(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】膜厚測定装置および膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
G01B11/06 G
(21)【出願番号】P 2019203869
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】川口 史朗
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一八
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-220359(JP,A)
【文献】特開2001-296108(JP,A)
【文献】特開2002-277218(JP,A)
【文献】特開2006-030070(JP,A)
【文献】特開平09-033222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚測定装置であって、
光源からの光を測定対象物へ照射するための測定用光経路と、
前記光源からの光をリファレンス用部材へ照射するための補正用光経路と、
前記測定対象物からの反射光および前記リファレンス用部材からの反射光を選択的に分光器へ導く光切替部とを備
え、
前記測定用光経路、前記補正用光経路および前記光切替部は、筐体の内部に設けられており、
前記分光器および前記光源の少なくともいずれか一方は前記筐体の外部に設けられており、
前記膜厚測定装置は、さらに、
前記筐体の外部に設けられた前記光源からの光を前記筐体へ導く投光ファイバ、ならびに前記筐体の外部に配置された前記測定対象物からの反射光および前記リファレンス用部材からの反射光のうち前記光切替部によって導かれた反射光を前記筐体の外部に設けられた前記分光器へ導く受光ファイバの少なくともいずれか一方を備え、
前記筐体は、前記光源および前記分光器の配置が固定された状態において、所定範囲内で移動可能である、膜厚測定装置。
【請求項2】
光源からの光を測定対象物へ照射するための測定用光経路と、前記光源からの光をリファレンス用部材へ照射するための補正用光経路とを備える膜厚測定装置を用いた膜厚測定方法であって、
前記測定用光経路を介して前記測定対象物へ照射される光の反射光を分光器へ選択的に導くことにより前記測定対象物の反射光のスペクトルを生成するステップと、
前記補正用光経路を介して前記リファレンス用部材へ照射される光の反射光を前記分光器へ選択的に導くことにより前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップと、
前記測定対象物の反射光のスペクトルおよび前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルに基づいて、前記測定対象物の厚みを算出するステップとを含
み、
前記測定用光経路および前記補正用光経路は、筐体の内部に設けられており、
前記分光器および前記光源の少なくともいずれか一方は前記筐体の外部に設けられており、
前記膜厚測定方法は、
前記測定対象物の反射光のスペクトルを生成するステップと、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップとを含み、前記測定対象物における第1の測定位置へ光を照射することにより前記第1の測定位置における前記測定対象物の厚みを算出するステップと、
前記測定対象物の反射光のスペクトルを生成するステップと、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップとを含み、前記測定対象物における前記第1の測定位置とは異なる位置である第2の測定位置へ光を照射することにより前記第2の測定位置における前記測定対象物の厚みを算出するステップとを含む、膜厚測定方法。
【請求項3】
前記リファレンス用部材の反射光のスペクトル
である第1のリファレンススペクトルを生成するステップを定期的または不定期に行い
、
前記測定対象物の厚みを算出するステップにおいては、前記測定対象物の反射光のスペクトルを、前記測定対象物の反射光のスペクトルの生成タイミング
との時間差が所定の露光時間である生成タイミングにおいて生成した前記第1のリファレンススペクトルで除することにより前記測定対象物の反射率スペクトルを算出し、算出した前記反射率スペクトルに基づいて、前記測定対象物の厚みを算出する、請求項
2に記載の膜厚測定方法。
【請求項4】
前記リファレンス用部材の反射光のスペクトル
である第1のリファレンススペクトルを生成するステップを定期的または不定期に行い
、
前記膜厚測定方法は、さらに、
試料台に反射板が配置された状態において、前記測定用光経路を介して前記反射板へ照射される光の反射光を
前記分光器へ選択的に導くことにより前記反射板の反射光のスペクトルを生成するとともに、前記補正用光経路を介して前記リファレンス用部材へ照射される光の反射光を前記分光器へ選択的に導くことにより前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルである第2のリファレンススペクトルを生成するステップを含み、
前記試料台に前記測定対象物が配置された状態において、前記測定対象物の反射光のスペクトルを生成するステップおよび前記第1のリファレンススペクトルを生成するステップを行い、
前記測定対象物の厚みを算出するステップにおいては、
前記測定対象物の反射光のスペクトルの生成タイミングとの時間差が各前記状態の時間差より小さい生成タイミングにおいて生成した前記第1のリファレンススペクトルと、前記反射板の反射光のスペクトルとの積を、前記第2のリファレンススペクトルで除することにより仮想基準スペクトルを算出し、前記測定対象物の反射光のスペクトルを前記仮想基準スペクトルで除することにより前記測定対象物の反射率スペクトルを算出し、算出した前記反射率スペクトルに基づいて、前記測定対象物の厚みを算出する、請求項
2に記載の膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚測定装置および膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物およびリファレンス部材へ光を照射し、測定対象物からの反射光およびリファレンス部材からの反射光に基づいて、測定対象物の膜厚を測定する技術が知られている。しかしながら、測定対象物およびリファレンス部材への照射光、ならびに測定対象物からの反射光およびリファレンス部材からの反射光は、光源の経時変化および環境の経時変化により時間的に変動する。この変動により、正確な反射率が求められないという課題がある。このような課題を解決するために、例えば特許文献1(特開2002-48730号公報)および特許文献2(特開2002-39955号公報)のような技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、以下のような光学自動測定方法が開示されている。すなわち、光学自動測定方法は、投光部、受光部を互いに近接して設け、投光部から投光された光をサンプルに当て、返ってくる光を測定する光学自動測定方法において、サンプルと、投光部及び受光部との間に、投光部から投光された光を一部反射し受光部に入射させるための透明又は半透明の部材を固定し、リファレンスのないときの測定光量と、リファレンスを置いたときの測定光量とに基づいて、前記部材からの反射光量とリファレンスからの測定光量との比を求め、サンプルの測定期間中に、サンプルのないときの測定光量と前記比とを用いて、リファレンスを置いたときの測定光量を推定し、これを用いて、サンプルの測定光量の補正を行う方法である。
