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特許7358229非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池
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  • 特許-非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20231002BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231002BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231002BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231002BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M4/36 E
H01M4/587
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019231498
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099948
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 直利
(72)【発明者】
【氏名】柳田 勝功
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095853(JP,A)
【文献】特開2014-199714(JP,A)
【文献】特開2016-219275(JP,A)
【文献】特開2017-062911(JP,A)
【文献】特開2019-186164(JP,A)
【文献】特開2010-267540(JP,A)
【文献】特開2007-305545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体の表面に設けられた、第1黒鉛粒子を含む第1負極合剤層と、
前記第1負極合剤層の表面に設けられた、第2黒鉛粒子を含む第2負極合剤層と、を備え、
前記第1負極合剤層と前記第2負極合剤層は、充放電時の体積変化率が相互に異なり、
前記第1負極合剤層は、前記第2負極合剤層と接する界面部と、前記界面部よりも前記負極集電体側に存在する本体部とを有し、
前記界面部の厚みtは、前記第1黒鉛粒子の平均粒径dgと、t≦dg/2の関係を満たし、
前記第1負極合剤層は、無機フィラーを含み、前記界面部における前記無機フィラーの含有率は、前記本体部における前記無機フィラーの含有率よりも高い、非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
前記無機フィラーは、セラミック粒子であり、当該セラミック粒子の平均粒径dcは、前記第1黒鉛粒子の平均粒径dgと、dc≦dg/10の関係を満たす、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項3】
前記界面部における前記無機フィラーの含有量は、前記第1負極合剤層における前記第1黒鉛粒子の含有量に対して、1質量%~10質量%である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
前記第1負極合剤層及び前記第2負極合剤層の少なくともいずれか一方は、Si系材料を含み、前記第1負極合剤層と前記第2負極合剤層では、前記Si系材料の含有率が相互に異なる、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項5】
前記第1黒鉛粒子と前記第2黒鉛粒子は、黒鉛化度が異なる、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極と、正極と、非水電解質とを備える、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
負極活物質として、Sn、Siやこれらの酸化物が高エネルギー密度の材料として注目されている。特許文献1には、二次電池の高容量及び内部短絡の抑制のために、負極集電体上にSn、Siやこれらの酸化物を含む化合物層を設け、さらに当該化合物層上に黒鉛を含む炭素材料層を設けた負極が開示されている。
【0003】
しかし、負極合剤層が2層構造を有すると、充放電の繰り返しにより上層及び下層が相互に異なる体積変化率で膨張収縮を繰り返すため、上層と下層の界面が剥離し、導通パスが切れて電池容量が低下する場合があり、サイクル特性の向上の面で特許文献1の技術は、未だ改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-266705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示の目的は、2層構造を有しつつサイクル特性が向上した負極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用負極は、負極集電体と、負極集電体の表面に設けられた、第1黒鉛粒子を含む第1負極合剤層と、第1負極合剤層の表面に設けられた、第2黒鉛粒子を含む第2負極合剤層と、を備える。第1負極合剤層と第2負極合剤層は、充放電時の体積変化率が相互に異なり、第1負極合剤層は、第2負極合剤層と接する界面部と、界面部よりも負極集電体側に存在する本体部とを有し、界面部の厚みtは、第1黒鉛粒子の平均粒径dgと、t≦dg/2の関係を満たし、第1負極合剤層は、無機フィラーを含み、界面部における無機フィラーの含有率は、本体部に含まれる無機フィラーの含有率よりも高いことを特徴とする。
【0007】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、上記の非水電解質二次電池用負極と、正極と、非水電解質とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、充放電の繰り返しによる電池容量の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例である円筒形の二次電池の縦方向断面図である。
