(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20231002BHJP
B62D 5/065 20060101ALI20231002BHJP
B62D 5/12 20060101ALI20231002BHJP
B62D 5/26 20060101ALI20231002BHJP
B62D 12/00 20060101ALI20231002BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20231002BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20231002BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20231002BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20231002BHJP
B62D 115/00 20060101ALN20231002BHJP
B62D 137/00 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/065 B
B62D5/12
B62D5/26
B62D12/00
E02F9/20 H ZYW
E02F9/22 A
E02F9/26 A
B62D113:00
B62D115:00
B62D137:00
(21)【出願番号】P 2019179561
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
(72)【発明者】
【氏名】坂井 幸尚
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-54513(JP,A)
【文献】特開2016-010336(JP,A)
【文献】特開2007-060982(JP,A)
【文献】特開2013-201958(JP,A)
【文献】特開平07-172334(JP,A)
【文献】実開昭53-115828(JP,U)
【文献】特開2003-237619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の操向機構を制御する制御システムであって、
前記作業車両の操向機構の制御を開始するためのトリガが入力されたときの前記作業車両の位置および方位と、前記作業車両の進行方向とに基づいて、前記作業車両の走行経路を生成し、前記作業車両が生成された前記走行経路に沿って走行するように、前記作業車両の操向機構を制御する制御部を備える、制御システム。
【請求項2】
前記作業車両の操向機構を動作させるために操作される操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記操作部の操作が停止された場合に前記作業車両の操向機構の制御を開始する、請求項
1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作部の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、前記作業車両の操向機構の制御を開始する、請求項
2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定期間の間に、前記作業車両の走行経路を生成する、請求項
3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作部の操作が再開された場合に前記作業車両の操向機構の制御を停止する、請求項
2から4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御部による前記作業車両の操向機構の制御の開始および停止を切り替えるためのスイッチをさらに備える、請求項
1に記載の制御システム。
【請求項7】
操向機構を含む作業車両の制御方法であって、
前記操向機構の制御を開始するためのトリガが入力されたときの前記作業車両の位置および方位と、前記作業車両の進行方向とに基づいて、前記作業車両の走行経路を生成するステップと、
前記作業車両が生成された前記走行経路に沿って走行するように、前記操向機構を制御するステップとを備える、作業車両の制御方法。
【請求項8】
前記操向機構は、ステアリングシリンダと、前記ステアリングシリンダを制御するステアリングバルブとを含み、
前記ステアリングシリンダは、前記ステアリングバルブからの圧油により、前後方向に対して操向輪がなす角度が変化するように前記操向輪を動作させる、請求項
7に記載の作業車両の制御方法。
【請求項9】
前記操向機構は、左右一対の第1牽引装置および第2牽引装置を回転駆動させる駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記第1牽引装置の回転速度と、前記第2牽引装置の回転速度とを互いに独立して制御する、請求項
7に記載の作業車両の制御方法。
【請求項10】
作業車両であって、
操向機構と、
前記操向機構の制御を開始するためのトリガが入力されたときの前記作業車両の位置および方位と、前記作業車両の進行方向とに基づいて、前記作業車両の走行経路を生成し、前記作業車両が生成された前記走行経路に沿って走行するように、前記操向機構を制御する制御部とを備える、作業車両。
【請求項11】
前記操向機構を動作させるために操作される操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記操作部の操作が停止された場合に前記操向機構の制御を開始する、請求項
10に記載の作業車両。
【請求項12】
前記作業車両の位置および方位に関する情報を検知する第1検知部と、
前記作業車両の進行方向に関する情報を検知する第2検知部とをさらに備える、請求項
10または11に記載の作業車両。
【請求項13】
前記第1検知部は、GNSSレシーバを含み、
前記制御部は、前記GNSSレシーバによって、前記作業車両の位置および方位を取得する、請求項
12に記載の作業車両。
【請求項14】
前輪が設けられる車体フレームをさらに備え、
記第2検知部は、前記前輪のステアリング角度を検知するステアリング角度センサを含み、
前記制御部は、前記ステアリング角度センサにより検知された前記ステアリング角度に基づいて、前記作業車両の進行方向を特定する、請求項
12または13に記載の作業車両。
【請求項15】
前記車体フレームは、前記前輪が設けられるフロントフレームと、後輪が設けられ、前記フロントフレームに回動可能に連結されるリアフレームとを含み、
前記第2検知部は、前記フロントフレームと前記リアフレームとのアーティキュレート角度を検知するアーティキュレート角度センサをさらに含み、
前記制御部は、さらに前記ステアリング角度センサにより検知された前記ステアリング角度に基づいて、前記作業車両の進行方向を特定する、請求項
14に記載の作業車両。
【請求項16】
前記操向機構は、ステアリングシリンダと、前記ステアリングシリンダを制御するステアリングバルブとを含み、
前記ステアリングシリンダは、前記ステアリングバルブからの圧油により、前後方向に対して操向輪がなす角度が変化するように前記操向輪を動作させる、請求項
10から15のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項17】
前記操向機構は、左右一対の第1牽引装置および第2牽引装置を回転駆動させる駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記第1牽引装置の回転速度と、前記第2牽引装置の回転速度とを互いに独立して制御する、請求項
