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特許7358103制御支援装置、制御支援方法、コンピュータプログラム及びプラント制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】制御支援装置、制御支援方法、コンピュータプログラム及びプラント制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20231002BHJP
   A63F 13/63 20140101ALI20231002BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20231002BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G05B13/02 Z
A63F13/63
G06Q50/04
G05B23/02 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019138039
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021022145
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 隼
(72)【発明者】
【氏名】山原 裕之
(72)【発明者】
【氏名】横川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 吉倫
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531618(JP,A)
【文献】特開2019-091206(JP,A)
【文献】特開2003-173475(JP,A)
【文献】特開平03-222003(JP,A)
【文献】特開2018-142355(JP,A)
【文献】国際公開第2011/045183(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0271367(US,A1)
【文献】Seth Cooper et al.,Predicting protein structures with a multiplayer online game,Nature,英国,2010年08月05日,Vol.466,p.756-760, SUPPLEMENTARY INFO. p.2-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/02
A63F 13/63
G06Q 50/04
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プラントの動作環境に関する物理量の計測値を示す計測データに基づいて、前記水処理プラントの操作量を決定するのに必要な情報をゲームの操作情報として人間に入力させるためのゲームデータを生成するゲームデータ生成部と、
前記ゲームのプレイ結果を示すプレイデータに基づいて生成される前記操作量の時系列データであって、前記水処理プラントの管理値過去の前記管理値の変動パターンを基準として所定の上限値および下限値の範囲内制御することを可能にする操作量を示す運転データを生成する運転データ生成部と、
を備え
前記ゲームデータ生成部は、前記管理値に外乱値が作用する条件のもとで前記操作量を前記範囲内に維持することに対応するゲームのゲームデータを生成する、
制御支援装置。
【請求項2】
前記運転データ生成部は、生成した前記ゲームデータを補完する擬似データを前記物理量の過去の計測データに基づいて生成し、前記ゲームデータと前記擬似データとを結合することにより、前記ゲームデータを前記ゲームのプレイ時間に応じた適正サイズのゲームデータに嵩増しする、
請求項1に記載の制御支援装置。
【請求項3】
前記運転データ生成部は、生成した前記ゲームデータを分割し、分割された前記ゲームデータのそれぞれを前記適正サイズに嵩増しする、
請求項2に記載の制御支援装置。
【請求項4】
前記運転データ生成部は、生成した前記ゲームデータを結合し、結合された前記ゲームデータを前記適正サイズに嵩増しする、
請求項2又は3に記載の制御支援装置。
【請求項5】
前記ゲームが実行される端末装置の要求に応じて前記ゲームのプレイデータを前記端末装置に提供するプレイデータ提供部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項6】
前記ゲームデータ生成部は、現在の計測データと過去の計測データとの類似度が第1の閾値以上である場合、前記過去の計測データに基づいて生成されたゲームデータを、前記現在の計測データに基づくゲームデータとして再利用する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項7】
前記運転データ生成部は、現在の計測データと過去の計測データとの類似度が第2の閾値以上である場合、前記過去の計測データに基づいて生成されたゲームのプレイデータをもとに生成された過去の運転データを、前記現在の計測データに基づく運転データとして再利用する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項8】
前記ゲームデータ生成部は、前記運転データの生成に関する条件を前記ゲームの内容に反映させるフレームワークを用いて前記ゲームデータを生成する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項9】
前記ゲームデータ生成部は、異なる前記条件に対応するフレームワークが複数存在する場合、複数の前記フレームワークから前記運転データの生成に要求される条件に応じたフレームワークを選択して前記ゲームデータを生成する、
請求項8に記載の制御支援装置。
【請求項10】
水処理プラントの動作環境に関する物理量の計測値を示す計測データに基づいて、前記水処理プラントの操作量を決定するのに必要な情報をゲームの操作情報として人間に入力させるためのゲームデータを生成するゲームデータ生成ステップと、
前記ゲームのプレイ結果を示すプレイデータに基づいて生成される前記操作量の時系列データであって、前記水処理プラントの管理値過去の前記管理値の変動パターンを基準として所定の上限値および下限値の範囲内制御することを可能にする操作量を示す運転データを生成する運転データ生成ステップと、
を有し、
前記ゲームデータ生成ステップにおいて、前記管理値に外乱値が作用する条件のもとで前記操作量を前記範囲内に維持することに対応するゲームのゲームデータを生成する、
制御支援方法。
【請求項11】
水処理プラントの動作環境に関する物理量の計測値を示す計測データに基づいて、前記水処理プラントの操作量を決定するのに必要な情報をゲームの操作情報として人間に入力させるためのゲームデータを生成するゲームデータ生成ステップと、
前記ゲームのプレイ結果を示すプレイデータに基づいて生成される前記操作量の時系列データであって、前記水処理プラントの管理値過去の前記管理値の変動パターンを基準として所定の上限値および下限値の範囲内制御することを可能にする操作量を示す運転データを生成する運転データ生成ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記ゲームデータ生成ステップにおいて、前記管理値に外乱値が作用する条件のもとで前記操作量を前記範囲内に維持することに対応するゲームのゲームデータを生成する、
コンピュータプログラム。
【請求項12】
水処理プラントの動作環境に関する物理量を計測し、その計測値を示す計測データを制御支援装置に供給し、前記計測データの供給に対して前記制御支援装置から供給される運転データに基づいて前記水処理プラントを制御するプラントと、
