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特許7358119順方向データ・コンテンツによって電力消費が駆動される、光ファイバ・ノード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】順方向データ・コンテンツによって電力消費が駆動される、光ファイバ・ノード
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20231002BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20231002BHJP
   H03F 3/20 20060101ALI20231002BHJP
   H04N 21/222 20110101ALI20231002BHJP
【FI】
H03F1/32 141
H03F1/02 111
H03F3/20
H04N21/222
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019155719
(22)【出願日】2019-08-28
(62)【分割の表示】P 2016536376の分割
【原出願日】2014-08-19
(65)【公開番号】P2019220978
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2019-08-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】61/867,550
(32)【優先日】2013-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/463,011
(32)【優先日】2014-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514188564
【氏名又は名称】アリス エンタープライジズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARRIS ENTERPRISES LLC
【住所又は居所原語表記】3871 Lakefield Drive, Suwanee, GA 30024, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】スヘンマーン、マルセル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マリセヴィック、ゾーラン
【合議体】
【審判長】高橋 宣博
【審判官】千葉 輝久
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-228570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0062533(US,A1)
【文献】特表2008-539674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098011(US,A1)
【文献】国際公開第2013/107756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅するために動作可能な増幅器を有するデバイスであって、前記デバイスは、
第1の増幅器電圧源であって、増幅器は、前記第1の増幅器電圧源からの出力によって提供される電力を用いて信号を増幅する、第1の増幅器電圧源と、
増幅すべき前記入力信号を表す波形を生成する第2の増幅器電圧源と、
増幅すべき前記入力信号のサンプルをピーク検出回路に通すことによって生成されるバイアス信号によって駆動される増幅器バイアス電流制御回路であって、前記増幅器バイアス電流制御回路からの出力は、前記増幅器のバイアス点を可変に変化させ、当該変化は前記入力信号のピークと同時に生じる、増幅器バイアス電流制御回路と、を備え、
前記増幅器バイアス電流制御回路の前記出力によって変更される前記増幅器の前記バイアス点は、前記増幅器の電力消費を低減するべく変化させられ、
前記増幅器は、前記バイアス信号の包絡線信号の変化に応じて調節される遅延入力信号によって駆動され、
前記遅延入力信号は、前記バイアス信号の応答を前記入力信号の1つ以上のピークと同時に生じさせるためにいくつかのサンプル分だけ遅延された前記入力信号であり、
前記増幅器は出力変圧器を有し、該出力変圧器は、前記増幅器の前記バイアス点の変化によって生じるコモン・モード電流変動についての抵抗を低減するための互いに結合された巻線を有する、デバイス。
【請求項2】
前記入力信号を増幅することは、前記入力信号の第1の成分を増幅することを含み、該増幅することの前に、増幅前の前記第1の成分がプリディストーションされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の成分は、前記第1の成分と、前記第1の成分の信号包絡線とに基づいてプリディストーションされる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の成分および別の成分が、関連する遅延を該成分間に有する、請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記入力信号と前記入力信号の包絡線とに基づくプリディストーション情報が前記増幅器に送信される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記増幅器バイアス電流制御回路は、固定電圧に接続されたインダクタによって前記増幅器にバイアスを提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記増幅器バイアス電流制御回路に接続されて、可変電圧を生成する、キャパシタをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順方向データ・コンテンツによって電力消費が駆動される、光ファイバ・ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本開示は、“順方向データ・コンテンツによって電力消費が駆動される、光ファイバ・ノード(Fiber-Optic Node with Forward Data Content Driven Power Consumption)”と題する2013年8月19日出願の米国仮出願第61/867,550号の優先権を主張するものであり、引用によりその全体が本明細書に援用される。
【0003】
ケーブル・テレビジョン(CATV)システムは、ビデオ、データ、音声、または高速インターネット・サービスなど、様々なメディア・コンテンツを加入者に提供することができる。CATVプロバイダは通常、同軸ネットワーク、光ファイバ・ネットワーク、またはハイブリッド・ファイバ/同軸(HFC)ネットワークなどの伝送ネットワークを介して、ヘッド・エンドからその加入者のクライアント・デバイスにメディア・コンテンツを送達する。これらのCATVネットワークにおけるデータ・スループット(または帯域幅)に対する要件は、顧客がより多くのコンテンツやデータ・サービスなどを要求するのに伴って、指数関数的に増大しつつある。これまでは、符号化効率およびトランスポート・プロトコルの改善により、ケーブル運営者が加入者需要および競争的需要に後れを取らないようにすることが可能であったが、次世代ケーブル・ネットワークの全体的性能を強化または抑制する可能性のある様々なネットワーク要素の分析を継続することが重要である。
