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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】基板搬送装置の給脂装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 7/14 20060101AFI20231002BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20231002BHJP
   F16N 9/04 20060101ALI20231002BHJP
   F16N 11/06 20060101ALI20231002BHJP
   F16N 19/00 20060101ALI20231002BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
F16N7/14
H01L21/68 A
F16N9/04
F16N11/06
F16N19/00
B23Q11/12 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019162616
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042764
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸政
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 大
(72)【発明者】
【氏名】田中 優一郎
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-177716(JP,A)
【文献】特開2019-026931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 1/00-99/00
F16H 19/04
F16H 25/18-25/24
F16H 57/04-57/05
H01L 21/00-21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる第一係合部を備える第一部材と、第二係合部を備え前記第二係合部を前記第一係合部に係合させて前記第一部材に対して相対的に前記所定方向に移動可能な第二部材とを備える基板搬送装置に使用される給脂装置であって、
グリスを貯え、前記グリスの押出口を有するタンクと、
前記タンク内の前記グリスを加圧する加圧体と、
前記押出口から押し出される前記グリスを所定の長さで切断する切断装置と、
前記切断装置が切断したグリス片を前記第一係合部に塗布する塗布体と
を備え、
前記第一係合部に所定の条件を満たす毎に所定量のグリスを供給する給脂装置。
【請求項2】
前記タンクの前記押出口が下方に開口している、請求項1に記載の給脂装置。
【請求項3】
前記塗布体が前記切断装置として機能する、請求項1又は2に記載の給脂装置。
【請求項4】
前記タンクが、長尺形状を備え上下方向を長手方向としており、
前記タンクの押出口を開閉する開閉体を備える、請求項1に記載の給脂装置。
【請求項5】
前記加圧体が前記タンク内の前記グリスを下向きに加圧する重りである、請求項2から4のいずれかに記載の給脂装置。
【請求項6】
前記タンク内の前記グリスを加圧する圧力流体の供給と供給停止とを切替える加圧装置と、前記タンクに連通するグリス流路とを備えており、
前記第一係合部がラックであり、前記第二係合部がピニオンであり、
前記ラックが、前記ピニオンの歯と係合する歯が形成された表面と、前記表面に貫通する給脂孔とを備えており、
前記給脂孔が前記グリス流路に接続されている、請求項1に記載の給脂装置。
【請求項7】
前記タンクに連通するグリス流路と、前記グリス流路を開閉する開閉弁とを備えており、
前記第一係合部がラックであり、前記第二係合部がピニオンであり、
前記ラックが、前記ピニオンの歯と係合する歯が形成された表面と、前記表面に貫通する給脂孔とを備えており、