図2】実施形態の一例である負極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記のように、従来技術では、高容量化のために2層化した負極を用いた二次電池で、充放電の繰り返しによる電池容量の低下を抑制することは困難である。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、充放電時の体積変化率が相互に異なる2層の負極合剤層の間に無機フィラーを高濃度に含む所定の厚みの界面部を設けることで、充放電の際に負極合剤層が膨張圧縮を繰り返しても、上層と下層の界面の剥離を抑制できることを見出した。上層に含まれる黒鉛粒子と、下層に含まれる黒鉛粒子との間に無機フィラーが挟まれることで、無機フィラーが楔のように機能して、黒鉛粒子同士が面方向に滑ることを抑制できるためと推察される。これにより、充放電サイクル特性の低下を抑制した以下に示す態様の非水電解質二次電池を想到するに至った。
【0011】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用負極は、負極集電体と、負極集電体の表面に設けられた、第1黒鉛粒子を含む第1負極合剤層と、第1負極合剤層の表面に設けられた、第2黒鉛粒子を含む第2負極合剤層と、を備える。第1負極合剤層と第2負極合剤層は、充放電時の体積変化率が相互に異なり、第1負極合剤層は、第2負極合剤層と接する界面部と、界面部よりも負極集電体側に存在する本体部とを有し、界面部の厚みtは、第1黒鉛粒子の平均粒径dgと、t≦dg/2の関係を満たし、第1負極合剤層は、無機フィラーを含み、界面部における無機フィラーの含有率は、本体部に含まれる無機フィラーの含有率よりも高いことを特徴とする。
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る円筒形の二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、円筒形の二次電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、外装体は円筒形に限定されず、例えば角形等であってもよい。また、以下の説明において、複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0013】
図1は、実施形態の一例である円筒形の二次電池10の軸方向断面図である。図1に示す二次電池10は、電極体14及び非水電解質(図示せず)が外装体15に収容されている。電極体14は、正極11及び負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回型の構造を有する。なお、以下では、説明の便宜上、封口体16側を「上」、外装体15の底部側を「下」として説明する。
【0014】
外装体15の開口端部が封口体16で塞がれることで、二次電池10の内部は、密閉される。電極体14の上下には、絶縁板17,18がそれぞれ設けられる。正極リード19は絶縁板17の貫通孔を通って上方に延び、封口体16の底板であるフィルタ22の下面に溶接される。二次電池10では、フィルタ22と電気的に接続された封口体16の天板であるキャップ26が正極端子となる。他方、負極リード20は絶縁板18の貫通孔を通って、外装体15の底部側に延び、外装体15の底部内面に溶接される。二次電池10では、外装体15が負極端子となる。なお、負極リード20が終端部に設置されている場合は、負極リード20は絶縁板18の外側を通って、外装体15の底部側に延び、外装体15の底部内面に溶接される。
【0015】
外装体15は、例えば有底の円筒形状の金属製外装缶である。外装体15と封口体16の間にはガスケット27が設けられ、二次電池10の内部の密閉性が確保されている。外装体15は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体16を支持する溝入部21を有する。溝入部21は、外装体15の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面でガスケット27を介して封口体16を支持する。
【0016】
封口体16は、電極体14側から順に積層された、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25、及びキャップ26を有する。封口体16を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材24を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体23と上弁体25とは各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材24が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、例えば、下弁体23が破断し、これにより上弁体25がキャップ26側に膨れて下弁体23から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体25が破断し、キャップ26の開口部26aからガスが排出される。
【0017】
以下、二次電池10を構成する正極11、負極12、セパレータ13及び非水電解質について、特に負極12を構成する負極合剤層について詳説する。
【0018】
[負極]
図2は、実施形態の一例である負極12の断面図である。負極12は、負極集電体30と、負極集電体30の表面に設けられた第1負極合剤層32と、第1負極合剤層32の表面に設けられた第2負極合剤層34と、を備える。第1負極合剤層32と第2負極合剤層34の厚みは、同じであっても相互に異なっていてもよい。第1負極合剤層32と第2負極合剤層34との厚みの比率は、例えば3:7~7:3であり、4:6~6:4が好ましい。
【0019】
負極集電体30は、例えば、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。負極集電体30の厚みは、例えば5μm~30μmである。
【0020】