前記計測データに基づいて前記運転データを生成し、生成した前記運転データを前記プラントに供給する制御支援装置と、
を備え、
前記制御支援装置は、
前記計測データに基づいて、前記水処理プラントの操作量を決定するのに必要な情報をゲームの操作情報として人間に入力させるためのゲームデータを生成するゲームデータ生成部と、
前記ゲームのプレイ結果を示すプレイデータに基づいて生成される前記操作量の時系列データであって、前記水処理プラントの管理値過去の前記管理値の変動パターンを基準として所定の上限値および下限値の範囲内制御することを可能にする操作量を示す運転データを生成する運転データ生成部と、
を備え
前記ゲームデータ生成部は、前記管理値に外乱値が作用する条件のもとで前記操作量を前記範囲内に維持することに対応するゲームのゲームデータを生成する、
プラント制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御支援装置、制御支援方法、コンピュータプログラム及びプラント制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道プラントなどの制御システムにおいて、制御対象プロセスの制御は予め構築された動作モデルを用いて行われるのが一般的であった。このような制御方法には、制御対象プロセスを比較的高い精度で制御することができるというメリットがある一方で、精度の高い動作モデルの構築を前提とするため、運用コストが高くなるというデメリットがある。その一方で、制御精度の低下をある程度許容してでも運用コストの削減を優先したいというニーズもある。しかしながら、従来の制御システムでは、必要な制御精度の維持と運用コストの削減との両立が難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-244456号公報
【文献】特開2005-16443号公報
【文献】特表2015-531618号公報
【文献】米国特許第9600648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、必要な制御精度の維持と運用コストの削減との両立をより容易に実現することができる制御支援装置、制御支援方法、コンピュータプログラム及びプラント制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の制御支援装置は、ゲームデータ生成部と運転データ生成部とを持つ。ゲームデータ生成部は、制御対象の動作環境に関する物理量の計測値を示す計測データに基づいて、前記制御対象の操作量を決定するのに必要な情報をゲームの操作情報として人間に入力させるためのゲームデータを生成する。運転データ生成部は、前記ゲームのプレイ結果を示すプレイデータに基づいて生成される前記操作量の時系列データであって、前記制御対象を許容範囲内の精度で制御することを可能にする操作量を示す運転データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図。
図2】第1の実施形態において生成されるゲームの具体例を示す図。
図3】第1の実施形態のプラント制御システムの動作例を示すシーケンス図。
図4】第1の実施形態のプラント制御システムによって得られる効果の一例を示す図。
図5】第2の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図。
図6】第2の実施形態における嵩増し機能の具体例を示す図。
図7】第2の実施形態における分割機能の具体例を示す図。
図8】第2の実施形態における結合機能の具体例を示す図。
図9】第2の実施形態におけるサイズ調整処理の具体例を示すフローチャート。
図10】第3の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図。
図11】第3の実施形態における再利用処理の具体例を示すフローチャート。
図12】第4の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図。
図13】第4の実施形態におけるメトリックの具体例を示す図。
図14】第4の実施形態において生成されるゲームデータの具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の制御支援装置、制御支援方法、コンピュータプログラム及びプラント制御システムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図である。実施形態のプラント制御システム100は、プラント事業者が管理するプラント1及びゲームサーバ2と、ゲーム参加者が使用するゲーム端末3と、を備える。プラント1は、制御対象プロセスを実現する設備(以下「制御対象設備」という。)と、制御対象プロセスの動作環境に関する各種の物理量を計測する計測機器とを含み、その計測値を示すデータ(以下「計測データ」という。)をゲームサーバ2に供給する。
【0009】
ゲームサーバ2は、プラント1から供給される計測データに基づいてゲームデータを生成し、生成したゲームデータをゲーム端末3に供給する。ゲームデータは、ゲーム端末3が自装置のユーザ(ゲーム参加者)に対してゲームの実行環境を提供するために必要なデータである。例えば、ゲームデータは、実行可能に構成されたプログラムのデータファイル(一般に実行ファイルと呼ばれる)であり、その実行により特定ゲームの実行環境を生成する実行ファイルである。この場合、ゲームデータには、ゲームの動作を制御する各種命令の他、ゲームの演出に用いられる画像データや音声データなどの情報が含まれる。
【0010】
また、例えば、ゲームデータは、個々のゲームの実行環境を共通のフレームワークの上位層に構成するアプリケーションが、目的のゲームの実行環境を構成するために読み込む各ゲームに固有のデータであってもよい。この場合、例えばフレームワークには、各ゲームに共通の動作環境を生成する機能や各ゲームの演出に用いられる共通の画像データや音声データなどの情報が含まれる。ゲームデータには個々のゲームに固有の情報(例えば画像データを配置する位置やタイミング、音声データを出力するタイミングなどを示す情報)が含まれる。各ゲームに固有のゲームデータが、フレームワークを用いて動作するアプリケーションに読み込まれることにより、それぞれ異なるゲームの実行環境が生成される。
【0011】
このようにゲームデータは、計測データに応じたゲームの実行環境を生成するために用いられるデータであれば、それ単体で個別のゲームの実行環境を生成するように構成されたデータであってもよいし、他のプログラムに用いられることによって個別のゲームの実行環境を生成するように構成されたデータであってもよい。例えば、計測データの違いは、ゲームの難易度や演出の内容、ゲーム上の課題等に反映されてもよい。この意味で、ゲームデータは、計測データが変換されたものであるということができる。以下、本実施形態では、ゲームデータが、フレームワークとともに用いられることによって個別のゲームの実行環境を生成する場合を想定する。
【0012】
ゲーム端末3は、ゲームサーバ2から供給されるゲームデータを用いて、ユーザがゲームをプレイすることができる環境(実行環境)を生成し、ユーザの操作入力に応じてゲームの進行を制御する。ゲーム端末3は、ユーザによるゲームのプレイ内容を示すデータ(以下「プレイデータ」という。)を生成し、生成したプレイデータをゲームサーバ2に供給する。
【0013】
ここで、ゲーム端末3がユーザにプレイさせるゲームとは、プラント1が制御対象設備の操作量を決定する際に行う処理の一部又は全部を、プレイヤーの判断に置き換えるものであり、その判断結果をゲーム操作として入力させるものである。以下、ゲームに置き換える対象となるプラント1の処理を「被ゲーム化処理」という。なお、ゲームは、被ゲーム化処理を直接的又は具体的に置き換えるものであってもよいし、間接的又は抽象的に置き換えるものであってもよい。
