IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電波工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図1
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図2
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図3
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図4
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図5
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図6
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図7
  • 特許-発振装置およびシンセサイザシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】発振装置およびシンセサイザシステム
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/14 20060101AFI20231002BHJP
   H03L 7/095 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H03L7/14
H03L7/095
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020029632
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021136506
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-040967(JP,A)
【文献】特開2006-067350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/14
H03L 7/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、
前記発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号と、前記発振信号が前記基準信号にロックしていることを示すロック信号とを出力するPLL回路と、
一定の電圧レベルの第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、
前記基準信号を検出する基準信号検出部と、
前記基準信号の検出結果と前記ロック信号とに基づき、前記第1切換部を制御する制御部と
を備え
前記制御部は、
前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果と前記ロック信号とを受け取ったことに応じて、前記PLL回路を前記発振器に接続し、
前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記発振器に接続し、
前記基準信号検出部から前記基準信号を検出した検出結果を受けとってから予め定められた時間が経過しても前記PLL回路から前記ロック信号を受け取っていない場合、
前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果を継続して出力していることを条件に、前記第2信号出力部が出力する前記第2信号の電圧レベルを変更する指示信号を前記第2信号出力部に供給する、
発振装置。
【請求項2】
入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、
前記発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号と、前記発振信号が前記基準信号にロックしていることを示すロック信号とを出力するPLL回路と、
前記第1信号の検出結果に基づく一定の電圧レベルの第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、
前記基準信号を検出する基準信号検出部と、
前記基準信号の検出結果と前記ロック信号とに基づき、前記第1切換部を制御する制御部と
前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部と、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記信号検出部に接続する第2切換部と
を備える、発振装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果と前記ロック信号とを受け取ったことに応じて、前記PLL回路を前記発振器に接続し、
前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記発振器に接続する、
請求項に記載の発振装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記基準信号検出部から前記基準信号を検出した検出結果を受けとってから予め定められた時間が経過しても前記PLL回路から前記ロック信号を受け取っていない場合、
前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果を継続して出力していることを条件に、前記第2信号出力部が出力する前記第2信号の電圧レベルを変更する指示信号を前記第2信号出力部に供給する、
請求項に記載の発振装置。
【請求項5】
前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部を更に備え、
前記第2信号出力部は、前記第1信号の検出結果に基づく前記第2信号を出力する、
請求項1記載の発振装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2切換部を制御して、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果に応じて、前記PLL回路を前記信号検出部に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記信号検出部に接続する、請求項に記載の発振装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の前記発振装置と、
