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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】真空遮断器の操作機構
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/42 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
H01H33/42 E
H01H33/42 Q
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019199543
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072233
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】太刀川 祐生
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-049069(JP,A)
【文献】実開昭54-019968(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入・開放指令に応じて、真空バルブの固定電極と可動電極を閉・開極する真空遮断器の操作機構において、前記可動電極を絶縁ロッドや圧接ばねを介して閉・開極操作する開閉軸レバーと、該開閉軸レバーを回転させる開閉軸を一端に固定し、他端にラッチローラを回転自在に枢着するローラシャフトを取り付けたラッチレバーと、前記ラッチローラを係合して、前記ラッチレバーを前記閉極位置に鎖錠保持するラッチ機構部を備え、前記ラッチローラとラッチレバー間に、当該ラッチローラの円滑な回転を維持するウェーブワッシャーを介在して構成したことを特徴とする真空遮断器の操作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷電流、或いは、異常発生時の事故電流を遮断する真空遮断器の操作機構において、特に、可動電極を閉極位置で鎖錠保持するラッチ機構部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1に示すように、短絡事故や地絡事故などの際に発生する異常電流を遮断して、電力系統を保護する真空バルブを採用した遮断器(真空遮断器)は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】[2019年11月1日検索]インターネット<URL:http://www.aichidenki.jp/products/control/09/ctrl-09-001.html>
【0004】
前記真空遮断器は配電用変電所に設置されるキュービクル内に収納されるものであり、図5に示すように、真空バルブを収容して、後部に一対の主回路導体1a,1bを備えた主回路部2と、図示しない過電流継電器などと連系して、自動的に前記真空バルブによる導通状態を遮断する操作機構を構成するラッチ機構部を収容した操作部3から概略構成されている。
【0005】
前記操作機構を構成するラッチ機構部Bの構造を図6に示す。図6において、4は開閉軸であり、5は開閉軸4の回転とともに回動するラッチレバーである。6はラッチレバー5の先端部に固定したローラシャフト7を中心に、ベアリング8によって回転自在に取り付けたラッチローラである。
【0006】
9はラッチローラ6の上部に載置することでラッチレバー5を保持するラッチを示しており、その下部にはラッチ9を回転軸10周りに回転可能とするラッチ部ベアリング11が取り付けられている。
【0007】
12は一端をラッチ9に固定し、他端に復帰スプリング13を係止めたトリップレバーであり、復帰スプリング13の他端は、取付板14の端部上の係止部15に係止されている。
【0008】
16は通電によって可動ピン17を延出させることで、トリップレバー12を押動するトリップコイルである。
【0009】
以上のように構成したラッチ機構部Bは、図6に示す状態で、図5に示す主回路部2内に収容した真空バルブを投入した状態にある。この状態から、図示しない過電流継電器が電流を検知することでトリップコイル16に電流が流れると、トリップコイル16の可動ピン17が図6の左方へ延出し、トリップレバー12を復帰スプリング13の引っ張り力に抗して図7に示すように押動する。
【0010】
この結果、ラッチ9もトリップレバー12とともに、回転軸10を中心に反時計方向に回動し、ラッチ9上に保持されていたラッチローラ6が、ベアリング8を回転させながら、図7に示すようにラッチ9上から外れ落ち、図8の状態に至る。
【0011】
ラッチ9の落下動作はラッチレバー5を介して開閉軸4を回転させ、この開閉軸4の回転が図5に示す主回路部2に伝達され、主回路部2内の真空バルブを開放する。
【0012】
真空バルブを開放した後は、トリップコイル16通電を解除し、可動ピン17を図9に示す位置まで後退させる。これにより、トリップレバー12は復帰スプリング13の引っ張り力によって引き戻される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図10は前述したラッチローラ6がラッチ9上に保持された状態を図6の左側からみた側面図であり、図11は、図10に示すラッチローラ6を拡大して示す要部拡大図である。なお、図10図11ではトリップレバー12の作図は省略している。
【0014】
