(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】荷役装置、荷役システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2019128937
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘章
(72)【発明者】
【氏名】浅利 幸生
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-192478(JP,A)
【文献】特開2007-091392(JP,A)
【文献】特開2018-111138(JP,A)
【文献】特開2019-043772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65G 59/02 - 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容する容器の
姿勢を所定方向へ傾斜するように変化させる変化装置と、
前記容器内をセンシングするセンサのセンシング結果に基づいて、前記物品を把持する把持機構を目標把持点へ移動させるマニピュレータの動作経路を計画し
、
前記動作経路に基づいて前記把持機構が前記目標把持点の前記物品を把持するように、前記マニピュレータの動作を制御し
、
前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢となる場合、前記動作経路の計画に失敗した
として、前記変化装置の傾斜角度を増やしていって前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢とならない目標把持点が見つかった時点の傾斜角度を目標傾斜角度とし、
前記
目標傾斜角度だけ前記変化装置が
傾斜するように前記変化装置を制御する制御装置と、
を備える荷役装置。
【請求項2】
物品を収容する容器の
姿勢を所定方向へ傾斜するように変化させる変化装置と、
前記容器内をセンシングするセンサのセンシング結果に基づいて、前記物品を把持する把持機構を目標把持点へ移動させるマニピュレータの動作経路を計画し
、
前記動作経路に基づいて前記把持機構が前記目標把持点の前記物品を把持するように、前記マニピュレータの動作を制御し
、
前記動作経路において前記マニピュレータと前記容器、若しくは、前記マニピュレータが把持した前記物品と前記容器に干渉が起きる場合、前記動作経路の計画に失敗した
として、前記物品の前記目標把持点を有する面の角度と、前記センサによって目標把持点を取得可能な面の傾きと、に基づいて、前記干渉が解消する前記変化装置の
傾斜角度を目標傾斜角度とし、
前記
目標傾斜角度だけ前記変化装置が
傾斜するように前記変化装置を制御する制御装置と、
を備える荷役装置。
【請求項3】
前記マニピュレータは、ベースに支持され、
前記制御装置は、前記ベースとは反対側に向けて前記容器が傾倒するように前記変化装置を制御する、請求項1
または請求項2に記載の荷役装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記センサのセンシング結果に基づいて、前記
目標傾斜角度を算出する、請求項1乃至
3のうちいずれか一つに記載の荷役装置。
【請求項5】
物品を収容する容器の
姿勢を所定方向へ傾斜するように変化させる変化装置と、
前記容器に収容された前記物品を把持する把持機構を先端部に有したマニピュレータと、
前記容器内をセンシングするセンサと、
前記センサのセンシング結果に基づいて、前記物品を把持する目標把持点へ前記把持機構を移動させる前記マニピュレータの動作経路を計画し、前記動作経路に基づいて前記把持機構が前記目標把持点の前記物品を把持するように、前記マニピュレータの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢となる場合、前記動作経路の計画に失敗した
として、前記変化装置の傾斜角度を増やしていって前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢とならない目標把持点が見つかった時点の傾斜角度を目標傾斜角度とし、前記
目標傾斜角度だけ前記変化装置が
傾斜するように前記変化装置を制御する、荷役システム。
【請求項6】
物品を収容する容器の
姿勢を所定方向へ傾斜するように変化させる変化装置と、
前記容器に収容された前記物品を把持する把持機構を先端部に有したマニピュレータと、
前記容器内をセンシングするセンサと、
前記センサのセンシング結果に基づいて、前記物品を把持する目標把持点へ前記把持機構を移動させる前記マニピュレータの動作経路を計画し、前記動作経路に基づいて前記把持機構が前記目標把持点の前記物品を把持するように、前記マニピュレータの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記動作経路において前記マニピュレータと前記容器、若しくは、前記マニピュレータが把持した前記物品と前記容器に干渉が起きる場合、前記動作経路の計画に失敗した
として、前記物品の前記目標把持点を有する面の角度と、前記センサによって目標把持点を取得可能な面の傾きと、に基づいて、前記干渉が解消する前記変化装置の
傾斜角度を目標傾斜角度とし、前記
目標傾斜角度だけ前記変化装置が
傾斜するように前記変化装置を制御する、荷役システム。
【請求項7】
物品を収容する容器の
姿勢を所定方向へ傾斜するように変化させる変化装置と、
前記容器に収容された前記物品を把持する把持機構を先端部に有したマニピュレータと、
前記容器内をセンシングするセンサと、
を備えた荷役システム、に設けられたコンピュータに、
前記センサのセンシング結果に基づいて、前記物品を把持する目標把持点へ前記把持機構を移動させる前記マニピュレータの動作経路を計画するステップと、
前記動作経路に基づいて前記把持機構が前記目標把持点の前記物品を把持するように、前記マニピュレータの動作を制御するステップと、
前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢となる場合、前記動作経路の計画に失敗した
として、前記変化装置の傾斜角度を増やしていって前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢とならない目標把持点が見つかった時点の傾斜角度を目標傾斜角度とし、前記
目標傾斜角度だけ前記変化装置が
傾斜するように前記変化装置を制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
物品を収容する容器の