【0004】
ケーブル・テレビジョン・ネットワーク内の無線周波(RF)増幅器のほとんどは、いわゆる「A級」動作モードで動作する。A級動作モードは、非常に高い忠実度の信号を提供し、これはしばしば、信号対雑音、および、信号対第2、第3、第4、第5...高調波歪み成分で定量化される。しかし、A級動作モードの場合の電力消費は、RF出力信号の複合電力の約100倍高い。この、より高い電力消費は、実効的な信号電力からの頻繁に生じる大きな「ピーク対平均」偏差に対応する必要性の結果として生じ、これは、増幅器の出力RFのrms振幅を、実装形態に応じて、電圧と電流のいずれかの出力レール・ツー・レール範囲のわずか約25%に設定することを含む場合がある。電力消費に対する需要がより高いことにより、RF利得ブロック(例えば、ヘッド・エンドの光送信機および受信機、光ファイバ・ノード、RF分配増幅器)を必要とするケーブル・ネットワーク製品のコストが押し上げられる。よって、雑音に対する出力信号電力を損なうことなく、CATVネットワークにおける電力散逸を低減することが望ましい。また、雑音に対する出力信号電力を改善するとともに、CATVネットワークにおける電力散逸を低減することが一層望ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】例示的なCATVシステムを示す図。
図2】代表的な基本的プッシュプル・トランジスタ増幅器の概略図。
図3図2に示す増幅器への入力電流の結果として得られる出力電流を示す図。
図4図3の増幅された信号を提供するときの、バイアスされた状態の図2の増幅器によって提供されるトランジスタ電流を示す図。
図5】開示されるディジタル順方向受信機の一実施形態を示す図。
図6】増幅器バイアシングを変更するための一実施形態を示す図。
図7】増幅すべき信号の形状を示す図。
図8】ピーク検出アルゴリズムの一実施形態を示す図。
図9図8に示す実施形態の結果として得られる入力波形および出力波形を示す図。
図10】バイアス電流が高いときの出力信号ピークを示す図。
図11】例示的なトランジスタ電流を示す図。
図12】ほぼ同じ大きさに拡大縮小されて比較されている入力信号および出力信号を示す図。
図13】例示的な線形化機能を示す図。
図14】2つの電圧ソースがトランジスタ増幅器を駆動する一実施形態を示す図。
図15】通常動作中および電圧一時的変動中の電力送達をサポートするインダクタにエネルギーが蓄積される電力源を示す図。
図16】固定電流を送達する例示的な電力源を示す図。
図17】電力源をキャパシタで置き換えた例示的な一実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
後述する実施形態を示す目的で、実施形態の例示的な構造を図面に示す。しかし、実施形態は、開示する特定の方法および手段に限定されない。
添付の図では、特許請求の範囲に記載される開示の一部を含む実施形態を示し、これらの実施形態の様々な原理および利点を説明するが、図に描かれた詳細は本開示の利益を有する当業者にはすぐに明らかであろうから、図示の詳細は、示す実施形態を理解するために必要なわけではないことを理解されたい。
【0007】
本開示では、CATVネットワークにおける電力消費を削減するシステムおよび方法について述べる。これらは、(1)信号に基づいて電力を取り出すことによってCATVネットワーク中のノードの電力効率を改善するシステム、および(2)信号包絡線情報を使用してCATV伝送システムにおける電力消費を削減する方法を含む。本明細書でより詳細に後述するように、開示するシステムおよび方法は、多くのディジタル順方向パス概念を利用し展開する。これらの概念は、限定されないが以下のものを含む。1)通信リンクの一端における(例えば、ディジタル順方向パス送信の場合のヘッド・エンド送信機側における)アナログからディジタルへの(A2D)RF信号変換。2)鮮鋭なディジタル・フィルタリングの実施を可能にするための、オーバーサンプリング、すなわち、サンプリングされた帯域幅の2倍のナイキスト周波数よりも高いレートでのサンプリング。これにより、RF信号の再構築に必要とされる2進データ・ビットの数が削減される。3)RF信号の再組立てに必要とされる2進ビットの数をさらに削減するための、圧縮コーディング、例えばハフマン・タイプの符号化。4)必要とされる距離にわたる、ただし約160.934キロメートル(100マイル)未満の、光オン/オフ送信。約160.934キロメートル(100マイル)は、DOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specification)(登録商標)標準によって指定される限度である。5)送信機からの元々符号化されたRF信号を再組立てするための、受信機におけるデータ圧縮解除、およびその後に続くディジタルからアナログへの(D2A)信号変換。
【0008】
また、本開示は、信号からの受信データが圧縮解除された後で、ただし圧縮解除された信号データが利得ブロックによって増幅される前に実施されることになる遅延を導入するシステムおよび方法について述べる。遅延の間、圧縮解除されたデータを使用して、さらに後の時点で利得ブロックによって増幅されることになる信号包絡線の大きさが予測される。次いで、信号包絡線の大きさを使用して、補助信号が生成される。この補助信号は、利得ブロックのための必要電圧/電流を最小限に抑え、それによりブロックが消費する電力を最小限に抑えるように、RF利得ブロックへの電力源を駆動する。さらに、信号包絡線の予測された大きさに基づく遅延された補助信号を、任意選択で遅延された信号自体と共に、フィードフォワードプリディストーション信号として使用することができ、このフィードフォワードプリディストーション信号は、信号包絡線を増幅するときにRF利得ブロックによって導入される歪みを補正する。
【0009】
本出願に開示するシステムおよび方法は、「ファイバ・トゥ・ザ・ラスト・アクティブ(fiber to the last active)」(FTTLA)、ノード・プラス・ゼロ(N+0)、またはファイバ・ディープ・アーキテクチャと代替的に呼ばれるアーキテクチャにおいて、多数のRF出力を有し、顧客構内にサービス提供する前の最終の増幅器としての働きをする、光ファイバ・ノードの電力消費を削減するのに、特に有用である可能性がある。というのは、このようなノードでは、ノードの出力におけるRF信号は通常、比較的多量の電力を消費するからである。しかし、アップストリームまたはリターン・パスA2D/D2Aシステムや、ディジタル・リターン受信機など、他のアーキテクチャ、または他のアーキテクチャのコンポーネントが、開示する技法から利益を得ることもできることを理解されたい。さらに、開示する技法は、他のディジタル順方向受信機のRF利得段を調整することにも適用することができる(この受信機がダウンストリーム・アーキテクチャにおける最終のRF利得段でなくても)。様々な実施形態に関する追加の詳細については、以下でより詳細に述べる。