10から15のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、米国特許出願公報第2008/0208461号明細書(特許文献1)には、自動操向システムを備えたモータグレーダが開示されている。自動操向システムは、車両の位置データ、作業現場の地図、または、車両の移動条件を示すパラメータなどに基づいて、車両の移動経路を生成する経路生成装置と、経路成形装置によって生成された経路に沿って車両を案内する経路追跡装置とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公報第2008/0208461号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるモータグレーダでは、自動操向システムによって、ステアリングを操作するオペレータの負担を軽減しようとしている。しかしながら、オペレータは、予め車両の移動経路の生成に必要な各種情報を経路生成装置に入力しなければならないため、オペレータの負担が十分に軽減されているとはいえない。
【0005】
そこで本開示の目的は、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現する制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った制御システムは、作業車両の操向機構を制御する制御システムである。制御システムは、制御部を備える。制御部は、作業車両の位置および方位と、作業車両の進行方向とに基づいて、作業車両の走行経路を生成し、作業車両が生成された走行経路に沿って走行するように、作業車両の操向機構を制御する。
【0007】
本開示に従った作業車両の制御方法は、操向機構を含む作業車両の制御方法である。作業車両の制御方法は、作業車両の位置および方位と、作業車両の進行方向とに基づいて、作業車両の走行経路を生成するステップと、作業車両が生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構を制御するステップとを備える。
【0008】
本開示に従った作業車両は、操向機構と、制御部とを備える。制御部は、作業車両の位置および方位と、作業車両の進行方向とに基づいて、作業車両の走行経路を生成し、作業車両が生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に従えば、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現する制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1におけるモータグレーダを示す斜視図である。
【
図2】
図1中のモータグレーダを示す側面図である。
【
図3】
図1中のモータグレーダの操向に関わる構成を示すシステム図である。
【
図4】
図1中のモータグレーダの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
【
図5】旋回時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
【
図6】
図5中のモータグレーダで生成される走行経路を示す上面図である。
【
図7】直進時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
【
図8】ブレードに負荷を受けた場合のモータグレーダの挙動を示す上面図である。
【
図9】ステアリング自動制御時における前輪のステアリング角度と、モータグレーダの旋回曲率との関係を示すグラフである。
【
図10】ハンドル操作と、走行経路の生成と、ステアリング自動制御との相互のタイミングの関係を示すタイミングチャートである。
【
図11】実施の形態1におけるモータグレーダの制御方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図4中の運転アシストシステムに関わる構成の変形例を示すブロック図である。
【
図13】モータグレーダの操向機構の制御システムの概念を示す図である。
【
図15】
図14中のブルドーザの操向に関わる構成を示すシステム図である。
【
図16】
図14中のブルドーザの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるモータグレーダを示す斜視図である。
図2は、
図1中のモータグレーダを示す側面図である。
【0013】
図1および
図2に示されるように、モータグレーダ100は、走行しながら、整地作業を行なったり、除雪作業を行なったりする作業機械である。モータグレーダ100は、フロントフレーム14と、リアフレーム15と、一対のアーティキュレートシリンダ28と、運転席が設けられるキャブ11と、エンジン室13と、前輪16および後輪17と、作業機12とを有する。
【0014】
以下の説明において、前後方向とは、キャブ11内の運転席に着座したオペレータの前後方向である。運転席に着座したオペレータの正面方向が、前方であり、運転席に着座したオペレータの背後方向が、後方である。左右方向とは、運転席に着座したオペレータの左右方向である。運転席に着座したオペレータが正面を向いたときの右側が、右方であり、運転席に着座したオペレータが正面を向いたときの左側が、左方である。上下方向とは、前後方向および左右方向を含む平面に直交する方向である。地面のある側が、下方であり、空のある側が、上方である。
【0015】
フロントフレーム14およびリアフレーム15は、モータグレーダ100の車体フレーム18を構成している。フロントフレーム14は、リアフレーム15の前方に設けられている。
【0016】
フロントフレーム14は、回動中心121を中心としてリアフレーム15に回動可能に連結されている。フロントフレーム14は、回動中心121の軸上に設けられたセンターピン(不図示)により、リアフレーム15に回動可能に連結されている。回動中心121は、上下方向に沿って延びる軸である。回動中心121は、左右方向におけるモータグレーダ100の中央に位置している。
【0017】
フロントフレーム14は、回動中心121から前方に向けて延びている。フロントフレーム14は、リアフレーム15に回動可能に連結される基端部14pと、基端部14pとは反対側に設けられる先端部14qとを有する。リアフレーム15は、回動中心121から後方に向けて延びている。
【0018】
一対のアーティキュレートシリンダ28は、フロントフレーム14を挟んで左右両側に設けられている。アーティキュレートシリンダ28は、油圧により伸縮駆動する油圧シリンダである。アーティキュレートシリンダ28は、伸縮方向における一方端において、フロントフレーム14に回動可能に連結され、伸縮方向における他方端において、リアフレーム15に回動可能に連結されている。アーティキュレートシリンダ28の伸縮駆動により、フロントフレーム14は、リアフレーム15に対して回動中心121を中心に回動する。
【0019】
キャブ11は、リアフレーム15に載置されている。キャブ11は、オペレータが搭乗するための室内空間を形成している。キャブ11には、運転席に加えて、ステアリング操作のためのステアリングハンドル41およびステアリングレバー42(後出の
図3を参照)、作業機12を操作するための複数のレバー、ならびに、各種の表示装置などが設けられている。なお、キャブ11は、フロントフレーム14に載置されてもよい。
【0020】
エンジン室13は、キャブ11の後方に設けられている。エンジン室13は、リアフレーム15により支持されている。エンジン室13には、エンジンが収納されている。
【0021】
前輪16および後輪17は、走行輪である。前輪16は、フロントフレーム14に回転可能に取り付けられている。前輪16は、フロントフレーム14に対して操向可能に取り付けられている。前輪16は、前後方向に対してなす角度が変化するように左右に動作する。前輪16は、操向輪である。後輪17は、リアフレーム15に回転可能に取り付けられている。後輪17には、エンジンからの駆動力が伝達される。なお、