【0004】
また、特許文献2には、以下のような光学自動測定方法が開示されている。すなわち、光学自動測定方法は、投光部から投光された光をサンプルに当て、受光部に返ってくる光を測定する光学自動測定方法において、サンプル設置台と、投光部及び受光部との間に、可動反射部材を移動可能に設置し、可動反射部材の、サンプル設置台と反対の側に固定反射部材を設置し、可動反射部材を光軸下に移動させた状態で、投光部から投光された光を可動反射部材、固定反射部材、可動反射部材を介して受光部によって受光し、可動反射部材を光軸から外した状態で、サンプル設置台にリファレンスを設置して投光部から投光された光をリファレンスを介して受光部によって受光し、両光量の比を求め、サンプルの測定期間中に、可動反射部材を光軸下に移動させた状態で、投光部から投光された光を可動反射部材、固定反射部材、可動反射部材を介して受光部によって受光して、この受光光量と前記比とを用いて、リファレンスを置いたときの測定光量を推定し、これを用いて、サンプルの受光光量の補正を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-48730号公報
【文献】特開2002-39955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1および特許文献2の技術では、たとえば、測定対象物の設置台を移動する工程によってタクトタイムが増加し、また、測定対象物の上方における可動式ミラーの操作による測定対象物へのコンタミネーション等の問題が発生する場合がある。そこで、特許文献1および特許文献2の技術を超えて、膜厚測定を行うことによる測定対象物へのコンタミネーションの発生を抑制しつつ、より短時間での膜厚測定を可能とする技術が望まれる。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、膜厚測定を行うことによる測定対象物へのコンタミネーションの発生を抑制しつつ、より短時間での膜厚測定を行うことが可能な膜厚測定装置および膜厚測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる膜厚測定装置は、光源からの光を測定対象物へ照射するための測定用光経路と、前記光源からの光をリファレンス用部材へ照射するための補正用光経路と、前記測定対象物からの反射光および前記リファレンス用部材からの反射光を選択的に分光器へ導く光切替部とを備える。
【0009】
このように、測定用光経路および補正用光経路を備え、かつ、測定対象物からの反射光およびリファレンス用部材からの反射光を選択的に分光器へ導く光切替部を備える構成により、たとえば、試料台に配置した測定対象物からの反射光の受光スペクトルを生成する前に、測定対象物の代わりに試料台に反射板等のリファレンス用部材を配置することなく、リファレンス用部材からの反射光の受光スペクトルを生成することができる。これにより、たとえば、測定用光経路を用いた試料台上の反射板への光照射により予め生成した受光スペクトルと、補正用光経路を用いたリファレンス用部材への光照射により予め生成した受光スペクトルと、測定用光経路を用いた試料台上の測定対象物へのある時刻における光照射の直後に、補正用光経路を用いたリファレンス用部材への光照射により生成した受光スペクトルとを用いて、当該時刻において試料台に測定対象物に代えて反射板が配置されていると仮定した場合に生成される受光スペクトルを推定し、推定した受光スペクトルに基づいて、測定対象物の反射率スペクトルを算出することができる。したがって、膜厚測定を行うことによる測定対象物へのコンタミネーションの発生を抑制しつつ、より短時間での膜厚測定を行うことができる。
【0010】
(2)好ましくは、前記測定用光経路、前記補正用光経路および前記光切替部は、筐体の内部に設けられており、前記膜厚測定装置は、さらに、前記筐体の外部に設けられた前記光源からの光を前記筐体へ導く投光ファイバ、ならびに前記測定対象物からの反射光および前記リファレンス用部材からの反射光のうち前記光切替部によって導かれた反射光を前記筐体の外部に設けられた前記分光器へ導く受光ファイバの少なくともいずれか一方を備える。
【0011】
このような構成により、筐体を容易に移動して複数の位置において膜厚測定を行うことが可能な構成において、膜厚測定を行うことによる測定対象物へのコンタミネーションの発生を抑制しつつ、より短時間で当該複数の位置における測定対象物の膜厚を測定することができる。
【0012】
(3)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる膜厚測定方法は、光源からの光を測定対象物へ照射するための測定用光経路と、前記光源からの光をリファレンス用部材へ照射するための補正用光経路とを備える膜厚測定装置を用いた膜厚測定方法であって、前記測定用光経路を介して前記測定対象物へ照射される光の反射光を分光器へ選択的に導くことにより前記測定対象物の反射光のスペクトルを生成するステップと、前記補正用光経路を介して前記リファレンス用部材へ照射される光の反射光を前記分光器へ選択的に導くことにより前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップと、前記測定対象物の反射光のスペクトルおよび前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルに基づいて、前記測定対象物の厚みを算出するステップとを含む。
【0013】
このように、測定用光経路および補正用光経路を備える膜厚測定装置を用いて、測定対象物からの反射光およびリファレンス用部材からの反射光を選択的に分光器へ導いて各反射光のスペクトルを生成する方法により、たとえば、試料台に配置した測定対象物からの反射光の受光スペクトルを生成する前に、測定対象物の代わりに試料台に反射板等のリファレンス用部材を配置することなく、リファレンス用部材からの反射光の受光スペクトルを生成することができる。これにより、たとえば、測定用光経路を用いた試料台上の反射板への光照射により予め生成した受光スペクトルと、補正用光経路を用いたリファレンス用部材への光照射により予め生成した受光スペクトルと、測定用光経路を用いた試料台上の測定対象物へのある時刻における光照射の直後に、補正用光経路を用いたリファレンス用部材への光照射により生成した受光スペクトルとを用いて、当該時刻において試料台に測定対象物に代えて反射板が配置されていると仮定した場合に生成される受光スペクトルを推定し、推定した受光スペクトルに基づいて、測定対象物の反射率スペクトルを算出することができる。したがって、膜厚測定を行うことによる測定対象物へのコンタミネーションの発生を抑制しつつ、より短時間での膜厚測定を行うことができる。