【0010】
図1に、ビデオ、音声、および高速インターネット・サービスなど、高精細度ディジタル娯楽(エンターテインメント)および遠隔通信を送達するように動作可能な、例示的なケーブル・テレビジョン(CATV)システム100を示す。概して言えば、CATVシステム100は、娯楽および/または情報サービスを1つまたは複数の町、地域、またはその一部に広がる加入者基盤に提供する、娯楽および/または情報サービス・フランチャイズの、動作上の(例えば地理的な)フットプリントを指す。フランチャイズによって提供される個々の娯楽および/または情報サービス(例えば、娯楽チャネル・ラインナップ、データ・パッケージなど)は、システムごとに異なる場合がある。いくつかの大きいケーブル会社は、複数のケーブル通信システム(例えば、場合によっては数百個までのシステム)を運営し、マルチプル・システム・オペレータ(MSO)として一般に知られる。
【0011】
ケーブル・ネットワークは、全同軸、全ファイバ、またはハイブリッド・ファイバ/同軸(HFC)ネットワーク、例えばファイバ・トゥ・ザ・ラスト・アンプリファイア(fiber to the last amplifier)(FTTA)の形をとることができる。例示のみの目的で、図1には、ハイブリッド・ファイバ同軸(HFC)ネットワークを示す。HFCネットワークは、光ファイバと同軸ケーブルとを組み合わせたブロードバンド・ネットワークであり、ファイバ・ノードを戦略的に配置して複数の家庭にサービスを提供する。本出願に開示するシステムおよび方法は、様々なネットワーク中で採用することができ、HFCネットワークは非制限的な例として示すに過ぎないことを理解されたい。
【0012】
図1に示すネットワークは、光ファイバ接続と同軸接続の使用を組み合わせたHFCブロードバンド・ネットワークである。このネットワークはヘッド・エンド102を含み、ヘッド・エンド102は、アナログ・ビデオ信号と、様々なディジタル情報ソースからの種々のサービス(例えば、ビデオ、音声、およびインターネット)を表すディジタル・ビット・ストリームとを受信する。例えば、ヘッド・エンド102は、1つまたは複数のビデオ・オン・デマンド(VOD)サーバ、IPTVブロードキャスト・ビデオ・サーバ、インターネット・ビデオ・ソース、または、IPコンテンツを提供するための他の適切なソースから、コンテンツを受信することができる。
【0013】
IPネットワーク108は、ウェブ・サーバ110およびデータ・ソース112を含むことができる。ウェブ・サーバ110は、IPプロトコルを使用してビデオ・オン・デマンド、オーディオ・オン・デマンド、およびペイ・パー・ビュー・ストリームをIPネットワーク108に送達するストリーミング・サーバである。IPデータ・ソース112は、IPコンテンツを送信する地域エリアまたはバックボーン・ネットワーク(図示せず)に接続される場合がある。例えば、地域エリア・ネットワークは、インターネットもしくはIPベースのネットワーク、コンピュータ・ネットワーク、ウェブベースのネットワーク、または他の適切な有線もしくはワイヤレスのネットワークもしくはネットワーク・システムであるか、またはこれらを含むものとすることができる。
【0014】
ヘッド・エンド102において、様々なサービスは、RFキャリアに符号化、変調、およびアップコンバートされ、単一の電気信号に結合され、ブロードバンド光送信機に挿入される。光ファイバ・ネットワークが、ケーブル運営者のマスタ/地域ヘッド・エンド102から、複数の光ファイバ・ノード104まで延びている。ヘッド・エンド102は、光ファイバ103を介して光通信を提供するために、光送信機または送受信機を備えることができる。ヘッド・エンドと1つまたは複数のノードとの間に、地域ヘッド・エンドおよび/または近傍ハブ・サイトが存在してもよい。例示的なHFCネットワーク100の光ファイバ部分は、ヘッド・エンド102から地域ヘッド・エンド/ハブまで延びているか、複数のノード104まで延びているか、またはその両方まで延びている。光送信機は、電気信号を、光変調されたダウンストリーム信号に変換し、この信号はノードに送られる。そして、光ノードは、入ってきた信号をRFエネルギーに変換し、リターンRF信号をリターン・パスに沿って光信号に変換する。本明細書、図面、および特許請求の範囲では、用語「順方向パス」および「ダウンストリーム」は、ヘッド・エンドからノードへの、ノードから加入者への、またはヘッド・エンドから加入者へのパスを指すのに、交換可能に使用される場合がある。反対に、用語「リターン・パス」、「逆方向パス」、および「アップストリーム」は、加入者からノードへの、ノードからヘッド・エンドへの、または加入者からヘッド・エンドへのパスを指すのに、交換可能に使用される場合がある。また、本明細書、図面、および特許請求の範囲では、ノードは、CATVネットワークを介してローカル要求を送る、ヘッド・エンドと顧客家庭との間の任意のディジタル・ハブとすることができる。光ファイバを介した順方向パス光通信は、同軸ケーブルを介して加入者に送信されるように、ノードにおいて無線周波数(RF)通信に変換されてよい。反対に、加入者からのリターン・パスRF通信は、同軸ケーブルを介して提供され、通常は、光ファイバを介してヘッド・エンドに送信されるように、ノードにおいて光信号に変換される。各ノード104は、通信を加入者デバイス106からヘッド・エンド102にアップストリームに中継できるリターン・パス送信機を備えることができる。
【0015】
各ノード104は、1つまたは複数の顧客位置を含むサービス・グループにサービス提供する。例として、単一のノード104が、数千個のケーブル・モデムまたは他の加入者デバイス106に接続される場合がある。一例では、ファイバ・ノードが、1000個と2000個の間またはより多くの顧客位置にサービス提供することがある。HFCネットワークでは、光ファイバ・ノード104は同軸ケーブル・カスケード111を介して複数の加入者デバイス106に接続される場合があるが、当業者なら、同軸カスケードは、RF増幅器と、タップおよびスプリッタと、同軸ケーブルとの組合せを含む場合があることを認識するであろう。いくつかの実装形態では、各ノード104は、ヘッド・エンドまたはハブから受信した光変調されたダウンストリーム信号を、同軸カスケード111を介して加入者のデバイス106に提供される電気信号に変換するために、ブロードバンド光受信機を備える場合がある。信号は、ノード104からRFカスケード111を介して加入者デバイス106に進むことができ、RFカスケード111は、複数の増幅器と、能動または受動デバイス(ケーブリング、タップ、スプリッタ、およびインライン等化器を含む)と、を備える場合がある。RFカスケード111中の増幅器は、双方向であってよく、増幅器がカスケード中でさらに先の増幅器に供給するだけでなく多数の加入者に供給することもできるように、カスケードされてよいことを理解されたい。タップは、同軸システムへの、顧客のドロップ・インタフェースである。タップは、配信システムに沿った振幅の一貫性を可能にするように、様々な値で設計される。
