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特許7358182ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法
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  • 特許-ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】ホーニング加工機及びそれを用いた加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 33/06 20060101AFI20231002BHJP
   B24B 33/02 20060101ALI20231002BHJP
   B24B 33/08 20060101ALI20231002BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B24B33/06
B24B33/02
B24B33/08
B24B49/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019186292
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021058993
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤井 健太
(72)【発明者】
【氏名】木邑 達男
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-000915(JP,A)
【文献】特開2019-000914(JP,A)
【文献】特開2017-196728(JP,A)
【文献】特開2008-183655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 33/00 - 33/10
B24B 49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被加工孔の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、
該回転主軸の先端に着脱可能に装着され、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石を有するホーニングツールと、
該ホーニングツールの下端部を回転可能に保持する捩れ防止装置とを備えたホーニング加工機であって、
上記捩れ防止装置は、
上記ホーニングツールの下端部を第1内輪で回転可能に保持する第1軸受と、
上記第1軸受の下方に配置され、該第1軸受の第1内輪と共に第2内輪が連れ回りする第2軸受と、
上記第2軸受の第2内輪に回転一体に保持され、上端が上記第1軸受の第1内輪に接続された複数の伸縮可能な伸縮部材を有する連れ回り部材と、
上記第1軸受の第1外輪及び上記第2軸受の第2外輪を固定し、上記連れ回り部材を収容する治具本体とを備え、
複数の上記伸縮部材を上記ホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、該ホーニングツールを傾けるように制御する制御部を備えている
ことを特徴とするホーニング加工機。
【請求項2】
ワークの被加工孔の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、
該回転主軸の先端に着脱可能に装着され、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石を有するホーニングツールと、
該ホーニングツールの下端部を回転可能に保持する捩れ防止装置とを備えたホーニング加工機であって、
上記捩れ防止装置は、
上記ホーニングツールの下端部を第1内輪で回転可能に保持する第1軸受と、
上記第1軸受の下方に配置され、該第1軸受の第1内輪と共に第2内輪が連れ回りする第2軸受と、
上記第2軸受の第2内輪に回転一体に保持され、上端が上記第1軸受の第1内輪に接続された複数の伸縮可能な伸縮部材を有する連れ回り部材と、
上記第1軸受の第1外輪及び上記第2軸受の第2外輪を固定し、上記連れ回り部材を収容する治具本体とを備え、
複数の上記伸縮部材を上記ホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、該ホーニングツールを傾けるように制御する制御部を備えており、
上記捩れ防止装置は、
上記ホーニングツールに加わる加工負荷を計測する動力計と、
上記ホーニングツールの変形量を計測する変形量測定部とを有し、
上記制御部は、上記ホーニングツールで研削する際の上記動力計と上記変形量測定部との値を元に複数の上記伸縮部材を伸縮させるタイミングを計算し、その計算値を元に上記伸縮部材を伸縮制御するよう、正確な変動力の取り出し処理装置と、修正を可能とする演算処理装置と、修正を正確且つ迅速に行う修正装置の3つの機構を備えている
ことを特徴とするホーニング加工機。
【請求項3】
ワークの被加工孔の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、
該回転主軸の先端に着脱可能に装着され、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石を有するホーニングツールと、