【0014】
また、被ゲーム化処理を、どの程度間接的に又は抽象的にゲームに置き換えるか(すなわちゲーム化の度合い)は、そのプレイデータから運転データを取得することができる限りにおいて任意に決定されてよい。なお、ゲームは、プレイヤーのモチベーションを高めるために、プレイヤーに対してプレイの評価やインセンティブを与えるように構成されてもよい。
【0015】
ゲームサーバ2は、ゲーム端末3から供給されるプレイデータに基づいてプラント1の運転データを生成する。運転データは、プラント1が備える制御対象設備の運転計画を示すデータである。ゲームサーバ2は、生成した運転データをプラント1に供給する。プラント1は、ゲームサーバ2から供給される運転データに基づいて制御対象設備の運転を制御する。
【0016】
このように構成される実施形態のプラント制御システム100によれば、従来プラント側で行っていた被ゲーム化処理を、人間の直感的な判断能力を利用したゲームに置き換えることにより、プラント制御の運用コストを削減することができる。以下、このような実施形態のプラント制御システム100の構成について詳細に説明する。
【0017】
プラント制御システム100は、プラント1、ゲームサーバ2及びゲーム端末3を備える。プラント1及びゲーム端末3は、ゲームサーバ2と通信可能に接続される。プラント1はゲームサーバ2との間で計測データ及び運転データの送受信を行い、ゲーム端末3はゲームサーバ2との間でゲームデータ及びプレイデータの送受信を行う。
【0018】
プラント1は、計測データ取得部111、計測データ送信部112、運転データ受信部121及び運転制御部122を備える。運転データ受信部121は、ゲームサーバ2から運転データを取得する機能を有する。運転制御部122は、ゲームサーバ2から取得された運転データに基づいて制御対象設備(図示せず)の運転を制御する機能を有する。例えば、運転データ受信部121及び運転制御部122は、制御対象設備のコントローラ(図示せず)として構成されてもよい。
【0019】
計測データ取得部111は、制御対象プロセスの状態に関する各種の計測データを取得する機能を有する。計測データ送信部112は、取得された計測データをゲームサーバ2に送信する機能を有する。例えば、計測データ取得部111及び計測データ送信部112は、制御対象プロセスの状態を計測する計測機器によって実現される。
【0020】
ゲームサーバ2は、計測データ受信部211、計測データ記憶部212、フレームワーク記憶部213、ゲームデータ生成部214、ゲームデータ送信部215、プレイデータ受信部221、プレイデータ記憶部222、運転データ生成部223及び運転データ送信部224を備える。計測データ記憶部212、フレームワーク記憶部213、プレイデータ記憶部222は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
【0021】
計測データ受信部211は、プラント1から計測データを受信する。計測データ記憶部212は、受信された計測データを記憶する。フレームワーク記憶部213は、ゲームデータを生成するためのフレームワークを予め記憶している。上述のとおり、フレームワークは、ゲームデータとともにゲームの実行環境を生成するデータの1つである。そのため、基本的にはフレームワークはゲームがプレイされるゲーム端末3に配置されればよい。
【0022】
ただし、実際の運用を想定すると、ゲームサーバ2においてゲームデータを生成した際、生成したゲームデータをゲーム端末3に配信する前に、そのゲームデータの妥当性が必要になる場合がある。この場合、フレームワークをゲームサーバ2に配置しておけば、生成したゲームデータを用いて試験的にゲームの実行環境を生成することができ、ゲームデータの妥当性を確認した上でゲーム端末3に配信することができる。本実施形態では、このような想定のもとゲームサーバ2にフレームワークを配置しているが、これは必ずしも必須の構成ではない。
【0023】
ゲームデータ生成部214は、計測データとフレームワークとに基づいてゲームデータを生成する。具体的には、フレームワークは、ゲームを実行する際の不変部分を構成し、ゲームデータはゲームを実行する際の可変部分を構成する。ゲームデータ送信部215は、生成されたゲームデータをゲーム端末3に送信する。
【0024】
プレイデータ受信部221は、ゲーム端末3からプレイデータを受信する。プレイデータ記憶部222は、受信されたプレイデータを記憶する。運転データ生成部223は、プレイデータに基づいて運転データを生成する。運転データ送信部224は、生成された運転データをプラント1に送信する。
【0025】
ゲーム端末3は、ゲームデータ受信部31、フレームワーク記憶部32、ゲーム実行部33及びプレイデータ送信部34を備える。ゲームデータ受信部31は、ゲームサーバ2からゲームデータを受信する。フレームワーク記憶部32は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。フレームワーク記憶部32は、ゲームの実行環境を生成するためのフレームワークを予め記憶している。このフレームワークは、ゲームサーバ2に保持されるフレームワークと同じものである。ゲーム実行部33は、受信されたゲームデータとフレームワークとに基づいてゲームの実行環境を生成し、ユーザの操作入力に応じてゲームの進行を制御する。ゲーム実行部33は、ゲームをプレイしたユーザのプレイデータを生成する。プレイデータ送信部34は、生成されたプレイデータをゲームサーバ2に送信する。
【0026】
なお、上記の各装置は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムの実行によって上記の各機能部を備える装置として機能するように構成されてもよい。また、各機能部の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0027】
図2は、第1の実施形態において生成されるゲームの具体例を示す図である。まず、図2(A)は、プラントシミュレータによる制御対象プロセスの制御例を示す。図2(A)において管理値Bはプラント制御において所定の条件を満たすように管理すべき値であり、いわゆる制御量に相当する値である。管理値Bは、操作量A及び外乱値Cの入力に対して時間遅れを伴って変化する。例えば、図2(A)は、操作量Aの変更回数をなるべく少なくし、かつ管理値Bを上限値と下限値の範囲内に維持することを目的とする制御例を表している。一般に、このような制御目的を達成するため、プラントのオペレータには、外乱値Cについて予測される変動パターン(外乱値Cの破線部)を見ながら、操作量Aを外乱値Cの変動に応じて変化させることが求められる。
【0028】
ここで、オペレータの操作を左右する外乱値Cや上限値、下限値等の条件をゲーム上の課題に置き換えれば、オペレータの操作をプレイヤーの操作に置き換えたゲームを作ることができる。例えば図2(B)は、図2(A)のプラント制御をキャラクターの操作に置き換えたゲームの一例を示す。例えば、プラント制御における外乱値Cは、変換後のゲームにおいてキャラクターの操作を阻害する風雨に変換され、操作量Aは、変換後のゲームにおいてキャラクターの位置操作を入力する操作情報Dに変換される。また、上限値及び下限値は、変換後のゲームにおいてキャラクターが移動できる範囲を制限する壁に変換される。この場合、ゲームのプレイヤーは、風雨の影響を受けながらも、壁に接触しないようにキャラクターを移動させるように操作情報Dを入力する。例えば、この場合、外乱値の計測データが場所による風雨の濃淡(強度)に反映されてもよい。
【0029】