図1中には、片側1輪ずつの2つの前輪16と、片側2輪ずつの4つの後輪17とからなる全6輪の走行輪が示されているが、前輪および後輪の数および配置は、これに限られない。
【0022】
作業機12は、前後方向において、前輪16および後輪17の間に設けられている。作業機12は、フロントフレーム14により支持されている。作業機12は、ブレード21と、ドローバ22と、旋回サークル23と、一対のリフトシリンダ25とを有する。
【0023】
ドローバ22は、フロントフレーム14の下方に設けられている。ドローバ22の前端部は、フロントフレーム14の先端部14qに揺動可能に連結されている。一対のリフトシリンダ25は、フロントフレーム14を挟んだ左右両側に設けられている。ドローバ22の後端部は、一対のリフトシリンダ25を介して、フロントフレーム14により支持されている。
【0024】
一対のリフトシリンダ25の伸縮によって、ドローバ22の後端部がフロントフレーム14に対して上下に昇降可能である。一対のリフトシリンダ25がともに短縮駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは上方に調整される。一対のリフトシリンダ25がともに伸長駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは下方に調整される。
【0025】
ドローバ22は、一対のリフトシリンダ25の互いに異なる伸縮によって、前後方向に沿った軸を中心に上下に揺動可能である。
【0026】
旋回サークル23は、ドローバ22の下方に設けられている。旋回サークル23は、ドローバ22に旋回可能に連結されている。旋回サークル23は、上下方向に沿った軸を中心に、時計回りおよび反時計回りに旋回可能である。
【0027】
ブレード21は、旋回サークル23の下方に設けられている。ブレード21は、地面と対向して設けられている。ブレード21は、旋回サークル23により支持されている。ブレード21は、旋回サークル23の旋回運動に伴って、上面視において前後方向に対してブレード21がなす角度(ブレード推進角)が変化するように旋回する。ブレード21の旋回軸は、上下方向に沿って延びる軸である。
【0028】
図3は、
図1中のモータグレーダの操向に関わる構成を示すシステム図である。
図3に示されるように、モータグレーダ100は、操向機構66と、制御部51と、操作部67とをさらに有する。
【0029】
操向機構66は、モータグレーダ100の進行方向を操作する機構である。制御部51は、モータグレーダ100の操向を制御する。制御部51は、操向機構66の動作を制御する。操作部67は、キャブ11内に設けられている。操作部67は、操向機構66を動作させるためにオペレータによって操作される。
【0030】
操作部67は、ステアリングハンドル41と、ステアリングレバー42とを有する。ステアリングハンドル41は、キャブ11内の運転席の前方に設けられている。ステアリングハンドル41は、たとえば、ホイール形状のハンドルであり、オペレータによって回転操作される。ステアリングレバー42は、ステアリングハンドル41から離れた位置に設けられている。ステアリングレバー42は、たとえば、キャブ11内の運転席の側方に設けられている。ステアリングレバー42は、オペレータによって傾倒操作される。
【0031】
モータグレーダ100は、電気流体圧制御弁73をさらに有する。操作部67は、軌道バルブ71をさらに有する。操向機構66は、ステアリングバルブ72と、ステアリングシリンダ36とを有する。
【0032】
電気流体圧制御弁73は、圧油をステアリングバルブ72に供給する。制御部51は、ステアリングレバー42からの操作信号に基づいて、電気流体圧制御弁73を制御する。軌道バルブ71は、ステアリングハンドル41における回転操作に応じて、圧油をステアリングバルブ72に供給する。
【0033】
ステアリングバルブ72は、ステアリングシリンダ36に圧油を供給する。ステアリングバルブ72は、電気流体圧制御弁73および軌道バルブ71から供給される圧油により制御される。ステアリングシリンダ36は、ステアリングバルブ72からの圧油により、前輪16の前後方向に対してなす角度を変化させるように前輪16を左右に動作させる。前輪16が左側に傾くと、モータグレーダ100は、左前方に向けて円弧を描きながら旋回する。前輪16が右側に傾くと、モータグレーダ100は、右前方に向けて円弧を描きながら旋回する。
【0034】
このような構成により、オペレータがステアリングハンドル41またはステアリングレバー42を操作することによって、ステアリングシリンダ36が伸縮し、前輪16が左右に動作する。
【0035】
図4は、
図1中のモータグレーダの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
図2から
図4に示されるように、制御部51は、以下に説明するモータグレーダ100の運転アシストシステムの動作を制御する。
【0036】
モータグレーダ100は、ハンドルセンサ31と、レバーセンサ32とをさらに有する。ハンドルセンサ31は、ステアリングハンドル41の操作を検知する。レバーセンサ32は、ステアリングレバー42の操作を検知する。
【0037】
ハンドルセンサ31は、オペレータによるステアリングハンドル41の操作を検知した場合に操作信号を発生し、操作信号を制御部51に出力する。ハンドルセンサ31は、たとえば、ステアリングハンドル41の回転によって発生するステアリングハンドル軸の角度変位を検出する軸変位センサである。レバーセンサ32は、オペレータによるステアリングレバー42の操作を検知した場合に操作信号を発生し、操作信号を制御部51に出力する。レバーセンサ32は、たとえば、ステアリングレバー42の角度位置を検出する位置センサである。
【0038】
なお、ハンドルセンサ31は、ステアリングハンドル41の回転操作量が微小である場合には、操作信号を発生しないように不感帯を有してもよい。同様に、レバーセンサ32は、ステアリングレバー42の傾倒操作量が微小である場合には、操作信号を発生しないように不感帯を有してもよい。一例として、後述する前輪16のステアリング角度が±0.5°以内で変化する時のステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作量は、微小であると判断される。
【0039】
モータグレーダ100は、第1検知部61と、第2検知部62とをさらに有する。第1検知部61は、モータグレーダ100の位置および方位に関する情報を検知する。第2検知部62は、モータグレーダ100の進行方向に関する情報を検知する。
【0040】
第1検知部61は、GNSS(全球測位衛星システム:Global Navigation Satellite System)レシーバ35を有する。GNSSレシーバ35は、たとえば、GPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ35のアンテナ35g(
図2を参照)は、たとえば、キャブ11の天井部に配置される。GNSSレシーバ35は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナ35gの位置を演算して車体位置データを生成する。GNSSレシーバ35は、モータグレーダ100の位置および方位データを制御部51に出力する。
【0041】