第1負極合剤層32は、第1黒鉛粒子を含み、第2負極合剤層34は、第2黒鉛粒子を含む。換言すれば、第1負極合剤層32は、負極活物質として少なくとも第1黒鉛粒子を含み、第2負極合剤層34は、負極活物質として少なくとも第2黒鉛粒子を含む。第1黒鉛粒子及び第2黒鉛粒子としては、天然黒鉛、人造黒鉛等が例示できる。第1黒鉛粒子及び第2黒鉛粒子の平均粒径(体積換算のメジアン径D50、以下同じ)は、5μm~30μmが好ましく、8μm~20μmがより好ましい。第1黒鉛粒子及び第2黒鉛粒子のX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)は、各々、例えば、0.3354nm以上であることが好ましく、0.3357nm以上であることがより好ましく、また、0.340nm未満であることが好ましく、0.338nm以下であることがより好ましい。また、第1黒鉛粒子及び第2黒鉛粒子のX線回折法で求めた結晶子サイズ(Lc(002))は、各々、例えば、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、また、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。面間隔(d002)及び結晶子サイズ(Lc(002))が上記範囲を満たす場合、上記範囲を満たさない場合と比べて、二次電池10の電池容量が大きくなる傾向がある。
【0021】
第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34に含まれる負極活物質としては、上記の黒鉛粒子以外に、例えば、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む合金や酸化物等のリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する材料が挙げられる。第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34において、各々、負極活物質の総量に対する黒鉛粒子の含有量は、例えば、90質量%~100質量%とすることができる。
【0022】
第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34は、各々、さらに結着剤、増粘剤等を含んでもよい。結着剤としては、例えば、フッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA-Na、PAA-K等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
第1負極合剤層32と第2負極合剤層34は、充放電時(充放電中)の体積変化率が相互に異なる。第1負極合剤層32の体積変化率が、第2負極合剤層34の体積変化率よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。いずれの場合でも、充放電時に第1負極合剤層32と第2負極合剤層34との界面に応力がかかり、剥離が発生しやすい。例えば、第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34の少なくともいずれか一方がSi系材料を含み、第1負極合剤層32と第2負極合剤層34では、Si系材料の含有率が相互に異なる場合には、第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34の体積変化率が異なる。Si系材料は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できる材料であり、負極活物質として機能する。Si系材料としては、例えば、Si、Siを含む合金、SiO(xは0.8~1.6)等のケイ素酸化物等が挙げられる。Si系材料は、黒鉛粒子より電池容量を向上させることが可能な負極材料である。Si系材料の含有量は、電池容量の向上、急速充電サイクル特性の低下抑制等の点で、例えば、負極活物質の総量に対して1質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~7質量%であることがより好ましい。また、他の一例として、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子で黒鉛化度が異なる場合には、第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34の体積変化率が異なる。黒鉛化度が高い材料としては、天然黒鉛が例示できる。一方、黒鉛化度が低い材料としては、ハードカーボン等の人造黒鉛が例示できる。なお、第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34は、各々、1種類又は2種類以上の負極活物質を含んでもよく、相互に充放電時の体積変化率が異なる限りは、その組み合わせについては特に限定されない。
【0024】
人造黒鉛は、例えば、以下のようにして作製してもよい。主原料となるコークス(前駆体)を所定サイズに粉砕し、それらを凝集剤で凝集した後、さらにブロック状に加圧成形した状態で、2600℃以上の温度で焼成し、黒鉛化させる。黒鉛化後のブロック状の成形体を粉砕し、篩い分けることで、所望のサイズの黒鉛粒子を得る。ここで、粉砕後の前駆体の粒径や凝集させた状態の前駆体の粒径等によって、黒鉛粒子の内部空隙率を調整することができる。例えば、粉砕後の前駆体の平均粒径は、12μm~20μmの範囲であることが好ましい。また、ブロック状の成形体に添加される揮発成分の量によって、黒鉛粒子の内部空隙率を調整することもできる。コークス(前駆体)に添加される凝集剤の一部が焼成時に揮発する場合、凝集剤を揮発成分として用いることができる。そのような凝集剤としてピッチが例示される。
【0025】
図2に示すように、第1負極合剤層32は、第2負極合剤層34と接する界面部32aと、界面部32aよりも負極集電体30側に存在する本体部32bとを有する。界面部32aの厚みtは、第1黒鉛粒子の平均粒径dgと、t≦dg/2の関係を満たす。第1負極合剤層32は、無機フィラーを含み、界面部32aにおける無機フィラーの含有率は、本体部32bにおける無機フィラーの含有率よりも高い。これにより、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを無機フィラーが固定するので、第1負極合剤層32と第2負極合剤層34との界面での剥離を抑制することができる。界面部32aにおける無機フィラーの含有率は、例えば、1質量%~10質量%であり、本体部32bにおける無機フィラーの含有率は、例えば、0質量%~5質量%である。界面部32aの厚みtがdg/2超の場合には、第1負極合剤層32と第2負極合剤層34との間の導電が妨害されて二次電池10の電池抵抗が大きくなり、二次電池の出力が低下する。また、tの下限値は、例えば、dg/10とすることができる。なお、界面部32aの厚みtは負極の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察することで測定できる。界面部32aの厚みが一定でない場合は、10点測定し、その平均値をtとすることができる。
