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特許7358200粘着剤用添加剤および感温性粘着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】粘着剤用添加剤および感温性粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20231002BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231002BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231002BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/08
C09J7/38
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019198858
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2020076091
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018207661
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡士
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-166910(JP,A)
【文献】特開2008-144124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C08F 222/40
C08L 35/00
C08L 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N置換マレイミド化合物およびカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体をモノマー成分として含む共重合体であり、
前記共重合体の重量平均分子量が、10000以下である、粘着剤用添加剤。
【請求項2】
前記共重合体において、前記N置換マレイミド化合物が、前記カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体よりも重量比で多く含まれている、請求項1に記載の粘着剤用添加剤。
【請求項3】
前記共重合体が、反応性ポリシロキサン化合物をモノマー成分としてさらに含む、請求項1または2に記載の粘着剤用添加剤。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の粘着剤用添加剤と、
側鎖結晶性ポリマーと、を含有し、
前記側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する、感温性粘着剤組成物。
【請求項5】
前記側鎖結晶性ポリマーが、前記カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体と同じものをモノマー成分として含む、請求項に記載の感温性粘着剤組成物。
【請求項6】
前記共重合体の重量平均分子量が、前記側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量よりも小さい、請求項4または5に記載の感温性粘着剤組成物。
【請求項7】
80℃における貯蔵弾性率G’が、0.15MPa以上である、請求項4~6のいずれかに記載の感温性粘着剤組成物。
【請求項8】
ステンレス鋼に対する180°剥離強度が、
80℃において0.5N/25mm以上であり、
23℃において0.1N/25mm以下である、請求項4~7のいずれかに記載の感温性粘着剤組成物。
【請求項9】
ステンレス鋼に対する180°剥離強度が、
150℃を経た後の23℃において0.2N/25mm以下である、請求項4~8のいずれかに記載の感温性粘着剤組成物。
【請求項10】
ポリエチレンテレフタレートに対する180°剥離強度が、
80℃において0.8N/25mm以上であり、
23℃において0.1N/25mm以下である、請求項4~9のいずれかに記載の感温性粘着剤組成物。
【請求項11】
請求項4~10のいずれかに記載の感温性粘着剤組成物を含む、感温性粘着シート。
【請求項12】
フィルム状の基材と、
前記基材の少なくとも片面に積層されており請求項4~10のいずれかに記載の感温性粘着剤組成物を含む粘着剤層と、を備える、感温性粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤用添加剤および感温性粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤として感温性粘着剤が知られている。感温性粘着剤は、側鎖結晶性ポリマーを主成分として含有しており、側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に冷却されると、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が低下する粘着剤である。感温性粘着剤は、テープなどに加工されて、被加工物を仮固定するときに使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-249860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、粘着剤の粘着性能を高めることができる粘着剤用添加剤およびそれを含有する感温性粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粘着剤用添加剤は、N置換マレイミド化合物およびカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体をモノマー成分として含む共重合体である。
【0006】
本発明の感温性粘着剤組成物は、前記粘着剤用添加剤と、側鎖結晶性ポリマーと、を含有し、前記側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘着剤の粘着性能を高めることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<粘着剤用添加剤>
以下、本発明の一実施形態に係る粘着剤用添加剤(以下、「添加剤」と言うことがある。)について詳細に説明する。
【0009】
