(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】キャリア洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/04 20060101AFI20231002BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231002BHJP
B24B 37/34 20120101ALI20231002BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20231002BHJP
B08B 3/12 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
B08B3/04 A
H01L21/304 621A
H01L21/304 622L
B24B37/34
B24B55/06
B08B3/12 C
(21)【出願番号】P 2019234224
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000107734
【氏名又は名称】スピードファムクリーンシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 和俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晋
(72)【発明者】
【氏名】溝越 正勝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭彦
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-060371(JP,A)
【文献】特開2008-161982(JP,A)
【文献】特開2005-116871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00-3/14
H01L 21/304
B24B 37/34
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨機によるワークの研磨中に前記ワークの保持に使用される円盤状のキャリアを洗浄するキャリア洗浄装置であって、
前記キャリアを収納可能なフレームと、
前記フレーム内に回動可能に設けられ、外周面が前記キャリアの外周縁に形成された歯部に噛み合う駆動ギヤと、
前記駆動ギヤを介して前記キャリアを回転させる駆動機構と、
前記フレーム内に回動可能に設けられ、外周面が前記歯部に接触して回転しながら前記キャリアを支持する支持ローラ、及び、前記フレーム内に回動可能に設けられ、外周面に前記キャリアが差し込まれる案内溝が形成されたガイドローラの少なくとも一方と、
前記フレームに設けられ、前記支持ローラ又は前記ガイドローラを回動可能に支持すると共に、前記フレームに対して前記支持ローラ又は前記ガイドローラを着脱可能に取り付けるための複数のローラ保持部と、を備え、
前記複数のローラ保持部は、所定の径寸法の第1のキャリアを洗浄する際に選択される第1のローラ保持部と、前記第1のローラ保持部よりも前記キャリアの中心に近い位置に設けられて前記第1のキャリアよりも径寸法が小さい第2のキャリアを洗浄する際に選択される第2のローラ保持部と、を有し、
前記支持ローラ又は前記ガイドローラは、洗浄されるキャリアの径寸法に応じて選択された前記第1のローラ保持部及び前記第2のローラ保持部のいずれかを介して前記フレームに取り付けられる
ことを特徴するキャリア洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記フレームは、上方に向かって開放した開口を有し、前記キャリアを立てた状態で収納可能とする
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記案内溝は、前記ガイドローラの軸方向に沿って複数並んでいる
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記フレームは、上方に向かって開放した開口を有し、前記キャリアを立てた状態で収納可能とし、
前記フレーム内に回動可能に設けられ、前記キャリアの中心よりも上側に着脱可能に配置される押さえローラを備える
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項5】
研磨機によるワークの研磨中に前記ワークの保持に使用される円盤状のキャリアを洗浄するキャリア洗浄装置であって、
上方に向かって開放した開口を有し、前記キャリアを立てた状態で収納可能なフレームと、
前記フレーム内に回動可能に設けられ、前記キャリアの中心よりも下側に配置されると共に、外周面が前記キャリアの外周縁に形成された歯部に噛み合う駆動ギヤと、
