(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20231002BHJP
B62D 5/065 20060101ALI20231002BHJP
B62D 5/12 20060101ALI20231002BHJP
B62D 12/00 20060101ALI20231002BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20231002BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20231002BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20231002BHJP
B62D 137/00 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/065 B
B62D5/12
B62D12/00
E02F9/20 H ZYW
E02F9/22 A
E02F9/26 A
B62D137:00
(21)【出願番号】P 2019179568
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
(72)【発明者】
【氏名】坂井 幸尚
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-319804(JP,A)
【文献】特開昭64-54513(JP,A)
【文献】特開2018-069753(JP,A)
【文献】特開2007-060982(JP,A)
【文献】特開2013-201958(JP,A)
【文献】特開平07-172334(JP,A)
【文献】実開昭53-115828(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向機構と、前記操向機構を動作させるためにオペレータによって操作される操作部とを含む作業車両の操向機構を制御する制御システムであって、
前記制御システムは、制御部を有し、
前記制御部は、オペレータにより前記作業車両の操向機構の制御を開始するためのトリガが入力された場合に、前記作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出するとともに、算出した前記作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、前記作業車両の操向機構を制御す
る、制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部の操作が停止された場合に前記作業車両の操向機構の制御を開始する、請求項
1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作部の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、前記作業車両の操向機構の制御を開始する、請求項
2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作部の操作が再開された場合に前記作業車両の操向機構の制御を停止する、請求項
2または3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記制御部による前記作業車両の操向機構の制御の開始および停止を切り替えるためのスイッチをさらに備える、請求項
1に記載の制御システム。
【請求項6】
操向機構
と、前記操向機構を動作させるためにオペレータによって操作される操作部とを含む作業車両の制御方法であって、
オペレータにより前記作業車両の操向機構の制御を開始するためのトリガが入力された場合に、前記作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出するステップと、
算出された前記作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、前記操向機構を制御するステップとを備える、作業車両の制御方法。
【請求項7】
前記操向機構は、ステアリングシリンダと、前記ステアリングシリンダを制御するステアリングバルブとを含み、
前記ステアリングシリンダは、前記ステアリングバルブからの圧油により、前後方向に対して操向輪がなす角度が変化するように前記操向輪を動作させる、請求項
6に記載の作業車両の制御方法。
【請求項8】
前記操向機構は、左右一対の第1牽引装置および第2牽引装置を回転駆動させる駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記第1牽引装置の回転速度と、前記第2牽引装置の回転速度とを互いに独立して制御する、請求項
6に記載の作業車両の制御方法。
【請求項9】
作業車両であって、
操向機構と、
前記操向機構を動作させるためにオペレータによって操作される操作部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、オペレータにより前記操向機構の制御を開始するためのトリガが入力された場合に、前記作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出するとともに、算出した前記作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、前記操向機構を制御す
る、作業車両。
【請求項10】
前記制御部は、前記操作部の操作が停止された場合に前記操向機構の制御を開始する、請求項
9に記載の作業車両。
【請求項11】
前記制御部は、前記操作部の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、前記操向機構の制御を開始する、請求項
10に記載の作業車両。
【請求項12】
前記制御部は、前記操作部の操作が再開された場合に前記操向機構の制御を停止する、請求項
10または11に記載の作業車両。
【請求項13】
前記制御部による前記操向機構の制御の開始および停止を切り替えるためのスイッチをさらに備える、請求項
9に記載の作業車両。
【請求項14】
前記作業車両の位置および向きの少なくともいずれか一方に関する情報を検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部により検知された前記作業車両の位置および向きの少なくともいずれか一方に関する情報に基づいて、前記作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を特定する、請求項