入力する電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の発振信号に基づく信号と、前記発振装置が出力する発振信号との位相を比較して、比較結果に応じた駆動信号を前記電圧制御発振器に出力するPLL制御装置と
を備える、シンセサイザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置およびシンセサイザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一の周波数で発振する発振素子を用いて異なる周波数の発振信号を安定に出力させる回路として、PLL(Phase Locked Loop)回路といった位相同期回路が知られている。このようなPLL回路において、基準信号が供給されなくなっても、予め定められた電気信号を発振素子に供給する自走モードに切り換えることで、発振信号の出力を継続させる発振装置が知られている(例えば、特許文献1~4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-40967号公報
【文献】特開2018-148514号公報
【文献】特開2017-92738号公報
【文献】特開2009-159013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような発振装置は、基準信号の位相と発振信号の位相とを比較して制御するので、基準信号および発振信号の周波数が一致していても、PLL回路が発振信号を基準信号にロックさせるように、位相を調節して発振周波数を変動させてしまうことがある。例えば、外部基準信号が入力したことに対応して、自走モードから外部基準信号に同期させるモードに切り換えると、発振信号の周波数が大きく変動してしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、PLL回路を有する発振装置において、外部基準信号に同期させる状態と自走モードで動作させる状態とを切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、前記発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号と、前記発振信号が前記基準信号にロックしていることを示すロック信号とを出力するPLL回路と、一定の電圧レベルの第2信号を出力する第2信号出力部と、前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、前記基準信号を検出する基準信号検出部と、前記基準信号の検出結果と前記ロック信号とに基づき、前記第1切換部を制御する制御部とを備える、発振装置を提供する。
【0007】
前記制御部は、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果と前記ロック信号とを受け取ったことに応じて、前記PLL回路を前記発振器に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記発振器に接続してもよい。
【0008】
前記制御部は、前記基準信号検出部から前記基準信号を検出した検出結果を受けとってから予め定められた時間が経過しても前記PLL回路から前記ロック信号を受け取っていない場合、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果を継続して出力していることを条件に、前記第2信号出力部が出力する前記第2信号の電圧レベルを変更する指示信号を前記第2信号出力部に供給してもよい。
【0009】
前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部を更に備え、前記第2信号出力部は、前記第1信号の検出結果に基づく前記第2信号を出力してもよい。
【0010】
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記信号検出部に接続する第2切換部を更に備えてもよい。
【0011】
前記制御部は、前記第2切換部を制御して、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果に応じて、前記PLL回路を前記信号検出部に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記信号検出部に接続してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、第1の態様の前記発振装置と、入力する電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器の発振信号に基づく信号と、前記発振装置が出力する発振信号との位相を比較して、比較結果に応じた駆動信号を前記電圧制御発振器に出力するPLL制御装置とを備える、シンセサイザシステムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PLL回路を有する発振装置において、外部基準信号と同期させる状態と自走モードで動作させる状態とを切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るシンセサイザシステム10の構成例を示す。
図2】比較対象の発振装置20の構成例を示す。
図3】本実施形態に係る発振装置100の第1構成例を示す。
図4】本実施形態に係る発振装置100の第2構成例を示す。
図5】本実施形態に係る発振装置100の第3構成例を示す。
図6】第3構成例の発振装置100の動作フローの一例を示す。
図7】比較対象の発振装置20の発振周波数の変化の一例を示す。
図8】第3構成例の発振装置100の発振周波数の変化の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[シンセサイザシステム10の構成例]
図1は、本実施形態に係るシンセサイザシステム10の構成例を示す。シンセサイザシステム10は、予め定められた周波数帯域の発振信号を出力する。シンセサイザシステム10は、例えば、数十MHz程度から数十GHz程度の範囲の発振信号を出力する。シンセサイザシステム10は、一例として、470MHz程度から770MHz程度の範囲の発振信号を出力する。シンセサイザシステム10は、発振装置100と、電圧制御発振器110と、PLL制御装置120と、出力調整部130と、制御部140とを備える。