【0016】
加入者デバイス106は、ケーブル加入者の家庭など、顧客位置にあってよく、ヘッド・エンドに位置するケーブル・モデム終端システム(CMTS)120またはそれに匹敵するコンポーネントに接続される。クライアント・デバイス106は、加入者の、モデム(例えばケーブル・モデム)、MTA(メディア端末アダプタ)、セット・トップ・ボックス、端末デバイス、セット・トップ・ボックス付きテレビジョン、データ・オーバ・ケーブル・サービス・インタフェース仕様(DOCSIS)端末デバイス、顧客構内機器(CPE)、ルータ、または、類似の電子クライアント、エンド、もしくは端末デバイスとすることができる。例えば、ケーブル・モデムおよびIPセット・トップ・ボックスは、ケーブル・ネットワークを介したインターネットおよび他のコンピュータ・ネットワークへのデータ接続をサポートすることができ、ケーブル・ネットワークは、データをヘッド・エンドから加入者にダウンストリームに、かつ加入者からヘッド・エンドにアップストリームに送ることのできる、双方向通信システムを提供する。
【0017】
本明細書に開示する技法は、DOCSISに準拠するシステムに適用することができる。ケーブル業界は、ケーブル・システムを介したIPデータ・パケットの送達を可能にするために、国際的なデータ・オーバ・ケーブル・システム・インタフェース仕様(DOCSIS(登録商標))標準またはプロトコルを策定した。一般に、DOCSISは、データ・オーバ・ケーブル・システムに対する、通信および動作のサポート・インタフェース要件を定義する。例えば、DOCISは、ケーブル・テレビジョン・システム・ネットワークを介した高速データ配信に関与するケーブル・モデムに対するインタフェース要件を定義する。しかし、本明細書に開示する技法は、ディジタル・ビデオやEPoc(Ethernet(登録商標) PON over Coax)など、ディジタル・サービス伝送のための任意のシステムに適用できることを理解されたい。DOCSISを参照する本明細書における例は、同軸を介して搬送される幅広いサービスにこれらの技法が適用されることを例示および代表するものである。
【0018】
本開示では、ヘッド・エンド102中のケーブル・モデム終端システム(CMTS)を参照する。一般に、CMTSは、ケーブル・ネットワーク・インフラストラクチャ内のヘッド・エンドとクライアント・デバイスとの間で信号を交換する、ネットワークのヘッド・エンドまたはハブ・サイトに位置するコンポーネントである。例示的なDOCSIS構成では、例えば、CMTSおよびケーブル・モデムがDOCSISプロトコルのエンドポイントであってよく、ハイブリッド・ファイバ同軸(HFC)ケーブル・プラントがこれらのエンドポイント間で情報を伝送する。認識されるであろうが、アーキテクチャ100が1つのCMTSを含むのは例示のために過ぎず、実際には、複数のCMTSおよびそれらのケーブル・モデムが管理ネットワークを介して管理されるのが通例である。
【0019】
CMTS120は、ダウンストリーム・ポートおよびアップストリーム・ポートをホストし、非常に多くの受信機を備える。各受信機は、ブロードバンド・ネットワークに接続された数百個のエンド・ユーザ・ネットワーク要素間の通信を扱う。例えば、各CMTS120が、多くの加入者の複数のモデムに接続される場合があり、例として、単一のCMTSが、通信特性の大きく異なる数百個のモデムに接続されることがある。多くの事例では、光ファイバ・ノード104などの複数のノードが、町または都市の特定のエリアにサービス提供することができる。DOCSISは、CMTSとケーブル・モデムとの間のリンクのいずれかの側で、IPパケットがデバイス間を進むことができるようにする。
【0020】
CMTSは、ケーブル・ネットワーク・インフラストラクチャ内のヘッド・エンドと加入者デバイス106との間で信号を交換するのに使用できる、ケーブル・ネットワーク中のコンポーネントの非制限的な例であることを理解されたい。例えば、他の非制限的な例には、モジュラCMTS(M-CMTS(商標))アーキテクチャまたはコンバージド・ケーブル・アクセス・プラットフォーム(CCAP)が含まれる。
【0021】
ビデオやデータなどのディジタル・コンテンツのパケットを受信し、ディジタル・コンテンツをMPEGトランスポート・ストリームに再パケット化し、直角振幅変調(QAM)を使用してディジタル・トランスポート・ストリームをダウンストリームRFキャリアにディジタル変調するために、エッジQAM(EQAM)122またはEQAM変調器が、ヘッド・エンドまたはハブ・デバイス中にあってよい。エッジQAMは、ディジタル・ブロードキャストとDOCSISダウンストリーム送信との両方に使用することができる。CMTSまたはM-CMTS実装形態では、データとビデオのQAMを、別々に管理および制御されるプラットフォーム上で実装することができる。CCAP実装形態では、CMTSおよびエッジQAM機能を1つのハードウェア・ソリューション中で結合することができ、それにより、データとビデオの送達を結合することができる。
【0022】
直交周波数分割多重(OFDM)は、より小さいサブバンド(QAMキャリアと比較して)を利用することができる。例えば、従来のDOCSIS QAMキャリアは6MHz幅だが、CATVシステムは、約25kHz~50kHz幅のOFDMキャリアを用いる直交周波数分割多重(OFDM)技術を採用することができる。よって、前に100個のQAMキャリアが使用された場合、数千個のOFDMサブキャリアを使用することができる。OFDM技術は、雑音の多い信号条件に適する場合があり、サーバの品質を低減することなく、利用可能なスペクトルのうちのより多くの使用を可能にすることができる。例示的な実装形態では、ケーブル・ネットワークが、ダウンストリーム速度のためにはQAM変調を使用し、OFDMを使用してアップストリーム速度を上げることができる。
【0023】
図2に、電源V2からの差動電圧によって駆動される入力信号210を増幅して、抵抗器R14を介して出力信号220を生成する、基本的なプッシュプル・トランジスタ増幅器200の代表的な概略図を示す。増幅器100は、2つのトランジスタQ1およびQ2に供給される電力を取り出して、所望の増幅された信号電圧を抵抗器R12に提供する。抵抗器R11およびR12は、200オーム前後の、増幅器に対する入力インピーダンスを設定する。電力源V4は、増幅器の電流バイアス点を設定するのに使用されるコモン電圧を入力に提供する。各トランジスタは、トランジスタのコレクタへのフィードバック抵抗器R2およびR4をそれぞれ有し、コレクタは低インピーダンスの差動負荷R10に接続され、出力電圧信号220が差動負荷R10に提供される。電圧ソースV1に接続された変圧器230もまた、増幅器をバイアスするのに使用され、これは、差動信号に対して高インピーダンスを提供し、コモン・モード電流に対して低インピーダンスを提供することによって行われる。