該ホーニングツールの下端部を回転可能に保持する捩れ防止装置とを備えたホーニング加工機であって、
上記捩れ防止装置は、
上記ホーニングツールの下端部を第1内輪で回転可能に保持する第1軸受と、
上記第1軸受の下方に配置され、該第1軸受の第1内輪と共に第2内輪が連れ回りする第2軸受と、
上記第2軸受の第2内輪に回転一体に保持され、上端が上記第1軸受の第1内輪に接続された複数の伸縮可能な伸縮部材を有する連れ回り部材と、
上記第1軸受の第1外輪及び上記第2軸受の第2外輪を固定し、上記連れ回り部材を収容する治具本体とを備え、
複数の上記伸縮部材を上記ホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、該ホーニングツールを傾けるように制御する制御部を備えており、
上記ホーニングツールの下端には、上下に延びる径方向外側に突出した突条が設けられ、
上記第1内輪には、上記突条が嵌まり込む係合溝が形成されることで位相保持して同期する機構が設けられている
ことを特徴とするホーニング加工機。
【請求項4】
ワークの被加工孔の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、該回転主軸の先端に着脱可能に装着され、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石を有するホーニングツールと、該ホーニングツールの下端部を回転可能に保持する捩れ防止装置とを備えたホーニング加工機を用いた加工方法において、
上記捩れ防止装置に、
上記ホーニングツールの下端部を第1内輪で回転可能に保持する第1軸受と、
上記第1軸受の下方に配置され、該第1軸受の第1内輪と共に第2内輪が連れ回りする第2軸受と、
上記第2軸受の第2内輪に回転一体に保持され、上端が上記第1軸受の第1内輪に接続された複数の伸縮可能な伸縮部材を有する連れ回り部材と、
上記第1軸受の第1外輪及び上記第2軸受の第2外輪を固定し、上記連れ回り部材を収容する治具本体とを設ける準備工程と、
上記第1軸受に上記ホーニングツールの下端部を回転一体に接続した状態でワークを研削したときに上記ホーニングツールに加わる荷重と、該ホーニングツールの変形量とを実測して記憶する実測工程と、
上記実測工程で記憶した実測データを元に、上記ワークを研削する際に、上記ホーニングツールが負荷を受けて傾く方向に対して反対側に傾くように上記伸縮部材を伸縮させる伸縮部材制御工程とを含
ことを特徴とするホーニング加工機を用いた加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの被加工孔の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、この回転主軸の先端に着脱可能に装着され、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石を有するホーニングツールとを備えたホーニング加工機及びそれを用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のホーニング加工機に用いられるホーニングツールの外径は、その長さに比べて極めて小さく、非常に撓み安い構造となっている。ホーニング砥石に捩れが発生し、この捩れを起点として曲がりを起こしてくると、加工精度の不良が発生する。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示すように、ホーニングツールの下端を、基板に設けた案内軸受に回転可能に支持させた状態で、基板上のケーシングに回転可能に支持した板体上の工作物の貫通孔を研削することが知られている。
【0004】
また、特許文献2では、ホーニングツールの傾きについて述べているが、その傾きはフローティング支持機械により許容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-30662号公報
【文献】特開平7-276223号公報(特に段落0024)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のようなフローティング支持機械を用いても、ホーニングツールの傾き自体を十分に解消できないので、達成できる加工精度には限りがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホーニングツールの傾きを積極的に抑制することで加工精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、ホーニングツールの下端部を回転可能に保持する捩れ防止装置を設けた。
【0009】
具体的には、第1の発明では、ワークの被加工孔の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、
該回転主軸の先端に着脱可能に装着され、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石を有するホーニングツールと、
該ホーニングツールの下端部を回転可能に保持する捩れ防止装置とを備えたホーニング加工機を対象とする。
【0010】
そして、上記捩れ防止装置は、
上記ホーニングツールの下端部を第1内輪で回転可能に保持する第1軸受と、