本実施形態の添加剤は、N置換マレイミド化合物およびカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体をモノマー成分として含む共重合体であり、粘着剤に添加して使用されるものである。本実施形態の添加剤を粘着剤に添加すると、粘着剤の粘着性能を高めることができる。この効果について、粘着剤として感温性粘着剤組成物(以下、「感温性粘着剤」と言うことがある。)を例に挙げて具体的に説明する。
【0010】
感温性粘着剤の粘着性能としては、例えば、固定力、剥離性などが挙げられる。そして、固定力および剥離性に影響を与える物性の1つに、弾性が挙げられる。通常、高弾性の感温性粘着剤は、固定力は弱いものの剥離性は高い傾向にある。逆に、低弾性の感温性粘着剤は、固定力は高いものの剥離性は低い傾向にある。剥離性が低い傾向は、高温に曝されたときに顕著である。これは、比較的低弾性の感温性粘着剤は、高温に曝されると被加工物の表面に存在する微細な凹凸形状に追従し易く、低温で側鎖結晶性ポリマーが結晶化したときにアンカー効果が発現し易いことに起因すると推察される。
【0011】
このように、一般的な感温性粘着剤では、高粘着力と高弾性とを両立し難く、固定性と剥離性のいずれかに劣るという問題があった。また、高温に曝されると剥離性が悪化することがあった。
【0012】
本実施形態の添加剤は、粘着剤に対して弾性の低下を抑制しつつ粘着性を付与できる機能を有する。したがって、本実施形態の添加剤を高弾性の感温性粘着剤に添加すれば、弾性を維持しつつ粘着力を高めることができ、高粘着力と高弾性とを両立させることができる。それゆえ、本実施形態の添加剤を含有する感温性粘着剤は、被加工物の加工時には優れた固定性を有しつつ、加工後には簡単に剥離することが可能となる。また、高温に曝されても剥離性が低下し難く、易剥離性を維持することができる。
【0013】
N置換マレイミド化合物は、例えば、一般式(I):
【化1】
[式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基、フェニル基、クロロフェニル基、ヒドロキシフェニル基、カルボキシフェニル基、ニトロフェニル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシエチル基、メトキシカルボニル基、カルボキシ基、カルボキシエチル基、カルボキシブチル基またはカルボキシヘキシル基を示す。]で表される。
【0014】
一般式(I)中、Rが水素原子を示すとき、N置換マレイミド化合物は、マレイミドになる。言い換えれば、N置換マレイミド化合物は、マレイミドであってもよい。また、一般式(I)中、Rが示すカルボキシエチル基は、基:-CH2CH2COOHである。例示したN置換マレイミド化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
N置換マレイミド化合物は、市販品を使用することができる。市販のN置換マレイミド化合物としては、例えば、置換基がフェニル基である日本触媒社製のN-フェニルマレイミド「イミレックスP」、置換基がシクロヘキシル基である日本触媒社製のN-シクロヘキシルマレイミド「イミレックスC」などが挙げられる。
【0016】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。例示したカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
共重合体において、N置換マレイミド化合物が、カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体よりも重量比で多く含まれていてもよい。具体的には、N置換マレイミド化合物とカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体との比率が、重量比で、N置換マレイミド化合物:カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体=95:5~55:45であってもよい。このような構成を満たすときは、上述した添加剤の機能が高まる傾向にある。
【0018】
なお、共重合体におけるN置換マレイミド化合物とカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体との割合は、上述した関係に限定されない。例えば、共重合体において、カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体が、N置換マレイミド化合物よりも重量比で多く含まれていてもよいし、両者が重量比で同じ割合で含まれていてもよい。
【0019】
共重合体は、N置換マレイミド化合物およびカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体に加えて、他のモノマー成分をさらに含んでいてもよい。例えば、共重合体は、反応性ポリシロキサン化合物(シリコーンモノマー)をモノマー成分としてさらに含んでいてもよい。
【0020】
反応性ポリシロキサン化合物とは、反応性を示す官能基を有し、且つ、主鎖にシロキサン結合を有するポリシロキサン化合物のことである。反応性を示す官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基などのエチレン性不飽和二重結合を有する基;エポキシ基(グリシジル基およびエポキシシクロアルキル基を含む)、メルカプト基、カルビノール基、カルボキシル基、シラノール基、フェノール基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。なお、上述した(メタ)アクリル基とは、アクリル基またはメタクリル基のことである。この点は、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロキシ基においても同様である。
【0021】
官能基は、主鎖が有する側鎖に導入されていてもよいし、主鎖の両末端または片末端に導入されていてもよい。反応性ポリシロキサン化合物は、導入される官能基の位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型および側鎖両末端型に分類することができる。
【0022】
片末端型の具体例としては、下記一般式(II)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物などが挙げられる。
【化2】