9から13のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項15】
前記操向機構は、ステアリングシリンダと、前記ステアリングシリンダを制御するステアリングバルブとを含み、
前記ステアリングシリンダは、前記ステアリングバルブからの圧油により、前後方向に対して操向輪がなす角度が変化するように前記操向輪を動作させる、請求項
9から14のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項16】
前記操向機構は、左右一対の第1牽引装置および第2牽引装置を回転駆動させる駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記第1牽引装置の回転速度と、前記第2牽引装置の回転速度とを互いに独立して制御する、請求項
9から14のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、米国特許出願公報第2008/0208461号明細書(特許文献1)には、自動操向システムを備えたモータグレーダが開示されている。自動操向システムは、車両の位置データ、作業現場の地図、または、車両の移動条件を示すパラメータなどに基づいて、車両の移動経路を生成する経路生成装置と、経路成形装置によって生成された経路に沿って車両を案内する経路追跡装置とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公報第2008/0208461号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるモータグレーダでは、自動操向システムによって、ステアリングを操作するオペレータの負担を軽減しようとしている。しかしながら、オペレータは、予め車両の移動経路の生成に必要な各種情報を経路生成装置に入力しなければならないため、オペレータの負担が十分に軽減されているとはいえない。
【0005】
そこで本開示の目的は、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現する制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った制御システムは、作業車両の操向機構を制御する制御システムである。制御システムは、制御部を備える。制御部は、作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、作業車両の操向機構を制御する。
【0007】
本開示に従った作業車両の制御方法は、操向機構を含む作業車両の制御方法である。作業車両の制御方法は、作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出するステップと、算出された作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構を制御するステップとを備える。
【0008】
本開示に従った作業車両は、操向機構と、制御部とを備える。制御部は、作業車両の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に従えば、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現する制御システム、作業車両の制御方法、および、作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1中のモータグレーダを示す側面図である。
【
図3】
図1中のモータグレーダの操向に関わる構成を示すシステム図である。
【
図4】
図1中のモータグレーダの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
【
図5】旋回時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
【
図6】直進時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
【
図7】ブレードに負荷を受けた場合のモータグレーダの挙動を示す上面図である。
【
図8】ハンドル操作と、ステアリング自動制御との相互のタイミングの関係を示すタイミングチャートである。
【
図9】モータグレーダの制御方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図4中の運転アシストシステムに関わる構成の変形例を示すブロック図である。
【
図11】モータグレーダの操向機構の制御システムの概念を示す図である。
【
図13】
図12中のブルドーザの操向に関わる構成を示すシステム図である。
【
図14】
図12中のブルドーザの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、モータグレーダを示す斜視図である。
図2は、
図1中のモータグレーダを示す側面図である。
【0013】
図1および
図2に示されるように、モータグレーダ100は、走行しながら、整地作業を行なったり、除雪作業を行なったりする作業機械である。モータグレーダ100は、フロントフレーム14と、リアフレーム15と、一対のアーティキュレートシリンダ28と、運転席が設けられるキャブ11と、エンジン室13と、前輪16および後輪17と、作業機12とを有する。
【0014】
以下の説明において、前後方向とは、キャブ11内の運転席に着座したオペレータの前後方向である。運転席に着座したオペレータの正面方向が、前方であり、運転席に着座したオペレータの背後方向が、後方である。左右方向とは、運転席に着座したオペレータの左右方向である。運転席に着座したオペレータが正面を向いたときの右側が、右方であり、運転席に着座したオペレータが正面を向いたときの左側が、左方である。上下方向とは、前後方向および左右方向を含む平面に直交する方向である。地面のある側が、下方であり、空のある側が、上方である。
【0015】
フロントフレーム14およびリアフレーム15は、モータグレーダ100の車体フレーム18を構成している。フロントフレーム14は、リアフレーム15の前方に設けられている。
【0016】
フロントフレーム14は、回動中心121を中心としてリアフレーム15に回動可能に連結されている。フロントフレーム14は、回動中心121の軸上に設けられたセンターピン(不図示)により、リアフレーム15に回動可能に連結されている。回動中心121は、上下方向に沿って延びる軸である。回動中心121は、左右方向におけるモータグレーダ100の中央に位置している。
【0017】