上記第1軸受の下方に配置され、該第1軸受の第1内輪と共に第2内輪が連れ回りする第2軸受と、
上記第2軸受の第2内輪に回転一体に保持され、上端が上記第1軸受の第1内輪に接続された複数の伸縮可能な伸縮部材を有する連れ回り部材と、
上記第1軸受の第1外輪及び上記第2軸受の第2外輪を固定し、上記連れ回り部材を収容する治具本体とを備え、
複数の上記伸縮部材を上記ホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、該ホーニングツールを傾けるように制御する制御部を備えている。
【0011】
上記の構成によると、第1軸受でホーニングツールを回転可能に支持するので、ホーニングツールの回転を阻害することなく、ホーニングツールの回転が安定する。さらに、制御部で、第1軸受と連れ回りする第2軸受に設けた連れ回り部材が有する、複数の伸縮部材をホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、ホーニングツールを意図的に傾けるように制御するので、ホーニングツールの傾きを積極的に防ぐことができる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明の構成に加え、
上記捩れ防止装置は、
上記ホーニングツールに加わる加工負荷を計測する動力計と、
上記ホーニングツールの変形量を計測する変形量測定部とを有し、
上記制御部は、上記ホーニングツールで研削する際の上記動力計と上記変形量測定部との値を元に複数の上記伸縮部材を伸縮させるタイミングを計算し、その計算値を元に上記伸縮部材を伸縮制御するよう、正確な変動力の取り出し処理装置と、修正を可能とする演算処理装置と、修正を正確且つ迅速に行う修正装置の3つの機構を備えている。
【0013】
上記の構成によると、ホーニングツールで研削を行う際に実際に生じる加工負荷及び変形量を実測することで、ホーニングツールの加工位置ごとの傾斜の傾向を学習し、実際の研削時には、その傾斜と反対向きに第1軸受を介してホーニングツールを傾けるように力を加えることで、ホーニングツールの傾きが最小限となる。
【0014】
第3の発明では、第1の発明に加え、
上記ホーニングツールの下端には、上下に延びる径方向外側に突出した突条が設けられ、
上記第1内輪には、上記突条が嵌まり込む係合溝が形成されることで位相保持して同期する機構が設けられている。
【0015】
上記の構成によると、正確な位相保持して同期することができる。これにより、第1内輪からの力が確実にホーニングツールの下端に伝達される。
【0016】
第4の発明では、ワークの被加工孔の内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸と、該回転主軸の先端に着脱可能に装着され、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石を有するホーニングツールと、該ホーニングツールの下端部を回転可能に保持する捩れ防止装置とを備えたホーニング加工機を用いた加工方法において、
上記捩れ防止装置に、
上記ホーニングツールの下端部を第1内輪で回転可能に保持する第1軸受と、
上記第1軸受の下方に配置され、該第1軸受の第1内輪と共に第2内輪が連れ回りする第2軸受と、
上記第2軸受の第2内輪に回転一体に保持され、上端が上記第1軸受の第1内輪に接続された複数の伸縮可能な伸縮部材を有する連れ回り部材と、
上記第1軸受の第1外輪及び上記第2軸受の第2外輪を固定し、上記連れ回り部材を収容する治具本体とを設ける準備工程と、
上記第1軸受に上記ホーニングツールの下端部を回転一体に接続した状態でワークを研削したときに上記ホーニングツールに加わる荷重と、該ホーニングツールの変形量とを実測して記憶する実測工程と、
上記実測工程で記憶した実測データを元に、上記ワークを研削する際に、上記ホーニングツールが負荷を受けて傾く方向に対して反対側に傾くように上記伸縮部材を伸縮させる伸縮部材制御工程とを含み、
上記実測工程と上記伸縮部材制御工程とを融合する構成とする。
【0017】
上記の構成によると、第1軸受でホーニングツールを回転可能に支持するので、ホーニングツールの回転を阻害することなく、ホーニングツールの回転が安定する。さらに、実測したデータを元に、第1軸受と連れ回りする第2軸受に設けた連れ回り部材が有する複数の伸縮部材をホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、ホーニングツールを意図的に反対方向に傾けるように制御するので、ホーニングツールの傾きを積極的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、複数の伸縮部材をホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、ホーニングツールを、ホーニングツールが傾こうとする方向と反対側に傾けるように制御するようにしたので、ホーニングツールの傾きを積極的に抑制することにより、加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るホーニングツール及び捩れ防止装置を示す断面図である。
図2A】本発明の実施形態に係るホーニングツール及び捩れ防止装置を含むホーニング加工機の概要を示す斜視図である。