このようなゲームを実現するゲームデータには、例えば壁の位置の座標を示す情報や、風雨の強弱を示す情報、キャラクターの初期位置の座標を示す情報などが含められ、それらの情報はプラント1で取得される計測データに基づいて生成される。なお、図2の例における外乱値Cなどのように、ゲーム上の課題の設定に予測値が必要となる場合、その予測値を示すデータ(以下「予測データ」という。)は計測データとともにプラント1から供給されてもよいし、ゲームサーバ2において計測データに基づいて生成されてもよい。例えば、予測データを生成する方法は、過去の計測データや、それらの統計データなどを用いて生成する方法であってもよいし、これら以外の方法であってもよい。このようにして生成されたゲームデータとフレームワークがアプリケーションに読み込まれることにより、ゲーム端末3において上記ゲームの実行環境が生成される。この場合、アプリケーションはゲーム実行部33として機能する。
【0030】
ここで、生成されたゲームの実行環境に対してプレイヤーが入力した操作情報Dはゲーム実行部33によってプレイデータの一部として記録され、プレイデータ送信部34によってゲームサーバ2に供給される。ゲームサーバ2では、運転データ生成部223が、プレイデータに含まれる操作情報Dを操作量Aに変換することにより運転データが生成される。ここで操作情報Dを操作量Aに変換する操作と、計測データをゲームデータに変換する操作とは互いに逆変換の関係にあり、操作情報Dと操作量Aとは1対1に対応する。
【0031】
なお、変換後のゲームは、プレイヤーの操作に対して採点を行い、プレイヤーの獲得したスコアを表示させるように構成されてもよい。図2(B)に示す表示SCは、スコア表示の一例である。このような採点やスコア表示は、プレイヤーがゲームをプレイするモチベーションを高めることができるだけでなく、運転データの生成に用いるべきプレイデータの選択を容易にすることができる。
【0032】
このようにして制御対象プロセスの制御が遊戯性の高いゲームに置き換えられることで、プラント1の管理者は制御対象プロセスの制御に関して必要条件を満たす多くの選択肢を得ることができる。従来、プラント等での自動制御は、制御対象プロセスの応答特性を記述したプロセスモデルを用いて行われることが多い。しかしながら、一般に、実際の制御対象プロセスのプロセスモデルは、単純な代数的逆算によって操作量を一意に決定することができないものであることが多い。そのため、従来は、このような代数的手法に代えて、解析的手法を用いて取得した操作量の推定値を実際の操作量として用いる場合も少なくなかった。そして、一般に、解析的手法による操作量の推定には膨大な反復計算が必要になる場合が多い。また、このような操作量の推定にかかる時間や推定の精度は、実施者の知識やノウハウが大きく影響する場合がある。このような理由により、従来は、制御対象プロセスの管理において、操作量の決定に多くの労力を要するという課題があった。
【0033】
これに対し、本実施形態のプラント制御システム100では、このような解析的手法による操作量の推定処理(の一部又は全部)を人間による直感的判断に置き換えることで、最適解ではないものの、必要条件を満たす現実解を得ることができる。また、本実施形態のプラント制御システム100では、人間が直感的判断を行う環境をゲームとして提供することにより、より多くの現実解を得ることができる。
【0034】
また、操作量の推定という問題が見た目の異なる他の問題(すなわちゲーム)に置き換えられることにより、制御対象プロセスの制御に関する知識を有さない非専門家の直感的な判断能力を操作量の推定という専門的な問題の解決に利用することが可能となる。また、操作量の推定という問題がゲームという一種の娯楽的活動に置き換えられることにより、より多くのプレイヤーに対して問題解決に参加する動機づけを行うことができる。そして、より多くのプレイヤーによってゲームがプレイされることにより、より多くのプレイデータを収集することが可能となり、制御対象プロセスの制御精度を向上させることができる。
【0035】
本実施形態のプラント制御システム100は、このような効果を奏することにより、操作量の決定に要する処理負荷を低減するものである。
【0036】
図3は、第1の実施形態のプラント制御システム100の動作例を示すシーケンス図である。まず、プラント1において、計測データ取得部111が制御対象プロセスの動作環境に関する計測データを取得する(ステップS101)。計測データ送信部112は、計測データ取得部111によって取得された計測データをゲームサーバ2に送信する(ステップS102)。
【0037】
続いて、ゲームサーバ2では、計測データ受信部211がプラント1から計測データを受信する(ステップS103)。計測データ受信部211は、受信した計測データを計測データ記憶部212に記録する。ゲームデータ生成部214は、計測データ記憶部212に記憶されている計測データと、フレームワーク記憶部213に記憶されているゲームフレームワークとに基づいてゲームデータを生成する(ステップS104)。ゲームデータ送信部215は、ゲームデータ生成部214によって生成されたゲームデータをゲーム端末3に送信する(ステップS105)。
【0038】
例えば、ゲームデータ生成部214は、計測データ記憶部212に蓄積された過去の計測データに基づいて、操作量を推定する対象の期間(以下「推定期間」という。)における制御対象プロセスの動作環境を予測し、その予測結果に基づいて推定期間における制御上の制約条件を決定する。ゲームデータ生成部214は、決定した制約条件を制御対象プロセスのプロセスモデルに適用し、適用後のプロセスモデルをゲームフレームワークに組み込むことでゲームデータを生成する。
【0039】
例えば、制御対象プロセスについて、ある1日の管理値の実績値が計測データとして得られている場合、その管理値の実績値に基づいて管理値の上限値及び下限値を決定することができる場合がある。例えば、下水処理プラントにおいて1日に流入する原水の水質や水量は、天候や季節等の条件が同じであれば、日によらず同様のパターンで変動することが知られている。そのため、管理値も同様に変動すると仮定すれば、過去の管理値の変動パターンを基準とする所定の変動幅によって管理値の上限値及び下限値を設定することができる。
【0040】
このように決定した管理値の上限値及び下限値(制約条件の一例)をプロセスモデルに適用して、ゲームフレームワークに組み込むことにより、ゲームデータ生成部214は、例えば図2の例のようなプレイ画面を表示するゲームデータを生成することができる。
【0041】
続いて、ゲーム端末3では、ゲームデータ受信部31がゲームサーバ2からゲームデータを受信する(ステップS106)。ゲーム実行部33は、ゲームデータ受信部31によって受信されたゲームデータと、フレームワーク記憶部32に記憶されているゲームフレームワークとに基づいて、操作量の推定という問題を見た目の異なる他の問題に置き換えるゲームを実行する(ステップS107)。また、ゲーム実行部33は、実行したゲームに関するプレイデータを生成する(ステップS108)。プレイデータ送信部34は、ゲーム実行部33によって生成されたプレイデータをゲームサーバ2に送信する(ステップS109)。
【0042】
続いて、ゲームサーバ2では、プレイデータ受信部221がゲーム端末3からプレイデータを受信する(ステップS110)。プレイデータ受信部221は受信したプレイデータをプレイデータ記憶部222に記録する。運転データ生成部223は、プレイデータ記憶部222に記憶されているプレイデータに基づいてプラント1の運転データを生成する(ステップS111)。運転データ送信部224は、運転データ生成部223によって生成された運転データをプラント1に送信する(ステップS112)。
【0043】