フロントフレーム14は、回動中心121から前方に向けて延びている。フロントフレーム14は、リアフレーム15に回動可能に連結される基端部14pと、基端部14pとは反対側に設けられる先端部14qとを有する。リアフレーム15は、回動中心121から後方に向けて延びている。
【0018】
一対のアーティキュレートシリンダ28は、フロントフレーム14を挟んで左右両側に設けられている。アーティキュレートシリンダ28は、油圧により伸縮駆動する油圧シリンダである。アーティキュレートシリンダ28は、伸縮方向における一方端において、フロントフレーム14に回動可能に連結され、伸縮方向における他方端において、リアフレーム15に回動可能に連結されている。アーティキュレートシリンダ28の伸縮駆動により、フロントフレーム14は、リアフレーム15に対して回動中心121を中心に回動する。
【0019】
キャブ11は、リアフレーム15に載置されている。キャブ11は、オペレータが搭乗するための室内空間を形成している。キャブ11には、運転席に加えて、ステアリング操作のためのステアリングハンドル41およびステアリングレバー42(後出の
図3を参照)、作業機12を操作するための複数のレバー、ならびに、各種の表示装置などが設けられている。なお、キャブ11は、フロントフレーム14に載置されてもよい。
【0020】
エンジン室13は、キャブ11の後方に設けられている。エンジン室13は、リアフレーム15により支持されている。エンジン室13には、エンジンが収納されている。
【0021】
前輪16および後輪17は、走行輪である。前輪16は、フロントフレーム14に回転可能に取り付けられている。前輪16は、フロントフレーム14に対して操向可能に取り付けられている。前輪16は、前後方向に対してなす角度が変化するように左右に動作する。前輪16は、操向輪である。後輪17は、リアフレーム15に回転可能に取り付けられている。後輪17には、エンジンからの駆動力が伝達される。なお、
図1中には、片側1輪ずつの2つの前輪16と、片側2輪ずつの4つの後輪17とからなる全6輪の走行輪が示されているが、前輪および後輪の数および配置は、これに限られない。
【0022】
作業機12は、前後方向において、前輪16および後輪17の間に設けられている。作業機12は、フロントフレーム14により支持されている。作業機12は、ブレード21と、ドローバ22と、旋回サークル23と、一対のリフトシリンダ25とを有する。
【0023】
ドローバ22は、フロントフレーム14の下方に設けられている。ドローバ22の前端部は、フロントフレーム14の先端部14qに揺動可能に連結されている。一対のリフトシリンダ25は、フロントフレーム14を挟んだ左右両側に設けられている。ドローバ22の後端部は、一対のリフトシリンダ25を介して、フロントフレーム14により支持されている。
【0024】
一対のリフトシリンダ25の伸縮によって、ドローバ22の後端部がフロントフレーム14に対して上下に昇降可能である。一対のリフトシリンダ25がともに短縮駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは上方に調整される。一対のリフトシリンダ25がともに伸長駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは下方に調整される。
【0025】
ドローバ22は、一対のリフトシリンダ25の互いに異なる伸縮によって、前後方向に沿った軸を中心に上下に揺動可能である。
【0026】
旋回サークル23は、ドローバ22の下方に設けられている。旋回サークル23は、ドローバ22に旋回可能に連結されている。旋回サークル23は、上下方向に沿った軸を中心に、時計回りおよび反時計回りに旋回可能である。
【0027】
ブレード21は、旋回サークル23の下方に設けられている。ブレード21は、地面と対向して設けられている。ブレード21は、旋回サークル23により支持されている。ブレード21は、旋回サークル23の旋回運動に伴って、上面視において前後方向に対してブレード21がなす角度(ブレード推進角)が変化するように旋回する。ブレード21の旋回軸は、上下方向に沿って延びる軸である。
【0028】
図3は、
図1中のモータグレーダの操向に関わる構成を示すシステム図である。
図3に示されるように、モータグレーダ100は、操向機構66と、制御部51と、操作部67とをさらに有する。
【0029】
操向機構66は、モータグレーダ100の進行方向を操作する機構である。制御部51は、モータグレーダ100の操向を制御する。制御部51は、操向機構66の動作を制御する。操作部67は、キャブ11内に設けられている。操作部67は、操向機構66を動作させるためにオペレータによって操作される。
【0030】
操作部67は、ステアリングハンドル41と、ステアリングレバー42とを有する。ステアリングハンドル41は、キャブ11内の運転席の前方に設けられている。ステアリングハンドル41は、たとえば、ホイール形状のハンドルであり、オペレータによって回転操作される。ステアリングレバー42は、ステアリングハンドル41から離れた位置に設けられている。ステアリングレバー42は、たとえば、キャブ11内の運転席の側方に設けられている。ステアリングレバー42は、オペレータによって傾倒操作される。
【0031】
モータグレーダ100は、電気流体圧制御弁73をさらに有する。操作部67は、軌道バルブ71をさらに有する。操向機構66は、ステアリングバルブ72と、ステアリングシリンダ36とを有する。
【0032】
電気流体圧制御弁73は、圧油をステアリングバルブ72に供給する。制御部51は、ステアリングレバー42からの操作信号に基づいて、電気流体圧制御弁73を制御する。軌道バルブ71は、ステアリングハンドル41における回転操作に応じて、圧油をステアリングバルブ72に供給する。
【0033】
ステアリングバルブ72は、ステアリングシリンダ36に圧油を供給する。ステアリングバルブ72は、電気流体圧制御弁73および軌道バルブ71から供給される圧油により制御される。ステアリングシリンダ36は、ステアリングバルブ72からの圧油により、前輪16の前後方向に対してなす角度を変化させるように前輪16を左右に動作させる。前輪16が左側に傾くと、モータグレーダ100は、左前方に向けて円弧を描きながら旋回する。前輪16が右側に傾くと、モータグレーダ100は、右前方に向けて円弧を描きながら旋回する。
【0034】
このような構成により、オペレータがステアリングハンドル41またはステアリングレバー42を操作することによって、ステアリングシリンダ36が伸縮し、前輪16が左右に動作する。
【0035】
図4は、
図1中のモータグレーダの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
図2から