【0016】
発振装置100は、外部から供給される基準信号に同期して、予め定められた周波数の発振信号を出力する。発振装置100は、例えば、数MHz程度から数十MHz程度の周波数の発振信号を出力する。本実施形態において、発振装置100は、略40MHzの周波数の発振信号を出力する例を説明する。また、基準信号の周波数を略10MHzとする。
【0017】
電圧制御発振器110は、入力する電圧に応じた周波数の発振信号を出力する、発振周波数可変の発振器である。電圧制御発振器110は、例えば、数十MHz程度から数十GHz程度の範囲の周波数を有する発振信号を出力する。
【0018】
PLL制御装置120は、電圧制御発振器110の発振信号に基づく信号と、発振装置100が出力する発振信号との位相を比較して、比較結果に応じた駆動信号を電圧制御発振器110に出力する。PLL制御装置120は、例えば、電圧制御発振器110の発振信号を分周する分周器と、分周器の出力信号の位相と発振装置100の発振信号の位相とを比較する位相比較器と、位相比較器の比較結果を平滑化するループフィルタとを有する。
【0019】
PLL制御装置120が有する分周器は、制御信号に応じて分周比が可変の分周器である。PLL制御装置120は、分周器の分周比を異ならせることで、電圧制御発振器110の発振信号を異なる周波数に変更する駆動信号を出力する。PLL制御装置120の具体的な構成は既知なので、詳細についての説明は省略する。
【0020】
出力調整部130は、電圧制御発振器110が出力する発振信号の信号レベルを調整する。出力調整部130は、例えば、可変アッテネータ132、増幅器134、信号レベル検出回路136、フィルタ部138等を有する。
【0021】
可変アッテネータ132は、入力信号の信号レベルを減衰させる。可変アッテネータ132は、例えば、制御信号に応じて減衰量が可変のアッテネータである。可変アッテネータ132は、増幅器134の前段および/または後段に設けられている。図1は、可変アッテネータ132が増幅器134の前段に設けられている例を示す。増幅器134は、入力する信号を増幅して出力する。増幅器134は、増幅率が固定の増幅器を有してよく、これに代えて、制御信号に応じて増幅率が可変の増幅器を有してもよい。
【0022】
信号レベル検出回路136は、シンセサイザシステム10の出力信号の信号レベルを検出する。信号レベル検出回路136は、例えば、増幅器134の出力信号の信号レベルを検出する。信号レベル検出回路136は、検出した信号レベルの情報を制御部140に供給する。
【0023】
フィルタ部138は、電圧制御発振器110が出力する発振信号を通過させ、当該発振信号の周波数帯域とは異なる周波数の信号成分を低減させる。フィルタ部138は、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタのうち少なくとも1つを有する。
【0024】
制御部140は、発振装置100、PLL制御装置120、および出力調整部130を制御する。制御部140は、例えば、基準信号の検出結果に応じた制御信号を発振装置100に供給して、発振装置100が出力する発振信号の周波数を安定化させる。また、制御部140は、出力すべき周波数に応じた制御信号をPLL制御装置120に供給して、電圧制御発振器110が出力する発振信号の周波数を設定する。
【0025】
制御部140は、出力調整部130から受け取った信号レベルの情報に応じた制御信号を出力調整部130に供給して、出力調整部130が出力する出力信号を予め定められた信号レベルに調節してもよい。制御部140は、例えば、外部から受け取る指示信号に応じて、発振信号の周波数、信号レベル等を制御してもよい。また、制御部140は、ユーザ等からの出力周波数、信号レベル等の指示を受け付ける入力部等を更に有してもよい。
【0026】
制御部140は、集積回路等で構成されていることが望ましい。例えば、制御部140は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、および/またはCPU(Central Processing Unit)を含む。
【0027】
制御部140の少なくとも一部をコンピュータ等で構成する場合、当該制御部140は、記憶部を含む。記憶部は、一例として、制御部140を実現するコンピュータ等のBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、および作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部は、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、および/または当該アプリケーションプログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してよい。即ち、記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)および/またはSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでよい。
【0028】
CPU等のプロセッサは、記憶部に記憶されたプログラムを実行することによって制御部140として機能する。制御部140は、GPU(Graphics Processing Unit)等を含んでもよい。
【0029】
以上の本実施形態に係るシンセサイザシステム10は、電圧制御発振器110が出力する予め定められた周波数帯域の発振信号の周波数および信号レベルを安定化させて出力する。シンセサイザシステム10は、基準信号の供給が途絶えても、発振装置100を制御することで、出力する発振信号の周波数および信号レベルの変動を低減させる。このような発振装置100を説明するために、まずは比較対象の発振装置について説明する。
【0030】
[比較対象の発振装置20の構成例]
図2は、比較対象の発振装置20の構成例を示す。発振装置20は、外部から供給される基準信号に同期して、予め定められた周波数の発振信号を出力する。図2は、発振装置20が略40MHzの周波数の発振信号を出力する例を示す。発振装置20は、発振器210と、PLL回路220と、定電圧出力部230と、第1切換部240と、基準信号検出部250とを備える。なお、発振装置20の動作は、制御部140によって制御される。