前記駆動ギヤを介して前記キャリアを回転させる駆動機構と、
前記フレーム内に回動可能に設けられ、前記キャリアの中心よりも下側に配置されると共に、平坦な凹凸のない外周面が前記歯部に接触し、回転しながら前記キャリアを支持する円筒状の支持ローラと、
を備えることを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記フレーム内に回動可能に設けられ、外周面に前記キャリアが差し込まれる案内溝が形成されたガイドローラを備える
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記案内溝は、前記ガイドローラの軸方向に沿って複数並んでいる
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7の何れか一項に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記フレーム内に回動可能に設けられ、前記キャリアの中心よりも上側に着脱可能に配置される押さえローラを備える
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項9】
請求項
5に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記フレームには、複数のローラ保持部が設けられ、
前記支持ローラは、前記ローラ保持部を介して前記フレームに着脱可能に設けられる
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項10】
請求項6又は請求項7に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記フレームには、複数のローラ保持部が設けられ、
前記支持ローラ又は前記ガイドローラは、前記ローラ保持部を介して前記フレームに着脱可能に設けられる
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載されたキャリア洗浄装置において、
前記フレームの内側に設けられ、前記キャリアの差し込み方向に延び、前記キャリアが挿入される挿入案内溝を有するガイド部を備えた
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載されたキャリア洗浄装置において、
洗浄液を貯留可能な洗浄槽から出し入れ可能とする
ことを特徴とするキャリア洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨機によるワークの研磨加工中にワークを保持するキャリアを洗浄するキャリア洗浄装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から、研磨機においてワークを研磨加工する際、キャリアによってワークを保持し、このキャリアの外周縁に形成された歯部を研磨機のサンギヤとインターナルギヤに噛み合わせ、サンギヤ及びインターナルギヤを回転させてキャリアを自転、公転させる。ここで、研磨後にキャリアごとワークを洗浄する洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の洗浄装置は、ワークを洗浄することを目的としており、ワークの保持に使用されるキャリアのみを洗浄するものではない。また、ワーク研磨に使用されるキャリアは、複数の保持穴や捨て穴等が穿孔された薄板(金属製、或いはポリアミドイミド、エポキシガラス、エポキシアラミド等の樹脂製)である上、大きなものでは直径1メートル以上の円盤形状を呈している。そのため、キャリアは、撓みやすく、取り扱いが難しいので、容易に洗浄できないという問題がある。しかも、樹脂インサートが保持穴に嵌合された金属製キャリアや、樹脂インサートを嵌合する前の金属製キャリア等もあり、様々な材質・複雑な形状のキャリアをムラなく洗浄することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ワーク研磨に使用されるキャリアを容易に洗浄することができるキャリア洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のキャリア洗浄装置は、研磨機によるワークの研磨中にワークの保持に使用される円盤状のキャリアを洗浄するキャリア洗浄装置であって、キャリアを収納可能なフレームと、フレーム内に回動可能に設けられて外周面がキャリアの外周縁に形成された歯部に噛み合う駆動ギヤと、駆動ギヤを介してキャリアを回転させる駆動機構と、フレーム内に回動可能に設けられて外周面が歯部に接触して回転しながらキャリアを支持する支持ローラ、及び、フレーム内に回動可能に設けられて外周面にキャリアが差し込まれる案内溝が形成されたガイドローラの少なくとも一方と、フレームに設けられ、支持ローラ又はガイドローラを回動可能に支持すると共に、フレームに対して支持ローラ又はガイドローラを着脱可能に取り付けるための複数のローラ保持部と、を備え、複数のローラ保持部は、所定の径寸法の第1のキャリアを洗浄する際に選択される第1のローラ保持部と、第1のローラ保持部よりもキャリアの中心に近い位置に設けられて第1のキャリアよりも径寸法が小さい第2のキャリアを洗浄する際に選択される第2のローラ保持部と、を有し、支持ローラ又はガイドローラは、洗浄されるキャリアの径寸法に応じて選択された第1のローラ保持部及び第2のローラ保持部のいずれかを介してフレームに取り付けられる。
また、本発明のキャリアの洗浄装置は、研磨機によるワークの研磨中にワークの保持に使用される円盤状のキャリアを洗浄するキャリア洗浄装置であって、上方に向かって開放した開口を有し、キャリアを立てた状態で収納可能なフレームと、フレーム内に回動可能に設けられ、キャリアの中心よりも下側に配置されると共に、外周面がキャリアの外周縁に形成された歯部に噛み合う駆動ギヤと、駆動ギヤを介してキャリアを回転させる駆動機構と、フレーム内に回動可能に設けられてキャリアの中心よりも下側に配置されると共に、平坦な凹凸のない外周面が歯部に接触し、回転しながらキャリアを支持する円筒状の支持ローラと、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のキャリア洗浄装置では、ワーク研磨に使用されるキャリアを容易に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のキャリア洗浄装置を示す正面図である。
【
図2】実施例1のキャリア洗浄装置を示す側面図である。
【
図3】実施例1のキャリア洗浄装置のガイド部及びガイド部支持構造を示す斜視図である。
【
図4】実施例1のキャリア洗浄装置の駆動ギヤを示す斜視図である。
【
図5】実施例1のキャリア洗浄装置の支持ローラを示す斜視図である。
【
図6】実施例1のキャリア洗浄装置のガイドローラを示す斜視図である。
【
図7】実施例1のキャリア洗浄装置において、大径のキャリアを洗浄するときの支持ローラ及びガイドローラの配置位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のキャリア洗浄装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
以下、実施例1のキャリア洗浄装置1の構成を
図1~
図6に基づいて説明する。
【0011】
実施例1のキャリア洗浄装置1は、研磨機によるワークの研磨中にワークの保持に使用されるキャリアCを自動的に洗浄する装置である。このキャリア洗浄装置1は、洗浄槽100から出し入れ可能であり、洗浄槽100に貯留した純水等の洗浄液内にキャリアCを浸漬して洗浄することができる。ここで、洗浄液は、純水以外にも、水素水、酸性溶液、アルカリ性溶液等の洗浄液があり、さらに、これらの洗浄液に界面活性剤を混合して洗浄に使用することもできる。キャリアCには、ガラス繊維、金属粉、研磨剤(酸化セリウム等)、樹脂微粉、ワーク微粉等が汚れとして付着する。キャリアCに付着した汚れに応じた洗浄液を適宜選択することで、より効率よくキャリアCを洗浄することが可能となる。
【0012】
また、洗浄槽100の内部には複数の超音波振動子101が配置されており、超音波洗浄が可能になっている。
図1では、洗浄槽100の底面100aに一対の超音波振動子101を配置しているが、超音波振動子101の配置位置はこれに限らず、例えば、洗浄槽100の側面に取り付けてもよい。また、洗浄槽100に循環機構を取り付け、洗浄液を適宜循環させてもよい。さらに、洗浄前のキャリアCを上述の洗浄液に浸漬した後、実施例1のキャリア洗浄装置1を用いてキャリアCを超音波洗浄しても良い。
【0013】
キャリア洗浄装置1は、
図1及び
図2に示すように、フレーム10と、駆動ギヤ20と、支持ローラ30と、複数のガイドローラ40と、駆動機構50と、一対のガイドプレート60(ガイド部)とを備えている。
【0014】
フレーム10は、対向した一対の板部材11の周縁部を複数の支柱12で連結して形成され、上方に臨む位置での両側縁に配置された支柱12の間隔がキャリアCの直径よりも大きく設定されている。これにより、フレーム10は、上方に向かって開放する開口10aを有することになり、一対の板部材11の間にキャリアCを立てた状態で収納可能である。ここで、「キャリアCを立てた状態」とは、円盤状のキャリアCの中心C´に直交する軸方向が水平になった状態である。
【0015】