姿勢を所定方向へ傾斜するように変化させる変化装置と、
前記容器に収容された前記物品を把持する把持機構を先端部に有したマニピュレータと、
前記容器内をセンシングするセンサと、
を備えた荷役システム、に設けられたコンピュータに、
前記センサのセンシング結果に基づいて、前記物品を把持する目標把持点へ前記把持機構を移動させる前記マニピュレータの動作経路を計画するステップと、
前記動作経路に基づいて前記把持機構が前記目標把持点の前記物品を把持するように、前記マニピュレータの動作を制御するステップと、
前記動作経路において前記マニピュレータと前記容器、若しくは、前記マニピュレータが把持した前記物品と前記容器に干渉が起きる場合、前記動作経路の計画に失敗した
として、前記物品の前記目標把持点を有する面の角度と、前記センサによって目標把持点を取得可能な面の傾きと、に基づいて、前記干渉が解消する前記変化装置の
傾斜角度を目標傾斜角度とし、前記
目標傾斜角度だけ前記変化装置が
傾斜するように前記変化装置を制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、荷役装置、荷役システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アームおよび把持機構を有したマニピュレータを用いることで容器内の物品に対する荷役(移動)が行われている。例えば、カメラで撮像した撮像画像に基づいて、アームの動作経路(軌道)を計画し、計画した動作経路を通るようにアームを動作させる装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、下記のような問題によって把持機構による物品の把持ができない場合がある。すなわち、上面がアームに向かって傾いて置かれた物品の場合、目標把持姿勢、またはその近傍においてアームが特異姿勢となり、正常な動作経路の生成ができない。また、上面がアームと逆側に向かって傾いて置かれた物品の場合、目標把持姿勢、またはその近傍においてアームが容器と干渉するため把持できない。このような場合、荷役(移動)できない物品が容器に残ってしまう。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、荷役できない物品が容器に残るのを抑制することができる荷役装置、荷役システムおよびプログラムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の荷役装置は、変化装置と、制御装置と、を備える。前記変化装置は、物品を収容する容器の姿勢を所定方向へ傾斜するように変化させる。前記制御装置は、前記容器内をセンシングするセンサのセンシング結果に基づいて、前記物品を把持する把持機構を目標把持点へ移動させるマニピュレータの動作経路を計画し、前記動作経路に基づいて前記把持機構が前記目標把持点の前記物品を把持するように、前記マニピュレータの動作を制御し、前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢となる場合、前記動作経路の計画に失敗したとして、前記変化装置の傾斜角度を増やしていって前記動作経路において前記マニピュレータが特異姿勢とならない目標把持点が見つかった時点の傾斜角度を目標傾斜角度とし、前記目標傾斜角度だけ前記変化装置が傾斜するように前記変化装置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の荷役システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の把持機構の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の荷役制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の荷役制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の動作経路の計画の失敗例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の荷役装置を示す図であって、容器姿勢変更装置が容器を傾斜させた状態の図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の荷役制御装置が実行する荷役処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の荷役制御装置が実行するピッキング動作の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態の荷役システムの構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の荷役制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の荷役装置および荷役システムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の荷役システム1の構成の一例を示す図である。また、
図2は、第1の実施形態の把持機構113の構成の一例を示す図である。
【0010】
<荷役システムの構成>
図1に示すように、荷役システム1は、荷役装置10と、センサ20と、を備える。また、荷役装置10は、マニピュレータ11と、容器2を支持する容器姿勢変更装置70と、荷役制御装置12と、を備える。荷役制御装置12は、マニピュレータ11、センサ20、および容器姿勢変更装置70と、例えば、シリアルケーブルやLAN(Local Area Network)などを介して通信可能に接続される。荷役システム1は、容器2の中に積み重ねられた複数の物品W(物品群)から任意の物品Wを把持し、任意の場所へ移動(荷役)させる。以下の説明では、任意の場所としてベルトコンベア3が適用された例を説明する。また、物品Wは、例えば、例えば方形(直方体状または立方体状)に構成されている。
【0011】
以下の説明では、
図1に示すように、X軸、Y軸およびZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸およびY軸は、水平方向に沿う。Z軸は、鉛直方向に沿う。
【0012】
容器2および容器姿勢変更装置70と、ベルトコンベア3とは、マニピュレータ11の周囲に配置されている。具体的には、マニピュレータ11に対してX軸の軸方向の一方側(
図1の右側)に容器2および容器姿勢変更装置70が配置され、マニピュレータ11に対してX軸の軸方向の他方向(
