記のごとく規制することにより、毛管現象を抑制しつつラベルと容器の隙間近傍に水分がとどまらないようにできるため、水がラベルの内側に浸入することを防止できる。
【0011】
また、熱収縮性筒状ラベルの表面全体に撥水性オーバーコート層が設けられているため、ラベルに付着した水滴や泡などの水分は、速やかに重力によって下方に移動しラベルから取り去られる。このため、水分がラベルに付着した状態で乾燥することがなく、ラベルに水滴やシャンプーなどの内容物の跡が残ることがない。よって、ラベルの美観を長期にわたって維持することができる。また、熱収縮性筒状ラベルはラベル面積を大きくしやすいが、ラベル面積を大きくすると、その分美観を維持できる面積を大きくすることができる。
【0012】
ここで、純水に対する接触角は、JIS R3257に準拠して測定したものとする。温度は25℃、液滴のボリュームは3μl、純水の比抵抗は1~15MΩ・cm以上とする。
【0013】
撥水性インナーコート層は、上下端部から少なくとも2mmの領域に形成されていることが好ましく、上下端部から少なくとも3mmの領域に形成されていることがより好ましく、上下端部から少なくとも5mmの領域に形成されていることがさらに好ましい。
【0014】
また、熱収縮性筒状ラベルは、シームレスの筒状であってもよく、基材フィルムの端部が重ねあわされ、重ね合わせ部が接着された構造であってもよい。接着された構造の場合、二枚のフィルムが重なりあった部分においてラベルと容器との隙間が大きくなるが、本発明の構成を採用することにより、この隙間からラベルの内側に水分が浸入することを防止できる。
【0015】
また、溶着構造である場合には、撥水性インナーコート層は、溶着部近傍(溶着されずに残った端部近傍)にも設けられている構成としてもよい。ここで、熱収縮性筒状ラベルの裏面全面に設けられている構成とすると、加工の容易化やより確実な水分の浸入阻止を図れる。また、裏面の滑りが良くなって収縮させるときに皺がよりにくくなるという効果もある。
【0016】
また、フィルムの重ねあわされる部分には、撥水性オーバーコート層や撥水性インナーコート層を設けない構成として、これらの層がシール溶剤による溶着作用を妨げないようにしてもよい。
【0017】
熱収縮性筒状ラベルの表面の純水に対する滑落角が55°以下である構成とすることができる。
【0018】
滑落角とは、液滴を乗せたフィルムを台に置き、この台の水平に対する角度を大きくしていき、液滴が滑り落ち始める(滑落する)時の水平に対する角度を意味する。この滑落角が上記のごとく規制されていることにより、ラベルに水滴の跡が残ることをより防止できる。
【0019】
ここで、純水に対する滑落角は、JIS R3257に準拠して測定したものとする。温度は25℃、液滴のボリュームは10μl、純水の比抵抗は1MΩ・cm以上とする。
【0020】
熱収縮性筒状ラベルの材料は、熱収縮性を有するものであればよく、好ましくはシール溶剤で接着できるものがよいが、特に限定されない。ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂あるいはこれらの積層物で形成されるのが好ましい。
【0021】
また、ラベルが取り付けられる容器は、ポリオレフィン系の樹脂あるいはポリエステル系樹脂で形成されるのが好ましいが、特に限定されない。
【0022】
また、熱収縮性筒状ラベルの材料には、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤、静電気防止剤、抗菌剤、安定剤等、各種公知の添加剤や異なる樹脂等を合目的的に添加してもよい。
【0023】
この発明にかかるラベル付き容器は、上述の熱収縮性筒状ラベルが容器の胴部に装着されてなるものである。
【0024】
本発明のラベル付き容器は、例えば、シャンプー、コンディショナー、リンス、洗顔料、ハンドソープなどの、水を使用する雰囲気で保管・使用される容器として特に好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ラベルと容器の間への水分の浸入、及びラベル表面への水滴の付着を防止でき、衛生面や美観に優れたラベルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る熱収縮性筒状ラベルを取り付けた容器を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る熱収縮性筒状ラベルの積層構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態1)
以下、本発明を、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態1に係る熱収縮性筒状ラベルを取り付けた容器を示す斜視図であり、
図2は、実施の形態1に係る熱収縮性筒状ラベルの積層構造を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る熱収縮性筒状ラベル10は、容器20の胴部に装着され、ラベル付き容器100となる。
【0028】