【0014】
(4)好ましくは、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップを定期的または不定期に行い、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップにおいては、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルである第1のリファレンススペクトルを生成し、前記測定対象物の厚みを算出するステップにおいては、前記測定対象物の反射光のスペクトルを、前記測定対象物の反射光のスペクトルの生成タイミングの直前または直後の生成タイミングにおいて生成した前記第1のリファレンススペクトルで除することにより前記測定対象物の反射率スペクトルを算出し、算出した前記反射率スペクトルに基づいて、前記測定対象物の厚みを算出する。
【0015】
このような方法により、簡易な測定方法でより正確に測定対象物の膜厚を測定することができる。
【0016】
(5)好ましくは、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップを定期的または不定期に行い、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップにおいては、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルである第1のリファレンススペクトルを生成し、前記膜厚測定方法は、さらに、試料台に反射板が配置された状態において、前記測定用光経路を介して前記反射板へ照射される光の反射光を分光器へ選択的に導くことにより前記反射板の反射光のスペクトルを生成するとともに、前記補正用光経路を介して前記リファレンス用部材へ照射される光の反射光を前記分光器へ選択的に導くことにより前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルである第2のリファレンススペクトルを生成するステップを含み、前記測定対象物の厚みを算出するステップにおいては、前記反射板の反射光のスペクトルと、前記測定対象物の反射光のスペクトルの生成タイミングの直前または直後の生成タイミングにおいて生成した前記第1のリファレンススペクトルとの積を前記第2のリファレンススペクトルで除することにより仮想基準スペクトルを算出し、前記測定対象物の反射光のスペクトルを前記仮想基準スペクトルで除することにより前記測定対象物の反射率スペクトルを算出し、算出した前記反射率スペクトルに基づいて、前記測定対象物の厚みを算出する。
【0017】
このような方法により、測定対象物の反射光のスペクトルを生成すべきタイミングにおいて試料台に測定対象物が配置されていない場合に生成される仮想基準スペクトルをより正確に推定し、推定した仮想基準スペクトルを用いて、より正確に反射率スペクトルを算出することができる。
【0018】
(6)好ましくは、前記測定用光経路および前記補正用光経路は、筐体の内部に設けられており、前記分光器および前記光源の少なくともいずれか一方は前記筐体の外部に設けられており、前記膜厚測定方法は、前記測定対象物の反射光のスペクトルを生成するステップと、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップとを含み、前記測定対象物における第1の測定位置へ光を照射することにより前記第1の測定位置における前記測定対象物の厚みを算出するステップと、前記測定対象物の反射光のスペクトルを生成するステップと、前記リファレンス用部材の反射光のスペクトルを生成するステップとを含み、前記測定対象物における前記第1の測定位置とは異なる位置である第2の測定位置へ光を照射することにより前記第2の測定位置における前記測定対象物の厚みを算出するステップとを含む。
【0019】
このような方法により、筐体を容易に移動して複数の位置において膜厚測定を行うことが可能な膜厚測定装置を用いて、膜厚測定を行うことによる測定対象物へのコンタミネーションの発生を抑制しつつ、より短時間で当該複数の位置における測定対象物の膜厚を測定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、膜厚測定を行うことによる測定対象物へのコンタミネーションの発生を抑制しつつ、より短時間での膜厚測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置においてシャッタが補正用光経路に配置された状態を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置においてシャッタが測定用光経路に配置された状態を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置における処理装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置により生成される、測定対象物の反射率スペクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置により生成される、測定対象物の反射率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置により算出される、測定対象物の膜厚の測定値の経時変化を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の構成の他の例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の使用例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置において測定対象物の膜厚を測定する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
[膜厚測定装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の構成の一例を示す図である。
【0024】
図1を参照して、膜厚測定装置100は、測定用光経路21と、補正用光経路22と、光切替部30とを備える。
【0025】
たとえば、膜厚測定装置100は、さらに、ビームスプリッタ40と、集光レンズ41と、リファレンス用部材50と、光源60と、分光器70と、処理装置80と、試料台90とを備える。
【0026】
