(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20231002BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231002BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M1/08 341A
H02M1/08 351Z
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2019229760
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】洪 洪
(72)【発明者】
【氏名】磯部 康裕
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 啓
(72)【発明者】
【氏名】杉山 亨
(72)【発明者】
【氏名】岩井 正明
(72)【発明者】
【氏名】細川 直範
(72)【発明者】
【氏名】小野村 正明
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲也
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6392458(JP,B2)
【文献】特開2015-080335(JP,A)
【文献】特開2016-208080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0047841(US,A1)
【文献】国際公開第2014/034346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00~ 1/44
H02M 7/42~ 7/98
H03K17/00~17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、第1制御電極と、を有するノーマリーオフトランジスタと、
前記第2電極に電気的に接続された第3電極と、第4電極と、第2制御電極と、を有するノーマリーオントランジスタと、
第1端部と、前記第2制御電極に電気的に接続された第2端部と、を有する第1コンデンサと、
前記第2端部及び前記第2制御電極に電気的に接続された第1アノードと、前記第3電極に電気的に接続された第1カソードと、を有するツェナーダイオードと、
第3端部と、前記第1制御電極に電気的に接続された第4端部と、を有する第1抵抗と、
前記第3端部に電気的に接続された第2アノードと、第2カソードと、を有する第1ダイオードと、
前記第2カソードに電気的に接続された第5端部と、前記第4端部及び前記第1制御電極に電気的に接続された第6端部と、を有する第2抵抗と、
前記第2端部、前記第1アノード及び前記第2制御電極に電気的に接続された第3アノードと、前記第1電極に電気的に接続された第3カソードと、を有する第2ダイオードと、
前記第4端部、前記第6端部及び前記第1制御電極に電気的に接続された第7端部と、前記第1電極に電気的に接続された第8端部と、を有する第2コンデンサと、
前記第1端部、前記第3端部及び前記第2アノードに接続されたゲートドライブ回路と、
を備え、
前記ゲートドライブ回路を用いてハイレベル電圧とローレベル電圧を有する信号を出力し、
前記第1抵抗の抵抗値をR
1、前記ノーマリーオフトランジスタの寄生容量をC
iss、前記ハイレベル電圧をV
g_on、前記ノーマリーオフトランジスタのゲート閾値電圧をV
th、前記第2抵抗の抵抗値をR
2、前記第2コンデンサの静電容量をC
2、前記ゲートドライブ回路を用いて前記ハイレベル電圧を出力する時間をt
1としたときに、
【数1】
である半導体装置。
【請求項2】
前記ツェナーダイオードのツェナー電圧Vzは、前記第2制御電極と前記第3電極の間の前記ノーマリーオントランジスタの耐圧よりも低い請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2コンデンサの静電容量をC
2、前記ノーマリーオフトランジスタのゲートソース間容量をC
gs、前記ノーマリーオフトランジスタのゲートドレイン間容量をC
gdとしたときに、
【数5】
である請求項1
または請求項
2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1コンデンサの静電容量C
1は、前記ノーマリーオントランジスタの入力容量の10倍以上である請求項1乃至請求項