また、フレーム10は、一対の板部材11の間を複数の支柱12で連結しているため、一対の板部材11の間を通って洗浄液の流通が可能である。また、複数の支柱12は、板部材11の周方向に所定の間隔をあけて配置されており、複数の支柱12の間隔は任意に設定可能である。なお、各板部材11には、貫通孔を形成してもよい。板部材11に貫通孔を形成した場合には、貫通孔を介して洗浄液をフレーム10の内外に循環させることができる。さらに、貫通孔を形成したことで、フレーム10の内部が目視可能となり、キャリアCの洗浄状態を視認しやすくできる。
【0016】
一対の板部材11の互いに対向した内側面11aには、それぞれ複数(実施例1では10個)のブラケット14(ローラ保持部)と、複数(実施例1では4個)のガイドレール15とが固定されている。ここで、ブラケット14は、他方の板部材11に設けられた他のブラケット14に対向する位置に固定されている。また、ガイドレール15は、他方の板部材11に設けられた他のガイドレール15に対向する位置に固定されている。
【0017】
ブラケット14は、支持溝14aが形成されたブロック部材である。このブラケット14は、ネジや溶接などの固定手段によって板部材11に固定される。このときブラケット14は、支持溝14aが上方に開放した状態で固定される。また、支持溝14aの開口は、開放側が広がったテーパ状に傾斜している。そして、支持溝14aには、支持ローラ30又はガイドローラ40の回転軸33、43が適宜挿入され、これにより、フレーム10には、ブラケット14を介して支持ローラ30又はガイドローラ40が着脱可能に設けられる。また、複数のブラケット14のうちの予め決められた一つには、駆動ギヤ20の回転軸23が挿入される。
【0018】
ガイドレール15は、
図3に示すような棒状部材である。このガイドレール15は、ネジや溶接などの固定手段によって板部材11の内側面11aに固定される。このときガイドレール15は、長手方向が上下方向(鉛直方向)に沿った状態で固定される。ガイドレール15は、ガイドプレート60をフレーム10の内部に配置する際、ガイドプレート60に形成された係合溝62に挿入され、ガイドプレート60を着脱可能に支持する。
【0019】
さらに、一対の板部材11の互いに反対に向いた外側面11bには、
図2に示すように、複数の支持棒16が固定されている。各支持棒16は、水平方向に延在しており、キャリア洗浄装置1を洗浄槽100内に入れた際、洗浄槽100の縁102に干渉してキャリア洗浄装置1を支持する。
【0020】
駆動ギヤ20は、フレーム10の内部に回動可能に設けられ、外周面20aがキャリアCの外周縁に形成された歯部Sに噛み合う。駆動ギヤ20は、
図4に示すように、一対の円盤プレート21と、円盤プレート21の周縁に沿って並ぶと共に、一対の円盤プレート21の間に架け渡された多数の丸棒部材22とによって形成されている。この駆動ギヤ20では、丸棒部材22がキャリアCの歯部Sに嵌合することで、外周面20aが歯部Sと噛み合う。また、一方の円盤プレート21の外側面には、平歯車からなる従動歯車25が固定されている。
【0021】
さらに、一対の円盤プレート21の中心からは、回転軸23がそれぞれ突出している。なお、回転軸23は、従動歯車25の中心を貫通する。そして、回転軸23をフレーム10に固定されたブラケット14の支持溝14aに挿入し、この回転軸23を円盤プレート21或いはブラケット14に対して相対回転可能とすることで、駆動ギヤ20は、フレーム10の内部に回転可能に設けられる。ここで、駆動ギヤ20は、駆動機構50が有する駆動歯車52cに従動歯車25が噛み合う位置に設けられる。すなわち、駆動ギヤ20の回転軸23を支持するブラケット14は、駆動歯車52cの位置に応じて予め決まっており、ここでは、フレーム10の下部であって、駆動歯車52cに最も近い位置に設けられたものである。
【0022】
支持ローラ30は、フレーム10の内部に回動可能に設けられた円筒体であり、外周面30aがキャリアCの歯部Sに接触し、キャリアCと逆方向に回転しながらキャリアCを支持する。支持ローラ30は、
図5に示すような円筒体によって形成されている。また、支持ローラ30の両端面32の中心からは、回転軸33がそれぞれ突出している。そして、各回転軸33をフレーム10に固定されたブラケット14の支持溝14aに挿入し、この回転軸33を支持ローラ30の端面32或いはブラケット14に対して相対回転可能とすることで、支持ローラ30は、フレーム10の内部に回転可能に設けられる。また、支持ローラ30を支持するブラケット14は、キャリアCの大きさに応じて適宜選択される。
【0023】
ガイドローラ40は、フレーム10の内部に回動可能に設けられた円筒体であり、