図1の左側)にベルトコンベア3が配置されている。すなわち、容器2および容器姿勢変更装置70とベルトコンベア3との間にマニピュレータ11が配置されている。つまり、マニピュレータ11は、容器2および容器姿勢変更装置70に面する位置であって、且つ、ベルトコンベア3に面する位置に配置されている。なお、マニピュレータ11と、容器2および容器姿勢変更装置70と、ベルトコンベア3との配置は、上記の配置以外であってもよい。
【0013】
容器2は、底部2aと底部2aから立ち上がった立上部2bとを有し、上方に開放された形状に形成され、内部に複数の物品Wを収容する。立上部2bは、矩形筒状に形成され、下端部が底部2aの周縁部に接続されている。立上部2bの上端部の開口部から容器2の内部に対して物品Wの出し入れがなされる。詳しくは、容器2の内部には、底部2aと立上部2bとに囲まれた収容室(収容空間)が形成されており、この収容室に物品Wが収容される。なお、
図1などでは立上部2bの一部が省略されている。容器2は、収容体とも称される。
【0014】
<各構成>
【0015】
マニピュレータ11は、ベース111に支持されている。マニピュレータ11は、ベース111に支持された端部11bと、端部の反対側の端部である先端部11aと、を有している。また、マニピュレータ11は、端部11bを含むアーム112と、先端部11aを含む把持機構113と、を有している。
【0016】
アーム112は、ベース111に支持されている。アーム112は、例えば、それぞれがサーボモータで回転駆動される6個(複数)の回転部J1~J6と、5個(複数)のリンクL1~L5とを有した多関節型ロボット(多軸型ロボット)である。回転部J1は、リンクL1の一端部をベース111に対してZ軸回りに回転可能に連結している。回転部J2は、リンクL1の他端部にリンクL2の一端部を水平方向に沿う回転軸回りに回転可能に連結している。回転部J3は、リンクL2の他端部にリンクL3の一端部を水平方向に沿う回転軸回りに回転可能に連結している。回転部J4は、リンクL3の他端部にリンクL4の一端部をリンクL3の軸方向に沿う回転軸回りに回転可能に連結している。回転部J5は、リンクL4の他端部にリンクL5の一端部を水平方向に沿う回転軸回りに回転可能に連結している。回転部J6は、リンクL5の他端部に把持機構113をリンクL5の軸方向に沿う回転軸回りに回転可能に連結している。上記構成では、回転部J4~J6のそれぞれの回転軸が、1点で交差しうる。リンクL5は、最終リンクとも称される。
【0017】
把持機構113は、アーム112におけるベース111とは反対側の端部112a(すなわちリンクL5の他端部)に設けられている。すなわち、把持機構113は、マニピュレータ11の先端部11aに設けられている。把持機構113は、回転部J6にネジなどで固定され、アーム112の回転部J1~J6の回転により任意の位置および姿勢で移動可能である。
【0018】
把持機構113は、容器2に収容された物品Wを把持する。把持機構113は、ハンドとも称される。
【0019】
図2を参照して把持機構113の詳細を説明する。
図2は、第1の実施形態の把持機構113の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、把持機構113は、本体1120、本体1120に取付けられた複数の吸着パッド1121(吸着パッド群)、真空発生器1122、圧力センサ1123、電磁バルブ1125、継手1126、および内部流路1124を有する。把持機構113は、真空吸着方式である。
【0020】
内部流路1124は、全ての吸着パッド1121と、真空発生器1122、圧力センサ1123、および電磁バルブ1125との間を接続する。
【0021】
真空発生器1122は、例えばエジェクタであり、圧縮空気を供給されることで真空を発生させる。
【0022】
電磁バルブ1125は、3つの状態に切替え可能であり、一つは真空発生器1122へと圧縮空気を供給して真空を発生させる状態(内部流路1124は負圧)、一つは内部流路1124へと直接圧縮空気を送ることで真空を破壊する状態(内部流路1124は大気圧より高い正圧)、またもう一つは閉状態(内部流路1124は大気圧)である。なお、バルブ制御、および真空発生器のON/OFF制御はいずれも荷役制御装置12(計画実行部1214(
図12))によってなされる。
【0023】
吸着パッド1121は、シリコンゴムなどの剛性が低い素材によって構成され、物品Wの表面形状に倣って変形可能である。なお、吸着パッド1121は、一つであってもよい。
【0024】
継手1126には、エア供給手段としてのコンプレッサ1130から圧縮空気がエアチューブなどの配管を介して供給される。配管は複数区間に分割してもよく、その一部はアーム112の内部流路を活用するなどしてもよい。
【0025】
図1に戻って、センサ20は、容器2の上方に配置され、容器2内をセンシングする、センサ20は、一例としてカメラである。カメラは、例えばRGBカメラである。センサ20は、センシングとして撮像を行ない、撮像により得られた撮像画像を荷役制御装置12に出力する。撮像画像は、センシング結果の一例である。センサ20は、その撮像範囲A21に容器2内の物品群の全体または一部を含むように、配置される。センサ20は、例えば、荷役システム1を設置する施設に治具を介して固定されている。なお、センサ20は、容器2に設置してもよいし、把持機構113やアーム112に取り付けてもよい。
【0026】
容器姿勢変更装置70は、容器2全体の位置と容器2全体の姿勢との少なくとも一方を変化させる。つまり、容器姿勢変更装置70は、底部2aおよび立上部2bを含む容器2の位置と底部2aおよび立上部2bを含む容器2の姿勢との少なくとも一方を変化させる。本実施形態では、一例として、容器姿勢変更装置70は、水平方向に沿った回転軸Ax1回りに容器2を回転させることにより容器2を傾倒させる。ここで、容器姿勢変更装置70は、支持した容器2の底部2aが水平方向に沿う姿勢が、初期姿勢である。
【0027】
容器姿勢変更装置70は、駆動源71、背面支持部材72、底面支持部材73、および土台74(ベース)を有する。背面支持部材72と底面支持部材73とは、それぞれ容器2の背面および底面に当接している。背面支持部材72および底面支持部材73は、容器2を支持する支持部材75を構成している。駆動源71は、例えばサーボモータであり、支持部材75を回転軸Ax1回りに回転させる。土台74には、駆動源71が固定され、土台74は、アンカーボルトなどにより床に固定される。容器姿勢変更装置70は、変更装置の一例である。
【0028】
荷役制御装置12は、マニピュレータ11の動作を制御する。荷役制御装置12は、センサ20のセンシング結果すなわち撮像画像に基づき、マニピュレータ11の動作を制御する。荷役制御装置12は、マニピュレータ11と一体的に設けられてもよいし、マニピュレータ11と別体として設けられてもよい。