3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2端部に電気的に接続された第4アノードと、前記第1端部に電気的に接続された第4カソードと、を有する第3ダイオードをさらに備える請求項1乃至請求項
4いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のパワー半導体デバイス用の材料としてIII族窒化物、例えば、GaN(窒化ガリウム)系半導体が期待されている。GaN系半導体はSi(シリコン)と比較して大きなバンドギャップを備える。このため、GaN系半導体デバイスはSi(シリコン)半導体デバイスと比較して、小型で高耐圧のパワー半導体デバイスを実現できる。また、これにより寄生容量を小さくできるため、高速駆動のパワー半導体デバイスを実現できる。
【0003】
GaN系のトランジスタでは、一般に、2次元電子ガス(2DEG)をキャリアとするHEMT(High Electron Mobility Transistor)構造が適用される。通常のHEMTは、ノーマリーオントランジスタである。すなわち、通常のHEMTは、ゲートに電圧を印加しなくても導通する。このため、ゲートに電圧を印加しない限り導通しないノーマリーオフトランジスタを、実現することが困難であるという問題がある。
【0004】
数百V~1千Vという大きな電力をあつかう電源回路等では、安全面を重視してノーマリーオフの動作が要求される。そこで、ノーマリーオンのGaN系トランジスタとノーマリーオフのSiトランジスタを接続して、ノーマリーオフ動作を実現する回路構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、安定したノーマリーオフ動作を実現する半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、第1電極と、第2電極と、第1制御電極と、を有するノーマリーオフトランジスタと、第2電極に電気的に接続された第3電極と、第4電極と、第2制御電極と、を有するノーマリーオントランジスタと、第1端部と、第2制御電極に電気的に接続された第2端部と、を有する第1コンデンサと、第2端部及び第2制御電極に電気的に接続された第1アノードと、第3電極に電気的に接続された第1カソードと、を有するツェナーダイオードと、第3端部と、第1制御電極に電気的に接続された第4端部と、を有する第1抵抗と、第3端部に電気的に接続された第2アノードと、第2カソードと、を有する第1ダイオードと、第2カソードに電気的に接続された第5端部と、第4端部及び第1制御電極に電気的に接続された第6端部と、を有する第2抵抗と、第2端部、第1アノード及び第2制御電極に電気的に接続された第3アノードと、第1電極に電気的に接続された第3カソードと、を有する第2ダイオードと、第4端部、第6端部及び第1制御電極に電気的に接続された第7端部と、第1電極に電気的に接続された第8端部と、を有する第2コンデンサと、第1端部、第3端部及び第2アノードに接続されたゲートドライブ回路と、を備え、ゲートドライブ回路を用いてハイレベル電圧とローレベル電圧を有する信号を出力し、第1抵抗の抵抗値をR
1
、ノーマリーオフトランジスタの寄生容量をC
iss
、ハイレベル電圧をV
g_on
、ノーマリーオフトランジスタのゲート閾値電圧をV
th
、第2抵抗の抵抗値をR
2
、第2コンデンサの静電容量をC
2
、ゲートドライブ回路を用いてハイレベル電圧を出力する時間をt
1
としたときに、(数式3)である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の電力変換システムの模式図である。
【
図3】実施形態の第1の他の態様の半導体装置の回路図である。
【
図4】実施形態の第2の他の態様の半導体装置の回路図である。
【
図6】V
g_onの一例及び第2制御電極に入力される電圧の一例を示す模式図である。
【
図7】比較形態の半導体装置における第1端部の電圧及び第2制御電極に入力される電圧の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態の半導体装置における第1制御電極に入力される電圧の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材には同一の符号を付す場合がある。また、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する場合がある。
【0010】