【0024】
図3に、CATVノードに典型的なマルチチャネル被変調RF信号についての、増幅器回路200の抵抗器R11を介した入力電流250、および抵抗器R14を介した出力電流260を示す。電流利得は大きい(>20×)。出力振幅は普通、平均rms値に近いが、時折、高い増幅された信号ピークが発生する。ピーク値は通常、rms値の約6倍であり、約10^-6の比較的低い確率(時間で)で生じる。しかし、増幅器クリッピングはRF接続リンク中のビット・エラーにつながるので、増幅器は、発生率が比較的低くてもこれらのピークを高忠実度で増幅しなければならない。
【0025】
図3に示す大きい信号ピークを有する信号を増幅するための必要電流利得を提供するために、増幅器は通常、高い電流でバイアスされなければならない。これは図4で最も容易に見ることができる。図4には、図2の増幅器200中のトランジスタQ2によって使用される増幅器電流を示すが、この場合、増幅器は約80mAでバイアスされる。図3に示す信号250を増幅するとき、出力電圧中のピークの間、トランジスタQ2中の電流は、10mAのやや下まで下がる。0mAでは、増幅器は信号をそれ以上増幅できなかったはずであり、クリッピング歪みが発生したであろう。別の言い方をすれば、増幅器回路200が80mAにバイアスされず、より低い点でバイアスされたならば、あるいは、増幅器への入力が、増幅されるべき、より高い信号ピークを有していたならば、増幅器クリッピングからの歪みに伴う付随的な信号劣化(ビット・エラー)と共に、クリッピングが発生したであろう。
【0026】
HFCネットワーク中のRF増幅器は通常、「A級」動作モードで動作する。このことは、これらが高忠実度の増幅された信号を提供し、ビット・エラー・レートは約10-8未満であるべきであることを意味する。先に言及したように、信号ピークが10-6のレートで発生する、すなわち必要とされるビット・エラー・レートの頻度の100倍の頻度で発生することから、HFCネットワーク中のRF増幅器は、100個のうち約1個以下の増幅された信号ピークしかクリップされないような、十分に高いバイアス点を提供しなければならない。しかし、信号ピークの発生頻度が非常に低いので、また信号ピークが信号のrms値の約6倍高いので、信号ピークを反映するように増幅器をバイアスすると、増幅器回路は非常に非効率的になる。典型的なケースでは、例えば、増幅された信号の100mWの総RF出力を提供するのに、約10Wの電力が必要とされる。すなわち、RFエネルギー出力を提供するために増幅器への電力供給の約1%しか使用されず、電力の残りは、増幅器をバイアスするために消費され、このバイアシングの電流は、低頻度の信号ピークを除いてはほぼ常に、信号を増幅するのに必要な電流よりもずっと高い。
【0027】
HFCネットワーク全体に散在する増幅器の数は、米国内だけで400万個を超える。このことは、言い換えると、1年当たり何百万ドルもの総エネルギー消費となり、これは主として、先に言及したように、ごく散発的な信号ピークを増幅するためだけにしか必要とされないエネルギーである。
【0028】
図5に、増幅器の電力源を変調するためにノード104中で使用して、それにより既存の増幅器よりもずっと少ない電力散逸で、増幅されたRF出力電力を効率的に達成することができる、例示的な受信機300を示す。受信機300は、無線周波数データを受信して圧縮解除する圧縮解除モジュール310を備えることが好ましいが、ディジタル波形を生成するための他の手段を備えてもよい。圧縮解除されたデータを増幅するのに先立って、受信機300は、遅延320を導入した後で、任意選択のプリディストーションモジュール330によって信号を処理し、信号をD2A変換器340に入力する。D2A変換器340は、入力信号を、利得ブロック360と電力源370とを有する増幅器350に駆動する。
【0029】
遅延320の間、受信機300は、分析モジュール380を備えることが好ましく、分析モジュール380は、圧縮解除された無線周波数データ、すなわち、増幅器350への入力信号を構成するのと同じデータを分析し、このデータを使用して、D2A変換器390を介した電力源370への変調信号を生成する。変調信号は、いくつかの代替形のうちのいずれか1つを構成することができる。例えば、単純な一実施形態では、電力源370は、信号が信号ピークを経験していない期間中に使用される通常の(低い)バイアス点と、信号が信号ピークを経験しているときのピーク(高い)バイアス点との間で、2通りで変調されてよい。遅延320により、増幅器350のバイアス点は、それが増幅する信号と同期するように変調されることが可能であり、したがって、バイアス点は、信号がピークを経験するのに伴って上げられ、信号がピークから下がるのに伴って下げられる。他の実施形態では、信号ピーク間の振幅の相違を反映するようにバイアスを3つ以上のバイアス点の間で切り替える変調方式や、さらには、どの時点の信号振幅に対しても線形であるように増幅器のバイアス電圧または電流を変調する変調方式など、より複雑な変調方式を採用することができる。遅延320は、増幅されるデータが変調信号と同時に生じるようにデータ増幅前の任意の時点で導入されてよいこと、および、遅延が圧縮解除の後で行われるという説明は例示に過ぎないことを理解されたい。これは特に、システムによっては、圧縮データを含まない場合もあり、そうでなければ増幅のためにデータを圧縮解除する必要がある場合もあるからである。
【0030】
受信機300はまた、任意選択で、A2D変換器の追加を伴って、ディジタル・リターン送信機を構成するコンポーネントの多くを備えてもよい。それにより、ディジタル順方向受信機は、4.25Gbsまたは11.3Gbsポート中の双方向光プラガブルを使用して、85、2×85、200、または2×200MHzの帯域幅で、ディジタル・リターン送信機の機能を実施することができる。よって、ディジタル順方向受信機は、わずかな追加コストで、順方向と逆方向のトラフィックを有するノードのコンポーネントのうちの本質的にほとんどに変換されることが可能である。
【0031】
当業者なら認識できるように、受信機300は、信号処理を使用して電力包絡線を予測することができ、出力D2A変換器中で補償信号を生成することによって、電源変調による増幅器アーチファクトを自動的に補償することができる。増幅器のバイアス点(電流および/または電圧)を変調して、増幅器散逸を低減することができる。いくつかの実施形態では、受信機300は、所与の出力電力レベルに対して、供給電力の散逸を約4分の1にすることができる。受信機300によって使用される電力がより少ないことで、より小さいトランジスタやより小さいヒートシンクの使用、より低コストのパッケージング、ならびに、ノード・サイズの縮小および電力消費の削減が可能になる。
【0032】