前記給脂孔が前記グリス流路に接続されている、請求項1に記載の給脂装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置に使用される給脂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送装置では、係合して相対的に移動する機械部品間に、グリスやオイル等の潤滑剤が給脂される。この様な給脂を必要とするロボットで、給脂口にグリスガンを接続し、グリスが注入される例が、特許文献1(特開2005-177914号公報)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-177914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様な搬送装置では、潤滑剤の供給不足は、機械部品の摩耗や損傷を招く。機械部品の摩耗や損傷は、搬送装置の位置精度を低下させる。一方で、この潤滑剤の供給過多は、潤滑剤の漏洩や飛散等を生じる。潤滑剤の漏洩や飛散等は、機械部品の周辺環境を悪化させる。
【0005】
半導体等の基板の製造工程や運搬にも、搬送装置(基板搬送装置)が用いられる。この様な基板は、クリーンな環境で取り扱われる。この基板搬送装置では、潤滑剤による周辺環境の悪化を抑制しなければならない。この基板搬送装置では、摩耗や損傷を抑制しつつ、潤滑剤の供給過多を抑制しなければならない。
【0006】
本発明の目的は、基板搬送装置をクリーンに維持しつつ適正に潤滑できる給脂装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給脂装置は、所定方向に延びる第一係合部を備える第一部材と、第二係合部を備え前記第二係合部を前記第一係合部に係合させて前記第一部材に対して相対的に前記所定方向に移動可能な第二部材とを備える基板搬送装置に使用される。この給脂装置は、前記第一係合部に所定の条件を満たす毎に所定量のグリスを供給する。
【0008】
好ましくは、前記所定方向が上下方向である。
【0009】
好ましくは、この給脂装置は、長尺形状を備え前記上下方向を長手方向として前記グリスを貯えるタンクと、前記タンク内の前記グリスを加圧する加圧体と、前記タンクの押出口を開閉する開閉体と、前記押出口から押し出される前記グリスを切断し、この切断したグリス片を前記第一係合部に塗布する塗布体とを備える。
【0010】
好ましくは、前記加圧体は前記タンク内の前記グリスを下向きに加圧する重りである。
【0011】
好ましくは、この給脂装置は、前記グリスを貯えるタンクと、前記タンク内の前記グリスを加圧する圧力流体の供給と供給停止とを切替える加圧装置と、前記タンクに連通するグリス流路とを備える。前記第一係合部はラックであり、前記第二係合部はピニオンである。前記ラックは、前記ピニオンの歯と係合する歯が形成された表面と、前記表面に貫通する給脂孔とを備える。前記給脂孔は前記グリス流路に接続されている。
【0012】
好ましくは、この給脂装置は、前記グリスを貯えるタンクと、前記タンク内の前記グリスを加圧する加圧体と、前記タンクに連通するグリス流路と、前記グリス流路を開閉する開閉弁とを備える。前記第一係合部はラックであり、前記第二係合部はピニオンである。前記ラックは、前記ピニオンの歯と係合する歯が形成された表面と、前記表面に貫通する給脂孔とを備える。前記給脂孔は前記グリス流路に接続されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る給脂装置は、所定方向に延びる第一係合部に所定の条件を満たす毎に所定量のグリスを供給する。給脂装置は、クリーンな環境を維持しつつ、基板搬送装置を適正に潤滑できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る一の実施形態に係る給脂装置と、この給脂装置が使用される昇降装置とを備える、基板搬送装置の概略図である。
図2図2は、図1の基板搬送装置の給脂装置及び昇降装置の説明図である。
図3図3は、図1の基板搬送装置の昇降装置の他の説明図である。
図4図4(A)は図2の給脂装置の使用状態の説明図であり、図4(B)はこの給脂装置の他の使用状態の説明図であり、図4(C)はこの給脂装置の更に他の使用状態の説明図であり、図4(D)はこの給脂装置の更に他の使用状態の説明図である。
図5図5は、本発明に係る他の実施形態に係る給脂装置の説明図である。
図6図6(A)は図5の給脂装置の使用状態の説明図であり、図6(B)はこの給脂装置の他の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1には、基板2と、基板2を収容する容器4と、基板2を搬送する基板搬送装置6とが示されている。図1の左右方向が基板搬送装置6の前後方向であり、紙面に垂直な方向が基板搬送装置6の左右方向である。