また、本明細書中、半導体装置とは、ディスクリート半導体等の複数の素子が組み合わされたパワーモジュール、又は、ディスクリート半導体等の複数の素子にこれらの素子を駆動する駆動回路や自己保護機能を組み込んだインテリジェントパワーモジュール、あるいは、パワーモジュールやインテリジェントパワーモジュールを備えたシステム全体を包含する概念である。
【0011】
また、本明細書中、「GaN系半導体」とは、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)及びそれらの中間組成を備える半導体の総称である。
【0012】
(実施形態)
実施形態の半導体装置は、第1電極と、第2電極と、第1制御電極と、を有するノーマリーオフトランジスタと、第2電極に電気的に接続された第3電極と、第4電極と、第2制御電極と、を有するノーマリーオントランジスタと、第1端部と、第2制御電極に電気的に接続された第2端部と、を有する第1コンデンサと、第2端部及び第2制御電極に電気的に接続された第1アノードと、第3電極に電気的に接続された第1カソードと、を有するツェナーダイオードと、第3端部と、第1制御電極に電気的に接続された第4端部と、を有する第1抵抗と、第3端部に電気的に接続された第2アノードと、第2カソードと、を有する第1ダイオードと、第2カソードに電気的に接続された第5端部と、第4端部及び第1制御電極に電気的に接続された第6端部と、を有する第2抵抗と、第2端部、第1アノード及び第2制御電極に電気的に接続された第3アノードと、第1電極に電気的に接続された第3カソードと、を有する第2ダイオードと、第4端部、第6端部及び第1制御電極に電気的に接続された第7端部と、第1電極に電気的に接続された第8端部と、を有する第2コンデンサと、を備える。
【0013】
図1は、本実施形態の電力変換システム900の模式図である。
【0014】
電力変換システム900は、電力変換装置800と、モーター810と、を備える。
【0015】
電力変換装置800は、トランジスタ200a、200b、200c、200d、200e及び200fと、直流電源300と、コンバータ400と、平滑コンデンサ500と、を備える。なお、後述するように、トランジスタ200a、200b、200c、200d、200e及び200fは、複数のトランジスタ、及びその他の素子等を含んでいてもかまわない。
【0016】
直流電源300は、直流電圧を出力する。コンバータ400はDC-DCコンバータであり、直流電源300が出力した直流電圧を、他の直流電圧に変換する。平滑コンデンサ500は、コンバータ400によって出力された電圧を平滑化する。
【0017】
トランジスタ200a、200b、200c、200d、200e及び200fのそれぞれは、後述する半導体装置100を有する。トランジスタ200a、200b、200c、200d、200e及び200fにより、平滑コンデンサ500によって平滑化された直流電圧は交流に変換される。
【0018】
例えば、トランジスタ200aは、第1トランジスタ電極202と第2トランジスタ電極204を有する。また、トランジスタ200bは第3トランジスタ電極206と第4トランジスタ電極208を有する。トランジスタ200aとトランジスタ200bは、第1トランジスタ電極202と第4トランジスタ電極208が電気的に接続されることにより、互いに電気的に接続されている。
【0019】
同様に、トランジスタ200cとトランジスタ200d及びトランジスタ200eとトランジスタ200fは、それぞれ互いに電気的に接続されている。
【0020】
モーター810は、コイル810u、810v及び810wを有する。コイル810u、810w及び810vの一端は、互いに中性点820において電気的に接続されている。コイル810uの他端は、トランジスタ200aとトランジスタ200bの間に電気的に接続されている。コイル810vの他端は、トランジスタ200cとトランジスタ200dの間に電気的に接続されている。また、コイル810wの他端は、トランジスタ200eとトランジスタ200fの間に電気的に接続されている。
【0021】
なお、本実施形態の電力変換装置800におけるグランドは、例えば、複数設けられた平滑コンデンサ500の間に電気的に接続されていても良い。また、例えば、電力変換装置800におけるグランドは、トランジスタ200bとトランジスタ200dとトランジスタ200fが互いに電気的に接続された電線に、電気的に接続されていても良い。
【0022】
図2は、本実施形態の半導体装置100の回路図である。本実施形態の半導体装置100は、例えば、定格電圧が600Vや1200Vのパワーモジュールである。
【0023】