熱収縮性筒状ラベル10は、基材となる基材フィルム11の表面側には、その全面を覆うように撥水性インキにより印刷された撥水性オーバーコート層12が設けられ、基材フィルム11の裏面側には、少なくともその上下端部近傍に、撥水性インキにより印刷された撥水性インナーコート層13が設けられている。なお、撥水性オーバーコート層12と基材フィルム11の間、又は撥水性インナーコート層13と基材フィルム11との間には、ラベルデザインが印刷された印刷層が設けられるとともに、印刷層の見栄えを向上させる等の目的で1あるいは2以上の下地層がさらに設けられていてもよい。
【0029】
撥水性オーバーコート層12により、熱収縮性筒状ラベル10の表面の純水に対する接触角が100°以上に規制され、撥水性インナーコート層13により、熱収縮性筒状ラベル10の裏面の撥水性インナーコート層13部分の純水に対する接触角が90°以上に規制されている。
【0030】
図1に示すように、熱収縮性筒状ラベル10は、容器20の胴部に取り付けられるが、特にこの上下端部にある容器との隙間から水がラベルの内側に浸入してカビが生じやすい。上記構成では、この水の侵入経路であるラベルの上下端部近傍は、表裏面ともに撥水性インキによる層が設けられており、当該部分の純水に対する接触角が表面側で100°以上、裏面側で90°以上に規制されている。このため、この大きな接触角によって水がラベルの内側に浸入することを防止し、これによりカビの発生を抑制できる。
【0031】
撥水性インキとしては、公知のものを用いることができる。たとえば、パラフィン油、グリセリン等を用いることができるが、中でも、シリコーン(シロキサン結合)やフッ素を含んだ樹脂化合物を用いることが好ましい。また、撥水性オーバーコート層に用いる撥水性インキと、撥水性インナーコート層に用いる撥水性インキとが、同一であってもよく、異なっていてもよい。撥水性インキには、撥水性を発揮する上記成分以外に、溶剤・顔料・その他の公知の添加剤などが含まれていてもよい。
【0032】
また、熱収縮性筒状ラベルの表面全体に撥水性オーバーコート層が設けられているため、ラベルに付着した水分は速やかに重力によって下方に移動しラベルから取り去られる。このため、水分がラベルに付着した状態で乾燥することがなく、ラベルに水滴の跡が残ることがない。よって、ラベルの美観を長期にわたって維持することができる。
【0033】
この熱収縮性筒状ラベル1の容器2への装着は、熱収縮性筒状ラベル1を容器2の胴部に装着し、装着した容器をシュリンクトンネルに通して、熱収縮させることにより行われる。容器への内容物の充填は、容器に熱収縮性ラベルを装着する前に行っても良いし、シュリンクトンネルを通して収縮させた後に行っても良い。
【0034】
熱収縮性筒状ラベル10の表面の純水に対する接触角の上限は特に設定しなくてもよいが、160°より大きいものとするとコスト高につながる。より好ましくは105~150°、さらに好ましくは110~140°とする。また、熱収縮性筒状ラベル10の裏面の撥水性インナーコート層13部分の純水に対する接触角は、より好ましくは93~150°、さらに好ましくは95~140°とする。
【0035】
また、撥水性オーバーコート層の厚みは、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは0.5~4μm、さらに好ましくは0.5~3μmとする。また、撥水性インナーコート層の厚みは、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは0.5~4μm、さらに好ましくは0.5~3μmとする。
【0036】
撥水性インナーコート層は、熱収縮性筒状ラベルの裏面全面に設けられている構成としてもよい。
【0037】
また、熱収縮性筒状ラベルの表面の純水に対する滑落角が55°以下である構成とすることができる。ここで、純水に対する滑落角は、JIS R3257に準拠して測定したものとし、液滴のボリュームは10μlとする。滑落角の下限は特に設定しなくてもよいが、10°未満とするとコスト高につながる。滑落角は、より好ましくは10~50°、さらに好ましくは15~45°に規制する。
【0038】
また、基材フィルムは、熱収縮性を有し且つシール溶剤で接着できるものであればよく、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂あるいはこれらの積層物で形成されるのが好ましい。
【0039】
シール溶剤は、基材フィルムにポリエステル系フィルムを使用する場合、1,3ジオキソランまたはテトラヒドロフランが好ましい。またポリスチレン系フィルムを使用する場合は、テトラヒドロフランまたはメチルエチルケトンが好ましい。
【0040】
なお、撥水効果は、純水に対する接触角の大きい材料を用いる以外に、微細な凹凸を設けて純水との接点を減少させることによっても実現しうる。したがって、基材フィルム自体に微細な凹凸があるものを用いたり、基材フィルム上に印刷される印刷層、下地層、撥水性オーバーコート層、撥水性インナーコート層等の印刷の際に微細な凹凸が表面に残るように印刷したりして、撥水性オーバーコート層や撥水性インナーコート層の撥水性を高めるようにしてもよい。熱収縮性筒状ラベルの表面粗さRaは、0.1~5μmであることが好ましく、0.3~4μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることがさらに好ましい。