【0031】
発振器210は、入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する。発振器210は、0.1ppm程度以下の周波数安定度を有することが望ましい。発振器210は、例えば、入力する電圧に応じて出力する発振信号の周波数を微調整可能なOCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)等の水晶発振器である。
【0032】
PLL回路220は、発振器210の発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号を出力する。PLL回路220は、例えば、発振器210の発振信号を分周する分周器と、分周器の出力信号の位相と基準信号の位相とを比較する位相比較器と、位相比較器の比較結果を平滑化するループフィルタとを有する。PLL回路220は、ループフィルタの出力を第1信号として出力する。
【0033】
PLL回路220は、位相比較器の比較結果を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をループフィルタに供給するチャージポンプ回路を更に有してもよい。また、PLL回路220は、位相比較器による比較結果をロック検出信号として出力してもよい。PLL回路220は、集積回路で構成されていてもよい。PLL回路220の具体的な構成は既知なので、詳細についての説明は省略する。
【0034】
定電圧出力部230は、予め定められた略一定の電圧を出力する。予め定められた略一定の電圧は、PLL回路220が安定な動作をしている状態において出力する電圧と略一致する電圧である。定電圧出力部230は、例えば、略一定の電圧の値を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された電圧値をアナログ信号に変換するDA変換器とを有する。この場合、記憶部および記憶部からデータを読み出す構成等は、制御部140に設けられていてもよい。
【0035】
第1切換部240は、制御信号に応じて、PLL回路220および定電圧出力部230のいずれか一方を発振器210に接続する。第1切換部240は、例えば、2入力1出力のアナログスイッチである。なお、第1切換部240および発振器210の間には、ノイズ等を低減させるためのフィルタ等が設けられていてもよい。
【0036】
基準信号検出部250は、基準信号を検出する。基準信号検出部250は、基準信号が入力しているか否かを検出する。基準信号検出部250は、例えば、時間とともに変化する信号の実効的な大きさを示す実効値RMS(Root Mean Square)を検出する。基準信号検出部250は、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲内であるか否かを検出してもよい。基準信号検出部250は、検出結果を制御部140に供給する。
【0037】
制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果に応じて、第1切換部240を制御する。制御部140は、例えば、基準信号検出部250が基準信号を検出した検出結果に応じて、PLL回路220を発振器210に接続する。制御部140は、また、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲内である検出結果に応じて、PLL回路220を発振器210に接続してもよい。これにより、発振器210は、PLL回路220による位相制御によって発振周波数が安定化される。本実施形態において、PLL回路220による位相制御によって発振器210を動作させている状態を位相制御モードと呼ぶ。
【0038】
制御部140は、基準信号検出部250が基準信号を検出していない検出結果に応じて、定電圧出力部230を発振器210に接続する。制御部140は、また、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲外である検出結果に応じて、定電圧出力部230を発振器210に接続してもよい。
【0039】
例えば、基準信号を発生させる信号源が故障した場合、信号源と発振装置20との接続配線の断線等、基準信号の入力に異常が発生している場合、制御部140は、略一定の電圧を発振器210に供給する。略一定の電圧は、安定動作をしているPLL回路220から出力される電圧と略一致するので、発振器210は、略一定の電圧に対応する発振周波数の発振信号を安定に出力する。なお、発振装置20が基準信号を用いずに、略一定の電圧を発振器210に供給して動作している状態を自走モードと呼ぶ。
【0040】
以上のように、発振装置20は、基準信号が供給されなくなっても、予め定められた電気信号を発振器210に供給する自走モードに切り換えることで発振信号の出力を継続させることができる。また、制御部140は、基準信号の供給が復活した場合は、PLL回路220を発振器210に接続してもよい。これにより、一時的に基準信号の供給が切断されても、発振装置20は、発振器210からの発振信号の出力を継続して出力させることができる。
【0041】
しかしながら、発振装置20のPLL回路220は、基準信号の位相と発振信号の位相とを比較して制御するので、基準信号および発振信号の周波数が一致していても、位相が略一致していない場合は、第1信号を変更して位相を一致させるように動作する。例えば、基準信号が入力したことに対応して自走モードから位相制御モードに切り換える場合、PLL回路220が位相を一致させるように動作して、発振信号の周波数が大きく変動してしまうことがあった。
【0042】
そこで、本実施形態に係る発振装置100は、発振信号が基準信号にロックしていることを示すロック信号を用いることで、自走モードから位相制御モードに切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できるようにする。このような発振装置100について次に説明する。
【0043】
[発振装置100の第1構成例]