[式中、R1はアルキル基を示す。R2は基:CH2=CHCOOR3-またはCH2=C(CH3)COOR3-(式中、R3はアルキレン基を示す。)を示す。nは5~200の整数を示す。]
【0023】
一般式(II)中、R1が示すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1~6の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられる。R3が示すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などの炭素数1~6の直鎖または分枝したアルキレン基などが挙げられる。
【0024】
一般式(II)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物の具体例としては、下記一般式(IIa)で表される化合物などが挙げられる。
【化3】
[式中、R1、nは、前記と同じである。]
【0025】
変性ポリジメチルシロキサン化合物は、市販品を使用することができる。市販の変性ポリジメチルシロキサン化合物としては、例えば、いずれも信越化学工業社製の片末端反応性シリコーンオイル「KF-2012」、「X-22-2475」、「X-24-8201」、「X-22-2426」、いずれもJNC社製の片末端反応性シリコーンオイル「FM-0711」、「FM-0721」、富士フイルム和光純薬社製の高分子アゾ開始剤「VPS-1001」、「VPS-1001N」などが挙げられる。
【0026】
共重合体において、反応性ポリシロキサン化合物が重量比で最も少なく含まれていてもよい。具体的には、N置換マレイミド化合物とカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体と反応性ポリシロキサン化合物との比率が、重量比で、N置換マレイミド化合物:カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体:反応性ポリシロキサン化合物=50~94.9:5~45:0.1~5であってもよい。具体例を挙げると、N置換マレイミド化合物:カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体:反応性ポリシロキサン化合物=54.9:45:0.1であってもよい。また、N置換マレイミド化合物:カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体:反応性ポリシロキサン化合物=94.9:5:0.1であってもよい。
【0027】
N置換マレイミド化合物およびカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体に加えて、他のモノマー成分を共重合体がさらに含むとき、N置換マレイミド化合物が重量比で最も多く含まれていてもよい。
【0028】
重合方法としては、例えば、溶液重合法などが挙げられる。具体的に説明すると、モノマー成分と溶媒とを混合し、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤などを添加し、撹拌しながら40~90℃程度で2~10時間程度反応させればよい。溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンなどが挙げられる。重合開始剤の組成は、特に限定されず、市販品を使用することもできる。重合開始剤の添加量は、共重合体を構成するモノマー成分100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部である。連鎖移動剤としては、例えば、ドデカンチオールなどのチオール系連鎖移動剤などが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、共重合体を構成するモノマー成分100重量部に対して、好ましくは1~30重量部である。なお、上述した溶媒の組成、重合開始剤の割合、連鎖移動剤の組成および割合は、例示したものに限定されない。例えば、連鎖移動剤は添加しなくてもよい。
【0029】
共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。このような構成によれば、粘着剤に対する添加剤の分散性が高まる。なお、共重合体の重量平均分子量の下限値は、好ましくは400以上である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0030】
<感温性粘着剤組成物>
次に、本発明の一実施形態に係る感温性粘着剤組成物について詳細に説明する。
本実施形態の感温性粘着剤は、上述した添加剤と、側鎖結晶性ポリマーとを含有し、側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する。本実施形態の感温性粘着剤は、上述した添加剤を含有することから、高粘着力と高弾性とを両立することができ、優れた固定性と易剥離性とを有する。また、高温に曝されても易剥離性を維持することができる。
【0031】
(側鎖結晶性ポリマー)
側鎖結晶性ポリマーは、融点を有するポリマーである。融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていた重合体の特定部分が無秩序状態になる温度であり、示差熱走査熱量計(DSC)を使用して、10℃/分の測定条件で測定して得られる値のことである。
【0032】
側鎖結晶性ポリマーは、上述した融点未満の温度で結晶化し、且つ、融点以上の温度で相転移して流動性を示す。すなわち、側鎖結晶性ポリマーは、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こす感温性を有する。
【0033】
本実施形態の感温性粘着剤は、融点未満の温度で側鎖結晶性ポリマーが結晶化したときに粘着力が低下する割合で、側鎖結晶性ポリマーを含有する。言い換えれば、本実施形態の感温性粘着剤は、側鎖結晶性ポリマーを主成分として含有する。それゆえ、感温性粘着剤を被加工物から剥離するときには、側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に感温性粘着剤を冷却すれば、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が低下する。また、側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度に感温性粘着剤を加熱すれば、側鎖結晶性ポリマーが流動性を示すことによって粘着力が回復するので、繰り返し使用することができる。なお、上述した主成分とは、感温性粘着剤中に重量比で最も多く含まれる成分のことである。