図4に示されるように、制御部51は、以下に説明するモータグレーダ100の運転アシストシステムの動作を制御する。
【0036】
モータグレーダ100は、ハンドルセンサ31と、レバーセンサ32とをさらに有する。ハンドルセンサ31は、ステアリングハンドル41の操作を検知する。レバーセンサ32は、ステアリングレバー42の操作を検知する。
【0037】
ハンドルセンサ31は、オペレータによるステアリングハンドル41の操作を検知した場合に操作信号を発生し、操作信号を制御部51に出力する。ハンドルセンサ31は、たとえば、ステアリングハンドル41の回転によって発生するステアリングハンドル軸の角度変位を検出する軸変位センサである。レバーセンサ32は、オペレータによるステアリングレバー42の操作を検知した場合に操作信号を発生し、操作信号を制御部51に出力する。レバーセンサ32は、たとえば、ステアリングレバー42の角度位置を検出する位置センサである。
【0038】
なお、ハンドルセンサ31は、ステアリングハンドル41の回転操作量が微小である場合には、操作信号を発生しないように不感帯を有してもよい。同様に、レバーセンサ32は、ステアリングレバー42の傾倒操作量が微小である場合には、操作信号を発生しないように不感帯を有してもよい。一例として、後述する前輪16のステアリング角度が±0.5°以内で変化する時のステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作量は、微小であると判断される。
【0039】
モータグレーダ100は、検知部63を有する。検知部63は、モータグレーダ100の位置および向きの少なくともいずれか一方に関する情報を検知する。
【0040】
検知部63は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)38を有する。IMU38は、モータグレーダ100の加速度および角速度を計測するセンサである。IMU38は、モータグレーダ100の加速度および角速度の信号を制御部51に出力する。
【0041】
図4に示されるように、制御部51は、操向機構66の自動制御を開始するためのトリガが入力された場合に、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構66を制御する。
【0042】
制御部51は、操作部67の操作が停止された場合に操向機構66の制御を開始する。制御部51は、操作部67の操作が再開された場合に操向機構66の制御を停止する。
【0043】
制御部51は、トリガ出力部52と、自動制御指令部58と、ステアリング制御部54とを有する。
【0044】
トリガ出力部52は、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、および/または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号に基づいて、操向機構66の制御(後述するステアリング自動制御)を開始または停止するためのトリガを出力する。
【0045】
トリガ出力部52は、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号が入力された場合に、ステアリング自動制御を停止するためのトリガ(後述する停止トリガ)を出力する。
【0046】
トリガ出力部52は、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、および、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号が入力されなかった場合に、ステアリング自動制御を開始するためのトリガ(後述する開始トリガ)を出力する。
【0047】
自動制御指令部58は、位置および方向算出部59と、進行方向の変化率算出部57とを有する。
【0048】
位置および方向算出部59には、IMU38により検知されたモータグレーダ100の加速度および角速度の信号が入力される。位置および方向算出部59は、IMU38により計測されたモータグレーダ100の加速度および角速度に基づいて、モータグレーダ100の位置および向きを算出し、算出したモータグレーダ100の位置および向きの信号を変化率算出部57に出力する。
【0049】
変化率算出部57には、位置および方向算出部59により算出されたモータグレーダ100の位置および向きの信号が入力される。変化率算出部57は、位置および方向算出部59により算出されたモータグレーダ100の位置および向きに基づいて、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出する。
【0050】
ステアリング制御部54は、変化率算出部57により算出されたモータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構66を制御する。具体的には、ステアリング制御部54は、変化率算出部57により算出されたモータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、電気流体圧制御弁73に制御信号を出力する。電気流体圧制御弁73は、ステアリング制御部54からの信号に基づいて、ステアリングバルブ72に圧油を供給し、ステアリングシリンダ36を制御する(ステアリング自動制御の開始)。
【0051】
オペレータによる操作部67の操作が再開されると、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号が入力される。これにより、トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。この場合に、自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御を停止させる。
【0052】
続いて、制御部51で実行されるステアリング自動制御についてより具体的に説明する。
図5は、旋回時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
【0053】
なお、説明を簡単にするために、
図5および後出の
図6中には、前輪16を動作させるための操作部67としてステアリングハンドル41のみが用いられる場合が示されている。
【0054】
図4および
図5に示されるように、モータグレーダ100が、モータグレーダ100A、モータグレーダ100B、モータグレーダ100Cおよびモータグレーダ100Dに示される位置(以下、「位置100A」、「位置100B」、「位置100C」および「位置100D」とそれぞれいう)を順に移動するように走行する。
【0055】