第2検知部62は、ステアリング角度センサ33と、アーティキュレート角度センサ34とを有する。ステアリング角度センサ33は、前輪16のステアリング角度(前後方向に対して前輪16がなす角度)を検知し、検知したステアリング角度の信号を発生する。ステアリング角度センサ33は、ステアリング角度の信号を制御部51に出力する。アーティキュレート角度センサ34は、フロントフレーム14とリアフレーム15とのアーティキュレート角度(連結角度)を検知し、検知したアーティキュレート角度の信号を発生する。アーティキュレート角度センサ34は、アーティキュレート角度の信号を制御部51に出力する。
【0042】
図4に示されるように、制御部51は、操向機構66の自動制御を開始するためのトリガが入力された場合に、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成し、モータグレーダ100が生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構66を制御する。
【0043】
制御部51は、操作部67の操作が停止された場合に操向機構66の制御を開始する。制御部51は、操作部67の操作が再開された場合に操向機構66の制御を停止する。
【0044】
制御部51は、トリガ出力部52と、自動制御指令部58と、ステアリング制御部54とを有する。
【0045】
トリガ出力部52は、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、および/または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号に基づいて、操向機構66の制御(後述するステアリング自動制御)を開始または停止するためのトリガを出力する。
【0046】
トリガ出力部52は、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号が入力された場合に、ステアリング自動制御を停止するためのトリガ(後述する停止トリガ)を出力する。
【0047】
トリガ出力部52は、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、および、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号が入力されなかった場合に、ステアリング自動制御を開始するためのトリガ(後述する開始トリガ)を出力する。
【0048】
自動制御指令部58は、車両位置・方位取得部56と、進行方向特定部55と、経路生成部53とを有する。
【0049】
車両位置・方位取得部56は、GNSSレシーバ35からモータグレーダ100の位置および方位データを取得する。車両位置・方位取得部56により取得されるモータグレーダ100の位置データは、グローバル座標系において規定されるモータグレーダ100の位置である。車両位置・方位取得部56により取得されるモータグレーダ100の方位データは、たとえば、モータグレーダ100の前方に対応する方位である。
【0050】
進行方向特定部55には、ステアリング角度センサ33からのステアリング角度の信号と、アーティキュレート角度センサ34からのアーティキュレート角度の信号とが入力される。進行方向特定部55は、入力されたステアリング角度とアーティキュレート角度とに基づいて、モータグレーダ100の進行方向を特定する。
【0051】
なお、本開示がアーティキュレート機構を備えない作業車両に適用される場合には、車体フレームに設けられた前輪のステアリング角度のみに基づいて、作業車両の進行方向が特定されてもよい。
【0052】
経路生成部53は、トリガ出力部52からの開始トリガが入力された場合に、車両位置・方位取得部56において取得されたモータグレーダ100の位置および方位データと、進行方向特定部55において特定されたモータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成する。
【0053】
ステアリング制御部54は、モータグレーダ100が、経路生成部53において生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構66を制御する。具体的には、ステアリング制御部54は、モータグレーダ100が、経路生成部53において生成された走行経路に沿って走行するように、電気流体圧制御弁73に制御信号を出力する。電気流体圧制御弁73は、ステアリング制御部54からの信号に基づいて、ステアリングバルブ72に圧油を供給し、ステアリングシリンダ36を制御する(ステアリング自動制御の開始)。
【0054】
オペレータによる操作部67の操作が再開されると、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号が入力される。これにより、トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。この場合に、自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御を停止させる。
【0055】
続いて、制御部51で実行されるステアリング自動制御についてより具体的に説明する。
図5は、旋回時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
図6は、
図5中のモータグレーダで生成される走行経路を示す上面図である。
【0056】
なお、説明を簡単にするために、
図5および
図6、ならびに、後出の
図7中には、前輪16を動作させるための操作部67としてステアリングハンドル41のみが用いられ、また、フロントフレーム14とリアフレーム15とが屈曲しておらず、アーティキュレート角度が0°である場合が示されている。
【0057】
図4および
図5に示されるように、モータグレーダ100が、モータグレーダ100A、モータグレーダ100B、モータグレーダ100Cおよびモータグレーダ100Dに示される位置(以下、「位置100A」、「位置100B」、「位置100C」および「位置100D」とそれぞれいう)を順に移動するように走行する。
【0058】
モータグレーダ100が位置100Aから位置100Bまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作することによってモータグレーダ100を走行させている。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力される。トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御は開始されない。
【0059】
モータグレーダ100が位置100Bから位置100Cまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作することによって、モータグレーダ100を右前方に向けて旋回させる。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力される。トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御は開始されない。
【0060】
モータグレーダ100が位置100Cから位置100Dまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作していない。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない。トリガ出力部52は、開始トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信し、ステアリング自動制御が開始される。
【0061】
図4および