【0034】
側鎖結晶性ポリマーの融点は、好ましくは室温(23℃)以上、より好ましくは23~60℃である。融点は、例えば、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分の組成などを変えることによって調整することができる。
【0035】
側鎖結晶性ポリマーは、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー成分として含む。炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、その炭素数16以上の直鎖状アルキル基が側鎖結晶性ポリマーにおける側鎖結晶性部位として機能する。すなわち、側鎖結晶性ポリマーは、側鎖に炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する櫛形のポリマーであり、この側鎖が分子間力などによって秩序ある配列に整合されることにより結晶化する。なお、上述した(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートのことである。
【0036】
炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどの炭素数16~22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。例示した(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分中に好ましくは10~99重量%、より好ましくは20~99重量%の割合で含まれる。
【0037】
側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分には、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートと共重合し得る他のモノマーが含まれていてもよい。他のモノマーとしては、例えば、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、極性モノマーなどが挙げられる。
【0038】
炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。例示した(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分中に好ましくは85重量%以下、より好ましくは1~70重量%の割合で含まれる。
【0039】
極性モノマーとしては、例えば、添加剤で例示したのと同じカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。例示した極性モノマーは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。極性モノマーは、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分中に好ましくは20重量%以下、より好ましくは10~15重量%の割合で含まれる。
【0040】
側鎖結晶性ポリマーの好ましい組成としては、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが10~60重量%、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが20~85重量%、および極性モノマーが5~20重量%であり、より好ましい組成としては、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが20~60重量%、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが25~70重量%、および極性モノマーが10~15重量%である。
【0041】
側鎖結晶性ポリマーは、上述した添加剤におけるカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体と同じものをモノマー成分として含んでいてもよい。このような構成を満たすときは、側鎖結晶性ポリマーと添加剤との互いの相溶性が高まる。
【0042】
モノマー成分の重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。溶液重合法を採用する場合には、モノマー成分と溶媒とを混合し、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤などを添加し、撹拌しながら40~90℃程度で2~10時間程度反応させればよい。
【0043】
側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは100000以上、より好ましくは300000~900000、さらに好ましくは300000~700000である。
【0044】
共重合体(添加剤)の重量平均分子量は、側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量よりも小さくてもよい。このような構成を満たすときは、側鎖結晶性ポリマーに対する添加剤の分散性が高まる。
【0045】
添加剤の含有量は、側鎖結晶性ポリマー100重量部に対して、好ましくは5~50重量部である。
【0046】
(架橋剤)
本実施形態の感温性粘着剤は、架橋剤をさらに含有していてもよい。架橋剤としては、例えば、金属キレート化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0047】
架橋剤として金属キレート化合物を採用すると、感温性粘着剤の耐熱性が高まる。金属キレート化合物としては、例えば、多価金属のアセチルアセトン配位化合物、多価金属のアセト酢酸エステル配位化合物などが挙げられる。多価金属としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、鉄、チタン、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウムなどが挙げられる。金属キレート化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミニウムのアセチルアセトン配位化合物またはアセト酢酸エステル配位化合物が好ましく、アルミニウムトリスアセチルアセトナートがより好ましい。