試料台90には、対象物Pが配置される。より詳細には、試料台90には、対象物Pとして、測定対象物Sまたは反射板Rが配置される。反射板Rは、たとえば、アルミミラー、ガラス板またはSi板である。膜厚測定装置100は、試料台90に配置された測定対象物Sへ照射される光の反射光に基づいて、測定対象物Sの膜厚を測定する装置である。
【0027】
ビームスプリッタ40は、光源60から出力される光の一部を反射するとともに、他の一部を透過する。ビームスプリッタ40において反射された光は、試料台90に配置された対象物Pへ照射される。ビームスプリッタ40を透過した光は、リファレンス用部材50へ照射される。
【0028】
集光レンズ41は、ビームスプリッタ40によって反射された光を集光して、試料台90に配置された対象物Pへ照射する。
【0029】
リファレンス用部材50は、たとえば、凹面形状を有するアルミミラーである。なお、リファレンス用部材50は、ガラス板またはSi板であってもよい。
【0030】
[測定用光経路]
測定用光経路21は、光源60からの光を測定対象物S等の対象物Pへ照射するための光路である。
【0031】
より詳細には、測定用光経路21は、光源60から対象物Pへの光路である。測定用光経路21は、光源60からビームスプリッタ40までの光路と、ビームスプリッタ40から対象物Pまでの光路とを含む。
【0032】
[補正用光経路]
補正用光経路22は、光源60からの光をリファレンス用部材へ照射するための光路である。
【0033】
より詳細には、補正用光経路22は、光源60からリファレンス用部材50への光路である。補正用光経路22は、光源60からビームスプリッタ40までの光路と、ビームスプリッタ40からリファレンス用部材50までの光路とを含む。
【0034】
[光源]
光源60は、測定対象物Sの膜厚の測定に用いる光を測定用光経路21および補正用光経路22へ出力する。
【0035】
たとえば、光源60は、照明装置61と、集光レンズ62と、アパーチャ63とを含む。
【0036】
照明装置61は、複数波長を含む光を出射する。照明装置61が出射する光のスペクトルは、連続スペクトルであってもよいし、線スペクトルであってもよい。照明装置61が出射する光の波長は、測定対象物Sから取得すべき波長情報の範囲等に応じて設定される。照明装置61は、たとえばハロゲンランプである。
【0037】
集光レンズ62は、照明装置61から出射される光を集光してアパーチャ63へ出力する。
【0038】
アパーチャ63は、自己へ入射した光のビーム断面を所定形状に整形して測定用光経路21および補正用光経路22へ導く。
【0039】
[分光器]
分光器70は、測定用光経路21を介して対象物Pへ照射される光の反射光、および補正用光経路22を介してリファレンス用部材50へ照射される光の反射光を受光する。
【0040】
より詳細には、対象物Pからの反射光は、集光レンズ41およびビームスプリッタ40を介して分光器70へ入射する。また、リファレンス用部材50からの反射光は、ビームスプリッタ40によって反射されて分光器70へ入射する。
【0041】
たとえば、分光器70は、アパーチャ71と、回折格子72と、撮像部73とを含む。
【0042】
アパーチャ71は、対象物Pからの反射光およびリファレンス用部材50からの反射光のビーム断面を所定形状に整形して回折格子72へ導く。
【0043】
回折格子72は、アパーチャ71を介して自己へ入射する光、すなわち対象物Pからの反射光およびリファレンス用部材からの反射光を分光して撮像部73へ出力する。
【0044】
たとえば、撮像部73は、直線状に配列された複数の撮像素子により構成されるリニアイメージセンサである。このような撮像素子は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。撮像部73における各撮像素子は、回折格子72によって分光された光を受光する。
【0045】
撮像部73は、各撮像素子の受光面において受光した光の強度を示す受光強度情報を処理装置80へ送信する。
【0046】
[光切替部]
光切替部30は、測定対象物S等の対象物Pからの反射光およびリファレンス用部材50からの反射光を選択的に分光器70へ導く。
【0047】
より詳細には、光切替部30は、対象物Pからの反射光が分光器70へ入射する状態と、リファレンス用部材50からの反射光が分光器70へ入射する状態とを切り替える。
【0048】
たとえば、光切替部30は、シャッタ31と、シャッタ制御部32とを含む。シャッタ制御部32は、ケーブル91を介して処理装置80に接続される。
【0049】
シャッタ31は、移動して測定用光経路21または補正用光経路22に配置可能である。具体的には、シャッタ31は、測定用光経路21におけるビームスプリッタ40および集光レンズ41の間、または補正用光経路22におけるビームスプリッタ40およびリファレンス用部材50の間に選択的に配置される。
【0050】
シャッタ31は、測定用光経路21に配置された状態において、測定用光経路21を通る光を遮断する。シャッタ31は、補正用光経路22に配置された状態において、補正用光経路22を通る光を遮断する。
【0051】
シャッタ制御部32は、シャッタ31を制御してシャッタ31の位置を変更する。より詳細には、シャッタ制御部32は、対象物Pからの反射光およびリファレンス用部材50からの反射光のうち分光器70へ導くべき反射光を選択するための制御信号をケーブル91経由で処理装置80から受信し、受信した制御信号に従って、シャッタ31が配置される位置を測定用光経路21と補正用光経路22とで切り替える。
【0052】
図2は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置においてシャッタが補正用光経路に配置された状態を示す図である。
【0053】
図2を参照して、補正用光経路22に配置されたシャッタ31は、光源60から出力される光のうち、ビームスプリッタ40を透過した光を遮断する。すなわち、シャッタ31が補正用光経路22に配置された状態において、光源60から出力される光のうち、ビームスプリッタ40を透過した光は、シャッタ31によって遮断される。
【0054】
一方で、光源60から出力される光のうち、ビームスプリッタ40により反射された光は、集光レンズ41を介して対象物Pへ照射される。
【0055】
対象物Pへの光の照射により対象物Pから生じる反射光は、集光レンズ41およびビームスプリッタ40を介して分光器70へ入射する。
【0056】
図3は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置においてシャッタが測定用光経路に配置された状態を示す図である。
【0057】
図3を参照して、測定用光経路21に配置されたシャッタ31は、光源60から出力される光のうち、ビームスプリッタ40により反射された光を遮断する。すなわち、シャッタ31が測定用光経路21に配置された状態において、光源60から出力される光のうち、ビームスプリッタ40により反射された光は、シャッタ31によって遮断される。
【0058】
一方で、光源60から出力される光のうち、ビームスプリッタ40を透過した光は、リファレンス用部材50へ照射される。