例えば、プレイデータは、プレイヤーがプレイしたゲームのゲームデータと、プレイヤーがゲームのプレイ中に行った操作の履歴を示す情報(操作情報)と、そのゲームのプレイ結果を示す情報と、を含むデータとして生成され、プレイデータ記憶部222に記録される。また、プレイデータは各プレイヤーのプレイごとに生成される。そのため、ゲームが多くのプレイヤーによって繰り返しプレイされるほど、そのゲームについて多くのプレイデータを収集されることになる。
【0044】
この場合、運転データ生成部223は、プラント1に関する各種の計測データに基づいて、プラント1の将来の運転期間における制御対象プロセスの動作環境を予測するとともに、予測結果に類似する動作環境について生成されたゲームのプレイデータを抽出する。具体的には、運転データ生成部223は、計測データ記憶部212に蓄積されている計測データのうち各種物理量の変動パターンが予測値の変動パターンと近い計測データに基づいて生成されたゲームに関するプレイデータを抽出する。
【0045】
続いて、運転データ生成部223は、抽出されたプレイデータのうちプレイ結果が最も良好であったものを選択し、選択したプレイデータに含まれるプレイヤーの操作情報に基づいてプラント1の運転データを生成する。具体的には、運転データ生成部223は、操作情報によって示されるプレイヤーの操作履歴を制御対象プロセスの操作量の時系列データに変換し、取得した時系列データをプラント1の将来の運転期間と組み合わせることにより運転データを生成する。
【0046】
プラント1では、運転データ受信部121が、このように生成された運転データをゲームサーバ2から受信(ステップS113)し、運転制御部122が、受信された運転データに基づいて制御対象設備の運転を制御する(ステップS114)。
【0047】
このように構成された第1の実施形態のプラント制御システム100は、必要な制御精度の維持と運用コストの削減との両立をより容易に実現することができる。具体的には、ゲームサーバ2が、プレイ結果の良好なプレイデータを用いてプラント1の運転データを生成することにより、制御対象プロセスの制御において必要な精度を維持することができる。また、ゲームサーバ2が、プラント1に代わって運転データを生成することによりプラント1の運用コストを削減することができる。さらに、従来は解析的手法によって決定されていた操作量を、ゲームサーバ2が人間による直感的判断に基づいて決定することによって、操作量の決定に要するシステム全体の処理負荷を低減することができる。
【0048】
なお、実施形態のプラント制御システム100において、ゲームサーバ2及びゲーム端末3は、プラント1の運用コストを低減したいプラント1の事業者(以下「プラント事業者」という。)によって導入される場合が主に想定されるが、ゲームサーバ2及びゲーム端末3の管理主体は必ずしもプラント事業者である必要はない。また、これらの管理主体をそれぞれ別の主体とした場合、各主体がプラント制御システム100に必要な機能をそれぞれの事業により良く適合する形で実現することにより、各管理主体がそれぞれの事業との相乗効果によってより多くのメリットを享受することができる。図4は、このような相乗効果を得る構成の一例を示す図であり、プラント1、ゲームサーバ2、ゲーム端末3の管理主体を、それぞれプラント事業者、ゲーム事業者、一般のゲーム参加者とした場合を示している。
【0049】
この場合、プラント事業者は、ゲームサーバ2及びゲーム端末3を導入する必要がなくなり、ゲーム事業者に計測データを提供するだけでよくなるため、より多くのコスト削減を実現することができる。
【0050】
一方で、近年多くのゲーム事業者がゲームのオンライン配信を行っていることに加え、本実施形態におけるゲームサーバ2の機能が一般的なハードウェア構成(通信部及び記憶部を含む)を有する情報処理装置のソフトウェア処理によって実現できることを鑑みれば、ゲーム事業者にとってゲームサーバ2を導入するハードルは必ずしも高くなく、むしろゲームコンテンツの生成に必要なデータ(すなわち計測データ)をプラント事業者から取得することができる点でのメリットは大きいものと考えられる。そのため、ゲーム事業者のメリットとして、ゲーム参加者に提供するゲームコンテンツをより少ないコストで生成することができることが考えられる。
【0051】
なお、ゲーム事業者がゲームサーバ2の管理主体となる場合、プラント1とゲームサーバ2とは、互いに送信データの圧縮又は暗号化して送信するように構成されてもよい。また、ゲーム端末3は、受信された全てのゲームデータのプレイが完了した時点でプレイデータを送信するように構成されてもよいし、プレイが完了したものから順にプレイデータを送信するように構成されてもよい。
【0052】
また、プレイヤーがゲームをプレイするモチベーションを高めるために、ゲームサーバ2はプレイデータの一部又は全部をプレイヤーに提供するプレイデータ提供部をさらに備えてもよい。この場合、プレイデータ提供部は、プレイデータをそのまま提供するように構成されてもよいし、プレイデータを加工して得られるデータを提供するように構成されてもよい。例えば、プレイデータ提供部は、プレイヤーが自身のスコアを、他のプレイヤーのスコアと比較することができるようなデータを生成して提供してもよい。この場合、例えば、プレイデータ提供部は、プレイヤーのスコアをランキング形式で表示するデータを生成して提供してもよい。また、プレイデータ提供部は、対象のプレイヤーのスコア履歴を表示するデータを生成して提供してもよい。
【0053】
また、ゲーム端末3を用いたゲームの実行形式は、各プレイヤーが個々にゲームをプレイする形式であってもよいし、複数のプレイヤーが参加してプレイする形式であってもよい。また、複数のプレイヤーが参加するゲーム形式において、各ゲーム端末3の間の通信は、近距離無線通信方式によって実現されてもよいし、インターネット等のWAN(Wide Area Network)を介して行われてもよい。また、この場合のゲーム形式は、各プレイヤーが同じタイミングでプレイする形式であってもよいし、異なるタイミングでプレイする形式であってもよい。このように、複数のプレイヤーが同じゲームに参加する場合、ゲーム実行部33は、各プレイヤーのプレイデータを1つのプレイデータに集約してゲームサーバ2に提供してもよい。
【0054】
また、ゲームサーバ2はプラント1に供給した運転データに対して行われた評価に応じて、ゲームデータを更新するように構成されてもよい。例えば、ある一部の運転データの評価がプラント事業者の要求水準よりも低かった場合、ゲームデータ生成部214がその低評価部分についてより良いプレイデータが得られるように、その低評価部分のプレイに関してより大きなインセンティブを与えるようにゲームデータを更新してもよい。このようにすれば、低評価部分について、より多くのプレイデータが得られるようになる。又は、低評価部分についてより質の高いプレイデータが得られるようになる。例えば、ゲームデータ生成部214は、低評価部分のプレイについてより高得点を与えるようにゲームデータを更新してもよい。
【0055】
また、ゲームサーバ2は運転データの生成の困難度に応じてゲームデータを更新するように構成されてもよい。例えば、この場合、ゲームデータ生成部214は、プラント事業者が要求する水準と運転データによって実現されたプラント制御の水準との乖離度を示す情報をプラント1から取得し、この乖離度の大きさに応じて、低評価部分のプレイに与えるインセンティブの大きさを調整してもよい。
【0056】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図である。第2の実施形態のプラント制御システム100aは、ゲームサーバ2に代えてゲームサーバ2aを備える点で第1の実施形態のプラント制御システム100と異なる。また、ゲームサーバ2aは、ゲームデータ生成部214に代えてゲームデータ生成部214aを備える点で第1の実施形態のゲームサーバ2と異なる。第2の実施形態のプラント制御システム100aのその他の構成は第1の実施形態のプラント制御システム100と同様である。そのため、図5では、図1と同じ符号を付すことによりこれらの同様の構成についての説明を省略する。