【0029】
次に、上述した荷役制御装置12のハードウェア構成について説明する。
図3は、荷役制御装置12のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0030】
図3に示すように、荷役制御装置12は、プロセッサ121、表示部122、操作部123、センサコントローラ124、アームコントローラ125、把持コントローラ126、変更コントローラ128、通信部127、および記憶部129を備える。プロセッサ121および記憶部129は、コンピュータを構成している。
【0031】
プロセッサ121は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの制御装置である。表示部122は、表示装置の一例であり、例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネル式ディスプレイなどの表示デバイス(出力装置)によって実現される。操作部123は、キーボードやポインティングデバイスなどの入力デバイス(入力装置)によって実現される。なお、操作部123は、表示部122の画面上に設けられるタッチパネルであってもよい。
【0032】
センサコントローラ124は、センサ20に接続され、プロセッサ121の制御の下、センサ20の動作を制御する。アームコントローラ125は、マニピュレータ11のアーム112に接続され、プロセッサ121の制御の下、アーム112の動作を制御する。把持コントローラ126は、マニピュレータ11の把持機構113に接続され、プロセッサ121の制御の下、把持機構113の動作を制御する。変更コントローラ128は、容器姿勢変更装置70に接続され、プロセッサ121の制御の下、容器姿勢変更装置70の動作を制御する。
【0033】
通信部127は、不図示の他装置と接続するための通信インタフェースである。通信部127は、プロセッサ121の制御の下、他装置との間で各種データの授受を行う。
【0034】
記憶部129は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子やハードディスクなどの補助記憶装置によって実現される。記憶部129は、荷役装置10の動作に係るプログラムや設定情報などを記憶する。また、記憶部129は、マニピュレータ11の上下方向および水平方向の移動限界位置や、アーム112の可動範囲などを示した限界情報を記憶する。また、記憶部129は、物品Wの各辺のサイズや形状などを示した物品情報、物品Wのモデル等を記憶する。
【0035】
次に、
図4を参照して、荷役制御装置12の機能構成について説明する。ここで、
図4は、荷役制御装置12の機能構成の一例を示す図である。かかる機能構成は、プロセッサ121が、記憶部129に記憶されたプログラムを実行することで実現されるソフトウェア構成としてもよいし、プロセッサ121などが備える専用回路によって実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0036】
図4に示すように、荷役制御装置12は、取得部1211、認識部1212、計画部1213、計画実行部1214、および変化制御部1215を機能構成として備える。
【0037】
取得部1211は、センサコントローラ124を介して、センサ20で撮像された撮像画像を取得する。
【0038】
認識部1212は、取得部1211が取得した撮像画像に基づき、容器2内の物品Wを認識する。具体的には、認識部1212は、センサ20が撮像した撮像画像を基に物品Wの形状、位置、姿勢、およびその他の情報を認識する。なお、物品Wの認識方法は特に問わず、パターンマッチングや特定物品認識など、公知の技術を用いてもよい。
【0039】
計画部1213は、マニピュレータ11のアーム112および把持機構113の駆動機構を動作させるための計画を導出(算出)する。計画部1213は、例えば、センサ20の撮像画像に基づいて、物品Wを把持する目標把持点へ把持機構113を移動させるマニピュレータ11の動作経路を計画する。このとき、計画部1213は、例えば、移動対象に設定された物品Wをベルトコンベア3まで移動する最短の動作経路を示した計画を導出する。なお、計画部1213は、記憶部129に記憶されたマニピュレータ11の限界情報に基づいて計画の導出を行う。計画部1213は、計画した動作経路の情報(動作経路情報)を、計画実行部1214に送る。
【0040】
計画部1213は、動作経路の計画に失敗する場合がある。ここで、
図5は、第1の実施形態の動作経路の計画の失敗例を説明するための図である。
図6は、第1の実施形態の荷役装置10を示す図であって、容器姿勢変更装置70が容器2を傾斜させた状態の図である。
【0041】
例えば、
図5において実線で示すように、動作経路(目標把持点かそこまでの動作経路)においてアーム112が特異姿勢と特異姿勢の近傍の姿勢との少なくとも一方となる位置を通過する場合には、当該動作経路は、無効である。すなわち、この場合、計画結果は棄却される。以後、アーム112の特異姿勢と特異姿勢の近傍の姿勢とを含めたアーム112の姿勢をアーム112の無効姿勢とも称し、アーム112が無効姿勢となる位置を無効位置とも称する。無効姿勢となる回転部J5の角度は、-5度よりも大きく5度よりも小さい範囲である。すなわち、-5度<回転部J5の角度<5度である。このように、無効姿勢に特異姿勢の他に特異姿勢の近傍の姿勢も含めることにより、アーム112の急峻な移動が生じるのが抑制される。
【0042】
ここで、計画部1213は、動作経路の計画において、現在の把持基準点GP(
図2)から目標把持点までの動作経路を数理的に計画し、動作経路上における時系列に沿ったCartesian座標(XYZφθψ)に把持基準点が来るときのアーム112の回転部J1~J6の角度(以後、関節姿勢とも称する)を逆運動学に基づいて算出する。回転部J1~J6は、所定の基準からの角度である。
図5において、実線で示すようなアーム112の姿勢の場合、すなわち回転部J5の角度が0度となる場合、回転部J4の回転軸と回転部J6の回転軸とが同一直線状に並ぶことになり、関節姿勢が一意に決まらない特異姿勢となる。
【0043】
また、別例として、単純に、目標把持点における回転部J5が第1の角度範囲かそれ以下、すなわち回転部J5の角度が5度よりも小さくなる場合、アーム112が無効姿勢となる無効位置を通過するものとして、計画結果を棄却してもよい。すなわち、計画部1213は、当該動作経路を無効としてよい。
【0044】
上記の場合、
