(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】防音パネルと防音パネルシステム
(51)【国際特許分類】
E04B 1/86 20060101AFI20231002BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20231002BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20231002BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20231002BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20231002BHJP
E01F 8/00 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
E04B1/86 R
E04B1/82 X
E04G21/32 B
G10K11/16 120
G10K11/168
E01F8/00
(21)【出願番号】P 2019192889
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】519379961
【氏名又は名称】高橋 良男
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良男
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183811(JP,A)
【文献】特開2004-011399(JP,A)
【文献】特開2011-184912(JP,A)
【文献】特開2000-087469(JP,A)
【文献】実開昭51-099914(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/82-1/86
E04G 21/32
G10K 11/16-11/168
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発音源に向かって、内側から外側へと、
防炎ターポリンシート、グラスウール成形体としての板状の吸音材及び遮音シートが順次に配設され、前記の防炎ターポリンシートと遮音シートとが袋状のケース体とされてこの袋状のケース体の内部に前記板状の吸音材が封入されてパネル体が構成されて
おり、前記袋状のケース体の内面側には自立補強用のゴムベルト材が配設されていることを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
前記ケース体の長尺および/または短尺側には、左右および/または上下に前記パネル体の接続が可能とされる面ファスナー部もしくは紐係止用フック部が
配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の防音パネル。
【請求項3】
前記板状の吸音材のグラスウール成形体は、グラスウールがガラスクロスで包装された成形体であることを特徴とする請求項1または2に記載の防音パネル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の防音パネルをもって簡易防音壁部が構成されることを特徴とする防音パネルシステム。
【請求項5】
複数の防音パネルが左右および/または上下に接続されることを特徴とする請求項4に記載の防音パネルシステム。
【請求項6】
防音パネルの接地部においてC型チャンネル体が設置され、前記防音パネルが下端部を前記C型チャンネル体に嵌合されて自立していることを特徴とする請求項
4または5に記載の防音パネルシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来より、工事現場、工場、スポーツ施設、事務所などの屋外、屋内において簡易に利用できる防音パネルやこれを用いた簡易防音システムがさまざまな特徴のものとしして知られている。
【0002】
たとえば、屋内外の工事現場において騒音減を囲むように枠体に自己消火性の遮音シートを取り付けて面ファスナーで複数のものを接続可能とした遮音パネル装置(特許文献1)や、多孔シートで覆い、高さ調整を可能とした防音パネル(特許文献2)が知られている。
【0003】
また、吸音材としての合成樹脂発泡体の一面がメッシュシートで覆われ、他面が遮音シートで被覆され、袋状のメッシュシートに吸音材が収容される吸遮音パネル(特許文献3)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録3168271号公報
【文献】実用新案登録3197399号公報
【文献】特開2011-184912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来提案されている防音パネルは、防音対として高発泡ポリエチレンシートやその他各種の発泡体を用い、しかもメッシュシート等の多孔シートを用いるものであって、防音体を含めた防音パネル構成としては吸遮音の効果は必ずしも十分でなく、樹脂発泡体や多孔シートはパネル構成の強度、パネル製造の生産性やコスト、現場での敷設利便性において十分に満足できるものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、以上の事情に鑑みて、吸遮音効果に優れ、その強度、生産性、コスト、施設利便性も良好な新しい防音パネルとこれを用いた防音パネルシステムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防音パネルとこれを用いた防音パネルシステムは次のことを特徴としている。