【0017】
基板2は、例えば、半導体基板、ガラス基板等である。この基板2は、例えば、円形の薄板である。半導体基板としては、シリコン基板、サファイヤ(単結晶アルミナ)基板、その他の各種の基板等が例示される。ガラス基板としては、FPD(Flat Panel Display)用ガラス基板、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用ガラス基板等が例示される。
【0018】
容器4は、基板2を収容する。この容器4は、上下方向に並べられた状態で、複数の基板2を収容可能である。容器4は、特に限定されないが、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)である。この容器4は、図示されないテーブルに載置されている。
【0019】
基板搬送装置6は、マニピュレータ8、ハンド10及び制御装置12を備える。ここでは、マニピュレータ8は、ハンド10を前後方向に移動させる直動機構を備える。マニピュレータ8は、直動関節ロボットをベースにしたものが例示されている。なお、本発明に係るマニピュレータ8は、直動関節ロボットをベースにしたものに限定されない。このマニピュレータ8は、水平多関節ロボットをベースにしたものでもよく、垂直多関節ロボットをベースにしたものでもよい。
【0020】
マニピュレータ8は、昇降装置14及びアーム16を備えている。このアーム16は、第一アーム16A及び第二アーム16Bを備えている。
【0021】
昇降装置14は、第一部材としての基台18と、第二部材としての昇降軸20とを備えている。基台18は、例えば、図示されない床に固定されている。基台18は、昇降軸20を支持している。昇降軸20は、移動装置としての、例えばリニアガイドを介して、基台18に取り付けられている。昇降軸20は、基台18に対して上下方向に移動可能である。
【0022】
昇降軸20には、第一アーム16Aの基端部が接続されている。図1の一点鎖線L1は、上下方向に延びる軸線を表している。第一アーム16Aは、軸線L1周りに回動可能である。昇降軸20には、第一アーム16Aを回動可能に支持する回転装置と駆動モータとが配置されている。図1では、第一アーム16Aは、前後方向を長手方向にして延びている。
【0023】
第一アーム16Aには、第二アーム16Bの基端部が接続されている。第二アーム16Bは、第一アーム16Aの長手方向に、第一アーム16Aに対して移動可能である。第一アーム16Aには、第二アーム16Bを移動可能に支持する移動装置と駆動モータとが配置されている。
【0024】
第二アーム16Bには、ハンド10の基端部が接続されている。ハンド10は、第二アーム16Bの長手方向に、第二アーム16Bに対して移動可能である。第二アーム16Bには、ハンド10を移動可能に支持する移動装置と駆動モータとが配置されている。
【0025】
ハンド10は、ハンド本体10Aと複数の爪10Bを備えている。ハンド本体10Aは、上下方向を厚さ方向とする板状の形状を備えている。ハンド本体10Aの上面に、複数の爪10Bが取り付けられている。ハンド10は、複数の爪10Bによって、基板2を支持可能である。図1では、ハンド10に基板2が支持されている。
【0026】
制御装置12は、図示されないが、記憶部、演算部及び入出力部を備えている。記憶部には、基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。記憶部として、ROM、RAM等が例示される。演算部は、記憶部に記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行する。演算部は、入出力部から入力される各種データを基に演算を実行する。演算部として、CPUが例示される。入出力部は、マニピュレータ8や図示されないセンサ等との間で電気的信号の入出力をする。入出力部として、インターフェースボードが例示される。制御装置12は、マイクロコンピュータで構成されてもよく、PLC(Programmable Logic Controller)、MPU等によって構成されてもよい。
【0027】
図2には、昇降装置14の一部と共に、給脂装置22及びオイルガイド24が示されている。この基板搬送装置6は、この給脂装置22及びオイルガイド24を備えている。昇降装置14は、第一係合部としてのラック26と、第二係合部としてのピニオン28とを備えている。ラック26は、基台18の本体に取り付けられている。ピニオン28は、昇降軸20の本体に取り付けられている。なお、図2では、基台18及び昇降軸20は、その一部が示されている。
