(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】止水板付きシャッターおよび止水板付きシャッターの下限位置の設定方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20231002BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
E06B9/17 Z
E06B5/00 Z
E06B9/17 U
(21)【出願番号】P 2019228476
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-48524(JP,A)
【文献】実開昭51-64544(JP,U)
【文献】特開2016-169521(JP,A)
【文献】特表2019-504947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/17
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動することで建物開口を開閉するシャッターカーテンと、
前記シャッターカーテンの下方に位置され、当該シャッターカーテンと連動して上下方向に移動可能であり、前記建物開口の設置面上に接した閉状態において前記建物開口からの浸水を抑制する止水板と、
前記シャッターカーテンに接続された第一部材と、前記止水板に接続された第二部材と、を有し、前記止水板が前記設置面から離間した開状態では前記シャッターカーテンが前記第一部材および前記第二部材を介して前記止水板を吊り下げた吊下状態となり、前記閉状態では前記シャッターカーテンによる前記第一部材および前記第二部材を介した前記止水板の吊り下げが解除された解除状態となる、吊下機構と、
前記止水板の前記解除状態における下限位置を示した指示部と、
を備えた、止水板付きシャッター。
【請求項2】
前記第一部材は、吊下部を有し、
前記第二部材は、前記開状態にあっては前記吊下部上に接し前記閉状態にあっては前記吊下部から上方に離間する被吊下部を有し、
前記指示部は、前記下限位置として少なくとも前記被吊下部が前記吊下部から離間する位置を示す、請求項1に記載の止水板付きシャッター。
【請求項3】
前記第二部材は、前記閉状態において前記シャッターカーテンの下端と前記設置面との距離が所定距離以下である状態で前記第一部材と当接し、
前記指示部は、前記下限位置として前記第二部材を介して前記シャッターカーテンからの荷重が前記止水板に伝達される位置を示す、請求項2に記載の止水板付きシャッター。
【請求項4】
前記指示部は、前記第二部材に設けられ、前記下限位置において前記第一部材の下方の端部と位置合わせされる基準表示を有した、請求項3に記載の止水板付きシャッター。
【請求項5】
請求項4に記載の止水板付きシャッターの下限位置の設定方法であって、
前記止水板の吊り下げが解除された解除状態となるよう、前記止水板付きシャッターを下降させる工程と、
前記第一部材の下方の端部と前記指示部の基準表示とが重なるよう、前記止水板付きシャッターの位置を調整する工程と、
前記端部と前記基準表示とが重なった状態で、前記止水板付きシャッターの下限位置を設定する工程と、
を有した、止水板付きシャッターの下限位置の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板付きシャッターおよび止水板付きシャッターの下限位置の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャッターの下に止水板が設けられた止水板付きシャッターが、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の止水板付きシャッターでは、例えば、開閉動作の繰り返しにより閉時の下限位置が上方にずれると、止水板が建物開口の設置面から離間して止水性能が低下してしまう虞があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、より不都合の少ない新規な構成の止水板付きシャッターおよび止水板付きシャッターの下限位置の設定方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の止水板付きシャッターは、例えば、上下方向に移動することで建物開口を開閉するシャッターカーテンと、前記シャッターカーテンの下方に位置され、当該シャッターカーテンと連動して上下方向に移動可能であり、前記建物開口の設置面上に接した閉状態において前記建物開口からの浸水を抑制する止水板と、前記シャッターカーテンに接続された