図6に示されるように、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない場合、トリガ出力部52は、開始トリガを出力する。車両位置・方位取得部56は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信すると、GNSSレシーバ35から、座標(X,Y)により示されるモータグレーダ100の位置と、矢印200により示されるモータグレーダ100の方位とを取得する。進行方向特定部55は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信すると、ステアリング角度センサ33で検知されたステアリング角度θsに基づいて、モータグレーダ100の進行方向(旋回方向)を特定する。
【0062】
経路生成部53は、車両位置・方位取得部56において取得されたモータグレーダ100の位置および方位と、進行方向特定部55において特定されたモータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路210を生成する。走行経路210は、車両位置・方位取得部56において取得されたモータグレーダ100の位置を始点にし、モータグレーダ100を、車両位置・方位取得部56において取得されたモータグレーダ100の方位を基準に、進行方向特定部55において特定された進行方向に旋回させる経路である。走行経路210は、モータグレーダ100をステアリング角度θsに対応する一定の曲率半径rで旋回させる経路である。
【0063】
図4および
図5に示されるように、位置100Cから位置100Dまでのステアリング自動制御が実行される間、ステアリング制御部54は、経路生成部53において生成されたモータグレーダ100の走行経路210と、車両位置・方位取得部56において刻々と取得されるモータグレーダ100の位置とを照らし合わせる。ステアリング制御部54は、
図5中のモータグレーダ100Eに示されるように、走行経路210と、モータグレーダ100の位置との間に予め定められた閾値以上のずれが生じた場合には、モータグレーダ100の位置が走行経路210上に戻るようにステアリングシリンダ36を制御する。
【0064】
このあと、ステアリング制御部54は、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力された場合には、ステアリング自動制御を停止し、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない場合には、ステアリング自動制御を再開する。ステアリング自動制御の再開時には、経路生成部53は、そのときのモータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、新たな走行経路を生成する。
【0065】
図7は、直進時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
【0066】
図4および
図7に示されるように、モータグレーダ100が、モータグレーダ100S、モータグレーダ100Tおよびモータグレーダ100Uに示される位置(以下、「位置100S」、「位置100T」および「位置100U」とそれぞれいう)を順に移動するように走行する。
【0067】
モータグレーダ100が位置100Sから位置100Tまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作することによってモータグレーダ100を走行させている。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力される。トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御は開始されない。
【0068】
モータグレーダ100が位置100Tから位置100Uまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作していない。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない。トリガ出力部52は、開始トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信し、ステアリング自動制御が開始される。
【0069】
旋回時と同様に、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない場合、トリガ出力部52は、開始トリガを出力する。車両位置・方位取得部56は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信すると、GNSSレシーバ35から、モータグレーダ100の位置および方位を取得する。進行方向特定部55は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信すると、ステアリング角度センサ33で検知されたステアリング角度θs=0°に基づいて、モータグレーダ100の進行方向(直進方向)を特定する。
【0070】
経路生成部53は、車両位置・方位取得部56において取得されたモータグレーダ100の位置および方位と、進行方向特定部55において特定されたモータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路220を生成する。走行経路220は、車両位置・方位取得部56において取得されたモータグレーダ100の位置を始点にし、モータグレーダ100を、車両位置・方位取得部56において取得されたモータグレーダ100の方位を基準に、進行方向特定部55において特定された進行方向に直進させる経路である。
【0071】
位置100Tから位置100Uまでのステアリング自動制御が実行される間、ステアリング制御部54は、経路生成部53において生成されたモータグレーダ100の走行経路220と、車両位置・方位取得部56において刻々と取得されるモータグレーダ100の位置とを照らし合わせる。ステアリング制御部54は、
図6中のモータグレーダ100Vに示されるように、走行経路220と、モータグレーダ100の位置との間に予め定められた閾値以上のずれが生じた場合に、モータグレーダ100の位置が走行経路220上に戻るようにステアリングシリンダ36を制御する。
【0072】
図8は、ブレードに負荷を受けた場合のモータグレーダの挙動を示す上面図である。
図8に示されるように、土砂または雪などの堆積物160をモータグレーダ100の側方に寄せるため、ブレード21が左右方向に対して斜めに傾けて使用される。この場合、ブレード21が堆積物160から負荷を受けることによって、モータグレーダ100の進行方向が側方にずれたり、堆積物160からの負荷が変化することによって、モータグレーダ100の進行方向が左右にぶれたりする。また、モータグレーダ100に限られず、作業車両は、一般的に凹凸形状を有した地面上を走行するため、作業車両の進行方向がずれやすい。
【0073】
このため、オペレータは、モータグレーダ100の進行方向を調整するために、ステアリングハンドル41またはステアリングレバー42を操作したり、リーニング操作をしたりしながら、作業機12の操作レバーも操作しなければならない。このような作業は、高い技術と集中力とを必要とするため、オペレータに過度な負担を強いる。
【0074】
これに対して、モータグレーダ100では、自動制御指令部58に、ステアリング自動制御を開始するためのトリガが入力された場合、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成し、モータグレーダ100が生成された走行経路に沿って走行するように、ステアリング自動制御を行なう。
【0075】