【0026】
無機フィラーは、セラミック粒子であってもよい。セラミック粒子としては、アルミナ、べーマイト、シリカが例示できる。また、セラミック粒子の平均粒径dcは、第1黒鉛粒子の平均粒径dgと、dc≦dg/10の関係を満たすことが好ましい。これにより、第1負極合剤層32と第2負極合剤層34との結合力を高め、剥離の発生をより確実に抑制することができる。セラミック粒子の平均粒径dcは、dc≧dg/30であることが好ましい。dcがdg/30未満の場合は、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子を固定する結合力が小さくなり、第1負極合剤層32と第2負極合剤層34の剥離を抑制することができない。セラミック粒子の平均粒径dcは、0.5μm~3μmが好ましく、0.8μm~2μmがより好ましい。
【0027】
界面部32aにおける無機フィラーの含有量は、第1負極合剤層32における第1黒鉛粒子の含有量に対して、1質量%~10質量%とすることができる。当該無機フィラーの含有量が、1質量%未満の場合には十分な結合力が得られず、また、10質量%超の場合には電池抵抗が大きくなり、二次電池の出力が低下する。
【0028】
次に、第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34を形成する具体的方法の一例について説明する。例えば、まず、第1黒鉛粒子及びSiO(xは0.8~1.6)を含む負極活物質と、増粘剤と、結着剤と、水等の溶媒とを混合した後に、無機フィラーを添加し、無機フィラーが分散しない程度に攪拌して、第1負極合剤スラリーを調製する。これとは別に、第2黒鉛粒子を含む負極活物質と、増粘剤と、結着剤と、水等の溶媒とを混合して、第2負極合剤スラリーを調製する。そして、負極集電体の両面に、第1負極合剤スラリーを塗布、乾燥した後、第1負極合剤スラリーによる塗膜の上に、第2負極合剤スラリーを両面に塗布、乾燥する。さらに、圧延ローラにより第1負極合剤層32及び第2負極合剤層34を圧延することで負極を形成することができる。上記のように、第1負極合剤スラリーにおいて無機フィラーが十分に分散していない状態にすることで、第1負極合剤スラリーが負極集電体30上に塗布された時に無機フィラーが表面近傍に移動し、第1負極合剤層32には、本体部32bと、本体部32bよりも無機フィラーの含有濃度が高い界面部32aとが形成される。なお、上記方法では、第1負極合剤スラリーを塗布、乾燥させてから、第2負極合剤スラリーを塗布したが、第1負極合剤スラリーを塗布後、乾燥前に、第2負極合剤スラリーを塗布してもよい。また、第1負極合剤スラリーを塗布、乾燥させて圧延した後に、第1負極合剤層32上に第2負極合剤スラリーを塗布してもよい。
【0029】
[正極]
正極11は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合剤層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を含む。
【0030】
正極11は、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を含む正極合剤スラリーを正極集電体上に塗布、乾燥して正極合剤層を形成した後、この正極合剤層を圧延することにより作製できる。
【0031】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム遷移金属酸化物が例示できる。リチウム遷移金属酸化物は、例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-y、LiCo1-y、LiNi1-y、LiMn、LiMn2-y、LiMPO、LiMPOF(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)である。これらは、1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。非水電解質二次電池の高容量化を図ることができる点で、正極活物質は、LiNiO、LiCoNi1-y、LiNi1-y(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)等のリチウムニッケル複合酸化物を含むことが好ましい。
【0032】
導電剤は、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等のカーボン系粒子などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
[セパレータ]
セパレータ13には、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート等が用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータ13の表面にアラミド系樹脂、セラミック等の材料が塗布されたものを用いてもよい。
【0035】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質(電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0036】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0037】
上記エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0038】
上記ハロゲン置換体としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等を用いることが好ましい。
【0039】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、Li(P(C)F)、LiPF6-x(C2n+1(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(SOCF、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l,mは1以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性等の観点から、LiPFを用いることが好ましい。リチウム塩の濃度は、溶媒1L当り0.8~1.8molとすることが好ましい。
【実施例