本明細書に開示する実施形態では電力削減のためのノード増幅器ソリューションについて述べるが、これらの概念はケーブル・ネットワーク中の他の増幅器にも適用されることに留意されたい。例えば、実施形態は、D/A変換器によって直接的に駆動されない場合のあるフィールド中でカスケードされたアナログ増幅器の変調を組み込むこともできる。増幅器カスケード中の増幅器においては、より低コストの増幅器が望ましい。開示するように、カスケードされた増幅器の場合の実施形態は、電力散逸の低減によってより低コストの増幅器を提供することができ、オプションとして出力電力をより高くすることができる。ケーブル・ネットワークがアップグレードされた場合は、電力散逸を低減するがより高い出力を可能にする、より低コストの増幅器が望ましい。
【0033】
より効率的な増幅器を創出するための、開示する実施形態は、既存のネットワークと、高度なまたは次世代のネットワークとに有益である。例えば、高度なアーキテクチャ、例えばNode+0アーキテクチャが採用されない場合でも、より電力効率のよい増幅器がなお望ましい。増幅器はそれらに先行するレッグ中の損失を補償することを考えれば、ノードからのユニバーサル設定が、増幅器の集合に対して作用する。ほとんどの増幅器は同様のチルトおよび利得設定を有し、同様の電力負荷で操作されるので、概して同じ設定が増幅器のチェーンに当てはまることになる。アーキテクチャは、ますます短い増幅器チェーンを有し、それにより、高度なアーキテクチャ、例えばN+1やN+2に落ち着くであろう。
【0034】
開示するディジタル順方向アーキテクチャは、非常に低いコストの、かつ電力効率のよいノードを許容する。例えば、開示するディジタル順方向技法に関する実施形態は、低コストの、かつ電力効率のよいノード設計を可能にするが、これにより、ノード・コストとファイバ上の最大波長数とによって現在は抑制されている、ノード置換、またファイバ・ディープ・アーキテクチャも可能となる。さらに、全ての処理がディジタル領域内にある実施形態では、このような設計の帯域分割においてフレキシビリティがある。ディジタル化された入力信号が生成され、遅延され、電力源に対する決定入力およびプリディストーション入力として使用される、開示される技法の利益は、ほぼどんなRF利得段も得ることができる。既存の標準的なHFC利得段は、ディジタル化された信号の利益を有さず、よって、開示するディジタル順方向(およびディジタル・リターン)システムは、システムの受信側について、および対応する出力RF利得段について、開示する技法から利益を得ることができる(コスト効果のある最小限の機能ブロック/コスト追加を伴って)。
【0035】
供給電圧および/またはトランジスタ・バイアスが変調される、開示する技法に関する様々な実装形態が可能であることに留意されたい。プッシュ・トランジスタとプル・トランジスタとをD2A変換器によって独立して駆動して、真のB級動作、または電源変調と組み合わされたB級動作を許容することができる。このような操作は、アナログ出力信号中の歪みを引き起こす可能性がある。しかし、これらの歪みは予測可能である。受信機300中のディジタル・プリディストータ330を任意選択で使用して、歪みを軽減することができる。
【0036】
図6に、電力源410を有する例示的なプッシュプル増幅器400を示す。電力源410は、電圧ソースV3を追加することによって、高いピークを増幅する必要があるときだけバイアス電流が高く、それ以外のときはバイアス電流が低いように、受信機300を使用して変調されることが可能である。電圧ソースV3は、出力ピークを増幅する必要があるときにバイアスが高いように生成された信号によって、駆動される。図7に、電圧ソースV3から提供される電圧を表す波形420(破線)と、増幅すべき信号の形状を表す波形430(実線)とを示す。信号430の出力ピークを増幅する必要があるとき、V3から出力されるバイアス信号420が増大するのがわかる。図6および図7に示す実施形態では、V3から出力されるバイアス信号420は、増幅すべき信号430のサンプルをピーク検出回路および後続のフィルタに通すことによってディジタル生成され、主信号は、バイアス信号420の応答が信号ピークと同時に生じるように、いくつかのサンプル分だけ遅延された。
【0037】
図8に、分析モジュール450が、正と負の両方のピークを検出することができ、増幅すべきRF信号の絶対値を計算した後でピーク検出または電力検出動作を実施することができる、実施形態を示す。フィルタ470によるフィルタリングの後のバイアス信号が、増幅すべきRF入力信号中のピークと同時にピーク値に達することができるように、遅延460の量が設定される。RF信号はD2A変換器に出力されて、アナログ信号が生成されてよい。制御バイアス信号もまたD2A変換器に出力されて、アナログ・バイアス信号が生成されてよい。
【0038】
図8の実施形態からの得られた入力波形480および出力波形490を、それぞれ図9に示すが、これらの波形は、図3の入力波形および出力波形の再現として見ることが容易にできる。図9は、受信機の入力信号の増幅が不変であることを示す。しかし、図10に見られるように、電力ソースV1からの電流は、もはや定電流ではない。トランジスタのバイアス点が変調される結果、図6の変圧器415からの電力源電流が変調される。図10は、出力信号ピークが生じるとき、バイアスは実際に高く、この例では200mAもの高さでピークに達することを示す。平均して、バイアス電流は、前の例の場合よりもずっと低く、この例では82mAである。増幅器の電力消費は、約2分の1に削減された(図7の波形430との比較でわかるように)。トランジスタ電流を図11に示す。図11図7の比較と同様、図11と図10の比較もまた、電力が約2分の1に削減されたことを示す。最低値はこの場合もやはり10mAのやや下だが、これは、元々の80mAによってではなく、1トランジスタ当たりわずか約40mAのバイアス電流によって達成される。
【0039】
図6の変圧器415を介した電力供給はコモン・モード電流変動(これらはほとんど抵抗なしで通される)の影響を受けないので、かつ、R14中の差動出力信号もまたコモン・モード変動の影響を受けないので、図6に示すプッシュプル増幅器は、増幅すべき信号に影響を及ぼさずにバイアス電流を変調するのに特に適する。というのは、バイアス制御信号は出力抵抗器R14中で自己相殺されるからである。図12に、ほぼ同じ大きさに拡大縮小されて比較されている入力信号500および出力信号510を示す。入力信号は、高忠実度で増幅され再現される。
【0040】
しかし、CATVシステムでは、信号増幅の忠実度に対して極度の要件が適用される可能性がある。増幅器の歪み挙動は、バイアス点に対していくらかの依存関係があることが知られている。したがって、図13に、増幅器を駆動するための遅延された信号パス中で線形化機能を適用するリニアライザ560を備える分析モジュール550を示すが、リニアライザのパラメータは、任意選択で、増幅器のバイアス点によって制御されるものとすることができる。リニアライザの実装形態は、米国特許第8,064,777号、8,547,174号、および8,145,066号、ならびに米国特許出願公開第20030001670号など、レーザ光送信機中で使用されるリニアライザ(例えば、FPGA中のディジタル信号実装形態と、RFコンポーネント中のディスクリート・コンポーネント実装形態とを含む、リニアライザ実装形態)と同様とすることができる。図13に示す実施形態は、全ての動作がディジタル領域にあるように信号がディジタル処理されるシステムに適する。しかし、ピーク検出、遅延、バイアス信号生成、および/または線形化機能を含めて、RFコンポーネントを用いるアナログ領域における実装形態もまた可能であることを理解されたい。