図3は、本実施形態に係る発振装置100の第1構成例を示す。第1構成例の発振装置100において、図2に示された比較対象の発振装置20の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第1構成例の発振装置100は、発振器210と、PLL回路220と、第1切換部240と、基準信号検出部250と、第2信号出力部310とを備える。なお、発振装置100の動作は、制御部140によって制御される。
【0044】
第1構成例の発振装置100において、PLL回路220は、第1信号と、ロック信号とを出力する。ロック信号は、発振器210の発振信号が基準信号にロックしていることを示す信号である。ロック信号は、例えば、発振信号および基準信号を位相比較器が比較して出力する比較信号である。位相比較器は、一例として、位相が一致している場合にハイレベルとなり、位相が一致していない場合にローレベルとなるデジタル信号のロック信号を出力する。PLL回路220は、このようなロック信号を制御部140に供給する。
【0045】
第2信号出力部310は、一定の電圧レベルの第2信号を出力する。図3は、第2信号出力部310が制御部140から受け取る制御信号に基づく第2信号を出力する例を示す。この場合、第2信号出力部310は、DA変換器を有し、制御部140から受け取るデジタル信号をアナログ信号に変換した結果を第2信号として出力する。
【0046】
これに代えて、発振装置100は、第2信号に対応するデジタル値を記憶する記憶部を有し、第2信号出力部310は、制御部140を介さずに記憶部からデジタル値を読み出して第2信号を出力してもよい。第2信号は、例えば、予め定められた略一定の電圧であり、PLL回路220が安定な動作をしている状態において出力する電圧と略一致する電圧である。
【0047】
第1切換部240は、制御信号に応じて、PLL回路220および第2信号出力部310のいずれか一方を発振器210に接続する。制御部140は、例えば、基準信号検出部250が基準信号を検出していない検出結果に応じて、第2信号出力部310を発振器210に接続する。この場合、制御部140は、基準信号を検出していない検出結果を受け取ると速やかに第2信号出力部310を発振器210に接続することが好ましい。また、制御部140は、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲外である検出結果に応じて、第2信号出力部310を発振器210に接続してもよい。
【0048】
このように、基準信号を発生させる信号源が故障した場合、信号源と発振装置100との接続配線の断線等、基準信号の入力に異常が発生している場合、制御部140は、第1信号の電圧に相当する第2信号を発振器210に供給する。この場合の制御部140の動作は、図2で説明した制御部140の動作と同様であり、基準信号が供給されなくなると、位相制御モードから自走モードに切り換えることで発振信号の出力を継続させる。
【0049】
また、制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果とPLL回路220によるロック信号とに基づき、第1切換部240を制御する。制御部140は、例えば、基準信号検出部250が基準信号を検出した検出結果とロック信号とを受け取ったことに応じて、PLL回路220を発振器210に接続する。なお、図2において、制御部140は、基準信号の供給が復活した場合、PLL回路220を発振器210に接続して自走モードから位相制御モードに切り換える例を説明した。
【0050】
自走モードは位相制御をしていないので、一定電圧で駆動していても、発振器210から出力する発振信号の位相が徐々にずれてしまうことがある。そして、自走モードから位相制御モードに切り換えると、発振器210の発振信号をPLL回路220が分周した分周信号の周波数と基準信号の周波数とが略一致したとしても、分周信号の位相と基準信号の位相とが異なってしまうことがある。この場合、PLL回路220は、分周信号の位相と基準信号の位相とを一致させるように動作するので、発振器210の発振周波数を一時的に大きく変動させてしまうことがある。
【0051】
そこで、本実施形態に係る制御部140は、基準信号検出部250から基準信号を検出した検出結果を受信しただけでは、位相制御モードへと切り換えない。制御部140は、基準信号検出部250から基準信号を検出した検出結果を受けとったことを条件に、PLL回路220からロック信号を受け取ったことに応じて、位相制御モードへと切り換える。
【0052】
このように、発振装置100は、基準信号が入力しても自走モードを継続させ、PLL回路220において発振器210の発振信号が基準信号にロックしてから位相制御モードに切り換える。これにより、自走モードから位相制御モードへの切り換えにおいて、発振信号の位相のずれを低減させて、発振周波数の変動を低減できる。
【0053】
なお、自走モードにおいては、第2信号出力部310が発振器210に略一定の電圧の第2信号を供給するので、発振信号の位相が大きく変化することはほとんどない。したがって、発振信号の位相と基準信号の位相とが大きく異なる場合、自走モードを継続させても、PLL回路220において発振器210の発振信号が基準信号にロックするまでには長い時間がかかってしまうことがある。そこで、制御部140は、PLL回路220のロック時間を短縮する目的で、発振器210に供給する第2信号の電圧レベルを変更してもよい。
【0054】
例えば、制御部140は、基準信号検出部250から基準信号を検出した検出結果を受けとってから、PLL回路220のロック信号を受け取っていない状態が継続しているか否かを判断する。制御部140は、予め定められた時間が経過しても、PLL回路220からロック信号を受け取っていない場合、基準信号検出部250が基準信号を検出した検出結果を継続して出力していることを条件に、第2信号出力部310が出力する第2信号の電圧レベルを変更する指示信号を第2信号出力部310に供給する。
【0055】
ここで、第2信号の電圧レベルを変更すると、発振器210の発振周波数が変化する。したがって、制御部140は、発振器210の発振周波数が許容される変動の範囲内で、第2信号の電圧レベルを変更する。一例として、発振器210が数百MHz程度の発振信号を出力する場合、発振周波数の変動が400Hz程度以下となる範囲で、制御部140は、第2信号の電圧レベルを変更する。
【0056】