1.発音源に向かって、内側から外側へと、防炎ターポリンシート、グラスウール成形体としての板状の吸音材及び遮音シートが順次に配設され、前記の防炎ターポリンシートと遮音シートとが袋状のケース体とされてこの袋状のケース体の内部に前記板状の吸音材が封入されてパネル体が構成されている防音パネル。
2.前記ケース体の長尺および/または短尺側には、左右および/または上下に前記パネル体の接続が可能とされる面ファスナー部もしくは紐係止用フック部が配接されている防音パネル。
3.前記袋状のケース体の内面側には自立補強用のゴムベルト材が配設されている防音パネル。
4.前記板状の吸音材のガラスウール成形体は、グラスウールがガラスクロスで包接された成形体である防音パネル。
5.前記いずれかの防音パネルをもって簡易防音壁部が構成される防音パネルシステム。
6.複数の防音パネルが左右および/または上下に接続される防音パネルシステム。
7.防音パネルの接地部においてC型チャンネル体で自立可能とされている防音パネルシステム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸遮音効果に優れ、その強度、生産性、コスト、敷設利便性も良好な新しい防音パネルとこれを用いた防音パネルシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の防音パネルの基本構成を例示した概要断面図である。
【
図2】2体の防音パネルの例を示した斜視図である。
【
図3】2体の防音パネルの横接続の例を示した斜視図である。
【
図4】3体の防音パネルの例を示した斜視図である。
【
図5】3体の防音パネルの横、縦の接続の例を示した斜視図である。
【
図6】フック部(ブラケット部)の配置位置を例示した斜視図である。
【
図7】屋外での横接続による簡易防音壁の例を示した写真図である。
【
図8】屋外での横、縦の接続による簡易防音壁の例を示した写真図である。
【
図9】避難場所等の屋内でのブライバシー保護の防音パネル小部屋空間を例示した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の防音パネルの基本について例示した断面概要図である。発音源(A)に向かって内側(B)から外側(C)へと、順次に、防炎ターポリンシート(1)、グラスウール成形体としての板状の吸音材(2)および遮音シート(3)が配接され、防炎ターポリンシート(1)と遮音シート(3)とが袋状のケース体(4)の内部に板状の吸音材(2)が封入されてパネル体が構成される。このパネル体が防音パネル(10)とされる。
【0012】
ここで本発明での防炎ターポリンシート(1)は、「ターポリン」として古くは船上の防水シート等として利用されてきた帆布にタールを塗って防水性を持たせたものとして知られていたものが、現在ではポリエステル系などの繊維を軟質の合成樹脂フィルムでサンドイッチして複合シートとしたものである。また、防炎性、つまり燃えにくく、自己消火性を有するものとし、強度、防水性に優れたたものとしたものである。
【0013】
本発明の防炎ターポリンシート(1)は、市販品としても利用できるものであって、従来の防音バネル、吸音遮音パネルに用いられている多孔シートとは本質的に相違している。また、上記のような強度、防水性、防炎性という特徴から屋外でも、屋内でもパネル体への使用を可能としている。そして、本発明のパネル体の構成において、吸音材(2)および遮音シート(5)との組合せによって防音性能を優れたものとする。
【0014】
板状の吸音材(2)は、本発明の防音パネル(10)では、グラスウールの成形体を用いることを必須としている。本発明でのグラスウールの成形体は優れた吸音特性を有している。例えば、好ましくは、ガラス繊維の密度を35Kg/m3以上、好ましくは40 Kg/m3前後とした厚み45~55mmとしたボード状の高密度グラスウールとすることで、残響室法による吸音率データの測定値は吸音率0.9、つまり吸音性能0.9Mとなる。グラスウール成形体としての板状の吸音材(2)では、例えばグラスウールをガラスクロスで簡易、包装仕上げしたものとすることが好ましく例示される。また、ガラスクロス包装した後にポリエチレン等の軟質フィルムの袋で包んだものとすることができる。
発音源(A)に対して外側(C)に配置される遮音シート(3)は、音を内側(B)方向に反射させる役割を果たすものであって、従来より知られている市販品を利用することができる。好ましくは鉛材を含有するシート体が例示される。
【0015】
具体例を示すと、本発明の防音パネル(10)のパネル体では、防炎ターポリンシート(1)として、厚さ1mmの防炎KT-1000E:カンボウ、板状の吸音材(2)として、厚さ50mmのグラスウールボード(密度40Kg/m3):パラマウント硝子工業、遮音シート(3)として、厚さ1mmのF-100:カンボウの例を挙げることができる。
【0016】
