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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】標示の表示方法及び水栓器具製品
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20231002BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B23K26/00 B
E03C1/042 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019182223
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021053694
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 重倫
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104640(JP,A)
【文献】特開2018-051599(JP,A)
【文献】特開2017-029992(JP,A)
【文献】特開2002-146558(JP,A)
【文献】特開2008-280562(JP,A)
【文献】特開2009-107008(JP,A)
【文献】特開2018-15777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
E03C 1/042
B44C 1/00-1/14
B44C 1/18-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被表示体上に複数段階の明度で階調を持ったマーク、模様、絵等の標示を表示する標示の表示方法であって、
前記標示の中で比較的明度の高い第1明度及び該第1明度と同等以下の明度の領域を、前記第1明度で表示するように前記被表示体上にレーザー照射を行い、
前記標示の中で前記第1明度より明度の低い第2明度及び該第2明度と同等以下の明度の領域を、前記第2明度で表示するように前記被表示体上に重ねてレーザー照射を行い、
これらのレーザー照射を、前記標示の中で最も明度の高い領域から最も明度の低い領域に至るまで順次行い、
前記標示の中で比較的明度が低い領域では、比較的明度が高い領域に比べて、レーザーの焦点が前記被表示体表面より奥側に合うように焦点距離を長くしてレーザー照射を行い、しかも、単位面積当たりのレーザーの照射時間を長くし、
前記標示の中で比較的明度が高い領域から比較的明度が低い領域までの全領域では、レーザーの焦点が前記被表示体表面上に合うように焦点距離を設定してレーザー照射を間欠的に行い、前記被表示体表面上に光を乱反射させる複数個の凹部を形成する
標示の表示方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記被表示体は水栓器具製品の表面のクロームメッキ層であり、
前記レーザーとして波長が355ナノメートルの紫外線領域レーザーが用いられる
標示の表示方法。
【請求項3】
表面のクロームメッキ層に複数段階の明度で階調を持ったマーク、模様、絵等の標示を表示し、
前記標示の中で比較的明度の高い領域は、クロームメッキ層の表面にレーザー照射により比較的酸化度の低い酸化被膜が形成されており、
前記標示の中で比較的明度の低い領域は、クロームメッキ層の表面にレーザー照射により比較的酸化度の高い酸化被膜が形成されており、
前記標示の中で比較的明度が高い領域から比較的明度が低い領域までの全領域では、クロームメッキ層の表面にレーザー照射により光を乱反射させる複数個の凹部が形成されている
水栓器具製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被表示体上にマーク、模様、絵等の標示を表示する方法、及びトイレ、洗面所、浴室、台所等の水廻りに用いられる標示の被表示体としての水栓器具製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓器具製品のメッキの表面にレーザーマーキングによりマークを表示する発明が開示されている。この発明は、クロームメッキとニッケルメッキとから成る2層のメッキ層のうち、下層のニッケルメッキが表出するようにマークの形状でクロームメッキを除去することにより、水栓器具製品のメッキの表面にニッケル色のマークを表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4888818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明で表示されるマークは、単色であり、複数段階の明度で階調を持った複雑な表現を実現したいとのニーズに応えることができなかった。
【0005】
本発明の課題は、水栓器具製品のメッキ層のような被表示体上にマーク、模様、絵等の標示の表示を行うに当たり、複数明度の階調表現を用いて、標示として複数段階の明度で階調を持った複雑な表現を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、被表示体上に複数段階の明度で階調を持ったマーク、模様、絵等の標示を表示する標示の表示方法である。前記標示の中で比較的明度の高い第1明度及び該第1明度と同等以下の明度の領域を、前記第1明度で表示するように前記被表示体上にレーザー照射を行い、前記標示の中で前記第1明度より明度の低い第2明度及び該第2明度と同等以下の明度の領域を、前記第2明度で表示するように前記被表示体上に重ねてレーザー照射を行い、これらのレーザー照射を、前記標示の中で最も明度の高い領域から最も明度の低い領域に至るまで順次行う。