このような構成によれば、オペレータは、ステアリング自動制御が実行される間、モータグレーダ100の進行方向を調整するための操作に行なうことなく、作業機12の操作に集中することができる。また、モータグレーダ100の走行経路は、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて自動的に生成されるため、オペレータが、事前に作業現場の地図を入力したり、走行経路に関する各種パラメータを入力したりする必要がない。したがって、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現することができる。
【0076】
また、制御部51は、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作が停止された場合にステアリング自動制御を開始する。このような構成により、オペレータは、ステアリング自動制御を開始するために特別の操作を行なう必要がないため、オペレータの負担をさらに軽減することができる。
【0077】
さらに、制御部51は、ステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作が再開された場合にステアリング自動制御を停止する。このような構成により、オペレータは、ステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作を通じて、モータグレーダ100を意図した方向に走行させることができる。
【0078】
図9は、ステアリング自動制御時における前輪のステアリング角度と、モータグレーダの旋回曲率との関係を示すグラフである。
【0079】
図4および
図9に示されるように、前輪16のステアリング角度θsが0°を中心に微小なΔθsの範囲内である場合に、進行方向特定部55は、ステアリング角度θsが0°であると判断して、モータグレーダ100の進行方向を直進方向に特定してもよい。Δθsの大きさは、たとえば、1°であってもよいし、1.5°であってもよい。
【0080】
図10は、ハンドル操作と、走行経路の生成と、ステアリング自動制御との相互のタイミングの関係を示すタイミングチャートである。
【0081】
図4および
図10に示されるように、制御部51は、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、ステアリング自動制御を開始してもよい。制御部51は、その所定期間の間に、モータグレーダ100の走行経路を生成してもよい。
【0082】
図10に示されるタイミングチャートでは、時間t1において、オペレータがステアリングハンドル41を操作しないことによって、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない。次に、時間t2から時間t3の間において、経路生成部53がモータグレーダ100の走行経路を生成する。次に、時間t4において、ステアリング制御部54が、ステアリング自動制御を開始する。
【0083】
時間t1から時間t2までの長さは、たとえば、0.5s以上1s以下の範囲である(0.5s≦(t2-t1)≦1s)。時間t1から時間t4までの長さは、たとえば、1s以上2s以下の範囲である(1s≦(t4-t1)≦2s)。
【0084】
このような構成によれば、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、ステアリング自動制御が開始されるため、制御部51が、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作の停止に過剰に反応してステアリング自動制御を開始することを防止できる。また、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作の停止からステアリング自動制御が開始されるまでの所定期間の間にモータグレーダ100の走行経路が生成されるため、ステアリング自動制御への移行を円滑に行なうことができる。
【0085】
図11は、実施の形態1におけるモータグレーダの制御方法を示すフローチャートである。
図4および
図11に示されるように、まず、制御部51が、運転アシストモードに設定される(S101)。運転アシストモードの設定は、たとえば、オペレータが、キャブ11内に設けられたモード設定スイッチをオンすることによって行なわれる。
【0086】
次に、ハンドルセンサ31が、オペレータによるステアリングハンドル41の操作の有無を検知し、レバーセンサ32が、オペレータによるステアリングレバー42の操作の有無を検知する(S102)。
【0087】
本ステップにおいて、ハンドルセンサ31がステアリングハンドル41の操作を検知した場合、ステアリングハンドル41の操作信号がトリガ出力部52に入力され、ハンドルセンサ31がステアリングハンドル41の操作を検知しなかった場合、ステアリングハンドル41の操作信号がトリガ出力部52に入力されない。レバーセンサ32がステアリングレバー42の操作を検知した場合、ステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力され、レバーセンサ32がステアリングレバー42の操作を検知しなかった場合、ステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力されない。
【0088】
次に、自動制御指令部58が、ステアリング自動制御を開始するか否かを判断する(S103)。
【0089】
S102のステップにおいて、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力された場合、トリガ出力部52が自動制御指令部58に停止トリガを出力する。この場合、自動制御指令部58は、ステアリング自動制御を開始しないと判断する。次に、S102のステップに戻る。
【0090】
S102のステップにおいて、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、および、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力されない場合、トリガ出力部52が自動制御指令部58に開始トリガを出力する。この場合、自動制御指令部58は、ステアリング自動制御を開始すると判断する(S103)。次に、S104のステップに進む。
【0091】
車両位置・方位取得部56は、モータグレーダ100の位置および方位を特定し、進行方向特定部55が、モータグレーダ100の進行方向を特定する(S104)。
【0092】
次に、経路生成部53が、車両位置・方位取得部56によって特定されたモータグレーダ100の位置および方位と、進行方向特定部55によって特定されたモータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成する(S105)。
【0093】
次に、ステアリング制御部54が、モータグレーダ100が経路生成部53において生成された走行経路に沿って走行するように、電気流体圧制御弁73を制御する(S106)。
【0094】
S106のステップを開始した後、ハンドルセンサ31が、オペレータによるステアリングハンドル41の操作の有無を検知し、レバーセンサ32が、オペレータによるステアリングレバー42の操作の有無を検知するS107のステップと、自動制御指令部58が、ステアリング自動制御を停止するか否かを判断するS108のステップとを継続して実行する。S108のステップにおいて、ステアリング自動制御を停止すると判断された場合、ステアリング制御部54は、ステアリング自動制御を停止する(S109)。そのあと、S102のステップに戻る。
【0095】
図12は、
図4中の運転アシストシステムに関わる構成の変形例を示すブロック図である。
図12に示されるように、本変形例では、モータグレーダ100は、切り替えスイッチ37を有する。切り替えスイッチ37は、ステアリング自動制御の開始(オン)と、ステアリング自動制御の停止(オフ)とを切り替えるためのスイッチである。