モータグレーダ100が位置100Aから位置100Bまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作することによってモータグレーダ100を走行させている。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力される。トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御は開始されない。
【0056】
モータグレーダ100が位置100Bから位置100Cまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作することによって、モータグレーダ100を右前方に向けて旋回させる。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力される。トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御は開始されない。
【0057】
モータグレーダ100が位置100Cから位置100Dまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作していない。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない。トリガ出力部52は、開始トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信し、ステアリング自動制御が開始される。
【0058】
トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない場合、トリガ出力部52は開始トリガを出力する。位置および方向算出部59は、IMU38により計測されたモータグレーダ100の加速度および角速度に基づいて、モータグレーダ100の位置および向きを算出し、変化率算出部57に出力する。変化率算出部57は、位置および方向算出部59により算出されたモータグレーダ100の位置および向きに基づいて、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出する。モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率とは、モータグレーダ100が単位走行距離(たとえば、1m)を走行する毎のモータグレーダ100の向き(たとえば、モータグレーダ100の前方に対応する方向)の変化量(角度)である。
【0059】
位置100Cから位置100Dまでのステアリング自動制御が実行される間、ステアリング制御部54は、モータグレーダ100が単位走行距離を走行する毎のモータグレーダ100の向きの変化量が、一定の角度となるように、ステアリングシリンダ36を制御する。モータグレーダ100は、ステアリング制御部54によるステアリング自動制御によって、一定の曲率半径rを維持しながら旋回移動する。
【0060】
このあと、ステアリング制御部54は、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力された場合には、ステアリング自動制御を停止し、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない場合には、ステアリング自動制御を再開する。
【0061】
図6は、直進時にステアリング自動制御が開始されるモータグレーダを模式的に示す上面図である。
【0062】
図6に示されるように、モータグレーダ100が、モータグレーダ100S、モータグレーダ100Tおよびモータグレーダ100Uに示される位置(以下、「位置100S」、「位置100T」および「位置100U」とそれぞれいう)を順に移動するように走行する。
【0063】
モータグレーダ100が位置100Sから位置100Tまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作することによってモータグレーダ100を走行させている。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力される。トリガ出力部52は、停止トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの停止トリガを受信し、ステアリング自動制御は開始されない。
【0064】
モータグレーダ100が位置100Tから位置100Uまで移動する間、オペレータは、ステアリングハンドル41を操作していない。この間、トリガ出力部52には、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない。トリガ出力部52は、開始トリガを出力する。自動制御指令部58は、トリガ出力部52からの開始トリガを受信し、ステアリング自動制御が開始される。
【0065】
位置100Tから位置100Uまでのステアリング自動制御が実行される間、ステアリング制御部54は、モータグレーダ100が単位走行距離を走行する毎のモータグレーダ100の向きの変化量がゼロとなるように、ステアリングシリンダ36を制御する。モータグレーダ100は、ステアリング制御部54によるステアリング自動制御によって、一直線に移動する。
【0066】
図7は、ブレードに負荷を受けた場合のモータグレーダの挙動を示す上面図である。
図7に示されるように、土砂または雪などの堆積物160をモータグレーダ100の側方に寄せるため、ブレード21が左右方向に対して斜めに傾けて使用される。この場合、ブレード21が堆積物160から負荷を受けることによって、モータグレーダ100の進行方向が側方にずれたり、堆積物160からの負荷が変化することによって、モータグレーダ100の進行方向が左右にぶれたりする。また、モータグレーダ100に限られず、作業車両は、一般的に凹凸形状を有した地面上を走行するため、作業車両の進行方向がずれやすい。
【0067】
このため、オペレータは、モータグレーダ100の進行方向を調整するために、ステアリングハンドル41またはステアリングレバー42を操作したり、リーニング操作をしたりしながら、作業機12の操作レバーも操作しなければならない。このような作業は、高い技術と集中力とを必要とするため、オペレータに過度な負担を強いる。
【0068】
これに対して、モータグレーダ100では、自動制御指令部58にステアリング自動制御を開始するためのトリガが入力された場合、ステアリング制御部54がモータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるようにステアリング自動制御を行なう。
【0069】