【0059】
リファレンス用部材50への光の照射によりリファレンス用部材50から生じる反射光は、ビームスプリッタ40によって反射されて分光器70へ入射する。
【0060】
図2および
図3を参照して説明したように、光切替部30は、光源60から対象物Pへの光および光源60からリファレンス用部材50への光を選択的に遮断する。具体的には、光切替部30は、シャッタ31が配置される位置を変更することにより、光源60からの光が対象物Pへ照射される状態と、光源60からの光がリファレンス用部材50へ照射される状態とを切り替える。これにより、光切替部30は、対象物Pからの反射光が分光器70へ入射する状態と、リファレンス用部材50からの反射光が分光器70へ入射する状態とを切り替える。
【0061】
[処理装置]
図4は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置における処理装置の構成を示す図である。
【0062】
図4を参照して、処理装置80は、受信部81と、記憶部82と、算出部83と、送信部84とを含む。処理装置80は、分光器70による反射光の計測結果に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出する。
【0063】
算出部83は、光切替部30におけるシャッタ31の配置を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を送信部84へ出力する。
【0064】
送信部84は、算出部83から制御信号を受けると、受けた制御信号を光切替部30におけるシャッタ制御部32へ送信する。
【0065】
受信部81は、分光器70における撮像部73から受光強度情報を受信し、受信した受光強度情報を記憶部82に保存する。
【0066】
算出部83は、記憶部82における受光強度情報に基づいて、時刻tから所定の露光時間Tが経過する時刻(t+T)までの間に分光器70において受光された光の、波長λと強度との関係である受光スペクトルS(λ,t)を生成する。なお、以下では、「時刻tから時刻(t+T)までの間に分光器70において受光された光の受光スペクトルS(λ,t)」を、単に、「時刻tに分光器70において受光された光の受光スペクトルS(λ,t)」または「時刻tにおける受光スペクトルS(λ,t)」とも称する。
【0067】
算出部83は、生成した受光スペクトルS(λ,t)に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出する。
【0068】
より詳細には、算出部83は、試料台90に配置された反射板Rからの反射光に基づく受光スペクトルである基準スペクトルSs(λ,t)、リファレンス用部材50からの反射光に基づく受光スペクトルであるリファレンススペクトルSr(λ,t)、および試料台90に配置された測定対象物Sからの反射光に基づく受光スペクトルである測定スペクトルSm(λ,t)に基づいて、測定対象物Sの反射率スペクトルを算出する。
【0069】
(基準スペクトルの生成)
たとえば、算出部83は、試料台90に反射板Rが配置された状態において、ある時刻ta0に分光器70において受光された反射板Rからの反射光に基づく基準スペクトルSs(λ,ta0)を生成する。さらに、算出部83は、時刻ta0の後の時刻ta1に分光器70において受光されたリファレンス用部材50からの反射光に基づくリファレンススペクトルSr(λ,ta1)を生成する。なお、時刻ta1は、時刻ta0より前の時刻であってもよい。
【0070】
具体的には、算出部83は、送信部84経由で光切替部30へ制御信号を送信し、試料台90に配置された反射板Rからの反射光が分光器70へ入射する状態とすることにより、基準スペクトルSs(λ,ta0)を生成する。
【0071】
その後、算出部83は、送信部84経由で光切替部30へ制御信号を送信し、リファレンス用部材50からの反射光が分光器70へ入射する状態とすることにより、リファレンススペクトルSr(λ,ta1)を生成する。
【0072】
たとえば、算出部83は、基準スペクトルSs(λ,ta0)およびリファレンススペクトルSr(λ,ta1)を略同じタイミングで生成する。
【0073】
より詳細には、時刻ta0と時刻ta1との時間差は、露光時間Tに近いことが好ましい。たとえば、時刻ta0と時刻ta1との時間差は、露光時間Tと等しい。具体的には、たとえば、算出部83は、時刻ta0から露光時間Tが経過した時刻(ta0+T)において、送信部84経由で光切替部30へ制御信号を送信してリファレンス用部材50からの反射光が分光器70へ入射する状態とすることにより、時刻(ta0+T)とほぼ等しい時刻ta1におけるリファレンススペクトルSr(λ,ta1)を生成する。
【0074】
算出部83は、生成した基準スペクトルSs(λ,ta0)およびリファレンススペクトルSr(λ,ta1)を記憶部82に保存する。
【0075】
(測定スペクトルの生成)
その後、算出部83は、試料台90に測定対象物Sが配置された状態において、ある時刻tb0に分光器70において受光された測定対象物Sからの反射光に基づく測定スペクトルSm(λ,tb0)を生成する。さらに、算出部83は、測定スペクトルSm(λ,tb0)を生成するたびに、時刻tb0の後の時刻tb1に分光器70において受光されたリファレンス用部材50からの反射光に基づくリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成する。なお、時刻tb1は、時刻tb0より前の時刻であってもよい。
【0076】
具体的には、算出部83は、送信部84経由で光切替部30へ制御信号を送信し、試料台90に配置された測定対象物Sからの反射光が分光器70へ入射する状態とすることにより、測定スペクトルSm(λ,tb0)を生成する。
【0077】
その後、算出部83は、送信部84経由で光切替部30へ制御信号を送信し、リファレンス用部材50からの反射光が分光器70へ入射する状態とすることにより、リファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成する。
【0078】
たとえば、算出部83は、測定スペクトルSm(λ,tb0)およびリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を略同じタイミングで生成する。
【0079】
より詳細には、時刻tb0と時刻tb1との時間差は、露光時間Tに近いことが好ましい。たとえば、時刻tb0と時刻tb1との時間差は、露光時間Tと等しい。具体的には、たとえば、算出部83は、時刻tb0から露光時間Tが経過した時刻(tb0+T)において、送信部84経由で光切替部30へ制御信号を送信してリファレンス用部材50からの反射光が分光器70へ入射する状態とすることにより、時刻(tb0+T)とほぼ等しい時刻tb1におけるリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成する。