第一部材と、前記止水板に接続された第二部材と、を有し、前記止水板が前記設置面から離間した開状態では前記シャッターカーテンが前記第一部材および前記第二部材を介して前記止水板を吊り下げた吊下状態となり、前記閉状態では前記シャッターカーテンによる前記第一部材および前記第二部材を介した前記止水板の吊り下げが解除された解除状態となる、吊下機構と、前記止水板の前記解除状態における下限位置を示した指示部と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、例えば、指示部を利用することにより、作業者による止水板付きシャッターの下限位置の設定作業(調整作業)に要する手間が減りやすい。また、例えば、指示部に止水板の吊下状態における下限位置が示された場合と比べて、下限位置のずれが許容されやすい。その結果、例えば、止水板付きシャッターの開閉動作の繰り返しにより閉時の下限位置が上方にずれていったとしても、止水板が設置面から離間して止水性能が低下してしまうといった不都合が生じ難い。
【0008】
また、上記止水板付きシャッターでは、例えば、前記第一部材は、吊下部を有し、前記第二部材は、前記開状態にあっては前記吊下部上に接し前記閉状態にあっては前記吊下部から上方に離間する被吊下部を有し、前記指示部は、前記下限位置として少なくとも前記被吊下部が前記吊下部から離間する位置を示す。このような構成によれば、例えば、吊下機構および指示部を、比較的簡単な構成によって実現することができる。
【0009】
また、上記止水板付きシャッターでは、例えば、前記第二部材は、前記閉状態において前記シャッターカーテンの下端と前記設置面との距離が所定距離以下である状態で前記第一部材と当接し、前記指示部は、前記下限位置として前記第二部材を介して前記シャッターカーテンからの荷重が前記止水板に伝達される位置を示す。このような構成によれば、例えば、指示部を参照することで、シャッターカーテンの自重のようなシャッターカーテンからの荷重が第二部材を介して止水板に伝達される開始位置を把握することができる。作業者は、例えば、指示部と第一部材との位置関係を視認しながらシャッターカーテンの下限位置を設定することで、第一部材及び第二部材を介して、止水板を設置面に押し込むことができる。その結果、例えば、止水板と設置面との間のシール部材の面圧が高まり、当該シール部材によるシール性をより高めることができる。また、例えば、長年の使用によって、シャッターカーテンの自重により止水板を設置面に押し込むための位置が上方にずれた場合であっても、止水板と設置面との間のシール部材の面圧を維持しつつ、シャッターカーテンの下限位置のずれを許容・調整することができる。
【0010】
また、上記止水板付きシャッターでは、例えば、前記指示部は、前記第二部材に設けられ、前記下限位置において前記第一部材の下方の端部と位置合わせされる基準表示を有する。このような構成によれば、例えば、基準表示を利用することにより、作業者による止水板付きシャッターの下限位置の設定作業(調整作業)に要する手間が減りやすい。また、例えば、基準表示によってシャッターカーテンからの荷重が第二部材を介して止水板に伝達される位置を超えた位置で下限位置が設定されるのを抑制できる。その結果、例えば、下限位置において、止水板と設置面との間のシール部材の面圧が高まり過ぎたり、シャッターカーテンが撓んだりするのを抑制できる。
【0011】
また、本発明の止水板付きシャッターの下限位置の設定方法は、例えば、前記止水板の吊り下げが解除された解除状態となるよう、前記止水板付きシャッターを下降させる工程と、前記第一部材の下方の端部と前記指示部の基準表示とが重なるよう、前記止水板付きシャッターの位置を調整する工程と、前記端部と前記基準表示とが重なった状態で、前記止水板付きシャッターの下限位置を設定する工程と、を有する。このような構成によれば、例えば、作業者による止水板付きシャッターの下限位置の設定作業(調整作業)に要する手間が減りやすい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より不都合の少ない新規な構成の止水板付きシャッターおよび止水板付きシャッターの下限位置の設定方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の止水装置の例示的かつ模式的な正面図であって、止水板付きシャッターが閉位置に位置された状態の図である。
【
図2】
図2は、実施形態の止水装置の例示的かつ模式的な側面図であって、止水板付きシャッターが閉位置に位置された状態の図である。
【
図3】
図3は、実施形態の止水装置の例示的かつ模式的な側面図であって、止水板付きシャッターが開位置に位置された状態の図である。