図6に示すように、外周面40aに複数(ここでは五本)の案内溝41が形成されている。各案内溝41は、ガイドローラ40の周方向に沿って全周に延びるへこみであり、キャリアCを挿入可能な幅を有している。また、複数の案内溝41は、等間隔をあけてガイドローラ40の軸方向に沿って並んでいる。なお、案内溝41の開口は、開口側が広がったテーパ状に傾斜している。さらに、ガイドローラ40の両端面42の中心からは、回転軸43がそれぞれ突出している。そして、各回転軸43をフレーム10に固定されたブラケット14の支持溝14aに挿入し、この回転軸43をガイドローラ40の端面42或いはブラケット14に対して相対回転可能とすることで、ガイドローラ40は、フレーム10の内部に回転可能に設けられる。なお、回転軸43を支持するブラケット14は、キャリアCの大きさや、キャリアCを支持する位置等に応じて適宜選択される。
【0024】
駆動機構50は、フレーム10に取り付けられ、駆動ギヤ20を介してキャリアCを回転させる機構である。この駆動機構50は、
図1及び
図2に示すように、駆動モータ51と、回転伝達部52と、ローラーチェーン53とを備えている。なお、駆動機構50は、予めフレーム10に固定されている。
【0025】
駆動モータ51は、キャリアCを回転させる動力源であり、図示しない制御装置によって制御される。駆動モータ51の出力軸51aには、駆動スプロケット51bが取り付けられている。ここで、駆動モータ51は、モータケース51cに収容され、フレーム10の支持棒16上に固定されている。
【0026】
回転伝達部52は、駆動モータ51の回転駆動力を駆動ギヤ20に伝達する機構であり、回転軸52aと、従動スプロケット52bと、駆動歯車52cとを有している。回転軸52aは、フレーム10の一方の板部材11を貫通し、板部材11に設けられたベアリング52dを介して回転可能に保持されている。従動スプロケット52bは、フレーム10の外側に突出した回転軸52aの一端部に設けられ、ローラーチェーン53が噛み合っている。駆動歯車52cは、フレーム10の内側に突出した回転軸52aの他端部に設けられた平歯車であり、駆動ギヤ20の従動歯車25が噛み合っている。
【0027】
ローラーチェーン53は、駆動スプロケット51bと、回転伝達部52の従動スプロケット52bとの間に架け渡された無端チェーンである。駆動スプロケット51bが駆動モータ51によって回転すると、この回転がローラーチェーン53を介して従動スプロケット52bへと伝わり、回転軸52aと共に駆動歯車52cが回転する。
【0028】
ガイドプレート60(ガイド部)は、
図3に示すように、フレーム10の内部に着脱可能に設けられる帯状の板部材である。ガイドプレート60は、フレーム10の内部に配置されたときにキャリアCに対向する内側面60aに複数(ここでは五本)の挿入案内溝61が形成されている。各挿入案内溝61は、長手方向の全長にわたって延びるへこみであり、ガイドプレート60がフレーム10の内部に配置された際、キャリアCのフレーム10への差し込み方向である鉛直方向の全長にわたって延びる。また、各挿入案内溝61は、キャリアCを挿入可能な幅を有している。そして、複数の挿入案内溝61は、等間隔をあけてガイドプレート60の短手方向に並んでいる。複数の挿入案内溝61の間隔と、ガイドローラ40に形成された複数の案内溝41の間隔は一致している。なお、各挿入案内溝61の開口は、開口側が広がったテーパ状に傾斜している。さらに、内側面60aの両側に位置する両側面60bには、それぞれ係合溝62が形成されている。係合溝62は、ガイドプレート60の側方及びガイドレール15の挿入口側(下端部)が開放し、ガイドプレート60の長手方向の途中位置まで延びるへこみである。この係合溝62には、ガイドレール15を挿入することが可能である。
【0029】
以下、実施例1のキャリア洗浄装置1の作用を説明する。
【0030】
実施例1のキャリア洗浄装置1によってキャリアCを洗浄するには、まず、支持ローラ30と、複数のガイドローラ40と、一対のガイドプレート60をそれぞれフレーム10に取り付ける。なお、駆動ギヤ20及び駆動機構50は、予めフレーム10に設けられており、駆動ギヤ20の従動歯車25と駆動機構50の駆動歯車52cは噛み合っている。また、支持ローラ30等をフレーム10に取り付ける際、洗浄対象のキャリアCの大きさに応じて、支持ローラ30やガイドローラ40を取り付けるブラケット14や、ガイドプレート60を取り付けるガイドレール15を選択する。
【0031】
すなわち、
図7に示すように、比較的径寸法が大きいキャリアC1を洗浄する場合は、中心C1´から比較的離れた位置に設けられたブラケット14及びガイドレール15を選択する。一方、
図1に示すように、比較的径寸法が小さいキャリアCを洗浄する場合は、中心C´から比較的近い位置に設けられたブラケット14及びガイドレール15を選択する。
【0032】