図2B】本発明の実施形態に係るホーニングツールを差し込む前のホーニングツール、治具本体及びその周辺を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る供回り部材、伸縮部材及びその周辺を示す斜視図である。
図4】加工中にホーニングツールの砥石に加わる荷重を示し、(a)が平面図で、(b)が正面図である。
図5】加工中にホーニングツールに加わる変動する円周方向の荷重を示し、(a)が平面図で、(b)が正面図である。
図6】加工中にホーニングツールの変形する様子を示す平面図で、(a)がホーニングツールの上側を示し、(b)が下側を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図2Aは、本発明の実施形態のホーニング加工機1(全体は図示せず)を示し、このホーニング加工機1は、ワーク50の被加工孔50aの内径面の軸線方向に往復移動可能且つ軸線周りに回転可能な回転主軸2を備えている。この回転主軸2は、電動機などの駆動モータ3によって駆動されるようになっている。駆動モータ3などホーニング加工機1の全体は、制御部4によって制御されるように構成されている。
【0022】
そして、回転主軸2の先端(下端)には、径方向に突出及び退入可能なホーニング砥石6を有するホーニングツール5が着脱可能に装着されている。本実施形態では、例えば、内径20mm程度の被加工孔50aを加工する外径に比べて長さが長いホーニングツール5について説明する。ホーニングツール5は、ある程度剛性が低い方がむしろ応答性が上がり、その傾き制御は容易となる。図1に示すように、ホーニングツール5の下端部5aは、ホーニング砥石6よりも下方に延長されており、例えば、ホーニング砥石6と径方向反対側には、上下に延びる径方向外側に突出した突条5bが設けられている。
【0023】
図1図2B及び図3にも示すように、ホーニングツール5の下端部5aは、捩れ防止装置10によって回転可能に保持されている。具体的には、捩れ防止装置10は、ホーニングツール5の下端部5aを第1内輪11aで回転可能に保持する第1軸受11と、この第1軸受11の下方に配置され、第1軸受11の第1内輪11aと共に第2内輪12aが連れ回りする第2軸受12とを備えている。第1内輪11aには、上記突条5bが嵌まり込む係合溝11cが形成されている。
【0024】
そして、捩れ防止装置10は、この第2軸受12の第2内輪12aに回転一体に保持され、上端(ロッド部13a)が第1軸受11の第1内輪11aに接続された複数の伸縮可能な伸縮部材13を有する連れ回り部材14と、第1軸受11の第1外輪11b及び第2軸受12の第2外輪12bを固定し、連れ回り部材14を収容する治具本体15とを備えている。本実施形態では、第1軸受11及び第2軸受12が玉軸受の例を図示しているが、軸受の種類は特に限定されないが、特に第1軸受11は、第1内輪11aが第1外輪11bに対してある程度傾くのを許容する構成である必要がある。治具本体15は、ネジ15a等により、ホーニング加工機1の台等に固定されている。
【0025】
制御部4は、複数の伸縮部材13をホーニングツール5に加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、ホーニングツール5を傾けるように制御するように構成されている。具体的には、伸縮部材13は、例えば、3つのエアシリンダよりなり、それぞれが図2Aに示す制御バルブ16に配管13bを介して接続されている。各伸縮部材13は、制御部4が制御バルブ16に指示を出し、ホーニング砥石6の状況に合わせてそれぞれ伸縮するようになっている。伸縮部材13は、エアシリンダではなく油圧シリンダであってもよい。本実施形態では、伸縮部材13のロッド部13aは、第1内輪11aに当接して第1内輪11aを押し上げるような状態で第1内輪11aに接続されているが、第1内輪11aに連結されて、第1内輪11aを引き下げることもできるように構成してもよい。
【0026】
そして、図2Aに示すように、捩れ防止装置10は、正確な変動力の取り出しを行う変動力取出処理装置としての、ホーニングツール5に加わる加工負荷を計測する動力計17と、ホーニングツール5の変形量を計測する変形量測定部18とを有する。具体的には、動力計17は、例えば、切削動力計であり、駆動モータ3等のトルクを検出することで切削動力を検出するようになっている。変形量測定部18は、ホーニングツール5の変形量を測定できればよく、例えば、公知の変位計を利用して実際の変形量を測定する。
【0027】
そして、演算処理装置としての制御部4は、実際にホーニングツール5でワーク50の被加工孔50aを研削する際の動力計17と変形量測定部18との値を元に複数の伸縮部材13を伸縮させるタイミングを計算する。また、修正装置としての制御部4は、計算値を元に制御バルブ16を制御して伸縮部材13を伸縮制御するように構成されている。
【0028】
-ホーニング加工機の制御方法-
次に、本実施形態に係るホーニング加工機1の制御方法について説明する。
【0029】
まず、準備工程で上記ホーニング加工機1を準備する。
【0030】