図10図11に示すように、ラッチローラ6は一対のラッチレバー5間に、位置決めのカラー18を介して、ラッチレバー5に固定されたローラシャフト7周りに回転自在に枢着されている。
【0015】
そして、前述したとおり、ラッチローラ6は真空バルブの投入と開放間の切り換えに伴い、ラッチ9外縁を回転しながら移動する。
【0016】
このとき、ローラシャフト7はラッチローラ6を回転自在に支持しているだけであるとはいえ、基本的にはローラシャフト7の軸方向に荷重が加わらないため、軸方向に移動することはないが、ラッチローラ6がラッチ9上に載った際に何らかの荷重が加わることで軸方向に移動し、両側に配置したカラー18と接触してしまうことがあった。
【0017】
この結果、ラッチローラ6を構成するベアリング8の回転性能が低下し、図6乃至図9に示すラッチ機構部Bの円滑な動作を阻害する原因となっていた。
【0018】
本発明は、前述した問題を解決するものであり、ラッチ機構部Bの動作を円滑にし、真空バルブの投入/開放動作をスムーズに行うことのできる真空遮断器の操作機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の発明は、投入・開放指令に応じて、真空バルブの固定電極と可動電極を閉・開極する真空遮断器の操作機構において、前記可動電極を絶縁ロッドや圧接ばねを介して閉・開極操作する開閉軸レバーと、該開閉軸レバーを回転させる開閉軸を一端に固定し、他端にラッチローラを回転自在に枢着する回転軸を取り付けたラッチレバーと、前記ラッチローラを係合して、前記ラッチレバーを前記閉極位置に鎖錠保持するラッチ機構部を備え、前記ラッチローラとラッチレバー間に、当該ラッチローラの円滑な回転を維持するウェーブワッシャーを介在して構成したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、ラッチローラを常にローラシャフト上のラッチレバー間の中心位置に配置することができるので、ラッチローラがラッチレバーと接触するなどして、ラッチローラを構成するベアリングの回転性能を損なうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の真空遮断器の内部構造を示す正面縦断面図である。
図2】本発明の真空遮断器を構成する真空バルブを投入した状態を示す正面縦断面図である。
図3】本発明の真空遮断器のラッチ機構部を構成するラッチとラッチローラの位置関係を示す側面図である。
図4】本発明の真空遮断器のラッチ機構部を構成するラッチを拡大して示す要部拡大側面図である。
図5】従来の真空遮断器の構成を示す正面図である。
図6】前記真空遮断器を構成するラッチ機構部における、真空バルブの閉極状態を示す説明図である。
図7】前記真空遮断器を構成するラッチ機構部における、真空バルブを閉極から開極へ切り換える動作を介した状態を示す動作説明図である。
図8】前記真空遮断器を構成するラッチ機構部における、真空バルブの閉極状態から開極状態への移行過程時を示す動作説明図である。
図9】前記真空遮断器を構成するラッチ機構部における、真空バルブの開極状態を示す説明図である。
図10】従来の真空遮断器のラッチ機構部を構成するラッチとラッチローラの位置関係を示す側面図である。
図11】従来の真空遮断器のラッチ機構部を構成するラッチを拡大して示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図4により説明する。なお、図1乃至図4において、図5乃至図11でせつめいした部品と同一部品は同一符号を付して説明する。本発明の真空遮断器Aは、図1に示すように、後部に一対の主回路導体1a,1bを備えた主回路部2と、図示しない過電流継電器などと連系して、自動的に真空バルブ19の導通状態を遮断する操作部3から概略構成されている。
【0023】
操作部3には図6乃至図9にて説明したラッチ機構部Bが収容されるとともに、ラッチ機構部Bの開閉軸4の回転によって動作する開閉軸レバー20、開閉軸レバー20の動作によって動作する操作ロッド21、圧接ばね22、操作レバー23、および、通電によって開閉軸レバー20を図1に示す上方へ押し上げて、開閉軸レバー20を開閉軸4周りに回転させるストロークピン25を備えた投入コイル26が収容されている。
【0024】
また、主回路部2と操作部3間には、前記操作レバー23と真空バルブ19の可動電極(図示せず)を連結する絶縁ロッド24が取り付けられており、操作部3の動力によって、真空バルブ19の可動電極を固定電極(図示せず)に接離させて、真空バルブ19を投入/開放操作する。
【0025】
操作部3に収容したラッチ機構部Bの動作は図6乃至図9で説明したとおりであり、図6に示す真空バルブ19の投入状態において、電力系統に異常が発生するなどして、過電流継電器が異常電流を検知すると、トリップコイル16が起動してトリップレバー12を押動する。
【0026】
これにより、トリップレバー12に固定されたラッチ9がラッチ部ベアリング11の回転によって回転軸10を中心に回転し、ラッチローラ6をラッチ9上から落下させる。これにより、ラッチレバー5が開閉軸4を図7の反時計方向に回転させる。
【0027】
開閉軸4が反時計方向に回転すると、図1に示すように、開閉軸4に固定された開閉軸レバー20も時計方向に回転し、操作ロッド21を引き下げる。この結果、操作レバー23の左端は圧接ばね22の引っ張り力によって押し下げられ、操作レバー23を支軸27周りに反時計方向に回転させる。
【0028】
すると、操作レバー23の右端は上方へ押し上げられるため、絶縁ロッド24を介して真空バルブ19の図示しない可動電極が引き上げられる結果、可動電極と固定電極の接触状態が解消(開極)され、真空バルブ19が開放される。真空バルブ19の開放は故障系統の切り離しなどに利用される。