このような構成によれば、オペレータは、ステアリング自動制御が実行される間、モータグレーダ100の進行方向を調整するための操作に行なうことなく、作業機12の操作に集中することができる。また、ステアリング自動制御は、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率の算出を通じて自動的に実行されるため、オペレータが、事前に作業現場の地図を入力したり、走行経路に関する各種パラメータを入力したりする必要がない。したがって、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現することができる。
【0070】
また、制御部51は、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作が停止された場合にステアリング自動制御を開始する。このような構成により、オペレータは、ステアリング自動制御を開始するために特別の操作を行なう必要がないため、オペレータの負担をさらに軽減することができる。
【0071】
さらに、制御部51は、ステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作が再開された場合にステアリング自動制御を停止する。このような構成により、オペレータは、ステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作を通じて、モータグレーダ100を意図した方向に走行させることができる。
【0072】
図8は、ハンドル操作と、ステアリング自動制御との相互のタイミングの関係を示すタイミングチャートである。
【0073】
図4および
図8に示されるように、制御部51は、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、ステアリング自動制御を開始してもよい。
【0074】
図8に示されるタイミングチャートでは、時間t1において、オペレータがステアリングハンドル41を操作しないことによって、トリガ出力部52にハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号が入力されない。次に、時間t2において、ステアリング制御部54が、ステアリング自動制御を開始する。
【0075】
時間t1から時間t2までの長さは、たとえば、1s以上2s以下の範囲である(1s≦(t2-t1)≦2s)。
【0076】
このような構成によれば、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、ステアリング自動制御が開始されるため、制御部51が、ステアリングハンドル41およびステアリングレバー42の操作の停止に過剰に反応してステアリング自動制御を開始することを防止できる。
【0077】
図9は、モータグレーダの制御方法を示すフローチャートである。
図4および
図9に示されるように、まず、制御部51が、運転アシストモードに設定される(S201)。運転アシストモードの設定は、たとえば、オペレータが、キャブ11内に設けられたモード設定スイッチをオンすることによって行なわれる。
【0078】
次に、ハンドルセンサ31が、オペレータによるステアリングハンドル41の操作の有無を検知し、レバーセンサ32が、オペレータによるステアリングレバー42の操作の有無を検知する(S202)。
【0079】
本ステップにおいて、ハンドルセンサ31がステアリングハンドル41の操作を検知した場合、ステアリングハンドル41の操作信号がトリガ出力部52に入力され、ハンドルセンサ31がステアリングハンドル41の操作を検知しなかった場合、ステアリングハンドル41の操作信号がトリガ出力部52に入力されない。レバーセンサ32がステアリングレバー42の操作を検知した場合、ステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力され、レバーセンサ32がステアリングレバー42の操作を検知しなかった場合、ステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力されない。
【0080】
次に、自動制御指令部58が、ステアリング自動制御を開始するか否かを判断する(S203)。
【0081】
S202のステップにおいて、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、または、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力された場合、トリガ出力部52が自動制御指令部58に停止トリガを出力する。この場合、自動制御指令部58は、ステアリング自動制御を開始しないと判断する。次に、S202のステップに戻る。
【0082】
S202のステップにおいて、ハンドルセンサ31からのステアリングハンドル41の操作信号、および、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号がトリガ出力部52に入力されない場合、トリガ出力部52が自動制御指令部58に開始トリガを出力する。この場合、自動制御指令部58は、ステアリング自動制御を開始すると判断する(S203)。次に、S204のステップに進む。
【0083】
位置および方向算出部59は、IMU38により計測されたモータグレーダの加速度および角速度に基づいて、モータグレーダの位置および向きを算出する。変化率算出部57は、位置および方向算出部59により算出されたモータグレーダの位置および向きに基づいて、モータグレーダの単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出する(S204)。ステアリング制御部54は、変化率算出部57により算出されたモータグレーダの単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、ステアリングシリンダ36を制御する(S205)。
【0084】
S205のステップを開始した後、ハンドルセンサ31が、オペレータによるステアリングハンドル41の操作の有無を検知し、レバーセンサ32が、オペレータによるステアリングレバー42の操作の有無を検知するS206のステップと、自動制御指令部58が、ステアリング自動制御を停止するか否かを判断するS207のステップとを継続して実行する。S207のステップにおいて、ステアリング自動制御を停止すると判断された場合、ステアリング制御部54は、ステアリング自動制御を停止する(S208)。そのあと、S202のステップに戻る。
【0085】
図10は、
図4中の運転アシストシステムに関わる構成の変形例を示すブロック図である。
図10に示されるように、本変形例では、モータグレーダ100は、切り替えスイッチ37を有する。切り替えスイッチ37は、ステアリング自動制御の開始(オン)と、ステアリング自動制御の停止(オフ)とを切り替えるためのスイッチである。