【0041】
また、いくつかの実施形態では、バイアス制御信号と増幅すべきRF信号とがD2A変換器上で別々に生成される必要はないことも理解されたい。例えば、図14に、差動トランジスタ増幅器を駆動する2つの電圧ソース610および620を有するプッシュプル増幅器600を示すが、各電圧ソースは、バイアス制御信号情報とRF信号情報との両方をトランジスタに提供する。トランジスタによって増幅された信号全体は、図9図11に示した例の場合と同じとすることができる。さらに、増幅器バイアス電流を制御および変調して電力散逸を低減することができる一方、増幅器バイアス電圧を制御および変調して電力散逸を低減することもでき、またはこれらの組合せも可能である。
【0042】
電力源が変調されるいくつかの実施形態では、バイアス電流変調と電圧源変調との組合せが、さらに節電をもたらすことができ、例えば、バイアス変調のみの場合に示したような2分の1ではなく、4分の1への節電をもたらすことができる。しかし、変調される電圧源の構築は、トランジスタのバイアス電流を変調することよりも複雑である。図15図17に、通常動作中および電圧一時的変動中の電力送達をサポートするインダクタにエネルギーが蓄積される電力源についての実施形態を示す。例えば、図15は電力源700を示し、主電力源710は例えば11Vに設定される。電力源700は、寄生内部抵抗器R1(例えば、10ミリオーム~1オームの抵抗器。この例では900ミリオーム)を伴うインダクタ715を介して電流を提供することができる。第1の固定電圧ソース725および第2の可変電圧ソース730の直列接続を含む可変電圧ソース720が、負荷735と並列接続されるのが示されている。電圧源730の可変電圧は、バイアス制御信号に比例するようにされる。
【0043】
図16に示すように、バイアス電圧制御一時的変動において、負荷R2における電圧は、曲線750に見られるように、10V前後から22V前後までのピークを有する。曲線745として見られる電力源710からの電流は、約-1Aに固定される。曲線740に見られる電力源720からの電流は、一時的変動中は約-1.2Aをピークとするが、他の場合では小さい(-0.1A以下)。一時的変動を除いては、ほぼ全ての電力が電力ソース710によって送達される。電力ソース720は、供給電圧の2倍を提供するのに十分なヘッドルームを有するが、一時的変動中しか電力を送達せず、電力ソース720が電力を送達している間は、一時的変動中に電流を一定に保持するインダクタ715のインダクタンスにより、電力ソース710は電力を送達し続ける。その結果、電力ソース710によって送達される平均電力(1A)は、ソース720からの平均電力(0.12A)よりもずっと大きい。電力ソース725は、22Vに達することができる必要があるので、一般に、22Vソースと、それに続く、一時的波形を生成するためのトランジスタ段とを用いて実装される。よって、電圧ソース710中の電力散逸は11W(11V×1A)であり、電圧ソース720中の電力散逸は2.64W(22V×0.12A)であると推定することができる。合計13.64Wは、固定22V電力源が全電流に使用された場合の電力散逸となるはずの25.64W(22V×1.12A)よりもずっと低い。
【0044】
図17に示すように、いくつかの実施形態では、電圧源725をキャパシタ760で置き換えることができる。この例では、キャパシタ760は、10V前後に自己充電することができ、したがって、外部22V電源はもはや必要でない。キャパシタ760は、サージ中に10Vの差を保持するのに十分なほど大きく、電圧源720は、12V電源から駆動されることが可能である。他のどんなより高い電圧源も必要ない。
【0045】
いくつかの実施形態では、一時的電圧発生器730を介する電流を低く保つために、インダクタ715の存在が不可欠である。これは、インダクタ715が通常動作中の平均電流をサポートするからであり、出力電圧が主電力源に近く、主電力源が全ての電力を提供し、インダクタ715は一時的変動中にこの電流を維持する。一時的変動中は、電圧がずっと高い(例えば2倍になる)可能性があり、したがって、一時的電圧発生器は、すでにL1.高度増幅器動作によって提供された平均電流を除いた、必要な追加の電流を生成するだけで済む。
【0046】
1つまたは複数の例では、本明細書に開示する機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せにおいて実装することができる。ソフトウェアにおいて実装される場合、これらの機能は、コンピュータ可読媒体上の1つもしくは複数の命令もしくはコード上に記憶されるかまたはこのような命令もしくはコードとして送信されて、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されてよい。コンピュータ可読媒体はコンピュータ可読ストレージ媒体を含むことができ、コンピュータ可読ストレージ媒体は、データ・ストレージ媒体などの有形媒体、または通信媒体に対応する。通信媒体は、例えば通信プロトコルに従って、ある場所から別の場所にコンピュータ・プログラムを転送するのを容易にする任意の媒体を含む。このようにして、コンピュータ可読媒体は一般に、(1)非一時的な有形のコンピュータ可読ストレージ媒体、または(2)信号や搬送波などの通信媒体に対応する場合がある。データ・ストレージ媒体は、本開示に記載の技法を実施するための命令、コード、および/またはデータ構造を取り出すために、1つもしくは複数のコンピュータ、または1つもしくは複数のプロセッサによってアクセスできる、任意の利用可能な媒体とすることができる。コンピュータ・プログラム製品が、コンピュータ可読媒体を含むことができる。
【0047】
限定ではなく例として、このようなコンピュータ可読ストレージ媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM、もしくは他の光ディスク・ストレージ、磁気ディスク・ストレージ、もしくは他の磁気ストレージ・デバイス、フラッシュ・メモリ、または、所望のプログラム・コードを命令もしくはデータ構造の形で記憶するのに使用できコンピュータによってアクセスできる他の任意の媒体、を含むことができる。また、どんな接続も、コンピュータ可読媒体と適正に呼ばれる。例えば、命令が、ウェブサイト、サーバ、または他のリモート・ソースから、同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、ツイスト・ペア、ディジタル加入者線(DSL)、またはワイヤレス技術(赤外線、無線、およびマイクロ波など)を使用して送信される場合は、同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、ツイスト・ペア、DSL、またはワイヤレス技術(赤外線、無線、およびマイクロ波など)は、媒体の定義に含まれる。しかし、コンピュータ可読ストレージ媒体およびデータ・ストレージ媒体は、接続、搬送波、信号、または他の一時的媒体を含まないが、その代わり、非一時的な有形のストレージ媒体を対象とすることを理解されたい。本明細書において、「ディスク(disk)」および「ディスク(disc)」は、コンパクト・ディスク(disc)(CD)、レーザ・ディスク(disc)(登録商標)、光ディスク(disc)、ディジタル多用途ディスク(disc)(DVD)、フロッピー(登録商標)・ディスク(disk)、およびブルーレイ・ディスク(disc)を含み、ディスク(disk)は通常、データを磁気的に再生し、ディスク(disc)はデータをレーザで光学的に再生する。以上の組合せもコンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0048】