【0057】
ゲームデータ生成部214aは、生成するゲームデータのサイズを適切(以下「適正サイズ」という。)なサイズに調整する機能をさらに有する点で第1の実施形態におけるゲームデータ生成部214と異なる。具体的には、ゲームデータ生成部214aは、適正サイズ未満のサイズで生成されたゲームデータを適正サイズに嵩増しする機能(以下「嵩増し機能」という。)と、ゲームデータを分割する機能(以下「分割機能」という。)と、ゲームデータを結合する機能(以下「結合機能」という。)とを有し、これらの各機能の単体又は組み合わせによってゲームデータのサイズを適正サイズに調整する。なお、適正サイズは、ゲーム端末3におけるゲームのプレイ時間に応じて適当に設定されてよい。また、ゲームサーバ2aが、複数のプラントに対して運転データを供給する場合、適正サイズは供給先のプラント事業者数を考慮して設定されてもよい。
【0058】
図6は、嵩増し機能の具体例を示す図である。データD61は嵩増し前のゲームデータを表し、データD62は嵩増後のゲームデータを表す。各ゲームデータの横軸はゲーム内で進行する時間(以下「ゲーム時間」という。)を表し、縦軸はゲーム時間に対するゲーム情報の変化を表す。ゲーム情報はゲームデータを構成する情報であって、ゲーム時間に対応する時系列データである。図6は各ゲームデータが1つのゲーム情報で構成される場合の例を示す。ここでデータD61のサイズは適正サイズz0未満のサイズz1である。この場合、ゲームデータ生成部214aは、付加後のサイズが適正サイズz0となるように擬似データP61及びP62を生成し、生成した擬似データP61及びP62をデータD61に付加することでデータD62を生成する。
【0059】
なお、擬似データは、生成されたゲームデータの不足分を連続的に補うことができる擬似的なゲームデータである。例えば、擬似データは、過去の計測データに基づいて生成される。例えば、図6の例の場合、ゲームデータ生成部214aは、計測データ記憶部212に蓄積されている過去の計測データのうち、その変動パターンがデータD61の生成に用いた計測データの変動パターンに類似する計測データを抽出し、抽出した類似の変動パターンの前後の計測データを用いて擬似データP61及びP62を生成することができる。
【0060】
なお、抽出される計測データが複数ある場合には、それらの代表値(例えば、平均値、中央値、最頻値など)を示す統計データを擬似データP61及びP62としてもよい。また、擬似データの生成には必ずしも過去の計測データを用いる必要はない。例えば、補うべき部分が少ない場合には、ゲームデータ生成部214aは、線形又は非線形の各種補完法に基づいてゲームデータから擬似データを生成するように構成されてもよい。
【0061】
なお、図6は、一つのゲーム情報で構成されたゲームデータの例を示したが、ゲームデータは複数のゲーム情報で構成されてもよい。ゲームデータが複数のゲーム情報で構成される場合、複数のゲーム情報の間で、ゲームデータを生成する上での制約条件が設けられてもよい。例えば図2(B)には、上限値、下限値、外乱値に基づく壁及び風雨を示す3つのゲーム情報が示されている。この場合、上限値と下限値について、前者は後者より大きいという制約条件の下、ゲームデータの不足分を生成する。
【0062】
図7は、分割機能の具体例を示す図である。データD71は分割前のゲームデータを表し、データD72及びD73は分割後に適正サイズに嵩増しされたゲームデータを表す。ここで、データD71のサイズは適正サイズz0より大きいサイズz2である。この場合、ゲームデータ生成部214aは、まずデータD71を2つのデータD72’及びD73’に分割(例えば二等分)し、分割後のデータD72’及びD73’のそれぞれを嵩増し機能によって適正サイズz0まで嵩増しすることによりデータD72及びD73を生成する。
【0063】
図8は、結合機能の具体例を示す図である。データD81及びD82は結合前のゲームデータを表し、データD83は結合後に適正サイズに嵩増しされたゲームデータを表す。ここで、データD81のサイズは適正サイズz0より小さいサイズz3であり、データD82のサイズは適正サイズz0より小さいサイズz4である。この場合、ゲームデータ生成部214aは、まずデータD81及びD82を連続的に結合する擬似データP81を生成し、擬似データP81を挟むようにしてデータD81及びD82を結合することによりデータD83’を生成する。ゲームデータ生成部214aは、生成したデータD83’を嵩増し機能によって適正サイズz0まで嵩増しすることによりデータD83を生成する。
【0064】
図9は、第2の実施形態のゲームサーバ2aが自身の生成したゲームデータのサイズを調整する処理(以下「サイズ調整処理」という。)の具体例を示すフローチャートである。なお、ここでは、ゲームサーバ2aの管理主体は一のゲーム事業者であり、ゲーム事業者は複数のプラント事業者に対して運転データを提供し得るものとする。また、ここでは、ゲームサーバ2aが複数のプラント事業者に対して運転データを提供する場合には、ゲームサーバ2aは複数のプラント事業者から同じタイミングで計測情報の提供を受け、複数のプラント事業者について同じタイミングでゲームデータを生成するものとする。
【0065】
まず、ゲームデータ生成部214aは、ゲームデータを生成した対象のプラント事業者が複数であるか否かを判定する(ステップS201)。ここで、ゲームデータを生成する対象のプラント事業者が複数であるか否かは、予めゲームサーバ2aに登録されている情報に基づいて判定されてもよいし、取得された計測データの提供元に基づいて判定されてもよい。対象のプラント事業者が複数である場合(ステップS201-YES)、ゲームデータ生成部214aは複数のプラント事業者について生成した複数のゲームデータを結合機能によって結合する(ステップS202)。
【0066】
続いて、ゲームデータ生成部214aは、結合後のゲームデータのサイズが適正サイズであるか否かを判定する(ステップS203)。ここで、ゲームデータ生成部214aは、結合後のゲームデータのサイズが適正サイズである場合(ステップS203-YES)にはサイズ調整処理を終了し、適正サイズでない場合(ステップS203-NO)には結合後のゲームデータのサイズが適正サイズより大きいか否かを判定する(ステップS204)。結合後のゲームデータのサイズが適正サイズより大きい場合(ステップS204-YES)、ゲームデータ生成部214aは、結合後のゲームデータを適正サイズ以下に分割する(ステップS205)。この場合、ゲームデータ生成部214aは、分割後のゲームデータのそれぞれを嵩増し機能によって適正サイズに調整(ステップS206)してサイズ調整処理を終了する。
【0067】
一方、ステップS201において、対象のプラント事業者が複数でない場合(ステップS201-NO)、ゲームデータ生成部214aは一のプラント事業者について生成したゲームデータのサイズが適正サイズであるか否かを判定する(ステップS207)。ここで、ゲームデータ生成部214aは、ゲームデータのサイズが適正サイズである場合(ステップS207-YES)にはサイズ調整処理を終了し、適正サイズでない場合(ステップS207-NO)にはゲームデータのサイズが適正サイズより大きいか否かを判定する(ステップS208)。ゲームデータのサイズが適正サイズより大きい場合(ステップS208-YES)、ゲームデータ生成部214aは、ゲームデータを適正サイズ以下に分割する(ステップS209)。この場合、ゲームデータ生成部214aは、分割後のゲームデータのそれぞれを嵩増し機能によって適正サイズに調整(ステップS206)してサイズ調整処理を終了する。