【0080】
(反射率スペクトルの生成)
算出部83は、測定スペクトルSm(λ,tb0)およびリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成すると、記憶部82における基準スペクトルSs(λ,ta0)およびリファレンススペクトルSr(λ,ta1)を生成し、以下の式(1)で表される仮想基準スペクトルSsv(λ,tb0)を算出する。そして、算出部83は、算出した仮想基準スペクトルSsv(λ,tb0)を用いて、以下の式(2)に従って、測定対象物Sの反射率スペクトルSR(λ,tb0)を算出する。
【0081】
【0082】
すなわち、算出部83は、基準スペクトルSs(λ,ta0)と、測定スペクトルSm(λ,tb0)の生成タイミングの直前または直後の生成タイミングにおいて生成したリファレンススペクトルSr(λ,tb1)との積をリファレンススペクトルSr(λ,ta1)で除することにより仮想基準スペクトルSsv(λ,tb0)を算出する。そして、算出部83は、測定スペクトルSm(λ,tb0)を仮想基準スペクトルSsv(λ,tb0)で除することにより測定対象物Sの反射率スペクトルSR(λ,tb0)を算出する。そして、算出部83は、算出した反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づいて、測定対象物Sの厚みを算出する。なお、リファレンススペクトルSr(λ,tb1)の生成タイミングは、たとえば、測定スペクトルSm(λ,tb0)の生成タイミングに最も近い生成タイミングである。
【0083】
なお、算出部83は、分光器70において異なる露光時間Tで生成された各受光強度情報に基づいて、基準スペクトルSs(λ,ta0)、リファレンススペクトルSr(λ,ta1)、測定スペクトルSm(λ,tb0)およびリファレンススペクトルSr(λ,tb1)等の各受光スペクトルを生成する構成であってもよい。この場合、算出部83は、各受光強度情報が示す受光強度の値を、同一の露光時間Tで生成された受光強度の値に換算し、換算後の値を用いて各受光スペクトルを生成する。
【0084】
また、算出部83は、測定スペクトルSm(λ,tb0)を生成するたびにリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。算出部83は、測定スペクトルSm(λ,tb0)の生成タイミングに関わらず、定期的または不定期にリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成する構成であってもよい。
【0085】
図5は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置により生成される、測定対象物の反射率スペクトルを示す図である。
図5において、横軸は波長[nm]であり、縦軸は反射率である。
【0086】
なお、算出部83は、上述の式(2)に従って反射率スペクトルSR(λ,tb0)を算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。算出部83は、以下の式(3)に従って、測定対象物Sの反射率スペクトルSR(λ,tb0)を算出してもよい。
【0087】
【0088】
すなわち、算出部83は、測定スペクトルSm(λ,tb0)をリファレンススペクトルSr(λ,tb1)で除することにより測定対象物Sの反射率スペクトルSR(λ,tb0)を算出する。そして、算出部83は、算出した反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づいて、測定対象物Sの厚みを算出する。
【0089】
(膜厚の算出)
算出部83は、算出した反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出する。
【0090】
たとえば、算出部83は、FFT(Fast Fourier Transform)法に従って反射率スペクトルSR(λ,tb0)を解析することにより、測定対象物Sの膜厚を算出する。
【0091】
より詳細には、算出部83は、反射率スペクトルSR(λ,tb0)をFFT処理することにより、反射率スペクトルSR(λ,tb0)のパワースペクトルを生成する。
【0092】
図6は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置により生成される、測定対象物の反射率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
図6において、横軸は膜厚[μm]であり、縦軸は強度である。
【0093】
図6を参照して、算出部83は、生成したパワースペクトルにおいて強度が最大値となる膜厚を、測定対象物Sの膜厚として特定する。
【0094】
[評価]
膜厚測定装置100では、光源60から出力される光の強度、および分光器70における受光感度は、経時的に変動する場合がある。そこで、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置を用いて測定対象物Sの膜厚を所定の時間間隔で繰り返し測定したときの測定値のばらつきを、以下の手順で評価した。
【0095】
初めに、試料台90Aに反射板Rを配置し、予め基準スペクトルSs(λ,ta0)およびリファレンススペクトルSr(λ,ta1)を生成した。
【0096】
次に、測定対象物Sが配置された試料台90Bを用意し、試料台90Aおよび試料台90Bの位置を入れ替えて、時刻ta0から1時間後の時刻tb0に、測定スペクトルSm(λ,tb0)およびリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成した。また、測定スペクトルSm(λ,tb0)およびリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成した後、できるだけ時間を空けずに、試料台90Aおよび試料台90Bの位置を入れ替えて、時刻tb2における基準スペクトルSs(λ,tb2)を生成した。
【0097】
同様の手順で、測定スペクトルSm(λ,tb0)、リファレンススペクトルSr(λ,tb1)、および基準スペクトルSs(λ,tb2)を、1時間ごとに12回繰り返し生成した。
【0098】
次に、1時間ごとに生成した各スペクトルに基づいて、1時間ごとの反射率スペクトルSR(λ,tb0)を算出し、算出した各反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出した。
【0099】
図7は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置により算出される、測定対象物の膜厚の測定値の経時変化を示す図である。
図7において、横軸は時間[h]であり、縦軸は厚さ[μm]である。
【0100】