命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されてよく、これらのプロセッサは、1つまたは複数のディジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ロジック・アレイ(FPGA)、または他の等価な集積もしくはディスクリート・ロジック回路などである。したがって、本明細書において、用語「プロセッサ」は、前述の構造のいずれか、または、本明細書に記載の技法の実施に適した他の任意の構造を指す場合がある。加えて、いくつかの態様では、本明細書に記載の機能は、符号化および復号に向けて構成された専用ハードウェアおよび/もしくはソフトウェア・モジュール内で提供されてもよく、または結合されたコーデックに組み込まれてもよい。また、これらの技法は、1つまたは複数の回路またはロジック要素中で完全に実施されてもよい。
【0049】
本開示の技法は、多様なデバイスまたは装置中で実施することができる。本開示では、開示される技法を実施するように構成されたコンポーネントの機能的態様を強調するために様々なコンポーネント、モジュール、またはユニットが記載されているが、これらは、必ずしも異なる複数のハードウェア・ユニットによって実現される必要はない。そうではなく、前述のように、様々なユニットが、コーデック・ハードウェア・ユニットに組み込まれてもよく、または、適切なソフトウェアおよび/もしくはファームウェアと共に前述のように1つもしくは複数のプロセッサを含む相互運用ハードウェア・ユニットの集合によって提供されてもよい。
<追加の実施形態>
ディジタルからアナログへの変換器(DAC)から出力される信号を生成するためのプロセッサを有するデバイスであって、ディジタル信号が、増幅器によって増幅されることになる第1の成分と、前記増幅器のバイアス点を変調するための第2の成分とを有し、前記第2の成分が前記第1の成分に基づく、デバイス。
ディジタルからアナログへの変換および増幅の前に前記第1の成分をプリディストーションするために使用できる前記ディジタル信号の第3の成分を含むデバイスが実施形態には含まれる。
前記第3の成分が、前記第1の成分と、前記第1の成分の信号包絡線とに基づくデバイスが実施形態には含まれる。
前記第1の成分および前記第2の成分が、関連する遅延を該成分間に有するデバイスが実施形態には含まれる。
前記信号と前記信号の包絡線とに基づくプリディストーション情報が前記ディジタル信号と共に前記増幅器に送信されるデバイスが実施形態には含まれる。
第1の信号および第2の信号を受信する工程と、
前記第1の信号を増幅器によって増幅し、それにより、該増幅された信号が前記増幅器のバイアスを変調して前記増幅器の電力使用を低減する工程と、を備える、増幅器のバイアス点を変調する方法。
前記第1の信号が、前記増幅器によって増幅されることになる第1の成分と、前記増幅器のバイアス点を変調するための第2の成分とを含み、前記第2の成分が前記第1の成分に基づく方法が実施形態には含まれる。
前記第1の信号が、増幅の前に前記第1の成分をプリディストーションするための前記信号の第3の成分を含む方法が実施形態には含まれる。
前記第3の信号が前記第1の信号の信号包絡線に基づく方法が実施形態には含まれる。
前記第1の成分および前記第2の成分が、関連する遅延を該成分間に有する方法が実施形態には含まれる。
前記信号と前記信号の包絡線とに基づくプリディストーション情報を前記信号と共に前記増幅器に送信する工程をさらに備える方法が実施形態には含まれる。
増幅器の電力使用を低減するための、CATVネットワーク内のシステムであって、
第1の信号に変換されることになるデータを受信するプロセッサと、
前記第1の信号を増幅する前記増幅器と、
前記信号を分析して、前記増幅器のバイアス点を変調するための第2の信号を決定するための信号アナライザと、を備えるシステム。
前記増幅器が、前記第2の信号によって変調される電力源を備えるシステムが実施形態には含まれる。
前記プロセッサが、前記第1の信号と共に前記増幅器に関し、プリディストーション情報を前記第1の信号に加えるシステムが実施形態には含まれる。
前記プリディストーション情報が前記信号と前記信号の包絡線とに基づくシステムが実施形態には含まれる。
増幅された前記第1の信号を前記第2の信号と共に第2の増幅器に送信する送信機を備えるシステムが実施形態には含まれる。
前記第2の信号が前記増幅器の出力に加えられるシステムが実施形態には含まれる。
前記増幅器が複数のトランジスタを備え、各トランジスタが、前記第1の信号のプリディストーションされた成分をそれぞれ変換するそれぞれのD/A変換器によって駆動されるシステムが実施形態には含まれる。
前記第1の信号が、前記第2の信号に対して遅延されて前記増幅器に提供されるシステムが実施形態には含まれる。
固定電圧に接続されたインダクタによって前記増幅器にバイアスを提供する電力源と、
前記増幅器の電力源に接続されて、前記増幅器から出力される信号の包絡線から導出される信号によって制御される可変電圧を生成する、キャパシタと、をさらに備えるシステムが実施形態には含まれる。
増幅されることになる第1の成分を各々が含む第1の信号および第2の信号を生成するプロセッサであって、前記第1の信号が第1のプリディストーション成分を含み、前記第2の信号が第2のプリディストーション成分を含む、プロセッサと、
第1のトランジスタおよび第2のトランジスタを含む増幅器であって、各トランジスタが前記第1の信号および前記第2の信号のうちのそれぞれの信号を同時に増幅し、それにより前記第1のプリディストーション成分および前記第2のプリディストーション成分が前記増幅器のバイアスを共同で変調する、増幅器と、を備える、CATVネットワーク内のシステム。
前記増幅器の前記バイアスを共同で変調する前記第1のプリディストーション成分および前記第2のプリディストーション成分が、前記増幅器の出力において相殺されるシステムが実施形態には含まれる。
前記プリディストーション成分が、前記増幅器の出力において相殺されることなく、増幅器歪みを低減する成分を搬送するシステムが実施形態には含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17