【0028】
給脂装置22は、タンク30と、重りとしてのピストン32と、塗布体34と、駆動装置としてのシリンダ36と、受板38とを備えている。給脂装置22は、昇降軸20に取り付けられている。
【0029】
タンク30は、貯留室40、押出口42及び通気孔44を備える。タンク30は、上下方向を長手方向にして延在している。貯留室40は、上下方向を長手方向にして形成されている。貯留室40に、グリスGが貯えられる。押出口42は、貯留室40から下方に開口する。通気孔44は、貯留室40から上方に開口する。押出口42の開口面積は、貯留室40の断面積より小さい。貯留室40は、長手方向において、断面積が一定の部分と、この一定の部分から押出口42までの間で押出口42に向かって断面積が漸減する部分とからなっている。
【0030】
ピストン32は、貯留室40に収容されている。ピストン32は、貯留室40の断面積が一定の部分において、壁面40Aに摺動可能である。ピストン32は、貯留室40の下方のグリスGと上方の空間とを仕切っている。通気孔44は、この上方の空間に連通している。
【0031】
塗布体34は、板状の形状を備えている。この図2では、塗布体34は押出口42を塞いでいる。塗布体34は、シリンダ36によって、前後方向に移動可能である。受板38は、押出口42の下方に位置している。受板38は、押出口42に対向している。塗布体34は、押出口42と受板38との間で、前後方向に移動可能である。
【0032】
ラック26は、上下方向に並べられた複数の歯46を備えている。複数の歯46は、ピニオン28に対向する表面26Aに形成されている。ピニオン28は、昇降軸20の本体に回転可能に支持されている。ピニオン28は、その周方向に並ぶ複数の歯48を備えている。ラック26の歯46とピニオン28の歯48とが係合している。図示されないが、昇降装置14は、昇降軸20を基台18に対して上下方向に移動可能に支持する移動装置と、ピニオン28を回転駆動する駆動モータとを備えている。
【0033】
図3に示される様に、この昇降装置14では、ラック26とピニオン28とは、ヘリカルギア(はすば歯車)で形成されている。なお、本発明に係るラック26及びピニオン28は、ヘリカルギアに限定されず、スパーギア(平歯車)で形成されてもよい。
【0034】
図4(A)から図4(D)には、図2の給脂装置22の使用状態が示されている。図4(A)では、塗布体34が押出口42を塞いでいる。図4(B)では、塗布体34は、シリンダ36によって、ラック26から離れて位置している。押出口42は開口されている。ピストン32(図2参照)の重みで押出口42からグリスGが押し出されている。押し出されたグリスGは、受板38に当接している。
【0035】
図4(C)では、塗布体34は、シリンダ36によって、図4(B)の位置から図4(D)の位置に移動する途中に位置している。塗布体34は、押出口42から押し出されたグリスGを所定の押出長さで切断している。ここでは、押出口42から受板38までの距離を押出長さとして、塗布体34がグリスGを切断している。この切断によって、グリスGから、所定量のグリス片Gpが形成されている。塗布体34は、グリス片Gpをラック26の表面26Aに向かって押している。図4(C)では、塗布体34は、押出口42を塞いでいる。
【0036】
図4(D)では、塗布体34は、シリンダ36によって、最もラック26に近づいている。グリス片Gpが塗布体34によってラック26の表面26Aに塗布されている。
【0037】
図4(A)から図4(D)を参照しつつ、給脂装置22の給脂方法が説明される。この給脂方法では、図2に示される様に、タンク30にグリスGが貯留されている。このグリスGは、ピストン32によって加圧されている。
【0038】
図4(A)に示される様に、押出口42は塗布体34で塞がれている(STEP1)。このタンク30からグリスGが押し出される(STEP2)。このSTEP2では、シリンダ36が塗布体34をラック26から離れた位置に移動させる。押出口42が開口する。押出口42からグリスGが押し出される。図4(B)に示される様に、押し出されたグリスGが受板38に当接する。
【0039】