そして、支持ローラ30等を取り付けるブラケット14及びガイドレール15を選択したら、選択したブラケット14の支持溝14aに支持ローラ30又はガイドローラ40の回転軸33、43を挿入し、支持ローラ30及びガイドローラ40をフレーム10に取り付ける。さらに、選択したガイドレール15に係合溝62を挿入させて、ガイドプレート60をフレーム10に取り付ける。
【0033】
なお、キャリアCの中心C´よりも上側に配置されたブラケット(以下、「ブラケット14x」という)にガイドローラ40のうちの一つ(以下、「押さえローラ40x」という)を回転可能に取り付ける場合は、押さえローラ40xを取り付ける前に、キャリアCをフレーム10に収納する。そして、キャリアCを収納した後、押さえローラ40xの回転軸43xをブラケット14xの支持溝14aに挿入する。なお、実施例1では、押さえローラ40xは、キャリアCの中心C´よりも下側に配置されるガイドローラ40と同一の形状とし、外周面40aに複数の案内溝41が形成されている。
【0034】
複数のガイドローラ40及び一対のガイドプレート60をフレーム10に取り付けたら、次に、キャリア洗浄装置1を洗浄槽100に入れる。ここで、洗浄槽100には、予め超音波振動子101を配置しておく。なお、洗浄液はキャリア洗浄装置1を入れてから貯留してもよいし、予め洗浄槽100に貯留しておいてもよい。洗浄槽100に入れられたキャリア洗浄装置1は、フレーム10が有する支持棒16が洗浄槽100の縁102に干渉し、洗浄槽100に支持される。なお、洗浄液を貯留した洗浄槽にキャリア洗浄装置1を入れる場合には、洗浄液が貯留された状態でキャリアCをキャリア洗浄装置1にセットすることができる。そのため、キャリアCに付着した汚れが乾かずに洗浄工程に入ることが可能になる。
【0035】
キャリア洗浄装置1を洗浄槽100に入れたら、キャリアCをフレーム10に差し込み、一対の板部材11の間に立てた状態で収納する。このとき、キャリアCの周方向位置を調整し、歯部Sと駆動ギヤ20の丸棒部材22とを噛み合わせる。また、支持ローラ30の外周面30aにキャリアCの歯部Sを接触させ、支持ローラ30によってキャリアCを支持する。
【0036】
また、フレーム10の内部に設けられたガイドローラ40には、案内溝41が形成されている。そのため、フレーム10にキャリアCを収納した際、キャリアCを案内溝41に差し込むことで、ガイドローラ40によってキャリアCの周縁部を軸方向に沿って支えることができる。これにより、フレーム10内でキャリアCが軸方向に傾いたり、撓んだりすることを抑制して姿勢を制御し、起立した状態を維持させることができる。
【0037】
また、実施例1のキャリア洗浄装置1は、フレーム10の内部に挿入案内溝61を有するガイドプレート60が設けられている。ここで、挿入案内溝61は、キャリアCのフレーム10への差し込み方向である鉛直方向に延びている。そのため、キャリアCをフレーム10に差し込む際、キャリアCを挿入案内溝61に沿って挿入することで、キャリアCを傾かせることなくフレーム10に収納することができる。
【0038】
さらに、この挿入案内溝61の間隔は、ガイドローラ40に形成された複数の案内溝41の間隔と一致している。これにより、挿入案内溝61に沿って挿入されたキャリアCは、そのまま差し込んでいくことで、位置調整を行わなくてもガイドローラ40に形成された案内溝41に差し込むことができる。そのため、キャリアCを容易に案内溝41に差し込むことができて、位置決めの手間を軽減することができる。
【0039】
キャリアCをフレーム10に収納したら、超音波振動子101を稼働させると共に、駆動機構50の駆動モータ51を駆動し、駆動ギヤ20を介してキャリアCを回転させる。すなわち、駆動モータ51を駆動することで駆動スプロケット51bを回転させると、ローラーチェーン53を介して従動スプロケット52bへと回転が伝達され、従動スプロケット52bが回転する。ここで、従動スプロケット52bが設けられた回転軸52aの他端には、駆動歯車52cが設けられている。そのため、従動スプロケット52bが回転することで駆動歯車52cが同時に回転する。そして、この駆動歯車52cには、駆動ギヤ20が有する従動歯車25が噛み合っているため、駆動歯車52cが回転することで従動歯車25が回転させられ、駆動ギヤ20が回転する。
【0040】
さらに、駆動ギヤ20が回転すると、この駆動ギヤ20に歯部Sが噛み合ったキャリアCが回転する。これにより、洗浄槽100内でキャリアCが回転することになり、自動的に洗浄ムラを解消し、キャリアCに対してまんべんなく超音波洗浄を行うことができる。すなわち、実施例1のキャリア洗浄装置1では、洗浄液を貯留した洗浄槽100内でワーク研磨に使用されるキャリアCを自動的に回転させることができ、容易に洗浄することができる。また、キャリアCの回転を自動的に行わせることで、作業者による手作業が不要となり、洗浄品質の安定化を図ることができる。