【0096】
切り替えスイッチ37は、キャブ11内に設けられている。切り替えスイッチ37の形態は、特に限定されず、たとえば、押しボタンであってもよいし、レバーであってもよい。切り替えスイッチ37は、モニタにおけるタッチパネル内に設けられてもよい。
【0097】
本変形例においては、オペレータによって切り替えスイッチ37がオン操作されると、自動制御指令部58にステアリング自動制御を開始するためのトリガ(開始トリガ)が入力される。続いて、モータグレーダ100の走行経路の生成と、ステアリング自動制御とが順に実行される。オペレータによって切り替えスイッチ37がオフ操作されると、自動制御指令部58に停止トリガが入力され、ステアリング自動制御が停止される。
【0098】
このような構成によれば、オペレータは、より自らが意図したタイミングでステアリング自動制御を開始させることができる。
【0099】
以上に説明した、本実施の形態におけるモータグレーダ100およびその制御方法の構成および効果についてまとめて説明する。
【0100】
作業車両としてのモータグレーダ100は、操向機構66と、制御部51とを備える。制御部51は、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成し、モータグレーダ100が生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構66を制御する。
【0101】
このような構成によれば、制御部51は、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成し、モータグレーダ100が走行経路に沿って走行するように、操向機構66を制御するため、オペレータに煩雑な作業が求められない。このため、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現することができる。
【0102】
また、制御部51は、操向機構66の制御を開始するためのトリガが入力された場合に、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成し、モータグレーダ100が生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構66を制御する。
【0103】
このような構成によれば、制御部51は、予め定められたトリガに基づいて、操向機構66の制御を開始するか否かを判断することができる。
【0104】
また、モータグレーダ100は、第1検知部61と、第2検知部62とをさらに備える。第1検知部61は、モータグレーダ100の位置および方位に関する情報を検知する。第2検知部62は、モータグレーダ100の進行方向に関する情報を検知する。
【0105】
このように構成によれば、制御部51は、第1検知部61により検知されたモータグレーダ100の位置および方位に関する情報を用いて、モータグレーダ100の位置および方位を特定し、第2検知部62により検知されたモータグレーダ100の進行方向に関する情報を用いて、モータグレーダ100の進行方向を特定することができる。
【0106】
また、第1検知部61は、GNSSレシーバ35を含む。制御部51は、GNSSレシーバ35によって、モータグレーダ100の位置および方位を取得する。
【0107】
このような構成によれば、モータグレーダ100のグローバルな位置および方位を容易に特定することができる。
【0108】
また、モータグレーダ100は、フロントフレーム14と、リアフレーム15とをさらに備える。フロントフレーム14には、前輪16が設けられる。リアフレーム15には、後輪17が設けられる。リアフレーム15は、フロントフレーム14に回動可能に連結される。第2検知部62は、ステアリング角度センサ33と、アーティキュレート角度センサ34とを含む。ステアリング角度センサ33は、前輪16のステアリング角度を検知する。アーティキュレート角度センサ34は、フロントフレーム14とリアフレーム15とのアーティキュレート角度を検知する。制御部51は、ステアリング角度センサ33により検知されたステアリング角度と、アーティキュレート角度センサ34により検知されたアーティキュレート角度とに基づいて、モータグレーダ100の進行方向を特定する。
【0109】
このような構成によれば、前輪16のステアリング機構と、フロントフレーム14およびリアフレーム15のアーティキュレート機構とを備えたモータグレーダ100の進行方向を特定することができる。
【0110】
また、モータグレーダ100は、操作部67をさらに備える。操作部67は、操向機構66を動作させるために操作される。制御部51は、操作部67の操作が停止された場合に操向機構66の制御を開始する。
【0111】
このような構成によれば、操向機構66の制御を開始するためのオペレータの操作が不要であるため、オペレータの負担をさらに軽減することができる。
【0112】
また、制御部51は、操作部67の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、操向機構66の制御を開始してもよい。制御部51は、その所定期間の間にモータグレーダ100の走行経路を生成してもよい。
【0113】
このような構成によれば、制御部51が操作部67の操作の停止に過剰に反応して操向機構66の制御を開始することを防止できる。また、制御部51は、操作部67の操作の停止から操向機構66の制御の開始までの所定期間の間にモータグレーダ100の走行経路を生成するため、操向機構66の制御に円滑に移行することができる。
【0114】
また、制御部51は、操作部67の操作が再開された場合に操向機構66の制御を停止する。
【0115】
このような構成によれば、操作部67の操作が再開された場合にはその操作によって操向機構66を動作させることにより、オペレータは、モータグレーダ100を自らの意図した方向に走行させることができる。
【0116】
また、モータグレーダ100は、制御部51による操向機構66の制御の開始および停止を切り替えるためのスイッチとしての切り替えスイッチ37を備えてもよい。
【0117】
このような構成によれば、オペレータは、より自らが意図したタイミングで、制御部51による操向機構66の制御を開始させることができる。
【0118】
モータグレーダ100の制御方法は、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成するステップ(S105)と、モータグレーダ100が生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構66を制御するステップ(S106)とを備える。
【0119】
生成するステップ(S105)は、操向機構66の制御を開始するためのトリガが入力された場合に、モータグレーダ100の位置および方位と、モータグレーダ100の進行方向とに基づいて、モータグレーダ100の走行経路を生成するステップを含む。
【0120】
このような構成によれば、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現することができる。
【0121】
なお、モータグレーダ100は、モータグレーダ100の進行方向を操作する操向機構66として、前輪16を左右に傾倒させるリーニング機構と、フロントフレーム14とリアフレーム15とを屈曲させるアーティキュレート機構とをさらに有する。制御部51によって実行される操向機構66の制御は、ステアリング自動制御に限られず、リーニング機構の自動制御であってもよいし、アーティキュレート機構の自動制御であってもよいし、ステアリング機構、リーニング機構およびアーティキュレート機構のうちの複数の機構の自動制御であってもよい。
【0122】