グリスGが切断されてグリス片Gpが形成される(STEP3)。このSTEP3では、シリンダ36が、塗布体34を、図4(B)の位置からラック26に近づく向きに移動させる。塗布体34は、押出口42を塞ぎつつ、グリスGを切断する。図4(C)に示される様に、塗布体34が押出口42を塞ぎ、所定量のグリス片Gpが形成される。
【0040】
グリス片Gpがラック26に塗布される(STEP4)。このSTEP4では、シリンダ36が、塗布体34を、図4(C)の位置からラック26に近づく向きに移動させる。この塗布体34がグリス片Gpをラック26の歯46に塗布する。
【0041】
この給脂方法では、このSTEP1からSTEP4が、所定の条件を満たす毎に繰り返される。例えば、このSTEP1からSTEP4が、周期的に繰り返される。また、この所定の条件は、例えば、所定の時間、所定の動作回数、所定の動作距離であってもよい。この所定の条件は、センサで塗布されたグリスの劣化や膜厚等のグリス状態を検知し、このグリス状態を基準に定められてもよい。この所定の条件は、温度や駆動モータの電流値等を基準にして定められてもよい。
【0042】
図1の基板搬送装置6は、クリーンルーム等のクリーンな環境で使用される。給脂装置22では、潤滑剤としてグリスGが用いられている。グリスGは、液状潤滑油又はその他の液状潤滑剤に増ちょう剤を加えた、常温で半固体ののり状又は固体状の潤滑剤である。このグリスGは、液状潤滑油に比べて、飛散や漏洩が少ない。グリスGは、基板搬送装置6の様に、クリーンな環境で使用される搬送装置の潤滑に適している。
【0043】
この給脂装置22では、所定の条件を満たす毎に所定量のグリスGとして、グリス片Gpが供給される。この給脂装置22は、潤滑に十分な所定量のグリスGを供給でき、必要以上のグリスGの供給を抑制できる。この給脂装置22は、飛散や漏洩が少ないグリスGを必要十分な量で供給できる。この給脂装置22は、クリーンな環境を維持しつつ、基板搬送装置6を適正に潤滑できる。この観点から、この給脂装置22は、上下方向に延びる第一係合部(ラック26)に限らず、上下方向の他、水平方向を含む、所定方向に延びる第一係合部(ラック26)の潤滑に適している。
【0044】
この給脂装置22は、ラック26の上下方向に並ぶ歯46にグリス片Gpを塗布する。給脂装置22は、上下方向に延びる第一係合部としてラック26をグリスGで潤滑する。塗布されたグリス片Gpは、ラック26の表面26A及び側面26Bに沿って下方に流れ落ちる。この給脂装置22は、上下方向に延びる第一係合部としてのラック26において、グリスGが広範囲に飛散することを更に抑制できる。
【0045】
この給脂装置22は、所定量のグリス片Gpをラック26に供給する。適正な量のグリス片Gpを供給することで、給脂装置22は所定時間に亘り潤滑状態を維持できる。この給脂装置22は、所定の条件を満たす毎にグリス片Gpをラック26に供給する。これにより、給脂装置22は長期間に亘り潤滑状態を維持できる。
【0046】
この給脂装置22のタンク30は、上下方向を長手方向としている。タンク30は、上下方向に延びる第一係合部としてのラック26に沿って延びている。このタンク30は、貯留するグリスGの容量を多くしつつ省スペース化できる。
【0047】
この給脂装置22は、タンク30内のグリスGが加圧されている。加圧することで、半固体ののり状又は固体状のグリスGが、押出口42から略一定の速度で押し出される。押し出されたグリスGが塗布体34の厚さで切断され、グリス片Gpが形成される。これにより、所定量のグリス片Gpが形成される。この給脂装置22では、タンク30の押出口42を塗布体34が閉じることで、加圧状態のグリスGの漏洩が抑制される。この給脂装置22は、適正な潤滑状態を維持すると共に、グリスGの飛散を抑制できる。
【0048】
この昇降装置14では、ラック26とピニオン28とは、ヘリカルギアで形成されている。ヘリカルギアは、スパーギアに比べて、かみあい率が大きく、振動が小さい。一方で、ヘリカルギアは、スパーギアに比べて、耐摩耗性に劣る。ヘリカルギアは、スパーギアに比べて、潤滑不足による不具合を生じ易い。この給脂装置22は、適正な潤滑状態を維持すると共にグリスGの飛散を抑制できる。この給脂装置22は、このラック26とピニオン28を備える昇降装置14の潤滑に適している。
【0049】