【0041】
また、キャリアCを収納するフレーム10は、キャリアCを立てた状態で収納する。このため、例えば、キャリアCを横に倒した状態で洗浄する場合と比べて、キャリアCの洗浄に要するスペースが少なくてすみ、スペース効率を向上させることができる。また、起立させたキャリアCの下方から超音波振動を発振することで、キャリアCを横に倒した状態で洗浄する場合よりも、超音波振動子101や発振器の数を減らすことができ、初期投資のコストダウンを図ることができる。さらに、超音波振動子101にて消費される電力の抑制も可能である。
【0042】
また、キャリアCの洗浄中、キャリアCは支持ローラ30の外周面30aに歯部Sが接触するため、キャリアCが支持ローラ30によって支持され、キャリアCを安定した状態で洗浄することができる。さらに、このとき、支持ローラ30は、キャリアCの回転に伴ってキャリアCとは逆方向に回転させられる。これにより、キャリアCが円滑に回転できると共に、キャリアCと支持ローラ30との接触位置が適宜変化することで、支持ローラ30の劣化を抑えることができる。
【0043】
さらに、キャリアCの洗浄中、このキャリアCは、ガイドローラ40の外周面40aに形成された案内溝41に差し込まれる。これにより、キャリアCはガイドローラ40によって軸方向に支えられ、起立状態を維持しながら回転することが可能となる。そして、キャリアCがフレーム10に接触することなく洗浄することができる。
【0044】
しかも、実施例1では、案内溝41がガイドローラ40の軸方向に並んで複数(実施例1では五本)形成されており、それぞれの案内溝41によってキャリアCを支えることができる。このため、案内溝41の数に合わせて、複数(五枚)のキャリアCをフレーム10の内部に起立した状態で収納することができる。この結果、複数のキャリアCを同時に洗浄することが可能となる。
【0045】
また、実施例1では、複数のガイドローラ40のうちの一つ(押さえローラ40x)が、キャリアCの中心C´よりも上側に配置されたブラケット14xに取り付けられ、フレーム10に収納されたキャリアCの中心C´よりも上側に配置されている。そのため、押さえローラ40xの案内溝41にキャリアCの上部が入り込み、洗浄中のキャリアCの上部の傾きを抑制することができる。このため、キャリアCの上部の撓みを抑え、キャリアCの姿勢を適切に制御することができる。さらに、この押さえローラ40xによってフレーム10内で立てられたキャリアCを上方から押さえることが可能となり、洗浄中にキャリアCが浮き上がることを抑制できる。
【0046】
また、フレーム10の板部材11の内側面11aには、複数のブラケット14が設けられており、支持ローラ30やガイドローラ40は、このブラケット14に回転軸33、43が挿入されることで、ブラケット14を介してフレーム10に着脱可能に設けられている。このため、支持ローラ30やガイドローラ40の回転軸33、43を挿入するブラケット14を選択することにより、
図1や
図7に示すように、大きさの異なるキャリアC、C1であっても、同一のキャリア洗浄装置1によって洗浄することができる。
【0047】
そして、実施例1のキャリア洗浄装置1は、洗浄液を貯留可能な洗浄槽100から出し入れ可能となっている。これにより、フレーム10に収納した複数のキャリアCを洗浄槽100から同時に出し入れすることができたり、支持ローラ30やガイドローラ40の配置換えを容易に行ったりすることができる。また、フレーム10や、支持ローラ30、ガイドローラ40の洗浄等のメンテナンスを容易に行うことができる。さらに、実施例1では、洗浄槽100の内部に超音波振動子101が配置されているため、フレーム10に収納したキャリアCを超音波洗浄することができる。
【0048】
以上、本発明のキャリア洗浄装置を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0049】
実施例1のキャリア洗浄装置1は、駆動機構50が、ローラーチェーン53を介して駆動モータ51の回転駆動力を回転伝達部52に伝達する構成としたがこれに限らない。例えば、駆動モータ51によって、駆動ギヤ20に設けた従動歯車25に噛み合う駆動歯車52cを直接回転させたり、駆動ギヤ20を直接回転させたりしてもよい。
【0050】
また、実施例1では、駆動ギヤ20をフレーム10の下部に設け、キャリアCの重みを駆動ギヤ20に作用させ、駆動ギヤ20がキャリアCにしっかり噛み合う例を示したが、これに限らない。例えば、フレーム10の開口10aの付近等の任意の位置に駆動ギヤ20を配置してよい。
【0051】