【0007】
第1発明によれば、第1明度で表示された標示の上に重ねて、第1明度より明度の低い第2明度で標示が表示される。そのため、複数段階の明度で階調を持った複雑な表現の標示を得ることができる。しかも、標示の表示を行うに際し、明度の違う標示間の境界にずれが生じても、第1明度の標示と第2明度の標示との間に標示のない隙間ができることはない。そのため、ずれが目立つことはなく、見栄えの良い標示を表示することができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記標示の中で比較的明度が低い領域では、比較的明度が高い領域に比べて、レーザーの焦点が前記被表示体表面より奥側に合うように焦点距離を長くしてレーザー照射を行い、しかも、単位面積当たりのレーザーの照射時間を長くする。
【0009】
第2発明によれば、レーザーの焦点距離の変化による表示される標示の明度の違い、及びレーザーの照射時間の変化による表示される標示の明度の違いを組み合わせることにより、複数段階の明度で階調を持った標示を得ている。そのため、被表示体の特性によりレーザーの照射に対する明度の現れ方の違いに係わらず、幅広い明度の階調を持った標示を表示することができる。しかも、同じ明度が得られる場合、可及的にレーザーの照射時間が短くなるレーザーの焦点距離の組合せを選択することにより、標示の表示に要するレーザー照射時間を短縮して生産性を高めることができる。また、消費エネルギを抑制することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記標示の中で比較的明度が高い領域から比較的明度が低い領域までの全領域では、レーザーの焦点が前記被表示体表面上に合うように焦点距離を設定してレーザー照射を間欠的に行う。
【0011】
第3発明によれば、標示の領域の被表示体表面上にレーザーの焦点を合わせてレーザー照射を間欠的に行い、標示の領域に複数個の凹部を形成することにより、標示の中で最も明度の高い領域の表示を行うことができる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第1~第3発明のいずれかにおいて、前記被表示体は水栓器具製品の表面のクロームメッキ層であり、前記レーザーとして波長が355ナノメートルの紫外線領域レーザーが用いられる。
【0013】
第4発明によれば、複数段階の明度の階調を持った標示を、トイレ、洗面所、浴室、台所等の水廻りに用いられる水栓器具製品に表示することができる。しかも、標示は、クロームメッキ層の表面に紫外線領域レーザーを照射して表示されており、レーザーの照射によりクロームメッキ層は殆ど傷つけられないため、水栓器具製品の耐食性に殆ど影響を与えないようにすることができる。
【0014】
本発明の第5発明の水栓器具製品は、表面のクロームメッキ層に複数段階の明度で階調を持ったマーク、模様、絵等の標示を表示した。
【0015】
第5発明によれば、水栓器具製品に複数段階の明度の階調を持った標示を表示することができ、水栓器具製品の商品価値を高めることができる。
【0016】
本発明の第6発明は、上記第5発明において、前記標示の中で比較的明度の高い領域は、クロームメッキ層の表面にレーザー照射により比較的酸化度の低い酸化被膜が形成されており、前記標示の中で比較的明度の低い領域は、クロームメッキ層の表面にレーザー照射により比較的酸化度の高い酸化被膜が形成されている。
【0017】
第6発明によれば、領域毎に酸化被膜の酸化度に差を持たせることによって複数段階の明度の階調を持った標示が表示される。そのため、複数段階の明度で階調を持った複雑な表現の標示を得ることができる。
【0018】
本発明の第7発明は、上記第6発明において、前記標示の中で比較的明度が高い領域から比較的明度が低い領域までの全領域では、クロームメッキ層の表面にレーザー照射により複数個の凹部が形成されている。
【0019】
第7発明によれば、標示の領域に複数個の凹部を形成することにより、標示の中で最も明度の高い領域の表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の原理を説明する説明図である。
図2図1と同様の説明図であり、第1ステップの表示状態を示す。
図3図1と同様の説明図であり、第2ステップの表示状態を示す。
図4図1のIV-IV線断面拡大図である。
図5】クロームメッキ表面に標示を表示するためのレーザー照射の様子を説明する説明図であり、レーザーの焦点がクロームメッキ表面上にある状態を示す。
図6図5と同様の説明図であり、レーザーの焦点がクロームメッキ表面より奥側にある状態を示す。
図7】本発明の第1実施形態である水栓器具製品の平面図である。
図8】上記水栓器具製品のクロームメッキ表面に表示された標示の一例を説明する説明図である。
図9図8と同様の説明図であり、第1ステップの表示状態を示す。
図10】複数段階の明度の階調を持った標示を表示するために照射されるレーザーの焦点距離と移動速度の関係を説明する説明図である。