本発明の防音パネル(10)では防炎ターポリンシート(1)と遮音シーと(3)は袋状のケース体(4)として、このケース体(4)の内部に板状の吸音材(2)が封入されるが、袋状のケース体(4)は、例えば
図1の構成例においては、その底部(D)およぴ上部(E)で防炎ターポリンシート(1)と遮音シート(3)とを縫合して形成してもよいし、相互の重なり部において接着剤で接着させて形成してもよい。あるいは、後述するような面ファスナーによって接合して袋状としてもよい。ケース体(4)の両側部においても同様である。
【0017】
また、袋状のケース体(4)の内面側には、防音パネル(10)の自立補強のためのゴムベルト材が、例えば板状の吸音材(2)の側面や、表裏面側に適宜に配設されてもよい。このゴムベルト材としては、多層構成の引張強度に優れたにトリルゴム系のものが例示される。例えば市販品としてはポリベルト(登録商標:ニッタ)などがある。このようなゴムベルト材は接着剤で取付固定してもよいし縫合するようにしてもよい。
【0018】
袋状のケース体(4)は、これに納入する板状の吸音材(2)の表面、裏面、そして側面、上下端面に可能な限り密着するようにする防炎ターポリントート(1)と遮音シート(3)に防音パネル(10)の単体が複数組合されて相互に接続が可能とされる面ファスナー部や紐での係止用のフック部(ブラケット部)が設けられてもよい。面ファスナー部を配置するためには、ケース(4)の表裏面や左右側面のいずれか、もしくは、さらには上下端面のいずれか、さらには両方に面ファスナー部を構成するフック面とループ面とを適宜に儲けてもよい。あるいは、ケース体(4)から、防炎ターポリンシート(1)および/または遮音シート(3)の端部を延ばした延片部を設け、これに面ファスナー構成部を配置してもよい。
【0019】
例えば、
図2、
図3の例においては、2対の防音パネル(10)において、一方のケース体(4A)の長尺側の側面には面ファスナー部(5)を構成するフック面(5H)が設けられ、他方のケース体(4B)の延片部(6)にはループ面(5L)が設けられている。これらの面ファスナー部(5)を構成するフック面(5H)やループ面(5L)は、防音が必要とされる現場において接着剤での接着や縫合ど取り付けてもよいし、あらかじめ工場等において取付け準備しておいてもよい。
【0020】
ケース体(4A)(4B)を用いる場合、
図3に例示したように、前記のフック面(5H)トループ面(5L)とが面ファスナー部(5)で接続され、L字型の防音パネルシステムが形成されることになる。
【0021】
図4、
図5の側は、3体の防音パネルによる横接続および上下の縦接続の場合を示している。
【0022】
ケース体(4A)(4C)にはフック面(5H)が設けられ、ケース体(4B)においては、その上部と側部の延片部(6)にループ面(5L)が設けられている。このケース体(4A)(4B)(4C)を用いることで、例えば
図5のように、面ファスナー部(5)が形成されて3体の防音パネル(10)による横接続および上下縦接続された簡易防音壁部が構成されることになる。
【0023】
以上の例においては、本発明の防音パネルとこれを用いた防音システムを理解しやすくするために、ケース体(4A)(4B)、そしてケース体(4A)(4B)(4C)の組合せにおいて、面ファスナー部(5)を構成するフック面(5H)、ループ面(5L)が別々のケース体に配置される場合を示しているが、これらフック面(5H)、ループ面(5L)、そしてこれらが配設される延片部(6)については単一または特定の防音パネルにあらかじめ配置しておいてもよい。もちろん、屋内、屋外の現場において適宜に配置してもよい。
【0024】
また、本発明の防音パネル(10)においては、ケース体(4)の側部、上下端部の適宜な箇所に、防音システムをより強度のあるものとして、自立性を高めるものとして、例えば
図6に示した箇所(F)に紐(ロープ)による接続を可能とするフック部(ブラケット部)を設けることも考慮される。
【0025】
図7、
図8は、屋外に設置した本発明の防音パネルシステムを例示したものである。
図7の例では高さ1.5mの防音壁が構築され、
図8のように2段重ねで高さ3mの防音壁となる。
【0026】
そしてまた、
図9は、避難場所等のプライバシー保護に役立てるように小部屋を構成した例を示している。例えば、幅910mm、高さ1500mmの防音パネルを9枚用いることで3畳間ができる。出入り口はパネル1枚分である。パネル11枚で4.5畳、13枚で6畳、15枚で8畳間が簡単に作れることになる。
【0027】
以上の具体例においては、パネルシステムの自立性を確保するために、例えば、
図7、
図8のような平面壁構成では、スチールパイプ組みで支持してもよいし、
図9の例の場合も含めて、パネル接地部において樹脂製もしくは金属製のC型チャンネルを嵌合組合せるようにしてもよい。
【0028】
本発明の防音パネルは、工事現場、工場、イベント会場、避難場所での間仕切りや小部屋等への利用が考慮される
図7~9のような大型なものだけでなく、事務所での業務あるいは公的機関の相談窓口でのプライバシー保護のため等に、適宜に小型の間仕切りやパーティションとして利用することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 防炎ターポリンシート
2 吸音材
3 遮音シート
4 ケース体
5 面ファスナー部
6 延片部
10 防音パネル