【0068】
一方、ステップS204において、結合後のゲームデータのサイズが適正サイズより小さい場合(ステップS204-NO)、又はステップS208において、一のプラント事業者について生成したゲームデータのサイズが適正サイズより小さい場合(ステップS208-NO)、ゲームデータ生成部214aは嵩増し機能によってゲームデータを適正サイズに調整(ステップS206)してサイズ調整処理を終了する。
【0069】
このようなサイズ調整処理を行うことにより、ゲームサーバ2aは、ゲーム端末3に対して適正サイズに調整されたゲームデータを供給することができる。そして、ゲームデータが適正サイズに調整されることにより、ゲームのプレイ時間が適度な長さとなり、ゲームの遊戯性を向上させることができる。
【0070】
また、複数のプラント事業者について生成されたゲームデータが結合されることにより、計測データとゲームデータとの関連性が薄れ、ゲームデータから対象プラントを推測ことが困難となる。これにより、ゲーム事業者は各プラント事業者に対してよりセキュリティの高いサービスを提供することが可能となる。
【0071】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図である。第3の実施形態のプラント制御システム100bは、ゲームサーバ2aに代えてゲームサーバ2bを備える点で第2の実施形態のプラント制御システム100aと異なる。また、ゲームサーバ2bは、ゲームデータ生成部214aに代えてゲームデータ生成部214bを備える点で第2の実施形態のゲームサーバ2aと異なる。第3の実施形態のプラント制御システム100bのその他の構成は第2の実施形態のプラント制御システム100aと同様である。そのため、図10では、図5と同じ符号を付すことによりこれらの同様の構成についての説明を省略する。
【0072】
ゲームデータ生成部214bは、プラント1から供給される計測データが所定の条件を満たしている場合には、過去に生成したゲームデータを当該計測データに係るゲームデータとして再利用する点で第1の実施形態におけるゲームデータ生成部214aと異なる。例えば、ゲームデータ生成部214bは、プラント1から供給される計測データについて過去の計測データとの類似度を算出し、その類似度が所定の閾値以上である場合には、その類似する過去の計測データに基づいて生成されたゲームデータを現在の計測データに係るゲームデータとして再利用する。
【0073】
図11は、第3の実施形態のゲームサーバ2bが過去に生成したゲームデータを再利用する処理(以下「再利用処理」という。)の具体例を示すフローチャートである。まず、ゲームデータ生成部214bは、ゲームデータの生成に先立って、計測データ記憶部212に蓄積されている過去の計測データの中に、プラント1から供給されている現在の計測データと同じ計測値を示す計測データ(以下「同一の計測データ」という。)があるか否かを判定する(ステップS301)。ここで、同一の計測データがある場合(ステップS301-YES)、ゲームデータ生成部214bは、その計測データに基づいて生成されたゲームデータのプレイデータをプレイデータ記憶部222から取得して運転データ生成部223に出力する(ステップS302)。
【0074】
一方、同一の計測データがない場合(ステップS301-NO)、ゲームデータ生成部214bは、計測データ記憶部212に蓄積されている過去の計測データの中に、現在の計測データと類似する計測データがあるか否かを判定する(ステップS303)。ここで、類似する計測データとは、その変動パターンと現在の計測データの変動パターンとの類似度が所定の閾値以上である計測データである。類似する計測データがない場合(ステップS303-NO)、ゲームデータ生成部214bは、類似又は非類似を判定する際の基準値(以下「判定基準値」という。)を修正し(ステップS304)、ステップS303の判定処理を繰り返し実行する。なお、判定基準値の修正は、判定基準値を管理者の手入力によって指定される値に更新することによって実現されてもよいし、予め定められた所定値ずつ現在値を大きく又は小さくすることによって実現されてもよい。
【0075】
一方、類似する計測データがある場合(ステップS303-YES)、ゲームデータ生成部214bは、類似する過去の計測データに基づいて生成されたゲームデータを現在の計測データに対するゲームデータとしてゲームデータ送信部215に出力する(ステップS305)。
【0076】
このようなゲームデータの再利用が行われることにより、ゲームサーバ2bの処理負荷を低減するとともに、運転データの生成に要する時間を短縮することが可能となる。具体的には、現在の計測データと同一の過去の計測データが得られている場合には、ゲームデータを生成する処理に加え、プレイデータを取得する処理を省略することができる。また、現在の計測データと類似する計測データが得られている場合には、ゲームデータを生成する処理を省略することができる。
【0077】
また、このようなゲームの再利用によれば、より多くのプレイデータに基づいて運転データを取得することにより、良好な運転データが得られる可能性を高くすることができる。例えば1つのゲームについて平均100件のプレイデータが収集される場合、過去に同様のゲームが既に9回実施されている(すなわち900件分を再利用する)と、今回分も合わせ1000件近いプレイデータが蓄積されることになる。このようにして、運転データの元となるプレイデータの母数を増加させることにより、運転データの品質を向上させることができる。
【0078】
また、このようなゲームデータの再利用が可能となることにより、ゲーム参加者が少ない場合であっても多くのプレイデータを収集することが可能となる。例えば、平均100件のプレイデータが収集されることが見込まれたのに対して10件程度しか収集されなかった場合であっても、蓄積されている過去のプレイデータを再利用することで所定数以上のプレイデータの母数を確保することができる。
【0079】
(変形例)
現在の計測データと過去の計測データとは、両者が完全に同一である場合に同一とみなされてもよいし、両者の類似度が所定の閾値以上である場合に同一とみなされてもよい。また、ゲームデータ生成部214bは、ステップS301において現在の計測データと同一の過去の計測データがない場合には、同一性の判定基準値についても類似性の判定基準値と同様の修正を行うように構成されてもよい。また、この場合、ゲームデータ生成部214bは、同一性の判定基準値の修正に応じて類似性の判定基準値を修正するように構成されてもよいし、類似性の判定基準値の修正に応じて同一性の判定基準値を修正するように構成されてもよい。このような構成によれば、現在の計測データに類似している過去の計測データのうち、比較的類似度が高いものについてはプレイデータを再利用し、それ以外のものについてはゲームデータを再利用することができる。
【0080】
また、ゲームデータ生成部214bが、ゲームデータ生成部214aと同様にゲームデータを適性サイズに調整する機能を備える場合、嵩増し機能によって嵩増した部分のゲームデータについて取得されるプレイデータについても再利用することが可能である。また、これとは逆のアプローチとして、予め再利用したいプレイデータの量を定めておき、これに合わせてゲームデータを嵩増しすることも可能である。このような構成によれば、1つのゲームデータから効率よくプレイデータを収集することが可能となる。