図6において実線で示すように、容器2を傾斜させることにより、アーム112が無効姿勢を取らないようにすることが可能である。そこで、計画部1213は、動作経路の計画に失敗した場合に、センサ20のセンシング結果すなわち撮像画像に基づいて、有効な動作経路を計画可能な容器姿勢変更装置70の動作量θ1を算出する。この動作量θ1の算出の詳細は後述する。
【0045】
また、
図5において一点鎖線で示すように、目標把持点に向けてアーム112が移動した場合に、マニピュレータ11が容器2と干渉する、若しくはマニピュレータ11が把持した物品Wが容器2と干渉する動作経路は、無効な動作経路である。すなわち、この場合には、計画部1213は、動作経路の計画に失敗したとする。この場合、容器2を傾斜させることにより、
図6の一点鎖線で示すように、アーム112が無効姿勢を取らないようにすることが可能な場合がある。そこで、計画部1213は、このように動作経路の計画に失敗した場合に、有効な動作経路を計画可能な容器姿勢変更装置70の動作量θ2を算出する。この動作量θ2の算出の詳細は後述する。
【0046】
変化制御部1215は、容器2の位置と容器2の姿勢との少なくとも一方が変化するように容器姿勢変更装置70を制御する。具体的には、変化制御部1215は、容器2の姿勢が変化するように容器姿勢変更装置70を制御する。例えば、変化制御部1215は、計画部によって算出された動作量θ1,θ2だけ容器姿勢変更装置70が動作するように容器姿勢変更装置70を制御する。このとき、変化制御部1215は、ベース111とは反対側に向けて容器2が傾倒するように容器姿勢変更装置70を制御する。
【0047】
計画実行部1214は、計画部1213が計画した動作経路に基づいて、把持機構113が目標把持点の物品Wを把持するように、マニピュレータ11の動作を制御する。このとき、計画実行部1214は、計画部1213が立てた計画に基づいてアーム112の各回転部J1~J6を任意の角速度、角加速度にて任意角度まで回転させ、アーム112の可動範囲内における任意の位置、姿勢へと把持機構113を移動させる。
【0048】
上述した機能構成により、荷役装置10では、容器2に置かれた物品Wを、ベルトコンベア3に自動で荷役(移動)させることができる。
【0049】
次に、荷役制御装置12が行なう処理を詳細に説明する。ここで、
図7は、荷役制御装置12が実行する荷役処理の一例を示すフローチャートである。なお、荷役処理の開始時点では、容器姿勢変更装置70は、初期姿勢である。
【0050】
図7に示すように、取得部1211が、センサ20に容器2内を撮像させてセンサ20から撮像画像を取得する(S1)。なお、このとき、容器2は荷役システム1のワークエリアに置かれている必要があるが、これは作業者によって配置されてもよいし、自動搬送ラインや自走台車などによって自動的にセットされてもよい。また、撮像画像は一枚に限定されず、焦点距離や撮像角度を変えながら撮像した複数枚の撮像であってもよい。
【0051】
次に、認識部1212が、撮像画像を画像処理する(S2)。このとき、容器2内に物品Wが一つも認識(検出)されない場合、すなわち撮像画像に容器2だけが写っている場合には(S3:No)、処理を終了する。認識部1212は、容器2内に一つまたは複数の物品Wを認識した場合(S3:Yes)、撮像画像を画像処理することで、複数写った物品Wを一つ一つに切り分ける(S4)。
【0052】
次に、計画部1213が、切り分けられた一つまたは複数の物品Wそれぞれに対し、複数の把持点候補生成する(S5)。把持点候補は、例えば、物品Wの鉛直上方に向いている面の面心および外周近傍である。なお、このとき、物品Wが有する面のうち傾斜がきついものについては認識部1212から得られる情報が少ないため、画像処理によって取得することが困難なため、目標把持点が生成されない。
【0053】
次に、計画部1213が、複数の把持点候補に対して任意のルールに基づいてスコアを算出する(S6)。例えば、把持する面の鉛直方向位置、アーム112に対する距離、把持する面の傾斜、物品Wの面心に近いか否か、などを基準にスコアの高低を決定する。計画部1213は、複数の把持点候補の中で最もスコアが高いものを目標把持点として設定する(S7)。
【0054】
次に、計画部1213が、把持機構113の把持基準点GPの位置・姿勢が目標把持点の位置・姿勢と一致するように、アーム112(マニピュレータ11)の動作経路を計画する(S8)。なお、把持機構113の把持基準点GPは、任意に設定してよいが、例えば吸着パッド1121の外周軌道の凸包絡面における面心とする。
【0055】
計画部1213は、動作経路の計画を行うときには、周辺の固定設備、容器2、および他の物品Wに対してアーム112および把持機構113が干渉しないような動作経路を計画する。具体的には、計画部1213内における仮想空間において、計画された動作経路上におけるアーム112および把持機構113が、周辺の固定設備、容器2、および他の物品Wに対して干渉しない(形状モデルが重ならない)ことを確認する。このとき、例えば、アーム112、把持機構113、周辺の固定設備、および容器2については事前に形状モデルを記憶部129に記憶させておき、それを干渉チェックに用いる。一方、例えば、他の物品Wについては、S4にて切り分けられた他の物品Wの面を干渉チェックに用いる。ただし、本実施形態において、容器姿勢変更装置70の動作により容器2の姿勢が変化するため、容器姿勢変更装置70の動作量に応じて容器2の形状モデルを更新する必要がある。この処理については後述する。
【0056】
計画部1213が動作経路の計画に成功した場合には(S9:Yes)、計画実行部1214が、マニピュレータ11にピッキング動作を実行させる(S10)。
【0057】
ピッキング動作の処理の流れを
図8を参照して説明する。
図8は、第1の実施形態の荷役制御装置12が実行するピッキング動作の処理の一例を示すフローチャートである。計画実行部1214が、電磁バルブ1125を制御して「真空発生器1122側に開」とし、把持機構113に真空を発生させる(S101)。
【0058】
次に、計画実行部1214が、アーム112を制御・動作させ、把持基準点GPを目標把持点に向けて移動させる(S102)。その間、計画実行部1214は、圧力センサ1123の値が所定の閾値(負の圧力値)を超えるまでを常に監視し続ける(S103:No)。圧力センサ1123の値が閾値を超えた場合(S103:Yes)、計画実行部1214は、物品Wの把持に成功したものと判定し、アーム112を動作させて把持基準点GPをリリース点まで移動させる(S104)。なお、このときの圧力の閾値は使用環境に応じて任意に設定してよいが、例えば-20~-40kPaの間の任意の値である。また、閾値は一定値に限定されず、物品Wの特徴(例えば大きさや形状、重量など)によって個別に変えてもよい。また、リリース点は荷役システム1の使用環境に応じて任意に決定してよく、例えば