図7において、系列L1は、比較例として、予め生成した基準スペクトルSs(λ,ta0)および1時間ごとに生成した測定スペクトルSm(λ,tb0)を用いて、以下の式(4)に従って算出した反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づく、測定対象物Sの膜厚の測定値を示している。
【数4】
【0101】
また、系列L2は、参考例として、1時間ごとに生成した測定スペクトルSm(λ,tb0)および基準スペクトルSs(λ,tb2)を用いて、以下の式(5)に従って算出した反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づく、測定対象物Sの膜厚の測定値を示している。すなわち、参考例は、測定スペクトルSm(λ,tb0)および当該測定スペクトルSm(λ,tb0)と略同一のタイミングで実際に生成した基準スペクトルSs(λ,tb2)を用いて算出される測定値である。
【数5】
【0102】
また、系列L3は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定方法に従って、上述した式(2)に従って算出した1時間ごとの反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づく、測定対象物Sの膜厚の測定値を示している。
【0103】
また、系列L4は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定方法に従って、上述した式(3)に従って算出した1時間ごとの反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づく、測定対象物Sの膜厚の測定値を示している。
【0104】
図7を参照して、比較例の測定値(系列L1)の経時変化の傾向は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定方法に従って算出した膜厚の測定値(系列L3,L4)の時系列変化、および参考例の測定値(系列L2)の経時変化の傾向とは異なっている。
【0105】
より詳細には、本発明の実施の形態に係る膜厚測定方法に従って算出した膜厚の測定値は、実測した基準スペクトルSs(λ,tb2)を用いる膜厚測定方法である参考例の測定値と同程度であり、かつ、比較例の測定値よりも経時変化が小さい。
【0106】
[膜厚測定装置の構成の他の例]
図8は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の構成の他の例を示す図である。
【0107】
図8を参照して、膜厚測定装置101は、光源60と、分光器70と、処理装置80と、試料台90と、プローブ10と、投光ファイバ11と、受光ファイバ12とを備える。
【0108】
測定用光経路21、補正用光経路22、光切替部30、ビームスプリッタ40、集光レンズ41およびリファレンス用部材50は、プローブ10の内部に設けられる。光源60、分光器70および処理装置80は、プローブ10の外部に設けられる。プローブ10は、筐体の一例である。
【0109】
プローブ10は、コネクタ13と、コネクタ14と、コネクタ15と、アパーチャ1と、アパーチャ2とを含む。コネクタ15は、投光ファイバ11を接続可能である。コネクタ14は、受光ファイバ12を接続可能である。コネクタ13は、ケーブル91を接続可能である。
【0110】
測定用光経路21は、アパーチャ1からビームスプリッタ40までの光路と、ビームスプリッタ40から集光レンズ41を経由した対象物Pまでの光路のうちプローブ10内の部分とを含む。補正用光経路22は、アパーチャ1からビームスプリッタ40までの光路と、ビームスプリッタ40からリファレンス用部材50までの光路とを含む。
【0111】
投光ファイバ11は、光源60からの光をプローブ10へ導く。より詳細には、投光ファイバ11の第1の端部におけるコネクタ11Aは、プローブ10におけるコネクタ15に接続される。投光ファイバ11の第2の端部におけるコネクタ11Bは、光源60におけるコネクタ64に接続される。
【0112】
光源60は、測定対象物Sの膜厚の測定に用いる光を、投光ファイバ11を介してアパーチャ1へ出力する。
【0113】
受光ファイバ12は、対象物Pからの反射光およびリファレンス用部材50からの反射光を分光器70へ導く。より詳細には、受光ファイバ12の第1の端部におけるコネクタ12Aは、プローブ10におけるコネクタ14に接続される。受光ファイバ12の第2の端部におけるコネクタ12Bは、分光器70におけるコネクタ74に接続される。
【0114】
分光器70は、測定用光経路21を介して対象物Pへ照射される光の反射光、および補正用光経路22を介してリファレンス用部材50へ照射される光の反射光を、アパーチャ2および受光ファイバ12を介して受光する。
【0115】
たとえば、投光ファイバ11および受光ファイバ12は、可とう性を有する。したがって、光源60および分光器70の配置が固定された状態において、プローブ10は所定範囲内で移動可能である。
【0116】
コネクタ13は、対象物Pからの反射光およびリファレンス用部材50からの反射光のうち分光器70へ導くべき反射光を選択するための制御信号を外部装置からプローブ10へ与えるためのインタフェース部材の一例である。ケーブル91は、プローブ10におけるコネクタ13に接続される。コネクタ13は、内部配線によりシャッタ制御部32に接続される。
【0117】
シャッタ制御部32は、制御信号をケーブル91およびコネクタ13経由で処理装置80から受信し、受信した制御信号に従って、シャッタ31が配置される位置を測定用光経路21と補正用光経路22とで切り替える。このような構成により、膜厚測定装置101は、分光器70へ導く反射光を、プローブ10の外部における装置から容易に切り替えることができる。
【0118】
処理装置80は、たとえば、ユーザの操作に従い、図示しない駆動装置へ制御信号を送信することにより当該駆動装置を介してプローブ10を移動させる。
【0119】
図9は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の使用例を示す図である。
【0120】
図9を参照して、膜厚測定装置101のユーザは、たとえば、処理装置80を操作することにより、プローブ10を測定対象物Sの測定位置X1(第1の測定位置)の上方へ移動させ、測定位置X1へ光を照射することにより測定位置X1における測定対象物Sの厚みを算出した後、プローブ10を測定対象物Sの測定位置X2(第2の測定位置)の上方へ移動させ、測定位置X2へ光を照射することにより測定位置X2における測定対象物Sの厚みを算出する。
【0121】
[動作の流れ]
本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0122】
図10は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置において測定対象物の膜厚を測定する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0123】