【0086】
切り替えスイッチ37は、キャブ11内に設けられている。切り替えスイッチ37の形態は、特に限定されず、たとえば、押しボタンであってもよいし、レバーであってもよい。切り替えスイッチ37は、モニタにおけるタッチパネル内に設けられてもよい。
【0087】
本変形例においては、オペレータによって切り替えスイッチ37がオン操作されると、自動制御指令部58にステアリング自動制御を開始するためのトリガ(開始トリガ)が入力される。続いて、モータグレーダの単位走行距離当たりの進行方向の変化率の算出と、ステアリング自動制御とが実行される。オペレータによって切り替えスイッチ37がオフ操作されると、自動制御指令部58に停止トリガが入力され、ステアリング自動制御が停止される。
【0088】
このような構成によれば、オペレータは、より自らが意図したタイミングでステアリング自動制御を開始させることができる。
【0089】
以上に説明した、本実施の形態におけるモータグレーダ100およびその制御方法の構成および効果についてまとめて説明する。
【0090】
作業車両としてのモータグレーダ100は、操向機構66と、制御部51とを備える。制御部51は、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構66を制御する。
【0091】
このような構成によれば、制御部51は、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように操向機構66を制御するため、オペレータに煩雑な作業が求められない。このため、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現することができる。
【0092】
また、制御部51は、操向機構66の制御を開始するためのトリガが入力された場合に、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構66を制御する。
【0093】
このような構成によれば、制御部51は、予め定められたトリガに基づいて、操向機構66の制御を開始するか否かを判断することができる。
【0094】
また、モータグレーダ100は、操作部67をさらに備える。操作部67は、操向機構66を動作させるために操作される。制御部51は、操作部67の操作が停止された場合に操向機構66の制御を開始する。
【0095】
このような構成によれば、操向機構66の制御を開始するためのオペレータの操作が不要であるため、オペレータの負担をさらに軽減することができる。
【0096】
また、制御部51は、操作部67の操作が停止された状態が所定期間継続された後に、操向機構66の制御を開始してもよい。
【0097】
このような構成によれば、制御部51が操作部67の操作の停止に過剰に反応して操向機構66の制御を開始することを防止できる。
【0098】
また、制御部51は、操作部67の操作が再開された場合に操向機構66の制御を停止する。
【0099】
このような構成によれば、操作部67の操作が再開された場合にはその操作によって操向機構66を動作させることにより、オペレータは、モータグレーダ100を自らの意図した方向に走行させることができる。
【0100】
また、モータグレーダ100は、制御部51による操向機構66の制御の開始および停止を切り替えるためのスイッチとしての切り替えスイッチ37を備えてもよい。
【0101】
このような構成によれば、オペレータは、より自らが意図したタイミングで、制御部51による操向機構66の制御を開始させることができる。
【0102】
また、モータグレーダ100は、検知部63をさらに備える。検知部63は、モータグレーダ100の位置および向きの少なくともいずれか一方に関する情報を検知する。制御部51は、検知部63により検知されたモータグレーダ100の位置および向きの少なくともいずれか一方に関する情報に基づいて、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を特定する。
【0103】
このような構成によれば、制御部51は、検知部63において検知されたモータグレーダ100の位置および向きの少なくともいずれか一方に関する情報を用いて、モータグレーダ100の進行方向の変化率を特定することができる。
【0104】
モータグレーダ100の制御方法は、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出するステップ(S204)と、算出されたモータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構66を制御するステップ(S205)とを備える。
【0105】
算出するステップ(S204)は、操向機構66の制御を開始するためのトリガが入力された場合に、モータグレーダ100の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出するステップを含む。
【0106】
このような構成によれば、オペレータの負担が十分に軽減される運転アシストシステムを実現することができる。
【0107】
なお、本開示における検知部としては、上記のIMUに限られず、ジャイロセンサ、地磁気センサまたはカメラなどを用いることも可能である。本開示における検知部としてカメラを用いた場合、カメラにより撮影されるモータグレーダの周囲の画像を解析することによって、モータグレーダの位置および向きを検知することができる。
【0108】
モータグレーダ100は、モータグレーダ100の進行方向を操作する操向機構66として、前輪16を左右に傾倒させるリーニング機構と、フロントフレーム14とリアフレーム15とを屈曲させるアーティキュレート機構とをさらに有する。制御部51によって実行される操向機構66の制御は、ステアリング自動制御に限られず、リーニング機構の自動制御であってもよいし、アーティキュレート機構の自動制御であってもよいし、ステアリング機構、リーニング機構およびアーティキュレート機構のうちの複数の機構の自動制御であってもよい。
【0109】
本開示における作業車両およびその制御方法は、モータグレーダに限られず、たとえば、ホイールローダ、ダンプトラックまたはブルドーザなどの各種の作業車両に適用されてもよい。ホイールローダへの適用の場合、制御部による制御の対象は、回動可能に接続されたフロントフレームとリアフレームとのアーティキュレート角度であってもよい。
【0110】
図11は、モータグレーダの操向機構の制御システムの概念を示す図である。上記の実施の形態では、作業車両であるモータグレーダ100が制御部51を備える場合を説明したが、