次いで、実測工程において、第1軸受11にホーニングツール5の下端部5aを回転一体に接続した状態でワーク50を研削したときにホーニングツール5に変動する円周方向の加わる荷重と、ホーニングツール5の変形量とを実測して記憶する。具体的には、図1に示す状態から、ホーニングツール5をワーク50の被加工孔50aに挿通して下方へ移動させ、図2Aに示すように、その下端部5aを第1軸受11まで進め、その上下に延びる突条5bを第1内輪11aの係合溝11cに対して回転一体に挿入する。このとき、ホーニングツール5が撓むと、第1内輪11aは、第1外輪11bに対して傾くようにしておく。次いで、伸縮部材13はフリーの状態としておき、ワークの被加工孔50aを通常の研削工程通りに研削しながら、動力計17及び変形量測定部18での計測値を実測して制御部4が記憶しておく。ホーニングツール5の剛性は、この変形量測定部18による実測値を用いる。ホーニングツール5の応答として、荷重を受けたときから変形までの時間も同時に測定しておく。これにより、ホーニングツール5が応答できる加減速時定数を設定する。三方向の加工負荷の取得値から合力位置に策定処理を行う。
【0031】
ここで、ホーニング砥石6及びホーニングツール5に加わる変動する円周方向の荷重について説明する。ホーニングツール5は、ホーニング砥石6を半径方向外側に突出させた状態で、回転主軸2を中心に回転しながら被加工孔50aの内面を研削していく。
【0032】
このとき、ホーニング砥石6が被加工孔50aに対して上下方向に移動したり、周方向に移動したりしながら研削が行われる。図4に示すように、ホーニング砥石6には、ホーニングツール5の回転により起こる力F1と、切り込みにより起こる力F2と、送りにより起こる力F3とが発生する。
【0033】
すると、結果として図5に示すように、ホーニングツール5には、これらの合力として抵抗を受けることになる。ホーニング砥石6の先端側には、送りと回転による上方へ傾いた合力F4が発生する。また、切り込みによるホーニングツール5の軸心に向かう力も発生している。これらの合力により、ホーニングツール5の下端部5aには、回転方向とは逆の上向きの力と、軸心に向かう力とが発生し、この力をホーニングツール5が受け、斜め後方上側に変形してくることになる。
【0034】
ホーニングツール5の上側と下側とでホーニングツール5の変形する状態を図6の(a)及び(b)にそれぞれ示す。ホーニングツール5は、上下送り(ストローク)と、ホーニング砥石6の位置的な仕事率の違いから、それぞれの位置において、ホーニングツール5にやや異なった傾きを生じさせる。但し、図6(a)と図6(b)とでは、上ストローク時Bと下ストローク時Aとで変位の方向は逆の関係を示す。これらの変形は、上端と下端に来たときに、ストローク速度の減速、停止、加速に合わせて変化を起こす傾向にある。
【0035】
次いで、伸縮部材制御工程において、実測工程で記憶した実測データを元に、ワーク50を研削する際に、ホーニングツール5が負荷を受けて傾く方向に対して反対側に強制的に傾くように伸縮部材13を伸縮させる。したがって、ホーニングツール5の変形を抑える逆向きの力をストローク速度に応じて変化させながら、ホーニングツール5に加えていくことで、ホーニングツール5の変形を抑えることができる。具体的には、実測工程で割り出した力と位置から3つの伸縮部材13に荷重を与えることで、ホーニングツール5に負荷を与える。ホーニングツール5の剛性が低いほどその応答性が上がって制御が容易になる。ストロークの速度とストロークの方向が変化するとき、速度に応じて荷重を変化させ、また、ストロークの方向により荷重位置を変化させる。突条5bを係合溝11cに嵌め込んでいるので、第1内輪11aからの力が確実にホーニングツール5の下端部5aに伝達される。
【0036】
このように本実施形態では、第1軸受11でホーニングツール5を回転可能に支持するので、ホーニングツール5の回転を阻害することなく、ホーニングツール5の回転が安定する。さらに、実測したデータを元に複数の伸縮部材13をホーニングツール5に加わる変動する円周方向の荷重に合わせて伸縮させ、ホーニングツール5を意図的に反対方向に傾けるように制御するので、ホーニングツール5の傾きを積極的に防ぐことができる。
【0037】
本実施形態では、ホーニングツール5で研削を行う際に実際に生じる加工負荷及び変形量を実測することで、ホーニングツール5の加工位置ごとの傾斜の傾向を学習し、実際の研削時には、その傾斜と反対向きに第1軸受11を介してホーニングツール5を傾けるように力を加えることで、ホーニングツール5の傾きが最小限となる。
【0038】
したがって、本実施形態に係るホーニング加工機1によると、ホーニングツール5の傾きを積極的に抑制することにより加工精度を向上させることができる。
【0039】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0040】
例えば、上記実施形態では、伸縮部材13は3本設けているが、4本以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ホーニング加工機
2 回転主軸
3 駆動モータ
4 制御部(演算処理装置、修正装置)
5 ホーニングツール
5a 下端部
6 ホーニング砥石
10 防止装置
11 第1軸受
11a 第1内輪
11b 第1外輪
11c 係合溝
12 第2軸受
12a 第2内輪
12b 第2外輪
13 伸縮部材
13a ロッド部
13b 配管
14 連れ回り部材
15 治具本体
16 制御バルブ
17 動力計(変動力取出処理装置)
18 変形量測定部(変動力取出処理装置)
50 ワーク
50a 被加工孔
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6