【0040】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.88Co0.09Mn0.03)を用いた。上記正極活物質が100質量部、導電剤としてのアセチレンブラックが1質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末が0.9質量部となるよう混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合剤スラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム箔(厚さ15μm)からなる正極集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、塗膜を乾燥した後、圧延ローラにより塗膜を圧延して、正極集電体の両面に正極合剤層が形成された正極を作製した。
【0042】
[負極の作製]
第1黒鉛粒子及び第2黒鉛粒子として、平均粒径が12μmでの同じ天然黒鉛を用いた。また、無機フィラーとして、平均粒径が1μmのべーマイトを用いた。天然黒鉛:SiO:カルボキシメチルセルロース(CMC):スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の質量比が、95:5:1:1となるようにこれらを混合し、水中で混練した。その混合物に、5質量部のベーマイトを添加し、ベーマイトが分散しない程度に攪拌して第1負極合剤スラリーを調製した。また、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロース(CMC):スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の質量比が、98:1:1となるようにこれらを混合し、その混合物を水中で混練して、第2負極合剤スラリーを調製した。
【0043】
第1負極合剤スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、乾燥させて第1負極合剤層を形成した。さらに、第1負極合剤層上に、上記の第2負極合剤スラリーを塗布し、乾燥して第2負極合剤層を形成した。このとき、第1負極合剤スラリーと第2負極合剤スラリーの単位面積あたりの塗布質量比は5:5とした。圧延ローラにより第1負極合剤層及び第2負極合剤層を圧延して、負極を作製した。SEMによる断面観察の結果、界面部の厚みは、3μmであった。
【0044】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、20:40:40の体積比で混合した。当該混合溶媒に対して、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットルの濃度となるように溶解させて、非水電解質を調製した。
【0045】
[試験セルの作製]
上記正極にアルミニウムリードを、上記負極にニッケルリードをそれぞれ取り付け、PP/PE/PP3層セパレータを介して正極と負極を積層して積層電極体を作製した。この電極体をアルミラミネートシートで構成される外装体内に収容し、上記非水電解質を注入した後、外装体の開口部を封止して試験セルを得た。
【0046】
[電池抵抗の評価]
上記試験セルに対して、25℃の環境下で、0.3Cの定電流で充電深度(SOC)が50%になるまで定電流充電を行い、SOC50%到達後、電流値が0.02Cになるまで定電圧充電を行った。その後、25℃の環境下で1時間保管した後に、1Cの定電流で10秒間の定電流放電を行った。直流抵抗は、以下の式のように、開回路電圧(OCV)と、放電から10秒後の閉回路電圧(CCV)との差を、放電から10秒後の放電電流で除すことで算出した。
直流抵抗=[OCV-CCV(放電10秒後)]/放電電流(放電10秒後)
【0047】
[容量維持率の測定]
環境温度25℃の下、各実施例及び各比較例の非水電解質二次電池を、0.5Cで、4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vで、0.02Cまで定電圧充電した。その後、0.5Cで、2.5Vまで定電流放電した。この充放電を1サイクルとして、200サイクル行った。以下の式により、充放電サイクルにおける容量維持率を求めた。
容量維持率=(200サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0048】
<実施例2>
第1負極合剤スラリーにSiOを添加せず、第2負極合剤スラリーに黒鉛:SiOが98:5になるようにSiOを添加したこと以外は実施例1と同様にして試験セルをそれぞれ作製し、その評価を行った。
【0049】
<比較例1>
第1負極合剤スラリーにベーマイトを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして試験セルをそれぞれ作製し、その評価を行った。
【0050】
<比較例2>
第1負極合剤スラリーにベーマイトを添加せず、天然黒鉛、ベーマイト、CMC、及びSBRを混合し、水中で混練することでベーマイトを分散させた第2負極合剤スラリーを調製したこと以外は実施例1と同様にして試験セルをそれぞれ作製し、その評価を行った。
【0051】
<比較例3>
天然黒鉛、SiO、ベーマイト、CMC、及びSBRを混合し、水中で混練することでベーマイトを分散させた第1負極合剤スラリーを調製したこと以外は実施例1と同様にして試験セルをそれぞれ作製し、その評価を行った。
【0052】
<比較例4>
実施例1で調製した第1負極合剤スラリーと第2負極合剤スラリーを混合して1層として、銅箔からなる負極集電体に塗布したこと以外は実施例1と同様にして試験セルをそれぞれ作製し、その評価を行った。
【0053】
表1に、実施例及び比較例の試験セルの評価結果をまとめた。また、表1には、第1負極合剤層及び第2負極合剤層のCMCとSBRを除く組成(成分及び割合)と界面部の厚みも併せて示す。
【0054】
【表1】
【0055】
ベーマイトを含む界面部を有する実施例においては、充放電サイクル特性が向上した。なお、電池抵抗については、界面部が形成されても変化がないことを確認した。
【符号の説明】
【0056】
10 二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 外装体、16 封口体、17,18 絶縁板、19 正極リード、20 負極リード、21 溝入部、22 フィルタ、23 下弁体、24 絶縁部材、25 上弁体、26 キャップ、26a 開口部、27 ガスケット、30 負極集電体、32 第1負極合剤層、32a 界面部、34 第2負極合剤層
図1
図2