本開示における作業車両およびその制御方法は、モータグレーダに限られず、たとえば、ホイールローダ、ダンプトラックまたはブルドーザなどの各種の作業車両に適用されてもよい。ホイールローダへの適用の場合、制御部による制御の対象は、回動可能に接続されたフロントフレームとリアフレームとのアーティキュレート角度であってもよい。
【0123】
図13は、モータグレーダの操向機構の制御システムの概念を示す図である。上記の実施の形態では、作業車両であるモータグレーダ100が制御部51を備える場合を説明したが、
図3および
図13に示されるように、モータグレーダの操向機構66が、モータグレーダから離れた位置に設けられた制御部および操作部によって制御される構成であってもよい。
【0124】
モータグレーダの操向機構66を制御する制御システムは、モータグレーダの位置および方位と、モータグレーダの進行方向とに基づいて、モータグレーダの走行経路を生成し、モータグレーダが生成された走行経路に沿って走行するように、モータグレーダの操向機構66を制御する制御部251を備える。
【0125】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1において説明した運転アシストシステムがブルドーザに適用された場合の構成を説明する。以下、実施の形態1における構成と重複する構成については、その説明を繰り返さない。
【0126】
図14は、ブルドーザを示す斜視図である。
図15は、
図14中のブルドーザの操向に関わる構成を示すシステム図である。
【0127】
図14に示されるように、ブルドーザ300は、車体311と、作業機313と、左右一対の牽引装置316(316R,316L)とを有する。車体311は、左右一対の牽引装置316(316R,316L)上に設けられている。車体311は、キャブ341と、エンジン室342とを有する。作業機313は、車体311の前方に設けられている。作業機313は、土砂の掘削および整地などの作業を行なうためのブレード318を有する。
【0128】
左右一対の牽引装置316(316R,316L)は、ブルドーザ300を走行させるための装置である。左右一対の牽引装置316(316R,316L)は、たとえば、履帯と、終減速装置とを有する。左右一対の牽引装置316(316R,316L)が回転駆動されることによって、ブルドーザ300が走行する。
【0129】
図14および
図15に示されるように、ブルドーザ300は、操向機構66と、制御部51と、操作部67と、電気流体圧制御弁73とを有する。
【0130】
操向機構66は、駆動装置331を有する。駆動装置331は、油圧により作動する油圧モータである。駆動装置331は、右側の牽引装置(第1牽引装置)316Rと、左側の牽引装置(第2牽引装置)316Lとを互いに独立して駆動させることが可能である。
【0131】
操作部67は、ステアリングレバー42を有する。電気流体圧制御弁73は、圧油を駆動装置331に供給する。制御部51は、ステアリングレバー42からの操作信号に基づいて、電気流体圧制御弁73を制御する。駆動装置331は、電気流体圧制御弁73からの圧油により、右側の牽引装置316Rと、左側の牽引装置316Lとを回転させる。右側の牽引装置316Rの回転速度と、左側の牽引装置316Lの回転速度とが同じである場合、ブルドーザ300が直進する。右側の牽引装置316Rの回転速度が、左側の牽引装置316Lの回転速度よりも大きい場合、ブルドーザ300が左前方に向けて旋回する。左側の牽引装置316Lの回転速度が、右側の牽引装置316Rの回転速度よりも大きい場合、ブルドーザ300が右前方に向けて旋回する。
【0132】
図16は、
図14中のブルドーザの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
図15および
図16に示されるように、ブルドーザ300は、レバーセンサ32を有する。レバーセンサ32は、ステアリングレバー42の操作を検知する。
【0133】
ブルドーザ300は、第1検知部61と、第2検知部62とをさらに有する。第1検知部61は、GNSSレシーバ35を有する。第2検知部62は、右速度センサ321と、左速度センサ322とを有する。右速度センサ321は、右側の牽引装置316Rの回転速度を検知し、検知した牽引装置316Rの回転速度の信号を制御部51に出力する。左速度センサ322は、左側の牽引装置316Lの回転速度を検知し、検知した牽引装置316Lの回転速度の信号を制御部51に出力する。
【0134】
図16に示されるように、制御部51は、トリガ出力部52と、自動制御指令部58と、ステアリング制御部54とを有する。
【0135】
トリガ出力部52は、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号に基づいて、操向機構66の制御を開始または停止するためのトリガを出力する。
【0136】
自動制御指令部58は、車両位置・方位取得部56と、進行方向特定部55と、経路生成部53とを有する。
【0137】
車両位置・方位取得部56は、GNSSレシーバ35からブルドーザ300の位置および方位データを取得する。進行方向特定部55は、右速度センサ321からの牽引装置316Rの回転速度の信号と、左速度センサ322からの牽引装置316Lの回転速度の信号とに基づいて、ブルドーザ300の進行方向を特定する。経路生成部53は、トリガ出力部52からの開始トリガが入力された場合に、車両位置・方位取得部56において取得されたブルドーザ300の位置および方位データと、進行方向特定部55において特定されたブルドーザ300の進行方向とに基づいて、ブルドーザ300の走行経路を生成する。
【0138】
ステアリング制御部54は、ブルドーザ300が、経路生成部53において生成された走行経路に沿って走行するように、操向機構66を制御する。具体的には、ステアリング制御部54は、ブルドーザ300が、経路生成部53において生成された走行経路に沿って走行するように、電気流体圧制御弁73に制御信号を出力する。電気流体圧制御弁73は、ステアリング制御部54から信号に基づいて、駆動装置331に圧油を供給し、右側の牽引装置316Rの回転速度と、左側の牽引装置316Lの回転速度とを制御する。
【0139】
このように構成されたブルドーザ300によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0140】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0141】
11,341 キャブ、12,313 作業機、13,342 エンジン室、14 フロントフレーム、14p 基端部、14q 先端部、15 リアフレーム、16 前輪、17 後輪、18 車体フレーム、21,318 ブレード、22 ドローバ、23 旋回サークル、25 リフトシリンダ、28 アーティキュレートシリンダ、31 ハンドルセンサ、32 レバーセンサ、33 ステアリング角度センサ、34 アーティキュレート角度センサ、35 GNSSレシーバ、35g アンテナ、36 ステアリングシリンダ、37 切り替えスイッチ、38 IMU、41 ステアリングハンドル、42 ステアリングレバー、51,251 制御部、52 トリガ出力部、53 経路生成部、54 ステアリング制御部、55 進行方向特定部、56 車両位置・方位取得部、57 変化率算出部、58 自動制御指令部、59 位置および方向算出部、61 第1検知部、62 第2検知部、63 第3検知部、66 操向機構、67 操作部、71 軌道バルブ、72 ステアリングバルブ、73 電気流体圧制御弁、100 モータグレーダ、121 回動中心、160 堆積物、210,220 走行経路、300 ブルドーザ、311 車体、316,316L,316R 牽引装置、321 右速度センサ、322 左速度センサ、331 駆動装置。