半導体装置100は、ノーマリーオフトランジスタ10と、ノーマリーオントランジスタ20と、第1コンデンサ30と、ツェナーダイオード40と、第1抵抗50と、第1ダイオード60と、第2抵抗65と、第2ダイオード70と、第2コンデンサ75と、第3ダイオード80と、第1端子101と、第2端子102と、第3端子103と、を備える。
【0024】
ノーマリーオフトランジスタ10は、第1電極11と、第2電極12と、第1制御電極13と、を有する。
【0025】
ノーマリーオフトランジスタ10は、ゲートに電圧を入力しない場合にはドレイン電流が流れないトランジスタである。ノーマリーオフトランジスタ10は、例えば、Si(シリコン)半導体を用いたn型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。例えば、第1電極11はソース電極であり、第2電極12はドレイン電極であり、第1制御電極13はゲート電極である。しかし、ノーマリーオフトランジスタ10は、これに限定されるものではない。例えば、ノーマリーオフトランジスタ10は、p型のMOSFETであっても良い。
【0026】
ノーマリーオフトランジスタ10の耐圧は、例えば10V以上30V以下である。
【0027】
ノーマリーオントランジスタ20は、第3電極21と、第4電極22と、第2制御電極23と、を有する。第3電極21は、第2電極12に電気的に接続されている。
【0028】
ノーマリーオントランジスタ20は、ゲートに電圧を入力しない場合にもドレイン電流が流れるトランジスタである。ノーマリーオントランジスタ20は、例えば、GaN系半導体を用いたHEMTである。例えば、第3電極21はソース電極であり、第4電極22はドレイン電極であり、第2制御電極23はゲート電極である。
【0029】
ノーマリーオントランジスタ20の耐圧は、ノーマリーオフトランジスタ10の耐圧より高い。ノーマリーオントランジスタ20の耐圧は、例えば600V以上1200V以下である。
【0030】
第1コンデンサ30は、第1端部31と、第2端部32と、を有する。第2端部32は、第2制御電極23に電気的に接続されている。
【0031】
第1コンデンサ30の静電容量C1は、ノーマリーオントランジスタ20の入力容量の10倍以上であることが好ましい。
【0032】
ツェナーダイオード40は、第1アノード41と、第1カソード42と、を有する。第1アノード41は、第2端部32及び第2制御電極23に電気的に接続されている。第1カソード42は、第3電極21及び第2電極12に電気的に接続されている。
【0033】
ツェナーダイオード40のツェナー電圧Vzは、第2制御電極23と第3電極21の間のノーマリーオントランジスタ20の耐圧よりも低いことが好ましい。
【0034】
第1抵抗50は、第3端部51と、第4端部52と、を有する。第3端部51は、第1端部31に電気的に接続されている。第4端部52は、第1制御電極13に電気的に接続されている。
【0035】
第1抵抗50は、電気抵抗、抵抗素子又は電気抵抗素子である。
【0036】
第1ダイオード60は、第2アノード61と、第2カソード62と、を有する。第2アノード61は、第1端部31及び第3端部51に電気的に接続されている。
【0037】
第2抵抗65は、第5端部66と、第6端部67と、を有する。第5端部66は、第2カソード62に電気的に接続されている。第6端部67は、第4端部52及び第1制御電極13に電気的に接続されている。
【0038】
第1ダイオード60と第2抵抗65が直列に接続された素子は、第1抵抗50に対し並列に接続されている。
【0039】
第2抵抗65は、電気抵抗、抵抗素子又は電気抵抗素子である。
【0040】
第2ダイオード70は、第3アノード71と、第3カソード72と、を有する。第3アノード71は、第2端部32、第1アノード41及び第2制御電極23に電気的に接続されている。第3カソード72は、第1電極11に電気的に接続されている。
【0041】
第2コンデンサ75は、第7端部76と、第8端部77と、を有する。第7端部76は、第4端部52、第6端部67及び第1制御電極13に電気的に接続されている。第8端部77は、第1電極11に電気的に接続されている。
【0042】
第2コンデンサ75の静電容量をC2、ノーマリーオフトランジスタ10のゲートソース間容量をCgs、ノーマリーオフトランジスタ10のゲートドレイン間容量をCgdとしたときに、
【0043】
【0044】
であることが好ましい。
【0045】
第3ダイオード80は、第4アノード81と、第4カソード82と、を有する。第4アノード81は、第2端部32、第3アノード71、第1アノード41及び第2制御電極23に電気的に接続されている。第4カソード82は、第1端部31、第3端部51及び第2アノード61に接続されている。