【
図4】
図4は、実施形態の止水板付きシャッターの一部の例示的かつ模式的な断面図であって、止水板が設置面に接していない開状態を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の止水板付きシャッターの一部の例示的かつ模式的な断面図であって、止水板が設置面に接した閉状態かつ第二部材の天壁が第一部材の天壁に当接していない状態を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の止水板付きシャッターの一部の例示的かつ模式的な断面図であって、止水板が設置面に接した閉状態かつ第二部材の天壁が第一部材の天壁に当接した状態(伝達開始状態)を示す図である。
【
図7】
図7は、
図4の指示部の例示的かつ模式的な正面図である。
【
図8】
図8は、
図5の指示部の例示的かつ模式的な正面図である。
【
図9】
図9は、
図6の指示部の例示的かつ模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0016】
[実施形態]
図1は、実施形態の止水装置10の正面図であって、シャッター100が閉位置Pcに位置された状態を示す。
図2は、止水装置10の側面図(一部断面図)であって、シャッター100が閉位置Pcに位置された状態を示す。
図3は、止水装置10の側面図(一部断面図)であって、シャッター100が開位置Poに位置された状態を示す。
【0017】
図1~3に示されるように、止水装置10は、上下方向に移動して建物開口1を開閉するシャッター100を備えている。シャッター100は、上下開閉式シャッターとも称されうる。建物は、例えば、車庫や、工場、倉庫、ビル、店舗、住宅等の建築構造物であり、自動車等の車両や人間等が建物開口1を介して建物に出入りしうる。シャッター100は、止水板付きシャッターの一例である。
【0018】
なお、以下の説明では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、シャッター100の厚さ方向に沿うとともに、建物開口1の開口方向(前後方向)に沿う。Y方向は、シャッター100の横幅方向に沿うとともに、建物開口1の幅方向(左右方向)に沿う。Z方向は、シャッター100の縦幅方向に沿うとともに、建物開口1の高さ方向(上下方向)に沿う。
【0019】
また、以下の説明では、便宜上、X方向は前方、X方向の反対方向は後方とも称され、Y方向は右方、Y方向の反対方向は左方とも称され、Z方向は上方、Z方向の反対方向は下方とも称される場合がある。なお、以下の説明では、設置面1aとは建物開口1の下方に隣接した面を意味する便宜上の文言であり、地面や、床面、コンクリート面等とも称される。
【0020】
また、以下の説明では、建物開口1を介して前方(X方向)の空間から後方の空間へ雨水等の水が浸入する可能性がある場合の後方(下流側)が屋内側と定義され、前方(上流側)が屋外側と定義される。すなわち、屋内側とは、シャッター100によって水の浸入を防止(阻止、抑制)したい側であり、屋外側とは、浸入可能性のある水が流れてくる側のことである。
【0021】
止水装置10は、例えば、シャッター100の他に、建物に設置されている設備として、一対のガイドレール210や、巻取装置220、スイッチボックス230等を備えている。
【0022】
ガイドレール210は、シャッター100のY方向の両端部をZ方向に沿って移動可能に支持している。ガイドレール210によって移動可能に支持されるシャッター100は、
図1,2に示される閉位置Pcと、
図3に示される開位置Poとの間で移動することができる。シャッター100は、可動部材とも称されうる。また、閉位置Pcは、全閉位置等とも称され、開位置Poは、全開位置等とも称されうる。
【0023】
また、ガイドレール210は、閉位置Pcに位置されたシャッター100のY方向の両端を支持する支持部材として機能する。ガイドレール210は、閉位置Pcに位置された状態で、洪水等によってシャッター100に屋外側から水圧が作用した場合、当該シャッター100をそのY方向の両端で支持する。なお、ガイドレール210とは別の部材によって、シャッター100を支持してもよい。
【0024】
スイッチボックス230は、例えば、ガイドレール210のY方向に隣接して設けられている。スイッチボックス230は、押圧操作によってシャッター100を可動あるいは停止させる複数の操作ボタンや、巻取装置220の制御装置(受信部)に無線により操作信号を送信するアンテナ等を有している。
【0025】