図1においてはベルトコンベア3の鉛直上方位置にて、把持機構113の吸着パッド1121を鉛直下方に向けた状態である。また、物品Wの特徴(例えば大きさや重量など)によって個別にリリース点を変えるよう制御してもよい。また、目標把持点まで到達しても圧力センサ1123の値が閾値を超えない場合のエラー処理については、任意のタイムアウト処理やリトライ処理などを組み合わせることで対応可能である。
【0059】
把持基準点GPのリリース点到達後、計画実行部1214は、電磁バルブ1125を「内部流路1124側に開」とし、内部流路1124を正圧にすることで真空圧による把持力を消失させて把持機構113に物品Wをリリースさせる(S105)。計画実行部1214は、内部流路1124の圧力を圧力センサ1123で測定し、内部流路1124の圧力が閾値以下になるまで待つ(S106:No)。計画実行部1214は、内部流路1124の圧力を圧力センサ1123で測定し、内部流路1124の圧力が閾値以下になった時点でリリースに成功したと判定する(S106:Yes)。計画実行部1214は、上記の判定後に、電磁バルブ1125を「閉」にして内部流路1124を大気圧にする(S107)。以上でピッキング動作が完了となる。
【0060】
図7に戻って、計画部1213が、アーム112を所定の待機位置まで移動させる動作経路の計画を行い(S11)、計画実行部1214が、S11で計画された動作経路に基づいて、アーム112を動作させる(S12)。
【0061】
計画部1213は、容器姿勢変更装置70が初期姿勢かどうかを確認し(S13)、容器姿勢変更装置70が初期姿勢の場合(S13:Yes)、全ての把持点候補を消去する(S14)。そして、荷役制御装置12は、S1に戻り、容器2内に物品Wが検出されなくなるまで上記処理を繰り返す。
【0062】
以下、計画部1213が目標把持点への動作経路の計画に失敗した場合(S9:No)について説明する。
【0063】
計画部1213は、動作経路の計画に失敗した場合、その原因に基づいて処理を分岐する。
【0064】
まず、計画部1213は、動作経路(目標把持点かそこまでの動作経路)においてアーム112が無効姿勢となる無効位置を通過するか否かについて、すなわち無効姿勢が原因で動作経路の計画に失敗したか否かを判定する(S17)。
【0065】
変化制御部1215は、アーム112が無効姿勢となることが原因で失敗した場合(S17:Yes)、当該原因を解消可能な容器姿勢変更装置70の動作量θ1を算出する(S18)。動作量θ1は、回転軸Ax1回りの支持部材75(容器2)の回転角度である。動作量θ1は任意の固定値としてもよいし、目標把持点における、把持機構113の姿勢(以後、手先姿勢とも称する)に基づく関数として算出してもよいし、探索的に算出してもよい。ここでは、探索的に算出する例について説明する。変化制御部1215は、駆動源71の回転軸Ax1を中心に規定角度(例えば5度程度)回転させ、計画部1213が目標把持点を更新し、更新後の目標把持点に対して逆運動学を用いてアーム112の関節姿勢を算出する。計画部1213は、算出された回転部J5の角度が第1の範囲内となるとき、目標把持点までの動作経路上にてアーム112が無効位置を通過するとみなし、当該動作経路を無効とみなす。上記処理を繰り返していき、アーム112の回転部J5の角度が第1の範囲外となる目標把持点が見つかった時点で、累積された回転量の総和を動作量θ1とする。
【0066】
変化制御部1215は、算出された動作量θ1だけ容器姿勢変更装置70の駆動源71を駆動し、容器2の姿勢を変更する(S19)。これにより、容器2内における全ての物品Wの姿勢を一様に変えることが可能である。
【0067】
次に、計画部1213は、容器姿勢変更装置70の動作により容器2の姿勢が変化しているため、記憶部129に記憶された容器2の形状モデルを更新する(S16)。容器2の形状モデルの更新方法は任意であるが、例えば、容器姿勢変更装置70の動作量θ1だけ仮想空間上における容器2の形状モデルを回転させる。また、容器姿勢変更装置70の動作量θ1は、計画部1213から送信した指令値をそのまま用いてもよいし、任意の角度検出装置(例えばロータリーエンコーダなど)を用いて検出した実測値を用いてもよいし、センサ20と認識部1212とを用いて画像処理によって取得してもよい。
【0068】
次に、計画部1213は、全ての把持点候補を消去する(S14)。そして、荷役制御装置12は、S1に戻り、S1以降の処理を繰り返す。これにより、アーム112が特異姿勢になることなく物品Wを把持できる把持点候補を新たに得ることができる(S1~S5)。計画部1213は、得られた把持点候補に対して同様にスコアを算出し(S6)、最もスコアが高い把持点候補を目標把持点に設定する(S7)。S7以降の処理(S7~S12)は同様であるが、容器姿勢変更装置70が動作しているため、容器姿勢変更装置70が初期姿勢かの判定で否となる(S13:No)。このとき、変化制御部1215が、容器姿勢変更装置70の駆動源71を駆動して容器姿勢変更装置70(支持部材75)を初期姿勢に戻し(S15)、容器2の形状モデルを更新し(S16)、全ての把持点候補を消去する(S14)。
【0069】
また、計画部1213は、目標把持点に向けてアーム112が移動した場合に、容器2とアーム112または把持機構113が干渉すると判定した場合、すなわち容器2とアーム112または把持機構113の干渉が原因で計画が失敗した場合(S20:Yes)、物品Wの姿勢が特定の状態(容器姿勢変更装置70を駆動することによって解消可能と予測される姿勢)にあるか否かで処理を変える(S21)。
【0070】
ここで、特定の状態とは、
図5に一点鎖線で示すマニピュレータ11と接触した物品Wの姿勢であり、把持基準点GPがマニピュレータ11のベース111側を向いた姿勢となる状態のことを指す。このとき、物品Wが直方体であると仮定した場合、目標把持点を有する面を把持する限りにおいて容器2とアーム112または把持機構113との干渉は避けられない。そこで、この特定の状態においては(S21:Yes)、計画部1213は、干渉を解消可能な容器姿勢変更装置70の動作量θ2を算出する(S22)。動作量θ2は、任意の固定値としてもよいし、目標把持点における手先姿勢に基づく関数として算出してもよい。ここでは、手先姿勢に基づく関数として算出する例を示す。具体的には、物品Wの把持基準点GPを有する面の角度をθG、センサ20および認識部1212によって目標把持点を取得可能な面の傾きをθRとしたとき、動作量θ2=π/2-θG+θRとして算出する。