これにより、発振装置100は、基準信号が入力した場合、発振周波数の変動を予め定められた周波数の変動範囲に抑制しつつ、PLL回路220のロック時間を短縮させて自走モードから位相制御モードへと速やかに切り換えることができる。このように、本実施形態に係る発振装置100は、発振信号が基準信号にロックしていることを示すロック信号を用いることで、自走モードから位相制御モードに切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できる。
【0057】
以上の本実施形態に係る発振装置100を構成する部品等は、環境変動、経時変化等により、特性が変化してしまうことがある。例えば、発振器210の入力電圧に対する出力周波数の応答特性が変化してしまうことがある。この場合、位相制御モードから自走モードへの切り換え、および/または、自走モードから位相制御モードへの切り換えにおいて、発振信号の周波数が変動してしまうことがあった。
【0058】
そこで、本実施形態に係る発振装置100は、更にPLL回路220の出力電圧を監視し、監視した結果に基づく信号を用いることで、位相制御モードおよび自走モードの間を切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できるようにしてもよい。このような発振装置100について次に説明する。
【0059】
[発振装置100の第2構成例]
図4は、本実施形態に係る発振装置100の第2構成例を示す。第2構成例の発振装置100において、図3に示された第1構成例の発振装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の発振装置100は、信号検出部320を更に備える。
【0060】
信号検出部320は、基準信号がPLL回路220に入力されている間にPLL回路220が出力する第1信号を検出する。信号検出部320は、例えば、第1切換部240から発振器210へと伝送される信号を分岐した信号が入力される。信号検出部320は、例えば、AD変換器を有し、第1信号の電圧をデジタル値に変換した結果を検出結果として出力する。信号検出部320は、アッテネータおよび/または増幅器を更に有し、第1信号の電圧レベルを調整してからデジタル値に変換してもよい。
【0061】
信号検出部320は、例えば、第1信号の検出結果を制御部140に供給する。この場合、制御部140は、信号検出部320の検出結果を受けとり、受け取った検出結果を記憶部等に記憶する。そして、制御部140は、信号検出部320の検出結果に基づくデジタル信号を第2信号出力部に供給する。
【0062】
第2信号出力部310は、第1信号の検出結果に基づく第2信号を出力する。第2信号出力部310は、例えば、制御部140から受け取る第1信号のデジタル信号に対応する第2信号を出力する。これに代えて、信号検出部320は、記憶部等に第1信号の検出結果を記憶し、第2信号出力部310は、制御部140を介さずに直接記憶部から検出結果を読み出してもよい。
【0063】
以上の第2構成例の発振装置100は、自走モードに切り換える場合、第1信号の電圧に相当する第2信号を発振器210に供給する。第2信号の電圧は、安定動作をしているPLL回路220から出力される電圧の検出結果なので、発振器210は、PLL回路220で制御されていた場合に出力していた発振信号と同様の周波数の発振信号を継続して出力できる。
【0064】
このように、第2構成例の発振装置100は、第1信号の検出結果に対応する第2信号を用いるので、第2信号の電圧値を第1信号の電圧値と略一致させた値にすることができる。したがって、位相制御モードから自走モードへの切り換えが生じても、切換時に発生する発振周波数の変動を低減できる。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る発振装置100は、PLL回路220が出力する第1信号の検出結果を用いることで、発振周波数の変動を低減させる。したがって、信号検出部320は、PLL回路220による位相制御モードで動作をしている期間において、定期的に第1信号を検出し、検出結果を更新することが望ましい。また、信号検出部320の単位時間当たりの第1信号の検出タイミングは、多い方が好ましい。
【0066】
なお、PLL回路220が出力する第1信号が変動することもあり、また、第1信号の検出結果に誤差が含まれることもある。そこで、第2信号出力部310が出力する第2信号の電圧レベルは、基準信号がPLL回路220に入力されている間にPLL回路220が出力する第1信号の電圧値を平滑化した電圧レベルであることが望ましい。この場合、制御部140が第1信号の検出結果の移動平均を算出して第2信号出力部310に供給してもよく、これに代えて、第2信号出力部310が第1信号の検出結果を平均化してもよい。
【0067】
以上の発振装置100は、基準信号が入力していない場合、第2信号出力部310が出力する第2信号で発振器210を駆動する。この場合、PLL回路220には基準信号が入力していないので、例えば、PLL回路220は略0Vの第1信号を出力する。そして、基準信号が復活してPLL回路220に入力すると、PLL回路220は、復活した基準信号と発振器210の発振信号を分周した信号との位相比較結果を出力することになる。
【0068】
この場合、過渡的には、PLL回路220が出力する第1信号の電圧値は、発振器210を駆動している第2信号の電圧値とは異なる場合がある。そこで、制御部140は、第1信号の電圧値に基づいて、第2信号の電圧値を調整してもよい。このような構成について、次に説明する。
【0069】
[発振装置100の第3構成例]
図5は、本実施形態に係る発振装置100の第3構成例を示す。第3構成例の発振装置100において、図3および図4に示された発振装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第3構成例の発振装置100は、第2切換部330を更に備える。
【0070】
第2切換部330は、PLL回路220および第2信号出力部310のいずれか一方を信号検出部320に接続する。第2切換部330は、例えば、第1切換部240と同様に、2入力1出力のアナログスイッチである。第2切換部330の一方の入力端子には、例えば、PLL回路220が出力する第1信号を分岐した信号が入力する。PLL回路220および第2切換部330の間には、アッテネータおよび増幅回路等の信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。また、PLL回路220および第1切換部240の間に、信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。