この給脂装置22では、重りとしてピストン32がグリスGを加圧している。この給脂装置22は、加圧のための動力を必要としない。タンク30に通気孔44を形成するだけの簡素な構成で、この給脂装置22はグリスGを加圧できる。なお、この給脂装置22では、ピストン32を重りとして用いたが、ピストン32とは別に重りが用いられてもよい。また、本発明の加圧体は、重りで加圧するものに限られない。例えば、この加圧体は、圧縮空気等の加圧流体で加圧するものであってもよい。
【0050】
この給脂装置22では、塗布体34がグリスGを切断する機能を兼ね備えている。この塗布体34を用いることで、グリスGが付着する切断装置を別に設ける必要がない。この塗布体34がタンク30の押出口42を開閉する機能を兼ね備えている。この塗布体34を用いることで、グリスGが付着する開閉体を別に設ける必要がない。この塗布体34は、グリスGが付着する部品を削減できる。この給脂装置22は、昇降装置14の周辺の汚れを抑制できる。この塗布体34を備えることで、給脂装置22は、構造が簡素化できる。なお、本発明では、グリスGを切断する切断装置や押出口42を開閉する開閉体が、塗布体34と別体で設けられてもよい。
【0051】
この給脂装置22は、オイルガイド24を備えている。オイルガイド24は、ラック26の表面26A及び側面26Bに沿って下方に流れ落ちるグリスGを回収する。回収されたグリスGは、図示されない回収容器に送られる。このオイルガイド24を備えることで、グリスGが、昇降装置14の周辺を汚すことを抑制できる。
【0052】
ここでは、ラック26が基台18の本体に取り付けられ、ピニオン28が昇降軸20の本体に取り付けられたが、これに限られない。ラック26が昇降軸20の本体に取り付けられ、ピニオン28が基台18の本体に取り付けられてもよい。この場合に、基台18に、給脂装置22が取り付けられればよい。
【0053】
この給脂装置22は、ラック26とピニオン28との潤滑に用いられたが、これに限られない。給脂装置22は、第一係合部としてのボールネジと第二係合部としてナットとの潤滑に用いられてもよい。
【0054】
この給脂装置22では、グリスGが受板38で受けられて、塗布体34がグリスGを切断しているがこれに限られない。受板38を用いることなく、グリスGが塗布体34の厚さに対応する押し出し長さで切断されてもよい。
【0055】
図5には、本発明に係る他の給脂装置56を備える基板搬送装置58の一部が示されている。この基板搬送装置58は、基板搬送装置6の給脂装置22に代えて給脂装置56を備えている。基板搬送装置58は、基板搬送装置6のラック26に代えてラック60を備えている。基板搬送装置58は、その他の構成を基板搬送装置6と同様にされている。ここでは、基板搬送装置6と異なる構成について、主に説明がされる。基板搬送装置6と同様の構成について、その説明が省略される。また、基板搬送装置6と同様の構成について、同様の符号を付して説明がされる。
【0056】
給脂装置56は、タンク62、ピストン64、グリス流路66及び加圧装置68とを備えている。給脂装置56は、ラック60と共に基台18に取り付けられている。基板搬送装置58では、3つの給脂装置56が取り付けられているが、これに限られない。複数の給脂装置56が上下方向に所定の間隔を開けて取り付けられてもよいし、1つの給脂装置56が取り付けられてもよい。なお、給脂装置56は、ラック60が昇降軸20に取り付けられる場合、昇降軸20に取り付けられる。
【0057】
タンク62は、貯留室70及び押出口72を備える。貯留室70に、グリスGが貯えられる。ピストン64は、貯留室70に収容されている。ピストン64は、貯留室70の壁面70Aに摺動可能である。ピストン64は、貯留室70を、貯留空間74と加圧空間76とに仕切っている。
【0058】
グリス流路66は、タンク62の押出口72に接続されている。グリス流路66は、貯留室70に連通している。グリス流路66は、例えばホースからなる。グリス流路66は、金属製配管からなってもよい。
【0059】
加圧装置68は、加圧流体の配管78及び切替弁80を備えている。この加圧流体は、特に限定されなが、ここでは加圧空気を例に説明がされる。この配管78は、加圧空気が貯えられた図示されない加圧タンクと、タンク62とを接続している。切替弁80は、この配管78の流路を開閉する。なお、ここでは、切替弁80は、加圧タンクとタンク62との間で配管78の流路が開かれた状態と、この流路が閉じられた状態とで切替え可能である。また、この切替弁80では、流路が閉じられた状態でタンク62の加圧空間76の空気が大気開放されている。
【0060】