図11】レーザーの照射の仕方を説明する説明図である。
図12】本発明の第2実施形態の標示を説明する図4と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<原理>
図1は、本発明の表示方法の原理を説明するもので、3段階の明度の階調を持った円形のマーク(本発明の標示に相当)を示す。後述のように本発明の第1実施形態では、このマークを含む標示をクロームメッキ(本発明の被表示体に相当)の表面にレーザーを照射することにより表示している。
【0022】
このマークの表示は、次のように行う。最初に第1ステップとして、3段階の明度の中で、最も明度の高い最外側の領域(以下、白領域という)、及び白領域より内側で白領域より明度の低い領域を含む領域を白領域の明度(本発明の第1明度に相当)となるように表示する(図2参照)。次に第2ステップとして、上記白領域の次に明度の低い、白領域の内側の領域(以下、灰色領域という)、及び灰色領域より内側で灰色領域より明度の低い領域(以下、黒領域という)を含む領域を灰色領域の明度(本発明の第2明度に相当)となるように表示する(図3参照)。最後に第3ステップとして、灰色領域の次に明度の低い、灰色領域の内側の黒領域を黒領域の明度となるように表示する(図1参照)。このようにして、3段階の明度の階調を持ったマークを表示することができる。
【0023】
図4は、図1の断面図であり、クロームメッキ4の表面に酸化膜6a~6cが形成された状態を示す。酸化膜6a~6cにより3段階の明度の階調を持った上記円形のマークを表示している。ここで、クロームメッキ4は、ベース金属2の表面に施されている。酸化膜6a~6cは、クロームメッキ4表面がレーザー照射によって酸化されて形成されたものであり、酸化度の違いによって明度が変わり、酸化度が高くなる程、明度が低くなる。酸化膜6aは、酸化膜6b、6cに比較して酸化度が低く、3段階の明度の中で、最も明度の高い上記白領域を表示する。酸化膜6bは、酸化膜6aと酸化膜6cの中間の酸化度で、上記灰色領域を表示する。酸化膜6cは、酸化膜6a、6bに比較して酸化度が高く、3段階の明度の中で、最も明度の低い上記黒領域を表示する。
【0024】
クロームメッキの表面にレーザーを照射して3段階の明度の階調を持ったマークを表示するためには、図5、6のように、レーザーマーカ(図示略)によってクロームメッキ4の表面にレーザー8を照射する。この場合のレーザー8は、波長が355ナノメートルの紫外線領域の光を用いることが望ましい。但し、それに限定されず、赤外線領域(例えば、波長が1090ナノメートル)までの広範囲の波長のレーザー光を用いることができる。
【0025】
図5は、レーザー8の焦点位置がクロームメッキ4の表面に一致するようにした場合を示し、図6は、レーザー8の焦点位置がクロームメッキ4の表面より奥側となるようにした場合を示す。図5のように、レーザー8の焦点距離をクロームメッキ4の表面に一致させると、クロームメッキ4の表面が削り取られて表面に凹部(図示略)が形成される。一方、図6のように、レーザー8の焦点距離をクロームメッキ4の表面より奥側となるようにすると、クロームメッキ4の表面にレーザー光の熱による光腐食が生じて上述のような酸化膜6が形成される。
【0026】
図10は、レーザー8の照射の仕方に対する酸化膜の酸化度の関係を示す。図10のマトリックスにおいて、縦軸は、上記レーザー8の焦点距離であり、横軸は、レーザー8がクロームメッキ4の表面を照射しながら移動する速度である。レーザー8の照射は、図11の矢印で示すように、ある領域(破線の内側の領域)を照射する際、その領域内で円を描きながら移動して行われる。
【0027】
図10のように、移動速度を一定にした状態で、焦点距離を長くする(例えば、図5の状態から図6の状態へ移行する)と酸化膜の酸化度が高くなって明度が低くなり、焦点距離を短くする(例えば、図6の状態から図5の状態へ移行する)と酸化膜の酸化度が低くなって明度が高くなる。また、焦点距離を一定にした状態で、移動速度を遅くする(単位面積当たりのレーザーの照射時間を長くする)と酸化膜の酸化度が高くなって明度が低くなり、移動速度を速くする(単位面積当たりのレーザーの照射時間を短くする)と酸化膜の酸化度が低くなって明度が高くなる。従って、焦点距離を設定範囲中の最長にし、移動速度を設定範囲中で最も遅くすると、図10のマトリックスの右下角部に示すように酸化膜の酸化度が最大となって明度が最低となる。また、焦点距離を設定範囲中の最短にし、移動速度を設定範囲中で最も速くすると、図10のマトリックスの左上角部に示すように酸化膜の酸化度が最小となって明度が最大となる。
【0028】
このマトリックスに基づき、表示したい明度に対応する焦点距離と移動速度の組合せを選んで、レーザー8の照射を行うことによりクロームメッキ4の表面に所望の明度の酸化膜を形成することができる。このマトリックスの中で、略同じ明度の酸化膜が複数箇所にある場合、移動速度の速い方の組合せを選択することによりレーザー照射に必要な時間を短縮することができ、且つ消費エネルギを抑制することができる。
【0029】
<第1実施形態>
図7は、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態は、水栓器具製品である浴室用混合水栓のクロームメッキの表面に2段階の明度の階調を持った蝶の模様(本発明の標示に相当)を表示したものである。