【0048】
架橋条件としては、加熱温度が90~130℃程度であり、加熱時間が1分~20分程度である。
【0049】
架橋剤の含有量は、側鎖結晶性ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部である。
【0050】
感温性粘着剤は、80℃における貯蔵弾性率G’が、好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.15~5MPaである。このような構成を満たすときは、感温性粘着剤が高弾性になることから、剥離性が高まる。80℃における貯蔵弾性率G’は、例えば、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分の組成、側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量、架橋剤の含有量などを変えることによって調整することができる。80℃における貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性測定装置で測定して得られる値である。
【0051】
感温性粘着剤は、ステンレス鋼に対する180°剥離強度が、80℃において0.5N/25mm以上、好ましくは1.0~20.0N/25mmであり、23℃において0.1N/25mm以下であってもよい。このような構成を満たすときは、被貼着面が無機材料を含む被加工物に対して、感温性粘着剤が優れた固定性と易剥離性とを有する。180°剥離強度は、JIS Z0237に準拠して測定される値である。
【0052】
感温性粘着剤は、ステンレス鋼に対する180°剥離強度が、150℃を経た後の23℃において0.2N/25mm以下であってもよい。このような構成を満たすときは、感温性粘着剤が高温に曝されても易剥離性を有する。
【0053】
感温性粘着剤は、ポリエチレンテレフタレートに対する180°剥離強度が、80℃において0.8N/25mm以上、好ましくは1.0~20.0N/25mmであり、23℃において0.1N/25mm以下であってもよい。このような構成を満たすときは、被貼着面が有機材料を含む被加工物に対して、感温性粘着剤が優れた固定性と易剥離性とを有する。
【0054】
上述した感温性粘着剤の使用形態は、特に限定されず、例えば、そのまま使用してもよいし、下記で説明するように、粘着シート、粘着テープなどの形態で使用してもよい。
【0055】
<感温性粘着シート>
本実施形態の感温性粘着シートは、上述した感温性粘着剤組成物を含むものであり、基材レスのシート状である。感温性粘着シートの厚さは、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~50μmである。
【0056】
感温性粘着シートの表面には、離型フィルムを積層してもよい。離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどからなるフィルムの表面に、シリコーンなどの離型剤を塗布したものが挙げられる。離型フィルムの厚さは、好ましくは5~500μm、より好ましくは25~250μmである。離型フィルムは、感温性粘着シートの使用時に剥離される。
【0057】
<感温性粘着テープ>
本実施形態の感温性粘着テープは、フィルム状の基材と、基材の少なくとも片面に積層されている粘着剤層とを備えている。フィルム状とは、フィルム状のみに限定されるものではなく、本実施形態の効果を損なわない限りにおいて、フィルム状ないしシート状をも含む概念である。
【0058】
基材の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が挙げられる。
【0059】
基材の構造は、単層構造または多層構造のいずれであってもよい。基材の厚さは、好ましくは5~500μm、より好ましくは25~250μmである。基材は、粘着剤層に対する密着性を高めるうえで、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理などが挙げられる。
【0060】
基材の少なくとも片面に積層されている粘着剤層は、上述した感温性粘着剤を含んでいる。粘着剤層を基材の片面または両面に積層するには、例えば、感温性粘着剤に溶剤を加えて塗布液を調製し、得られた塗布液をコーターなどで基材の片面または両面に塗布して乾燥させればよい。コーターとしては、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。
【0061】
粘着剤層の厚さは、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~50μmである。
【0062】
基材の両面に粘着剤層を積層する場合には、片面の粘着剤層と他面の粘着剤層は、互いの厚さ、組成などが、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、片面の粘着剤層が上述した感温性粘着剤を含む限り、他面の粘着剤層は特に限定されない。他面の粘着剤層は、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などで構成することもできる。
【0063】
感温性粘着テープの表面には、離型フィルムを積層してもよい。離型フィルムとしては、上述した感温性粘着シートで例示したのと同じものが挙げられる。離型フィルムは感温性粘着テープの使用時に剥離される。
【0064】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、添加剤を感温性粘着剤に添加する場合を例にとって説明したが、本実施形態の添加剤は、感温性粘着剤以外の他の粘着剤に添加することもできる。
【0066】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(合成例1-1~5、2~7:粘着剤用添加剤)
まず、N置換マレイミド化合物として、以下の化合物を準備した。
N-フェニルマレイミド:日本触媒社製の「イミレックスP」
N-シクロヘキシルマレイミド:日本触媒社製の「イミレックスC」
N-ベンジルマレイミド:東京化成工業社製の「N-Benzylmaleimide」
N-エチルマレイミド:東京化成工業社製の「N-Ethylmaleimide」
【0068】
また、カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体として、アクリル酸を準備した。反応性ポリシロキサン化合物として、以下の変性ポリジメチルシロキサン化合物を準備した。