図10を参照して、まず、膜厚測定装置101は、試料台90に反射板Rが配置された状態において、測定用光経路21を介して反射板Rへ光を照射し、反射板Rからの反射光を分光器70へ導くことにより基準スペクトルSs(λ,ta0)を生成する(ステップS102)。
【0124】
次に、膜厚測定装置101は、補正用光経路22を介してリファレンス用部材50へ光を照射し、リファレンス用部材50へ照射される光の反射光を分光器70へ導くことによりリファレンススペクトルSr(λ,ta1)を生成する(ステップS104)。
【0125】
次に、膜厚測定装置101は、試料台90に測定対象物Sが配置された状態において、ユーザの操作に従い、プローブ10を測定対象物Sにおける所定の測定位置たとえば測定位置X1の上方へ移動させる(ステップS106)。
【0126】
次に、膜厚測定装置101は、測定用光経路21を介して測定対象物Sの測定位置X1へ光を照射し、測定対象物Sの測定位置X1からの反射光を分光器70へ導くことにより測定スペクトルSm(λ,tb0)を生成する(ステップS108)。
【0127】
次に、膜厚測定装置101は、補正用光経路22を介してリファレンス用部材50へ光を照射し、リファレンス用部材50へ照射される光の反射光を分光器70へ導くことによりリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を生成する(ステップS110)。
【0128】
次に、膜厚測定装置101は、基準スペクトルSs(λ,ta0)、リファレンススペクトルSr(λ,ta1)、測定スペクトルSm(λ,tb0)およびリファレンススペクトルSr(λ,tb1)を用いて、測定対象物Sの測定位置X1における反射率スペクトルSR(λ,tb0)を算出する(ステップS112)。
【0129】
次に、膜厚測定装置101は、算出した反射率スペクトルSR(λ,tb0)に基づいて、測定対象物Sの測定位置X1における膜厚を算出する(ステップS114)。
【0130】
次に、膜厚測定装置101は、測定対象物Sにおいて他に測定すべき測定位置がある場合(ステップS116でYES)、ユーザの操作に従い、プローブ10を測定対象物Sにおける所定の測定位置たとえば測定位置X2の上方へ移動させ、測定用光経路21を介して測定対象物Sの測定位置X2へ光を照射することにより、測定対象物Sの測定位置X1における膜厚を算出する(ステップS106~ステップS114)。
【0131】
なお、上記ステップS102とS104との順番は、上記に限らず、順番を入れ替えてもよい。また、上記ステップS108とS110との順番は、上記に限らず、順番を入れ替えてもよい。
【0132】
また、膜厚測定装置101の代わりに膜厚測定装置100を用いる場合、ステップS106およびステップS116を行わない。
【0133】
[変形例]
なお、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置100または101は、光源60、分光器70および処理装置80を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。膜厚測定装置100または101は、光源60、分光器70および処理装置80のうちの少なくともいずれか1つを備えず、膜厚測定装置100または101の外部に設けられる構成であってもよい。
【0134】
また、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置101は、投光ファイバ11および受光ファイバ12を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。膜厚測定装置101は、投光ファイバ11および受光ファイバ12の少なくともいずれか一方を備えない構成であってもよい。この場合、たとえば、光源60および分光器70の少なくともいずれか一方は、プローブ10の内部に設けられる。
【0135】
また、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置100では、光切替部30は、シャッタ31およびシャッタ制御部32を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、光切替部30は、シャッタ31およびシャッタ制御部32の代わりに、可動ミラーと、可動ミラーが配置される位置を制御する可動ミラー制御部とを含む構成であってもよい。あるいは、光切替部30は、シャッタ31およびシャッタ制御部32の代わりに、光スイッチを含む構成であってもよい。なお、膜厚測定装置100は、光切替部30が光スイッチを含む場合、ビームスプリッタ40を備えない構成であってもよい。
【0136】
また、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置100では、ビームスプリッタ40において反射された光は、試料台90に配置された対象物Pへ照射され、ビームスプリッタ40を透過した光は、リファレンス用部材50へ照射される構成であるとしたが、これに限定するものではない。ビームスプリッタ40において反射された光は、リファレンス用部材50へ照射され、ビームスプリッタ40を透過した光は、試料台90に配置された対象物Pへ照射される構成であってもよい。
【0137】
また、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置100は、集光レンズ41を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。
【0138】
図11は、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の変形例の構成を示す図である。
【0139】
図11を参照して、膜厚測定装置102は、膜厚測定装置100の集光レンズ41の代わりに、凹面鏡42と、ミラー43と、反射対物レンズ44とを備える。
【0140】
凹面鏡42は、ビームスプリッタ40を透過した光を反射する。ミラー43は、凹面鏡42によって反射された光を反射対物レンズ44に向けて反射する。反射対物レンズ44は、ミラー43によって反射された光を集光して、試料台90に配置された対象物Pへ照射する。
【0141】
膜厚測定装置102における測定用光経路21は、光源60からビームスプリッタ40までの光路と、ビームスプリッタ40から凹面鏡42までの光路と、凹面鏡42からミラー43までの光路と、ミラー43から反射対物レンズ44までの光路とを含む。
【0142】
対象物Pからの反射光は、反射対物レンズ44、ミラー43、凹面鏡42およびビームスプリッタ40を介して分光器70へ入射する。
【0143】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
10 プローブ(筐体)
11 投光ファイバ
12 受光ファイバ
21 測定用光経路
22 補正用光経路
30 光切替部
100,101,102 膜厚測定装置