ラック60は、上下方向に並べられた複数の歯82を備えている。複数の歯82は、ピニオン28に対向する表面60Aに形成されている。ラック60は、歯82が形成された表面60Aに貫通する給脂孔84を備えている。この給脂孔84は、ラック60の裏面から表面60Aまでに貫通している。この給脂孔84にグリス流路66が接続されている。ラック60の歯82とピニオン28の歯48とが係合している。図示されないが、基板搬送装置58は、昇降軸20を基台18に対して上下方向に移動可能に支持する移動装置と、ピニオン28を回転駆動する駆動モータとを備えている。
【0061】
図6(A)及び図6(B)には、この給脂装置56の使用状態が示されている。図6(A)では、切替弁80によって、加圧空間76の圧力が大気圧にされている。これにより、グリスGは加圧されていない。図6(B)では、切替弁80によって、加圧空間76内が加圧空気によって加圧されている。ピストン64を介してグリスGが加圧されている。グリスGが給脂孔84から表面60Aに押し出されている。押し出されたグリス片Gpが表面60Aに付着している。
【0062】
図6(A)及び図6(B)を参照しつつ、給脂装置56の給脂方法が説明される。この給脂方法では、図6(A)に示される様に、タンク62にグリスGが貯留されている(STEP1’)。
【0063】
グリス片Gpが表面60Aに塗布される(STEP2’)。このSTEP2’では、図6(A)の状態から切替弁80が切替えられる。ピストン64がタンク62のグリスGを加圧する。グリスGが給脂孔84から表面60Aに押し出される。所定の時間、このSTEP2’の状態が保持される。所定量のグリスGが押し出される。所定時間が経過した後に、図6(A)の状態に切替弁80が切替えられる。給脂孔84からのグリスGの押し出しが停止される。これにより、給脂装置56は、図6(A)に示されたSTEP1’の状態に戻る。
【0064】
この給脂方法では、このSTEP1’とSTEP2’とが、所定の条件を満たす毎に周繰り返される。例えば、このSTEP1’とSTEP2’とが、所定時間毎に繰り返される。このSTEP1’とSTEP2’とが、昇降装置14の所定の使用回数毎に繰り返されてもよい。
【0065】
この給脂装置56では、貯留室70とグリス流路66と給脂孔84とが気密に接続されている。STEP2’の状態が維持される所定時間と加圧空気の圧力とを管理することで、押し出されるグリスGの量を制御できる。この給脂装置56は、所定量のグリス片Gpを供給できる。この所定量のグリス片Gpをラック60に塗布することで、適正な潤滑状態が維持されると共に、グリスGの飛散が抑制される。
【0066】
この給脂装置56では、ラック60の給脂孔84からグリスGが塗布される。この給脂装置56では、グリスGの飛散が一層抑制されている。
【0067】
この給脂装置56では、切替弁80によって、グリスGの押し出しと押し出しの停止とが切替えられたがこれに限られない。例えば、グリス流路66の開閉弁が設けられてもよい。貯留室70のグリスGを加圧しつつ、グリス流路66の開閉弁が開閉されてもよい。この場合、貯留室70は常時加圧されてもよく、例えば重りで加圧されてもよい。
【0068】
この説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。従って、この説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。この説明は、本発明を実行する最良の形態を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明を逸脱することなく、その構造及び機能の詳細は、実質的に変更可能である。また、この実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明が形成できる。
【符号の説明】
【0069】
2・・・基板
4・・・容器
6、58・・・基板搬送装置
14・・・昇降装置
18・・・基台
20・・・昇降軸
22、56・・・給脂装置
26、60・・・ラック
26A、60A・・・表面
28・・・ピニオン
30、62・・・タンク
32、64・・・ピストン
34・・・塗布体
40、70・・・貯留室
42、72・・・押出口
46、48、82・・・歯
66・・・グリス流路
68・・・加圧装置
80・・・切替弁
84・・・給脂孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6