【0046】
第1端子101は、第1電極11及び第8端部77に電気的に接続されている。第2端子102は、第4電極22に電気的に接続されている。第3端子103は、第1端部31、第4カソード82、第3端部51及び第2アノード61に電気的に接続されている。第1端子101、第2端子102及び第3端子103は、半導体装置100と他の電気回路等を接続するための端子である。
【0047】
第1ダイオード60、第2ダイオード70及び第3ダイオード80は、ショットキーバリアダイオードであることが好ましい。応答速度が高いためである。なお、第1ダイオード60、第2ダイオード70及び第3ダイオード80は、例えば、PN接合ダイオードであっても良い。
【0048】
第1コンデンサ30及び第2コンデンサ75は、セラミックコンデンサであることが好ましい。セラミックコンデンサは、周波数特性に優れているためである。しかし、第1コンデンサ30及び第2コンデンサ75は、他のフィルムコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、又はタンタル電解コンデンサ等であっても良い。
【0049】
本実施形態の半導体装置100は、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20を直列に電気的に接続することにより、ノーマリーオフ動作を実現する。
【0050】
例えば半導体装置100がトランジスタ200b(
図1)に用いられる場合、第3トランジスタ電極206は第1端子101を介して第1電極11及び第8端部77に電気的に接続され、第4トランジスタ電極208は第2端子102を介して第4電極22に電気的に接続されている。
【0051】
図3は、実施形態の第1の他の態様の半導体装置110の回路図である。
【0052】
信号源97は、例えば方形波又は矩形波等の信号を出力する。
【0053】
ゲートドライブ回路96は、信号源97及び第3端子103に電気的に接続されている。そして、ゲートドライブ回路96は、第3端子103を介して、第1端部31、第3端部51、第2アノード61及び第4カソード82に電気的に接続されている。ゲートドライブ回路96は、信号源97から出力された信号に基づいて、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20を駆動する信号を出力する。
【0054】
ゲートドライブ回路96は、例えば、電子回路である。ゲートドライブ回路96は、例えば、演算回路等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアの組み合わせで構成されるコンピュータである。ゲートドライブ回路96は、複数の素子がワンチップ化されたIC、又は、複数の電子部品が配置された電子回路基板である。
【0055】
図4は、実施形態の第2の他の態様の半導体装置120の回路図である。
【0056】
半導体装置120においては、半導体装置110に制御回路98が接続されている。制御回路98は、例えば、電子回路である。制御回路98は、例えば、演算回路等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアの組み合わせで構成されるコンピュータである。制御回路98は、複数の素子がワンチップ化されたIC、又は、複数の電子部品が配置された電子回路基板である。
【0057】
図5は、ゲートドライブ回路により発生される電圧の一例を示す模式図である。
図5(a)は、第3端子103に入力される電圧が、時間t
1の間に出力される0Vと、時間t
2の間に出力されるV
g_onと、の繰り返しとなる方形波である場合を示している。
図5(b)は、第3端子103に入力される電圧が、時間t
1の間に出力されるV
1と、時間t
2の間に出力されるV
1とV
2の和と、の繰り返しとなる方形波である場合を示している。
図5(b)の場合は、V
g_on=V
1+V
2(V
g_on=|V
1|+|V
2|)である。
図5(c)は、時間t
1の間に負の電圧が出力される場合を示している。
図5(c)の場合は、V
g_on=|V
2|-|V
1|である。このように、第3端子103に入力される電圧は、時間変化する電圧である。そして、例えば、第3端子103に入力される最大の電圧がV
g_onである。なお、
図5ではt
1=t
2として図示を行ったが、t
1とt
2は異なっていてもかまわない。また、第3端子103に入力される電圧は、