【0071】
変化制御部1215は、算出された動作量θ2だけ容器姿勢変更装置70の駆動源71を駆動し、容器2の姿勢を変更する(S19)。これにより、容器2内における全ての物品Wの姿勢を一様に変えることが可能である。物品Wが有する面の傾き具合が変わることで、これまで情報量が不足していた面に対してセンサ20および認識部1212で得られる情報量が増大し、新たな面に対する把持点候補を得ることができる。その後、荷役制御装置12は、S1に戻り、S1以降の処理を繰り返す。これにより、マニピュレータ11が容器2などと干渉しないで物品Wを把持できる把持点候補、を得ることが可能となる。
【0072】
また、計画部1213は、容器2とアーム112または把持機構113とが干渉すると判定し(S20:Yes)、かつ特定の状態にない場合(S21:No)、または動作経路の計画の失敗理由が上記のいずれでもない場合(S20:No)、目標把持点のスコアを0に変更し(S23)、次にスコアが高い把持点候補目標把持点に再設定する(S7)。
【0073】
以上のように、第1の実施形態では、荷役制御装置12(制御装置)は、動作経路の計画に失敗した場合に、容器姿勢変更装置70(変化装置)の動作量を算出し、当該動作量だけ変化装置が動作するように容器姿勢変更装置70を制御する。
【0074】
よって、荷役制御装置12は、動作経路の計画に失敗した場合であっても、その後に動作経路の計画に成功することができる。したがって、第1の実施形態によれば、荷役できない物品Wが容器2に残るのを抑制することができる。また、第1の実施形態によれば、アーム112そのものを駆動して無効姿勢の回避を行う構成に比べて、より省スペース、省コスト、かつ効果的な無効姿勢の回避をすることができる。また、マニピュレータ11に可動軸を追加して無効姿勢を回避する構成に比べて、よりマニピュレータ11が軽量で済み、重量物の処理や高速処理が可能となり、マニピュレータ11そのものを大型化および大出力化させる必要がない。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、バラ積みされた複数の物品W(物品群)の大多数を把持し、処理することが可能となる。具体的には、物品Wがバラ積みされた容器2の位置・姿勢を変更可能とすることで、無効姿勢を回避して物品Wの把持が可能である。また、上記の構成によれば、他のアイテムや容器2そのものと干渉する動作経路の場合、同様に容器2の姿勢を変更可能とすることで物品W外周の新たな面を検出・認識し、把持することを可能である。
【0076】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付与し説明を省略する。
【0077】
図9は、第2の実施形態の荷役システムの構成の一例を示す図である。
図10は、第2の実施形態の荷役制御装置12のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0078】
図9に示すように、第2の実施形態は、容器姿勢変更装置70に替えて自走台車80が設けられている点が第1の実施形態と異なる。自走台車80は、変更装置の一例である。
【0079】
自走台車80は、車体81と、車体81に支持された複数の車輪82と、車体81の上面に配置された昇降装置83と、昇降装置83に支持された回転テーブル86と、回転テーブル86に支持されるとともに容器2を支持する支持体84と、支持体84から下方に突出した脚85と、を有する。車輪82は、不図示のモータ等の駆動源によって回転駆動される。のうち昇降装置83は、不図示のモータ等の駆動源によって回転テーブル86、支持体84、および容器2を鉛直方向(上方、下方)に移動させる。回転テーブル86は、不図示のモータ等の駆動源によって鉛直方向に沿った回転軸Ax2回りに支持体84および容器2を回転する。また、自走台車80は、方向転換可能に構成されている。また、容器2は、例えば、RBP(ロールボックスパレット)である。
【0080】
このような構成の自走台車80は、容器2を鉛直方向および水平方向に移動可能であるとともに、容器2を回転軸Ax2回りに回転可能である。なお、自走台車80は、容器2の鉛直方向の移動、容器の水平方向の移動、容器2の回転軸Ax2回りの回転のいずれか一つ以上を行なう構成であってよい。また自走台車80は、容器2を傾斜させる構成を有していてもよい。
【0081】
図10に示されるように、荷役制御装置12の通信部127は、台車制御装置90を介して複数の自走台車80と通信可能に接続されている。すなわち、荷役制御装置12は、台車制御装置90を介して自走台車80を制御する。自走台車80と台車制御装置90との通信は、例えば無線通信であるが、有線通信であってもよい。台車制御装置90は、自走台車80に対する上位制御装置である。
【0082】
また、各自走台車80は、通信部を含む制御装置(不図示)を備え、台車制御装置90や荷役制御装置12からの指令を受けて動作する。台車制御装置90は、荷役制御装置12とも通信を行い、ピッキング動作開始指令を出す機能、ピッキング動作完了指令を出す機能、計画部1213が算出した動作量と自走台車動作要請を受け取る機能を有する。なお、荷役制御装置12が台車制御装置90を兼ねてもよい。
【0083】
また、自走台車80は、台車制御装置90から特定の動作量の指令を受ける場合を除いて、台車制御装置90から受け取る目標地点情報に基づいて自立制御によって動作する。
【0084】
上記の構成においては、荷役制御装置12は、動作経路の計画に失敗した場合には、有効な動作経路の計画が可能な自走台車の動作量を算出する。動作量は、自走台車80の走行距離や、昇降装置83の上下動作量、回転テーブル86の回転量である。動作経路計画の失敗原因の判定、およびそれに対する動作量(xyzψ)については、第1の実施形態と同様の考え方に基づいて算出が可能である。そして、変化制御部1215は、容器2が回転軸Ax2回りに回転するように自走台車80を制御したり、容器2が鉛直方向と水平方向とのうち少なくとも一方に移動するように自走台車80を制御する。
【0085】
以上の構成の第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、荷役制御装置12は、動作経路の計画に失敗した場合であっても、その後に有効な動作経路を計画することができる。したがって、第2の実施形態によれば、荷役できない物品Wが容器2に残るのを抑制することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、容器2としてRBPを用いているが、これに限定されない。机やパレットのような平坦な面に直接置かれていてもよいし、物品Wを搬送するコンベヤの一部であってもよい。