【0029】
また、真空バルブ19を再び投入する場合は、図2に示すように、投入コイル26に通電することにより、ストロークピン25を上方へ延出させ、開閉軸レバー20を開閉軸4周りに時計方向に回転させる。
【0030】
これにより、操作ロッド21は上方へ押し上げられ、操作レバー23を、支軸27を中心に時計方向に回転させる。操作レバー23の回転によって、その右端に連結した絶縁ロッド24を介して、真空バルブ19の図示しない可動電極を押し下げ、固定電極と接触(閉極)させる。固定電極と可動電極の接触圧力を上げるため、さらに操作ロッド21が上昇し、圧接ばね22を圧縮する。
【0031】
前述した真空バルブ19の開極状態におけるラッチ機構部Bは、図9に示すようにラッチローラ6がラッチ9から外れ落ちた状態にある。そして、前述したとおり、図2に示す投入コイル26のストロークピン25によって開閉軸レバー20が時計方向に回転すると、これに固定された開閉軸4も時計方向に回転し、図9に示すラッチレバー5を時計方向に回転させる。
【0032】
これにより、ラッチローラ6がラッチ9の側面に接触し、ベアリング8を回転させながら上方へ移動する。このとき、ラッチ9はラッチローラ6に押されることで、トリップレバー12を介して、復帰スプリング13の引っ張り力に抗して、回転軸10を中心に反時計方向に回転する。
【0033】
そして、ラッチローラ6がラッチ9の上部に到達すると、ラッチローラ6によるラッチ9の押動力が解消され、ラッチローラ6はラッチ9上に保持されるとともに、ラッチ9はトリップレバー12を介して、復帰スプリング13の引っ張り力によって、回転軸10周りを時計方向に回転して、図6に示す状態へと移行する。図6に示す様態において、図2に示す真空バルブ19は投入状態にある。
【0034】
上述した真空バルブ19の投入/開放状態への移行過程において、ラッチローラ6はラッチ9外縁を、ベアリング8を回転させながら上下に移動するが、ラッチローラ6がラッチ9の側面に接触し、ベアリング8を回転させながら上方へ移動する過程においては、ローラシャフト7の軸方向への荷重が加わらないが、ラッチローラ6がラッチ9の上部へ載置される際にローラシャフト7の軸方向の何れかに一方に寄り、従来技術で説明した如く、ベアリング8の回転性能を低下させることが懸念される。
【0035】
図3図4は当該問題の発生を防止するための構造である。図3はラッチ機構部Bのラッチローラ6がラッチ9上に保持された状態を図6の左側からみた側面図、図4は、図3に示すラッチローラ6を拡大して示す要部拡大図である。なお、図3図4においてもトリップレバー12の作図を省略している点は、図10図11と同様である。
【0036】
図3図4に示すように、ラッチローラ6は一対のラッチレバー5間のローラシャフト7に回転自在に取り付けられている。そして、ラッチローラ6とラッチレバー5間には波型のワッシャー(ウェーブワッシャー)28が挿入されている。
【0037】
前述したとおり、真空バルブ19を開放状態から投入状態へ切り換える場合、ラッチローラ6は図9に示す位置からラッチ9の側面を、ベアリング8を回転させながら移動するが、このとき、通常、ローラシャフト7の軸方向には荷重は加わらない。
【0038】
しかし、ラッチローラ6が図3図4に示すように、ラッチ9上に載置される際、何らかの荷重がローラシャフト7の軸方向に加わり、ラッチローラ6がローラシャフト7の軸方向に移動することがある。
【0039】
このとき、ローラシャフト6とラッチレバー5の間には、それぞれウェーブワッシャー28が介在しているので、ラッチローラ6がローラシャフト7の軸方向に移動しようとしても、ウェーブワッシャー28の弾性力により押し戻され、ラッチローラ6は常にラッチレバー5の中央位置に保持される。
【0040】
その結果、ラッチローラ6がラッチレバー5と接触することはなく、ラッチローラ6を構成するベアリング8(図7参照)の回転性能が低下することを各自に阻止することができるので、ラッチ機構部Bの円滑な動作が保証される。
【0041】
そのため、ラッチローラ6が左右のラッチレバー5に接触して、ベアリング8の回転性能を損なうことはなく、スムーズに真空バルブ19の投入/開放の切り換えを実現することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明の真空遮断器の操作機構は、ラッチ機構部Bの円滑な動作を保証できるので、真空バルブの投入/開放の切り換え動作をスムーズに実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明はラッチローラを備えたラッチ機構部に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1a,1b 主回路導体
2 主回路部
3 操作部
4 開閉軸
5 ラッチレバー
6 ラッチローラ
7 ローラシャフト
8 ベアリング
9 ラッチ
10 回転軸
11 ラッチ部ベアリング
12 トリップレバー
13 復帰スプリング
14 取付板
15 係止部
16 トリップコイル
17 可動ピン
18 カラー
19 真空バルブ
20 開閉軸レバー
21 操作ロッド
22 圧接ばね
23 操作レバー
24 絶縁ロッド
25 ストロークピン
26 投入コイル
27 支軸
28 ウェーブワッシャー
A,A´ 真空遮断器
B ラッチ機構部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11