【0071】
第2切換部330の他方の入力端子には、例えば、第2信号出力部310が出力する第2信号を分岐した信号が入力する。第2信号出力部310および第2切換部330の間には、アッテネータおよび増幅回路等の信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。また、第2信号出力部310および第1切換部240の間に、信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。なお、第2切換部330および信号検出部320の間には、ノイズを低減させるためのフィルタ等が設けられていてもよい。
【0072】
制御部140は、第2切換部330を制御して、基準信号検出部250が基準信号を検出した検出結果に応じて、PLL回路220を信号検出部320に接続する。これにより、信号検出部320は、基準信号がPLL回路220に入力している間、PLL回路220が出力する第1信号を検出することができる。
【0073】
また、制御部140は、基準信号検出部250が基準信号を検出していない検出結果に応じて、第2信号出力部310を信号検出部320に接続する。これにより、信号検出部320は、基準信号がPLL回路220に入力していない間、第2信号出力部310が出力する第2信号を検出することができる。
【0074】
以上の第3構成例の発振装置100は、例えば、信号検出部320が第1信号および第2信号を検出して比較できるように、第2切換部330が設けられている。これにより、発振装置100は、第1切換部240の切り換え動作を実行する前に、第1信号および第2信号を検出して比較結果を確認することができる。
【0075】
例えば、制御部140は、第1切換部240を制御してPLL回路220を発振器210に接続している期間に、第2切換部330を制御して、PLL回路220および信号検出部320の接続と、第2信号出力部310および信号検出部320の接続とを、予め定められた時間が経過する毎に切り換える。このように、発振器210の発振周波数を位相制御モードで安定化させている期間に、PLL回路220が出力している第1信号と、第1信号の検出結果に基づく第2信号とを定期的にモニタして比較する。これにより、制御部140は、第1信号に対応した第2信号が出力しているか否かを確認できる。
【0076】
例えば、予め定められた時間が経過しても、第1信号および第2信号の検出結果が略一致する電圧レベルにならない場合、制御部140は、異常が発生していると判断できる。この場合、制御部140は、一例として、ユーザ等に異常の発生を通知する。また、制御部140は、第1信号および第2信号の検出結果が略一致する電圧となっている場合、正常動作していることを表示部等に表示させてもよい。
【0077】
また、制御部140は、第2信号出力部310を信号検出部320に接続している間に基準信号検出部250が基準信号を検出したことを条件に、まず、第2切換部330を制御して、PLL回路220を信号検出部320に接続する。この場合、PLL回路220は、入力した基準信号と自走モードで動作している発振器210の発振信号を分周した信号との位相比較結果を出力する。信号検出部320は、PLL回路220が出力する第1信号を検出する。
【0078】
そして、制御部140は、PLL回路220が出力する第1信号の電圧レベルと、第2信号出力部310が出力していた第2信号の電圧レベルとを比較する。制御部140は、第1信号と更新前の第2信号とを比較することにより、第1信号と第2信号とが異なっているか否かを確認できる。
【0079】
ここで、例えば、第1信号の電圧レベルと第2信号の電圧レベルとの差分が予め定められた閾値以下の場合、制御部140は、PLL回路220と発振器210とが接続可能な状態であると判断する。制御部140は、この状態において、PLL回路220からロック信号を受け取ったことに応じて、PLL回路220と発振器210とを接続する。第1信号および第2信号が略同一の電圧レベルなので、自走モードから位相制御モードに切り換えても、発振器210の発振周波数の変化を低減させることができる。
【0080】
また、第1信号の電圧レベルと第2信号の電圧レベルとの差分が予め定められた閾値を超えた場合、制御部140は、第2信号の電圧レベルを第1信号の電圧レベルに近づけるように調整するデジタル信号を第2信号出力部310に供給する。これに代えて、制御部140は第1信号の検出結果に基づき、第2信号を更新する。これにより、制御部140は、PLL回路220と発振器210とを接続可能な状態にすることができる。このような第3構成例の発振装置100の動作フローについて次に説明する。
【0081】
[発振装置100の動作フローの一例]
図6は、第3構成例の発振装置100の動作フローの一例を示す。まず、制御部140は初期設定を行う(S1010)。制御部140は、例えば、記憶部に記憶されている初期値を第2信号出力部310に供給する。第2信号出力部310は、初期値に応じた第2信号を出力する。ここで、初期値は、過去に信号検出部320が第1信号を検出した検出結果でよく、これに代えて、予め設計または算出された値等でもよい。
【0082】
次に、制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果を確認する(S1020)。制御部140は、基準信号が検出されていない場合(S1020:No)、第1切換部240を制御して、第2信号出力部310を発振器210に接続する(S1030)。これにより、発振器210は自走モードで動作する。なお、第2信号出力部310および発振器210が既に接続されている場合、制御部140は、第1切換部240の接続を維持させる。
【0083】
ここで、制御部140は、第2切換部330を制御して、第2信号出力部310を信号検出部320に接続し、第2信号をモニタしてもよい。制御部140は、基準信号が検出されるまで、S1020およびS1030を繰り返し、自走モードの動作を継続させる。
【0084】
制御部140は、基準信号が検出された場合(S1020:Yes)、第2切換部330を制御して、PLL回路220を信号検出部320に接続し(S1040)、第1信号をモニタする。制御部140は、信号検出部320の検出結果の移動平均を算出してもよい。
【0085】