巻取装置220は、建物開口1の上方に隣接して設けられている。巻取装置220は、例えば、不図示のモータおよび巻取軸を有している。制御装置によって制御されたモータのシャフトの回転に応じて、巻取軸におけるシャッター100の巻取状態と繰出状態とが切り替わる。
【0026】
巻取状態は、収納状態とも称され、繰出状態は、送出状態とも称されうる。シャッター100は、巻取軸に巻き取られることにより、建物開口1を開く。また、シャッター100は、巻取軸から繰り出されることにより、建物開口1を閉じる。
【0027】
シャッター100は、例えば、シャッターカーテン110と、止水板120と、後述する吊下機構300(
図4参照)および指示シール150(
図5参照)と、を有している。止水板120は、シャッターカーテン110の下端、すなわち繰出方向の先端に接続されており、
図1,2に示されるようなシャッター100が閉位置Pcに位置されている状態では、止水板120は、シャッターカーテン110の下方に隣接している。すなわち、止水板120は、シャッター100の下端部を構成している。
【0028】
図1に示されるように、シャッターカーテン110は、複数のスラット111を有している。各スラット111は、帯状かつ板状の形状を有し、Z方向に一定の幅を有し、Y方向に延びている。複数のスラット111がZ方向に並べられ、互いに隣接したスラット111の端部同士が回動可能に接続され、これにより、シャッターカーテン110が構成されている。シャッターカーテン110は、例えば鉄系材料やアルミ二ウム合金のような金属材料などによって作られる。
【0029】
止水板120は、長方形状かつ板状の形状、言い換えると扁平な直方体状の形状を有している。止水板120は、Z方向に短く、Y方向に長く、かつX方向に薄い。
図1,2に示されるように、閉位置Pcでは、止水板120の縦幅方向(短手方向)はZ方向に沿い、止水板120の横幅方向(長手方向)はY方向に沿い、止水板120の厚さ方向はX方向に沿っている。
【0030】
また、止水板120は、例えば、中空板121(
図2参照)と、不図示のシール部材と、を有している。中空板121は、後壁121aや、前壁121b、底壁121c、二つの側壁121d、天壁121e等を有し、その内部には、これら後壁121a、前壁121b、底壁121c、二つの側壁121d、および天壁121eで囲まれた内室(中空部)が設けられている。
【0031】
また、図示しないが、中空板121の内部には、後壁121aと前壁121bとの間に亘る隔壁が設けられている。中空板121は、例えば、鉄系材料やアルミ二ウム合金のような金属材料や樹脂材料などで作られる。
【0032】
後壁121aは、止水板120のX方向の反対方向の端部に位置され、長方形状かつ板状の形状を有し、Z方向かつY方向に延びている。後壁121aは、屋内側を向いた後面120aを有している。後面120aは、第一側面等とも称される。
【0033】
前壁121bは、止水板120のX方向の端部に位置され、長方形状かつ板状の形状を有し、Z方向かつY方向に延びている。前壁121bは、屋外側を向いた前面120bを有している。前面120bは、第二側面等とも称される。
【0034】
底壁121cは、止水板120の下端部に位置され、長方形状かつ板状の形状を有し、X方向およびY方向に延びている。底壁121cは、下側を向いた底面120cを有している。底面120cは、下面等とも称される。
【0035】
二つの側壁121dは、止水板120のY方向の両端部に位置され、長方形状かつ板状の形状を有し、X方向およびZ方向に延びている。二つの側壁121dは、左側および右側を向いた端面120dを有している。二つの端面120dは、第三側面や、第四側面等とも称される。
【0036】
また、天壁121eは、止水板120の上端部に位置され、長方形状かつ板状の形状を有し、X方向およびY方向に延びている。天壁121eは、上側を向いた天面120eを有している。天面120eは、上面等とも称される。
【0037】
シール部材は、例えば、止水板120の底面120cおよび後面120aに設けられ、底面120cと設置面1aとの間、および後面120aとガイドレール210の支持面210aとの間をシールする。
【0038】
閉位置Pcでは、後述する吊下機構300(
図4参照)による止水板120の吊り下げが解除された解除状態となり、これにより、シール部材が少なくとも止水板120の荷重(自重)によって弾性的に圧縮され、面圧を生じる。この面圧によって、設置面1aと止水板120との間から屋内側に水が浸入するのが抑制される。
【0039】
図4~6は、シャッターカーテン110、吊下機構300、および止水板120のXZ断面図であって、
図4は、止水板120(シール部材)が設置面1aに接していない開状態、