また、実施例1のキャリア洗浄装置1では、フレーム10が上方に向かって開放した開口10aを有し、キャリアCを立てた状態で収納可能とする例を示したが、これに限らない。フレームに収納したキャリアCを、フレーム内に回動可能に設けられた駆動ギヤを介して回転させられればよい。このため、キャリアCを横に倒した状態、つまりキャリアCの中心C´に直交する軸方向が鉛直方向に向いた状態でキャリアCを収納するフレームであってもよい。
【0052】
実施例1では、外周面30aが平坦な凹凸のない支持ローラ30と、外周面40aに案内溝41が形成されたガイドローラ40とを備える例を示したが、これに限らない。支持ローラ30とガイドローラ40のいずれか一方のみを備えるものであってもよい。さらに、支持ローラ30やガイドローラ40の配置位置は、実施例1に示すものに限られず、任意の位置に配置することができる。また、ブラケット14の位置や数も、任意に設定することができる。
【0053】
さらに、支持ローラ30の外周面30aや、ガイドローラ40又は押さえローラ40xの外周面40aに凹凸やギヤ形状を形成し、支持ローラ30や、ガイドローラ40、押さえローラ40xをキャリアCの歯部Sに噛み合わせてもよい。
【0054】
また、実施例1では、押さえローラ40xをガイドローラ40のうちの一つで構成し、キャリアCの中心C´よりも下側に配置されるガイドローラ40と同一の形状とする例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、支持ローラ30のような外周面40aが平坦な円筒体によって押さえローラ40xを形成してもよい。この場合であっても、キャリアCを上方から押さえることが可能となり、洗浄中にキャリアCが浮き上がることを抑制できる。なお、押さえローラ40xは、洗浄中のキャリアCが外周面40aに常時接触する位置に設けてもよいし、キャリアCが僅かに浮き上がったときに外周面40aに接触する位置に設けてもよい。
【0055】
また、実施例1では、フレーム10を対向した一対の板部材11の周縁部を複数の支柱12で連結して形成し、フレーム10の内外を洗浄液が流通可能とすると共に、キャリア洗浄装置1を洗浄槽100から出し入れ可能とする例を示した。しかしながら、これに限らず、例えば、フレーム10を、洗浄液を貯留可能な容器形状としてもよい。なお、この場合には、フレーム10の内部に超音波振動子を配置することで、超音波洗浄が可能となる。
【0056】
また、実施例1では、フレーム10を一対の板部材11を複数の支柱12によって連結して形成する例を示したが、これに限らない。例えば、一対の板部材11及び複数の支柱12を一体成型したフレームであってもよい。
【0057】
また、実施例1では、洗浄槽100が、キャリアCのほぼ全てを収納できる深さを有する例を示したが、これに限らない。例えば、キャリアCの半径程度を浸漬できる深さの洗浄槽100であっても、キャリアCが回転することで全域を洗浄することが可能である。また、洗浄槽100の深さが浅いほど、洗浄槽100の底面100aへのアクセスが良くなり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0058】
また、実施例1では、支持ローラ30又はガイドローラ40をフレーム10に着脱可能に取り付けるローラ保持部としてブラケット14をフレーム10の内側に設けた例を示した。しかし、ローラ保持部は、支持ローラ30やガイドローラ40を着脱可能に保持できればよいため、これに限らない。例えば、フレーム10の板部材11にローラ保持部となる貫通孔を形成し、この貫通孔に支持ローラ30やガイドローラ40の回転軸33、43を差し込むことで、支持ローラ30等をフレーム10に着脱可能に設けるようにしてもよい。
【0059】
また、実施例1では、キャリア洗浄装置1を洗浄槽100に入れてから、フレーム10にキャリアCを収納する例を示したが、これに限らない。例えば、フレーム10にキャリアCを収納した後、キャリアCがセットされたキャリア洗浄装置1を洗浄槽100に入れるようにしてもよい。
【0060】
そして、本発明のキャリア洗浄装置によって洗浄されるキャリアCは、ウェーハ研磨加工後の使用済みのキャリアであってもよいし、研磨加工に使用する前のキャリアであってもよい。また、本発明のキャリア洗浄装置を用いて、キャリア製造時に行うラップ加工の前など、様々なキャリア製造工程の間や、製造工程終了後にキャリアを洗浄してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 キャリア洗浄装置
10 フレーム
11 板部材
12 支柱
14 ブラケット
15 ガイドレール
20 駆動ギヤ
21 円盤プレート
22 丸棒部材
23 回転軸
25 従動歯車
30 支持ローラ
33 回転軸
40 ガイドローラ
41 案内溝
43 回転軸
40x 押さえローラ
50 駆動機構
51 駆動モータ
52 回転伝達部
52c 駆動歯車
53 ローラーチェーン
60 ガイドプレート(ガイド部)
61 挿入案内溝