【0081】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態のプラント制御システムのシステム構成の具体例を示すブロック図である。第4の実施形態のプラント制御システム100cは、ゲームサーバ2に代えてゲームサーバ2cを備える点で第1の実施形態のプラント制御システム100と異なる。また、ゲームサーバ2cは、フレームワーク記憶部213に代えてフレームワーク記憶部213cを備える点、ゲームデータ生成部214に代えてゲームデータ生成部214cを備える点で第1の実施形態のゲームサーバ2と異なる。第4の実施形態のプラント制御システム100cのその他の構成は第1の実施形態のプラント制御システム100と同様である。そのため、図12では、図1と同じ符号を付すことによりこれらの同様の構成についての説明を省略する。
【0082】
フレームワーク記憶部213cは、プラント事業者の要求するゲームの仕様(以下「要求仕様」という。)を実現するために機能が異なる複数のフレームワークを記憶している点で第1の実施形態におけるフレームワーク記憶部213と異なる。具体的には、フレームワークは、要求仕様の実現のために解決すべき1つ以上のメトリックについての解決手段を有する。一般にメトリックとは基準や指標等の意味を持つ言葉であるが、ここでのメトリックはプラント制御のゲーム化において満たされるべき基準や指標として課される各種の制約や条件を意味するものとする。例えば、プラントの運用に必要な操作や要求される管理の水準はプラントの種類によって異なり、また同じ種類のプラントであってもプラントごとに異なる場合がある。そして、このようなプラント運用の違いを個別のゲームデータごとに実装することは開発コストの面で非常に非効率的である。そこで、本実施形態では、要求仕様の実現のために解決すべき各メトリックの解決手段を有するフレームワークを組み合わせてゲームデータを生成する。このようにすることで、要求仕様の異なるゲームの実行環境を効率良く生成することができるため、ゲームの開発にかかるコストを削減することができる。
【0083】
例えば、メトリックの一例として、プラント制御のゲーム化にかけることのできる期間又はコストに関する条件や、ゲーム化後のプラント運用にかけることのできるコストに関する条件、ゲーム参加者の人数に関する条件などが挙げられる。なお、要求仕様は、ゲーム事業者がプラント事業者に対してサービスを開始する前に事前にゲーム事業者に通知されてもよい。また、要求仕様は、計測データの提供とともにゲーム事業者に通知されてもよい。この場合、ゲームサーバ2cは、通知された要求仕様に応じた適切なフレームワークを選択することで、ゲームデータの生成を要求仕様の通知に応じてリアルタイムに実行するように構成されてもよい。
【0084】
ゲームデータ生成部214cは、計測データに基づいてゲームデータを生成する点では第1の実施形態におけるゲームデータ生成部214と同様であるが、ゲームデータの生成においてプラント1の指定する要求仕様に応じたフレームワークを用いる点でゲームデータ生成部214と異なる。具体的には、ゲームデータ生成部214cは、メトリックと、そのメトリックを扱うことのできるフレームワークとの対応関係を示す設定情報に基づいてゲームデータの生成に使用すべきフレームワークを選択する。設定情報は、計測データ記憶部212やフレームワーク記憶部213c等に予め記録されているものとする。
【0085】
図13は、第4の実施形態におけるメトリックの具体例を示す図である。図13(A)は各事業者がプラント制御のゲーム化において実現すべき要求仕様を構成するメトリックの具体例を示す。例えば、図13(A)は、ゲーム化した場合のゲームデータの情報量がゲーム時間にして20秒ぶんの情報量であり、かつ連続値である3つの入力変数を操作量とするプラント事業者Aにおいて、許容されるゲーム化の導入期間が2週間以内であり、許容されるゲーム化の導入コストが100万円以下であり、許容されるゲーム化後の運用コストが20万円/月以下であり、ゲーム参加者の人数が10万人/月以上であることを表している。
【0086】
これに対して図13(B)は、ゲームサーバ2の備える各フレームワークのうち、ゲームデータの情報量がゲーム時間にして100秒ぶんの情報量であり、かつ連続値である3つの入力変数を操作量とするプラント制御のゲーム化に対応しているフレームワーク1を用いたゲーム化を行う場合、その導入期間が1週間であり、導入コストが50万円であり、導入後の運用コストが10万円/月であり、導入により見込めるゲーム参加者の人数が20万人/月であることを表している。
【0087】
この場合、事業者Aの要求仕様をフレームワーク#1で実現し、事業者Bに課されているメトリックをフレームワーク#2で実現し、事業者Cに課されているメトリックをフレームワーク#1及び#2の組み合わせで実現することができる。また、別の対応として、事業者A、B及びCに課されている全てのメトリックを1つのフレームワーク#3で実現することも可能である。
【0088】
図14は、第4の実施形態において生成されるゲームデータの具体例を示す図である。図14は、3つのプラントA、B、Cが、ゲームサーバ2cに対して、それぞれのプラントごとに異なる要求仕様に基づいて計測データを提供する場合を想定したものである。一方、ゲームサーバ2cは、実現可能なメトリックの異なるフレームワーク#1と、フレームワーク#2とを保持している。
【0089】
この場合、ゲームデータ生成部214cは、各要求仕様に含まれるメトリックを比較し、適切なフレームワークを設定情報に基づいて選択し、各プラントについて選択したフレームワークを用いてゲームデータを生成する。具体的には、図14の例の場合には、第1のフレームワークを用いてゲームデータD131を生成し、第2のフレームワークを用いてゲームデータD132を生成する。この場合、第1のフレームワーク及び第2のフレームワークのいずれも、プラントCの要求仕様を単独では実現できないため、プラントCに対応するゲームデータは、2つのフレームワークを用いて生成されることになる。
【0090】
このように構成された第4の実施形態のプラント制御システム100cによれば、ゲームサーバ2cがプラント1から通知される要求仕様を、その要求仕様に含まれる各メトリックの解決手段を備えるフレームワークを組み合わせてゲームデータを生成することにより、複数種類のフレームワークを効率的に共有することができる。その結果、より多くのプラント事業者に対して同時に運転データを提供することが可能となる。
【0091】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、制御対象の動作環境に関する物理量の計測値を示す計測データに基づいて、当該制御対象の操作量を決定するのに必要な情報をゲームの操作情報として人間に入力させるためのゲームデータを生成するゲームデータ生成部と、上記ゲームのプレイ結果を示すプレイデータに基づいて生成される操作量の時系列データであって、上記制御対象を許容範囲内の精度で制御することを可能にする操作量を示す運転データを生成する運転データ生成部とを持つことにより、必要な制御精度の維持と運用コストの削減との両立をより容易に実現することができる制御支援装置、制御支援方法、コンピュータプログラム及びプラント制御システムを提供することができる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
100,100a,100b,100c…プラント制御システム、1…プラント、111…計測データ取得部、112…計測データ送信部、121…運転データ受信部、122…運転制御部、2,2a,2b,2c…ゲームサーバ、211…計測データ受信部、212…計測データ記憶部、213,213c…フレームワーク記憶部、214,214a,214b,214c…ゲームデータ生成部、215…ゲームデータ送信部、221…プレイデータ受信部、222…プレイデータ記憶部、223…運転データ生成部、224…運転データ送信部、3…ゲーム端末、31…ゲームデータ受信部、32…フレームワーク記憶部、33…ゲーム実行部、34…プレイデータ送信部
図1
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