【0087】
また、本実施形態では、変更装置として自走台車80を用いるものとしているが、これに限定されない。例えば、水平面内を駆動可能なXYステージを用いてもよい。
【0088】
(他の実施形態)
【0089】
上記実施形態では、物品Wはカゴ形状の容器2にバラ積みされているものとしているが、物品Wの置き方は限定されない。例えば、物品Wは、アーム112よりも小さなカゴや箱等の容器に入っていてもよいし、棚やロールボックスパレット(RBP)等に入れられていてもよい。また、物品Wは、ばら積み状態に限らず、平積みされていてもよいし、単体で置かれていてもよい。
【0090】
また、荷役システム1は、荷降ろし作業だけでなく、荷積み作業やその他ピッキング作業などに活用してもよい。
【0091】
また、画像処理の手法は、限定されない。画像処理の手法としては、例えばRGB各色の強さ、色相、彩度、または明度などの値を閾値判定し、その境界線(エッジ)がなす形状を基に判定する手法などを用いる。上記実施形態で説明した切り分け処理については、エッジが閉曲線をなす場合にその閉曲線内部を一つの物品Wとして検出する方法などがある。また、形状、位置、姿勢の検出にあたっては、上記の閉曲線内の画像をデータベース内の物品データとマッチングすることで検出する方法などがある。ただし、上記はあくまで一例であり、これに限定されない。
【0092】
また、センサ20はRGBカメラに限らず、3Dカメラ、またはその他の光学センサを使用してもよいし、複数を組合せて用いてもよい。3Dカメラを用いる場合には、得られた点群データを処理することで物品群の切り分けと物品Wの形状、位置、および姿勢の認識を行う。
【0093】
また、駆動源71等はサーボモータに限らず、任意のものを用いてもよい。例えば、DCモータやステッピングモータとしてもよいし、その他の空圧や油圧での駆動源を用いてもよい。
【0094】
また、現在の把持基準点GPから目標把持点までの動作経路計画は任意の方法を用いてよい。例えば、両地点の幾何学的関係から生成する方法(3次スプライン補間など)を用いてもよいし、探索的手法(RRT、RRT*など)を用いてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では無効姿勢か否かの判断基準として、-5度<回転部J5の角度<5度としているがこれに限定しない。-3度<回転部J5の角度<3度とするなど、関節角速度の急変が生じない範囲で任意に設定してよい。また、特異姿勢となりやすい把持姿勢については、動作経路の計画や逆運動学に基づく関節姿勢の算出を行わずに無効姿勢を通過するものと見なしてもよい。例えば、目標把持点の鉛直方向位置が低く、かつアーム112に向かって傾斜した向きの場合などが相当し、計算量の多い処理を行わずに済む分だけタクトタイムの面で優位である。
【0096】
また、把持機構113の把持方式は真空吸着方式に限定しない。例えば把持方式は磁気吸着方式としてもよいし、挟持方式を用いて物品Wの平行部を把持する制御としてもよいし、その他の方式でもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、真空発生器1122はエジェクタとし、コンプレッサ1130からの圧縮空気供給により真空を発生させるが、これに限定しない。例えば、真空発生器1122は、真空ポンプや真空ブロワを用いてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では物品Wの把持に成功したかを圧力センサ1123だけで検出しているが、これに限定しない。例えば、把持の成功の検出は、圧力センサではなく流量センサを用いてもよいし、両方を併用してもよい。流量センサを用いることで応答性は改善されるが、流量センサ単体で使用した場合には把持力を定量的に見積もれなくなる。また、他の光学的なセンサと組合せてもよい。例えば、本体1120に光学距離センサを取付けて吸着方向の物品Wに対する距離を検出し、その距離を基に吸着パッドの自然長以下になったかどうかを判定の一部として組み込んでもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、アーム112は6軸ロボットとして構成されているがこれに限定されない。例えば、アーム112は、7軸ロボットとしてもよいし、5軸以下の自由度のロボットとしてもよい。また、スカラロボットやXYZステージの先端に3自由度(ロール-ベンド-ロール構造で全ての軸が同一点を通るもの)を設けてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、アーム112を固定設備としているが、リニアステージや自走台車などに載せて移動可能としてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、目標把持点に対して動作経路計画が成立しなかった場合、その都度容器姿勢変更装置70を動作させているが、これに限定しない。例えば、目標把持点に対して動作経路計画が成立しなかった場合、その原因と把持点をセットで記憶しておき、他の把持点候補に対して動作経路計画を行う。そして、S5にて生成された全ての把持点候補に対して動作経路計画が失敗したときに、初めて容器姿勢変更装置70を駆動するような制御としてもよい。このような構成は、容器2に対して物品Wの大きさが相対的に小さく、センサ20から多数の物品Wが検出可能な場合、スループット的に優位である。
【0102】
また、上記実施形態では、一つの物品Wを処理するごとに把持点候補全消去して再度容器2内を撮像する処理としているが、これに限定しない。例えば、二番目にスコアが高い把持点候補に対して動作経路計画を行い、成功した場合にはそのままピッキング動作を行うような処理としてもよい。
【0103】
また、荷役制御装置12で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、荷役制御装置12で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、荷役制御装置12で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均などの範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1…荷役システム
2…容器
10…荷役装置
11…マニピュレータ
11a…先端部
11b…端部
12…荷役制御装置(制御装置)
20…センサ
70…容器姿勢変更装置(変化装置)
80…自走台車(変化装置)
111…ベース
112…アーム
112a…端部
113…把持機構
Ax1,Ax2…回転軸
W…物品