図5は、止水板120(シール部材)が設置面1aと接した閉状態かつ第二部材320の天壁320aが第一部材310の天壁310aに当接していない状態、
図6は、閉状態かつシャッターカーテン110の下端110aが
図5よりも設置面1aに近付き、第二部材320の天壁320aが第一部材310の天壁310aに当接した状態(伝達開始状態)を示す図である。
【0040】
図4~6に示されるように、吊下機構300は、シャッターカーテン110と止水板120との間に設けられている。吊下機構300は、例えば、第一部材310と、第二部材320と、を有している。第一部材310は、シャッターカーテン110の最下部のスラット111に取り付けられ、第二部材320は、止水板120の上端の立壁121fに取り付けられている。
【0041】
第一部材310は、例えば、天壁310aや、立壁310b、前壁310c、後壁310d、端部310e,310f、シャフト314等を有している。第一部材310は、鉄系材料やアルミ二ウム合金のような金属材料によって作られる。また、第一部材310は、例えば、プレス成形や折曲成形等によって作られる。
【0042】
天壁310aは、四角形状かつ板状の形状を有し、Z方向と交差しかつ直交している。天壁310aは、X方向に略一定の幅で、Y方向に延びている。天壁310aは、上壁等とも称される。
【0043】
立壁310bは、天壁310aのX方向の中央部から、Y方向に一定の幅で上方に延びている。立壁310bは、四角形状かつ板状の形状を有し、X方向と交差しかつ直交している。立壁310bは、延部等とも称される。
【0044】
前壁310cは、天壁310aのX方向の端部から、Y方向に一定の幅で下方に延びている。前壁310cは、四角形状かつ板状の形状を有し、X方向と交差しかつ直交している。前壁310cは、第一側壁等とも称される。
【0045】
後壁310dは、天壁310aのX方向の反対方向の端部から、Y方向に一定の幅で下方に延びている。後壁310dは、四角形状かつ板状の形状を有し、X方向と交差しかつ直交している。後壁310dは、第二側壁等とも称される。
【0046】
端部310e,310fは、前壁310cおよび後壁310dの下端から、それぞれ略U字状に屈曲している。端部310eの先端は、前壁310cから屋内側に離間するとともに、上方に延びている。端部310fの先端は、後壁310dから屋外側に離間するとともに、上方に延びている。
【0047】
なお、本実施形態では、これら天壁310a、立壁310b、前壁310c、および後壁310dは、アウタプレート311、インナプレート312、およびサポートプレート313が重なりあって構成され、各壁において二枚のプレートが重なっているが、これには限定されない。
【0048】
立壁310bは、シャッターカーテン110の最下部のスラット111に、例えばボルトのような結合具によって、固定されている。
【0049】
シャフト314は、天壁310aから下方に離間した位置で、X方向に延びており、前壁310cと後壁310dとの間で架け渡されている。シャフト314は、前壁310cおよび後壁310dを介してシャッターカーテン110に固定されている。
【0050】
第二部材320は、例えば、天壁320aや、立壁320b、底壁320c等を有している。第二部材320は、鉄系材料やアルミ二ウム合金のような金属材料によって作られる。天壁320a、立壁320b、および底壁320cは、略一定の幅を有している。
【0051】
天壁320aは、四角形状かつ板状の形状を有し、Z方向と交差しかつ直交している。天壁320aは、X方向に略一定の幅で、Y方向に延びている。
図4に示される開状態において、天壁320aは、第一部材310のシャフト314に吊り下げられている(引っ掛かっている)。
【0052】
立壁320bは、天壁320aのX方向の端部から、Y方向に一定の幅で下方に延びている。立壁320bは、四角形状かつ板状の形状を有し、X方向と交差しかつ直交している。立壁320bは、第一部材310の前壁310cと後壁310dとの間に位置されている。
【0053】
底壁320cは、立壁320bの下端から、Y方向に一定の幅でX方向に延びている。底壁320cは、四角形状かつ板状の形状を有し、Z方向と交差しかつ直交している。底壁320cは、止水板120の天面120eに支持されている。
【0054】
図4に示されるように、第二部材320は、Y方向に見た場合に略Z字状の形状を有している。天壁320aと立壁320bとの間、および立壁320bと底壁320cとの間には、それぞれ屈曲部320dが設けられている。第二部材320は、例えば、プレス成形や折曲成形によって作られる。
【0055】