【0030】
図7のように、混合水栓は、水栓本体10に冷水管18及び温水管16からそれぞれ冷水及び温水が供給され、それらが水栓本体10内で混合されて吐水口20及びシャワー口22から混合水が吐水される。水栓本体10には、その両側に温調ハンドル12及び切替ハンドル14が設けられている。温調ハンドル12は、回転操作することにより冷水と温水の混合比率を調整して混合水の温度を調整する。また、切替ハンドル14は、シャワー口22側に回転操作されると、回転量に比例してシャワー口22からの混合水の吐水量が増量調整される。一方、切替ハンドル14が吐水口20側に回転操作されると、回転量に比例して吐水口20からの混合水の吐水量が増量調整される。切替ハンドル14が、シャワー口22と吐水口20との間の中立位置にあるときは、吐水口20及びシャワー口22からの混合水の吐水が遮断される。
【0031】
水栓本体10、温調ハンドル12、切替ハンドル14、吐水口20、及びシャワー口22は、それぞれの表面にクロームメッキ4が施されている。しかも、水栓本体10のクロームメッキ4の表面には、レーザー8の照射により中央部に蝶の模様24が表示され、その蝶の模様24の周辺には、ボタニカルアート調の模様26が施されている。
【0032】
図8は、上記蝶の模様24を拡大して示す。蝶の模様24は、2段階の明度の階調を持って表示されている。蝶の模様24は、「原理」として説明したマークの場合と同様、白色で表示される白領域の一部に、黒色で表示される黒領域が重ねられている。この模様の作り方は、上述の「原理」と同様、最初に第1ステップで、白領域及び黒領域の両方を含む全領域を白領域の明度となるように表示する(図9参照)。次に第2ステップで、黒領域を黒領域の明度となるように表示する。このようにして、図8のような2段階の明度の階調を持った蝶の模様24を表示することができる。
【0033】
第1実施形態によれば、白色で表示された蝶の模様24(図9参照)の上に重ねて、蝶の模様24のうちの黒領域に黒色の表示が行われる(図8参照)。そのため、2段階の明度で階調を持った複雑な表現の蝶の模様24をクロームメッキ4の表面に表示することができる。しかも、蝶の模様24の表示を行うに際し、明度の違う領域の境界にずれが生じても、白領域と黒領域との間に表示のない隙間ができることはない。そのため、ずれが目立つことはなく、見栄えの良い模様を表示することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、第1実施形態における白領域をより白く表示するため、白領域に多数の凹部24aを形成した点である。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0035】
蝶の模様24を表示するため、最初に第1ステップで、白領域及び黒領域の両方を含む全領域を白領域の明度となるように表示する。このとき、図5のように、クロームメッキ10b(4)の表面にレーザー8の焦点を合わせてクロームメッキ10bの表面に多数の凹部24aを形成する。凹部24aは、凹部24aを形成する位置にレーザー8の焦点位置を移動させたタイミング毎に間欠的にレーザー照射を行って形成する。
【0036】
次に第2ステップで、黒領域を黒領域の明度となるようにクロームメッキ10bの表面を酸化させて酸化膜24bを形成する。従って、このときは、図6のように、レーザー8の焦点をクロームメッキ10b(4)の表面より奥側となるようにする。黒領域において、クロームメッキ10bの表面を酸化させる際には、凹部24a内の表面にも酸化膜が形成され、この黒領域内の凹部24aによる光の乱反射が抑制される。このようにして、図8のように、2段階の明度の階調を持った蝶の模様24を表示することができる。しかも、このときの白領域の白色は、凹部24aで光が乱反射するため、第1実施形態の場合の白領域よりも白く表示することができる。図12において、10aはベース金属であり、第1実施形態を示す図4のベース金属2に相当する。
【0037】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、浴室用混合栓のクロームメッキの表面に2段階の階調を持った蝶の模様を表示したが、浴室用混合栓、クロームメッキ、及び蝶の模様は、それぞれ他のものに置き換えてもよい。例えば、浴室用混合栓以外に各種水栓器具製品、他の用途の製品へ適用してもよい。クロームメッキ以外にレーザーによりマーキングのできる他のものに適用してもよい。蝶の模様以外に各種マーク、模様、絵等の標示に適用してもよい。また、3段階以上の階調を持った標示を表示してもよい。
【0038】
上記実施形態では、レーザーとして波長が355ナノメートルの紫外線領域レーザーを用いたが、それ以外の波長のレーザーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
2、10a ベース金属
4、10b クロームメッキ(被表示体)
6、6a、6b、6c 酸化膜
8 レーザー
10 水栓本体
12 温調ハンドル
14 切替ハンドル
16 温水管
18 冷水管
20 吐水口
22 シャワー口
24 蝶の模様(標示)
24a 凹部
24b 酸化膜
26 ボタニカルアート調の模様(標示)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12