図5に示したものに限定されない。また、V
g_onの測定は、市販のオシロスコープ等を用いて容易に行うことができる。
【0058】
図5に示した、第3端子103に入力される電圧は、例えば、
図3及び
図4に示した信号源97及びゲートドライブ回路96を用いて生成される。なお、他の公知の電気回路等を用いて、第3端子103に入力される電圧が生成されてもかまわない。そして、
図5に示した、第3端子103に入力される電圧は、第1端部31、第3端部51、第2アノード61及び第4カソード82に入力される。
【0059】
時間t1の間に出力される電圧は、ローレベル電圧の一例である。時間t2の間に出力される電圧は、ハイレベル電圧の一例である。
【0060】
次に、実施形態の半導体装置100、半導体装置110及び半導体装置120の動作について述べる。
【0061】
例えば、
図3及び
図4に示した信号源97及びゲートドライブ回路96を用いて、
図5(a)に示すような、0Vと、V
g_onを往復する方形波を出力する。
【0062】
図6は、ゲートドライブ回路により発生される電圧の一例、及び第2制御電極23に入力される電圧の一例を示す模式図である。
図6(a)は、ゲートドライブ回路96の出力電圧が、時間t
1の間に出力される0Vと、時間t
2の間に出力されるV
g_onと、の繰り返しとなる方形波である場合を示している。
図6(b)は、
図6(a)に示した電圧が第3端子103に入力された場合に、第2制御電極23に入力される電圧の一例である。
【0063】
第3端子103にVg_onが入力されているとき、第1コンデンサ30から第2ダイオード70を経由して電流が流れる。第2制御電極23と第3電極21の間には、第2ダイオード70の順方向電圧VFに相当する電圧が入力される。これにより、ノーマリーオントランジスタ20は、オンになる。一方、第3端子103に0Vが入力されているときには、ノーマリーオントランジスタ20のゲートソース間容量を介して第1コンデンサ30へと電流が流れる。第2制御電極23と第3電極21の間には、VFとVg_onの差分に相当する負の電圧(VF-Vg_on)が入力される。これにより、ノーマリーオントランジスタ20をオフにすることが可能である。
【0064】
第3端子103にVg_onが出力されているとき、Vg_onがノーマリーオフトランジスタ10のゲート閾値電圧Vthより大きければ、ノーマリーオフトランジスタはオンになる。
【0065】
ここで、半導体装置がオフからオンに移行する際に、ノーマリーオントランジスタ20よりもノーマリーオフトランジスタ10が先にオンになることが望ましい。もし、ノーマリーオントランジスタ20が先にオンすると、第2電極12と第3電極21との接続部に高い電圧が加わるため、耐圧の低いノーマリーオフトランジスタ10の特性が劣化する恐れがあるからである。
【0066】
本実施形態の半導体装置100では、半導体装置がオフ状態からオン状態に移行する際には、ゲートドライブ回路96から出力された電流は、第1ダイオード60を流れる。このため、第1制御電極13の充電には、第1抵抗50の影響を受けない。従って、第1制御電極13を速やかに充電できる。よって、半導体装置がオフ状態からオン状態に移行する際に、ノーマリーオントランジスタ20よりもノーマリーオフトランジスタ10を確実に先にオンさせることが可能となる。
【0067】
また、第1抵抗50を設けることにより、ノーマリーオフトランジスタ10のオフのタイミングを、ノーマリーオントランジスタ20のオフのタイミングから所望の時間だけ遅延させることができる。さらに適切な第1ダイオード60、第1抵抗50及び第2抵抗65の組合せにより、第3端子103に0Vが入力されている場合に、ノーマリーオフトランジスタ10をオンにし続けることが可能である。
【0068】
なお、信号源97及びゲートドライブ回路96により0Vが出力され、ノーマリーオフトランジスタ10及びノーマリーオントランジスタ20が共にオフである場合を考える。第4電極22に高い電圧が加わると、第3電極21の電圧が高くなる。このときに、ノーマリーオントランジスタ20のオフ状態が保たれないおそれがある。そのため、第3ダイオード80を設けて、ゲートドライブ回路96と第2制御電極23を短絡させて、ノーマリーオントランジスタ20のオフ状態が保たれるようにしている。
【0069】
第1端部31、第3端部51、第2アノード61及び第8カソード82にハイレベル電圧が入力される時間をt1、ハイレベル電圧をVg_on、ノーマリーオフトランジスタ10のゲート閾値電圧をVth、第2抵抗65の抵抗値をR2、第2コンデンサ75の静電容量をC2としたときに、