底壁320cが天面120eに当接しかつ天面120eに沿う姿勢で、立壁320bが、止水板120の天壁121eから突出した立壁121fに、例えばボルトのような結合具によって、固定されている。
【0056】
また、立壁320bには、当該立壁320bをX方向に貫通しZ方向に延びる長穴320e(
図10参照)が設けられており、第一部材310のシャフト314が、当該長穴320eを貫通している。
【0057】
ここで、
図4~6を参照して、吊下機構300の作動について説明する。
図4に示される開状態において、シャッターカーテン110は、吊下機構300を介して止水板120を吊り下げている(吊下状態)。具体的には、吊下機構300において、第二部材320の天壁320aが、第一部材310のシャフト314上に接している。よって、シャフト314は、吊下部の一例であり、天壁320aは、被吊下部の一例である。なお、吊下機構300は、シャフト314と長穴320eとを用いる例に限定されず、例えば、チェーンやリンク機構などによって止水板120を吊り下げるようにしてもよい。
【0058】
図5に示される閉状態において、止水板120(シール部材)が設置面1aと接した分、
図4の開状態と比較して、シャッターカーテン110の下端110aと止水板120の天面120eとがZ方向に互いに近付き、これに伴い、吊下機構300において、第二部材320の天壁320aは、第一部材310のシャフト314から上方に離間している。
【0059】
この場合、シャッターカーテン110による吊下機構300を介した止水板120の吊下状態が解除される(解除状態)。よって、止水板120の下方のシール部材が自重のような止水板120からの荷重によって弾性的に圧縮され、面圧を生じる。この面圧によって、設置面1aと止水板120との間のシール性が高まる。
【0060】
図6に示される閉状態では、シャッターカーテン110が
図5よりも下方へ移動し、シャッターカーテン110の下端110aと設置面1aとの距離Lthが、
図5の場合の距離よりも短くなっている。これに伴い、第二部材320の天壁320aは、第一部材310の天壁310aの下に接している。
【0061】
この場合、シャッターカーテン110からの荷重が、第二部材320を介して止水板120に伝達される。よって、止水板120の下方のシール部材がシャッターカーテン110からの荷重によって弾性的に圧縮され、設置面1aと止水板120との間のシール性がより高まる。第二部材320は、伝達部材の一例である。
図6に示される吊下機構300の状態は、伝達状態や、加重状態、伝達開始状態、加重開始状態等と称される。
【0062】
図6に示されるような、第一部材310の天壁310aと第二部材320の天壁320aとの当接は、止水板120が閉位置Pcにある状態でのシャッターカーテン110の下降に伴って、
図5に示されるZ方向の隙間が無くなった時点で、生じる。したがって、第二部材320は、シャッターカーテン110の下端110aと設置面1aとの距離が、
図6の状態での距離Lth以下である場合に、伝達部材として機能する。距離Lthは、所定距離の一例であり、閾値とも称される。
【0063】
図7は、
図4に示される開状態での指示シール150の正面図であり、
図8は、
図5に示される閉状態での指示シール150の正面図であり、
図9は、
図6に示される閉状態での指示シール150の正面図である。
【0064】
図7~9に示されるように、第二部材320におけるY方向の端部、すなわちスイッチボックス230側(
図1参照)の端部には、指示シール150が設けられている。指示シール150には、例えば、シャッター100の下限位置を示す境界線153や、矢印152、文字151等が描かれている。指示シール150は、指示部の一例である。
【0065】
指示シール150は、例えば、第二部材320の立壁320bにおける屋内側の後面に貼り付けられている。指示シール150のうち境界線153よりも上の第一領域150aと下の第二領域150bとでは色が異なっている。境界線153は、基準表示の一例である。
【0066】
なお、基準表示は、境界線153の様な領域の色分けの例に限定されず、例えば、描かれた線や、溝、突起、段差、絵、模様、印等、規準となる位置や境界を表すものであれば、どのようなものであってもよい。また、基準表示は、一つの位置や一つの境界を表すものに限られず、シャッターカーテン110の移動方向について位置や境界を段階的に表すものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、指示シール150を第二部材320の立壁320bの屋内側の後面に設置する場合を例とする。この様に指示シール150を屋内側に設置することで、指示シール150への汚れ、いたずら、紫外線による劣化を低減させることができる。これに対し、指示シール150は、必要に応じて、第二部材320の立壁320bの屋外側に設置するようにしてもよい。