そして、制御部140は、第1信号と更新前の第2信号とを比較する(S1050)。第1信号と第2信号とが略一致していない場合(S1050:No)、制御部140は、第2信号の電圧レベルを第1信号の電圧レベルに近づけるように調整する(S1060)。制御部140は、第1信号と第2信号とが略一致するまで、第1信号のモニタから第2信号の調整までの動作を繰り返す。
【0086】
第1信号と第2信号とが略一致した場合(S1050:Yes)、PLL回路220と発振器210とが接続可能な状態になったと判断し、PLL回路220から出力されるロック信号の受信を確認する(S1070)。PLL回路220からロック信号を受信せず(S1070:No)、予め定められた時間が経過した場合(S1080:Yes)、制御部140は、発振器210の発振周波数が許容される変動の範囲内で、第2信号の値を変更する(S1090)。
【0087】
また、PLL回路220からロック信号を受信せず(S1070:No)、予め定められた時間が経過していない場合(S1080:No)、制御部140は、第2信号の値を変更しない。制御部140は、PLL回路220から出力されるロック信号を受信するまでS1070からS1090までの動作を繰り返す。
【0088】
PLL回路220からロック信号を受信した場合(S1070:Yes)、制御部140は、第1切換部240を制御して、PLL回路220を発振器210に接続する(S1100)。これにより、発振器210の動作は自走モードから位相制御モードに切り換わる。
【0089】
そして、制御部140は、第2切換部330を制御して、PLL回路220を信号検出部320に接続し、第1信号をモニタする。制御部140は、信号検出部320の検出結果の移動平均を算出してもよい。そして、制御部140は、信号検出部320の検出結果を更新してもよい。
【0090】
次に、制御部140は、第2切換部330を制御して、PLL回路220および信号検出部320の接続と、第2信号出力部310および信号検出部320の接続とを、予め定められた時間が経過する毎に切り換える。制御部140は、第1信号および第2信号を定期的にモニタして比較する(S1110)。
【0091】
次に、制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果を確認する(S1120)。制御部140は、基準信号が検出されている場合(S1120:Yes)、S1110およびS1120の動作を繰り返し、位相制御モードを継続させる。
【0092】
制御部140は、基準信号が検出されなかった場合(S1120:No)、第1切換部240を制御して、第2信号出力部310を発振器210に接続し、自走モードに切り換える(S1130)。制御部140は、S1020に戻り、基準信号の検出結果を確認する。
【0093】
制御部140は、例えば、動作の停止が入力された場合、異常を検出した場合等に動作を停止するまで、以上の動作フローを繰り返す。このように、本実施形態に係る発振装置100は、基準信号が入力している状態から基準信号の入力がなくなった状態に変化した場合、および、基準信号が入力していない状態から基準信号が入力した状態に変化した場合であっても、第1信号および第2信号をモニタすることで発振器210の発振周波数の変動を低減させることができる。
【0094】
[発振周波数の変化の例]
図7は、比較対象の発振装置20の発振周波数の変化の一例を示す。図7Aは、基準信号の信号レベルが低下して位相制御モードから自走モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。図7Bは、基準信号が入力して自走モードから位相制御モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。
【0095】
図7の横軸は時間を示し、縦軸は発振器210の発振周波数を示す。なお、縦軸の発振周波数は、位相制御モードで発振器210を動作させた場合の発振周波数を0Hzとしている。ここで、発振器210の発振周波数は、数百MHz程度である。
【0096】
図7Aは、略0秒程度の時刻において、基準信号の信号レベルが低下してしまった例を示す。位相制御モードから自走モードへ切り換えた場合、発振器210の発振周波数が150Hzを超えて変動してしまうことが観測された。また、図7Bは、略0秒程度の時刻において、基準信号が入力した例を示す。自走モードから位相制御モードへ切り換えた場合、発振器210の発振周波数が1000Hzを超えて変動してしまうことが観測された。
【0097】
図8は、第3構成例の発振装置100の発振周波数の変化の一例を示す。図8Aは、基準信号の信号レベルが低下して位相制御モードから自走モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。図8Bは、基準信号が入力して自走モードから位相制御モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。
【0098】
図8の横軸は時間を示し、縦軸は発振器210の発振周波数を示す。なお、縦軸の発振周波数は、位相制御モードで発振器210を動作させた場合の発振周波数を0Hzとしている。ここで、発振器210の発振周波数は、数百MHz程度である。
【0099】
図8Aは、略0秒程度の時刻において、基準信号の信号レベルが低下してしまった例を示す。位相制御モードから自走モードへ切り換えた場合、発振器210の発振周波数の変動を10Hz程度以下に低減できたことがわかる。また、図8Bは、略0秒程度の時刻において、基準信号が入力した例を示す。基準信号が入力してから7秒程度が経過した後に、自走モードから位相制御モードへ切り換わり、発振器210の発振周波数を10Hz程度以下に低減できたことがわかる。
【0100】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0101】
10 シンセサイザシステム
20 発振装置
100 発振装置
110 電圧制御発振器
120 PLL制御装置
130 出力調整部
132 可変アッテネータ
134 増幅器
136 信号レベル検出回路
138 フィルタ部
140 制御部
210 発振器
220 PLL回路
230 定電圧出力部
240 第1切換部
250 基準信号検出部
310 第2信号出力部
320 信号検出部
330 第2切換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8