【0070】
【0071】
であることが好ましい。
【0072】
また、第1端部31、第3端部51、第2アノード61及び第8カソード82にハイレベル電圧が入力される時間をt1、第1抵抗50の抵抗値をR1、ノーマリーオフトランジスタ10の寄生容量をCiss、ハイレベル電圧をVg_on、ノーマリーオフトランジスタ10のゲート閾値電圧をVth、第2抵抗の抵抗値をR2、第2コンデンサの静電容量をC2としたときに、
【0073】
【0074】
であることが好ましい。
【0075】
なお、ノーマリーオフトランジスタ10の寄生容量Cissは、ノーマリーオフトランジスタ10のゲートソース間容量Cgsとノーマリーオフトランジスタ10のゲートドレイン間容量Cgdの和である。
【0076】
制御回路98は、第2コンデンサ75の静電容量をC2、第2抵抗65の抵抗値をR2としたときに、
【0077】
【0078】
に基づいて半導体装置120を動作させることが好ましい。
【0079】
また、制御回路98は、第1抵抗50の抵抗値をR1、第2抵抗65の抵抗値をR2、第2コンデンサ75の静電容量をC2、ノーマリーオフトランジスタ10の寄生容量をCissとしたときに、
【0080】
【0081】
に基づいて半導体装置120を動作させることが好ましい。
【0082】
以下に、実施形態の半導体装置100、半導体装置110及び半導体装置120の作用効果をまとめて記載する。
【0083】
図7は、比較形態の半導体装置における第1端部31の電圧及び第2制御電極23に入力される電圧の一例を示す模式図である。
図7(a)は、信号源97及びゲートドライブ回路96から出力される電圧の一例である。
図7(b)は、比較形態の半導体装置における第1端部31に入力される電圧の一例を示す模式図である。
図7(c)は、比較形態の半導体装置における第2制御電極23に入力される電圧の一例を示す模式図である。なお
図7(a)に示した波形はあくまで一例であり、例えば
図5、
図6及び
図8に示した波形と一致しない。
【0084】
例えば、信号源97及びゲートドライブ回路96を用いて、パルス幅の短いV
g_onを1パルスだけ出力する場合を考える。この場合、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ゲートドライブ回路96から出力されているV
g_onの電圧と比較して、第1端部31に入力される電圧は低い電圧になる。これは、パルス幅が短すぎるため、第1コンデンサ30に十分な電荷が蓄積されないためである。そしてこの場合、
図7(c)に示すように、第2制御電極23に入力される電圧はt
1時間内に第1コンデンサ30に蓄積された電荷により充電される。第1コンデンサ30に蓄積される電荷量はノーマリーオントランジスタ20のチャネルを十分に閉じるに必須な電荷量より多いことが好ましい。そのため、パルス幅の短いV
g_onが1パルスだけ出力された場合には、ノーマリーオントランジスタ20がオフにならないという問題点があった。
【0085】
そこで、実施形態の半導体装置100、半導体装置110及び半導体装置120は、第2抵抗65と、第2コンデンサ75と、を備える。
【0086】
パルス幅の短いVg_onが出力された場合に、ノーマリーオフトランジスタ10をオフにし続けることができれば、ノーマリーオントランジスタ20をオフにし続けることができる。この点について以下に説明する。ノーマリーオフトランジスタ10がオフである場合には、第3電極21の電位が、例えば、半導体装置100、半導体装置110及び半導体装置120の外部に設けられた外部電源の電圧VDDにまで高くなり得る。第3電極21の電位が高くなれば、第2制御電極23の電圧と第3電極21の電圧の差が、負の大きな電圧になり得る。そのため、ノーマリーオントランジスタ20をオフにすることが可能になる。
【0087】
第2抵抗65及び第2コンデンサ75は、ノーマリーオフトランジスタ10に接続されたRC回路として機能する。これにより、第1制御電極13への電荷の充電が遅くなるため、パルス幅の短いVg_onが1パルスだけ出力された場合に、ノーマリーオフトランジスタ10をオフにし続けることが可能になる。結果として、パルス幅の短いVg_onが1パルスだけ出力された場合に、ノーマリーオントランジスタ20をオフにし続けることが可能となる。
【0088】
第2コンデンサ75の静電容量をC2、ノーマリーオフトランジスタ10のゲートソース間容量をCgs、ノーマリーオフトランジスタ10のゲートドレイン間容量をCgdとしたときに、数式1を満たすことが好ましい。第2コンデンサ75の静電容量C2を十分に大きなものとして、ノーマリーオフトランジスタ10をオフにし続けるためである。