変性ポリジメチルシロキサン化合物:信越化学工業社製の片末端反応性シリコーンオイル「KF-2012」
【0069】
そして、各モノマーを表1に示す組み合わせおよび割合で反応容器に加え、モノマー混合物を得た。なお、表1において、AAはアクリル酸を示し、KF-2012は変性ポリジメチルシロキサン化合物を示す。
【0070】
次に、連鎖移動剤としてドデカンチオールをモノマー混合物100重量部に対して以下の割合で反応容器に加えた。
合成例1-1~3、2~7:20重量部
合成例1-4:30重量部
合成例1-5:10重量部
【0071】
さらに重合開始剤として日油製のパーヘキシルPVをモノマー混合物100重量部に対して1重量部の割合で反応容器に加えた後、固形分濃度が37重量%になるようにメチルエチルケトンを反応容器に加え、混合液を得た。得られた混合液を80℃で3時間撹拌することによって各モノマーを共重合させて共重合体(添加剤)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量を表1に示す。なお、重量平均分子量は、GPCで測定して得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0072】
【表1】
【0073】
(合成例A~E:側鎖結晶性ポリマー)
まず、表2に示すモノマーを表2に示す割合で反応容器に加えた。表2に示すモノマーは、以下のとおりである。
C22A:ベヘニルアクリレート
C18A:ステアリルアクリレート
C16A:セチルアクリレート
C1A:メチルアクリレート
AA:アクリル酸
【0074】
次に、重合開始剤として日油製のパーブチルNDをモノマー混合物100重量部に対して1重量部の割合で反応容器に加えた後、固形分濃度が30重量%になるように酢酸エチル:トルエン=75:25(重量比)の混合溶媒を反応容器に加え、混合液を得た。得られた混合液を55℃で4時間撹拌することによって各モノマーを共重合させ、側鎖結晶性ポリマーを得た。得られた側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量および融点を表2に示す。なお、重量平均分子量は、GPCで測定して得られた測定値をポリスチレン換算した値である。融点は、DSCを用いて10℃/分の測定条件で測定した値である。
【0075】
【表2】
【0076】
[実施例1-1~5、2~10および比較例1~4]
<感温性粘着テープの作製>
まず、合成例A~Eで得られた各側鎖結晶性ポリマーを表3に示す組み合わせで使用するとともに、架橋剤を表3に示す割合で添加し、合成例1-1~5、2~7で得られた各添加剤を表3に示す組み合わせおよび割合で添加し、感温性粘着剤を得た。なお、表3に示す架橋剤および添加剤の添加量は、固形分換算で側鎖結晶性ポリマー100重量部に対する値である。
【0077】
添加した架橋剤は、以下のとおりである。
実施例1-1~5、2~10:金属キレート化合物である川研ファインケミカル社製のアルミニウムトリスアセチルアセトナート
比較例1~4:日本触媒社製のアジリジン化合物「ケミタイトPZ-33」
【0078】
次に、得られた感温性粘着剤を酢酸エチルによって固形分濃度が30重量%となるように調整し、塗布液を得た。得られた塗布液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートからなるフィルム状の基材の片面に塗布した。そして、100℃×10分の条件で架橋反応を行い、基材の片面に厚さ30μmの粘着剤層が積層されている感温性粘着テープを得た。
【0079】
<評価>
実施例1-1~5、2~10および比較例1~4で得られた各感温性粘着テープについて、180°剥離強度および80℃における貯蔵弾性率G’を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表3に示す。
【0080】
(180°剥離強度)
得られた感温性粘着テープについて、80℃および23℃の各雰囲気温度におけるステンレス鋼(SUS)またはポリエチレンテレフタレート(PET)に対する180°剥離強度を測定した。また、150℃を経た後の23℃の雰囲気温度におけるSUSに対する180°剥離強度を測定した。180°剥離強度は、JIS Z0237に準拠して測定した。具体的には、以下の条件で感温性粘着テープをSUSまたはPETに貼着した後、ロードセルを用いて300mm/分の速度で180°剥離した。
【0081】
[80℃]
80℃の雰囲気温度で感温性粘着テープをSUSまたはPETに貼着して20分間静置した後、180°剥離した。
【0082】
[23℃]
80℃の雰囲気温度で感温性粘着テープをSUSまたはPETに貼着し、この雰囲気温度で20分間静置した後、雰囲気温度を23℃に下げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、180°剥離した。
【0083】
[150℃を経た後の23℃]
80℃の雰囲気温度で感温性粘着テープをSUSに貼着し、雰囲気温度を150℃に上げ、この雰囲気温度で60分間静置した後、雰囲気温度を23℃に下げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、180°剥離した。結果は、表3中の「150℃→23℃」の欄に示した。
【0084】
なお、SUSは、板状のSUS304を使用した。PETは、厚さ25μmのフィルム状であって、未処理のものを使用した。SUSまたはPETに対する感温性粘着テープの貼着は、感温性粘着テープの上で2kgのローラーを5往復させることによって行った。
【0085】
(80℃における貯蔵弾性率G’)
80℃における貯蔵弾性率G’は、サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)社製の動的粘弾性測定装置「HAAKE MARSIII」を使用して、1Hz、5℃/分、0~200℃の昇温過程で測定した。
【0086】
【表3】
【0087】
表3から明らかなように、実施例1-1~5、2~10は、SUSおよびPETのいずれに対しても、80℃における180°剥離強度の値(固定性)が高く、23℃における180°剥離強度の値(剥離性)が低い。また、実施例1-1~5、2~10は、80℃における貯蔵弾性率G’の値も高く、高粘着力と高弾性とを両立できていることがわかる。さらに、実施例1-1~5、2~10は、150℃を経た後の23℃における180°剥離強度の値も低いことから、高温に曝されても易剥離性を維持できていることがわかる。