【0068】
第一領域150aには、文字151や矢印152等が設けられている。矢印152は、文字151よりも下方に位置されている。言い換えると、矢印152は、文字151と境界線153との間に位置されている。矢印152は、境界線153を指し示す下向の矢印として構成されている。
【0069】
本実施形態では、
図7に示される開状態においては、指示シール150は、第一部材310の下方の端部310fから屋内側に露出している。言い換えると、指示シール150の文字151、矢印152、および境界線153が端部310fよりも下方に位置されている。
【0070】
また、
図8に示される閉状態では、第一部材310が第二部材320に対して下方に移動した分、第一部材310が指示シール150の一部とX方向に重なっている。具体的には、指示シール150の文字151の少なくとも一部が、第一部材310の後壁310dによって隠れている。
【0071】
さらに、
図9に示される閉状態では、第一部材310が第二部材320に対して
図8よりも下方に移動した分、第一部材310の端部310fが指示シール150の境界線153とX方向に重なっている。言い換えると、指示シール150の文字151および矢印152が、第一部材310の後壁310dによって隠れている。
【0072】
そして、本実施形態では、
図9に示される端部310fと境界線153とが重なった状態、換言すれば、
図6に示されるシャッターカーテン110からの荷重が第二部材320を介して止水板120に伝達される位置で、シャッター100の下限位置が設定されるよう、構成されている。これにより、例えば、止水板120と設置面1aとの間のシール部材の面圧が高まりやすく、ひいては止水板120と設置面1aとの間のシール性をより高めることができる。
【0073】
また、例えば、シャッター100の開閉動作の繰り返しにより下限位置が上方にずれていったとしても、境界線153よりも上の第一領域150aによってZ方向のずれが許容され、ひいては止水板120が設置面1aから離間して止水性能が低下するのを抑制することができる。このように、指示シール150は、止水板120の解除状態における下限位置を示している。
【0074】
なお、例えば、
図6、9よりもさらにシャッターカーテン110が下降した状態では、シャッターカーテン110からの下方への荷重に起因する第二部材320及び止水板120からの上方への反力が、シャッターカーテン110に加わり、シャッターカーテン110は撓んだ状態となる。撓んだ状態となったシャッターカーテン110は、各スラットやスラット間の連結部によって反力を吸収しつつ、第一部材310及び第二部材320を介して、自重により止水板120を設置面1aに押し込むことができる。
【0075】
図10は、
図4の第二部材320の正面図である。
図10に示されるように、第二部材320は、例えば、Y方向に並んだ複数のアウタプレート321とY方向に並んだ複数のインナプレート322と、を有している。
図10から明らかとなるように、アウタプレート321とインナプレート322とは、Y方向に互いにずれて重なっている。
【0076】
本実施形態では、このような構成によって、互いに隣接するアウタプレート321間の境界B1は、インナプレート322によって覆われるとともに、互いに隣接するインナプレート322間の境界B2は、アウタプレート321によって覆われている。これにより、例えば、アウタプレート321の境界B1、およびインナプレート322の境界B2の双方から、光が漏れるのが抑制されている。
【0077】
次に、シャッター100の下限位置の設定方法の一例について説明する。まず、作業者は、止水板120の吊り下げが解除された解除状態となるよう、シャッター100を下降させる(S1)。S1は、第一工程の一例である。
【0078】
次に、作業者は、第一部材310の下方の端部310fが指示シール150の境界線153と重なるよう、シャッター100の位置を調整する(S2)。S2は、第二工程の一例である。
【0079】
次に、作業者は、第一部材310の端部310fと境界線153とが重なった状態で、スイッチボックス230あるいは巻取装置220に設けられる制御用のリミットスイッチなどによって、シャッター100の下限位置を設定する(S3)。S3は、第三工程の一例である。
【0080】
以上のように、本実施形態では、例えば、シャッター100は、止水板120が設置面1aから離間した開状態(