【0089】
図8は、実施形態の半導体装置100、半導体装置110及び半導体装置120における第1制御電極13に入力される電圧の一例を示す模式図である。
図8(a)は、ゲートドライブ回路96の出力電圧が、時間t
1の間に出力される0Vと、時間t
2の間に出力されるV
g_onと、の繰り返しとなる方形波である場合を示している。
図8(b)は、
図8(a)に示した電圧が第3端子103に入力された場合に、第1制御電極13に入力される電圧の一例を示す模式図である。
【0090】
上述のように、実施形態の半導体装置100、半導体装置110及び半導体装置120においては、ノーマリーオフトランジスタ10にRC回路が接続されていると考えられる。そのため、
図8(b)に示したように、第1制御電極13に入力される電圧は、1st Pulseが印加されたときには、時間経過と共に高くなり、V
aになる。1st Pulseが印加されなくなったときには、第1制御電極13に入力される電圧は、時間経過と共に低くなる。2nd Pulseが印加されたときには、時間経過と共に高くなり、V
bになる。
【0091】
1st Pulseでノーマリーオフトランジスタ10をオンさせないためには、Vaがノーマリーオフトランジスタ10のゲート閾値電圧Vthより小さいことが好ましい。RC回路の充放電特性を考慮すれば、ハイレベル電圧をVg_on、ノーマリーオフトランジスタのゲート閾値電圧をVth、第2抵抗の抵抗値をR2、第2コンデンサの静電容量をC2、ハイレベル電圧が入力される時間をt1としたときに、数式2を満たすことが好ましい。
【0092】
また、ノーマリーオフトランジスタ10に接続されたRC回路は、抵抗Rが第1抵抗50と第2抵抗65の合成回路であり、容量Cがノーマリーオフトランジスタ10の寄生容量Cissと第2コンデンサ75の静電容量C2の合成容量と考えられる。よって、数式3を満たすことが好ましい。上の数式2及び数式3は、どちらも好ましく用いることができる。
【0093】
また、制御回路98は、数式4又は数式5に基づいて半導体装置120を動作させることが好ましい。これらの数式は、数式2及び数式3の指数関数の中に用いられている数式である。具体的には、ノーマリーオフトランジスタ10をオフさせるためには、ハイレベル電圧が入力される時間t1に応じ上述の数式3又は数式4ができるだけ大きいことが好ましい。また、制御回路98が、公知の測定機を用いて、第1抵抗50の抵抗値R1、第2抵抗65の抵抗値R2、第2コンデンサ75の静電容量C2を測定したうえで、数式3又は数式4を計算し、数式2又は数式3を満たすようにハイレベル電圧Vg_onを制御することが好ましい。なお、上述の公知の測定機は、例えば、制御回路98に内蔵されていても良い。
【0094】
ツェナーダイオード40のツェナー電圧Vzは、第2制御電極23と第3電極21の間のノーマリーオントランジスタ20の耐圧よりも低いことが好ましい。ツェナーダイオード40はノーマリーオントランジスタ20の安全装置として機能するものであり、第2制御電極23と第3電極21の間のノーマリーオントランジスタ20の耐圧よりも低い電圧においてツェナーダイオード40が導通することが好ましいためである。
【0095】
第1コンデンサ30の静電容量C1は、ノーマリーオントランジスタ20の入力容量の10倍以上であることが好ましい。第1コンデンサ30の静電容量C1がノーマリーオントランジスタ20の入力容量の10倍より小さいと、第3端子103に入力された電圧が、十分に第2制御電極23に入力されないためである。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
10 ノーマリーオフトランジスタ
11 第1電極
12 第2電極
13 第1制御電極
20 ノーマリーオントランジスタ
21 第3電極
22 第4電極
23 第2制御電極
30 第1コンデンサ
31 第1端部
32 第2端部
40 ツェナーダイオード
41 第1アノード
42 第1カソード
50 第1抵抗
51 第3端部
52 第4端部
60 第1ダイオード
61 第2アノード
62 第2カソード
65 第2抵抗
66 第5端部
67 第6端部
70 第2ダイオード
71 第3アノード
72 第3カソード
75 第2コンデンサ
76 第7端部
77 第8端部
80 第3ダイオード
81 第4アノード
82 第4カソード
96 ゲートドライブ回路
97 信号源
98 制御回路
100 半導体装置
110 半導体装置
120 半導体装置