【0041】
(実施例1)
熱収縮性の基材フィルムとして、ポリスチレン(PS)とポリエチレンテレフタレート(PET)が積層された、グンゼ社製の「HST」タイプを用意した。このフィルムの表面全体に、シリコーンオイルを固形分質量比で1%含む撥水性インキを印刷して、撥水性オーバーコート層を形成した。この撥水性オーバーコート層の厚みは1.5μmである。
【0042】
また、上記フィルムの裏面全体に、シリコーンオイルを固形分質量比で1%含む撥水性インキを印刷して、撥水性インナーコート層を形成した。この撥水性インナーコート層の厚みは1.5μmである。この後、上記フィルムの端部を重ね合わせ、溶剤を用いてシールして、熱収縮性筒状ラベルとなした。
【0043】
この後、ポリエチレンテレフタレート製の容器の胴部に装着し、装着した容器を85℃のシュリンクトンネルに通して、熱収縮させて、実施例1にかかるラベル付き容器を作製した。
【0044】
また、KRUSS社製の全自動接触角計DSA20Eを用いて、容器装着前の熱収縮性筒状ラベルの純水に対する接触角、滑落角を測定した(接触角はJIS R3257準拠)。純水の比抵抗は10MΩ・cm、液滴のボリュームは接触角で3μl、滑落角で10μlとし、温度は25℃とした。この結果、表面の接触角は112.2°、滑落角は45°、ラベルの裏面の接触角は94.7°であった。また、ポリエチレンテレフタレート製の容器の表面の接触角は82.5°であった。なお、接触角、滑落角はいずれも、3回行った平均値である。
【0045】
(実施例2)
撥水性オーバーコート層に用いる撥水性インキとして、シリコーンを固形分質量比で1%含むものを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2にかかるラベル付き容器を作製した。また、実施例1と同様にして測定した熱収縮性筒状ラベルの表面の接触角は102.7°、滑落角は50°であった。
【0046】
(比較例1)
撥水性インナーコート層を設けなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1にかかるラベル付き容器を作製した。また、実施例1と同様にして測定した熱収縮性筒状ラベルの裏面(基材フィルムのPS面)の純水に対する接触角は81.6°であった。
【0047】
(比較例2)
撥水性オーバーコート層を設けなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例2にかかるラベル付き容器を作製した。また、実施例1と同様にして測定した熱収縮性筒状ラベルの表面(基材フィルムのPET面)の純水に対する接触角は62.1°であった。また、滑落試験を行った結果、台を最大(90°)まで傾けても滑落は起きなかった。
【0048】
(比較例3)
撥水性オーバーコート層、撥水性インナーコート層をいずれも設けなかった(基材フィルムをそのまま用いた)こと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例3にかかるラベル付き容器を作製した。
【0049】
(比較例4)
撥水性オーバーコート層に用いる撥水性インキとして、シリコーンオイルを含まないものを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例4にかかるラベル付き容器を作製した。また、実施例1と同様にして測定した熱収縮性筒状ラベルの表面の接触角は94.2°であった。また、滑落試験を行った結果、台を最大まで傾けても滑落は起きなかった。
【0050】
(比較例5)
撥水性オーバーコート層に用いる撥水性インキとして、シリコーンオイルを固形分質量比で0.6%含むものを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例5にかかるラベル付き容器を作製した。また、実施例1と同様にして測定した熱収縮性筒状ラベルの表面の接触角は89.3°、滑落角は60°であった。
【0051】
(耐水試験)
上記実施例1、2、比較例1~5にかかるラベル付き容器に対し、JIS C 0920に準拠して防水試験を行った。試験後、熱収縮性筒状ラベルを容器からはがし取り、ラベル内側への水の浸入の有無を目視により確認した。この結果、実施例1、2では、ラベル内側面に水の浸入は一切なかったのに対し、比較例1~5では、いずれも内側面に水の浸入が確認された。
【0052】
この結果から、ラベルの表裏面にそれぞれ撥水性オーバーコート層、撥水性インナーコート層を設け、表面の接触角を100°以上、裏面の接触角を90°以上にすることにより、ラベルと容器の間への水分の浸入を効果的に防止できることが分かった。
【0053】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、水回りで使用してもカビの発生を防止し、美観を長期にわたって維持可能なラベルを実現できるため、その産業上の意義は大きい。
【符号の説明】
【0055】
10 熱収縮性筒状ラベル
11 基材フィルム
12 撥水性オーバーコート層
13 撥水性インナーコート層
20 容器
100 ラベル付き容器