図4)ではシャッターカーテン110が第一部材310および第二部材320を介して止水板120を吊り下げた吊下状態となり、止水板120が設置面1a上に接した閉状態(
図5,6)ではシャッターカーテン110による第一部材310および第二部材320を介した止水板120の吊り下げが解除された解除状態となる、吊下機構300と、止水板120の解除状態における下限位置を示した指示シール150(指示部)と、を備える。
【0081】
このような構成によれば、例えば、指示シール150を利用することにより、作業者によるシャッター100の下限位置の設定作業(調整作業)に要する手間が減りやすい。また、例えば、指示シール150に止水板120の吊下状態における下限位置が示された場合と比べて、下限位置のずれが許容されやすい。その結果、例えば、シャッター100の開閉動作の繰り返しにより閉時の下限位置が上方にずれていったとしても、止水板120が設置面1aから離間して止水性能が低下してしまうといった不都合が生じ難い。
【0082】
また、本実施形態では、例えば、指示シール150は、下限位置として少なくとも第二部材320の天壁320a(被吊下部)が第一部材310のシャフト314(吊下部)から上方への離間を開始する基準となる位置を示す。このような構成によれば、例えば、吊下機構300および指示シール150を、比較的簡単な構成によって実現することができる。
【0083】
また、本実施形態では、例えば、指示シール150は、下限位置として第二部材320を介してシャッターカーテン110からの荷重が止水板120に伝達され始める位置を示す。このような構成によれば、例えば、指示シール150によって、シャッターカーテン110の自重のようなシャッターカーテン110からの荷重が、第二部材320を介して止水板120に伝達され始める位置を基準として、必要に応じてさらにシャッターカーテン110を下側に押し込んだ位置を下限位置として設定することができる。
【0084】
すなわち、指示シール150を参照することで、シャッターカーテン110からの荷重(自重)が第二部材320を介して止水板120に伝達される基準となる位置を把握することができる。作業者は、例えば、指示シール150と第一部材310との位置関係を視認しながらシャッターカーテン110の下限位置を設定することで、第一部材310及び第二部材320を介して、止水板120を設置面1aに押し込むことができる。その結果、例えば、止水板120と設置面1aとの間のシール部材の面圧が高まり、当該シール部材によるシール性をより高めることができる。また、例えば、長年の使用によって、シャッターカーテン110の自重により止水板120を設置面1aに押し込むための位置が上方にずれた場合であっても、止水板120と設置面1aとの間のシール部材の面圧を維持しつつ、シャッターカーテン110の下限位置のずれを許容・調整することができる。
【0085】
また、本実施形態では、例えば、指示シール150は、第二部材320に設けられ、下限位置において第一部材310の下方の端部310fと位置合わせされる境界線153(基準表示)を有する。このような構成によれば、境界線153を利用することにより、作業者によるシャッター100の下限位置の設定作業(調整作業)に要する手間が減りやすい。また、例えば、境界線153によってシャッターカーテン110からの荷重が第二部材320を介して止水板120に伝達される位置を超えた位置で下限位置が設定されるのを抑制できる。その結果、例えば、下限位置において、止水板120と設置面1aとの間のシール部材の面圧が高まり過ぎたり、シャッターカーテン110が撓んだりするのを抑制できる。
【0086】
また、本実施形態では、例えば、シャッター100の下限位置の設定方法は、止水板120の吊り下げが解除された解除状態となるよう、シャッター100を下降させる工程と、第一部材310の下方の端部310fが指示シール150の境界線153と重なるよう、シャッター100の位置を調整する工程と、端部310fと境界線153とが重なった状態で、シャッター100の下限位置を設定する工程と、を有する。このような構成によれば、例えば、作業者によるシャッター100の下限位置の設定作業(調整作業)に要する手間が減りやすい。
【0087】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…建物開口、1a…設置面、100…シャッター(止水板付きシャッター)、110…シャッターカーテン、120…止水板、150…指示シール(指示部)、153…境界線(基準表示)、300…吊下機構、310…第一部材、310f…端部(下方の端部)、314…シャフト(吊下部)、320…第二部材、320a…天壁(被吊下部)、Z…上方(上下方向)。