図3および
図11に示されるように、モータグレーダの操向機構66が、モータグレーダから離れた位置に設けられた制御部および操作部によって制御される構成であってもよい。
【0111】
モータグレーダの操向機構66を制御する制御システムは、モータグレーダの単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、モータグレーダの操向機構66を制御する制御部251を備える。
【0112】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1において説明した運転アシストシステムがブルドーザに適用された場合の構成を説明する。以下、実施の形態1における構成と重複する構成については、その説明を繰り返さない。
【0113】
図12は、ブルドーザを示す斜視図である。
図13は、
図12中のブルドーザの操向に関わる構成を示すシステム図である。
【0114】
図12に示されるように、ブルドーザ300は、車体311と、作業機313と、左右一対の牽引装置316(316R,316L)とを有する。車体311は、左右一対の牽引装置316(316R,316L)上に設けられている。車体311は、キャブ341と、エンジン室342とを有する。作業機313は、車体311の前方に設けられている。作業機313は、土砂の掘削および整地などの作業を行なうためのブレード318を有する。
【0115】
左右一対の牽引装置316(316R,316L)は、ブルドーザ300を走行させるための装置である。左右一対の牽引装置316(316R,316L)は、たとえば、履帯と、終減速装置とを有する。左右一対の牽引装置316(316R,316L)が回転駆動されることによって、ブルドーザ300が走行する。
【0116】
図12および
図13に示されるように、ブルドーザ300は、操向機構66と、制御部51と、操作部67と、電気流体圧制御弁73とを有する。
【0117】
操向機構66は、駆動装置331を有する。駆動装置331は、油圧により作動する油圧モータである。駆動装置331は、右側の牽引装置(第1牽引装置)316Rと、左側の牽引装置(第2牽引装置)316Lとを互いに独立して駆動させることが可能である。
【0118】
操作部67は、ステアリングレバー42を有する。電気流体圧制御弁73は、圧油を駆動装置331に供給する。制御部51は、ステアリングレバー42からの操作信号に基づいて、電気流体圧制御弁73を制御する。駆動装置331は、電気流体圧制御弁73からの圧油により、右側の牽引装置316Rと、左側の牽引装置316Lとを回転させる。右側の牽引装置316Rの回転速度と、左側の牽引装置316Lの回転速度とが同じである場合、ブルドーザ300が直進する。右側の牽引装置316Rの回転速度が、左側の牽引装置316Lの回転速度よりも大きい場合、ブルドーザ300が左前方に向けて旋回する。左側の牽引装置316Lの回転速度が、右側の牽引装置316Rの回転速度よりも大きい場合、ブルドーザ300が右前方に向けて旋回する。
【0119】
図14は、
図12中のブルドーザの運転アシストシステムに関わる構成を示すブロック図である。
図13および
図14に示されるように、ブルドーザ300は、レバーセンサ32を有する。レバーセンサ32は、ステアリングレバー42の操作を検知する。
【0120】
ブルドーザ300は、検知部63をさらに有する。検知部63は、ブルドーザ300の位置および向きの少なくともいずれか一方に関する情報を検知する。検知部63は、IMU38を有する。IMU38は、ブルドーザ300の加速度および角速度を計測するセンサである。IMU38は、ブルドーザ300の加速度および角速度の信号を制御部51に出力する。
【0121】
図14に示されるように、制御部51は、トリガ出力部52と、自動制御指令部58と、ステアリング制御部54とを有する。
【0122】
トリガ出力部52は、レバーセンサ32からのステアリングレバー42の操作信号に基づいて、操向機構66の制御を開始または停止するためのトリガを出力する。
【0123】
自動制御指令部58は、位置および方向算出部59と、進行方向の変化率算出部57とを有する。
【0124】
位置および方向算出部59には、IMU38により検知されたブルドーザ300の加速度および角速度の信号が入力される。位置および方向算出部59は、IMU38により計測されたブルドーザ300の加速度および角速度に基づいて、ブルドーザ300の位置および向きを算出し、算出したブルドーザ300の位置および向きの信号を変化率算出部57に出力する。
【0125】
変化率算出部57には、位置および方向算出部59により算出されたブルドーザ300の位置および向きの信号が入力される。変化率算出部57は、位置および方向算出部59により算出されたブルドーザ300の位置および向きに基づいて、ブルドーザ300の単位走行距離当たりの進行方向の変化率を算出する。
【0126】
ステアリング制御部54は、変化率算出部57により算出されたブルドーザ300の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、操向機構66を制御する。具体的には、ステアリング制御部54は、変化率算出部57により算出されたブルドーザ300の単位走行距離当たりの進行方向の変化率が一定に保たれるように、電気流体圧制御弁73に制御信号を出力する。電気流体圧制御弁73は、ステアリング制御部54から信号に基づいて、駆動装置331に圧油を供給し、右側の牽引装置316Rの回転速度と、左側の牽引装置316Lの回転速度とを制御する。
【0127】
このように構成されたブルドーザ300によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
11,341 キャブ、12,313 作業機、13,342 エンジン室、14 フロントフレーム、14p 基端部、14q 先端部、15 リアフレーム、16 前輪、17 後輪、18 車体フレーム、21,318 ブレード、22 ドローバ、23 旋回サークル、25 リフトシリンダ、28 アーティキュレートシリンダ、31 ハンドルセンサ、32 レバーセンサ、36 ステアリングシリンダ、37 切り替えスイッチ、41 ステアリングハンドル、42 ステアリングレバー、51,251 制御部、52 トリガ出力部、54 ステアリング制御部、57 変化率算出部、58 自動制御指令部、59 方向算出部、63 検知部、66 操向機構、67 操作部、71 軌道バルブ、72 ステアリングバルブ、73 電気流体圧制御弁、100 モータグレーダ、121 回動中心、160 堆積物、300 ブルドーザ、311 車体、316,316L,316R 牽引装置、331 駆動装置。